JP2020132628A - コバルトナノ粒子触媒によるヒドロシリル化反応 - Google Patents

コバルトナノ粒子触媒によるヒドロシリル化反応 Download PDF

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Abstract

【課題】貴金属を用いることなく不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させ、効率的に有機ケイ素化合物を製造する方法を提供する。【解決手段】下記反応式で示すように、不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、ヒドロシリル化工程が、コバルトナノ粒子触媒の存在下で行われることを特徴とする、有機ケイ素化合物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、コバルトナノ粒子触媒によるヒドロシリル化反応に関する。
アルケン類やアルキン類の不飽和化合物のヒドロシリル化反応は、化学工業上最も有用な反応の1つである。得られる有機ケイ素化合物(アルキルシラン又はアルケニルシラン)は、化粧品、潤滑剤、接着剤、封止剤及びシリコーン系コーティング剤製造用の原材料等として様々な分野で用いられるとともに、檜山クロスカップリング反応原料となるなど、有機合成上有用なビルディングブロックである。
アルケン類やアルキン類の不飽和化合物のヒドロシリル化反応としては、例えば、非特許文献1には、0.5〜1mol%のゾルゲル封入ハイブリッド触媒Siliacat
Pt(0)が、穏やかな条件下でオレフィンのヒドロシリル化を触媒することが報告されている。
また、非特許文献2には、室温の水中でのNaBHによるRhClの還元により調製された、窒素リッチなポリオキシエチレン化誘導体によって安定化された、形態およびサイズ制御可能なロジウムナノ粒子が、内部アルキンおよびジインの立体選択的ヒドロシリル化のための効果的かつリサイクル可能な触媒であり、広範囲の基質に対して定量的収率で(E)−ビニルシランを与えることが報告されている。
また、非特許文献3には、ナノポーラスAuPd合金触媒が、ヒドロシランによる共役環状エノンの1,4−ヒドロシリル化において、Au及びPdの単金属ナノポーラス触媒に比較して、優れた化学選択性と高い触媒活性を示すことが報告されている。
非特許文献4には、コバルト触媒による、アルキンの、高度に化学、位置および立体選択的なマルコフニコフヒドロシリル化が報告されている。具体的には、ビニルシランとヨウ化アリールとのHiyama−Denmarkクロスカップリング反応が円滑に進行し、1,1−ジアリールエテンが得られたことが報告されている。この反応は、強力な還元剤であり取扱いの難しいNaHBEtを用いており、また、触媒の合成方法も複雑である。
このように、従来、アルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応には、触媒として白金やロジウム等の貴金属が用いられたり、特殊な配位子や複雑な合成経路を必要とする触媒が用いられたりすることが一般的である。
一方、特許文献1には、白金やロジウムのような貴金属ではなく、鉄を用い、表面に溶媒が配位した鉄含有ナノ粒子触媒によるアルケン類やアルキン類のヒドロシリル化反応が開示されている。
特開2015−129103号公報
R. Ciriminna, V. Pandarus, G. Gingras, F. Beland, and M. Pagliaro, ACS Sustainable. Chem. Eng., 2013, 1, 249. W. Guo, R. Pleixats, A. Shafir, T. Parella, Adv. Synth. Catal., 2015, 357, 89. Q. Chen, S. Tanaka, T. Fujita, L. Chen, T. Minato, Y. Ishikawa, M. Chen, N. Asao, Y. Yamamoto, T. Jin,Chem. Commun., 2014, 50, 3344. J. Guo, Z. Lu, Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 10835.
