JP2021151730A - 熱線遮蔽構造体 - Google Patents

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正充 佐竹
康弘 穂積
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康弘 穂積
達治 有福
Tatsuji Arifuku
達治 有福
研二 芥
Kenji Akuta
研二 芥
彰浩 野原
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彰浩 野原
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Abstract

【課題】反射光の着色を抑えることができるため、用いる窓やガラスの意匠を損ねることなく高い遮熱特性を有するものであり、同時に可視光透過性、全日射透過率およびヘイズに関する性能が総合的に優れる熱線遮蔽構造体の提供。【解決手段】(A)高屈折率層(A−1)および低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜を有し、該熱線反射膜の入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*が15以下である熱線遮蔽構造体。【選択図】図1

Description

本発明は、太陽光の熱輻射によって生じる車両や建物の室内温度上昇を低減するために用いられる熱線遮蔽機能を有する熱線遮蔽構造体、それを用いた熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間体、透明機材用中間膜、及び合わせガラスに関するものである。
近年、省エネルギーや地球環境問題の観点から、空調機器の負荷を軽減することが求められている。例えば、住宅や自動車の分野では太陽光からの熱線を遮蔽できる熱線遮蔽性シート(フィルム)等を窓ガラスに添付する、または熱線遮蔽機能を有する中間層を2枚のガラスの間に担持するなどして室内や社内の温度上昇を抑えることが行われている。
窓部材に熱線遮蔽機能を付与する方法として、特許文献1ではガラスとガラスの間に担持された中間層に熱線遮蔽機能を付与することが提案されており、吸収性の熱線吸収材料を含有した熱可塑性樹脂を中間層として用いることが例示されている。しかしながら熱線吸収材料は可視域の光も吸収するために熱線遮熱性能向上のため含有量を増やすと可視光透過率が損なわれるといった課題があり、熱線吸収材料だけでは熱線遮蔽性能の著しい向上は困難である。
特許文献2には、基材上の一方の面に、屈折率が相互に異なる二層以上の層で構成される熱線反射ユニットを少なくとも二つ以上有し、かつ前記基材上の反対の面に、紫外線硬化樹脂と錫ドープ酸化インジウム(ITO)又はアンチモンドープ酸化錫(ATO)を含有する熱線吸収層を有する熱線遮断フィルムであって、当該熱線吸収層に熱伝導性フィラーを含有することを特徴とする熱線遮断フィルムが開示されている。しかしながら、熱線吸収層における蓄熱による熱割れを防ぐために、熱線吸収層に熱伝導フィラーを入れる必要があり、さらに表面粗さと最大断面高さを一定範囲内とすることにより放熱を促進している。そのため、熱伝導フィラーを配合する必要があると共に、複雑な構造を必要とするため、コスト的に不利であると共に、設計自由度も低下する。
特許文献3には、遮熱微粒子と、ケイ素化合物、又は、酸化ジルコニウム等のジルコニウム化合物若しくは酸化チタン等のチタン化合物を含むコーティング液をガラス上塗布した後、500乃至600℃で焼き付けて、遮熱粒子と酸化珪素、又は、酸化ジルコニウム若しくは酸化チタンを含み、表面抵抗が10KΩ/□の電波透過性を有する熱線反射膜が開示されている。しかし、基材に塗布後600℃で焼き付けて膜を作製しているため、作成プロセスの負荷が高く、またPETフィルムのような汎用の樹脂基材には適用できないという問題がある。
また、特許文献4ではAg、Au、Pt等の貴金属微粒子を用いて電波透過性あるいは電波遮蔽性を有する熱線反射膜が開示されている。しかし、本構成では熱微粒子として貴金属を用いているため高価である事や、膜作製時に貴金属微粒子が互いに連結されている為、電波透過性能を十分に付与できないという問題がある。
さらに、特許文献5では、近赤外線領域の光線を反射するコレステリック液晶と、コレステリック液晶が反射する波長より長波長の熱線を吸収する遮熱微粒子を積層した断熱部材が開示されている。しかし、コレステリック液晶が反射する波長より長波長の熱線を吸収する遮熱微粒子を積層しているが、遮熱微粒子の樹脂バインダーに対する濃度が低く、近赤外線の長波長側の遮熱効果が不十分という問題がある。
加えて、実際に建物の窓ガラスや、自動車のフロントガラスに用いる際には、ガラスの色味についての課題も挙げられる。特に、ギラツキや、角度によって色調が変化する窓ガラスは敬遠されるため、貼付したり、合わせガラスの中に挟み込んだりした際に、反射光に着色が無い熱線遮熱膜が求められている。
特に、自動車のフロントガラスの様に、曲率を有するガラスに用いる際には、様々な角度の入射光が照射されるため、反射色が目立ちやすくなる。自動車への遮熱機能の付与は、今後の低エネルギー社会に向けて重要な課題であるが、用いている熱線反射膜に起因する着色があると、消費者の購買意欲が損なわれ、十分に社会に浸透しなくなってしまう。そのため、単純に遮熱性能が高い熱線遮蔽膜ではなく、総合的に性能に優れ、反射光の着色が少ない、実用性の高い構成の熱線遮熱膜が求められている。
特開2001−151539号公報 特開2012−126037号公報 特開平5−70178号公報 特開2002−131531号公報 国際公開第2000/111548号
これまでにも熱線遮蔽構造体は数多く研究されているが、熱線遮蔽性を向上することを目的とするものがほとんどであり、それ以外の特性が不十分である為に実用化に至っていないものも相当数存在する。特に実使用を鑑みると、熱線遮蔽構造体による反射光に着色があると、建物の窓や、自動車のガラスの意匠性が損なわれ、消費者から敬遠される懸念が高い。
本発明は、熱線遮蔽構造体の基本特性である熱線遮蔽性や低ヘイズ性、透明性、可視光透過性を損なうことなく、熱線遮蔽構造体による反射光の着色を無くし、実用性の高い構成を実現するものである。
これによって建物の窓や、自動車のガラスの意匠を損ねることなく、高い遮熱特性を備えた熱線遮蔽構造体の提供を可能となる。
本発明者らの研究によれば、熱線反射膜の入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*に注目し、これを15以下とすることで、熱線遮蔽構造体による反射光の着色を抑えることができ、遮熱特性と意匠性に優れる熱線遮蔽構造体が実現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下1)〜17)に関するものである。
1)
(A)高屈折率層(A−1)および低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜を有し、該熱線反射膜の入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*が15以下である熱線遮蔽構造体。
2)
前記(A)高屈折率層および低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜の極大反射波長が950nm以上1170nm以下であり、かつ400nm以上750nm以下の波長領域の極大反射率が20%以下である上記1)に記載の熱線遮蔽構造体。
3)
上記(A−1)高屈折率層及び(A−2)低屈折率樹脂層が微粒子を含有する上記1)又は2)に記載の熱線遮蔽構造体。
4)
上記(A−1)高屈折率樹脂層に含有される微粒子が酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、ダイヤモンド、酸化亜鉛、ホウ化物、窒化物の群から選択される少なくとも一種の微粒子である上記3)に記載の熱線遮蔽構造体。
5)
上記(A−2)低屈折率樹脂層に含有される微粒子が酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、中空酸化ケイ素の群から選択される少なくとも一種の微粒子である上記3)又は4)に記載の熱線遮蔽構造体。
6)
上記(A)において、高屈折率層(A−1)および低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造が4層以上11層以下である上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
7)
上記(A)において、繰り返し多層構造における高屈折率層(A−1)の各層厚の最大値と最小値の差が50nm以内であり、繰り返し多層構造における低屈折率層(A−2)の各層厚の最大値と最小値の差が50nm以内である上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
8)
更に(B)熱線吸収膜を有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
9)
上記(B)熱線吸収膜が、(B−1)無機酸化物及び/又は色素、(B−2)バインダー樹脂、及び(B−3)光重合開始剤を含有する熱線吸収膜である上記8)に記載の熱線遮蔽構造体。
10)
上記(B−1)が無機酸化物、及び色素である請求項9に記載の熱線遮蔽構造体。
11)
上記(B−2)が極性官能基と2以上のアクリロイル基を併せ持つバインダー樹脂である上記9)又は10)に記載の熱線遮蔽構造体。
12)
上記(B−3)が、365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上1000(mL/g・cm)以下である上記8)乃至11)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
13)
上記(B)熱線吸収膜が、更に(B−4)シランカップリング剤を含有する上記9)乃至12)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
14)
上記(B)熱線吸収膜が、更に(B−5)分散剤を含有する上記9)乃至13)のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
15)
更に支持体を有する上記1)乃至14)に記載の熱線遮蔽構造体。
16)
更に(C)熱可塑性樹脂膜を2層以上有し、上記1)乃至15)に記載の熱線遮蔽構造体を挟み込んでなる熱線遮蔽構造体。
17)
更に(D)ガラスを2枚以上有し、上記1)乃至16)に記載の熱線遮蔽構造体を挟み込んでなる熱線遮蔽構造体。
本発明の熱線遮蔽構造体は、熱線遮蔽構造体による反射光の着色を抑えることができるため、用いる窓やガラスの意匠を損ねることなく高い遮熱特性を有するものである。また同時に可視光透過性、全日射透過率およびヘイズに関する性能が総合的に優れている。
特に、自動車のフロントガラスの様に、曲率を有するガラスに用いる際には、様々な角度の入射光が照射されるため、反射色が目立ちやすくなるが、本発明の熱線遮蔽構造体を用いると、着色を抑えた状態で、高い熱線遮蔽効果を期待することができる。
また、本発明の熱線遮蔽構造体を用いると、熱線反射膜の製造時に発生する色ムラも抑制することができるため、窓やフロントガラスの外観を損ねること無く、遮熱機能を付与することができる。
従って、本発明の熱線遮蔽構造体を用いれば、社会に受け入れられ易く、高性能な熱線遮蔽機能を有する構造体や、熱線遮蔽シート、熱線遮蔽中間膜、透明基材用中間膜、及び合せガラスを提供することができる。
実施例19に記載の合わせガラスの反射光波形と透過光波形を表す図である。
本発明の熱線遮蔽構造体は、高屈折率層(A−1)と低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜(A)を有する熱線遮蔽構造体に関する。なお、本明細書中、上付きのRTMは登録商標を意味する。
[(A)熱線反射膜]
本発明を構成する熱線反射膜(A)とは、780nm〜2500nmの波長の光を反射し、熱エネルギーを透過させない膜である。ただし、全ての熱エネルギーを完全に透過させないものである必要はなく、反射率が20%以上、より好ましくは25%以上程度であってもよい。一般的に熱線反射膜は、高屈折率層と低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜、コレステリック液晶を用いた熱線反射膜、少なくともAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する熱線反射層等を挙げることができるが、本願発明を構成する(A)熱線反射膜は、高屈折率層(A−1)と低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造である。ただし、当該多層構造であれば、例えばコレステリック液晶を用いた熱線反射膜やAu、Ag、Cu、Alのいずれかを含有する熱線反射層を併用することを除外するものではない。
本発明を構成する熱線反射膜(A)は、入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*が15以下である。
ここでΔE*とはC光源(CIEが規定する標準光)の反射光の色調をCIE1976に規定されるL*a*b*表色系で数値化したときの、入射角10度で入光した際の座標と入射角50度で入光した時の座標の距離を意味する。
