JP2020132841A - ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度と難燃性に優れ、耐熱性や耐湿熱性に優れるポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)50質量部超97質量部以下と、芳香族ビニル単量体成分(b1)、シアン化ビニル単量体成分(b2)及びジエン系ゴム質重合体成分(b3)を含むグラフト共重合体(B)3質量部以上50質量部未満からなる(A)及び(B)の合計100質量部に対して、縮合リン酸エステル化合物(C)3〜20質量部、オルガノポリシロキサン(D)0.05質量部以上3質量部未満、含フッ素樹脂(E)0.005〜1質量部、及びコアシェル型エラストマー(F)0質量部以上10質量部未満を含有し、オルガノポリシロキサン(D)は分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.4であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成型品に関し、詳しくは、難燃性と機械的強度に優れ、耐熱性や耐湿熱性に優れるポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性等に優れ、その優れた特性から、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野等の原材料として、工業的に広く利用されている。
OA機器、家電製品等の用途を中心に、樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために、ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に特定のリン酸エステル系化合物、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分を有する複合ゴム系グラフト共重合体を配合することにより、耐衝撃性や難燃性に優れた樹脂組成物が得られると記載されている。また、特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂に、リン系難燃剤、ポリフルオロエチレン樹脂及び特定の多層構造重合体を配合してなる樹脂組成物は、難燃性や熱安定性、耐衝撃性に優れ、外観改善効果があるため、大型成形品や薄肉成形品として有用であることが記載されている。さらに、特許文献3には、耐衝撃性、成形性、流動性に優れた材料として、ポリカーボネート樹脂、複合ゴム系グラフト共重合体、リン酸エステル化合物及びポリテトラフルオロエチレンからなる難燃性樹脂組成物が記載されている。
OA機器、家電製品等においては、小型化、軽量化、高機能化等を目的としてその成形品は年々薄肉化されたり、その要求性能は高度化しており、難燃性、耐衝撃性、さらに高温成形に耐え得る熱安定性(耐熱性)を有し、さらに耐湿熱性に優れるポリカーボネート樹脂組成物が求められている。
また、難燃化されたポリカーボネート/スチレン系樹脂のアロイ組成物は、コンピューター、ノートブック型パソコン、各種携帯端末、プリンター、複写機等の電気・電子機器やOA・情報機器等の部材として好適に使用されている。
中でもリン系難燃剤によって難燃化されたポリカーボネート/スチレン系樹脂アロイ組成物は、リン系難燃剤の可塑化効果により成形性に非常に優れるため、薄肉、大型成形品を得るためには最も一般的な組成物である(例えば特許文献4〜6参照)。
しかし、特にOA機器、家電製品等においては、小型化、軽量化、高機能化等を目的としてその成形品は年々薄肉化されており、より高い成形性を得るために、加工温度を上げなくてはならず、また滞留時間が延びる傾向にあるため、上述のようなポリカーボネート/スチレン系樹脂アロイでは、高い衝撃強度を維持することができない、または黄変が起こり所望の色相の成形品が得られないという課題を有している。
このように、ポリカーボネート/スチレン系樹脂アロイでは、難燃性、耐衝撃性、さらに高温成形に耐え得る耐熱性を有し、さらに耐湿熱性に優れることが求められている。
特開平08−259791号公報 特開2001−123056号公報 特開平11−21441号公報 特許第3638806号公報 特許第4080851号公報 特許第4157271号公報
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたもので、ポリカーボネート樹脂の優れた、耐衝撃性等の機械的強度を損なうことなく、難燃性に優れ、耐熱性や耐湿熱性に優れるポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供することを目的(課題)とする。
本発明者らは、上記のような優れたポリカーボネート樹脂組成物を開発するため鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂/ABS樹脂アロイに、縮合リン酸エステル化合物、含フッ素樹脂、および特定のオルガノポリシロキサンを、それぞれ特定の量で含有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)50質量部超97質量部以下と、芳香族ビニル単量体成分(b1)、シアン化ビニル単量体成分(b2)及びジエン系ゴム質重合体成分(b3)を含むグラフト共重合体(B)3質量部以上50質量部未満からなる(A)及び(B)の合計100質量部に対して、縮合リン酸エステル化合物(C)3〜20質量部、オルガノポリシロキサン(D)0.05質量部以上3質量部未満、含フッ素樹脂(E)0.005〜1質量部、及びコアシェル型エラストマー(F)0質量部以上10質量部未満を含有し、オルガノポリシロキサン(D)は分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.4であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
[2]縮合リン酸エステル化合物(C)が、下記一般式(1)で示す縮合リン酸エステルである上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の数であり、Xは二価の有機基を示す。]
[3]縮合リン酸エステル(C)が下記一般式(2)で表される縮合リン酸エステルを含む上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、lは3〜11の整数、mは0〜22の整数、nは1〜10の整数を示す。]
[4]オルガノポリシロキサン(D)の主鎖が分岐構造である上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]オルガノポリシロキサン(D)が下記式(I)で表され、0≦D/(T+Q)≦0.4である上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2E1(O1/2H)E2・・・(I)
[式(I)中、RからRは独立して、有機官能基、水素原子から選択される。またRは有機基であり、M、D、TおよびQは0以上1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。またE1≧0、E2≧0かつ0<E1+E2≦4である。]
[6]オルガノポリシロキサン(D)が、オルガノオキシ基を全有機官能基に対して0.01〜10mol%の範囲で含有する上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[7]オルガノポリシロキサン(D)が上記式(I)で表され、0.3≦M≦0.6である上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[8]オルガノポリシロキサン(D)の重量平均分子量が500〜2000である上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[9]オルガノポリシロキサン(D)が上記式(I)で表され、D=0である上記[1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[10]上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品は、難燃性と機械的強度に優れ、耐熱性や耐湿熱性に優れる。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後を数値又は物性値で挟んで範囲を表現する場合、その前後の値を含む範囲を意味する。