本発明者らの研究によると、特許文献1の鉄含有ナノ粒子を用いると、ヒドロシリル化反応は進行するが、反応時間が比較的長く、また、アルキンのヒドロシリル化反応において、基質によっては収率が低い場合があり、改善の余地があることがわかった。
上記に鑑み、本発明は、貴金属を用いることなく不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させ、効率的に有機ケイ素化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、不飽和化合物とヒドロシラン類とを、コバルトナノ粒子触媒の存在下で反応させることにより、効率的に有機ケイ素化合物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の実施形態には以下が含まれる。
[1] 不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、
前記ヒドロシリル化工程が、コバルトナノ粒子触媒の存在下で行われることを特徴とする、有機ケイ素化合物の製造方法。
[2] 前記不飽和化合物が式(A)で表されるアルケン類又は式(B)で表されるアルキン類である、[1]に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。

(式(A)及び(B)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
[3] 前記ヒドロシラン類が、下記式(C−1)で表される化合物である、[1]又は[2]に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。

(式(C−1)中、Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;ケイ素数1〜50の(ポリ)シロキシ基;炭素数1〜20のアルコキシ基;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
[4] 前記コバルトナノ粒子触媒が、コバルトナノ粒子触媒表面に配位性有機溶媒が配
位してなるコバルトナノ粒子触媒である、[1]〜[3]の何れかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
[5] 前記配位性有機溶媒が、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、[1]〜[4]の何れかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
[6] 前記ヒドロシリル化工程が、溶媒の存在下で行われる、[1]〜[5]の何れかに記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
[7] 前記溶媒がシクロペンチルメチルエーテルである、[6]に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
本発明によれば、貴金属を用いることなく不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させ、効率的に有機ケイ素化合物を製造する方法が提供される。
以下、本発明の有機ケイ素化合物の製造方法について説明する。
本発明の有機ケイ素化合物の製造方法の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
本実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法は、不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、前記ヒドロシリル化工程が、コバルトナノ粒子触媒の存在下で行われることを特徴とする。すなわち、本発明の有機ケイ素化合物の製造方法は、コバルトナノ粒子触媒を用いてヒドロシリル化反応により不飽和炭化水素と有機シランを結合させる方法である。
前述のように、アルケン類やアルキン類等の不飽和化合物のヒドロシリル化反応は、触媒として白金等の貴金属を用いたり、特殊な配位子や複雑な合成経路で作られた触媒を用いたり、扱いが難しい試薬を用いることが一般的であり、コストや操作性の観点から改善の余地がある。
本発明者らは、比較的毒性が低く安価なコバルトのナノ粒子が不飽和化合物のヒドロシリル化反応の触媒として好適であり、触媒回転数が高いため、少量の触媒で反応を進行させることができるという知見を得た。そして、これを用いることにより有機ケイ素化合物を効率良く、安価に製造することができることを見出したのである。さらに、シクロペンチルメチルエーテルを溶媒として加えることで収率を向上させることができることを見出した。本発明は、操作手順が簡便であり、また、触媒合成からヒドロシリル化反応まで、すべて比較的安価で扱いやすい試薬で反応を進行させることが可能である。よって、本発明はコスト削減及び合成の際の安全性の向上が期待され、また、鉄含有ナノ粒子等に比較して、短い反応時間で、有機ケイ素化合物を製造することが出来る。
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
1.有機ケイ素化合物
本発明の製造方法における有機ケイ素化合物は、炭素−ケイ素結合(C−Si)を少なくとも有する有機化合物であれば、具体的な構造は特に限定されず、幅広い有機ケイ素化合物に適用することができる。
具体的には、下記式(D)〜(I)の何れかで表される化合物が挙げられる。