入射角10度および50度のL*a*b*は、例えば可変角絶対反射測定装置などの、試料に対して入射光の角度を変更して測定できる分光光度計を用いて、10度および50度で入光した際の可視域のスペクトルを測定し、得られたスペクトルデータよりCIE1976に規定される計算式に基づいて、算出することができる。
ΔE*として好ましくは14以下であり、更に好ましくは13以下であり、特に好ましくは12以下である。なお下限としては特に制限はないが、0が好ましい。
ΔE*が15を上回ると、例えば正面から見た際の反射色が無色であったとしても、角度を変えて観察すると着色が見られるようになり、好ましくない。また、自動車のフロントガラスのように、曲率を有する曲げガラス等に熱線反射膜を用いる際には、様々な入射光が入るため、反射色が目立ちやすくなるため、ΔE*が15以下であることが、特に重要である。
本発明を構成する熱線反射膜(A)は、極大反射波長が950nm以上1170nm以下であり、かつ400nm以上750nm以下の波長領域の極大反射率が20%以下である。
極大反射波長の上限として更に好ましくは1150nmであり、特に好ましくは1020nmである。また下限として更に好ましくは990nmであり、特に好ましくは1015nmである。従って最も好ましい極大反射波長の範囲は1015nm以上1120nm以下である。
極大反射波長が950nmより短くなると、可視光領域に反射が見られ、反射光が赤味を帯びると共に、入射光の角度によって色味が変化するようになり、実用的でなくなる。特に入射角が大きい状態になると、強い赤味を帯びるようになり、好ましくない。また、極大反射波長が1170nmを超えると、短波長側にある第二の極大反射が可視光領域に到達し、反射光が青味を帯びると共に、入射光の角度によって色味が変化するようになり、好ましくない。
400nm以上750nm以下の波長領域の極大反射率として、更に好ましくは18%であり、特に好ましくは15%である。なお下限としては特に制限はないが、0%が好ましい。
熱線反射膜(A)の極大反射波長は、例えば分光光度計等で測定して求めることができる。極大反射波長を測定する場合は、正反射スペクトルもしくは積分級を用いた拡散反射スペクトルを測定し、極大反射波長を求める。また、正反射スペクトルを測定する際は、入射角を可能な限り0度に近づけて測定する。なお、再外層に低屈折率層(A−2)が配されている場合、反射防止効果により反射層の真の極大反射波長が得られない場合がある。その場合は、例えば粘着剤付きの透明ポリエステルフィルムを、熱線反射膜(A)の低屈折率層(A−2)の上にラミネートしたり、熱可塑性樹脂を用いて2枚のガラスの間に熱線反射膜(A)を挟み込んだ合わせガラスを作製したりして、極大反射波長を求める。
[(A−1)高屈折率層]
本発明を構成する(A−1)高屈折率層は、屈折率が高い誘電体微粒子を含有する構成である場合が好ましい。屈折率が高い誘電体微粒子としては、可視光領域の吸収が少なく、赤外線領域で高屈折率を示す微粒子が適しており、例えば酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、ダイヤモンド等の誘電体微粒子を例示することができる。このうち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、ダイヤモンドが好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンが特に好ましい。また、前記誘電体微粒子ではないが、赤外線領域で高屈折率を示し、かつ、赤外吸収能を有する微粒子としてホウ化物、窒化物を例示することができる。具体的には六ホウ化ランタン、窒化チタンが好適である。なおこれらの微粒子は単独または2種類以上で用いても良く、さらに積層膜中の各々の高屈折率樹脂層において別々の微粒子を用いても構わない。
(A−1)高屈折率層の屈折率は、好ましくは、1.60以上2.40以下程度であり、より好ましくは1.80以上2.10以下程度である。
また、550nmでの屈折率から780nm〜1500nmでの任意波長における屈折率を差し引いた値が0.1以下である事が好ましい。
なお本明細書中において「〜」は前後の数値を含むものとする。
(A−1)高屈折層に含まれる上記微粒子としては、一次粒子径が300nm以下、好ましくは1nm〜200nmのものが用いられる。一次粒子径が300nmより大きくなると赤外線遮蔽シートにした際、ヘイズ値が高くなり視認性が劣ってしまう。なお、粒径はBET法で測定された比表面積より算出された平均一次粒子径である。
当該微粒子の一次粒子径の下限としては、更に好ましい順に2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、8nmであり、上限としては更に好ましい順に150nm、120nm、100nm、80nm、50nm、40nm、25nmである。すなわち最も好ましい一次粒子径の範囲は、8nm〜25nmである。
さらに(A−1)高屈折層の厚さとしては、用いる粒子の屈折率により最適な膜厚は異なるが、一般的に80nm以上200nm以下である場合が好ましい。更に好ましい上限としては180nmであり、特に好ましい上限としては160nmである。更に好ましい下限としては100nmであり、特に好ましい下限としては120nmである。従って、最も好ましい厚さは120nm以上160nm以下である。
[(A−2)低屈折率層]
本発明を構成する(A−2)低屈折率層は、屈折率が低い誘電体微粒子を含有する構成である場合が好ましい。屈折率が低い誘電体微粒子とは、可視光領域の吸収が少なく、赤外線領域で良好な吸収を有し、且つ屈折率が高屈折率樹脂層含有微粒子よりも相対的に低い屈折率を有しているものが適している。そのようなものとして、赤外線領域にプラズマ波長を持っている電気伝導性の金属酸化物微粒子が挙げられる。具体的には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン等を例示することができる。また低屈折率である、中空酸化ケイ素、中空アクリルビーズ等の中空微粒子も有用な例として挙げることができる。このうち、可視光領域に光吸収性の少ない酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、中空酸化ケイ素、が好ましく、酸化インジウム又は中空酸化ケイ素がさらに好ましく、酸化インジウムが特に好ましい。
またこれらの金属酸化物微粒子の電気導電性を向上させるために第三成分をドープまたは酸素欠陥を有することが好ましい。このためのドーパントとしては、酸化スズに対してはSb、V、Nb、Ta等が挙げられ、酸化インジウムに対してはZn、Al、Sn、Sb、Ga、Ge等が挙げられ、酸化亜鉛に対しては、Al、Ga、In、Sn、Sb、Nb等が挙げられ、酸化タングステンに対して酸素欠陥WOx(但し、2.45≦x≦2.999)、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cu等が挙げられる。これらの中でも、Snドープ酸化インジウム(ITOともいう)が好ましい。
さらに低屈折率樹脂層に含有される微粒子は、60MPaで圧縮した際の粉体抵抗が100Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下、より好ましくは1Ω・cm以下の微粒子が用いられる。粉体抵抗が100Ω・cmより高い微粒子を用いた場合、微粒子のプラズマ共鳴に由来する吸収が2500nmより大きくなり赤外線遮蔽効果が低減する。なお、粉体抵抗の測定法として、粉体抵抗測定システムMCP−PD51型(三菱化学アナリテック製)が好ましいが、これに限定されるものではない。
(A−2)低屈折層に含まれる上記微粒子としては、一次粒子径が300nm以下、好ましくは1nm〜200nmのものが用いられる。一次粒子径が300nmより大きくなると赤外線遮蔽シートにした際、ヘイズ値が高くなり視認性が劣ってしまう。なお、粒径はBET法で測定された比表面積より算出されたものである。
当該微粒子の一次粒子径の下限としては、更に好ましい順に2nm、3nm、4nm、5nmであり、上限としては更に好ましい順に150nm、120nm、100nm、80nmである。すなわち最も好ましい一次粒子径の範囲は、5nm〜80nmである。
(A−2)低屈折層の厚さとしては、用いる粒子の屈折率により最適な膜厚は異なるが、一般的に130nm以上280nm以下である場合が好ましい。更に好ましい上限としては260nmであり、特に好ましい上限としては240nmである。更に好ましい下限としては150nmであり、特に好ましい下限としては170nmである。従って、最も好ましい厚さは170nm以上240nm以下である。
[(A−1)高屈折率層と(A−2)低屈折率層との関係について]
(A−1)高屈折率層と(A−2)低屈折率層とを交互に積層してなる熱線遮蔽構造体は、赤外線領域における両者の屈折率差と、高屈折率層の屈折率の絶対値とが赤外線反射機能を決定するのに重要となる。即ち、屈折率差、屈折率の絶対値とも大きい方が熱線反射機能は大きくなる。
本発明において、少なくとも隣接した2層(高屈折率層と低屈折率層)の屈折率差が反射させる赤外線波長において0.2以上であることを特徴とする。好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上である。屈折率差が0.2未満の場合は、熱線反射率を所望の値にする為には積層数が多くなり、可視透過率が低下し、また製造コストが増加するため好ましくない。
反射させる赤外線波長λは一般的に式(1)で与えられる。nH、dHは高屈折率樹脂層の屈折率、幾何学膜厚、nL、dLは低屈折率樹脂層の屈折率、幾何学膜厚である。

nHdH + nLdL = λ/2 ・・・ (1)

ここで、高屈折率樹脂層と低屈折率樹脂層はλ/4の整数倍となるよう同じ光学膜厚(屈折率nと幾何学膜厚dの積)にすることが好ましい。また、反射させる赤外線波長は780nm〜1500nmが好ましい。780nm未満の場合は、可視光領域になるため可視光透過率が低下するので好ましくない。加えて、可視光領域に反射波長が達するため、反射光が赤味を帯びるようになり実用的でなくなる。また、1500nm以上では低屈折率樹脂層に含有される微粒子による吸収があるので赤外線遮蔽効果が薄れる為好ましくない。即ち高屈折率樹脂層、低屈折率樹脂層の780nm〜1500nmの波長における光学膜厚は195nm〜375nmが好ましい。
本発明の多層膜は、繰り返し多層構造における高屈折率層(A−1)の各層厚の最大値と最小値の差が50nm以内であり、繰り返し多層構造における低屈折率層(A−2)の各層厚の最大値と最小値の差が50nm以内であることが好ましい。高屈折率層(A−1)においても、低屈折率層(A−2)においても、各層の厚みが異なると、光学干渉が起こる波長がずれて、極大反射率が低くなり、遮熱性能が下がる。また、各層で異なる厚みの設計にすると、製造時の条件が複雑になり、コストアップに繋がる。そのため、高屈折率層(A−1)および低屈折率層(A−2)のそれぞれにおいて、各層の厚みのばらつきが、小さいことが好ましい。
本発明の多層膜の層数は、(A−1)2層(A−2)1層、又は(A−1)1層(A−2)2層の3層以上であれば特に制限はない。しかし、(A−1)、(A−2)がそれぞれ2層以上である、4層以上11層以下であることが好がましい。多層膜の層数が4未満であると赤外線の反射機能が不十分であり、また、11層以上になると製造コストの増加、可視光透過率、耐久性の低下、膜応力増加によるフィルムのカールが問題となるので好ましくない。好ましい層数の下限としては更に好ましくは5層である。また好ましい層数の上限は10層でありさらに好ましくは7層である。従って、最も好ましい層数は5層以上7層以下である。
本発明において高屈折率層、低屈折率層の表面抵抗は10Ω/□以上、好ましくは10Ω/□以上、より好ましくは10Ω/□以上である。10Ω/□より低いと、電波を透過しなくなるので好ましくない。
また、各層の表面の最大高低差は70nm以下、好ましくは60nm以下、より好ましくは50nm以下である。凝集微粒子がなくなるまで分散させてから薄膜塗工をすると、好ましい微粒子層表面の最大高低差が得られる。また、70nm以上の表面粗さがあると、膜表面で入射した近赤外光の散乱が起きてしまい、良好な反射性能を付与できなくなる。
<(A)熱線反射膜の製造方法>
本発明に用いられる(A)熱線反射膜の製造方法としては、一般的に1)高屈折率樹脂の製造、2)低屈折率樹脂の製造、3)積層、乾燥という工程からなる。
[樹脂の製造工程]
1)高屈折率樹脂及び2)低屈折率樹脂の製造においては、バインダーとなるバインダー樹脂に上記各微粒子を分散することによって製造する。なお、アクリルモノマーのような低分子化合物も、バインダーとして使用されうるものであれば、本明細書においてはバインダー樹脂と表現する。
ここで、平滑性、低ヘイズ、電波透過性を満たす為に微粒子を適切に分散する事は重要である。分散方法として、サンドミル、アトライター、ボールミル、ホモジナイザー、ロールミル、ビーズミルを用いることが好ましい。これらの中でもビーズミルが特に好ましい。ビーズミルを用いた場合、周速は3m/s〜10m/sが好ましい。3m/sより低くなると、微粒子を十分分散できずに、10m/sより高くなると特に低屈折率樹脂層に含有される微粒子の表面が傷つけられ、性能が低下する。適正な範囲は用いる装置、バインダー、分散時の微粒子濃度等によって若干異なるが、比較的低い分散エネルギーで分散させた方が良い。さらに、粗粒子が残る場合は更に濾過、遠心分離などの処理で粗粒子を除く事が好ましい。