ポリカーボネート樹脂(A)50質量部超97質量部以下と、芳香族ビニル単量体成分(b1)、シアン化ビニル単量体成分(b2)及びジエン系ゴム質重合体成分(b3)を含むグラフト共重合体(B)3質量部以上50質量部未満からなる(A)及び(B)の合計100質量部に対して、縮合リン酸エステル化合物(C)3〜20質量部、オルガノポリシロキサン(D)0.05質量部以上3質量部未満、含フッ素樹脂(E)0.005〜1質量部、及びコアシェル型エラストマー(F)0質量部以上10質量部未満を含有し、オルガノポリシロキサン(D)は分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.4であることを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、その種類に制限はない。
ポリカーボネート樹脂は、一般式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で表わされる、炭酸結合を有する基本構造の重合体である。なお、式中、Xは、一般には炭化水素基であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールAが好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
<ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法>
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
<界面重合法>
まず、ポリカーボネート樹脂(A)を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物のなかでもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、なかでも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、なかでも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、なかでも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;0−オキシン安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、原料であるジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、得られたポリカーボネート樹脂(A)をポリカーボネート樹脂組成物に使用した際に、熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
重合反応の際に、反応基質(原料)、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
<溶融エステル交換法>
次に、ポリカーボネート樹脂(A)を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物、カーボネートエステルは、上述したものを用いるが、用いるカーボネートエステルとしては、なかでもジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、カーボネートエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、カーボネートエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂(A)では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂(A)を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂(A)の分子量を調整することもできる。
カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、カーボネートエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質(原料)、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂(A)が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、なかでも、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリカーボネート樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
<ポリカーボネート樹脂(A)に関するその他の事項>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において使用されるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは14000以上、より好ましくは16000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、高分子量のポリカーボネート樹脂、例えば好ましくは粘度平均分子量[Mv]が、50000〜95000のポリカーボネート樹脂を含有することも好ましい。高分子量ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、より好ましくは55000以上であり、さらに好ましくは60000以上、中でも61000以上、特には62000以上が好ましく、また、より好ましくは90000以下、さらに好ましくは85000以下、中でも80000以下、とりわけ75000以下、特には70000以下が好ましい。
高分子量ポリカーボネート樹脂を含む場合は、ポリカーボネート樹脂(A)中、5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。なお、上限は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。
なお、粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。これにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂(A)では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂(A)の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
[芳香族ビニル単量体成分(b1)、シアン化ビニル単量体成分(b2)及びジエン系ゴム質重合体成分(b3)を含むグラフト共重合体(B)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物が含有するグラフト共重合体(B)は、芳香族ビニル単量体成分(b1)、シアン化ビニル単量体成分(b2)、ジエン系ゴム質重合体成分(b3)を含むグラフト共重合体である。グラフト共重合体(B)は、好ましくは、芳香族ビニル単量体成分(b1)40〜80質量%、シアン化ビニル単量体成分(b2)10〜30質量%、ジエン系ゴム質重合体成分(b3)10〜50質量%及びその他の単量体成分(b4)0〜30質量%からなることが好ましい。
グラフト共重合体(B)における芳香族ビニル単量体成分(b1)としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
芳香族ビニル単量体成分(b1)のグラフト共重合体(B)中の割合は、グラフト共重合体(B)100質量%中、好ましくは40〜80質量%の範囲であり、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。
グラフト共重合体(B)におけるシアン化ビニル単量体成分(b2)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル単量体成分(b2)のグラフト共重合体(B)中の割合は、グラフト共重合体(B)100質量%中、好ましくは10〜30質量%の範囲であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは26質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
グラフト共重合体(B)のジエン系ゴム質重合体成分(b3)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体等のゴム成分が用いられ、ジエン系ゴム質重合体成分(b3)のグラフト共重合体(B)中の割合は、グラフト共重合体(B)100質量%中、好ましくは10〜50質量%の範囲であり、より好ましくは13質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは45質量%以下である。
