JP2014055255A - ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)40〜95質量%と、繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維(B−1)及びガラスフレーク(B−2)を、(B−1)/(B−2)の質量比で5/95〜95/5を含有する強化充填材(B)5〜60質量%とからなる(A)及び(B)の合計100質量部に対し、ホスファゼン化合物(C)3〜30質量部、フルオロポリマー(D)0.001〜1質量部を含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
近年、このような情報・モバイル機器をはじめとする電子電機機器は、小型化・薄肉化が進んでいるため、使用する材料には薄肉とした場合も高い難燃性を有し、さらに剛性にも優れる材料が求められている。
しかしながら、塩素や臭素を含有するハロゲン系難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物は、熱安定性の低下を招いたり、成形加工時における成形機のスクリューや成形金型の腐食を招いたりすることがあった。
しかしながら、有機リン酸エステル系難燃剤を配合した樹脂組成物では、近年要求されるような薄肉難燃性に応えることが困難であり、高い難燃性を得ようと高配合にすると、耐衝撃性や耐熱性が著しく低下してしまうという欠点を有していた。さらに、ガラス繊維と有機リン酸エステル系難燃剤を配合したポリカーボネートは、湿熱安定性に弱いという課題も有している。
本発明は、以下のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
[2]ガラスフレーク(B−2)の平均厚さが0.2〜10μmである上記[1]に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
[3]ホスファゼン化合物(C)が、芳香族ホスファゼン化合物である上記[1]または[2]に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]ポリカーボネート樹脂(A)と強化充填材(B)の合計100質量部に対し、スチレン系樹脂(E)0.5〜20質量部を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]スチレン系樹脂(E)が、スチレン−アクリロニトリル系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)40〜95質量%と、繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維(B−1)及びガラスフレーク(B−2)を、(B−1)/(B−2)の質量比で5/95〜95/5を含有する強化充填材(B)5〜60質量%とからなる(A)と(B)の合計100質量部に対し、ホスファゼン化合物(C)を3〜30質量部、フルオロポリマー(D)を0.001〜1質量部含有することを特徴とする。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂の種類に制限はない。また、ポリカーボネート樹脂は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは16000以上、より好ましくは17000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは24000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物には、強化充填材(B)として、扁平断面ガラス繊維(B−1)及びガラスフレーク(B−2)の両者を併用する。
本発明で用いる扁平断面ガラス繊維(B−1)は、繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維である。このような扁平断面ガラス繊維(B−1)を用いることで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性、剛性、低ソリ性、耐衝撃性、異方性を効果的に高めることができる。
かかる扁平断面ガラス繊維の平均繊維長とは、扁平断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径をいう。また平均繊維長とは、本発明のポリカーボネート樹脂組成物中における数平均繊維長をいう。なお、数平均繊維長は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、並びに薬品による分解等の処理で採取される充填剤残渣を光学顕微鏡にて観察した画像から画像解析装置によって算出される値である。また、かかる値の算出に際しては繊維径を目安にそれ以下の長さのものはカウントしない方法による値である。
収束剤としては、特に制限はないが、例えばウレタン系、エポキシ系、アクリル系、ポリエステル系、スチレン系、オレフィン系等の収束剤が挙げられる。なかでも本発明に使用する扁平断面ガラス繊維の収束剤としては、ウレタン系、エポキシ系収束剤がより好ましく、エポキシ系収束剤がさらに好ましい。
なお収束剤の付着量は、扁平断面ガラス繊維100質量%中、通常0.1〜3質量%、好ましくは0.2〜1質量%である。
なお、チョップドストランド(チョップドガラス繊維)のカット長についても特に制限はないが、通常1〜10mm、好ましくは1.5〜6mm、より好ましくは2〜5mmである。
本発明で、上記扁平断面ガラス繊維(B−1)と併せて用いるガラスフレーク(B−2)は、好ましくは平均厚さが、0.2〜10μm、より好ましくは0.3〜7μm、さらに好ましくは0.5〜6μmのガラスフレークである。平均厚みが上記範囲の上限を超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性や難燃性が低下しやすいため好ましくない。また平均厚みが上記範囲の下限を下回る場合は、ガラスフレークが極端に割れやすくなり、剛性や低ソリ性が低下する傾向にあるためやはり好ましくない。
本発明における扁平断面ガラス繊維(B−1)及びガラスフレーク(B−2)の配合比は、(B−1)と(B−2)の質量比(B−1)/(B−2)で、5/95〜95/5であり、好ましくは、10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜85/15、さらに好ましくは20/80〜80/20である。このような範囲で両者を併用することで本発明のポリカーボネート樹脂組成物の剛性、低ソリ性、耐衝撃性等の機械物性のバランスを良好なものとすることができる。
本発明に用いられるホスファゼン化合物(C)は、分子中に−P=N−結合を有する有機化合物であり、好ましくは、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、下記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物、ならびに、下記一般式(1)及び下記一般式(2)からなる群より選択される少なくとも一種のホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
R5は、−N=P(OR3)3基、−N=P(OR4)3基、−N=P(O)OR3基、−N=P(O)OR4基から選ばれる少なくとも1種を示し、R6は、−P(OR3)4基、−P(OR4)4基、−P(O)(OR3)2基、−P(O)(OR4)2基から選ばれる少なくとも1種を示す。
o,m−キシリルオキシホスファゼン、o,p−キシリルオキシホスファゼン、m,p−キシリルオキシホスファゼン等の(ポリ)キシリルオキシホスファゼン、o,m,p−トリメチルフェニルオキシホスファゼン、フェノキシo−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm−トリルオキシホスファゼン、フェノキシp−トリルオキシホスファゼン等の(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m−キシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p−キシリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p−キシリルオキシホスファゼン等(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p−トリメチルフェニルオキシホスファゼン等が例示でき、好ましくは環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン等である。
