JP2020131606A - 油性ボールペン - Google Patents

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Abstract

【課題】筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制した油性ボールペンを提供する。【解決手段】インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンであって、前記ボールの縦軸方向の移動量が25μm以下であり、前記油性ボールペン用インキ組成物が着色剤、有機溶剤、ジベンジリデンソルビトール類を含んでなることを特徴とする油性ボールペンとする。【選択図】なし

Description

本発明は油性ボールペンに関するものである。
従来、油性ボールペンにおいて、筆記先端部の間隙よりインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙よりインキ漏れ)を抑制するために、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上である溶剤を用いたり、インキ漏れ抑制剤として、シリカやテルペンフェノール樹脂を用いたり、ゲル化剤を用いてインキ粘度を高く設定した、油性ボールペン用インキ組成物の技術が提案されている。
このようなインキ組成物として、25℃での蒸気圧が0.001mmHg以上であるアルコール、多価アルコール、グリコールエーテル溶剤を用いた技術としては、特開2004−107591号公報「筆記具用油性インキ組成物」や、インキ漏れ抑制剤を用いた技術として、一次平均粒子径7〜40nmのシリカを用いた特開平10−195365号公報「ボールペン用油性インキ」や、OH価が150以上であるテルペンフェノール樹脂を用いた技術としては、特開2007−126528号公報「ボールペン用油性インキ」、剪断減粘性付与剤として、水添ヒマシ油や脂肪酸アミドワックスを用いた技術としては、特開平7−196972号公報「ボ−ルペン用油性インキ組成物」に開示されている。
「特開2004−107591号公報」 「特開平10−195365号公報」 「特開2007−126528号公報」 「特開平7−196972号公報」
しかし、特許文献1では、ある程度インキ漏れを抑制する効果はあるが、インキ粘度を低粘度化した場合には特許文献1で用いている溶剤だけでは、インキ漏れを十分抑制できなかった。また、特許文献2では、一次平均粒子径7〜40nmのシリカでは、粒径が小さく、シリカの比重が大きいため、油性インキ中での分散安定性が劣ってしまい、特許文献3では、OH価が150以上であるテルペンフェノール樹脂では、OH価が多いため、油性インキ中での溶解性が悪く、それぞれ十分な効果を発揮できなかった。また、特許文献4では、水添ヒマシ油などでは、ある程度インキ漏れを抑制することは可能であるが、静止時のインキ粘度が高くなり、インキ追従性が劣りやすく、筆跡にカスレが発生することもあり、書き味に影響する問題を抱えていた。
さらに最近では、滑らかな筆感を得るため、油性インキではインキ粘度が低粘度化してきており、その分インキ吐出量も多くなり、筆記先端部よりインキ漏れが発生しやすく、問題となりやすい。
本発明の目的は、インキ漏れを抑制した油性ボールペンを得ることである。
本発明は、上記課題を解決するために
「1.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンであって、前記ボールの縦軸方向の移動量が25μm以下であり、前記油性ボールペン用インキ組成物が着色剤、有機溶剤、ジベンジリデンソルビトール類を含んでなることを特徴とする油性ボールペン。
2.前記ジベンジリデンソルビトール類が、一般式(化1)であることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン。

3.前記ジベンジリデンソルビトールの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜15質量%であることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン。
4.前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂および/またはケトン樹脂であることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
5.前記有機溶剤が、グリコールエーテル溶剤であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
6.20℃、剪断速度5.0sec−1におけるインキ粘度が、1000〜50000mPa・sであることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン。」とする。
本発明は、筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制した油性ボールペンを得ることができた。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
本発明の特徴は、インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンであって、前記ボールの縦軸方向の移動量が25μm以下であり、前記油性ボールペン用インキ組成物が着色剤、有機溶剤、ジベンジリデンソルビトール類を含んでなることを特徴とする油性ボールペンとすることで、筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制することが解った。
(ボールペンチップ仕様)