分散に使用する溶媒とは、特に限定されるものではないが、本発明では水や有機溶媒、また、各々配合し混合物として使用しても良い。有機溶媒としては、例えば炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル等)、エーテル系溶媒(イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1、4−ジオキサン等)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等)、グリコールエーテル系溶媒(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリコールエステル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム等)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン)や、ピリジン、テトラヒドロフラン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドが挙げられる。好ましくは、水、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、炭化水素系溶媒であり、より好ましくは、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンである。
分散剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17(共栄社化学(株)製)、ソルプラスAX5、ソルプラスTX5、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250(日本ルーブリゾール(株)製)、EFKA4008、EFKA4009、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4060、EFKA4080、EFKA7462、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4320、EFKA4330、EFKA4340、EFKA5065、EFKA5220、EFKA6220、EFKA6225、EFKA6230、EFKA6700、EFKA6780、EFKA6782、EFKA8503(BASFジャパン(株)製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL−12(味の素ファインテクノ(株)製)、TEXAPHOR−UV21、TEXAPHOR−UV61(コグニスジャパン(株)製)、DisperBYK101、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK108、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK130、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK161、DisperBYK162、DisperBYK163、DisperBYK164、DisperBYK166、DisperBYK167、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK171、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK182、DisperBYK192、DisperBYK193、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2020、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2070、DisperBYK2155、DisperBYK2164、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ディスパロン1751N、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン1934、ディスパロンDA−400N、ディスパロンDA−703−50、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−7301、ディスパロンDN−900、ディスパロンNS−5210、ディスパロンNVI−8514L、ヒップラードED−152、ヒップラードED−216、ヒップラードED−251、ヒップラードED−360(楠本化成(株))、FTX−207S、FTX−212P、FTX−220P、FTX−220S、FTX−228P、FTX−710LL、FTX−750LL、フタージェント212P、フタージェント220P、フタージェント222F、フタージェント228P、フタージェント245F、フタージェント245P、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント710FM、フタージェント730FM、フタージェント730LL、フタージェント730LS、フタージェント750DM、フタージェント750FM((株)ネオス製)、AS−1100、AS−1800、AS−2000(東亞合成(株)製)、カオーセラ2000、カオーセラ2100、KDH−154、MX−2045L、ホモゲノールL−18、ホモゲノールL−95、レオドールSP−010V、レオドールSP−030V、レオドールSP−L10、レオドールSP−P10(花王(株)製)、エバンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA−167、ブライサーフA219B、ブライサーフAL(第一工業製薬(株)製)、メガファックF−477、メガファック480SF、メガファックF−482、(DIC(株)製)、シルフェイスSAG503A、ダイノール604(日信化学工業(株)製)、SNスパーズ2180、SNスパーズ2190、SNレベラーS−906(サンノプコ(株)製)、S−386、S−420(AGCセイミケミカル(株)製)といったものが例示できる。
このうち、アニオン系分散剤がより好ましく、酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下のアニオン系分散剤が更に好ましく、酸価が40(mgKOH/g)以上250(mgKOH/g)以下のアニオン系分散剤が特に好ましく、酸価が50(mgKOH/g)以上150(mgKOH/g)以下のアニオン系分散剤が最も好ましい。
分散剤を使用する場合にその含有量は、高屈折率樹脂又は低屈折率樹脂の総量100質量部中1質量部以上45質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、40質量部、更に好ましくは35質量部、特に好ましくは30質量部、最も好ましくは25質量部である。
また好ましい下限としては、5質量部、更に好ましくは8質量部、特に好ましくは10質量部、最も好ましくは15質量部である。
分散に使用するバインダーとしては、微粒子を分散維持できる樹脂であれば、特に制限はなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を混合させたものであっても良い。
熱硬化性樹脂としては、加熱により硬化可能な官能基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテルを有する硬化性化合物が挙げられる。また、光硬化性樹脂としては、光照射により硬化可能な官能基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリル基等の不飽和二重結合を有する硬化性化合物を有する樹脂が挙げられる。
上記環状エーテルを有する熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。なかでも、反応速度や汎用性の観点からエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキセタン樹脂が好適である。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等のビスフェノール型等が挙げられる。また、その他にグリシジルアミン等も挙げられる。
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロンN−740、N−770、N−775(以上、いずれも大日本インキ化学製)、エピコート152、エピコート154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型としては、例えば、エピクロンN−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−695、N−665−EXP、N−672−EXP(以上、いずれも大日本インキ化学製);ビフェニルノボラック型としては、例えば、NC−3000P(日本化薬製);トリスフェノールノボラック型としては、例えば、EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれもジャパンエポキシレジン製);ジシクロペンタジエンノボラック型としては、例えば、XD−1000−L(日本化薬製)、HP−7200(大日本インキ化学製);ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン製)、エピクロン850、エピクロン860、エピクロン4055(以上、いずれも大日本インキ化学工業製);ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エピコート807(ジャパンエポキシレジン製)、エピクロン830(大日本インキ化学工業製);2,2’−ジアリルビスフェノールA型としては、例えば、RE−810NM(日本化薬製);水添ビスフェノール型としては、例えば、ST−5080(東都化成製);ポリオキシプロピレンビスフェノールA型としては、例えば、EP−4000、EP−4005(以上、いずれも旭電化工業製)等が挙げられる。
上記オキセタン化合物の市販品として、例えば、エタナコールEHO、エタナコールOXBP、エタナコールOXTP、エタナコールOXMA(以上、いずれも宇部興産製)等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2080、セロキサイド3000(以上、いずれもダイセル・ユーシービー製)等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリル基等を有する樹脂が挙げられ、なかでも反応性や汎用性の面より(メタ)アクリル基を有する樹脂が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル基とは、アクリル基又はメタクリル基のことをいう。
(メタ)アクリル基を有する樹脂としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD DPHA等)、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4、4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
これらモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートは、そのエポキシ基に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は一般的に知られている方法により行うことができる。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80℃〜110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。
また、上記バインダーは、必要に応じて、光反応開始剤や熱硬化剤を加える事ができる。光反応開始剤としては、光照射により、硬化性樹脂中の不飽和二重結合やエポキシ基等を重合反応させるためのものであれば特に制限は無く、例えば、カチオン重合型光開始剤やラジカル重合型光開始剤が挙げられる。また、熱硬化剤としては、加熱により硬化性樹脂中の不飽和二重結合やエポキシ基等を反応させ、架橋させるためのものであれば特に制限は無く、例えば酸無水物、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、ジヒドラジン類、ルイス酸、ブレンステッド酸塩類、ポリメルカプトン類、イソシアネート類、ブロックイソシアネート類等が挙げられる。
高屈折率樹脂又は低屈折率樹脂中の微粒子の含有率は20質量%〜95質量%、好ましくは30質量%〜90質量%、より好ましくは40質量%〜90質量%である。95質量%より多くなると、バインダー成分が少なくなる為、膜が硬化しなくなり、積層することが困難となる。さらに、電気伝導性微粒子の場合、微粒子同士が繋がるため電波透過性能が付与できなくなる。また、20質量%より少なくなると、樹脂バインダーの屈折率が支配的となり赤外反射性能を付与できなくなる。
[積層、乾燥工程]
