JP2020132454A - 熱線遮蔽構造体、熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間膜、及び合わせガラス - Google Patents

熱線遮蔽構造体、熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間膜、及び合わせガラス Download PDF

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Abstract

【課題】(A)熱線吸収膜及び(B)熱線反射膜を有する熱線遮蔽構造体であって、前記(A)熱線吸収膜が、(A−1)無機酸化物及び/又は色素、(A−2)酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤、及び(A−3)バインダー樹脂を含有する熱線吸収膜である熱線遮蔽構造体。【解決手段】本発明は、熱線遮蔽構造体の基本特性である熱線遮蔽性や低ヘイズ性、透明性、可視光透過性を損なうことなく、耐衝撃性や耐久性を改善するものである。これによって耐衝撃性や耐久性に劣る従来の熱線遮蔽構造体のみならず、今後の熱線遮蔽構造体に対しても、より優れた機能を付与することができ、従来にない熱線遮蔽構造体の提供を可能とするものである。【選択図】なし

Description

本発明は、太陽光の熱輻射によって生じる車両や建物の室内温度上昇を低減するために用いられる熱線遮蔽機能を有する熱線遮蔽構造体、それを用いた熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間体、透明機材用中間膜、及び合わせガラスに関するものである。
近年、省エネルギーや地球環境問題の観点から、空調機器の負荷を軽減することが求められている。例えば、住宅や自動車の分野では太陽光からの熱線を遮蔽できる熱線遮蔽性シート(フィルム)等を窓ガラスに添付する、または熱線遮蔽機能を有する中間層を2枚のガラスの間に担持するなどして室内や社内の温度上昇を抑えることが行われている。
窓部材に熱線遮蔽機能を付与する方法として、特許文献1ではガラスとガラスの間に担持された中間層に熱線遮蔽機能を付与することが提案されており、吸収性の熱線吸収材料を含有した熱可塑性樹脂を中間層として用いることが例示されている。しかしながら熱線吸収材料は可視域の光も吸収するために熱線遮熱性能向上のため含有量を増やすと可視光透過率が損なわれるといった課題があり、熱線吸収材料だけでは熱線遮蔽性能の著しい向上は困難である。
特許文献2には、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成され
る熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬
化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含
有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであって、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラ
ーを含有することを特徴とする熱線遮断フィルムが開示されている。しかしながら、熱線吸収層における蓄熱による熱割れを防ぐために、熱線吸収層に熱伝導フィラーを入れる必要があり、さらに表面粗さと最大断面高さを一定範囲内とすることにより放熱を促進している。そのため、熱伝導フィラーを配合する必要があると共に、複雑な構造を必要とするため、コスト的に不利であると共に、設計自由度も低下する。
特許文献3には、遮熱微粒子と、ケイ素化合物、又は、酸化ジルコニウム等のジルコニ
ウム化合物若しくは酸化チタン等のチタン化合物を含むコーティング液をガラス上塗布し
た後、500乃至600℃で焼き付けて、遮熱粒子と酸化珪素、又は、酸化ジルコニウム
若しくは酸化チタンを含み、表面抵抗が10KΩ/□の電波透過性を有する熱線反射膜が
開示されている。しかし、基材に塗布後600℃で焼き付けて膜を作製しているため、作成プロセスの負荷が高く、またPETフィルムのような汎用の樹脂基材には適用できないという問題がある。
また、特許文献4ではAg、Au、Pt等の貴金属微粒子を用いて電波透過性あるいは
電波遮蔽性を有する熱線反射膜が開示されている。しかし、本構成では熱微粒子として貴金属を用いているため高価である事や、膜作製時に貴金属微粒子が互いに連結されている為、電波透過性能を十分に付与できないという問題がある。
さらに、特許文献5では、近赤外線領域の光線を反射するコレステリック液晶と、コレステリック液晶が反射する波長より長波長の熱線を吸収する遮熱微粒子を積層した断熱部材が開示されている。しかし、コレステリック液晶が反射する波長より長波長の熱線を吸収する遮熱微粒子を積層しているが、遮熱微粒子の樹脂バインダーに対する濃度が低く、近赤外線の長波長側の遮熱効果が不十分という問題がある。
また、こういった多層構造を有するフィルムにおいて、熱線遮蔽性や低ヘイズ性、透明性、可視光透過性の向上は鋭意なされているが、耐衝撃性や耐久性において課題を有する場合も多く、優れた基本特性を有していても実用化されない場合もある。
特開2001−151539号公報 特開2012−126037号公報 特開平5−70178号公報 特開2002−131531号公報 国際公開第2000/111548号パンフレット
従来より、熱線遮蔽構造体は数多く研究されているが、熱線遮蔽性を向上することを目的とするものがほとんでであり、それ以外の特性が不十分である為に実用化に至っていないものも相当数存在する。
本発明は、熱線遮蔽構造体の基本特性である熱線遮蔽性や低ヘイズ性、透明性、可視光透過性を損なうことなく、耐衝撃性や耐久性を改善するものである。
これによって耐衝撃性や耐久性に劣る従来の熱線遮蔽構造体のみならず、今後の熱線遮蔽構造体に対しても、より優れた機能を付与することができ、従来にない熱線遮蔽構造体の提供を可能とするものである。
本発明者らの研究によれば、特定の酸化をもつ分散剤を使用することで、透明性、可視光透過率を損なわずに熱線遮蔽機能を得ることができ、耐衝撃性に非常に優れる熱線遮蔽構造体が実現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下1)〜17)に関するものである。
1)
(A)熱線吸収膜及び(B)熱線反射膜を有する熱線遮蔽構造体であって、前記(A)熱線吸収膜が、(A−1)無機酸化物及び/又は色素、(A−2)酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤、及び(A−3)バインダー樹脂を含有する熱線吸収膜である熱線遮蔽構造体。
2)
上記成分(A−1)が無機酸化物及び色素である上記1)に記載の熱線遮蔽構造体。
3)
上記成分(A−2)の酸価が40(mgKOH/g)以上250(mgKOH/g)以下である上記1)又は2)に記載の熱線遮蔽構造体。
4)
上記成分(A−2)の酸価が50(mgKOH/g)以上150(mgKOH/g)以下である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
5)
上記成分(A−3)が、極性官能基と2以上のアクリロイル基とを併せ持つバインダー樹脂である上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
6)
上記成分(A−3)において、極性官能基がヒドロキシ基(OH)、又はウレタン結合(NHCO)である上記5)に記載の熱線遮蔽構造体。
7)
上記成分(A−3)の熱線吸収膜中の含有率が、熱線吸収膜の総量100質量部中10質量%以上60質量%以下である上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
8)
更に成分(A−4)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
9)
上記成分(A−4)が光ラジカル重合開始剤である上記8)に記載の熱線遮蔽構造体。
10)
上記成分(A−4)が365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上1000(mL/g・cm)以下の光ラジカル重合開始剤である上記9)に記載の熱線遮蔽構造体。
11)
更に(A−5)シランカップリング剤を含有する上記1)乃至10)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
12)
上記(B)熱線反射膜が、高屈折率膜と低屈折率膜を少なくとも1層ずつ有する熱線反射膜である上記1)乃至11)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
13)
上記1)乃至12)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体が、支持体の上に形成されている熱線遮熱シート。
14)
(C)熱可塑性樹脂膜、上記1)乃至13)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽中間膜。
15)
(C)熱可塑性樹脂膜、上記13)に記載の熱線遮熱シート、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽中間膜。
16)
上記1)乃至12)のいずれか一項に記載の熱線構造体、上記13)に記載の熱線遮熱シート又は上記14)若しくは15)に記載の熱線遮蔽中間膜を有する透明基材用中間膜。
17)
上記16)に記載の透明基材用中間膜が2枚のガラスの間に挿入されている合わせガラス。
本発明の熱線遮蔽構造体は、熱線吸収層の接着性が非常に高く、その為耐衝撃性に優れるものである。また同時に可視光透過性、全日射透過率およびヘイズに関する性能が総合的に優れている。従って、本発明の熱線遮蔽構造体を用いれば、安全性が高く、高性能な熱線遮蔽機能を有する構造体や、熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間膜、透明基材用中間膜、及び合せガラスを低コストかつ容易に製造することができる。
本発明の熱線遮蔽構造体は、(A)熱線吸収膜及び(B)熱線反射膜を有する構造体である。
[(A)熱線吸収膜]
(A)熱線吸収膜は、(A−1)無機酸化物及び/又は色素、(A−2)酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤、及び(A−3)バインダー樹脂を有する。
[(A−1)無機酸化物及び/又は色素]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる(A)熱線吸収膜は、(A−1)無機酸化物及び/又は色素を含有する。