式(D)〜(I)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;ケイ素数1〜50の(ポリ)シロキシ基;炭素数1〜20のアルコキシ基;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。
即ち、上記式(D)、(E)で表される化合物は、アルケン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物であり、anti−Markovnikov型の生成物を選択的に製造することも可能である。また、上記式(F)〜(I)で表される化合物は、アルキン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物である。また、SiR 基が付加する位置は特に限定されず、さらにアルキン類とヒドロシラン類との反応によって得られる有機ケイ素化合物は、Z体、E体、Z体とE体の混合物の何れであってもよいことを意味する。
(R〜R
〜Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」とは、クロロ基(−Cl)、フルオロ基(−F)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、エポキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(−C(=O)−)、tert−ブチルジメチルシリル基(−SiBuMe)、アジ基(−N)等の窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含む官能基を含んでいてもよいことを意味するほか、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)等の窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子を含む連結基を炭素骨格の内部に含んでいてもよいことを意味する。
〜Rが炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは19以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。なお、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよいが、例えばRとRが連結してシクロヘプタン構造、シクロヘプテン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘキセン
構造等を形成していることが挙げられる。
〜Rが炭化水素基である場合の炭化水素基が含んでいてもよい官能基としては、クロロ基(−Cl)、フルオロ基(−F)、アミノ基(−NH)、ニトロ基(−NO)、エポキシ基、ヒドロキシル基(−OH)、カルボニル基(−C(=O)−)、tert−ブチルジメチルシリル基(−SiBuMe)、アジ基(−N)等が挙げられる。
また、R〜Rが炭化水素基である場合、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なR〜Rとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アミノメチル基、N,N−ジメチルアミノメチル基、N,N−ジエチルアミノメチル基、メチルカルボニルエチル基、メチルカルボニルプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルへキシル基、メチルヘプチル基、ジメチルプロピル基、ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルへキシル基、ジメチルヘプチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルへキシル基、フェニルヘプチル基等が挙げられる。
(R
はそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;ケイ素数1〜50の(ポリ)シロキシ基;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表しているが、「窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい」については、R〜Rと同義である。
が炭化水素基である場合の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは19以下、より好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
がアルコキシ基である場合の炭素数は、好ましくは10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
がポリシロキシ基である場合のケイ素数は、通常2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上であり、好ましくは48以下、より好ましくは46以下、さらに好ましくは45以下である。
また、Rが炭化水素基である場合、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
がアルコキシ基である場合、直鎖状のアルコキシ基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素−炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよい(分岐構造、環状構造、及び炭素−炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