高屈折率樹脂、低屈折率樹脂が、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することが好ましい。塗布方式について特に限定しないが、コンマコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター等が挙げられるが、各層の平滑性の為に好ましくはバーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター等の薄膜作製に適したコーティング装置の使用が良い。また塗布後、一定の温度条件下で乾燥させ、これを繰り返すことで(A−1)高屈折率層、(A−2)低屈折率層を形成する。塗布後の乾燥温度は、溶剤の揮発性や、基材フィルムの耐熱性等を鑑みて設定する。一般的には40度〜120度の範囲で設定することが多い。
[(B)熱線吸収膜]
本発明の熱線遮蔽構造体は、(A)熱線反射膜に加えて、更に(B)熱線吸収膜を有する構造が好ましい。この(B)熱線吸収膜としては、(B−1)無機酸化物及び/又は色素、(B−2)バインダー樹脂、(B−3)光重合開始剤を有する場合が更に好ましい。
[(B−1)無機酸化物及び/又は色素]
無機酸化物としては、近赤外部から遠赤外部にかけて良好な吸収特性を有している遮熱微粒子が適しているものであれば特に限定されないが、可視光の透過性に優れているものを用いることが好ましい。例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン等を例示することができる。このうち、可視光領域に光吸収性のない酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛又は酸化タングステン等の金属酸化物の微粒子が好ましく、酸化インジウム又は酸化タングステンがより好ましく、酸化インジウムの微粒子が特に好ましい。また、これらの酸化物の電気導電性を向上させるために第三成分をドープすることが好ましい。このためのドーパントとしては、酸化錫に対してはSb、V、Nb、Ta等が選ばれ、酸化インジウムに対してはZn、Al、Sn、Sb、Ga、Ge等が選ばれ、酸化亜鉛に対しては、Al、Ga、In、Sn、Sb、Nb等が選ばれ、酸化タングステンに対しては、Cs、Rb、K、Tl、In、Ca、Sr、Fe、Sn、Al等が選ばれる。本発明においては、錫含有酸化インジウム(ITOともいう)、セシウム含有酸化タングステン(CWOともいう)又はアンチモン含有酸化錫(ATO)がより好ましく、錫含有酸化インジウム(ITO)又はセシウム含有酸化タングステン(CWOともいう)が更に好ましい。ドーパントの含量は特に限定されないが、ドーパントされた金属の総量に対して、1〜20質量%程度、好ましくは、5〜15質量%程度である。ITOにおける錫含量も同じである。
また、上記無機酸化物は、平均粒子径が200nm以下、通常1〜100nmの微粒子が用いられる。該微粒子の平均粒子径としては、10〜50nmが好ましく、より好ましくは10〜40nmであり、最も好ましくは10〜30nm程度である。該平均粒子径は、BET(Brunauer,Emmet and Teller equation)法によって求められた比表面積より算出されたものである。平均粒子径が大きくなり過ぎると熱線遮蔽シートにした際、ヘイズ値が高くなり視認性が劣ってしまう。
また、該微粒子としては、60MPaで圧縮した際の粉体抵抗(粉体抵抗測定システムMCP−PD51型、三菱化学アナリテック(株)製で測定)が通常100Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下、より好ましくは2Ω・cm以下であり、最も好ましくは、1Ω・cm以下の微粒子が用いられる。下限は特にないが、通常0.1Ω・cm以上であり、製造のし易さなどからは0.4Ω・cm以上が好ましい。粉体抵抗が100Ω・cmより高い微粒子を用いた場合、該微粒子のプラズマ振動に由来する反射が2500nmより大きくなり熱線遮蔽効果が低減する。
該微粒子の製法は、上記のものが得られれば特に制限はなく、気相合成法、液層合成法等の公知の方法により得ることができる。例えば酸化インジウム微粒子については、特開平6−227815号公報に開示されている方法で良い。すなわち、特定の微粒子元素を含んだ塩の水溶液をアルカリにより中和し、得られた沈殿物をろ過、洗浄し、高温で加熱処理することにより微粒子を得る方法である。また、酸化錫微粒子、酸化亜鉛微粒子の製法については、それぞれ特開平2−105875号公報、特開平6−234522号公報に開示されている。また、上記性能を満たす微粒子であれば、市販されているものでも構わない。市販品としては、ITOまたは超微粒ITO等として、CIKナノテック(株)、住友金属工業(株)、三菱マテリアル(株)等から販売されており、上記の平均粒子経と粉体抵抗値を満たすものは何れも使用可能である。その中でも、ITO−R(CIKナノテック(株)製)はより好ましい。
また色素としては、無機系、有機系の染料および顔料のいずれでも良く特に限定されないが、可視光透過率を損なわずに熱線遮蔽性能を向上するためには波長500nm〜600nmに極大吸収を有さない色素が好ましい。
無機系顔料として、例えばコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素等を用いることができる。この内好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、鉛系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素であり、更に好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素であり、特に好ましくはコバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、マンガン系色素、銅系色素、ランタン系色素である。
有機系顔料、有機系染料としては、例えばジイモニウム系色素、アンスラキノン系色素、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、ポルフィラジン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素等を用いることができる。このうち好ましくはポルフィラジン系色素であり、下記式(1)で表されるものが好ましい。
Figure 2021151730
式(1)中、Mは金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、若しくは金属ハロゲン化物、又は水素原子を表し、環A、B、C及びDの破線部は、それぞれ独立に、下記式(2)〜(8)の何れか一つの構造であり、Xは低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基、スルホンアミド基を表し、Yは二価の架橋基を、Zはスルホン酸基、カルボキシ基、第1または2級アミンの窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基、酸アミド基、又は窒素原子を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基を表し、a及びbはそれぞれの基の数を表し、いずれも平均値であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上12以下であり、かつ、aとbとの和は0以上12以下である。下記式(2)〜(8)は開口部で、骨格構造へ結合して、環A、B、C及びDの芳香環を形成する。
Figure 2021151730
環A、B、C又はDの破線部が、上記式(3)又は(4)であるとき、形成される芳香環はピリジン環であり、該破線部が上記式(5)〜(7)のいずか一つであるとき形成される芳香環はピラジン環であり、該破線部が上記式(8)であるとき、形成される芳香環はナフタレン環である。Zにおける第1又は第2級アミンの窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基としてはモノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基等を挙げることができる。また、酸アミド基としては、置換基を有してもよいフタル酸アミド基等を挙げることができる。窒素原子を含む複素環の窒素原子上の水素の少なくとも1つを除いた残基としては、置換基を有してもよいピリジノ基、置換基を有してもよいピペラジノ基、又は置換基を有してもよいピペリジノ基等を挙げることができる。
前記式(1)中、環A乃至Dにおける芳香環としては、例えば、ベンゼン環またはナフタレン環をはじめ、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環等の窒素原子を1個又は2個含む含窒素複素芳香環が挙げられる。これらの中ではベンゼン環、ピリジン環及びナフタレン環からなる群から選択される何れか一つ又は2つの組み合わせが好ましく、全てが同じ芳香環であってもよい。環A乃至Dのうち、平均で、1〜4個、好ましくは2〜4個の、ピリジン環又はナフタレン環を含む方が好ましい。この場合、残りはベンゼン環である。より好ましくはベンゼン環が0〜2個で、ピリジン環が0〜3個、ナフタレン環が1〜4個の範囲内で合計が4となる組合せである。更に好ましい組み合わせを挙げれば、ベンゼン環が0〜2個で、ナフタレン環が2〜4個の範囲で合計が4となる組み合わせ又はピリジン環が1〜3個及びナフタレン環が1〜3個の範囲で、両者の合計が4となる組み合わせである。なお、環A乃至Dがピリジン環とナフタレン環の組合せからなる態様はより好ましい態様の一つである。また、ピリジン環の中では、前記式(4)の構造から形成されるピリジン環が好ましい。
前記式(1)において、Mは水素原子、金属原子、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属ハロゲン化物を表す。Mが水素原子以外である場合、該Mは式(1)におけるポルフィリン環がいわゆる中心金属を有することを意味する。又、Mが水素原子である場合、該ポルフィリン環は中心金属を有しないことを意味する。
前記Mにおける金属原子の具体例としては例えば、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb又はBi等が挙げられる。
金属酸化物としてはVO又はGeO等が挙げられる。金属水酸化物としては例えば、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)又はAlOH等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては例えば、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl又はAlCl等が挙げられる。これらの中でも、Fe、Co、Cu、Ni、Zn、Al又はV等の金属原子、VO等の金属酸化物、又は、AlOH等の金属水酸化物等が好ましい。より好ましくはCu又はVOが挙げられ、VOが最も好ましい。
前記式(1)中のXは低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホン酸基又はスルホンアミド基を示す。なお、本明細書における「低級」とは炭素数1〜4を示す。
Yにおける二価の連結基としては例えば炭素数1〜3のアルキレン基、−CO−、−SO−又は−SONH(CH)c−(ここで、cは0〜4を表す)が挙げられる。好ましいYは、炭素数1〜3のアルキレン基又は−SONH−であり、炭素数1〜3のアルキレン基がより好ましい。好ましいZとしては例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、置換基を有してもよいフタルイミド基、置換基を有してもよいピペラジノ基、置換基を有してもよいピペリジノ基等を挙げることができる。より好ましいZはカルボキシ基、スルホン酸基、又は、置換基を有してもよいフタルイミド基であり、置換基を有してもよいフタルイミド基が更に好ましい。なお、Zが置換基を有してもよいフタルイミド基、置換基を有してもよいピペラジノ基又は置換基を有してもよいピペリジノ基であるときの置換基としては低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子又はスルホン酸基等を挙げることができる。Zが、上記の置換基を有してもよい基であるとき、無置換又はハロゲノ置換された基が好ましい。より好ましいZは、無置換又はハロゲノ置換フタルイミド基であり、無置換フタルイミドが最も好ましい。
式(1)の近赤外線吸収色素において置換アミノ基は特に限定されないが、例えば低級アルキル基又は低級アルコキシ基が置換したアミノ基が含まれる。なおハロゲン原子としてはCl、Br又はIが好ましい。
前記式(1)中のa、bはそれぞれ0以上12以下、かつ、aとbとの和は0以上12以下である。好ましくはa、bはそれぞれ独立に0以上4以下で、且つ、aとbとの和は0以上4以下である。本発明においては、式(1)においてaとbが共に0であるポルフィラジン色素が好ましい。