無機酸化物としては、近赤外部から遠赤外部にかけて良好な吸収特性を有している遮熱微粒子が適しているものであれば特に限定されないが、可視光の透過性に優れているものを用いることが好ましい。例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン等を例示することができる。このうち、可視光領域に光吸収性のない酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛又は酸化タングステン等の金属酸化物の微粒子が好ましく、酸化インジウム又は酸化タングステンがより好ましく、酸化インジウムの微粒子が特に好ましい。また、これらの酸化物の電気導電性を向上させるために第三成分をドープすることが好ましい。このためのドーパントとしては、酸化錫に対してはSb、V、Nb、Ta等が選ばれ、酸化インジウムに対してはZn、Al、Sn、Sb、Ga、Ge等が選ばれ、酸化亜鉛に対しては、Al、Ga、In、Sn、Sb、Nb等が選ばれ、酸化タングステンに対しては、Cs、Rb、K、Tl、In、Ca、Sr、Fe、Sn、Al等が選ばれる。本発明においては、錫含有酸化インジウム(ITOともいう)又はアンチモン含有酸化錫(ATO)がより好ましく、錫含有酸化インジウム(ITO) が更に好ましい。ドーパントの含量は特に限定されないが、ドーパントされた金属の総量に対して、1〜20重量%程度、好ましくは、5〜15重量%程度である。ITOにおける錫含量も同じである。
また、上記無機酸化物は、平均粒子径が200nm以下、通常1〜100nmの微粒子が用いられる。該微粒子の平均粒子径としては、10〜50nmが好ましく、より好ましくは10〜40nmであり、最も好ましくは10〜30nm程度である。該平均粒子径は、BET(Brunauer,Emmet and Teller’S equation)法によって求められた比表面積より算出されたものである。平均粒子径が大きくなり過ぎると熱線遮蔽シートにした際、ヘイズ値が高くなり視認性が劣ってしまう。
また、該微粒子としては、60MPaで圧縮した際の粉体抵抗(粉体抵抗測定システムMCP−PD51型、三菱化学アナリテック株式会社製で測定)が通常100Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下、より好ましくは2Ω・cm以下であり、最も好ましくは、1Ω・cm以下の微粒子が用いられる。下限は特にないが、通常0.1Ω・cm以上であり、製造のし易さなどからは0.4Ω・cm以上が好ましい。粉体抵抗が100Ω・cmより高い微粒子を用いた場合、該微粒子のプラズマ振動に由来する反射が2500nmより大きくなり熱線遮蔽効果が低減する。
また色素としては、無機系、有機系の染料および顔料のいずれでも良く特に限定されないが、可視光透過率を損なわずに熱線遮蔽性能を向上するためには波長500nm〜600nmに極大吸収を有さない色素が好ましい。
無機系顔料として、例えばコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素等を用いることができる。この内好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、鉛系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素であり、更に好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素であり、特に好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素である。
有機系顔料、有機系染料としては、例えばジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、ポルフィラジン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素等を用いることができる。このうち好ましくはポルフィラジン系色素であり、下記式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 2020132454
式(1)中、Mは金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、若しくは金属ハロゲン化物、又は水素原子を表し、環A、B、C及びDの破線部は、それぞれ独立に、下記式(2)〜(8)の何れか一つの構造であり、Xは低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基を表し、Yは二価の架橋基を、Zはスルホン酸基、カルボキシ基、第1または2級アミンの窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、酸アミド基、又は窒素原子を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基を表し、a及びbはそれぞれの基の数を表し、いずれも平均値であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上12以下であり、かつ、aとbとの和は0以上12以下である。下記式(2)〜(8)は開口部で、骨格構造へ結合して、環A、B、C及びDの芳香環を形成する。
Figure 2020132454
環A、B、C又はDの破線部が、上記式(3)又は(4)であるとき、形成される芳香環はピリジン環であり、該破線部が上記式(5)〜(7)のいずか一つであるとき形成される芳香環はピラジン環であり、該破線部が上記式(8)であるとき、形成される芳香環はナフタレン環である。Zにおける第1又は第2級アミンの窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基としてはモノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基等を挙げることが出来る。また、酸アミド基としては、置換基を有してもよいフタル酸アミド基等を挙げることが出来る。窒素原子を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基としては、置換基を有してもよいピリジノ基、置換基を有してもよいピペラジノ基、又は置換基を有してもよいピペリジノ基等を挙げることができる。
前記式(1)中、環A乃至Dにおける芳香環としては、例えば、ベンゼン環またはナフタレン環をはじめ、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環等の窒素原子を1個又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではベンゼン環、ピリジン環及びナフタレン環からなる群から選択される何れか一つ又は2つの組み合わせが好ましく、全てが同じ芳香環であってもよい。環A乃至Dのうち、平均で、1〜4個、好ましくは2〜4個の、ピリジン環又はナフタレン環を含む方が好ましい。この場合、残りはベンゼン環である。より好ましくはベンゼン環が0〜2個で、ピリジン環が0〜3個、ナフタレン環が1〜4個の範囲内で合計が4となる組合せである。更に好ましい組み合わせを挙げれば、ベンゼン環が0〜2個で、ナフタレン環が2〜4個の範囲で合計が4となる組み合わせ又はピリジン環が1〜3個及びナフタレン環が1〜3個の範囲で、両者の合計が4となる組み合わせである。なお、環A乃至Dがピリジン環とナフタレン環の組合せからなる態様はより好ましい態様の一つである。また、ピリジン環の中では、前記式(4)の構造から形成されるピリジン環が好ましい。
前記式(1)において、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。Mが水素原子以外である場合、該Mは式(1)におけるポルフィリン環がいわゆる中心金属を有することを意味する。又、Mが水素原子である場合、該ポルフィリン環は中心金属を有しないことを意味する。
前記Mにおける金属原子の具体例としては例えば、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb又はBi等が挙げられる。
金属酸化物としてはVO又はGeO等が挙げられる。金属水酸化物としては例えば、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)又はAlOH等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては例えば、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl又はAlCl等が挙げられる。これらの中でも、Fe、Co、Cu、Ni、Zn、Al又はV等の金属原子、VO等の金属酸化物、又は、AlOH等の金属水酸化物等が好ましい。より好ましくはCu又はVOが挙げられ、VOが最も好ましい。
前記式(1)中のXは低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基又はスルホンアミド基を示す。なお、本明細書における「低級」とは炭素数1〜4を示す。
Yにおける二価の連結基としては例えば炭素数1〜3のアルキレン基、−CO−、−SO−又は−SONH(CH2)c−(ここで、cは0〜4を表す)が挙げられる。好ましいYは、炭素数1〜3のアルキレン基又は−SONH−であり、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましい。好ましいZとしては例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、置換基を有してもよいフタルイミド基、置換基を有してもよいピペラジノ基、置換基を有してもよいピペリジノ基等を挙げることができる。より好ましいZはカルボキシ基、スルホン酸基、又は、置換基を有してもよいフタルイミド基であり、置換基を有してもよいフタルイミド基が更に好ましい。なお、Zが置換基を有してもよいフタルイミド基、置換基を有してもよいピペラジノ基又は置換基を有してもよいピペリジノ基であるときの置換基としては低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又はスルホン酸基等を挙げることができる。Zが、上記の置換基を有してもよい基であるとき、無置換又はハロゲノ置換された基が好ましい。より好ましいZは、無置換又はハロゲノ置換フタルイミド基であり、無置換フタルイミドが最も好ましい。
式(1)の近赤外線吸収色素において置換アミノ基は特に限定されないが、例えば低級アルキル基又は低級アルコキシ基が置換したアミノ基が含まれる。なおハロゲン原子としてはCl、Br又はIが好ましい。
前記式(1)中のa、bはそれぞれ0以上12以下、かつ、aとbとの和は0以上12以下である。好ましくはa、bはそれぞれ独立に0以上4以下で、且つ、aとbとの和は0以上4以下である。本発明においては、式(1)においてaとbが共に0であるポルフィラジン色素が好ましい。
