JP2020132756A - 導電性組成物およびそれを用いた導電体並びに積層構造体 - Google Patents

導電性組成物およびそれを用いた導電体並びに積層構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができる導電性組成物を提供する。【解決手段】エラストマーと銀粉とを含む導電性組成物であって、前記銀粉が、平均一次粒子径が1μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である第1の銀粉と、平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である第2の銀粉とを含み、前記第1の銀粉と前記第2の銀粉とが、質量基準において10:90〜90:10の割合で含まれていることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性組成物、および導電性組成物を固化させた導電体、該導電体の層を有する積層構造体、並びに該導電体または積層構造体を備えた電子部品に関する。
配線回路等のパターン状の導電体を形成する材料として、従来、有機バインダーに金属粉末を混合したペースト状の導電性組成物が知られている。このような導電性組成物によれば、確かにパターン状に塗布した後に固化させることにより所望の導電体を形成することができる。
しかしながら、一般的な導電性組成物では、得られる導電体の硬度が高いために、フレキシブルプリント配線板用途において、導電体の十分な屈曲性が得られず、耐屈曲性に優れた導電体形成に好適な導電性組成物の開発が求められている。特に、近年の成長が著しいウェアラブルデバイス分野においては、耐屈曲性に加えて導電体に伸縮性を付与することが求められている。
このような要求に対して、従来、金属粉末を含有させる有機バインダーとしてエラストマーを用い、導電体に屈曲性だけでなく伸縮性を持たせた導電性組成物が提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、油展ゴムに、化学還元焼成法により得られた、特定の比表面積および特定のタップ密度を有する平均粒径が3〜40μmの銀粉を含有させたゴム組成物が開示されている。
国際公開第2018/110632号パンフレット 特開2009−269985号公報
しかしながら、このような従来技術に係る導電性組成物から得られる導電体は、屈曲時でも導電性に優れるものの、伸張時に導電性が急激に低下したり、あるいは伸張時の導電性は維持されるものの伸張前の初期抵抗値が高いという問題があった。
そこで、本発明の目的は、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができる導電性組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、このような導電性組成物を固化させた導電体、該導電体の層を有する積層構造体、並びに該導電体または積層構造体を備えた電子部品を提供することにある。
本発明者らは、エラストマーに配合する導電性金属粉として、平均一次粒子径がサブミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉と、平均一次粒子径がミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉の2種を組み合わせて用いることにより、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができる導電性組成物を実現できるとの知見を得た。本発明は係る知見に基づくものである。
すなわち、本発明の導電性組成物は、エラストマーと銀粉とを含む導電性組成物であって、
前記銀粉が、平均一次粒子径が1μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である第1の銀粉と、平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である第2の銀粉とを含み、
前記第1の銀粉と前記第2の銀粉とが、質量基準において10:90〜90:10の割合で含まれていることを特徴とするものである。
本発明の実施態様においては、前記銀粉が、導電性組成物全体に対して固形分量で60〜95質量%含まれることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記エラストマーが、メチル(メタ)アクリレート単位およびスチレン単位からなる群より選択されるハードセグメントと、n−ブチルアクリレートおよびブタジエン単位からなる群より選択されるソフトセグメントとを有するブロック共重合体であることが好ましい。
本発明の実施態様においては、前記ブロック共重合体において、前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの比率が20:80〜50:50の範囲であることが好ましい。
また、本発明の別の実施態様による導電体は、導電性組成物を固化させてなることを特徴とするものである。
また、本発明の別の実施態様による積層構造体は、基材上に上記導電体の層を有するものである。
また、本発明の別の実施態様による電子部品は、上記導電体の層または上記積層構造体を備えたものである。
本発明の導電性組成物によれば、エラストマーに配合する導電性金属粉として、平均一次粒子径がサブミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉と、平均一次粒子径がミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉の2種を組み合わせて用いることにより、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができる導電性組成物を実現できる。