前記式(1)で表されるポルフィラジン色素の具体例を下記表2−1に化合物No.と共に示す。下記の例は、本発明の色素を具体的に説明するために代表的な色素を示すものであり、本発明は下記の例に限定されるものではない。また、環A乃至Dの含窒素複素芳香環が前記式(3)、(4)及び(6)である場合、窒素原子の位置異性体が存在し、色素合成の際には異性体の混合物として得られる。これら異性体の単離は困難であり、また分析による異性体の特定も困難である。このため、通常は混合物のまま使用する。本発明の色素は、このような混合物も含むものである。本明細書においては、これらの異性体等を区別することなく、構造式で表示される場合は、便宜的に代表的な1つの構造式を記載する。表1において、A乃至Dの欄の数字は、前記式(2)〜(8)の式番号を示し、a及びbの欄には、それぞれ、a及びbの値を示し、X、Y及びZの欄には基名を示した。X、Y及びZの欄における横線−は置換基が無いことを示す。
Figure 2021151730
前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は一般に公知の化合物であるか、若しくは公知の化合物に準じて容易に合成することができる。前記式(1)で表されるポルフィラジン色素は、例えば、国際公開第2010/143619号及び国際公開第2010/013455号に開示された公知の方法に準じて合成することができる。なお、上記方法によって得られる前記式(1)で表される化合物は、環A乃至Dにおける含窒素複素芳香環の置換位置、及び含窒素複素芳香環の窒素原子の置換位置に関する位置異性体の混合物となることも、上記公知文献に記載の通りである。また、前記表1におけるNo.3やNo.18で示される化合物は、上記国際公開の他、例えば、特許第2507786号公報及び特許第3813750号公報に開示された公知の方法に準じても合成することができる。
また、無機酸化物と色素はいずれか一方が存在すれば本願発明の効果は得られるが、より好ましい態様としては、無機酸化物及び色素の両方を含有する態様である。
成分(B−1)の(B)熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中5質量部以上60質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、60質量部、更に好ましくは50質量部、特に好ましくは40質量部、最も好ましくは30質量部である。
また好ましい下限としては、5質量部、更に好ましくは10質量部、特に好ましくは15質量部、最も好ましくは20質量部である。
成分(B−1)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は20質量部以上30質量部以下である。
なお、無機酸化物及び色素の両方を用いる場合、無機酸価物:色素の比として、好ましくは20:1〜1:1であり、更に好ましくは15:1〜2:1であり、特に好ましくは12:1〜5:1である。
[(B−2)バインダー樹脂]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(B−2)バインダー樹脂を含有する。なお、アクリルモノマーのような低分子化合物も、バインダーとして使用されうるものであれば、本明細書においてはバインダー樹脂と表現する。
(B−2)は成分(B−1)の微粒子を分散維持できる樹脂であれば、特に制限はない。通常、熱可塑性樹脂、又は/及び、熱又は光で硬化する硬化性樹脂(熱または光硬化性樹脂とも言う)(具体的には熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂)の硬化物等が挙げられる。
成分(B−2)の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中20質量部以上95質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、95質量部、更に好ましくは90質量部、特に好ましくは80質量部、最も好ましくは70質量部である。
また好ましい下限としては、20質量部、更に好ましくは30質量部、特に好ましくは40質量部、最も好ましくは50質量部である。
成分(B−2)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は50質量部以上70質量部以下である。
成分(B−2)に用いられうる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を混合させたものであっても良い。これらの熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000〜1,000,000程度であり、好ましくは2000乃至500,000程度、より好ましくは2000〜200,000程度である。熱可塑性樹脂として好ましい樹脂は、透明性等の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましく、例えば(メタ)アクリレートポリマー、特に(メタ)アクリル共重合体等が好ましい。
成分(B−2)に用いられうる熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテルを有する硬化性化合物が挙げられる。
上記環状エーテルを有する熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂を含む脂肪族エポキシ樹脂または芳香族エポキシ樹脂)、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。なかでも、反応速度や汎用性の観点からエポキシ樹脂(脂肪族環、例えば炭素数3〜12の脂肪族環を含んでいても良い)、オキセタン樹脂が好適である。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’−ジアリルビスフェノールA型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等のビスフェノール型等が挙げられる。また、その他にグリシジルアミン等も挙げられる。
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロン(登録商標)N−740、N−770、N−775(以上、いずれも大日本インキ化学工業(株)製)、エピコート(登録商標)152、エピコート(登録商標)154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型としては、例えば、エピクロン(登録商標)N−660、N−665、N−670、N−673、N−680、N−695、N−665−EXP、N−672−EXP(以上、いずれも大日本インキ化学工業(株)製);ビフェニルノボラック型としては、例えば、NC−3000P(日本化薬製);トリスフェノールノボラック型としては、例えば、EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製);ジシクロペンタジエンノボラック型としては、例えば、XD−1000−L(日本化薬(株)製)、HP−7200(大日本インキ化学工業(株)製);ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば、エピコート(登録商標)828、エピコート(登録商標)834、エピコート1001、エピコート(登録商標)1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン(登録商標)850、エピクロン(登録商標)860、エピクロン(登録商標)4055(以上、いずれも大日本インキ化学工業(株)製);ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エピコート(登録商標)807(ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン(登録商標)830(大日本インキ化学工業(株)製);2,2’−ジアリルビスフェノールA型としては、例えば、RE−810NM(日本化薬(株)製);水添ビスフェノール型としては、例えば、ST−5080(東都化成(株)製);ポリオキシプロピレンビスフェノールA型としては、例えば、EP−4000、EP−4005(以上、いずれも旭電化工業(株)製)等が挙げられる。
上記オキセタン化合物の市販品として、例えば、エタナコール(登録商標)EHO、エタナコール(登録商標)OXBP、エタナコール(登録商標)OXTP、エタナコール(登録商標)OXMA(以上、いずれも宇部興産(株)製)等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、セロキサイド(登録商標)2021、セロキサイド(登録商標)2080、セロキサイド(登録商標)3000(以上、いずれもダイセル・ユーシービー(株)製)等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
成分(B−2)に用いられうる光硬化性樹脂としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリロイル基等を有する樹脂が挙げられる。なかでも反応性や汎用性の面より(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば(メタ)アクリレート化合物、が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」等の用語は、「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味し、例えば「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)DPHA等)、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
これらモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート基は、そのエポキシ基に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は一般的に知られている方法により行うことができる。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80〜110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。
成分(B−2)としては、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が好ましく、光硬化性樹脂である場合が更に好ましい。
また、分子内に極性官能基及び2以上の(メタ)アクリロイル基とを併せ持つバインダー樹脂である場合が特に好ましい。
極性官能基とは、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、ホスホ基、アミノ基、イミノ基、カルバモイル基、シアノ基、イソシアナト基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドラジノ基、ウレイド基、グアニジノ基、スルファニル基、スルフィノ基、スルホ基等、又はフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピリジル基、ピロリジノ基、ピペリジニル基、モルフォリノ、基、キノリル基等の複素環基等を挙げることができる。なお、各置換基は可能であればアルキル基、アルコキシ基等で置換されていても良い。また、ウレタン結合、エーテル結合、エステル結合((メタ)アクリロイル基中のエステル結合を除く)等置換基とは異なる極性結合部位も、本明細書においては極性官能基として記載する。
極性官能基を有する2以上の(メタ)アクリロイル基と極性官能基を併せ持つバインダー樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトルトリアクリレート(KAYARAD PET−30 日本化薬製)、ジペンタエリスリトルペンタアクリレートとジペンタエリスリトルヘキサアクリレートの混合物又(KAYARAD DPHA 日本化薬製)、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート(701A 新中村化学製)、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A−9300 新中村化学製)、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート(A−9300−1CL 新中村化学)等の(メタ)アクリレートモノマー化合物、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(R−115F、R−130、R−381等 日本化薬製)、ビスフェノールF型エポキシアクリレート(ZFA−266H 日本化薬製)、酸変性エポキシアクリレート(ZARシリーズ、ZCRシリーズ、ZCRシリーズ 日本化薬製)等のエポキシアクリレート樹脂、ポリエステル系ウレタンアクリレート(UX3204、UX−4101、UXT−6100 日本化薬製)、混合系ウレタンアクリレート(UX−6101、UX−8101 日本化薬製)、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UX−937、UXF−4001−M35 日本化薬製)、エステル系ウレタンアクリレート(DPHA−40H、UX−5000、UX−5102D−M20、UX−5103D、UX−5005 日本化薬製)等のウレタンアクリレート樹脂を挙げることができる。