具体的なRとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ポリメチルシロキシ基等が挙げられる。
としては、水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が好ましく、水素原子及びフェニル基がより好ましい。
2.有機ケイ素化合物の製造方法
本実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法は、不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、前記ヒドロシリル化工程が、コバルトナノ粒子触媒の存在下で行われることを特徴とする。
2−1.基質
(不飽和化合物)
ヒドロシリル化工程において使用する不飽和化合物の具体的種類は、特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択されるべきである。基本的に製造目的である有機ケイ素化合物と共通の構造を有する不飽和化合物を選択すべきであり、例えば、下記式(A)で表されるアルケン類が、下記式(B)で表されるアルキン類が挙げられる。なお、本発明の製造方法に用いられる不飽和化合物は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。

式(A)及び(B)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
〜Rは、式(D)〜(I)のものと同義である。
式(A)で表される化合物としては、R=R=R=水素原子である下記式(A−1)で表される化合物が特に好ましく挙げられる。

(式(A−1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
具体的な式(A−1)で表される化合物としては、1−プロペン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−オクテン、1−デセン、4−フェニル−1−ブテン、6,6−ジメチル−1−ヘプテン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、スチレン、N,N−ジメチルアリルアミン、5−ヘキセン−2−オン等が挙げられる。
また、アルキン類としては、ジフェニルアセチレン、1−フェニル−1−プロピン、4−オクチン、フェニルアセチレンがより好ましく、4−オクチンが特に好ましく挙げられる。
(ヒドロシラン類)
ヒドロシリル化工程において使用する「ヒドロシラン類」とはケイ素−水素結合(Si
−H)を少なくとも1つ有する化合物であり、その具体的種類は特に限定されず、製造目的である有機ケイ素化合物に応じて適宜選択されるべきである。また、ヒドロシラン類は、公知であるか、公知の製造方法に準じた方法により容易に製造し得るものである。
ヒドロシラン類としては、下記式(C−1)で表される化合物が挙げられる。

(式(C−1)中、Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;ケイ素数1〜50の(ポリ)シロキシ基;炭素数1〜20のアルコキシ基;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
は、式(D)〜(I)のものと同義である。
は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
式(C−1)で表されるヒドロシラン類は、第一級ヒドロシランであってもよく、第二級ヒドロシランであってもよく、第三級ヒドロシランであってもよい。
不飽和化合物がアルケン類の場合、Rは水素、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が好ましく、水素及び炭素原子数1〜20の炭化水素基がより好ましい。
不飽和化合物がアルキン類の場合、好ましくは第一級又は二級ヒドロシランであり、より好ましくはRが水素、炭素原子数1〜20の炭化水素基及び/又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基である第一級又は二級ヒドロシランであり、さらに好ましくは、Rが水素及び炭素原子数1〜20の炭化水素基である第一級ヒドロシランである。
式(C−1)で表される具体的なヒドロシラン類としては、メチルシラン、エチルシラン、ペンチルシラン、ヘキシルシラン、オクチルシラン、フェニルシラン、ナフチルシラン、アントリルシラン、デシルシラン、ジエチルシラン、ジフェニルシラン、メチルフェニルシラン、ジメチルフェニルシラン、ジエチルフェニルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン等が挙げられる。
2−2.コバルトナノ粒子触媒
本実施形態におけるコバルトナノ粒子触媒は、コバルトナノ粒子の表面に配位性有機溶媒が配位してなる触媒である。コバルトナノ粒子触媒は、ヒドロシリル化工程に使用した後、回収して触媒として再利用することができる利点がある。また、コバルトナノ粒子の表面に配位している配位性有機溶媒が、コバルトナノ粒子を劣化から保護し、触媒活性を維持されると考えられる。
「コバルトナノ粒子」とは、コバルト元素を構成元素として含む粒子を意味する。従って、コバルトを含むものであれば具体的な組成は特に限定されず、金属コバルト粒子の他、コバルト合金粒子、金属コバルト粒子に酸素原子や炭素原子等のその他の原子がドープされている粒子、又は酸化コバルト等の無機コバルト化合物粒子等も含まれる。