前記式(1)で表されるポルフィラジン色素の具体例を下記表2−1に化合物No.と共に示す。下記の例は、本発明の色素を具体的に説明するために代表的な色素を示すものであり、本発明は下記の例に限定されるものではない。また、環A乃至Dの含窒素複素芳香環が前記式(3)、(4)及び(6)である場合、窒素原子の位置異性体が存在し、色素合成の際には異性体の混合物として得られる。これら異性体の単離は困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため、通常は混合物のまま使用する。本発明の色素は、このような混合物も含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示される場合は、便宜的に代表的な1つの構造式を記載する。表1において、A乃至Dの欄の数字は、前記式(2)〜(8)の式番号を示し、a及びbの欄には、それぞれ、a及びbの値を示し、X、Y及びZの欄には基名を示した。X、Y及びZの欄における横線−は置換基が無いことを示す。
Figure 2020132454
前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は一般に公知の化合物であるか、若しくは公知の化合物に準じて容易に合成することができる。前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は、例えば、国際公開第2010/143619号パンフレット及び国際公開第2010/013455号パンフレットに開示された公知の方法に準じて合成することができる。なお、上記方法によって得られる前記式(1)で表される化合物は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、上記公知文献に記載の通りである。また、前記表1におけるNo.3やNo.18で示される化合物は、上記国際公開パンフレットの他、例えば、特許第2507786号パンフレット及び特許第3813750号パンフレットに開示された公知の方法に準じても合成することが出来る。
また、無機酸化物と色素はいずれか一方が存在すれば本願発明の効果は得られるが、より好ましい態様としては、無機酸化物及び色素の両方を含有する態様である。
成分(A−1)の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中5質量部以上60質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、60質量部、更に好ましくは50質量部、特に好ましくは40質量部、最も好ましくは30質量部である。
また好ましい下限としては、5質量部、更に好ましくは10質量部、特に好ましくは15質量部、最も好ましくは20質量部である。
成分(A−1)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は20質量部以上30質量部以下である。
なお、無機酸化物及び色素の両方を用いる場合、無機酸価物:色素の比として、好ましくは20:1〜1:1であり、更に好ましくは15:1〜2:1であり、特に好ましくは12:1〜5:1である。
[(A−2)酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(A−2)酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤を含有する。成分(A−2)を含有させることで、更なる接着強度向上が実現できる。
分散剤とは、成分(A−1)の微粒子への相互作用部位と成分(A−3)への相互作用部位とを有し、成分(A−1)の成分(A−3)への分散安定性を確保する働きを持つものであり、通常、樹脂分散剤(例えば高分子分散剤)、界面活性剤(例えば低分子分散剤)を例示することができる。なお本発明ではこれらを併用しても良いが、併用したもの全体で酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である必要がある。
また「酸価」とは、分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に順じて、電位差滴定法によってもとめることができる。
成分(A−2)としては、例えばナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体の共重合体塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどに代表される高分子水系分散剤、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミンといった高分子非水系分散剤、ポリエチレンイミン又はアミノアルキルメタクリレート共重合体といった高分子カチオン系分散剤等を挙げることができる。なお、重量平均分子量としては2,000以上、100,000以下が好ましい。
成分(A−2)としては、例えば、EFKA4008、EFKA4009、EFKA4010、EFKA5054、EFKA5065、EFKA5066、EFKA5220、EFKA6230(BASFジャパン社製)、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK118、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK170、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK2001、DisperBYK2013、DisperBYK2025、DisperBYKP104、DisperBYKP1105、DisperBYKP9076、DisperBYK220S(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
成分(A−2)として、更に好ましくは酸価が40(mgKOH/g)以上250(mgKOH/g)以下の分散剤であって、上記分散剤のうち、EFKA5054、EFKA5065、EFKA5066、EFKA6230(BASFジャパン社製)、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK180、DisperBYKP104、DisperBYK220S(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
成分(A−2)として、特に好ましくは酸価が50(mgKOH/g)以上150(mgKOH/g)以下の分散剤であって、上記分散剤のうち、EFKA5054、EFKA5065、EFKA5066、EFKA6230(BASFジャパン社製)、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK140、DisperBYK145、DisperBYK180、DisperBYKP104、DisperBYK220S(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
成分(A−2)の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中1質量部以上45質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、40質量部、更に好ましくは35質量部、特に好ましくは30質量部、最も好ましくは25質量部である。
また好ましい下限としては、5質量部、更に好ましくは8質量部、特に好ましくは10質量部、最も好ましくは15質量部である。
成分(A−2)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は15質量部以上25質量部以下である。
[(A−3)バインダー樹脂]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(A−3)バインダー樹脂を含有する。なお、アクリルモノマーのような低分子化合物も、バインダーとして使用されうるものであれば、本明細書においてはバインダー樹脂と表現する。
(A−3)は成分(A−1)の微粒子を分散維持できる樹脂であれば、特に制限はない。通常、熱可塑性樹脂、及び/又は、熱又は光で硬化する硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂とも言う)(具体的には熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂)の硬化物等が挙げられる。
成分(A−3)の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中20質量部以上95質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、95質量部、更に好ましくは90質量部、特に好ましくは80質量部、最も好ましくは70質量部である。
また好ましい下限としては、20質量部、更に好ましくは30質量部、特に好ましくは40質量部、最も好ましくは50質量部である。
成分(A−3)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は50質量部以上70質量部以下である。
成分(A−3)に用いられうる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を混合させたものであっても良い。これらの熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000〜1,000,000程度であり、好ましくは2000乃至500,000程度、より好ましくは2000〜200,000程度である。熱可塑性樹脂として好ましい樹脂は、透明性等の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましく、例えば(メタ)アクリレートポリマー、特に(メタ)アクリル共重合体等が好ましい。
成分(A−3)に用いられうる熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテルを有する硬化性化合物が挙げられる。
上記環状エーテルを有する熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂を含む脂肪族エポキシ樹脂または芳香族エポキシ樹脂)、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。なかでも、反応速度や汎用性の観点からエポキシ樹脂( 脂肪族環、例えば炭素数3〜12の脂肪族環を含んでいても良い)、オキセタン樹脂が好適である。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型; ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’− ジアリルビスフェノールA 型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等のビスフェノール型等が挙げられる。また、その他にグリシジルアミン等も挙げられる。