本発明の導電性組成物は、エラストマーと銀粉とを含むものであり、エラストマーに特定の2種の銀粉を配合することにより、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができる。そのため、本発明の導電性組成物は、このような特性を利用して、体外デバイス、体表デバイス、電子皮膚デバイス、体内デバイス等のウェアラブルデバイス用の生体電極として好適に用いることができる。以下、本発明の導電性組成物が含有する各成分について詳述する。
<銀粉>
本発明の導電性組成物は、エラストマーに配合する導電性金属粉として、平均一次粒子径がサブミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉と、平均一次粒子径がミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉の2種を組み合わせて用いる。すなわち、本発明の導電性組成物は、銀粉として、平均一次粒子径が1μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である第1の銀粉と、平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である第2の銀粉とを含むものである。このような2種の銀粉を特定の割合でエラストマー中に含有させることにより、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができる。このような本発明特有の効果が奏される詳細なメカニズムは明らかではないが、以下のように考えられる。
すなわち、サブミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉が上記のようなみかけ密度を有し、且つミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉が上記のようなみかけ密度を有することで、ミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉がサブミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉間の空隙に入り込み、銀粉どうしの接点を増加させ、さらに、ミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉の粒子径が1μm超であることから、サブミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉間の空隙には、ミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉と共にエラストマーも入り込み易くなるためと考えられる。その結果、導電体自体の初期電気抵抗値(伸張前の初期電気抵抗値)を低くでき、さらに、伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を得ることができるものと考えられる。なお、本発明において、銀粉の平均一次粒子径とは、粉体状態にある銀粉を走査型電子顕微鏡にて10,000倍の倍率で観察し、ランダムに10個の一次粒子を抽出し、その粒子径を測定した際のそれらの粒子径の平均値を意味する。また、銀粉のみかけ空隙率は、銀粉の一次粒子が連結して適度な空隙が存在する凝集構造(二次粒子)の状態を表す指標となるものであり、以下のようにして測定することができる。
銀の密度をρ(g/cm)とし、
質量M(g)の銀粉に、1kg重の荷重をかけたときの銀粉体積をV(cm)とした場合に、みかけ密度ρ(g/cm)は、
ρ=M/V
と定義され、みかけ密度から、下記式によりみかけ空隙率(P)を算出することができる。
P=(1−ρ/ρ)×100
なお、銀の密度ρは10.49g/cmであり、1kg重荷重時の銀粉体積Vは、荷重を付加してから1時間経過した後の銀粉体積とする。
上記したみかけ空隙率Pは、本発明において、エラストマーと混合する前の銀粉の一次粒子どうしの凝集状態を表す指標となる。銀粉に対して一定荷重をかけると充填された銀粉の圧縮が進む。このとき、銀粉が凝集状態ではなく一次粒子どうしが分離している状態の場合は、圧縮後のみかけ空隙率は小さくなる。一方、銀粉が凝集状態を形成している場合は、凝集内部の空隙のため、みかけ空隙率は大きくなる。これにより、銀粉の一次粒子どうしの凝集状態をみかけ空隙率として評価することができる。
また、本発明において、第1の銀粉および第2の銀粉の一次粒子の形状は、略球状であることが好ましく、略球状の一次粒子が三次元かつランダムに連結した二次粒子の形態で導電性組成物中に存在することで、上記したように、導電性組成物の固化物が大きく伸張した際にも一次粒子どうしの接点を減少することなく銀粉が導電性組成物の固化物中のエラストマーの伸張変形に追随できる。
なお、銀粉の一次粒子の形状は、略球状であるものに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で略球状以外の形状の銀粉が含まれていてもよいことは言うまでもない。
平均一次粒子径およびみかけ空隙率が上記範囲にあるような第1の銀粉および第2の銀粉は、市販されているものを使用することができ、また、市販されている銀粉を、分級機等を用いて特定の平均一次粒子径およびみかけ空隙率を有する所定の銀粉に分級することで得てもよい。