コバルトナノ粒子の粒子径(累積中位径(Median径))は、0.1〜100nmの範囲であれば特に限定されないが、好ましくは0.5nm以上であり、好ましくは4nm以下、より好ましくは3nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。なお、累積中
位径(Median径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)などの電子顕微鏡で測定することができる。
また、「表面に配位性有機溶媒が配位した」とは、コバルトナノ粒子の表面に配位性有機溶媒の分子が配位していることを意味する。
コバルトナノ粒子に配位する配位性有機溶媒は、目的の反応に合わせて適宜選択することができる。また、配位性有機溶媒がコバルトナノ粒子に配位しているか否かについては、分散剤等による表面処理を施すことなく、コバルトナノ粒子触媒が配位性有機溶媒中に安定的に分散するか否かで判断することができる。即ち、例えば配位性有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)が配位したコバルトナノ粒子触媒は、DMFと親和性のある配位性有機溶媒に安定的に分散させることができる。
配位性有機溶媒としては、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びヘキサメチルホスホリックトリアミド等が挙げられる。触媒活性の観点から、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
コバルトナノ粒子触媒の調製方法は、特に限定されないが、配位性有機溶媒を含む溶媒中でコバルト化合物を加熱還流することにより簡便に製造でき、具体的には、特開2014−73981号公報に記載の方法で調製することができる。
2−3.ヒドロシリル化工程における反応条件
ヒドロシリル化工程は、コバルトナノ粒子触媒の存在下、不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させることにより行われる。
(溶媒)
本実施形態におけるヒドロシリル化工程は、溶媒を使用しても、使用しなくてもよいが、使用する場合の具体的な溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジグリム、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のプロトン性極性溶媒、アセトン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
溶媒としては、副反応の抑制及び収率の向上の観点から、エーテル系溶媒が好ましく、1,4−ジオキサン、ジグリム、及びシクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましく、シクロペンチルメチルエーテルが特に好ましい。
(基質のモル比)
ヒドロシリル化工程における不飽和化合物とヒドロシラン類の使用量(仕込量)は、目的に応じて適宜変更することができるが、ヒドロシラン類の使用量(仕込量)は、アルケン類及び/又はアルキン類の使用量(仕込量)1.0当量に対して、通常1.0当量以上、好ましくは2当量以上、より好ましくは3当量以上であり、通常50当量以下、好ましくは20当量以下、より好ましくは10当量以下である。上記範囲内であると、有機ケイ素化合物をより収率良く製造することができる。
(触媒量)
ヒドロシリル化工程における表面に溶媒が配位したコバルトナノ粒子触媒の使用量(仕込量)は、特に限定されないが、不飽和化合物に対してコバルト元素の物質量換算で、0.01mol%以上、好ましくは0.05mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上、また、通常5.0mol%以下、より好ましくは3.0mol%以下、さらに好ましくは1.0mol%以下である。前記範囲内であると、より効率良く有機ケイ素化合物を生成することができる。
(反応温度)
反応温度は、特に限定されないが、通常50℃以上150℃以下である。反応温度の下限は、有機ケイ素化合物の収率の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上である。また、反応温度の上限は、副反応抑制の観点から、好ましくは145℃以下、より好ましくは140℃以下である。特に、反応温度を100℃以上120℃以下とすることで、有機ケイ素化合物の収率が向上するとともに、副反応が抑制される点で好ましい。
(反応時間)
反応時間は、特に限定されないが、通常1時間以上16時間未満である。有機ケイ素化合物の収率向上の観点から、反応時間の下限は、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上である。また、副反応を抑制し、また精製が容易となる点で、第一級ヒドロシランを用いる場合の反応時間の上限は、好ましくは14時間以下、より好ましくは12時間以下である。第二級ヒドロシランを用いる場合の反応時間の上限は、好ましくは28時間以下、より好ましくは24時間以下である。第三級ヒドロシランを用いる場合の反応時間の上限は、好ましくは30時間以下、より好ましくは24時間以下である。副反応としては、例えば、アルキン類のヒドロシリル化は時間に比例して起こるため、反応時間が長くなると、反応開始後速やかに生成したモノシリル生成物が再度ヒドロシリル化することが推察される。このため、上記範囲内であると、目的の有機ケイ素化合物をより効率良く製造することが出来る。
(雰囲気ガス等)
ヒドロシリル化工程は、常圧下で行ってもよく、加圧下で行ってもよい。また、ヒドロシリル化工程は、厳密な禁水条件は必要としないが、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