さらに、これらと共重合可能なその他の単量体成分(b4)を共重合したものでも良く、この場合、共重合可能な他のビニルモノマーとしては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
その他の単量体成分(b4)のグラフト共重合体(B)中の割合は、グラフト共重合体(B)100質量%中、好ましくは0〜30質量%の範囲であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
グラフト共重合体(B)の具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体等が好ましく例示され、中でもアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、特にABS樹脂が好ましい。
グラフト共重合体(B)は、通常、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等の方法で製造され、いずれの方法によるものでも使用可能である。
グラフト共重合体(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の100質量部に対し、3質量部以上50質量部未満であり、好ましくは3.5質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上であり、好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、中でも35質量部以下、とりわけ30質量部以下が好ましく、特に好ましくは25質量部以下であり、20質量部以下が最も好ましい。グラフト共重合体(B)の配合量が3質量部を下回る場合は、流動性、耐衝撃性が不十分であり、50質量部を超えると著しい耐熱性の低下や、難燃性の低下を引き起こしやすい。
[縮合リン酸エステル化合物(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は縮合リン酸エステル化合物(C)を含有する。縮合リン酸エステル化合物(C)を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時の炭化層形成を促進し、難燃性をより高めることができると共に、ポリカーボネート樹脂(A)そのものが有する耐衝撃性等の機械的物性、耐熱性、電気的特性などの性質を良好に維持できる。
縮合リン酸エステル化合物(C)としては、下記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
[式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは0から5の数であり、Xは二価の有機基を示す。]
上記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、
かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。
kは、通常0〜5の整数であるが、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は必ずしも整数とはならず、好ましくは0.5〜3の範囲である。
、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、p−クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
Xは二価の有機基を示すが、置換基を有する、または置換基を有しない、二価のアリーレン基から誘導される基が好ましく挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール基等が挙げられる。またこれらの置換基を組み合わせた基、あるいはこれらの置換基を酸素原子、イオウ原子、窒素原子などにより結合して組み合わせた基などでもよい。
二価の有機基としては、レゾルシノール、ハイドロキノンから誘導される二価の基が好ましく挙げられる。
また、二価のアリーレン基としては、下記の一般式(4)で示される二価のアリーレン基が好ましい。
[式(4)中、Aは、直接結合、または、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、シクロアルキリデン基、アリールアルキレン基、アリールアルキリデン基を表す。]
Aのアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましい。アルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。
シクロアルキレン基としては、炭素数5〜10のシクロアルキレン基が好ましく、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられる。シクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5−トリメチルシクロヘキシリデン基、2−アダマンチリデン基等が挙げられ、炭素数5〜10のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5〜8のシクロアルキリデン基がより好ましい。
アリールアルキレン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。アリールアルキリデン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
上記一般式(4)の二価のアリーレン基としては、具体的には、好ましくは2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、さらに好ましいものとして、これをジヒドロキシ化合物として例示すると、ビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(即ち、ビスフェノールTMC)、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。
上記一般式(1)中、Xの二価の有機基としては、特にレゾルシノール、ビスフェノールA、ビスフェノールTMC、シクロヘキシリデンから誘導される二価の基が好ましい。
また、上記一般式におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、なかでも1であることが好ましい。
また、R、R、RおよびRは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、p−クミルフェニル基等が挙げられるが、R、R、RおよびRは、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
前記一般式(1)で表される縮合リン酸エステル化合物の具体例としては、レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(BDP)、ビフェニルビス−ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類等が挙げられる。
さらに、特に好ましいものとして、下記一般式(2)で示す縮合リン酸エステルを挙げることができる。
[式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、lは3〜11の整数、mは0〜22の整数、nは1〜10の整数を示す。]
上記一般式(2)中のlは、3〜11の整数であり、環状のアルキル基を形成する。好ましい環状アルキルとしては、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン等が好ましく挙げられる。
一般式(2)中のRは、炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル基であり、特にはメチル基が好ましい。mは0〜22であるが、好ましくは0〜10、より好ましくは0、1、2、3、特に好ましくは、0、2、3である。
一般式(2)中のnは、[]に示された単位の数で、1〜10であり、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。
縮合リン酸エステル(C)は、上記一般式(2)で表される縮合リン酸エステルを、縮合リン酸エステル(C)中を5質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらには20質量%以上、特には30質量%以上含むことが好ましい。
縮合リン酸エステル(C)としては、上記一般式(2)の中でも、下記一般式(3)で表されるリン酸エステルが好ましい。