本発明において使用する第1の銀粉(すなわち、導電性組成物として調製される前の銀粉)は、その平均二次粒子径が1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは5μm〜50μmである。また、本発明において使用する第2の銀粉(すなわち、導電性組成物として調製される前の銀粉)は、その平均二次粒子径が1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜30μmである。第1の銀粉および第2の銀粉の平均二次粒子径がそれぞれ上記範囲にあることで、導電性組成物中において第1の銀粉間の空隙に第2の銀粉とエラストマーとが入り込んだ分散状態となるため、導電性組成物の固化物(固化物が伸張していない状態)において銀粉どうしの接点が多い状態となり、固化物の初期電気抵抗値を低くすることができる。また、固化物を伸張した際にも、第1の銀粉間の空隙に入り込んだエラストマーに当該銀粉が追従することで、銀粉どうしの接点が減少し難くなるため、伸張時においても初期電気抵抗値の安定的に維持することができる。なお、導電性組成物として調製される前の銀粉の平均二次粒子径とは、粉体状態にある銀粉をレーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定した粒子径の平均値(D50)を意味する。
また、本発明において使用する第1の銀粉(導電性組成物として調製される前の銀粉)は、JIS K 6217−4(2017)に準拠して測定されたDBP吸油量が50〜300ml/100gであることが好ましい。また、本発明において使用する第2の銀粉(導電性組成物として調製される前の銀粉)は、JIS K 6217−4(2017)に準拠して測定されたDBP吸油量が1〜100ml/100gであることが好ましい。銀粉のDBP吸油量とは、JIS K 6217−4に準拠して、100gの銀粉に吸収されるフタル酸ジブチルの量を測定した値を意味し、本発明においては、銀粉の一次粒子の連結度合いや凝集の程度を示す指標としている。DBP吸油量がそれぞれ上記範囲にある第1の銀粉および第2の銀粉を使用することで、銀粉を組成物中に分散させた際に、後記するような特定範囲の粒子径に調整し易くなる。
本発明の導電性組成物は、上記した特定の2種の銀粉をエラストマー中に分散させたものであり、導電性組成物中において銀粉の二次粒子の粒度分布における累積50%粒子径(D50粒子径)が、1〜50μmの範囲であることが好ましい。導電性組成物中での銀粉が、上記したような特定の粒径分布を有するようにエラストマー中に分散することにより、導電性組成物を固化させた硬化物の導電性が改善されるとともに、伸縮の繰り返しや伸張を大きくした場合であっても、電気抵抗の安定性に優れた導電体とすることができる。なお、導電性組成物中における銀粉の二次粒子の粒度分布における累積50%粒子径(D50粒子径)は、第1の銀粉および第2の銀粉とエラストマーとを混合ないし混練して得られた導電性組成物をレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定することができる。具体的には、測定溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、導電性組成物を3000質量%となるように測定溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で希釈し、スパチュラなどで銀粉の二次粒子が崩壊しないよう適度に撹拌した後速やかに、測定範囲0.020μm〜1000.00μmで、溶媒の屈折率を1.40として、粒度分布を反射モードで測定し、当該粒度分布の累積50%の粒子径として算出された値をD50粒子径として定義する。
本発明の導電性組成物を構成する銀粉は、エラストマーと混合ないし混練した際にも、複数の一次粒子が三次元かつランダムに連結した一定の凝集状態を維持しながら、導電性組成物中に分散すると考えられる。即ち、特定のみかけ空隙率を有する銀粉をエラストマーに混合ないし混練すると、銀粉の一次粒子の凝集した二次粒子のうち、粒子径の大きい二次粒子は崩壊してある程度小さくなる。本発明のように、サブミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉が上記のようなみかけ密度を有し、且つミクロンオーダーの粒子径を有する銀粉が上記のようなみかけ密度を有することで、導電性組成物中の銀粉の二次粒子にみかけ上の空隙が適度に残存し、その空隙にエラストマーが入り込むため、本発明特有の効果を発揮し得るものと考えられる。
平均一次粒子径がサブミクロンオーダーの銀粉を使用した場合において、みかけ空隙率が小さい銀粉ではエラストマー中に分散させると、平均二次粒子径が小さくなり過ぎてしまい、かかる導電性組成物の固化物が大きく伸張した際には、この伸張変形によって銀粉の一次粒子どうしの接点が減少してしまう。一方、みかけ空隙率が大きい銀粉を使用すると、銀粉の凝集状態が崩壊せず、銀粉の一次粒子どうしが十分に接触しないため、導電性組成物の固化物の導電性(即ち、伸張前の導電性)を高くすることができなくなる。この点、上述したように、平均一次粒子径がサブミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉(第1の銀粉)と、平均一次粒子径がミクロンオーダーの特定のみかけ空隙率を有する銀粉(第2の銀粉)の2種を特定の割合で組み合わせることにより、導電性組成物中の銀粉の二次粒子には、みかけ上の空隙が適度に存在し、かかる空隙にエラストマーが十分に入り込み、このような導電性組成物からなる固化物が大きく伸張した際にも一次粒子どうしの接点を減少することなく銀粉がエラストマーの伸張変形に追随でき、第1の銀粉間の空隙に第2の銀粉が入り込むことにより、伸張前の導電性も優れるものと考えられる。