2−4.その他工程
本実施形態に係る有機ケイ素化合物の製造方法においては、上記ヒドロシリル化工程の他、任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、有機ケイ素化合物の純度を高めるための精製工程が挙げられる。精製工程においては、ろ過、吸着、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の有機合成分野で通常行われる精製方法を採用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、実施例におけるガスクロマトグラフィー(GC−MS)の測定方法は、以下の通りである。
<GC−MSの測定方法>
(GC−MS測定条件)
ガスクロマトグラフ:GC2010 GC−MS QP2010(製造元:株式会社
島津製作所)
カラム:BP5(製造元:SGE Analytical Science、内径:0.22mm、膜厚:0.25μm、長さ:25m)
キャリアガス:He(カラム流量0.98mL/min)
カラム温度条件:40℃で4分保持後、15℃/分で280℃まで昇温
イオン源温度:200℃
インターフェース温度:280℃
注入温度:280℃
注入量:1μL 注入モード:スプリット
イオン化法:EI法
内部標準物質:ノナン
検出器:コンバージョン・ダイノード付き二次電子増倍管
[合成例1:コバルトナノ粒子触媒の合成]
サンプル管にアセチルアセトンコバルト(III)を0.2mmol量りとり、そこに、水2mLと塩酸2滴を加え、完全に溶けるまで放置して、コバルト前駆体溶液を調製した。
メスシリンダーをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で共洗いし、さらに、500mLの三つ口丸底フラスコに攪拌子を入れ、当該攪拌子を回転させながら三つ口フラスコの内面をよくDMFで共洗いした。そして、空気雰囲気のもと、上記メスシリンダーでDMF50mLを量りとり、三つ口丸底フラスコに移した。次いで、140℃、1500rpmで攪拌子を回転させながら、5分間三つ口丸底フラスコを予備加熱した。その後、ここに、0.1モル濃度(0.1M)のコバルト前駆体溶液を500μL加え、10時間還流し、コバルトナノ粒子(CoNPs)の高分散溶液を得た。
[合成例2:鉄ナノ粒子触媒の合成]
サンプル管にアセチルアセトン鉄(III)を0.2mmol量りとり、そこに、エタノール2mLを加え、完全に溶けるまで放置して、鉄前駆体溶液を調製した。
メスシリンダーをDMFで共洗いし、さらに、500mLの三つ口丸底フラスコに攪拌子を入れ、当該攪拌子を回転させながら三つ口フラスコの内面をよくDMFで共洗いした。そして、空気雰囲気のもと、上記メスシリンダーでDMF50mLを量りとり、三つ口丸底フラスコに移した。次いで、140℃、1500rpmで攪拌子を回転させながら、5分間三つ口丸底フラスコを予備加熱した。その後、ここに、0.1モル濃度(0.1M)の鉄前駆体溶液を500μL加え、10時間還流し、鉄ナノ粒子(FeNPs)の高分散溶液を得た。
[合成例3:銅ナノ粒子触媒の合成]
塩化銅(II)0.2mmolを量りとり、そこに、水2mLを加え、完全に溶けるまで放置して、銅前駆体溶液を調製した。
メスシリンダーをDMFで共洗いし、さらに、500mLの三つ口丸底フラスコに攪拌子を入れ、当該攪拌子を回転させながら三つ口フラスコの内面をよくDMFで共洗いした。そして、空気雰囲気のもと、上記メスシリンダーでDMF50mLを量りとり、三つ口丸底フラスコに移した。次いで、140℃、1500rpmで攪拌子を回転させながら、5分間三つ口丸底フラスコを予備加熱した。その後、ここに、0.1モル濃度(0.1M)の銅前駆体水溶液を500μL加え、10時間還流し銅ナノ粒子(CuNPs)の高分散溶液を得た。
[実施例1:触媒の検討]
後述する1−デセンに対してコバルト元素の物質量が0.1mol%となるように、合成例1で調製したCoNPsの分散液0.5mLをシュレンク管に投入して、ロータリー
エバポレーター(20hPa,80℃)を用いてDMFを留去し、シュレンク管を真空ラインに接続して、壁面についている液体を留去した。
次に、ホットスターラーを100℃に設定し、シュレンク管に撹拌子を投入し、シュレンク管の口に風船が付いている二方コックを取り付けた後、シュレンク管内をアルゴン置換した。シュレンク管内を真空・アルゴン導入を3回繰り返すことによってアルゴン雰囲気とした。
続いて、シリンジを使って1−デセン(0.5mmol)、フェニルシラン(3mmol)、シクロペンチルメチルエーテル(1mL)を投入して、溶液が壁面に飛び散らない程度にスターラーで強撹拌し、100℃で8時間反応させた。
その後、シュレンク管を氷冷し、ヘキサン10mLを加えて反応を停止させた。
ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)、NMRで分析した結果、下記式の化合物3が生成していることが確認された。化合物3のNMR測定結果は次の通りであった。化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表1に示す。なお、表1には、鉄ナノ粒子(FeNPs)触媒又は銅ナノ粒子(CuNPs)触媒を用いた場合の結果を比較例1−1、比較例1−2として併せて記した。
(化合物3のNMR測定結果)
H−NMR (CDCl) δ:7.56−7.41(m,5H),4.32(t,J=3.7Hz,2H),1.49−1.35(m,16H),0.99−0.90(m,5H).
