JP2017171810A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents

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寛之 田島
Hiroyuki Tajima
寛之 田島
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Abstract

【課題】高度の耐衝撃性と優れた流動性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂成分(A)、並びに、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)、及びシアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体に由来する成分(b2)を含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、その一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあり、各成分の含有量は、成分(A)100質量部に対し、成分(b1)が3〜40質量部、成分(b2)が5〜100質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性及び流動性に優れるポリカーボネート樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性などに優れ、その優れた特性から、例えば、電気電子機器部品、OA機器部品、機械部品、車輌用部品等に幅広く利用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、溶融粘度が高く、成形加工性に劣るという問題がある。芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させる手段として、特許文献1にあるように、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)を配合することが古くから行われ、成形加工性の向上や低コスト化などの改善がなされている。
しかし、ポリカーボネート/ABS樹脂組成物については、大型化、製品肉厚の薄肉化、軽量化並びにコストダウンの最近の急激な要請に対応するため、さらに流動性と耐衝撃性の向上が求められている。
特開昭49−99153号公報
本発明は、高度の耐衝撃性と優れた流動性を有するポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定の粒径を有するジエン系ゴム質重合体成分とシアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体由来成分を有する樹脂を特定量含有することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のポリカーボネート樹脂組成物およびその成形体に関する。
[1]ポリカーボネート樹脂成分(A)、並びに、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)、及びシアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体に由来する成分(b2)を含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、
ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、その一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあり、
各成分の含有量は、成分(A)100質量部に対し、成分(b1)が3〜40質量部、成分(b2)が5〜100質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。[2]ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、粒径が250nm以下である一次粒子の割合が10%以下である上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]成分(b1)及び(b2)が、ジエン系ゴム質重合体に、シアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体をグラフトしたグラフト共重合体(B)に由来する成分を含む上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[4]成分(b2)が、シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)に由来する成分を含む上記[1]または[3]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形体。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、高度の耐衝撃性と優れた流動性を有する。
実施例1で得た成形体のコア部の走査型電子顕微鏡写真(倍率3000倍)である。 実施例1で得た成形体のコア部の走査型電子顕微鏡写真(倍率10000倍)である。 実施例4で得た成形体のコア部の走査型電子顕微鏡写真(倍率3000倍)である。 実施例4で得た成形体のコア部の走査型電子顕微鏡写真(倍率10000倍)である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂成分(A)、並びに、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)、及びシアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体に由来する成分(b2)を含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、
ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、その一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあり、
各成分の含有量は、成分(A)100質量部に対し、成分(b1)が3〜40質量部、成分(b2)が5〜100質量部であることを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂(A)の種類に制限はない。また、ポリカーボネート樹脂(A)は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂は、式:−[−O−X−O−C(=O)−]−で示される炭酸結合を有する基本構造の重合体である。式中、Xは、一般には炭化水素基であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の具体的な種類に制限は無いが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート樹脂が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしても良い。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いても良い。
またポリカーボネート樹脂(A)は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート樹脂(A)は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;等が挙げられる。
これらの中でもビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは16000以上、より好ましくは17000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは24000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