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロン(登録商標)N−740、N−770、N−775(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)、エピコート(登録商標)152、エピコート(登録商標)154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型としては、例えば、エピクロン(登録商標)N−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−695、N−665−EXP、N−672−EXP(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製);ビフェニルノボラック型としては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製);トリスフェノールノボラック型としては、例えば、EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製);ジシクロペンタジエンノボラック型としては、例えば、XD−1000−L(日本化薬株式会社製)、HP−7200(大日本インキ化学工業株式会社製);ビスフェノールA 型エポキシ化合物としては、例えば、エピコート(登録商標)828、エピコート(登録商標)834、エピコート1001、エピコート(登録商標)1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製)、エピクロン(登録商標)850、エピクロン(登録商標)860、エピクロン(登録商標)4055(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製);ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エピコート(登録商標)807(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、エピクロン(登録商標)830(大日本インキ化学工業株式会社製);2,2’−ジアリルビスフェノールA型としては、例えば、RE−810NM(日本化薬株式会社製);水添ビスフェノール型としては、例えば、ST−5080(東都化成株式会社製);ポリオキシプロピレンビスフェノールA型としては、例えば、EP−4000、EP−4005(以上、いずれも旭電化工業株式会社製)等が挙げられる。
上記オキセタン化合物の市販品として、例えば、エタナコール(登録商標)EHO、エタナコール(登録商標)OXBP、エタナコール(登録商標)OXTP、エタナコール(登録商標)OXMA(以上、いずれも宇部興産株式会社製)等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、セロキサイド(登録商標)2021、セロキサイド(登録商標)2080、セロキサイド(登録商標)3000(以上、いずれもダイセル・ユーシービー株式会社製) 等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
成分(A−3)に用いられうる光硬化性樹脂としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリロイル基等を有する樹脂が挙げられる。なかでも反応性や汎用性の面より(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば(メタ)アクリレート化合物、が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」等の用語は、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味し、例えば「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬株式会社製、KAYARAD(登録商標)HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)DPHA等)、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’− ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
これらモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートは、そのエポキシ基に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は一般的に知られている方法により行うことが出来る。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80〜110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。
成分(A−3)としては、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が好ましく、光硬化性樹脂である場合が更に好ましい。
また、分子内に極性官能基及び2以上の(メタ)アクリロイル基とを併せ持つバインダー樹脂である場合が特に好ましい。
極性官能基とは、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、ホスホ基、アミノ基、イミノ基、カルバモイル基、シアノ基、イソシアナト基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドラジノ基、ウレイド基、グアニジノ基、スルファニル基、スルフィノ基、スルホ基等、又はフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピロリジノ基、ピペリジニル基、モルホリノ、基、キノリル基等の複素環基等を挙げることができる。なお、各置換基は可能であればアルキル基、アルコキシ基等で置換されていても良い。また、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合((メタ)クリロイル基中のエステル結合を除く)等置換基とは異なる極性結合部位も、本明細書においては極性官能基として記載する。
極性官能基とは、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、ホスホ基、アミノ基、イミノ基、カルバモイル基、シアノ基、イソシアナト基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドラジノ基、ウレイド基、グアニジノ基、スルファニル基、スルフィノ基、スルホ基等、又はフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピロリジノ基、ピペリジニル基、モルホリノ、基、キノリル基等の複素環基等を挙げることができる。なお、各置換基は可能であればアルキル基、アルコキシ基等で置換されていても良い。また、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合((メタ)アクリロイル中のエステル結合を除く)等置換基とは異なる極性結合部位も、本明細書においては極性官能基として記載する。
極性官能基を有する2以上の(メタ)アクリロイルと極性官能基を併せ持つバインダー樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトルトリアクリレート(KAYARAD PET−30 日本化薬製)、ジペンタエリスリトルペンタアクリレートとジペンタエリスリトルヘキサアクリレートの混合物又(KAYARADRTM DPHA 日本化薬製)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(701A 新中村化学製)、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300 新中村化学製)、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート(A−9300−1CL 新中村化学)等の(メタ)アクリレートモノマー化合物、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(R−115F、R−130、R−381等 日本化薬製)、ビスフェノールF型エポキシアクリレート(ZFA−266H 日本化薬製)、酸変性エポキシアクリレート(ZARシリーズ、ZFRシリーズ、ZCRシリーズ 日本化薬製)等のエポキシアクリレート樹脂、ポリエステル系ウレタンアクリレート(UX3204、UX−4101、UXT−6100 日本化薬製)、混合系ウレタンアクリレート(UX−6101、UX−8101 日本化薬製)、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UX−937、UXF−4001−M35 日本化薬製)、エステル系ウレタンアクリレート(DPHA−40H、UX−5000、UX−5102D−M20、UX−5103D、UX−5005 日本化薬製)等のウレタンアクリレート樹脂を挙げることができる。
成分(A−3)のバインダー樹脂として、より好ましくは2以上8以下の(メタ)アクリロイル基と極性官能基を併せ持つ場合であり、更に好ましくは3以上6以下の(メタ)アクリロイル基と極性官能基を併せ持つ場合である。反応性基である(メタ)アクリロイル基が10以上である場合、硬化物が剛直になり過ぎて、接着強度の低下を招く可能性がある。
成分(A−3)のバインダー樹脂として、更に好ましくは、極性官能基がヒドロキシ基(OH)、又はウレタン結合(NHCO)である。ヒドロキシ基は基材への密着性を向上する効果があり、ウレタン結合は硬化物を柔軟にする効果がある。上記例示の中では、ペンタエリスリトルトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等及びウレタン樹脂を好適な成分(A−2)として挙げることができ、更に好ましくは、ペンタエリスリトルトリアクリレート、ジペンタエリスリトルペンタアクリレートとジペンタエリスリトルヘキサアクリレートの混合物又はエステル系ウレタンアクリレート(UX−5000、DPHA−40H)である。
[(A−4)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(A−4)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有しても良い。
なお、成分(A−3)バインダー樹脂として、熱硬化性樹脂が用いられる場合には、成分(A−4)熱硬化剤が用いられ、光硬化性樹脂が用いられる場合には、成分(A−4)光開始剤が用いられる。ただし、光硬化性樹脂は不飽和二重結合のラジカル重合反応によって硬化する為、熱ラジカル重合開始剤を用いても同様である。