表1に示した結果から、コバルトナノ粒子触媒の存在下、1−デセンのヒドロシリル化反応が進行し、さらに、鉄ナノ粒子触媒及び銅ナノ粒子触媒を用いる場合よりも、高い収率でデシルフェニルシランが得られることがわかった。
[実施例2−1〜2−3:溶媒の検討]
溶媒を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、反応を行った。溶媒、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表2に示す。
表2に示した結果から、反応溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルを用いることにより、非常に高い収率でデシルフェニルシランが得られることがわかった。
[実施例3−1〜3−3:反応時間の検討]
反応時間を表3の通りに変更した以外は実施例1と同様の方法により、反応を行った。反応時間、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表3に示す。
表3に示した結果から、反応時間4時間、8時間、12時間で、デシルフェニルシランが66%〜84%という高収率で得られたことがわかる。このことから、コバルトナノ粒子を用いることにより、アルケン類のヒドロシリル化反応において、短時間で、効率良く有機ケイ素化合物を製造できることが示された。
[実施例4−1〜4−2:反応温度の検討]
反応温度を表4の通りに変更した以外は実施例1と同様の方法により、反応を行った。反応温度、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表4に示す。
表4に示した結果から、反応温度が高くなるほど不飽和化合物である1−デセン及びヒドロシラン類であるフェニルシランの転化率が大きくなり、デシルフェニルシランの収率も向上することわかった。また、100℃で収率84%を達成できることが示された。
[実施例5−1〜5−3:基質の検討]
化合物1、2を表5の通りに変更し、反応温度を120℃、反応時間を24時間とした以外は、実施例1と同様の方法により、反応を行った。反応生成物から、加熱真空留去、シリカゲルカラムによって基質や副生成物、ナノ粒子触媒を除去し、化合物3を単離した。化合物1及び2の転化率並びに化合物3の単離収率を表5に示す。
表5に示した結果から、ヒドロシラン類として第2級ヒドロシラン、第3級ヒドロシランを用いた場合にも、1−デセンのヒドロシリル化反応が進行し、デシルフェニルシランが得られることがわかった。すなわち、コバルトナノ粒子触媒の存在下、第1級ヒドロシランのみならず、第2級ヒドロシラン、第3級ヒドロシランを基質としてアルケン類のヒドロシリル化反応が進行し、有機ケイ素化合物が得られることが示された。また、アルケン類として官能基を含む炭化水素基を有するアルケンを用いた場合にも、コバルトナノ粒子触媒の存在下、ヒドロシリル化反応が進行し、高い収率で有機ケイ素化合物が得られることがわかった。
[実施例6、比較例6−1〜6−2:触媒の検討]
不飽和化合物を4−オクチン0.5mmolに変更した以外は実施例1と同様の方法により、反応を行った。化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表6に示す。また、化合物3のNMR測定結果は次の通りであった。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.58-7.24 (m, 5H), 6.20 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 4.58 (s, 2H), 2.15-2.13 (m, 4H), 1.54-1.35 (m, 4H), 0.92-0.83 (m, 6H).