本発明の導電性組成物中において、銀粉が上記のような形態で存在するためには、第1の銀粉と第2の銀粉とは、質量基準において10:90〜90:10の割合で含まれている必要がある。好ましい配合割合は30:70〜90:10であり、より好ましい配合割合は50:50〜90:10である。使用する銀粉全体に対して第1の銀粉の割合が多すぎると導電性組成物の固化物の導電性(即ち、非伸張時の導電性)が低くなる。一方、使用する銀粉全体に対して第2の銀粉の割合が多すぎると、伸張時の導電性が悪化する。
導電性組成物中における銀粉の配合量は、導電性組成物に含まれる全固形分量を基準として、60〜95質量%であることが好ましい。60質量%以上であると、低い抵抗値の導電体を容易に得ることができる。95質量%以下であると、伸縮時に断線がより生じにくくなる。
本発明においては、銀粉とエラストマーとの親和性を調整するため、表面処理された銀粉を使用してもよい。その場合、第1の銀粉が表面処理されたものであってもよく、第2の銀粉が表面処理されたものであってもよいが、第1及び第2の銀粉の両方が表面処理されたものであることが好ましい。銀粉の表面処理としては、分散液を含む溶液中に銀粉を投入して撹拌する湿式法や、銀粉を撹拌しながら分散液を含む溶液噴霧する乾式法などの方法が挙げられる。さらに、界面活性剤を併用して表面処理をしてもよい。
このような表面処理に使用する分散剤としては、例えば、脂肪酸、有機金属、ゼラチン等の保護コロイドを用いることができるが、不純物混入のおそれや疎水基との吸着性の向上を考慮すると、脂肪酸またはその塩であることが好ましい。また、この分散剤としては、脂肪酸またはその塩を界面活性剤でエマルション化したものを用いてもよい。好ましい分散剤としては、炭素原子数6〜24の脂肪酸であり、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸等をより好ましく使用することができる。これらの脂肪酸は、導電性組成物を用いた配線層や電極への悪影響が少ないと考えられる。上記した脂肪酸は、単独で使用してもよくまた複数を組み合わせて使用してもよい。
以上説明したような銀粉は後記するエラストマーおよび必要に応じて溶剤を配合、撹拌ないし混練することにより、銀粉の二次粒子のD50粒子径が1〜50μmの範囲になるように調整することができる。例えば、ディゾルバーやバタフライミキサー等の撹拌機やロールミルやビーズミル等の混練機を用いて撹拌ないし混練を行うことができるが、その際の撹拌機および/または混練機の回転速度、撹拌羽や混練装置の形状、撹拌ないし混練時間、撹拌ないし混練時の温度、ビーズ充填率やロール間隔など、種々の条件により調整することができる。
また、本発明の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、銀粉以外のカーボン等の他の導電粉を併用してもよい。
<エラストマー>
本発明による導電性組成物に含まれるエラストマーは、室温においてゴム弾性を有する材料であれば特に制限なく使用することができ、例えばゴム、熱可塑性エラストマー、官能基含有エラストマー、ブロック共重合体等を好適に使用することができる。
ゴムとしては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴムの何れでもよく、公知慣用のものを単独または二種以上を混合して用いることができる。
また、熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーなどが挙げられ、単独または二種以上を混合して用いることができる。
官能基含有エラストマーとしては、伸縮性の観点から、ウレタン系、オレフィン系が好ましく、耐溶剤性の観点から、(メタ)アクリロイル基や酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基などの官能基を有するものが好ましい。
ブロック共重合体としては、ハードセグメントとソフトセグメントとのブロック共重合体であれば用いることができ、単独または二種以上を混合して用いることができる。
上述したエラストマーのなかでも、ブロック共重合体は、結晶性が低く分子間力が弱いため、他のゴムと比較してガラス転移点(以下、Tgと略す。)が低く、銀粉と混合した場合には柔軟で伸びがよく、好ましい。そのため、ブロック共重合体はウェアラブルデバイス用の導電体の形成に好適である。特に、Tgが150℃未満のハードセグメントと、Tgが0℃未満のソフトセグメントとのブロック共重合体がより好適である。なお、ガラス転移点Tgは示差走査熱量測定(DSC)により測定される。
このようなブロック共重合体におけるハードセグメントとソフトセグメントとの比率は20:80〜50:50の範囲であることが好ましい。この範囲内にあれば、導電性組成物を固化した導電体の伸長時に断線が生じにくくなるため好ましい。より好ましくは、25:75〜40:60である。
ここで、ブロック共重合体におけるハードセグメントとしては、メチル(メタ)アクリレート単位やスチレン単位などが挙げられる。また、ソフトセグメント単位としては、n−ブチルアクリレートやブタジエン単位などが挙げられる。ブロック共重合体は、ポリメチル(メタ)アクリレート/ポリn−ブチル(メタ)アクリレート/ポリメチル(メタ)アクリレートのトリブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本願明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