ここで、粘度平均分子量[Mv]は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
さらにポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
[ジエン系ゴム質重合体成分(b1)、シアン化ビニル及び芳香族ビニル由来成分(b2)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)、及びシアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体に由来する成分(b2)を含有する。
上記成分(b1)及び(b2)は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するために配合する際の好ましい原料である、ジエン系ゴム質重合体に、シアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体、必要によりその他の単量体をグラフトしたグラフト共重合体(B)に由来する成分である。成分(b1)はグラフト共重合体(B)のジエン系ゴム質重合体に由来する。
本発明では、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、その一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあることを特徴とする。ジエン系ゴム質重合体成分(b1)の一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあることで、耐衝撃性に効果を有するジエン系ゴム質重合体の粒径が比較的揃うため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、高度の耐衝撃性と優れた流動性を有する。粒径400〜800nmの範囲にある一次粒子の割合は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。また、一次粒子の50%以上が粒径500〜700nmの範囲にあることが好ましい。
また、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、粒径が250nm以下である一次粒子の割合が好ましくは10%以下、特に5%以下であることが好ましい。
本発明では、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)の電子顕微鏡で測定した一次粒子径が、400〜800nmの範囲にあるものの割合が、一次粒子の50%以上にあることを特徴とする。ここで、ポリカーボネート樹脂組成物中のジエン系ゴム質重合体成分(b1)の一次粒子の粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)により測定される。具体的には、本発明のポリカーボネート樹脂組成物(ペレット)を株式会社日立ハイテクノロジー製走査電子顕微鏡「SU8020」を用い、印加電圧2.0kV、倍率3000倍又は10000倍で観察される画像から測定される。
図1〜図4は、本発明の実施例で得た成形体のコア部の走査型電子顕微鏡写真である。図1は実施例1で得た成形体のコア部の倍率3000倍、図2は10000倍の写真である。図3及び図4は実施例4で得た成形体のコア部の走査型電子顕微鏡写真であり、図3は倍率3000倍、図4は10000倍である。
図1〜図4中、黒い海状のマトリックスはポリカーボネート樹脂であり、そのマトリックスの海の中に粒状に白く見えるものが、実施例で使用したABS樹脂に由来するジエン系ゴム質重合体成分(b1)の一次粒子である。図1〜図4中、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)の白い粒子は結集して、横方向(樹脂の流れ方向)に配向していることが観察されるが、この結集した白い粒子を含む相は、実施例で使用したABS樹脂とAS樹脂の相であり、白い粒子に囲まれた黒い部分が、ABS樹脂とAS樹脂のアクリロニトニルに由来する成分及び/またはスチレンに由来する成分である。
本発明における成分(b2)はグラフト共重合体(B)のシアン化ビニル単量体(b2−1)と芳香族ビニル単量体(b2−2)に由来する成分であり、成分(b2)はグラフト共重合体(B)の他の単量体(b2−3)に由来する単位を含んでいてもよい。
なお、成分(b2)は、それぞれが上記(b2−1)〜(b2−3)に由来する単位からなる単独重合体の混合物として構成されていてもよいが、それら単量体の共重合体(ブロック共重合体又はランダム共重合体)として構成されることが好ましい。
本発明の樹脂組成物中、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、成分(A)100質量部に対し3〜40質量部であり、好ましくは、5〜35質量部、より好ましくは、10〜30質量部含有される。また、本発明の樹脂組成物中、成分(b2)は、成分(A)100質量部に対して、5〜100質量部、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは15〜80質量部含有される。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、上記グラフト共重合体(B)に加えて、シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)をさらに配合してもよく、その場合、成分(b2)は、グラフト共重合体(B)及び共重合体(C)のシアン化ビニル単量体(b2−1)とグラフト共重合体(B)及び共重合体(C)の芳香族ビニル単量体(b2−2)に由来する成分を含む混合物となる。
[ジエン系ゴム質重合体−シアン化ビニル−芳香族ビニルグラフト共重合体(B)]
グラフト共重合体(B)は、ジエン系ゴム質重合体に、シアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体、必要によりその他の単量体をグラフトした共重合体であり、好ましくは、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)10〜70質量%、シアン化ビニル単量体成分(b2−1)5〜30質量%、芳香族ビニル単量体成分(b2−2)20〜80質量%、及びその他の単量体成分(b2−3)0〜30質量%からなるグラフト共重合体(B)である。
共重合体(B)における芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等が挙げられ、特にスチレンが好ましい。
芳香族ビニル単量体成分(b2−2)の共重合体(B)中の割合は、共重合体(B)100質量%中、好ましくは20〜80質量%の範囲であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
共重合体(B)におけるシアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル単量体成分(b2−1)の共重合体(B)中の割合は、共重合体(B)100質量%中、好ましくは5〜30質量%の範囲であり、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは9質量%以上であり、より好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは26質量%以下である。
共重合体(B)のジエン系ゴム質重合体成分(b1)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体等のゴム成分が用いられ、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)の共重合体(B)中の割合は、共重合体(B)100質量%中、好ましくは10〜70質量%の範囲であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは14質量%以上であり、より好ましくは68質量%以下、さらに好ましくは66質量%以下である。