成分(A−4)として用いられうる熱硬化剤としては、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えばアミン系硬化剤(以下アミン類とも言う)、ヒドラジド系硬化剤(以下ヒドラジド類とも言う)、イミダゾール系硬化剤(以下イミダゾール類とも言う)、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、イソシアネート、チオール系硬化剤(チオール類)、フェノール系硬化剤(フェノール類)等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではない。
アミン類としては、脂肪族鎖状アミン、脂肪族環状アミン、芳香族アミン、変性アミン(アミンアダクト、ケチミン等)等を挙げることができる。また1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミンのいずれであっても良いが、反応性の見地からは1級又は2級アミンが好ましい。
アミン類として具体的には、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、2−メチル−4,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミン、ビスアニリン、ジエチルトルエンジアミンを、ジエチルチオトルエンジアミン、N,N’−ビス(sec−ブチルアミノ)ジフェニルメタン等の芳香族アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、ポリエーテルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、変性アミン等が挙げられる。特に好ましくは、ジエチルメチルベンゼンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミンを挙げることができる。
ヒドラジド類としては、有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるサリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
イミダゾール類としては、例えば2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
チオール類としては、カレンズMT PE1、BD1、NR1、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)(いずれも昭和電工(株)製)等を挙げることができる。なお、チオール系硬化剤とは、分子内に少なくとも1つのチオール基(SH)を有する硬化剤である。
フェノール類としては、フェノール(各種置換基を有しても良い)にホルマリンを酸触媒下で縮合反応させて得られるフェノールノボラック類やビスフェノールA、ビスフェノールS等を例示することができる。
成分(A−4)として熱硬化剤が用いられる場合、その含有量は熱線吸収膜の総量100質量部中0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、15質量部、更に好ましくは10質量部、特に好ましくは8質量部、最も好ましくは5質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(A−4)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上5質量部以下である。
成分(A−4)として熱硬化剤が用いられる場合には、熱硬化促進剤を併用しても良い。硬化促進剤としては、硬化促進剤としては、フェノール類、有機酸、ホスフィン類、イミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
ホスフィン類としてはトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等を挙げることができる。
イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化促進剤を使用する場合に、その含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中、通常0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
成分(A−4)として用いられうるラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を意味する。これらは、本発明の熱線吸収膜である熱線遮蔽構造体の製造方法によって使い分けることができる。
(A−4)として用いられうる光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、成分(A−4)は365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上10000(mL/g・cm)以下である場合が好ましく、100以上8000(mL/g・cm)以下である場合がさらに好ましく、1000以上7500(mL/g・cm)以下である場合が特にに好ましい。なお、モル吸光係数は、メタノール又はアセトニトリルを溶剤として測定したものである。
365nmにおけるモル吸光係数(ε)が100以上10000(mL/g・cm)以下である光重合開始剤とは、IRGACURERTM 651(メタノール中ε=360mL/g・cm)、IRGACURERTM 907(メタノール中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM 369(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、IRGACURERTM 379(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、IRGACURERTM 819(メタノール中ε=2300mL/g・cm)、LUCIRINRTM TPO(アセトニトリル中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE−01(アセトニトリル中ε=7000mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE−02(アセトニトリル中ε=7700mL/g・cm)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
成分(A−4)として光ラジカル重合開始剤が用いられる場合、その含有量は熱線吸収膜の総量100質量部中0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(A−4)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上3質量部以下である。
(A−4)として用いられうる熱ラジカル重合開始剤としては、当該熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメック(登録商標)A、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボン(登録商標)BIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメック(登録商標)N、H、S、F、D、G、パーヘキサ(登録商標)H、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアー(登録商標)AH、AL、HB、パーブチル(登録商標)H、C、ND、L、パークミル(登録商標)H、D、パーロイル(登録商標)IB、IPP、パーオクタ(登録商標)ND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA−044、V−070、VPE−0201、VSP−1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
成分(A−4)として熱ラジカル重合開始剤が用いられる場合、その含有量は熱線吸収膜の総量100質量部中0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(A−4)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上3質量部以下である。
[(A−5)シランカップリング剤]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(A−5)シランカップリング剤を含有しても良い。シランカップリング剤を含有させることで、更なる接着強度向上が実現できる。
(A−5)シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン(KBM−1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE−1003)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−402)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403)、p−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−502)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−602)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−603)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(KBE−9103P)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573)、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM−575)、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(KBM−9659)、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(KBB−585)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−802)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007N)、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(X−12−967C)等を挙げることができる。これらは信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。