ブロック共重合体は、市販品であってよい。市販品の例は、アルケマ社製のリビング重合を用いて製造されるアクリル系トリブロックコポリマーである。具体的には、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリメチルメタアクリレートに代表されるSBMタイプ、ポリメチルメタアクリレート−ポリブチルアクリレート−ポリメチルメタアクリレートに代表されるMAMタイプ、およびカルボン酸変性処理または親水基変性処理されたMAM NタイプまたはMAM Aタイプを使用することができる。SBMタイプの例は、E41、E40、E21およびE20である。MAMタイプの例は、M51、M52、M53およびM22である。MAM Nタイプの例は、52Nおよび22Nである。MAM Aタイプの例は、SM4032XM10である。市販品の別の例は、クラレ社製のクラリティである。このクラリティは、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸ブチルから誘導されるブロック共重合体である。
上記のような(メタ)アクリレートポリマーブロックを含むブロック共重合体は、例えば、特表2007−516326号公報または特表2005−515281号公報に記載される方法により得ることができる。
ブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは20,000〜400,000であり、より好ましくは50,000〜300,000である。重量平均分子量が20,000以上であることで、目的とする強靭性および柔軟性の効果が得られ、導電性組成物をフィルム状に成形乾燥したときや基板に塗布して乾燥したときに優れたタック性が得られる。また、重量平均分子量が400,000以下であることで、導電性組成物が良好な粘度を有し、より高い印刷性および加工性を達成できる。また、重量平均分子量が50,000以上である場合には、外部からの衝撃に対する緩和性において優れた効果が得られる。
ブロック共重合体の、国際標準化機構の国際規格ISO 37の測定方法による引っ張り破断伸び率は、好ましくは100〜600%である。引っ張り破断伸び率が100〜600%だと、導電体の伸縮性および電気抵抗の安定性により優れる。より好ましくは300〜600%である。
引っ張り破断伸び率(%)=(破断点伸び(mm)−初期寸法mm)/(初期寸法mm)×100
上記したエラストマーのうちゴムや官能基含有エラストマーには、通常、硫黄系加硫剤や非硫黄系加硫剤などが用いられる。本発明のような銀粉とエラストマーを含む導電性組成物では、エラストマー中の加硫剤に含まれる硫黄により、配線中の銀粉が酸化や硫化によって腐食する恐れがあり、かかる観点からは、本発明においては硫黄系加硫剤を含まないことが好ましい。
本発明の導電性組成物は、導電性に悪影響を及ぼさない範囲内で(本発明特有の効果を損なわない範囲内で)若干量の硫黄化合物を配合してもよい。
また、エラストマーには、軟化剤、可塑剤等の公知の添加剤が含まれていてもよい。軟化剤としては、鉱物油系軟化剤と植物油系軟化剤が挙げられ、例えば、鉱物油系軟化剤として、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの各種オイルである。植物油系軟化剤としては、ひまし油、錦実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パイン油、トール油等が挙げられ、これら軟化剤は、単独あるいは二種以上を併用してもよい。軟化剤の添加量により、所望のゴム弾性や伸張性を調整することができる。
以上説明したようなエラストマーは、導電性組成物中に含まれる全固形分量を基準として、それぞれ5〜40質量%の割合で配合することが好ましく、14〜28質量%であることがより好ましい。特に、上記したようなブロック共重合体を含有する場合には、他のエラストマーを含めた全エラストマーに対して、これらブロック共重合体の配合量が85〜100質量%であることが好ましい。配合量が上記範囲内にあると、形成された塗膜の伸縮性がより良好となる。
なお、本発明の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、エラストマー以外の熱可塑性樹脂等の他の有機バインダーを併用してもよい。
本発明の導電性組成物は、組成物の調整のため、または基板に塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独でまたは2種以上の混合物として用いられる。この中でも、塗布性の観点より、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましい。
本発明の導電性組成物は、熱硬化成分をさらに含んでよい。熱硬化成分の例は、硬化反応による分子量増加、架橋形成によりフィルム形成可能なポリエステル樹脂(ウレタン変性体、エポキシ変性体、アクリル変性体等)、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニル系樹脂およびシリコーン樹脂である。
本発明の導電性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。例えば、カップリング剤、光重合開始剤等の添加剤を含んでいてよい。
本発明の導電性組成物は、例えば、溶剤に溶解したエラストマーと上記した第1の銀粉および第2の銀粉とを混練することで製造することができる。混練方法としては、例えばロールミルといった撹拌混合装置を使用する方法が挙げられる。具体的には、エラストマーを有機溶剤に溶解した固形分50質量%の樹脂溶液を調製し、この樹脂溶液に第1の銀粉および第2の銀粉を配合し、攪拌機にて予備撹拌混合した後、3本ロールミルにて混練することで、導電性組成物を得ることができる。使用するエラストマーの種類や有機溶剤の配合割合によって、液状の導電性組成物としたり、ペースト状(半固形状)の導電性組成物とすることができる。
また、本発明の導電性組成物の製造方法は上記した方法に限られず、溶剤に溶解したエラストマーに、第1の銀粉および第2の銀粉を別々に添加し混練した2種の組成物を調製しておき、両者を混合して導電性組成物を製造してもよいし、また、先に溶剤に溶解したエラストマーと第1の銀粉とを混練して組成物を調製しておき、その組成物に第2の銀粉を添加して混練したり、あるいは先に溶剤に溶解したエラストマーと第2の銀粉とを混練して組成物を調製しておき、その組成物に第1の銀粉を添加して混練して導電性組成物を製造してもよい。