成分(B−2)のバインダー樹脂として、より好ましくは2以上8以下の(メタ)アクリロイルと極性官能基を併せ持つ場合であり、更に好ましくは3以上6以下の(メタ)アクリロイルと極性官能基を併せ持つ場合である。反応性基である(メタ)アクリロイルが10以上である場合、硬化物が剛直になり過ぎて、接着強度の低下を招く可能性がある。
成分(B−2)のバインダー樹脂として、更に好ましくは、極性官能基がヒドロキシ基(OH)、又はウレタン結合(NHCO)である。ヒドロキシ基は基材への密着性を向上する効果があり、ウレタン結合は硬化物を柔軟にする効果がある。上記例示の中では、ペンタエリスリトルトリアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等及びウレタン樹脂を好適な成分(B−2)として挙げることができ、更に好ましくは、ペンタエリスリトルトリアクリレート、ジペンタエリスリトルペンタアクリレートとジペンタエリスリトルヘキサアクリレートの混合物又はエステル系ウレタンアクリレート(UX−5000、DPHA−40H)である。
[(B−3)光重合開始剤]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(B−3)光重合開始剤を含有する。光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学(株)製)等を挙げることができる。
(B−3)成分は、365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上10000(mL/g・cm)以下である場合が好ましく、100以上8000(mL/g・cm)以下である場合がさらに好ましく、1000以上7500(mL/g・cm)以下である場合が特にに好ましい。なお、モル吸光係数は、メタノール又はアセトニトリルを溶剤として測定したものである。
365nmにおけるモル吸光係数(ε)が100以上10000(mL/g・cm)以下である光重合開始剤とは、IRGACURERTM 651(メタノール中ε=360mL/g・cm)、IRGACURERTM 907(メタノール中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM 369(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、IRGACURERTM 379(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、IRGACURERTM 819(メタノール中ε=2300mL/g・cm)、LUCIRINRTM TPO(アセトニトリル中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE−01(アセトニトリル中ε=7000mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE−02(アセトニトリル中ε=7700mL/g・cm)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
成分(B−3)の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
成分(A−2)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上3質量部以下である。
[(B−4)シランカップリング剤]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(B−4)シランカップリング剤を含有しても良い。シランカップリング剤を含有させることで、更なる接着強度向上が実現できる。
(B−4)シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン(KBM−1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE−1003)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−402)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE−402)、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403)、p−スチリルトリメトキシシラン(KBM−1403)、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−502)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−602)、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−603)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE−903)、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(KBE−9103P)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−573)、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM−575)、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(KBM−9659)、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(KBB−585)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM−802)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE−9007N)、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(X−12−967C)等を挙げることができる。これらは信越化学工業(株)等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。
このうち、本発明の効果をより顕著に奏するものは、分子内にウレイド系のシランカップリング剤(KBE−585)又は酸無水物系のシランカップリング剤(X−12−967C)である。
成分(B−4)を用いる場合の熱線吸収膜中の含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中0.1質量部以上35質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、30質量部、更に好ましくは25質量部、特に好ましくは20質量部、最も好ましくは10質量部である。
また好ましい下限としては、1質量部、更に好ましくは3質量部、特に好ましくは5質量部、最も好ましくは6質量部である。
成分(B−4)の熱線吸収膜中の含有量として最も好ましい範囲は6質量部以上10質量部以下である。
[(B−5)分散剤]
本発明の熱線吸収構造体に用いられる熱線吸収膜は、(B−5)分散剤を含有しても良い。分散剤を含有させることで、成分(B−1)の成分中での均一性を向上することが可能である。
(B−5)分散剤としては、例えば以下のものを挙げることができる。フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17(共栄社化学(株)製)、ソルプラスAX5、ソルプラスTX5、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250、(日本ルーブリゾール(株)製)、EFKA4008、EFKA4009、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4060、EFKA4080、EFKA7462、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4320、EFKA4330、EFKA4340、EFKA5065、EFKA5220、EFKA6220、EFKA6225、EFKA6230、EFKA6700、EFKA6780、EFKA6782、EFKA8503(BASFジャパン(株)製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL−12(味の素ファインテクノ(株)製)、TEXAPHOR−UV21、TEXAPHOR−UV61(コグニスジャパン(株)製)、DisperBYK101、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK108、DisperBYK110、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK130、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK161、DisperBYK162、DisperBYK163、DisperBYK164、DisperBYK166、DisperBYK167、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK171、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK182、DisperBYK192、DisperBYK193、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2020、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2070、DisperBYK2155、DisperBYK2164、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430(ビックケミー・ジャパン(株)製)、ディスパロン1751N、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン1934、ディスパロンDA−400N、ディスパロンDA−703−50、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−7301、ディスパロンDN−900、ディスパロンNS−5210、ディスパロンNVI−8514L、ヒップラードED−152、ヒップラードED−216、ヒップラードED−251、ヒップラードED−360(楠本化成(株))、FTX−207S、FTX−212P、FTX−220P、FTX−220S、FTX−228P、FTX−710LL、FTX−750LL、フタージェント212P、フタージェント220P、フタージェント222F、フタージェント228P、フタージェント245F、フタージェント245P、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント710FM、フタージェント730FM、フタージェント730LL、フタージェント730LS、フタージェント750DM、フタージェント750FM((株)ネオス製)、AS−1100、AS−1800、AS−2000(東亞合成(株)製)、カオーセラ2000、カオーセラ2100、KDH−154、MX−2045L、ホモゲノールL−18、ホモゲノールL−95、レオドールSP−010V、レオドールSP−030V、レオドールSP−L10、レオドールSP−P10(花王(株)製)、エバンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA−167、ブライサーフA219B、ブライサーフAL(第一工業製薬(株)製)、メガファックF−477、メガファック480SF、メガファックF−482、(DIC(株)製)、シルフェイスSAG503A、ダイノール604(日信化学工業(株)製)、SNスパーズ2180、SNスパーズ2190、SNレベラーS−906(サンノプコ(株)製)、S−386、S−420(AGCセイミケミカル(株)製)といったものが例示できる。
このうち、アニオン系分散剤がより好ましく、酸価が10(mgKOH/g)以上400(mgKOH/g)以下のアニオン系分散剤が更に好ましく、酸価が40(mgKOH/g)以上250(mgKOH/g)以下のアニオン系分散剤が特に好ましく、酸価が50(mgKOH/g)以上150(mgKOH/g)以下のアニオン系分散剤が最も好ましい。
(B−5)成分を含有する場合にその含有量は、熱線吸収膜の総量100質量部中1質量部以上45質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、40質量部、更に好ましくは35質量部、特に好ましくは30質量部、最も好ましくは25質量部である。
また好ましい下限としては、5質量部、更に好ましくは8質量部、特に好ましくは10質量部、最も好ましくは15質量部である。
[その他成分]