(A−5)シランカップリング剤としては、分子内に窒素(N)を有する場合、エポキシ基(グリシジル基)を有する場合、または酸無水物骨格を有する場合が好ましい。これらはガラスや熱可塑性樹脂(例えばポリビニルブチラール)等の表面に存在するヒドロキシ基(OH)と水素結合や、反応による共有結合を介して強固に接着し、(A)熱線吸収膜と他基板との接着強度をより高め、耐衝撃性の更なる向上を実現することができる。
分子内に窒素(N)を有するシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−602)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−603)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(KBE−9103P)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573)、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM−575)、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(KBM−9659)、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(KBB−585)等を挙げることができる。
エポキシ基(又はグリシジル基)を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−402)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403)を挙げることができる。
酸無水物骨格を有するシランカップリング剤としては、例えば3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(X−12−967C)を挙げることができる。
上記のうち、分子内にイソシアネート基、イソシアヌレート基又は酸無水物骨格を有するシランカップリング剤が特に好ましい。例えば3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(KBB−585)、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(KBM−9659)、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(X−12−967C)を挙げることができる。
成分(A−5)を用いる場合の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中0.1質量部以上35質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、30質量部、更に好ましくは25質量部、特に好ましくは20質量部、最も好ましくは10質量部である。
また好ましい下限としては、1質量部、更に好ましくは3質量部、特に好ましくは5質量部、最も好ましくは6質量部である。
成分(A−5)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は6質量部以上10質量部以下である。
[その他成分]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる(A)熱線吸収膜は、必要に応じ、例えばレベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤架橋剤、可塑剤、無機微粒子、フィラー等を添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられ、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられる。重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、前記ポリイソシアネート類、メラミン化合物等が挙げられる。可塑剤としてはジメチルフタレートやジエチルフタレートのようなフタル酸エステル、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートのようなトリメリト酸エステル、ジメチルアジペートやジブチルアジペートのような脂肪族二塩基酸エステル、トリブチルホスフェートやトリフェニルホスフェートのような正燐酸エステル、グリセルトリアセテートや2−エチルヘキシルアセテートのような酢酸エステルが挙げられる。
[(B)熱線反射膜]
本発明の熱線遮蔽構造体は(B)熱線反射膜を有する。
熱線反射膜とは、780nm〜2500nmの波長の光を反射し、熱エネルギーを透過させない層を意味する。
780nm〜2500nmの波長の光を反射する層としては、
(B−1)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜、
(B−2)コレステリック液晶を用いた熱線反射膜、
(B−3)少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する熱線反射層等を挙げることができる。なお、本発明において(B−1)〜(B−3)はいずれか一つを有すれば良いが、複数を組み合わせても良い。また、本発明においては、(B−1)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜を用いる態様が特に好ましい。
[(B−1)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜]
(B−1)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜は、高屈折率材料層(以下高屈折率層とも言う)と低屈折率材料層(以下低屈折率層とも言う)とを交互に積層して構成される。高屈折率層の屈折率は、好ましくは、1.60〜2.40程度であり、より好ましくは1.80〜2.10程度である。低屈折率層の屈折率は1.30〜1.50程度であり、好ましくは1.34〜1.50程度であり、両者は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも0.4の屈折率の差を有することが好ましい。
それぞれの光学膜厚(屈折率nと膜厚dとの積nd)は反射させる波長領域の中心波長をλcとすると、λc/4となるように制御されている。高屈折率材料としては酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ハフニウム等が用いられ、低屈折率材料としては、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化セリウム等が用いられる。
前記高屈折率材料層、低屈折率材料層はスパッタリング、蒸着、スプレー等、公知の方法で作製することができる(例えば、特許第3397824号)。また、各屈折率材料層の微粒子をマトリックスに分散させて塗布する方法でも構わない。その際可視透過率、ヘイズ値を考慮して粒子径は200nm以下が好ましい。
(B−1)高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜の特性を高効率(高反射)にするには、層数を多くすることが必要である。しかし層数を多くすると、各膜厚のバラツキ、製造コストの上昇等の問題があるので、3層以上、11層以下が好ましい。
好ましい態様によれば、誘電体多層膜を有する本発明の熱線遮蔽構造体においては、熱線遮蔽層に、近赤外線吸収色素を含むことなく、可視光透過率70%以上、好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上で、かつ、ヘイズが2%以下、好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1%以下で、該熱線遮蔽構造体通過後の全日射エネルギー透過率を70%以下、好ましくは、65%以下、より好ましくは55%以下を達成することが出来る。また、必要に応じて、熱線遮蔽層に、近赤外線吸収色素を含ませても良い。好ましい態様によれば、誘電体多層膜が、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差が少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも0.4となる材料を交互に積層し、上記の目標値を達成するように積層した誘電多層膜の場合であり、より好ましい対応においては高屈折率層が酸化チタンを含有し、低屈折率層が酸化ケイ素を含有する層であり、3層〜11層の間で上記の目標値を達成するように交互に積層された誘電体多層膜である場合である。
[(B−2)コレステリック液晶を用いた熱線反射膜]
(B−2)コレステリック液晶を用いた熱線反射膜は、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面では角度がずれるという具合に、該平面の法線方向に分子軸の角度が次々にずれていく構造である。このような分子軸の方向がねじれていく構造はカイラル構造と呼ばれる。該平面の法線(カイラル軸)はコレステリック液晶層の厚み方向に略平行になっていることが好ましい。
コレステリック液晶材料に光が入射すると、特定波長領域の左回り及び右回りのうち一方の円偏光が反射される。カイラル構造において分子軸がねじれる時の回転軸を表すらせん軸と、コレステリック液晶材料の法線とが平行である場合、カイラル構造のピッチ長pと反射される円偏光の波長λcとは下記式(1)および式(2)の関係を有する。
Figure 2020132454
Figure 2020132454
数式(1)及び数式(2)中、λcは反射させる波長領域の中心波長、nは液晶化合物の短軸方向の屈折率、nは液晶化合物の長軸方向の屈折率、nは(n+n)/2、θは光の入射角(面法線からの角度)を表す。
これより、反射させる波長領域の中心波長は、コレステリック液晶材料におけるカイラル構造のピッチ長に依存する。このカイラル構造のピッチ長を変えることにより反射させる中心波長を変えることができる。
コレステリック液晶材料の層数は、1層でもよく、2層以上でもよい。層数が2層以上あると、反射できる近赤外線の波長帯域を広げることができるので好ましい。
コレステリック液晶材料を2層以上にする場合、反射させる中心波長領域をより効率的に反射させるには、分子軸のねじれ方向が異なるコレステリック液晶層を組み合わせることが好ましい。つまり右円偏光と左円偏光の両方を反射することが可能となり、効果的な反射率を実現することができる。また、コレステリック液晶材料を2 層以上にする際、反射させる波長領域を広範囲にしたい場合は、ピッチ長の異なるコレステリック液晶層を組み合わせることが好ましく、さらにねじれ方向が異なるコレステリック液晶層を組み合わせることでより広範囲な近赤外波長領域を高効率に反射することが可能である。層数、右円偏光、左円偏光コレステリック液晶層等の組合せは、製造コスト、可視光透過率等を鑑みて適切な組み合わせを用いることができる。
[(B−3)少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する熱線反射層]