さらに、これら以外の他の単量体(b2−3)を共重合したものでもよく、この場合、共重合可能な他のビニルモノマーとしては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
その他の単量体成分(b2−3)の共重合体(B)中の割合は、共重合体(B)100質量%中、好ましくは0〜30質量%の範囲であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
グラフト共重合体(B)の具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体等が好ましく例示され、これらの中でもABS樹脂が特に好ましい。
原料のグラフト共重合体(B)は、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)が通常ほぼそのままの粒子形状でポリカーボネート樹脂組成物中に分散するため、グラフト共重合体(B)中のジエン系ゴム質重合体成分(b1)はその一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあることが好ましく、粒径400〜800nmの範囲にある一次粒子の割合は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、中でも80%以上、特に90%以上であることが好ましい。また、グラフト共重合体(B)中のジエン系ゴム質重合体成分(b1)の一次粒子の50%以上が粒径500〜700nmの範囲にあることが好ましい。
また、グラフト共重合体(B)中のジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、粒径が250nm以下である一次粒子の割合が好ましくは10%以下、特に5%以下であることが好ましい。
グラフト共重合体(B)は、通常、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等の方法で製造され、いずれの方法によるものでも使用可能である。
ジエン系ゴム質重合体成分(b1)の粒径を調整する方法は良く知られており、重合時の攪拌速度や乳化剤や温度条件を調整する等公知の方法によって可能である。
なお、このようなグラフト共重合体(B)は、市販されているものの中から、所望のゴム粒径を有するものを、適宜選択して使用することも可能である。
本発明において、グラフト共重合体(B)は、グラフト共重合体の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のグラフト共重合体を組み合わせて含む態様でもよく、また、他の樹脂を組み合わせてもよい。
このように組み合わせる場合は、事前に溶融混練して得られたものを本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造時に用いてもよく、一括で本発明の樹脂組成物製造時に用いても良い。
グラフト共重合体(B)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、10〜100質量部である。含有量が10質量部未満では流動性と耐衝撃性が不足しやすく、一方、100質量部を超えると弾性率と耐熱性が低下しやすい。グラフト共重合体(B)の含有量は、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは90質量部以下であり、さらに好ましくは85質量部以下である。
[シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造するには、前記したように、グラフト共重合体(B)に加えて、シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)をさらに配合してもよく、その場合、共重合体(C)のシアン化ビニル及び芳香族ビニルに由来する成分は本発明の成分(b2)となる。
共重合体(C)におけるシアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
共重合体(C)における芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレンなどが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましく、特にスチレンが好ましい。
シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)を製造する方法は、特に制限はなく公知の方法が採用でき、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、乳化重合等の方法が用いられる。
シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)中の芳香族ビニル単量体の含有率は、50〜95質量%が好ましく、65〜92質量%がより好ましい。
また、シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)の分子量を反映するメルトフローレート(MFR)としては、220℃、荷重10kgで5〜100g/10分の範囲にあることが好ましく、5〜80g/10分がより好ましい。
シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)が好ましく、AS樹脂として市販されているものを広く採用することもできる。
シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、1〜100質量部である。含有量が1質量部未満では流動性不足となりやすく、100質量部を超えると耐熱性が低下しやすい。シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)の含有量は、より好ましくは5量部以上であり、さらに好ましくは7質量部以上であり、特に好ましくは10質量部以上であり、また、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。
[リン系安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASFジャパン社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
リン系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量以下、より好ましくは0.5質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[フェノール系安定剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、フェノール系安定剤を含有することも好ましい。フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASFジャパン社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
フェノール系安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フェノール系安定剤としての効果が不十分となる可能性があり、フェノール系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
[離型剤]
また、離型剤を含有することも好ましい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが好ましく挙げられる。
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も包含する用語として使用される。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
ポリシロキサン系シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、フッ素化アルキルシリコーン等が挙げられる。
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