比較例6−1として、触媒を合成例2で得られた鉄ナノ粒子触媒に変更した以外は実施例6と同様の方法で反応を行った。化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表6に示す。
比較例6−2として、触媒を合成例3で得られた銅ナノ粒子触媒に変更した以外は実施例6と同様の方法で反応を行った。化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表6に示す。
表6に示した結果から、コバルトナノ粒子触媒の存在下、4−オクチンのヒドロシリル化反応が進行し、鉄ナノ粒子触媒及び銅ナノ粒子触媒を用いる場合よりも、高い収率で4−(フェニルシリル)−4−オクテンが得られることがわかった。
なお、4−オクチンのヒドロシリル化では、副生成物として、ジフェニルシラン、4−オクチンに4−(フェニルシリル)−4−オクテンとフェニルシランとの反応生成物が見られた。これは、フェニルシランがナノ粒子に大量に配位し、その後、アルキンが配位することにより、ナノ粒子に先に配位したフェニルシラン同士が反応してジフェニルシランが生成すると推察される。また、アルキンのヒドロシリル化反応は時間に比例して起こることから、反応開始後すぐに生成したモノシリル生成物について、さらにヒドロシリル化が起こることが推察される。
[実施例7−1〜7−3:溶媒の検討]
溶媒を表7の通りに変更した以外は、実施例6と同様の方法により、反応を行った。溶媒、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表7に示す。
表7に示した結果から、反応溶媒としてシクロペンチルメチルエーテルを用いることにより、副反応が抑制され、収率が向上することがわかった。
[実施例8−1〜8−3:反応時間の検討]
反応時間を表8の通りに変更した以外は、実施例6と同様の方法により、反応を行った。反応時間、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表8に示す。
表8に示した結果から、反応時間が長くなるほど不飽和化合物である1−オクチン及びヒドロシラン類であるフェニルシランの転化率は上昇する傾向があることがわかった。また、反応時間が8時間の場合のほうが12時間の場合よりも、4−(フェニルシリル)−4−オクテンの収率が高く、上述した通り、長時間反応させると副反応が進行することが推察され、コバルトナノ粒子を用いることにより、アルキン類のヒドロシリル化反応において、短時間で、効率良く有機ケイ素化合物を製造できることが示された。
[実施例9−1〜9−3:反応温度の検討]
反応温度を表9の通りに変更した以外は、実施例6と同様の方法により、反応を行った。反応時間、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表9に示す。
表9に示した結果から、反応温度が高くなるほど不飽和化合物である4−オクチン及びヒドロシラン類であるフェニルシランの転化率が大きくなり、4−(ジフェニルシリル)−4−オクテンの収率も向上することがわかった。
[実施例10:基質の検討]
化合物2を表10の通りに変更し、反応時間を24時間とした以外は、実施例6と同様の方法により、反応を行った。反応時間、化合物1及び2の転化率並びに化合物3の収率を表10に示す。
表10に示した結果から、ヒドロシラン類として第2級ヒドロシランを用いた場合にも、4−オクチンのヒドロシリル化反応が進行し、4−(ジフェニルシリル)−4−オクテンが得られることがわかった。すなわち、コバルトナノ粒子触媒の存在下、第1級ヒドロシランのみならず、第2級ヒドロシランとアルケン類のヒドロシリル化反応が進行し、有機ケイ素化合物が得られることが示された。
本発明によれば、比較的毒性が低く安価な原料を用い、簡便にヒドロシリル化反応を行い、有機ケイ素化合物を製造することが出来る。本発明の製造方法によって製造される有機シラン化合物は、例えば有機ケイ素化学工業における様々な原料として使用することができる。

Claims (7)

  1. 不飽和化合物とヒドロシラン類とを反応させるヒドロシリル化工程を含む有機ケイ素化合物の製造方法であって、
    前記ヒドロシリル化工程が、コバルトナノ粒子触媒の存在下で行われることを特徴とする、有機ケイ素化合物の製造方法。
  2. 前記不飽和化合物が式(A)で表されるアルケン類又は式(B)で表されるアルキン類である、請求項1に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。

    (式(A)及び(B)中、R〜Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。但し、R〜Rの2以上が炭化水素基である場合、2以上の炭化水素基が連結して環状構造を形成していてもよい。)
  3. 前記ヒドロシラン類が、下記式(C−1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。

    (式(C−1)中、Rはそれぞれ独立して水素原子;ハロゲン原子;ケイ素数1〜50の(ポリ)シロキシ基;炭素数1〜20のアルコキシ基;又は窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)
  4. 前記コバルトナノ粒子触媒が、コバルトナノ粒子触媒表面に配位性有機溶媒が配位してなるコバルトナノ粒子触媒である、請求項1〜3の何れか1項に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
  5. 前記配位性有機溶媒が、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1〜4の何れか1項に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
  6. 前記ヒドロシリル化工程が、溶媒の存在下で行われる、請求項1〜5の何れか1項に記
    載の有機ケイ素化合物の製造方法。
  7. 前記溶媒が1,4−ジオキサン、ジグリム、及びシクロペンチルメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項6に記載の有機ケイ素化合物の製造方法。
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