本発明において、上述したような導電性組成物は、例えば基材上にパターン塗布し、熱処理を行うことで、導電体を形成することができる。この熱処理としては、乾燥処理や熱硬化処理などが挙げられる。
このように、本発明の導電性組成物によれば、伸縮性および電気抵抗の安定性に優れた導電体を得ることができる。また、上記のような銀粉を用いることによって、塗布適性も向上する。
<導電体の層およびその用途>
上述した導電性組成物は、固化させて導電体とすることができる。例えば、導電性組成物からなる塗布膜を形成し、乾燥、固化させることにより導電体の層とすることができる。導電性組成物の固化は、導電性組成物を乾燥または熱処理することで行われる。熱処理の例は、熱風乾燥または熱硬化である。熱処理に先立ち、成形を行ってもよい。例えば、導電体の層は、基材上に上記の導電性組成物を所望の形状となるように塗布した後、固化させることにより導電体の層を得ることができる。導電体の層は、使用される用途に応じた種々の形状であってよい。例えば、導体回路および配線などに好適に適用できる。
導体回路を製造する場合、上記の導電性組成物を基材上に印刷または塗布して塗膜パターンを形成するパターン形成工程と、パターニングされた塗膜を固化させる工程とを含む。塗膜パターンの形成には、マスキング法またはレジストを用いる方法等を使用できる。
パターン形成工程としては、印刷方法およびディスペンス方法が挙げられる。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等が挙げられ、微細な回路を形成する場合、スクリーン印刷が好ましい。また、大面積の塗布方法としては、グラビア印刷およびオフセット印刷が適している。ディスペンス方法とは、導電性組成物の塗布量をコントロールしてニードルから押し出しパターンを形成する方法であり、アース配線等の部分的なパターン形成や凹凸のある部分へのパターン形成に適している。
導電性組成物を塗布する基材としては、電気絶縁性のものであれば特に制限なく使用することができ、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不織布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドなどのプラスチックからなるシートまたはフィルム、ウレタン、シリコンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴムなどの架橋ゴムからなるシートまたはフィルム、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、スチレン系ブロックコポリマー系などの熱可塑性エラストマーからなるシートまたはフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、屈曲性がある材料だけでなく、伸縮性を有する材料(例えばゴムや熱可塑性エラストマー)を基材として用いることにより、後記するような用途に導電体を適用できるようになる。伸縮性を有する材料としては、上記したエラストマー成分と同様のものを使用することができる。
本発明による導電体の層は、上記したように伸縮の繰り返しや伸ばした場合であっても、電気抵抗の安定性に優れているため、導体回路および配線以外にも、体外デバイス、体表デバイス、電子皮膚デバイス、体内デバイス等のウェアラブルデバイス用の導電体の形成、とりわけ生体電極に好適に用いることができる。また、導電体の層をフレキシブルプリント基板の電極に適用することもできる。さらに、本発明の導電性組成物は、アクチュエーター電極等の導電体の層を形成するのにも適している。また、従来は伸縮性や電気抵抗の安定性が足りずに実現が困難であったデザインの導電体の形成にも適している。例えば、以下のようなものが挙げられる。
<ウェアラブル生体センサー>
人間を含めた動植物から発生する活動電位/生体情報を取得/伝達する為に身に着けるウェアラブル生体センサー用配線材料として、本発明の導電体を適用することができる。センサーの装着箇所は、人間を含めた動植物の表層組織に密着ないしは近接する場所であることが必須となるが、表層組織は伸び縮みが発生する。従来の硬質基板やフレキシブル基板では、伸び縮みする装着箇所への追従性が無く、センサーの装着箇所も限定的となり、結果として得られる生体情報も限られていた。本発明の導電体によれば、人間を含めた動植物の表層組織にもセンサー用配線材料を適用できるため、伸び縮みが発生する箇所にも装着可能なウェアラブル生体センサーとすることができる。
ウェアラブル生体センサーに使う配線は、スクリーン印刷或いはディスペンス工法によって配線形成が可能であることから、信号配線の微細化も可能となり、センサーデバイスの小型化に寄与すると考えられる。
<スマートテキスタイル用配線材料>
近年、布帛生地をセンサーとして用いるいわゆる「スマートテキスタイル」という分野広がりを見せつつある。本発明の導電体を用いて伸縮性があり熱圧着等が可能な基材上に配線形成を行なった配線板ないしセンサーは、伸縮時での電気抵抗の安定性に優れているため、伸縮性を持つ布帛生地の表面に貼りつけることで、エレクトロニクス・デバイスの機能を持った布帛生地、すなわちスマートテキスタイルの開発が可能となる。スマートテキスタイルとしては、感圧センサーやタッチセンサー、アンテナ配線等の機能を布帛生地に付与することができる。
<3D造形成形品用配線>