ここで、上記一般式(3)中、nは1〜10の数であるが、nは好ましくは1〜3である。
上記一般式(3)で表される縮合リン酸エステルは、市販品を用いてもよく、例えば、大八化学工業株式会社製の商品名「SR−3000」を挙げることができる。
縮合リン酸エステル化合物(C)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、3〜20質量部であるが、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上、なかでも7質量部以上、特には8質量部以上であることが好ましく、また、好ましくは19質量部以下、より好ましくは18質量部以下、さらには17質量部以下であることが好ましい。含有量が3質量部を下回る場合は十分な難燃性が得られにくく、20質量部を超えると、熱安定性や耐加水分解性が低下しやすい。
[オルガノポリシロキサン(D)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.4であるオルガノポリシロキサン(D)を含有する。
オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子が酸素を介して他のケイ素原子と結合した部分を持つ構造に有機基が付加している高分子物質を指す。オルガノポリシロキサンは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば以下に示す一般組成式(I)で表される化合物や、その混合物が挙げられる。
(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2E1(O1/2H)E2・・・(I)
ここで、上記式(I)中、RからRは独立して、有機官能基、水素原子から選択される。またRは有機官能基であり、M、D、TおよびQは0以上1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。またE1≧0、E2≧0かつ0<E1+E2≦4である。
主なオルガノポリシロキサンを構成する単位は、1官能型[RSiO0.5](トリオルガノシルヘミオキサン、M単位)、2官能型[RSiO](ジオルガノシロキサン、D単位)、3官能型[RSiO1.5](オルガノシルセスキオキサン、T単位)、4官能型[SiO](シリケート、Q単位)であり、これら4種の単位の構成比率を変えることにより、オルガノポリシロキサンの性状の違いが出てくるので、所望の特性が得られるように適宜選択し、オルガノポリシロキサンの合成を行う。より具体的には、M単位は末端封止に用いられ、M単位を使用することにより、末端にトリオルガノシロキ基が導入される。また、D単位を導入することによってオルガノポリシロキサン中に直鎖成分が導入されるため、多くの場合でD単位量が多いほど低粘度化する。また、T単位および/またはQ単位を導入することによってオルガノポリシロキサン中に分岐成分が導入されるため、多くの場合でT単位および/またはQ単位量が多いほど高粘度化する一方で、耐熱性およびポリカーボネート組成物の難燃性を高めることができる。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)は、分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.4である。分子量分布がこのような範囲にあるオルガノポリシロキサン(D)を縮合リン酸エステル化合物(C)と組み合わせることで、難燃性に優れ、成形時の滞留成形性に優れるポリカーボネート樹脂組成物とすることができる。分子量分布の上限は、好ましくは1.35、より好ましくは1.3であり、さらに好ましくは1.25であり、特に好ましくは1.2である。また下限は、好ましくは1.02、より好ましくは1.03、さらに好ましくは1.04、特に好ましくは1.05である。分子量分布を適当な上限以下とすることで低分子量の揮発成分量が低減し、滞留成形性が向上するため好ましい。また、分子量分布を適当な下限以上とすることで、オルガノポリシロキサン(D)の精製にかかるコストを低減できるため好ましい。
なお、分子量分布(Mw/Mn)は通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、測定することができる。より具体的には、テトラヒドロフラン(THF)などを溶媒および溶離液に用い、ポリスチレン標準サンプルを用いて作成した検量線を元に数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布を測定することができる。また、測定条件やカラムの種類により数平均分子量、重量平均分子量、および分子量分布の値が変わる場合があることが一般に知られているが、本発明で述べる分子量分布は、サンプル溶解用の溶媒および溶離液をテトラヒドロフランとし、昭和電工株式会社製ShodexカラムKF−G、KF−402.5HQ、KF−402HQ、およびKF−401HQをこの順に連結し、流速0.3mL/分、40℃で測定し、ポリスチレン標準サンプルを用いて作成した検量線を元に算出した値とする。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)の数平均分子量は特段限定されないが、好ましくは300以上であり、より好ましくは400以上であり、さらに好ましくは500以上であり、特に好ましくは600以上である。また、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1800以下であり、さらに好ましくは1700以下であり、特に好ましくは1600以下である。数平均分子量を適当な下限値以上とすることで、揮発成分量が低減し、滞留成形性が向上するため好ましい。また数平均分子量を適当な上限値以下とすることで、オルガノポリシロキサン(D)の粘度が低下し、成形体中で表面に偏析しやすく、その結果難燃性が向上するため好ましい。また、数平均分子量を適当な上限値以下とすることで、(D)オルガノポリシロキサンの(A)ポリカーボネート樹脂への相溶性が向上し、良好な外観となりやすいため好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)の重量平均分子量は特段限定されないが、好ましくは500以上であり、より好ましくは600以上であり、さらに好ましくは700以上であり、特に好ましくは800以上である。また、好ましくは2000以下であり、より好ましくは1800以下であり、さらに好ましくは1700以下であり、特に好ましくは1600以下である。重量平均分子量を適当な下限値以上とすることで、揮発成分量が低減し、滞留成形性が向上するため好ましい。また重量平均分子量を適当な上限値以下とすることで、オルガノポリシロキサン(D)の粘度が低下し、成形体中で表面に偏析しやすく、その結果難燃性が向上するため好ましい。また、重量平均分子量を適当な上限値以下とすることで、(D)オルガノポリシロキサンの(A)ポリカーボネート樹脂への相溶性が向上し、良好な外観の組成物を得やすいため好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)に関して、上記式(I)中、RからRは独立して、有機官能基、水素原子から選択される。RからRは有機基、水素原子であれば特段限定されず、有機官能基は直鎖構造、分岐構造、および環状構造を含んでいてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子を含んでいても良いが、好ましくは炭素数1〜20の有機基であり、より好ましくは炭素数1〜10の有機基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基であり、特に好ましくはメチル基、フェニル基である。有機官能基を炭素数の少ないメチル基とすることでオルガノポリシロキサン(D)中のシロキサン含有量、即ち無機成分が多くなるため、耐熱性が向上するため好ましい。また、有機官能基をフェニル基とすることでフェニル基同士の縮合により難燃性がより一層高まるため好ましい。