(B)熱線吸収膜には、必要に応じ、例えばレベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤架橋剤、可塑剤、無機微粒子、フィラー等を添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられ、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられる。重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、前記ポリイソシアネート類、メラミン化合物等が挙げられる。可塑剤としてはジメチルフタレートやジエチルフタレートのようなフタル酸エステル、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートのようなトリメリト酸エステル、ジメチルアジペートやジブチルアジペートのような脂肪族二塩基酸エステル、トリブチルホスフェートやトリフェニルホスフェートのような正燐酸エステル、グリセルトリアセテートや2−エチルヘキシルアセテートのような酢酸エステルが挙げられる。
<(B)熱線吸収膜の製造方法>
(B−1)無機酸化物及び/又は色素、(B−2)2以上の(メタ)アクリロイル基と極性官能基を併せ持つバインダー樹脂、(B−3)光重合開始剤、必要に応じて、(B−4)シランカップリング剤、(B−5)分散剤、トルエン等の有機溶剤を混合し、最適な分散方法を用いて分散した後、例えば(A)熱線反射膜、後述する(C)熱可塑性樹脂膜、ガラス等、また剥離性を有する基材(PET)の上に塗布する。なお、剥離性を有する基材(例えばPET)を用いる場合には、(A)熱線反射膜、(C)熱可塑性樹脂膜、ガラス等に転写することで熱線吸収膜の層を形成する。
[分散方法]
好ましい分散方法はビーズミルであり、特定な分散エネルギー領域で分散させる方法を挙げることができる。分散エネルギーが該特定な範囲を外れて低すぎる場合は、粒子同士が凝集した状態となり、導電パスが形成され、表面抵抗が下がるだけでなく、シート平滑性が悪化し、近赤外反射性能の低下、高ヘイズが問題となる。また、分散エネルギーを高くし過ぎると、微粒子の近赤外反射機能が低下する事が判明した。この原因は不明であるが、あまり高エネルギーでの分散では、微粒子表面に傷が付くなど微粒子に変化が生じ、反射性能が低下すると推察される。上記の反射率と上記の表面抵抗を達成するには特定な分散エネルギー領域が存在し、該特定なエネルギー領域で分散させた場合、個々の該微粒子がバインダー成分で覆われて、該微粒子の再凝集や連結が防止され、バインダー成分中にマトリックス状に分散され、成膜した際に、上記の反射率と上記の表面抵抗を達成するものと推察される。ビーズミルを用いた場合、上記の特定なエネルギー領域としては3〜12m/sの周速、好ましくは3〜11m/sの周速、より好ましくは3〜10m/sの周速が適当であり、更に好ましい態様としては、4〜12m/sの周速又は4〜11m/sの周速を挙げることができ、最も好ましい態様としては、5〜12m/sの周速、又は、場合により、5〜11m/s又は5〜10mの周速を挙げることができる。上記した様に、周速が遅すぎると、微粒子を十分分散できずに、周速があまり早すぎると反射性能の低下で、遮熱性能が低下する。
[塗布方法]
塗布方法に関しては、表面を平滑に塗布できれば、特に限定はない。例えば、場合により、コンマコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター等も使用できるが、シート平滑性の為に好ましくはバーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター等の薄膜作製に適したコーティング装置の使用が好ましい。
(B)熱線吸収膜の厚みは、一概には言えず、目的とする熱線遮蔽性能や可視光透過率、(A)熱線反射膜の種類や厚み等により決定される。本発明においては、熱線遮蔽層の可視光透過率は、少なくとも70%以上が好ましく、より好ましくは75%以上となる厚さに調整するのが好ましく、一般的には、乾燥後の厚さで、0.1μm〜50μm程度の間で調整すれば良い。より好ましくは0.1μm〜40μm程度である。樹脂バインダーとして硬化性樹脂を用いる場合、通常0.1μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜20μm程度、更に好ましくは0.1μm〜10μmの間で調整することができる。上記のようにして得られた熱線遮蔽層における可視光透過率は通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上である。また、該熱線遮蔽層におけるヘイズ値は通常8%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下である。ヘイズ値は低い方が好ましく、本発明の好ましい態様では、0.8%以下であり、より好ましい態様では0.5%以下までにすることができる。ヘイズ値の下限は特にないが、0.1%程度までと思われる。
また(B)熱線反射膜の厚みは、用いる反射層のタイプによって大きく異なる。一般的に、塗布やスプレーなどの方法で作製される反射層は、乾燥後の厚さで、0.1μm〜50μm程度の間が好ましくより好ましくは0.1μm〜40μm程度である。樹脂バインダーとして硬化性樹脂を用いる場合、通常0.1μm〜30μm、好ましくは0.1μm〜20μm程度、更に好ましくは0.1μm〜10μmの間で調整することができる。また、蒸着やスパッタリング法で作製される場合は、通常0.1nm〜100nmであり、より好ましくは1nm〜50nm程度である。
本明細書においては、(A)熱線反射膜を有する構成又は(A)熱線反射膜及び(B)熱線吸収膜を有する構成を、「熱線遮蔽構造体」と定義する。この「熱線遮蔽構造体」はそれ自体で流通する場合や、他のフィルム積層体において形成される場合が想定されるが、上記構造になっている場合には「熱線遮蔽構造体」とする。
また、上記「熱線遮蔽構造体」を支持体の上に形成した場合には、「熱線遮蔽シート」と定義する。支持体としては無機材料、有機材料の何れであっても良いが、例えばPETフィルムやTACフィルムといった光学用途に用いられる有機フィルムが好ましい。また、例えば剥離PET上に形成した場合も、「熱線遮蔽シート」であり、この状態での流通が容易である。
そして、上記「熱線遮蔽構造体」及び/又は「熱線遮蔽シート」を、後述する(C)熱可塑性樹脂膜上に形成したものを「熱線遮蔽中間膜」と定義する。(C)熱可塑性樹脂膜は、1枚であっても、複数枚であっても良いが、通常は上記「熱線遮蔽構造体」及び/又は「熱線遮蔽シート」を挟み込む形で2枚使用する。また、(C)熱可塑性樹脂膜上への形成方法としては、上記「熱線遮蔽シート」をそのまま(C)熱可塑性樹脂膜上へ形成する方法や、剥離PET上に形成し、「熱線遮蔽シート」を(C)熱可塑性樹脂膜上へ転写して(この場合、形成後、剥離PETを取り除く)形成することもできる。
上記「熱線遮蔽中間膜」は、「透明基材用中間膜」として用いることができる。透明基材とは、例えばガラス、ポリカーボネートを挙げることができるが、ガラスを使用し、合わせガラスとする場合が特に好ましい。
[(C)熱可塑性樹脂膜]
(C)熱可塑性樹脂膜は、例えばポチビニルブチラール、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等を主成分とする膜を例示することができる。この内好ましくはポリビニルブチラール膜である。
また、本発明の熱線遮蔽構造体では、(C)熱可塑性樹脂膜を2層以上用いても良く、好ましい態様は2層用いた場合である。
以下に本発明に係る熱線遮蔽シート、熱線遮蔽用中間膜、透明基材用中間膜、合わせガラスについて説明する。ただし、これらは全て本発明の熱線遮蔽構造体の実施態様に含まれるものである。
<熱線遮蔽シート>
本発明における熱線遮蔽シートは、該熱線遮蔽構造体が、合わせガラス化した際に透明性を担保できる支持体上に形成されていれば支障はなく、無機材料又は有機材料の何れであってもよい。例えば、PETフィルムやTACフィルム等の、光学用途に用いられる有機フィルムを用いても良いし、前記(C)熱可塑性樹脂膜に直接塗工もしくは転写しても良い。また、近赤外線を吸収する機能や反射する機能等を有する機能性のシートであってもよい。通常、樹脂シート、無機ガラス板など光の透過性を阻害しない薄い板状体が使用される。厚さは特に限定されないが、通常、10μm〜3mm程度である。
<熱線遮蔽用中間膜>
本発明の熱線遮蔽構造体及び/又は熱線遮蔽シートは上記(C)熱可塑性樹脂膜を用いて、熱線遮蔽用中間膜として用いることができる。
この場合、(C)熱可塑性樹脂膜、熱線遮蔽構造体、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽用中間膜や、(C)熱可塑性樹脂膜、熱線遮蔽シート、(C)熱可塑性樹脂膜の順に積層されてなる熱線遮蔽用中間膜が特に好ましい。その際に、熱線遮蔽構造体又は熱線遮蔽シートと、一方もしくは双方の(C)熱可塑性樹脂膜は、貼り合わされた状態でも良く、それぞれ独立の状態で用いても良い。ただし、加工性等を鑑みると、熱線遮蔽構造体又は熱線遮蔽シートと、一方もしくは双方の(C)熱可塑性樹脂膜が、何らかの形で一体化されている事が好ましい。
熱線遮蔽構造体又は熱線遮蔽シートと、一方もしくは双方の(C)熱可塑性樹脂膜を貼り合せる方法としては、特に限定はないが、例えば熱圧着または粘着剤を塗布し粘着層を形成した後に貼り合わせる感圧接着法、液状接着材層を塗布形成後に紫外線硬化や加熱硬化にて接着し転写する方法等が挙げられる。接着剤を用いないプラズマ接合法等を用いても良い。その中では、生産性の観点から、粘着層または接着層を必要としない熱圧着やプラズマ接合方式が好ましい。
前記、熱線遮蔽用中間膜の構成には、(C)熱可塑性樹脂膜の内側に、熱線遮蔽構造体、熱線遮蔽シート以外の機能を有する層を有していても良い。追加する機能は、特に限定はないが、可視光透過率が大きく損なわれない物が好ましい。具体的には、遮音性を有する層や、自動車用のヘッドアップディスプレイ等に対応した映像投影機能を有する層等が挙げられる。追加する機能の数に制限は無く、またこれらの層は、熱線遮蔽構造体に形成されていても良く、それぞれ独立に形成された層を貼り合せて用いても良い。
<透明基材用中間膜>
上記「熱線遮蔽中間膜」は、「透明基材用中間膜」として用いることができる。透明基材とは、例えばガラス、ポリカーボネートを挙げることができるが、ガラスを使用し、合わせガラスとする場合が特に好ましい。
<合わせガラス>
第1のガラス板と第2のガラス板の間に前記透明基材用中間膜を配置するよう貼合わせることで、本発明の合わせガラスを製造することができる。
具体的には、第1のガラス板と第2のガラス板の間に透明基材用中間膜を配置するよう貼合わせる。その際に、2枚のガラス間の気泡を除くため、減圧下で圧着する第一の圧着段階(予備圧着)と、気泡の発生を抑えつつ高い密着性を発現させるため、高温高圧下で圧着する第二の圧着段階(本圧着)を経て作製されるのが一般的である。
以下、実施例、比較例により本発明を詳細に説明する。尚、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
(熱線反射層用高屈折率樹脂塗布液1〜5の作製)
平均一次粒子径35nmである酸化チタン微粒子(商品名「TTO−51A」、石原産業(株)製)1.4部、KAYARAD PET30(日本化薬(株)製)0.4部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」)0.05部、および分散剤(商品名「DISPERBYK−2001」、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.3部をエタノールに加え、高屈折率樹脂塗布液1〜8を作製した。それぞれ高屈折率樹脂塗布液の濃度は、基材として50μm厚みのポリエステル製フィルム(商品名「A4300」 東洋クロス(株)製)を用い、マイクログラビアコーターにより基材上に高屈折率樹脂塗布液1〜5を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に高屈折率樹脂層を作製した際に、表2に記載の極大反射波長になる濃度に調整した。
Figure 2021151730
[製造例2]
(熱線反射層用低屈折率樹脂塗布液1、2の作製)
KAYARAD DPHA 0.4部およびイルガキュア907 0.05部をエタノールに溶解した溶液中に、中空シリカ微粒子(商品名「スルーリア」、平均一次粒子径50nm、固形分濃度20重量%、日揮触媒化成(株)製、分散媒:メチルイソブチルケトン)3部を分散させ、低屈折率樹脂層塗布液1、2を調製した。それぞれ低屈折率樹脂塗布液の濃度は、基材として50μm厚みのポリエステル製フィルム(商品名「A4300」 東洋クロス(株)製)を用い、マイクログラビアコーターにより基材上に低屈折率樹脂塗布液1、2を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に低屈折率樹脂層を作製した際に、表3に記載の極小反射波長になる濃度に調整した。
[製造例3]
(熱線反射層用低屈折率樹脂塗布液3〜7の作製)
スズドープ酸化インジウム微粒子(商品名「ITO−R」、CIKナノテック(株)製)1.4部、KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)0.4部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」)0.05部、および分散剤(商品名「DISPERBYK−111」、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.3部をエタノールに加え、低屈折率樹脂塗布液3〜8を作製した。それぞれ低屈折率樹脂塗布液の濃度は、基材として50μm厚みのポリエステル製フィルム(商品名「A4300」 東洋クロス(株)製)を用い、マイクログラビアコーターにより基材上に低屈折率樹脂塗布液3〜7を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に低屈折率樹脂層を作製した際に、表3に記載の極小反射波長になる濃度に調整した。