また、本発明に用いるボールペンチップの仕様については、ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が25μmを超えると、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れを抑制するのが難しく、さらに、筆跡の泣き・ボテが発生しやすい。よりインキ漏れ抑制を考慮すれば、20μm以下が好ましく、泣きボテなども考慮すれば、15μm以下が好ましい。さらに、書き味、筆跡カスレなどの影響を抑制するには、前記ボールの縦軸方向の移動量が5μm以上することが好ましく、より考慮すれば8μm以上とすることが好ましい。
(ジベンジリデンソルビトール類)
本発明では、インキ漏れを抑制するには油性ボールペン用インキ組成物にジベンジリデンソルビトール類を含んでなることが重要である。これは、ジベンジリデンソルビトール類がインキ中でゾル化し、粒子状に分散していることで、筆記具の筆記先端部の隙間に物理的な障害を起こして、筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールペンの場合はボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制することができるためである。
ジベンジリデンソルビトール類については、ジベンジリデンソルビトール又はその誘導体が好ましく用いられ、インキ漏れ抑制を考慮すれば、化学式(化1)を用いることが好ましい。その中でも、インキをゲル化せずにゾル状態を維持し、分散安定した粒子の物理的な障害によって、インキ漏れを抑制しやすくするためには、化学式(化1)のR1,R2が水素原子または炭素数1〜2のアルキル基であることが好ましく、より考慮すれば、水素原子またはメチル基であることが好ましく、よりインキ中で粒子状に分散しやすいことを考慮すれば、より融点が高く、インキ中に溶解しにくいため、R1,R2が共にメチル基であることが好ましい。
ジベンジリデンソルビトール類の融点については、インキ中に溶解しづらいことで、インキ漏れを抑制しやすいため、融点は200℃〜300℃が好ましく、より考慮すれば、融点は240℃〜280℃が好ましい。
また、ジベンジリデンソルビトール類については、インキ中での安定性を考慮すれば、酸価は3.0(KOHmg/g)以下であることが好ましく、より考慮すれば、酸価は1.0(KOHmg/g)以下であることが好ましい
なお、酸価については試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
また、ジベンジリデンソルビトール類を用いて油性インキを作成する時の攪拌温度は70℃以下に設定してインキを製造することが好ましい。これは、70℃を超えるとジベンジリデンソルビトール類が有機溶剤に溶解しやすく、インキがゾルとならず、粒子状に分散しないため、インキ漏れ抑制効果が得られにくくなるためで、インキ漏れ抑制効果を考慮すれば、油性インキを作成する時の攪拌温度は60℃以下とすることが好ましい。
ジベンジリデンソルビトール類としては、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−エチルベンジリデン)−ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルシトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(4−エチルベンジリデン)−ソルビトール、1,3:2,4−ビス(o−4−クロロベンジリデン)ソルビトール等が挙げられ、インキ漏れ抑制効果を考慮すれば、(化1)のような構造である1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−ベンジリデン−D−グルリシトールを用いることが好ましく、より考慮すれば、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトールが好ましい。具体的には新日本理化株式会社製の「ゲルオールMD」、「ゲルオールMD−LM30G」、「ゲルオールD」、「ゲルオールE−200」、「RiKAFAST P1」等が挙げられる。
前記ジベンジリデンソルビトール類の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜15質量%が好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、インキ漏れを抑制しづらく、15質量%を越えると、インキ中での分散性に影響しやすいためである。さらに、上記効果を考慮すれば、1〜12質量%が好ましく、より考慮すれば、3〜10質量%が好ましく、5〜10質量%が好ましい。
(着色剤)
本発明に用いる油性インキ組成物に用いる着色剤は染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料、顔料を併用しても良い。
油性インキの染料としては油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、インキ中の成分との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましく、より考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料が好ましい。
染料について、具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB−B、BASE OF BASIC DYES RO6G−B、BASE OF BASIC DYES VPB−B、BASE OF BASIC DYES VB−B、BASE OF BASIC DYES MVB−3(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンブラック GMH−スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C−RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C−RH、アイゼンスピロンレッド C−GH、アイゼンスピロンレッド C−BH、アイゼンスピロンイエロー C−GNH、アイゼンスピロンイエロー C−2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH−スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C−BH(以上、保土谷化学工業(株)製)等が挙げられる。