からRにフェニル基を含む場合、全有機基に対するフェニル基の含有量は、好ましくは5mol%以上であり、より好ましくは8mol%以上であり、さらに好ましくは12mol%以上である。また好ましくは40mol%以下であり、より好ましくは35mol%以下であり、さらに好ましくは30mol%以下である。全有機基に対するフェニル基の含有量を適当な下限値以上とすることで、難燃性が向上するため好ましい。また、フェニル基の含有量な下限値以上とすることで、(D)オルガノポリシロキサンの(A)ポリカーボネート樹脂への相溶性が向上し、良好な外観の組成物を得やすいため好ましい。また、全有機基に対するフェニル基の含有量を適当な上限値以下とすることで、オルガノポリシロキサン(D)の粘度が高すぎない範囲にでき、組成物化する際の取扱い性に優れるため好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)に関して、上記式(I)中、Rは有機基であれば特段限定されず、直鎖構造、分岐構造、および環状構造を含んでいてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子を含んでいても良いが、好ましくは炭素数1〜10の有機基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)のオルガノオキシ基の量は特段限定されないが、全有機官能基に対するオルガノオキシ基の割合が好ましくは0.01mol%以上であり、より好ましくは0.5mol%以上であり、さらに好ましくは1.0mol%以上である。また、好ましくは10mol%以下であり、より好ましくは7mol%以下であり、さらに好ましくは5mol%%以下であり、特に好ましくは4.5mol%以下であり、最も好ましくは4mol%以下である。全有機官能基に対するオルガノオキシ基の割合を適当な下限値以上とすることで、適度な流動性を有することとなり好ましい。また、全有機官能基に対するオルガノオキシ基の割合を適当な上限値以下とすることで、粘度を低すぎない範囲に調整しやすいことに加えて、オルガノオキシ基が望まないタイミングで加水分解縮合することによる脱離成分の発生、ゲル化の進行を抑制できるため、滞留成形性の観点から好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)の全ケイ素原子中のD単位、T単位、およびQ単位の量は特段限定されないが、式(I)中のD、T、およびQの値に関して、好ましくは0≦D/(T+Q)≦0.4であり、より好ましくは0≦D/(T+Q)≦0.25であり、さらに好ましくは0≦D/(T+Q)≦0.11であり、特に好ましくは0≦D/(T+Q)≦0.053であり、最も好ましくはD単位を実質的に含まないことを示すD=0である。D/(T+Q)が大きい場合、オルガノポリシロキサン中に直鎖成分が多いことを意味し、D/(T+Q)が小さい場合、オルガノポリシロキサン中に分岐成分が多いことを意味する。D/(T+Q)を適当な上限値以下とすることでオルガノポリシロキサン(D)中の分岐成分が多くなるため、耐熱性および難燃性が向上するため好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)の全ケイ素原子中のM単位の量は特段限定されないが、式(I)中のMの値に関して、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.40以上である。また、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.50である。Mの値を適切な上限値以上とすることでオルガノポリシロキサン(D)製造時に分子量の異常な分子量上昇を抑制できるため好ましい。また、Mの値を適切な上限値以下とすることで低沸点成分の生成を抑制できるため好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)を表す式(I)中、E1はオルガノポリシロキサン中のケイ素原子の量を1とした場合のケイ素原子に直接結合するオルガノオキシ基の量を、E2はオルガノポリシロキサン中のケイ素原子の量を1とした場合のケイ素原子に直接結合するヒドロキシル基の量を表している。すなわち、E1+E2は、いわゆる末端基の量を表しており、通常E1≧0、E2≧0かつ0<E1+E2≦4であるが、上述した全有機官能基に対するオルガノオキシ基の割合の好ましい範囲となるようにE1の値を設定するのが好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)はD単位のみからなるDレジン、T単位のみからなるTレジン、M単位およびD単位からなるMDレジンであってもよく、M単位およびT単位からなるMTレジンであってもよく、M単位およびQ単位からなるMQレジンであってもよく、D単位およびT単位からなるDTレジンであってもよく、D単位およびQ単位からなるDQレジンであってもよく、T単位およびQ単位からなるTQレジンであってもよく、M単位、T単位およびQ単位からなるMTQレジンであってもよく、D単位、T単位およびQ単位からなるDTQレジンであってもよく、M単位、T単位およびQ単位からなるMTQレジンであってもよく、M単位、D単位およびQ単位からなるMDQレジンであってもよく、M単位、D単位、T単位およびQ単位からなるMDTQレジンであってもよいが、好ましくはMTレジン、TQレジン、MTQレジンであり、より好ましくはMTレジン、MTQレジンであり、さらに好ましくはMTQレジンである。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)は常温、常圧下において液体であることが好ましい。液体であることにより成形体中で表面に偏析しやすく、その結果難燃性が向上するため好ましい。ここで、常温とは20℃±15℃(5〜35℃)の範囲の温度をいい、常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ1気圧である。また、液体とは流動性のある状態をいう。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)の粘度は特段限定されないが、25℃で測定した際の粘度が、好ましくは200mPa・s以上であり、より好ましくは300mPa・s以上であり、さらに好ましくは800mPa・s以上である。また、好ましくは2000mPa・s以下であり、より好ましくは1800mPa・s以下であり、さらに好ましくは1700mPa・s以下である。粘度を適切な下限値以上とすることで、成形の液垂れを防止することができ、さらにポリカーボネート樹脂(A)、グラフト共重合体(B)との混練性が向上するため好ましい。また、粘度を適切な上限値以下とすることで、取扱い時の糸引きが低減されるため取扱い性が向上し、さらにポリカーボネート樹脂組成物において、難燃性が向上するため好ましい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)の製造方法は特段限定されない。例えば、ジシロキサン化合物やジシラザン化合物及びそれらの加水分解物、アルコキシシラン化合物やその加水分解物、部分加水分解縮合物を1種類又は複数種同時に縮合させる方法、ジシロキサン化合物やジシラザン化合物及びそれらの加水分解物、クロロシラン化合物やその加水分解物、部分加水分解縮合物を縮合させる方法、環状シロキサン化合物を開環重合させる方法、アニオン重合をはじめとする連鎖重合等、いずれの製造方法であってもよく、複数の製造方法を組み合わせて使用してもかまわない。また、有機官能基を化学的手法により別の有機官能基に変換して用いてもよい。有機官能基を別の有機官能基に変換する方法としては、水素原子がケイ素原子に直接結合した基とアルケニル基を反応させる方法(ヒドロシリル化法)等が挙げられる。
また、得られたオルガノポリシロキサンについて、カラムクロマトグラフィーやGPC、溶媒による抽出、不要成分の留去等によって、所望の分子量や分子量分布を有するオルガノポリシロキサンを分画して使用してもよい。また、減圧や加熱等の処理により低沸点成分を除去してもよい。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)を製造する際、溶媒は用いても用いなくてもよい。溶媒を用いる場合には水及び有機溶媒を使用することができるが、特に有機溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム、ジクロロメタンがより好ましく、溶解性、除去の容易性、低環境有害性の観点から、テトラヒドロフラン、トルエン、メタノールが更に好ましい。また、これらの水および有機溶媒は2種類以上組み合わせて使用してもよく、反応の工程によって溶媒種が異なっていてもよい。また、アルコキシシラン化合物やクロロシラン化合物等を加水分解縮合させることでオルガノポリシロキサン骨格を形成する場合には、水を適量添加して加水分解を促すことができる。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)を製造する際の反応温度は特に限定されず、通常、反応温度は−40℃以上、好ましくは−20℃以上、さらに好ましくは0℃以上である。これにより、目的とするオルガノポリシロキサンを形成する反応が容易に進行するため好ましい。また通常200℃以下、好ましくは150℃以下さらに好ましくは130℃以下である。