Figure 2021151730
[実施例1]
(熱線遮蔽層の作製)
基材として50μm厚みのポリエステル製フィルム(商品名「A4300」 東洋クロス(株)製)を用い、マイクログラビアコーターにより基材上に高屈折率樹脂塗布液3を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に高屈折率樹脂層を作製した。続いて高屈折樹脂層上に低屈折率樹脂塗布液2を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に高屈折樹脂層、低屈折樹脂層の順に積層した。以降同様に高屈折率樹脂層、低屈折率樹脂層、高屈折率樹脂層の順に積層し、計5層の熱線反射層1を作製した。得られた熱線遮蔽層の極大反射波長を分光光度計(島津製作所UV−3100)で測定し、表4に記載した。
[比較例1]
高屈折樹脂層作製時に高屈折率樹脂塗布液1を用い、低屈折樹脂層作製時に低屈折率樹脂塗布液1を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の熱線反射層6を作製した。得られた熱線遮蔽層の極大反射波長を分光光度計で測定し、表4に記載した。
[実施例2〜5および比較例2]
基材として50μm厚みのポリエステル製フィルム(商品名「A4300」 東洋クロス(株)製)を用い、マイクログラビアコーターにより基材上に表4に記載の低屈折率樹脂塗布液を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に低屈折率樹脂層を作製した。続いて低屈折樹脂層上に表4に記載の高屈折率樹脂塗布液を塗布し、80℃で1分乾燥後、紫外線照射することで基材上に低屈折樹脂層、高屈折樹脂層の順に積層した。以降同様に低屈折率樹脂層、高屈折率樹脂層、低屈折率樹脂層、高屈折率樹脂層の順に積層し、計6層の熱線反射層2〜5、7を作製した。得られた熱線遮蔽層の極大反射波長を分光光度計(島津製作所UV−3100)で測定し、表4に記載した。
Figure 2021151730
[製造例4]
(熱線吸収層用樹脂塗布液の作製)
KAYARAD PET−30(日本化薬(株)製)60部、分散剤(BYK111ビックケミー・ジャパン(株)製)8部およびイルガキュア907 5部を、メチルエチルケトン 200部に溶解させた溶液中にスズドープ酸化インジウム微粒子(商品名「ITO−R」、CIKナノテック(株)製)20部、銅(II)2,3−ナフタロシアニン(シグマアルドリッチジャパン合同会製)2部を分散させ熱線吸収層用樹脂塗布液を調整した。
[実施例6〜10および比較例3、4]
(熱線遮蔽層の作製)
表5に記載の熱線反射層1〜7の上に、マイクログラビアコーターを用いて熱線吸収層用樹脂塗布液を、乾燥後層厚1.5μmの厚みになるように塗布し、50℃で1分乾燥後、紫外線照射することで熱線吸収層を作製した。これにより基材上に熱線反射層と熱線吸収層を有する熱線遮蔽層1〜7を作製した。得られた熱線遮蔽層の極大反射波長を分光光度計(島津製作所UV−3100)で測定し、表5に記載した。
Figure 2021151730
[製造例5]
(シート状接着樹脂1の作製)
ポリビニルブチラール樹脂360g、トリエチレングリコールビス(2−エチルブチレート)130gを、3本ロールミキサーにより約70℃で15分間練りこみ混合することでシート状接着樹脂原料を得た。次いで押出し成形機を用い成形温度200℃で押出し成形することで、厚み約0.4mmのシート状接着樹脂1を作製した。
[実施例11〜20および比較例5〜8]
(熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラスの作製)
厚さ2mmのソーダガラス、製造例5で得られたシート状接着樹脂1、実施例1〜5および比較例1、2で作製した熱線反射層1〜7もしくは実施例6〜10および比較例3、4作製した熱線遮蔽層1〜7、製造例4で得られたシート状接着樹脂1、厚さ2mmのソーダガラスの順でそれぞれ重ねあわせた後、真空バッグに入れ、−0.09MPaまで真空ポンプで減圧した。その後、減圧下で110℃、30分間保持し予備圧着した。予備圧着後、オートクレーブにて圧力1.5Mpa、150℃の条件で30分間保持し本圧着した。その後常温常圧まで戻すことで、本発明の熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラス1〜5、8〜12と比較用の合わせガラス6、7、13、14を作製した。
(ΔE*の測定)
実施例11〜20および比較例5〜8で作成した合わせガラス1〜14の入射角10度における可視光領域のスペクトルと、入射角50度における可視光領域のスペクトルと、光学薄膜用分光光度計Photone RT(EssentOptics Ltd.製)を用いて測定した。スペクトルは、380nm〜780nmの波長領域を、0.5nm刻みで測定した。得られたスペクトルデータから、CIE1976に規定される計算式を用いて、入射角10度でのL*a*b*と入射角50度でのL*a*b*を求めた。その後、2点のユークリッド距離を求めることで、入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*を算出した。結果を表6に記した。
(反射色の色味評価)
実施例11〜20および比較例5〜8で作成した合わせガラス1〜14の反射色の色味を目視で評価した。蛍光灯を垂直方向(0度)に配置し、垂直方向から見た場合の色味と、蛍光灯を垂直方向から60度の位置に配置し、蛍光灯と反対方向から見た場合の色味を確認し、以下の判断基準で評価した。結果を表6に記した。
A : 0度および60度の双方で反射色に色味が無い
B : 0度および/または60度で反射色が赤味を帯びている
C : 0度および/または60度で反射色が青味を帯びている
(反射色ムラ評価)
実施例11〜20および比較例5〜8で作成した合わせガラス1〜14の反射色の色味を目視で評価した。熱線反射層を塗工時の塗りムラが見えるものを×、 熱線反射層を塗工時の塗りムラが僅かに見えるものを△、熱線反射層を塗工時の塗りムラが目立たない物を〇として評価した。結果を表6に記した。
Figure 2021151730
[実施例21]
(熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラスの作製)
厚さ2mmのソーダガラス、製造例5で得られたシート状接着樹脂1、実施例8で作製した熱線反射層3、製造例4で得られたシート状接着樹脂1、厚さ2mmのグリーンガラスの順でそれぞれ重ねあわせた後、真空バッグに入れ、−0.09MPaまで真空ポンプで減圧した。その後、減圧下で110℃、30分間保持し予備圧着した。予備圧着後、オートクレーブにて圧力1.5Mpa、150℃の条件で30分間保持し本圧着した。その後常温常圧まで戻すことで、本発明の熱線遮蔽構造体を配置した合わせガラス15を作製した。
実施例21で得られた合わせガラス15の可視光透過率、ヘイズ、全日射エネルギーを測定した。
(可視光透過率(Tvis)の測定)
分光光度計(島津製作所製UV−3100)を用いて、合わせガラス12の波長300nm〜2500nmにおける透過率及び反射率を測定した。得られたスペクトルを図1に示す。また、JIS R3106に準拠して、可視光透過率(Tvis)を算出したところ、70.1%であった。
(全日射エネルギー(Tts)の測定)
全日射エネルギー(Tts;Total Solar Transmittance)は、太陽からの熱的エネルギーのうち、対象となる材料をどの程度透過するかという尺度である。JIS R3106に定義されている計算式にて合わせガラス12の全日射エネルギーを算出したところ、49.9%であった。
(ヘイズ値の測定)
ヘーズメーター(東京電色製TC−HIIIDPK)を用いて、JIS K6714に準拠して合わせガラス12のヘイズ値を測定したところ、0.3であった。
表6の実施例11〜15で示される通り、該熱線反射膜の入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*が15以下である熱線遮蔽構造体は、反射色の着色が少なく、製造時に発生する色ムラも目立たない。特に、低屈折層にスズドープ酸化インジウム微粒子(ITO)を用いると、製造時に発生する色ムラが特に目立たないため、より好適な構成と言える。
対して、比較例5、6で示されるように、ΔE*が15以上であると、反射色が色味を帯びると共に、色ムラも目立つ様になるため、実用的でなくなる。
また実施例16〜20の、熱線反射層に加えて熱線吸収層も有する熱線遮蔽構造体を用いた際にも、ΔE*が15以下であると反射色の着色が少なく、色ムラも目立たない。また、低屈折層にスズドープ酸化インジウム微粒子(ITO)を用いると、製造時に発生する色ムラが特に目立たないため、より好適な構成と言える。
同様に、比較例10、11で示されるように、ΔE*が15以上であると、反射色が色味を帯びると共に、色ムラも目立つ様になるため、好ましい構成とは言い難い。
以上の結果より、本発明の熱線遮蔽構造体は、可視光透過性、全日射透過率およびヘイズに関する性能が総合的に優れていると共に、反射色に着色が少なく実用性が高い構成と言える。
本発明の熱線遮蔽構造体は、可視光透過性、全日射透過率およびヘイズに関する性能が総合的に優れていると共に、反射色に着色が少なく、実用的な構成となっている。従って、住宅の窓や自動車のガラスの意匠を損ねることなく、空間の温度上昇を抑え、空調機器の負荷を軽減し、省エネルギーや地球環境問題に貢献できるものである。

Claims (17)

  1. (A)高屈折率層(A−1)および低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜を有し、該熱線反射膜の入射角10度で入光した際の反射色と入射角50度で入光した際の反射色の色差ΔE*が15以下である熱線遮蔽構造体。
  2. 前記(A)高屈折率層および低屈折率層の繰り返し多層構造を有する熱線反射膜の極大反射波長が950nm以上1170nm以下であり、かつ400nm以上750nm以下の波長領域の極大反射率が20%以下である請求項1に記載の熱線遮蔽構造体。
  3. 前記(A−1)高屈折率層及び(A−2)低屈折率樹脂層が微粒子を含有する請求項1又は2に記載の熱線遮蔽構造体。
  4. 前記(A−1)高屈折率樹脂層に含有される微粒子が酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化鉛、ダイヤモンド、酸化亜鉛、ホウ化物、窒化物の群から選択される少なくとも一種の微粒子である請求項3に記載の熱線遮蔽構造体。
  5. 前記(A−2)低屈折率樹脂層に含有される微粒子が酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、中空酸化ケイ素の群から選択される少なくとも一種の微粒子である請求項3又は4に記載の熱線遮蔽構造体。
  6. 前記(A)において、高屈折率層(A−1)および低屈折率層(A−2)の繰り返し多層構造が4層以上11層以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  7. 前記(A)において、繰り返し多層構造における高屈折率層(A−1)の各層厚の最大値と最小値の差が50nm以内であり、繰り返し多層構造における低屈折率層(A−2)の各層厚の最大値と最小値の差が50nm以内である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  8. 更に(B)熱線吸収膜を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  9. 前記(B)熱線吸収膜が、(B−1)無機酸化物及び/又は色素、(B−2)バインダー樹脂、及び(B−3)光重合開始剤を含有する熱線吸収膜である請求項8に記載の熱線遮蔽構造体。
  10. 前記(B−1)が無機酸化物、及び色素である請求項9に記載の熱線遮蔽構造体。
  11. 前記(B−2)が極性官能基と2以上のアクリロイル基を併せ持つバインダー樹脂である請求項9又は10に記載の熱線遮蔽構造体。
  12. 前記(B−3)が、365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上1000(mL/g・cm)以下である請求項8乃至11のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  13. 前記(B)熱線吸収膜が、更に(B−4)シランカップリング剤を含有する請求項9乃至12のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  14. 前記(B)熱線吸収膜が、更に(B−5)分散剤を含有する請求項9乃至13のいずれか一項に記載の熱線遮蔽構造体。
  15. 更に支持体を有する請求項1乃至14に記載の熱線遮蔽構造体。
  16. 更に(C)熱可塑性樹脂膜を2層以上有し、請求項1乃至15に記載の熱線遮蔽構造体を挟み込んでなる熱線遮蔽構造体。
  17. 更に(D)ガラスを2枚以上有し、請求項1乃至16に記載の熱線遮蔽構造体を挟み込んでなる熱線遮蔽構造体。

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