従来のFIM(フィルム・インサート・モールド成型)工法による電子機器の筐体等向けのプラスチック成型品では、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムをベース基材とし、意匠印刷の後、熱プレス加工したものが採用されている。本発明の導電体を伸縮性の基材上に設けた積層構造体からなる導体配線は伸長時の断線が無く、抵抗値変化が抑制されている特性を持つため、プラスチック成型品の意匠印刷時に導体配線を形成し、その後の熱プレス(部分的に伸びが発生)による成型加工を行なうことで3D形状の配線を内蔵したエレクトロニクス・デバイスを実現することができる。
また、上記したようなエラストマー等のような伸縮性の基材を用いて熱プレス加工を行なうことで、柔らかい筐体内に柔らかい配線を備えた伸縮変形可能なエレクトロニクス・デバイスを実現することができる。感圧センサーやタッチセンサー、またはアンテナ配線用等として好適に利用することができる。
<伸縮変形可能な配線シートないし配線基板>
本発明の導電体の層を伸縮性の基材上に設けた積層構造体からなる導体配線は、伸縮変形可能な配線板シートとして利用することができる。例えば、このような導体配線を成型加工品などの立体的形状を持つ対象物の表面へ、配線の断線を発生させること無く、伸張ないし変形させながら対象物に貼りつけることが可能となる。したがって、本発明の導電体の層を伸縮性の基材上に設けた積層構造体は、感圧センサーやタッチセンサー、またはアンテナ配線用として好適に利用することができる。
<フレキシブル配線シートないし配線基板>
従来の導電性ペーストを使ったフレキシブル配線シートないし配線基板では、爪折りという極端な折り曲げを行なった際、配線の断線が発生するという事象が発生する。この点本発明の導電体を使用した場合、伸び特性を持たせた導電材料であることから、これまでの導電ペーストでは対応仕切れなかった領域の折り曲げ性にも対応することができ、爪折り時でも、配線の断線は発生しないフレキシブル配線シートないし配線基板を実現することができる。
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
<銀粉の準備>
導電性組成物を調製するための銀粉として、以下の4種の銀粉を準備した。
銀粉A:平均一次粒子径0.3μm、みかけ空隙率が92%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
銀粉B:平均一次粒子径0.5μm、みかけ空隙率が83%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
銀粉C:平均一次粒子径1.4μm、みかけ空隙率が46%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
銀粉:平均一次粒子径1.4μm、みかけ空隙率が69%の銀粉であって、リノレン酸で表面処理が施されたもの。
なお、各銀粉の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−6360L)を用いて10,000倍にて銀粉を観察し、ランダムに抽出した10個の銀粉粒子の粒子径を測定し、その平均値とした。
また、各銀粉のみかけ空隙率Pは以下のようにして算出した。すなわち、銀粉を円筒状の容器に充填し、容器を数回振動させて第1の銀粉または第2の銀粉の上面が一定の高さになるまで銀粉を補充し、容器に充填された銀粉の量をM(g)とし、容器内径にあわせた外径を有する円柱を用いて銀粉の上面に1kg重の荷重をかけ、1時間放置した後の銀粉の体積(円筒状容器の底面積と、容器底から銀粉の上面までの高さの積)をV(cm)として、ρ=M/Vで定義されるみかけ密度ρ(g/cm)を算出し、銀の真密度ρ(10.49g/cm)を用いて、下記式:
P=(1−ρ/ρ)×100
で表される銀粉のみかけ空隙率P(%)を算出した。
<導電性組成物の調製>
導電性組成物を調製するためのエラストマーとして、以下の2種を準備した。また、比較のため非エラストマーとしてポリエステルを準備した。
・エラストマーA(クラレ株式会社製、LA2330)
・エラストマーB(クラレ株式会社製、LA2250)
・ポリエステルC(東洋紡株式会社製、バイロン290)
上記したエラストマーAおよびBについては、エラストマーをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて、固形分50質量%となるように樹脂溶液を調製した。また、ポリエステルCについては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させて、固形分30質量%となるように樹脂溶液を調製した。
上記した銀粉とエラストマーまたはポリエステルの樹脂溶液とを、下記表1に示した組成に従って配合し、攪拌機にて予備撹拌混合した後、3本ロールミル(EXAKT社製、EXAKT50)を用いて、3本ロールミルの混練回数、回転速度、ロール間隔等の条件を変えて混練することで、実施形態に係る導電性組成物を得た。なお、表1中、エラストマーまたはポリエステル、銀粉の配合量の数値は質量部を表す。
得られた導電性組成物中に含まれる銀粉の二次粒子D50粒子径を測定した。D50粒子径は以下のようにして行った。先ず、導電性組成物を3000質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで希釈して溶液を調製した。当該溶液を、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、TM3000)を用いて、溶媒の屈折率を1.40として、0.020μm〜1000.00μmの測定範囲で、反射モードにて粒度分布の測定を行い、当該粒度分布から、累積50%の粒子径を求め、D50粒子径とした。
<導電性組成物の評価>
(1)比抵抗の測定