本発明で用いるオルガノポリシロキサン(D)を製造する際、反応を実施するための圧力は特に限定されず、通常は0.6気圧以上、好ましくは0.8気圧以上、より好ましくは0.9気圧以上である。この範囲にすることにより、溶媒の沸点が適切な範囲に保たれ、反応系内を適切な反応温度にすることができる。また通常1.4気圧以下で実施されるが、1.2気圧以下が好ましく、1.1気圧以下で実施されることがより好ましい。この範囲にすることにより、溶媒の沸点が上昇し、反応が必要以上に加速されることがなく、その結果、装置の破損や爆発のリスクを低減させることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるオルガノポリシロキサン(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、0.05質量部以上3質量部未満であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、また、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下、特に好ましくは1.3質量部以下である。オルガノポリシロキサン(D)の含有量を上述の下限値以上にすることにより、得られるポリカーボネート樹脂組成物の難燃性が十分なものとなりやすく、上限値以下にすることにより、ポリカーボネート樹脂の熱安定性や耐加水分解性を維持でき、さらに押出時の加工性や成形品の外観不良及び機械的強度の低下を防ぐことができる。
[含フッ素樹脂(E)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、さらに含フッ素樹脂(E)を含有する。含フッ素樹脂を上記した各成分と共に含有することで、樹脂組成物の溶融特性を改良することができ、燃焼時の滴下防止性を向上させ難燃性をより向上させることができる。
含フッ素樹脂としては、フルオロオレフィン樹脂が好ましい。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体であり、具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられるが、なかでもテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、この含フッ素樹脂としては、フィブリル形成能を有するものが好ましく、具体的には、フィブリル形成能を有するフルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フィブリル形成能を有することで、燃焼時の滴下防止性が著しく向上する傾向にある。
また、含フッ素樹脂として、有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂も好適に使用することができる。有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂を用いることで、分散性が向上し、成形品の表面外観が向上し、表面異物を抑制できる。
有機重合体被覆フルオロオレフィン樹脂は、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
フルオロオレフィン樹脂を被覆する有機系重合体を生成するための単量体としては、ポリカーボネート樹脂に配合する際の分散性の観点から、ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましく、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体がより好ましい。
含フッ素樹脂(E)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
含フッ素樹脂(E)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対し、0.005〜1質量部であり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上であり、好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下、なかでも0.4質量部以下、特に0.3質量部以下であることが好ましい。
含フッ素樹脂(E)の含有量を0.005質量部以上とすることで、十分な難燃性向上効果が得られ、1質量部以下とすることにより樹脂組成物を成形した成形品の外観不良が起こりにくく、機械的強度を高く保つことができる。
[コアシェル型エラストマー(F)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、コアシェル型エラストマー(F)を含有することも好ましい。コアシェル型エラストマー(F)としては、ゴム性重合体をコア層とし、その周囲に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等の単量体成分を共重合して形成したシェル層からなるコアシェル型のグラフト共重合体が好ましい。
ゴム性重合体のコア層としては、ブタジエン含有ゴム、ブチルアクリレ−ト含有ゴム、2−エチルヘキシルアクリレ−ト含有ゴム、シリコ−ン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム性重合体をコア層するものが好ましい。
ゴム性重合体成分は、ガラス転移温度が通常0℃以下、中でも−20℃以下のものが好ましく、更には−30℃以下のものが好ましい。
コアシェル型エラストマー(F)としては、ジエン系ゴム成分にこれと共重合可能な単量体成分をグラフト重合したグラフト共重合体が好ましい。このようなグラフト共重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの製造方法であってもよく、共重合の方式は一段グラフトでも多段グラフトであってもよい。
ジエン系ゴム成分の具体例としては、ポリブタジエンゴム、ブタジエン−アクリル複合ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴムなどを挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
ゴム成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)などが挙げられる。これらの単量体成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等を挙げることができる。
ここで、「(メタ)アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」の一方又は双方をさす。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
コアシェル型エラストマー(F)は、ブタジエン系のエラストマーが好ましい。中でもポリブタジエン含有ゴム成分をコア層とするものが好ましく、また、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなるコアシェル型グラフト共重合体が特に好ましい。上記コアシェル型グラフト共重合体において、ブタジエン系ゴム成分を40質量%以上含有するものが好ましく、60質量%以上含有するものがさらに好ましい。また、(メタ)アクリル酸成分は、10質量%以上含有するものが好ましい。
これらコアシェル型グラフト共重合体の好ましい具体例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。このようなゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
コアシェル型エラストマー(F)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満であり、好ましくは0.1〜5質量部以上、より好ましくは0.2〜3質量部、さらに好ましくは0.3〜2質量部以上であり、特に好ましくは0.4〜1質量部である。含有量が10質量部以上になると耐熱性の低下を生じ、且つポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の悪化を引き起こしやすい。
[安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、安定剤を含有することが好ましく、安定剤としてはリン系安定剤やフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることで、フェノール系安定剤としての効果を十分得ることができる。また、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値以下にすることにより、効果が頭打ちになることなく、経済的である。
[離型剤]