また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、メタリック顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
着色剤としては顔料を用いることが好ましい、これは、顔料粒子を用いることでボールペンのボールとチップ先端の内壁との間の隙間に物理的な障害を起こして、インキ漏れを抑制しやすいためである。さらに、本発明では後述するポリビニルブチラール樹脂やジベンジリデンソルビトール類を用いることで、ポリビニルブチラール樹脂、ジベンジリデンソルビトール類、顔料の3種によって、筆記先端部に被膜形成と、各粒子の物理的な障害によって、相乗的な作用が働くことで、より高いインキ漏れ抑制効果が得られるため好ましく、さらに、同時に顔料分散効果が得られるため好ましい。また、顔料は筆跡の堅牢性に優れ、特に耐光性に優れるため好ましい。
さらに、顔料を用いることでボールとチップ本体の隙間に顔料粒子が入り込むことでベアリングのような作用が働きやすく、金属接触を抑制することで潤滑性を向上し、書き味を向上し、ボール座の摩耗を抑制する効果が得られやすいため、顔料を用いることが好ましい。また、ボールペンチップ内部の隙間関係を考慮し、顔料の平均粒子径は1〜500nmとすることが好ましい。より好ましくは10〜350nmであり、さらに好ましくは50〜300nmである。
ここで、平均粒子径はレーザー回折法、具体的にはレーザー回折式粒度分布測定機(商品名「MicrotracHRA9320−X100」、日機装株式会社)を用いて、標準試料や他の測定方法を用いてキャリブレーションした数値を基に測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により求めることができる。
尚、前記顔料はインキ中で分散した状態にて前記した作用効果を奏するため、分散状態の粒子径を求めることが好ましい。
着色剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、1〜45質量%が好ましい。これは1質量%未満だと、濃い筆跡が得られにくい傾向があり、45質量%を越えると、染料の溶解安定性及び顔料の分散安定性に影響しやすい傾向があるためで、よりその傾向を考慮すれば、3〜35質量%が好ましく、さらに考慮すれば、3〜30質量%である。
(有機溶剤)
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤などの有機溶剤が例示できる。
これらの有機溶剤の中でも、ジベンジリデンソルビトール類とのインキ中での分散性を考慮すればグリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。これは、ジベンジリデンソルビトール類はグリコールエーテル溶剤において安定したゾルになり易く、分散安定した粒子によってインキ漏れ抑制効果が得られやすいためである。上記のようにインキ漏れ抑制効果を考慮すれれば、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。さらにアルコ−ル溶剤を用いることが好ましい、これは、揮発してチップ先端での乾燥をしやすく、筆記先端部の間隙からのインキ漏れ(ボールペンの場合は、ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制して、インキ漏れ抑制効果を向上するためである。
また、有機溶剤の含有量は溶解性、筆跡乾燥性、にじみ等を向上することを考慮すると、インキ組成物全量に対し、10.0〜90.0質量%が好ましく、チップ先端での乾燥性を考慮すれば20.0〜90.0質量%が好ましく、より好ましくは40.0〜70.0質量%である。さらに、ジベンジリデンソルビトール類とのインキ中での分散性を考慮すれば、油性ボールペン組成物中の有機溶剤の含有量に対して50%以上とし、主溶剤としてグリコールエーテル溶剤を用いることが好ましく、より考慮すれば、60%以上とすることが好ましい。
(樹脂)
また、インキ漏れ抑制効果をより向上するためには樹脂をインキ粘度調整剤として用いることが好ましい。樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、インキ漏れ抑制効果をより向上しやすくするにはポリビニルブチラール樹脂および/またはケトン樹脂を含んでなることが好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂についてはインキ漏れ抑制効果と書き味を両立して向上しやすいため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。また、ポリビニルブチラール樹脂とジベンジリデンソルビトール類を併用すると、ジベンジリデンソルビトール類によって、ボールペンチップの間隙からインキがしみ出ることを抑えつつ(チップ内での物理的障害)、ボールペンチップ先端部の乾燥時にポリビニルブチラール樹脂の被膜を早く形成する働き(チップ外の被膜形成)との相互作用が得られ、より高いインキ漏れ抑制効果が得られやすい。さらに、ポリビニルブチラール樹脂によってジベンジリデンソルビトール類の粒子を分散安定しやすいため、長期間のインキ漏れ抑制効果が得られやすいため好ましい。また、ポリビニルブチラール樹脂によって形成される被膜は粘性を有する被膜であるため、硬くならず、書き出し性能を損なわれにくいためより効果的である。さらに、ポリビニルブチラール樹脂はボールペンの場合、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成し、直接接触しづらくするため、書き味を向上することが可能となる。