各導電性組成物を、基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して導電体を得た。基材としては、PETフィルムを使用した。得られた導電体の両端の抵抗値を4端子法で測定し、さらに線幅、線長および厚さを測定し、比抵抗(体積抵抗率)を求め、以下の評価基準に基づいて、導電体の伸張時の導電性を評価した。
○:比抵抗が1×10−4Ω・cm以下
×:比抵抗が1×10−4Ω・cm超
結果は表1に示されるとおりであった。
(2)伸張時の導電性
各導電性組成物を、基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して、線幅1mm、厚さ20μm、長さ40mmの導電体を基材上に形成した。基材としては、ウレタンフィルム(武田産業株式会社製、TG88−I、厚さ70μm)を使用した。導電体を5mm/秒の速度で所定の伸張度となるまで伸張した後、その状態で15秒保持し導電体の比抵抗(体積抵抗率)を測定し、以下の評価基準に基づいて、導電体の伸張時の導電性を評価した。
◎:10%伸張時の体積抵抗率が1.0×E−04Ω・cm以下
○:5%伸張時の体積抵抗率が1.0×E−04Ω・cm以下
×:5%伸張時の体積抵抗率が1.0×E−04Ω・cm超
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
(3)50%伸縮試験での断線の有無
各導電性組成物を、基材にスクリーン印刷で塗布し、80℃で30分間熱処理して、線幅1mm、厚さ20μm、長さ40mmの導電体を基材上に形成した。基材としては、ウレタンフィルム(武田産業株式会社製、TG88−I、厚さ70μm)を使用した。0%の非伸縮状態から50%の伸縮を700秒かけて100往復繰り返し、断線の有無を評価した。評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
Figure 2020132756
表1に示す結果から明らかなように、銀粉として、平均一次粒径が1.0μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である銀粉、および平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である銀粉をエラストマーに配合した導電性組成物(実施例1〜7)は、伸張前の初期電気抵抗値が低く、且つ伸張時にも電気抵抗値の安定性に優れた導電性を有する導電体を得ることができることが分かる。
一方、銀粉として、平均一次粒径が1.0μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である銀粉のみをエラストマーに配合した導電性組成物(比較例1、3)は、伸張前の初期電気抵抗値は低いものの、伸張時の電気導電性が低いことがわかる。また、平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である銀粉のみをエラストマーに配合した導電性組成物(比較例2、4)は、伸張前の初期電気抵抗値が低高く、伸張時の電気導電性も低いことがわかる。さらに、平均一次粒径が1.0μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である銀粉、および平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である銀粉をエラストマーに配合した導電性組成物であっても、平均一次粒径が1.0μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である銀粉の配合割合が少なすぎると(比較例5)、伸張前の初期電気抵抗値が低高く、伸張時の電気導電性も低いことがわかる。
さらに、エラストマーに代えてポリエステルを使用した導電性組成物(比較例6)は、銀粉として、平均一次粒径が1.0μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である銀粉、および平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である銀粉を使用しても、初期の導電性は良好であるものの、伸縮の繰り返しや伸ばした場合に、導電性が急激に低下してしまうことが分かる。

Claims (7)

  1. エラストマーと銀粉とを含む導電性組成物であって、
    前記銀粉が、平均一次粒子径が1μm以下であり、且つみかけ空隙率が70〜95%である第1の銀粉と、平均一次粒子径が1μm超であり、且つみかけ空隙率が70%未満である第2の銀粉とを含み、
    前記第1の銀粉と前記第2の銀粉とが、質量基準において10:90〜90:10の割合で含まれていることを特徴とする、導電性組成物。
  2. 前記銀粉が、導電性組成物全体に対して固形分量で60〜95質量%含まれる、請求項1に記載の導電性組成物。
  3. 前記エラストマーが、メチル(メタ)アクリレート単位およびスチレン単位からなる群より選択されるハードセグメントと、n−ブチルアクリレートおよびブタジエン単位からなる群より選択されるソフトセグメントとを有するブロック共重合体である、請求項1または2に記載の導電性組成物。
  4. 前記ブロック共重合体において、前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの比率が20:80〜50:50の範囲である、請求項3に記載の導電性組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性組成物を固化させてなることを特徴とする、導電体。
  6. 基材上に、請求項5に記載の導電体の層を有することを特徴とする、積層構造体。
  7. 請求項5に記載の導電体の層または請求項6に記載の積層構造体を備えてなることを特徴とする、電子部品。
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