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤(滑剤)を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であることが好ましい。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量を前記範囲の下限値以上とすることにより離型性の効果が十分に得られやすく、離型剤の含有量が前記範囲の上限値以下とすることにより、十分な耐加水分解性が得られ、また射出成形時の金型汚染などが生じにくくなる。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記したもの以外に他の成分を含有していてもよい。他成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂(A)及びグラフト共重合体(B)以外のその他の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
<その他の樹脂>
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)及びグラフト共重合体(B)以外のその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とグラフト共重合体(B)の合計100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
<樹脂添加剤>
樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、縮合リン酸エステル化合物(C)、オルガノポリシロキサン(D)及び含フッ素樹脂(E)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによってポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
[成形品]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形して成形品とされる。
成形品を製造する方法は、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられ、また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
これらのなかでも、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法などの射出成形法が好ましい。
成形品の例を挙げると、電気・電子機器、屋外設置電気機器、OA機器、情報端末機器、レンズ用部品、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、特に電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品へ用いて好適である。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り、質量基準に基づく「質量部」を表す。
実施例および比較例に使用した各成分は、以下の表1の通りである。
上記表1中のオルガノポリシロキサン(D1)、(D2)、および(D3)は、以下の製造例1、2、および3により製造し、その評価方法は以下のとおりである。
<オルガノポリシロキサンの評価方法>
製造例で製造したオルガノポリシロキサンの評価は、下記の方法で行った。
(1)H−NMR
生成したオルガノポリシロキサンを約50mg秤量し、これらを重アセトンまたは重ジクロロメタン約1gに溶解させH−NMR測定用サンプルを調製した。400MHz H−NMR(日本電子株式会社製AL−400)にてRelaxation Delayを20秒で測定した、各成分のシグナル強度と内部標準のシグナル強度との比率、および秤量値からフェニル基、メチル基、およびオルガノオキシ基の割合を算出した。
(2)29Si−NMR
重クロロホルムにTris(2,4−pentanedionate)chromiumIIIが0.5質量%になるよう添加し、29Si−NMR測定用溶媒を得た。測定対象のオルガノポリシロキサンを約1.5g秤量し、上記29Si−NMR測定用溶媒を2.5mL添加して溶解させ、10mmΦテフロン(商標登録)製NMR資料管に入れた。下記の装置および測地条件で測定し、シグナルの強度比から前記式(I)中のM、D、T、およびQの値を算出した。
装置:日本電子株式会社製JNM−ECS400、TUNABLE(10)、Siフリー、AT10プローブ
測定条件:Relaxation Delay/15秒、SCAN回数/1024回、測定モード/非ゲーテッドデカップルパルス法(NNE)、スピン/なし、測定温度/25℃
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
オルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示した。試料は約10質量%のテトラヒドロフラン溶液を用い、測定前に0.45μmのフィルターで濾過したものを用いた。
装置:TOSOH HL−8220 GPC(東ソー株式会社製)
カラム:KF−G、KF−402.5HQ、KF−402HQ、KF−401HQ(いずれも昭和電工株式会社製)、カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン、流量0.3mL/分
<オルガノポリシロキサンの製造に使用した原料等>
ヘキサメチルジシロキサン(NuSil Technology社製)
フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−103)
ポリテトラメトキシシラン(三菱ケミカル株式会社製 MS−51)
ジメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−22)
トルエン(キシダ化学株式会社製)
メタノール(キシダ化学株式会社製)
ヘプタン(キシダ化学株式会社製)
1N塩酸(キシダ化学株式会社製)
1N水酸化カリウム水溶液(キシダ化学株式会社製)
<製造例1(オルガノポリシロキサン(D1)の製造)>
オルガノポリシロキサン(D1)の原料として、ヘキサメチルジシロキサン470部、フェニルトリメトキシシラン1005部、ポリテトラメトキシシラン53.2部、溶媒としてトルエン632部、メタノール632部、触媒として1N塩酸335部とメタノール335部の混合物を使用し、30℃で7時間加水分解縮合を行った。1N水酸化カリウム水溶液を690部加えた後、さらに30℃で30分間反応させた。脱塩水による洗浄後、溶媒および未反応の化合物を留去し、常温で液状のオルガノポリシロキサン(D1)を得た。
得られたオルガノポリシロキサン(D1)の分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は895、重量平均分子量(Mw)は989、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。
また、H−NMRによる分析の結果、全有機基に対するフェニル基の量は27.8mol%、メチル基の量は69.3mol%、メトキシ基の量は2.9mol%であり、29Si−NMR測定の結果、前記式(I)におけるM、D、T、Qの値はそれぞれM=0.432、D=0、T=0.526、Q=0.042であり、D/(T+Q)=0となった。
<製造例2(オルガノポリシロキサン(D2)の製造)>
オルガノポリシロキサン(D2)の原料として、ヘキサメチルジシロキサン375部、フェニルトリメトキシシラン1587部、溶媒としてトルエン406部、メタノール406部、触媒として1N塩酸315部を使用し、40℃で7時間加水分解縮合を行った。2N水酸化カリウム水溶液を286部加えた後、さらに40℃で1時間反応させた。脱塩水による洗浄後、溶媒および未反応の化合物を留去し、常温で液状のオルガノポリシロキサン(D2)を得た。
得られたオルガノポリシロキサン(D2)の分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は850、重量平均分子量(Mw)は928、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であった。また、H−NMRによる分析の結果、全有機基に対するフェニル基の量は27.5mol%、メチル基の量は70.3mol%、メトキシ基の量は2.2mol%であり、29Si−NMR測定の結果、上記式(I)におけるM、D、T、Qの値はそれぞれM=0.459、D=0、T=0.541、Q=0であり、D/(T+Q)=0となった。
<製造例3(オルガノポリシロキサン(D3)の製造)>