また、なかでも、a=3のものが50質量%以上、a=4のものが10〜40質量%、a=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(2)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、フルオロポリマー(D)を、ポリカーボネート樹脂(A)と前記強化充填材(B)の合計100質量部に対し0.001〜1質量部含有する。フルオロポリマーの種類に制限はなく、また、フルオロポリマーは、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じてリン系安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、リン系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、フェノール系安定剤を含有することも好ましい。フェノール系安定剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
なお、フェノール系安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
また、必要により、滑剤を含有することも好ましい。滑剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は、単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
その他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のなかでも、スチレン系樹脂(E)を含有することが好ましい。スチレン系樹脂を配合することで、本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の流動性を効果的に高めることができる。
ここでスチレン系樹脂(E)とは、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体及びゴム質重合体より選ばれる1種以上を重合して得られる樹脂である。
フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル;
グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。
好ましくは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルである。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタアクリレート」の一方又は双方をさす。「(メタ)アクリル」「(メタ)アクリロ」についても同様である。
上記の(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
ブタジエン−(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体又はブタジエン−スチレン−(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル共重合体における(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルの割合は、ゴム質量の30質量%以下であることが好ましい。
樹脂添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に好適な添加剤の例について具体的に説明する。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、ポリカーボネート樹脂(A)、扁平断面ガラス繊維(B−1)、ガラスフレーク(B−2)、ホスファゼン化合物(C)及びフルオロポリマー(D)、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
[樹脂ペレット製造]
後記する表2に記した各成分のうちガラス繊維(扁平断面ガラス繊維及び円形断面ガラス繊維)以外を、後記表3に記した割合(質量比)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に上流のフィーダーより供給し、さらに扁平断面ガラス繊維(又は円形断面ガラス繊維)をサイドフィーダーによりバレルの途中より供給しながら、回転数200rpm、吐出量20kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
上述の製造方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のSE100DU型射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1mmのUL試験用試験片を成形した。
また、シリンダー温度:300℃、金型温度80℃の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚さ1mmの平板状成形体も成形した。
さらに、上述の製造方法で得られたペレットを80℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製のサイキャップM−2、型締め力75Tを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、ISO多目的試験片(4mm)及び、ISO多目的試験片(3mm)を成形した。
各ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、上述の方法で得られたUL試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
上述の方法で得られたISO多目的試験片(4mm厚)を用い、ISO178に準拠して曲げ弾性率(単位:GPa)を測定し評価した。表3〜4中、「弾性率」と表記する。
[低ソリ性]
上述の方法で得られた平板状成形体のMD方向(流動方向)及び、TD方向(流動方向と直行する方向)の寸法を求め、その値よりそれぞれの方向における成形収縮率を求めた。このときのMD方向の収縮率とTD方向の収縮率の比(MD方向の収縮率/TD方向の収縮率)を求め、低ソリ性を評価した。なお、表3〜4中、「低ソリ性」と表記する。この値が、1に近いほど低ソリ性に優れていることを意味し、好ましい。
上述の方法で得られたISO多目的試験片(3mmt)を用い、ISO179に準拠してノッチ付シャルピー(単位:kJ/m2)を測定し評価した。なお、表3〜4中、「耐衝撃性」と表記する。
[耐熱性]
上述の方法で得られたISO多目的試験片(4mmt)を用い、ISO75に準拠して1.80MPa荷重たわみ温度(単位:℃)を測定し評価した。表3〜4中、「耐熱性」と表記する。
一方、比較例1〜2を見ると、ガラス繊維のみを用いると、低ソリ性に劣ることがわかり、比較例3を見ると、難燃剤としてホスファゼンのかわりにリン酸エステルを用いると難燃性、耐衝撃性及び耐熱性が劣ることがわかる。また扁平断面ガラス繊維以外のガラス繊維を配合した比較例4もまた低ソリ性に劣ることがわかる。
Claims (5)
- ポリカーボネート樹脂(A)40〜95質量%と、繊維断面の長径の平均値が10〜50μm、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維(B−1)及びガラスフレーク(B−2)を、(B−1)/(B−2)の質量比で5/95〜95/5を含有する強化充填材(B)5〜60質量%とからなる(A)及び(B)の合計100質量部に対し、ホスファゼン化合物(C)3〜30質量部、フルオロポリマー(D)0.001〜1質量部を含有することを特徴とするガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
- ガラスフレーク(B−2)の平均厚さが0.2〜10μmである請求項1に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
- ホスファゼン化合物(C)が、芳香族ホスファゼン化合物である請求項1または2に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂(A)と強化充填材(B)の合計100質量部に対し、スチレン系樹脂(E)0.5〜20質量部を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
- スチレン系樹脂(E)が、スチレン−アクリロニトリル系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載のガラス繊維強化ポリカーボネート樹脂組成物。
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