(B−3)少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する熱線反射層は、金属導体の自由電子の電磁波遮蔽効果により生じる反射を原理としている。金属単層から成り、蒸着、スパッタリングといった乾式コーティングにより作製される。金属単層で高い反射率が得られるためコーティング回数が少なく製造プロセスへの負荷を少なくすることができる。
[(C)熱可塑性樹脂膜]
本発明の熱線遮蔽構造体は(C)熱可塑性樹脂膜を有する場合が好ましい。熱可塑性樹脂膜は、例えばポチビニルブチラール、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4 フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4 フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3 フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等を主成分とする膜を例示することができる。この内好ましくはポリビニルブチラール膜である。
また、本発明の熱線遮蔽構造体では、(C)熱可塑性樹脂膜を2層以上用いても良く、好ましい態様は2層用いた場合である。
<(A)熱線吸収膜の製造方法>
(A−1)無機酸化物及び/又は色素、(A−2)2以上の(メタ)アクリロイルと極性官能基を併せ持つバインダー樹脂、(A−3)光重合開始剤、必要に応じて、(A−4)シランカップリング剤、(A−5)分散剤、トルエン等の有機溶剤を混合し、最適な分散方法を用いて分散した後、例えば(B)熱線反射膜、後述する(C)熱可塑性樹脂膜、ガラス等、また剥離性を有する基材(PET)の上に塗布する。なお、剥離性を有する基材(例えばPET)を用いる場合には、(B)熱線反射膜、(C)熱可塑性樹脂膜、ガラス等に転写することで熱線吸収膜の層を形成する。
(分散方法)
好ましい分散方法はビーズミルであり、特定な分散エネルギー領域で分散させる方法を挙げることができる。分散エネルギーが該特定な範囲を外れて低すぎる場合は、粒子同士が凝集した状態となり、導電パスが形成され、表面抵抗が下がるだけでなく、シート平滑性が悪化し、近赤外反射性能の低下、高ヘイズが問題となる。また、分散エネルギーを高くし過ぎると、微粒子の近赤外反射機能が低下する事が判明した。この原因は不明であるが、あまり高エネルギーでの分散では、微粒子表面に傷が付くなど微粒子に変化が生じ、反射性能が低下すると推察される。上記の反射率と上記の表面抵抗を達成するには特定な分散エネルギー領域が存在し、該特定なエネルギー領域で分散させた場合、個々の該微粒子がバインダー成分で覆われて、該微粒子の再凝集や連結が防止され、バインダー成分中にマトリックス状に分散され、成膜した際に、上記の反射率と上記の表面抵抗を達成するものと推察される。ビーズミルを用いた場合、上記の特定なエネルギー領域としては3〜12m/sの周速、好ましくは3〜11m/sの周速、より好ましくは3〜10m/sの周速が適当であり、更に好ましい態様としては、4〜12m/sの周速又は4〜11m/sの周速を挙げることができ、最も好ましい態様としては、5〜12m/sの周速、又は、場合により、5〜11m/s又は5〜10mの周速を挙げることができる。上記した様に、周速が遅すぎると、微粒子を十分分散できずに、周速があまり早すぎると反射性能の低下で、遮熱性能が低下する。
(塗布方法)
塗布方法に関しては、表面を平滑に塗布できれば、特に限定はない。例えば、場合により、コンマコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター等も使用出来るが、シート平滑性の為に好ましくはバーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター等の薄膜作製に適したコーティング装置の使用が好ましい。
(A)熱線吸収膜の厚みは、一概には言えず、目的とする熱線遮蔽性能や可視光透過率、(B)熱線反射膜の種類や厚み等により決定される。本発明においては、熱線遮蔽層の可視光透過率は、少なくとも70%以上が好ましく、より好ましくは75%以上となる厚さに調整するのが好ましく、一般的には、乾燥後の厚さで、0.1μm〜50μm程度の間で調整すれば良い。より好ましくは0.1μm〜40μm程度である。樹脂バインダーとして硬化性樹脂を用いる場合、通常0.1μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜20μm程度、更に好ましくは0.1μm〜10μmの間で調整することができる。上記のようにして得られた熱線遮蔽層における可視光透過率は通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。また、該熱線遮蔽層におけるヘイズ値は通常8%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。ヘイズ値は低い方が好ましく、本発明の好ましい態様では、0.8%以下であり、より好ましい態様では0.5%以下までにすることができる。ヘイズ値の下限は特にないが、0.1%程度までと思われる。
また(B)熱線反射膜の厚みは、用いる反射層のタイプによって大きく異なる。一般的に、塗布やスプレーなどの方法で作製される反射層は、乾燥後の厚さで、0.1μm〜50μm程度の間が好ましくより好ましくは0.1μm〜40μm程度である。樹脂バインダーとして硬化性樹脂を用いる場合、通常0.1μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜20μm程度、更に好ましくは0.1μm〜10μmの間で調整することができる。また、蒸着やスパッタリング法で作製される場合は、通常0.1nm〜100nmであり、より好ましくは1nm〜50nm程度である。
本明細書においては、(A)熱線吸収膜及び(B)熱線反射膜からなる構成を、「熱線遮蔽構造体」と定義する。この「熱線遮蔽構造体」はそれ自体で流通する場合や、他のフィルム積層体において形成される場合が想定されるが、上記構造になっている場合には。「熱線遮蔽構造体」とする。
また、上記「熱線遮蔽構造体」を支持体の上に形成した場合には、「熱線遮蔽シート」と定義する。支持体としては無機材料、有機材料の何れであっても良いが、例えばPETフィルムやTACフィルムといった光学用途に用いられる有機フィルムが好ましい。また、例えば剥離PET上に形成した場合も、「熱線遮蔽シート」であり、この状態での流通が容易である。
そして、上記「熱線遮蔽構造体」及び/又は「熱線遮蔽シート」を、後述する(C)熱可塑性樹脂膜上に形成したものを「熱線遮蔽中間膜」と定義する。(C)熱可塑性樹脂膜は、1枚であっても、複数枚であっても良いが、通常は上記「熱線遮蔽構造体」及び/又は「熱線遮蔽シート」を挟み込む形で2枚使用する。また、(C)熱可塑性樹脂膜上への形成方法としては、上記「熱線遮蔽シート」をそのまま(C)熱可塑性樹脂膜上へ形成する方法や、剥離PET上に形成し、「熱線遮蔽シート」を(C)熱可塑性樹脂膜上へ転写して(この場合、形成後、剥離PETを取り除く)形成することもできる。
上記「熱線遮蔽中間膜」は、「透明基材用中間膜」として用いることができる。透明基材とは、例えばガラス、ポリカーボネートを挙げることができるが、ガラスを使用し、合わせガラスとする場合が特に好ましい。
[(C)熱可塑性樹脂膜]
(C)熱可塑性樹脂膜は、例えばポチビニルブチラール、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4 フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4 フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3 フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等を主成分とする膜を例示することができる。この内好ましくはポリビニルブチラール膜である。
また、本発明の熱線遮蔽構造体では、(C)熱可塑性樹脂膜を2層以上用いても良く、好ましい態様は2層用いた場合である。
<熱線遮蔽シート>
本発明における熱線遮蔽シートは、該熱線遮蔽構造体が、合わせガラス化した際に透明性を担保できる支持体上に形成されていれば支障はなく、無機材料又は有機材料の何れであってもよい。例えば、PETフィルムやTACフィルム等の、光学用途に用いられる有機フィルムを用いても良いし、前記(C)熱可塑性樹脂膜に直接塗工もしくは転写しても良い。また、近赤外線を吸収する機能や反射する機能等を有する機能性のシートであってもよい。通常、樹脂シート、無機ガラス板など光の透過性を阻害しない薄い板状体が使用される。厚さは特に限定されないが、通常、10μm〜3mm程度である。
<熱線遮蔽用中間膜>
本発明の熱線遮蔽構造体及び/又は熱線遮蔽シートは上記(C)熱可塑性樹脂膜を用いて、熱線遮蔽用中間膜として用いることができる。
この場合、(C)熱可塑性樹脂膜、熱線遮蔽構造体、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽用中間膜や、(C)熱可塑性樹脂膜、熱線遮蔽シート、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽用中間膜が特に好ましい。その際に、熱線遮蔽構造体又は熱線遮蔽シートと、一方もしくは双方の(C)熱可塑性樹脂膜は、貼り合わされた状態でも良く、それぞれ独立の状態で用いても良い。ただし、加工性等を鑑みると、熱線遮蔽構造体又は熱線遮蔽シートと、一方もしくは双方の(C)熱可塑性樹脂膜が、何らかの形で一体化されている事が好ましい。
熱線遮蔽構造体又は熱線遮蔽シートと、一方もしくは双方の(C)熱可塑性樹脂膜を貼り合せる方法としては、特に限定はないが、例えば熱圧着または粘着剤を塗布し粘着層を形成した後に貼り合わせる感圧接着法、液状接着材層を塗布形成後に紫外線硬化や加熱硬化にて接着し転写する方法等が挙げられる。接着剤を用いないプラズマ接合法等を用いても良い。その中では、生産性の観点から、粘着層または接着層を必要としない熱圧着やプラズマ接合方式が好ましい。
前記、熱線遮蔽用中間膜の構成には、(C)熱可塑性樹脂膜の内側に、熱線遮蔽構造体、熱線遮蔽シート以外の機能を有する層を有していても良い。追加する機能は、特に限定はないが、可視光透過率が大きく損なわれない物が好ましい。具体的には、遮音性を有する層や、自動車用のヘッドアップディスプレイ等に対応した映像投影機能を有する層等が挙げられる。追加する機能の数に制限は無く、またこれらの層は、熱線遮蔽構造体に形成されていても良く、それぞれ独立に形成された層を貼り合せて用いても良い。
<透明基材用中間膜>
上記「熱線遮蔽中間膜」は、「透明基材用中間膜」として用いることができる。透明基材とは、例えばガラス、ポリカーボネートを挙げることができるが、ガラスを使用し、合わせガラスとする場合が特に好ましい。
<合わせガラス>