また、着色剤として顔料を用いる場合は顔料分散効果も得られるため、ポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂はポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
特に、ボール径を通常よりも大きくして1.0mm〜2.0mmとした場合では、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れの影響が出やすいため、ポリビニルブチラール樹脂を用いると効果的であり、本発明で用いるジベンジリデンソルビトール類とポリビニルブチラール樹脂を併用するとより効果的であり、特に1.2mm〜2.0mmとした場合はより効果的である。
また、ポリビニルブチラール樹脂は水酸基量25mol%以上とすることが好ましい。これは、水酸基量25mol未満のポリビニルブチラール樹脂では有機溶剤への溶解性が十分ではなく、十分な潤滑効果やインキ漏れ抑制効果が得られにくく、さらに、吸湿性による書き出し性能を考慮すると、水酸基量25mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましいためである。また、前記水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂は書き味が向上しやすくなるため好ましい。これは、筆記時においてボールの回転により摩擦熱が発生することで、チップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂は他の樹脂とは違い、インキ温度が高くなってもインキ粘度を下がりづらくする性質があり、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層を形成して直接接触しづらくするため、書き味を向上しやすい傾向がある。特に、油性ボールペンでは高筆圧で筆記することも多いため、油性ボールペンでは効果的である。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、油性インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂が好ましい。そのため、水酸基量30〜40mol%のポリビニルブチラール樹脂が好ましく、さらに好ましくは水酸基量30〜36mol%が好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とはブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
また、ポリビニルブチラール樹脂の平均重合度については、前記平均重合度は200以上であるとインキ漏れ抑制効果が向上しやすく、また、前記平均重合度は2500を超えるとインキ粘度が高くなりすぎて書き味に影響する傾向があるため、前記平均重合度は200〜2500が好ましい。さらに、よりインキ漏れ抑制、泣きボテ抑制効果を考慮すれば、前記平均重合度は1500以下が好ましい。さらに、より考慮すれば前記平均重合度は250〜1000が好ましく、250〜700がより好ましい。ここで、平均重合度とはポリビニルブチラール樹脂の1分子を構成している基本単位の数をいい、JISK6728(2001年度版)に規定された方法に基づいて測定された値を採用可能である。
ポリビニルブチラール樹脂の含有量は油性ボールペン組成物中の全樹脂の含有量に対して70%以上とし、主たる樹脂として用いることが好ましい。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が全樹脂の含有量の70%未満となると、その他の樹脂によってチップ先端の樹脂被膜の形成を阻害しやすく、インキ漏れを抑制しづらく、さらに弾力性があるインキ層を形成するのを阻害してしまい、書き味向上の効果が得られづらくなるためである。よりインキ漏れ抑制、書き味向上効果を得られ易くすることを考慮すれば、ポリビニルブチラール樹脂の含有量は全樹脂の含有量に対して90%以上が好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂については、具体的には積水化学工業(株)製の商品名;エスレックBH−3(水酸基量:34mol%、平均重合度:1700)、同BH−6(水酸基量:30mol%、平均重合度:1300)、同BX−1(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:1700)、同BX−5(水酸基量:33±3mol%、平均重合度:2400)、同BM−1(水酸基量:34mol%、平均重合度:650)、同BM−2(水酸基量:31mol%、平均重合度:800)、同BM−5(水酸基量:34mol%、平均重合度:850)、同BL−1(水酸基量:36mol%、平均重合度:300)、同BL−1H(水酸基量:30mol%)、同BL−2(水酸基量:36mol%、平均重合度:450)、同BL−2H(水酸基量:29mol%)、同BL−10(水酸基量:28mol%)などや、クラレ(株)製の商品名;モビタールB20H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:250〜500)、同B30T(水酸基量:33〜38mol%、平均重合度:400〜650)、同B30H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:400〜650)、同B30HH(水酸基量:30〜34mol%、平均重合度:400〜650)、同B45H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:600〜850)、同B60T(水酸基量:34〜38mol%、平均重合度:750〜1000)、同B60H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:750〜1000)、同B75H(水酸基量:26〜31mol%、平均重合度:1500〜1750)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