[その他の成分]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記した以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS);ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
樹脂添加剤としては、上記した以外の、例えば、難燃剤、滴下防止剤、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する方法には制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、ポリカーボネート樹脂(A)とジエン系ゴム質重合体にシアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体をグラフトしたグラフト共重合体(B)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
[成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、通常、任意の形状に成形して成形体(樹脂組成物成形体)として用いる。この成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
成形体の例を挙げると、電気・電子機器、OA機器、情報端末機器、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、照明機器等の部品が挙げられる。これらの中でも、特に車輌部品や電気・電子機器やOA機器の筐体に用いて好適であり、車輌部品に特に好適である。
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることも出来る。
得られた本発明の成形体は、難燃性、耐衝撃性及び外観に優れる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において[部]とは、特に断らない限り質量基準に基づく「質量部」を表す。
実施例及び比較例に使用した成分は以下の通りである。
(実施例1〜11、比較例1〜6)
上記表1に記載した各成分を、下記の表2に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM26SX)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練してポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[Q値(単位:×10−2cm/sec):単位時間あたり流出量]
上記の方法で得られたペレットを80℃で6時間以上乾燥した後、JIS K7210付属書Cに記載の方法に準拠し、高架式フローテスターを用いて、240℃の温度、荷重160kgf/cmの条件下で組成物の単位時間あたりの流出量Q値(単位:×10−2cm/sec)を測定し、流動性を評価した。なお、オリフィスは直径1mm×長さ10mmのものを使用した。
[MVR(単位:cm/10min):単位時間あたり流出量]
上記の方法で得られたペレットを80℃で6時間以上乾燥した後、東洋精機社製メルトインデクサーにて、ISO1133に準拠して、測定温度250℃、荷重21.2Nの条件下で、MVR(単位:cm/10min)を測定した。
[ISO多目的試験片の作成]
上記の方法で得られたペレットを80℃で6時間以上乾燥した後、株式会社日本製鋼所製のJ55−60H型射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、射出時間2.0sec、成形サイクル40秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(3mm厚及び4mm厚)を作製した。
[曲げ弾性率、曲げ強度(単位:MPa)]
上記の方法で得られた4mm厚のISO多目的試験片を用い、ISO178に準拠して、曲げ弾性率と曲げ強度を測定した。
[ノッチ付きシャルピー衝撃値(単位:kJ/m)]
上記の方法で得られた3mm厚のISO多目的試験片を用い、ISO179−1規格に基づき切削加工により所定の形状に切削し、ISO179−2規格に基づき、23℃、0℃、−10℃、−20℃及び−30℃でのシャルピー衝撃試験(ノッチ付き)を行い、耐衝撃値を求めた。
[荷重たわみ温度(単位:℃)]
上記の方法で得られた4mm厚のISO多目的試験片を用い、ISO75に準拠して荷重1.80MPaの条件で荷重たわみ温度を測定した。
[平板試験片の作成]
上記の方法で得られたペレットを80℃で6時間以上乾燥した後、日精樹脂工業株式会社製のNEX80−9E型射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、成形サイクル50秒の条件で射出成形を行い、平板試験片(2mm厚)を作製した。
[ハイレート面衝撃試験]
上記の方法で得られた2mm厚の平板試験片を用い、ISO6603−2に準拠して、インストロン社製のCEAST9350落錘式衝撃試験機を用い、ストライカー直径:10mm、ストライカー重量:5.176kg、サンプルサポート直径:40mm、打抜き試験速度:4.4m/sec、落下高さ:987mm、衝突エネルギー:50.1Jで、23℃及び−30℃にて、試験片を打ち抜くことにより、破壊エネルギーを測定した。
割れ方(破壊形態)については、JIS K7211に準拠し、YD、YS、YU、NYの4段階で判定した。YD、YS、YU、NYの順に割れ方が激しくなる。
[色調]
上記の方法で得られた2mm厚の平板試験片を用い、日本電色工業株式会社製の分光色差計SE6000を用い、LとYIを測定した。
以上の結果を以下の表2及び表3に示す。
また、表中に、ポリカーボネート樹脂成分(A)100質量部に対して、使用したABS樹脂に由来するブタジエンゴム成分量(b1)、(b1)成分中の400〜800nm一次粒子の割合(%)、アクリロニトリル成分量A、スチレン成分量S、AS樹脂に由来するアクリロニトリル成分量A、スチレン成分量Sと、樹脂組成物全体におけるアクリロニトリル成分の合計量(A合計)及びスチレン成分合計量(S合計)、並びにアクリロニトリル成分及びスチレン成分(b2)の量を示す。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、高度の耐衝撃性と優れた流動性を有するポリカーボネート樹脂材料であるので、その産業上の利用性は高いものがある。

Claims (5)

  1. ポリカーボネート樹脂成分(A)、並びに、ジエン系ゴム質重合体成分(b1)、及びシアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体に由来する成分(b2)を含有するポリカーボネート樹脂組成物であって、
    ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、その一次粒子の50%以上が粒径400〜800nmの範囲にあり、
    各成分の含有量は、成分(A)100質量部に対し、成分(b1)が3〜40質量部、成分(b2)が5〜100質量部であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. ジエン系ゴム質重合体成分(b1)は、粒径が250nm以下である一次粒子の割合が10%以下である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 成分(b1)及び(b2)が、ジエン系ゴム質重合体に、シアン化ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体をグラフトしたグラフト共重合体(B)に由来する成分を含む請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 成分(b2)が、シアン化ビニル−芳香族ビニル系共重合体(C)に由来する成分を含む請求項1または3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物の成形体。
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