第1のガラス板と第2のガラス板の間に前記透明基材用中間膜を配置するよう貼合わせることで、本発明の合わせガラスを製造することができる。
具体的には、第1のガラス板と第2のガラス板の間に透明基材用中間膜を配置するよう貼合わせる。その際に、2枚のガラス間の気泡を除くため、減圧下で圧着する第一の圧着段階(予備圧着)と、気泡の発生を抑えつつ高い密着性を発現させるため、高温高圧下で圧着する第二の圧着段階(本圧着)を経て作製されるのが一般的である。
以下、実施例、比較例により本発明を詳細に説明する。尚、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
(熱線反射層用高屈折率樹脂塗布液の作製)
平均一次粒子径35nmである酸化チタン微粒子(商品名「TTO−51A」、石原産業株式会社製)1.4部、KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製)0.4部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア907」)0.05部、および分散剤(商品名「DISPERBYK−2001」、ビック・ケミージャパン株式会社製)0.3部をトルエン7部中に加え高屈折率樹脂塗布液を作製した。
(熱線反射層用低屈折率樹脂塗布液の作製)
KAYARAD DPHA 0.4部およびイルガキュア907 0.05部をMEK4部に溶解した溶液中に、中空シリカ微粒子(商品名「スルーリア」、平均一次粒子径50nm、固形分濃度20重量%、日揮触媒化成株式会社製、分散媒:メチルイソブチルケトン)3部を分散させ低屈折率樹脂層塗布液を調製した。
[製造例2]
(熱線吸収層用樹脂塗布液の作製)
KAYARAD PET−30(日本化薬株式会社製)60部、表1に記載の分散剤(BYKシリーズ(ビック・ケミージャパン株式会社製)またはEFKAシリーズ(BASFジャパン株式会社製))8部およびイルガキュア907 3部を、MEK 200部に溶解させた溶液中にスズドープ酸化インジウム微粒子(商品名「ITO−R」、CIKナノテック株式会社製)20部、銅(II)2,3−ナフタロシアニン(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)2部を分散させ熱線吸収層用樹脂塗布液1を調整した。
[製造例3]
(熱線遮蔽層の作製)
基材として50μm厚みのポリエステル製フィルム(商品名「A4300」 東洋クロス株式会社製)を用い、マイクログラビアコーターにより基材上に高屈折率樹脂塗布液を乾燥後層厚120nmの厚みになるように塗布し、60℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に高屈折率樹脂層を作製した。続いて高屈折樹脂層上に低屈折率樹脂塗布液を乾燥後層厚150nmの厚みになるよう塗布し、60℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に高屈折樹脂層、低屈折樹脂層の順に積層した。以降同様に高屈折率樹脂層、低屈折率樹脂層、高屈折率層、低屈折率層の順に積層し、計6層の熱線反射層を作製した。次いで、熱線反射層上に熱線吸収層用樹脂塗布液を、乾燥後層厚3μmの厚みになるように塗布し、60℃で1分乾燥後、紫外線照射することで熱線吸収層を作製した。これにより基材上に6層の熱線反射層と熱線吸収層を有する熱線遮蔽層を作製した。
[製造例4]
(シート状接着樹脂1の作製)
ポリビニルブチラール樹脂360g、トリエチレングリコールビス(2−エチルブチレート)130gを、3本ロールミキサーにより約70℃で15分間練りこみ混合することでシート状接着樹脂原料を得た。次いで押出し成形機を用い成形温度200℃で押出し成形することで、厚み約0.4mmのシート状接着樹脂1を作製した。
[製造例5]
(剥離接着力評価用サンプルの作製)
製造例3で得られた熱線遮蔽層の熱線吸収層の上に、製造例4で得られたシート状接着樹脂1を25mm×100mmの大きさに切断した物を重ねあわせ、真空バッグに入れ−0.09MPaまで真空ポンプで減圧し、減圧下で110℃、30分間保持し予備圧着した。その後、オートクレーブにて圧力1.5Mpa、150℃の条件で30分間保持し本圧着し、剥離接着力評価用サンプルを作製した。
[実施例1〜9および比較例1〜4]
(熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラスの作製)
厚さ2mのソーダガラス(30cm角)、製造例4で得られたシート状接着樹脂1、製造例3で作製した熱線遮蔽層、製造例4で得られたシート状接着樹脂1、厚さ2mmのグリーンガラス(30cm角)の順で重ねあわせた後、真空バッグに入れ、−0.09MPaまで真空ポンプで減圧した。その後、減圧下で110℃、30分間保持し予備圧着した。予備圧着後、オートクレーブにて圧力1.5Mpa、150℃の条件で30分間保持し本圧着した。その後常温常圧まで戻すことで、本発明の熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラスを作製した。
(剥離接着力評価)
実施例1〜9および比較例1〜3の熱線遮蔽構造体に用いた熱線遮蔽層を用いて、製造例6に記載の通り剥離接着力評価用サンプルを作製した。得られたサンプルを、20℃50%RHで15時間保持し、EZ−Test((株)島津製作所製)にて密着力試験(180°剥離、剥離速度100mm/min)をして、剥離接着力を評価した。
(落球試験)
実施例1〜11および比較例1〜3で作製した30cm角の合せガラスのグリーンガラス側に対して、重さ2260g(直径82mm)を4mの高さから落下させた。落球後に、反対側(ソーダガラス側)に剥離したガラス片を集め、剥離したガラス片の重量を測定した。
実施例1〜9および比較例1〜4の熱線遮蔽層作製用の熱線吸収層用樹脂塗布液に使用した分散剤とその酸価、実施例1〜9および比較例1〜4の熱線遮蔽構造体に用いた熱線遮蔽層の剥離接着力および実施例1〜9および比較例1〜4の熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラスの落球試験結果を表2に示す。
Figure 2020132454
表2の実施例1〜9で示される通り、酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤を用いて作製した熱線遮蔽層と、シート状接着樹脂1との接着力が高く、落球試験のガラス片剥離の重さも30g以下となっており、安全性、信頼性の高い構成となっている。特に、実施例1〜6で示される、酸価が40(mgKOH/g)以上250(mgKOH/g)以下である分散剤を用いて作製した熱線遮蔽層は、シート状接着樹脂1との接着力がより高く、落球試験のガラス片剥離の重さも15g以下となっており、より好ましい構成である。さらに実施例1〜5で示される、酸価が50(mgKOH/g)以上150(mgKOH/g)以下である分散剤を用いて作製した熱線遮蔽層は、シート状接着樹脂1との接着力が極めて高く、落球試験のガラス片剥離の重さも10g以下となっているため、特に好ましい。
対して比較例1〜3は用いている、酸価が10(mgKOH/g)以下の分散剤を用いて作製した熱線遮蔽層は、シート状接着樹脂1との接着力が低く、落球試験のガラス片剥離の重さも30g以上であるため、耐衝撃性が損なわれている。
本発明の熱線遮蔽構造体は、熱線吸収層の接着性が非常に高く、その為耐衝撃性に優れるものである。また同時に可視光透過性、全日射透過率およびヘイズに関する性能が総合的に優れている。従って、住宅や自動車の空間の温度上昇を抑え、空調機器の負荷を軽減し、省エネルギーや地球環境問題に貢献できるものである。

Claims (17)

  1. (A)熱線吸収膜及び(B)熱線反射膜を有する熱線遮蔽構造体であって、前記(A)熱線吸収膜が、(A−1)無機酸化物及び/又は色素、(A−2)酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下である分散剤、及び(A−3)バインダー樹脂を含有する熱線吸収膜である熱線遮蔽構造体。
  2. 前記成分(A−1)が無機酸化物及び色素である請求項1に記載の熱線遮蔽構造体。
  3. 前記成分(A−2)の酸価が40(mgKOH/g)以上250(mgKOH/g)以下である請求項1又は2に記載の熱線遮蔽構造体。
  4. 前記成分(A−2)の酸価が50(mgKOH/g)以上150(mgKOH/g)以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  5. 前記成分(A−3)が、極性官能基と2以上のアクリロイル基とを併せ持つバインダー樹脂である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  6. 前記成分(A−3)において、極性官能基がヒドロキシ基(OH)、又はウレタン結合(NHCO)である請求項5に記載の熱線遮蔽構造体。
  7. 前記成分(A−3)の熱線吸収膜中の含有率が、熱線吸収膜の総量100質量部中10質量%以上60質量%以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  8. 更に成分(A−4)熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  9. 前記成分(A−4)が光ラジカル重合開始剤である請求項8に記載の熱線遮蔽構造体。
  10. 前記成分(A−4)が365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上1000(mL/g・cm)以下の光ラジカル重合開始剤である請求項9に記載の熱線遮蔽構造体。
  11. 更に(A−5)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  12. 前記(B)熱線反射膜が、高屈折率膜と低屈折率膜を少なくとも1層ずつ有する熱線反射膜である請求項1乃至11のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体が、支持体の上に形成されている熱線遮熱シート。
  14. (C)熱可塑性樹脂膜、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽中間膜。
  15. (C)熱可塑性樹脂膜、請求項13に記載の熱線遮熱シート、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽中間膜。
  16. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の熱線構造体、請求項13に記載の熱線遮熱シート又は請求項14若しくは15に記載の熱線遮蔽中間膜を有する透明基材用中間膜。
  17. 請求項16に記載の透明基材用中間膜が2枚のガラスの間に挿入されている合わせガラス。
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