オルガノポリシロキサン(D3)の原料として、ヘキサメチルジシロキサン191部、フェニルトリメトキシシラン471部、ポリテトラメトキシシラン24.9部、触媒として1N塩酸100部を使用し、40℃で6時間加水分解縮合を行った。水相を除去した後、有機相中の未反応成分および生成メタノール留去し2N水酸化カリウム水溶液を286部加えた後、さらに40℃で1時間反応させた。脱塩水による洗浄後、溶媒および未反応の化合物を留去し、副生した固形物を濾別することで、常温で液状のオルガノポリシロキサン(D3)を得た。
得られたオルガノポリシロキサン(D3)の分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は720、重量平均分子量(Mw)は772、分子量分布(Mw/Mn)は1.07であった。また、H−NMRによる分析の結果、全有機基に対するフェニル基の量は23.7mol%、メチル基の量は71.1mol%、メトキシ基の量は5.1mol%であり、29Si−NMR測定の結果、上記式(I)におけるM、D、T、Qの値はそれぞれM=0.449、D=0、T=0.480、Q=0.071であり、D/(T+Q)=0となった。
(実施例1〜17、比較例1〜6)
[樹脂ペレット製造]
前記表1に記載した各成分を、後記表2−4に記した割合(質量比)となるように配合し、タンブラーミキサーで均一に混合して、混合物を得た。この混合物を、2軸押出機(東芝機械社製「TEM26SX」)に供給し、スクリュー回転数100rpm、吐出量25kg/時、バレル温度260℃の条件で混練し、押出ノズル先端からストランド状に押し出した。押出物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてカットしてペレット化し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
<MFR:(単位:g/10min)>
上述の方法で得られたペレットについて、MFR(シリンダー温度260℃、荷重2.16kg)を測定(単位:g/10min)した。MFRの値が大きいほど、流動性が良いことを意味する。
<難燃性:UL−94(0.75mmt)>
上述の方法で得られたペレットを80℃で4時間乾燥した後、射出成型機(住友重機械工業社製「SE−100」)により、シリンダー温度260℃、金型温度80℃で、125mm×13mm×厚さ0.75mmの燃焼試験用試験片を成形した。
得られた燃焼試験用試験片について、UL94Vに準拠した垂直燃焼試験を行った。燃焼性結果は良好な順からV−0、V−1、V−2、HBとし規格外のものをNGと分類した。
<ノッチつきシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)>
上述の方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80III」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃の条件で射出成形し、ISO多目的試験片3mmtを成形した。
得られたISO多目的試験片(3mmt)を用い、ISO179に準拠して、ノッチつきシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m)を測定した。
<耐熱性 DTUL(荷重たわみ温度、単位:℃)>
上述の方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80III」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、成形サイクル45秒の条件で射出成形し、ISO多目的試験片4mmtを成形した。
ISO75−1&2に従い、4mm×10mmのISO多目的試験片の中央に一定の曲げ荷重(1.8MPa)を加え(フラットワイズ方向)、等速度で昇温させ、中央部のひずみが0.34mmに達したときの温度(℃)を測定した。
<引張破壊呼び歪(単位:%)>
上述の方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80III」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、成形サイクル45秒の条件で射出成形し、ISO多目的試験片4mmtを成形した。
ISO多目的試験片(厚さ4mm)を用い、ISO527規格に準拠して引張破壊呼び歪(単位:%)を測定した。
<耐湿熱性>
また、ISO多目的試験片(3mmt)を恒温恒湿槽を用いて、温度80℃、相対湿度95%の条件で、24h処理し、引張破壊呼び歪(単位:%)を測定した。この時の湿熱処理前後の引張破壊呼び歪[処理後引張破壊呼び歪/引張破壊呼び歪処理前)×100](単位:%)を求め、耐湿熱性を評価した。この値が、大きいほど耐湿熱性に優れることを意味する。
結果を以下の表2−4に示す。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、機械的強度と難燃性に優れ、耐熱性や耐湿熱性に優れるであるので、電気電子機器、OA機器、情報端末機器、家電製品、照明機器等の部品等に広く好適に利用でき、産業上の利用性は非常に高い。

Claims (10)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)50質量部超97質量部以下と、芳香族ビニル単量体成分(b1)、シアン化ビニル単量体成分(b2)及びジエン系ゴム質重合体成分(b3)を含むグラフト共重合体(B)3質量部以上50質量部未満からなる(A)及び(B)の合計100質量部に対して、縮合リン酸エステル化合物(C)3〜20質量部、オルガノポリシロキサン(D)0.05質量部以上3質量部未満、含フッ素樹脂(E)0.005〜1質量部、及びコアシェル型エラストマー(F)0質量部以上10質量部未満を含有し、オルガノポリシロキサン(D)は分子量分布(Mw/Mn)が1.01〜1.4であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 縮合リン酸エステル化合物(C)が、下記一般式(1)で示す縮合リン酸エステルである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    [式(1)中、R、R、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、それぞれ0または1であり、kは1から5の数であり、Xは二価の有機基を示す。]
  3. 縮合リン酸エステル(C)が下記一般式(2)で表される縮合リン酸エステルを含む請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    [式(2)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基、lは3〜11の整数、mは0〜22の整数、nは1〜10の整数を示す。]
  4. オルガノポリシロキサン(D)の主鎖が分岐構造である請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. オルガノポリシロキサン(D)が下記式(I)で表され、0≦D/(T+Q)≦0.4である請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    (RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2E1(O1/2H)E2・・・(I)
    [式(I)中、RからRは独立して、有機官能基、水素原子から選択される。またRは有機基であり、M、D、TおよびQは0以上1未満であり、M+D+T+Q=1を満足する数である。またE1≧0、E2≧0かつ0<E1+E2≦4である。]
  6. オルガノポリシロキサン(D)が、オルガノオキシ基を全有機官能基に対して0.01〜10mol%の範囲で含有する請求項1〜5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  7. オルガノポリシロキサン(D)が上記式(I)で表され、0.3≦M≦0.6である請求項1〜6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  8. オルガノポリシロキサン(D)の重量平均分子量が500〜2000である請求項1〜7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  9. オルガノポリシロキサン(D)が上記式(I)で表され、D=0である請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
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