ケトン樹脂については、ポリビニルブチラール樹脂、ジベンジリデンソルビトール類と併用することで、より高いインキ漏れ抑制効果を相乗的に期待しやすいため好ましい。
前記樹脂の総含有量はインキ組成物全量に対し、1.0質量%より少ないと樹脂被膜形成量が足りないおそれがあり、インキ漏れ抑制性能が劣りやすく、40.0質量%を越えると、インキ中で溶解性が劣りやすいため、インキ組成物全量に対し1.0〜40.0質量%が好ましい。さらに、インキ漏れ抑制性能を考慮すれば5.0質量%以上が好ましく、30.0質量%を越えるとインキ粘度が高くなりすぎて、書き味、書き出し性能に影響する傾向があるため、5.0〜30.0質量%が好ましく、8.0〜25.0質量%が好ましい。
本発明の油性ボールペン用インキ組成物のインキ粘度は特に限定されるものではないが、20℃、剪断速度5.0sec−1(静止時)におけるインキ粘度が、1000〜50000mPa・sであることが好ましい。これは、上記範囲内であればインキ漏れを抑制しつつ、書き味、書き出し性能、インキ追従性を向上することができ、筆記性能をバランス良く向上しやすいためである。さらに、ジベンジリデンソルビトール類を用いることで低粘度インキ化して、2000〜10000mPa・sとしても、ジベンジリデンソルビトール類がインキ中で粒子状に安定分散しており、インキ漏れを抑制可能であるため、インキ粘度を2000〜10000mPa・sと設定可能であり、書き味、書き出し性能を向上しやすくなる。より、インキ漏れ抑制効果、書き味、書き出し性能をバランス良く向上しやすいことを考慮すれば、前記インキ粘度は3000〜8000mPa・sであることが好ましく、より考慮すれば、前記インキ粘度は4000〜7000mPa・sであることが好ましい。
本発明のように、ジベンジリデンソルビトール類を用いる場合は剪断減粘性を有さないことが好ましい。粘性指数nはS=αDで示される粘性式中のnを指し、Sは剪断応力(dyn/cm=0.1Pa)、Dは剪断速度(s−1)、αは粘性係数を示す。粘性指数nは20℃において、ブルックフィールド株式会社製粘度計ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用してインキ粘度を測定し、算出することができる。
粘性指数nについてはインキ漏れ抑制効果、書き味、書き出し性能、インキ追従性などの筆記性を考慮すれば、粘性指数n=0.8〜1.0とすることが好ましく、より上記性能のバランスを考慮すれば、粘性指数n=0.9〜1.0とすることが好ましく、より考慮すれば0.95〜1.0が好ましい。
(界面活性剤)
本発明においては、潤滑性とチップ先端部を大気中に放置した状態で該チップ先端部が乾燥したときの書き出し性能を向上することを考慮すれば、界面活性剤を用いることが好ましい。これは、界面活性剤を用いると、ジベンジリデンソルビトール類によって形成される被膜を脆くする傾向があり、書き出し性能を改良でき、さらに潤滑性も向上することができる。界面活性剤としては脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。その中でも上記効果を考慮すれば、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を用いることが好ましく、書き出し性能、潤滑性を考慮すれば、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。特に、ボールペンで用いる場合はリン酸基が金属吸着などするため好ましい。
さらに、後述するが、ポリビニルブチラール樹脂を用いる場合はポリビニルブチラール樹脂によって形成するインキ層と、上記界面活性剤による潤滑層とによって、より潤滑性を向上しやすいため好ましい。
前記界面活性剤については、より書き出し性能と潤滑性の両方を向上することを考慮すれば、HLB値が6〜14であることが好ましい。これは、HLB値が14を越えると親水性が強くなりやすく、インキ中での溶解性が劣りやすいため、前記界面活性剤の効果が得られにくいためである。また、HLB値が6未満だと、親油性が強くなり過ぎて、有機溶剤との相溶性に影響が出やすく、インキ経時が安定しにくく、さらに書き出し性能が向上しにくいためである。さらに、潤滑性を考慮すれば、HLB値が12以下にすることが好ましく、HLB値が6〜12であることが好ましく、より書き出し性能を考慮すれば、HLB値が7〜12が好ましい。
尚、HLBは、グリフィン法、川上法などから求めることができる。特に、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、筆記先端部の乾燥時の書き出し性能に影響しやすいため、上記HLB値とした界面活性剤を用いることはより好ましい。
前記界面活性剤として、具体的には、脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸などが挙げられ、シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロ基ブチルスルホン酸塩、パーフルオロ基含有カルボン酸塩、パーフルオロ基含有リン酸エステル、パーフルオロ基含有リン酸エステル型配合物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物などが挙げられ、リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルリン酸エステル或いはその誘導体等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜5.0質量%がより好ましい。これは、0.1質量%より少ないと、所望の潤滑性が得られにくい傾向があり、5.0質量%を越えると、インキ経時が不安定性になりやすい傾向があるためであり、その傾向を考慮すれば、インキ組成物の総質量を基準として、0.3〜3.0質量%が好ましく、より考慮すれば、0.5〜3.0質量%が、最も好ましい。
(アミン)
本発明では、インキ中でのインキ成分の安定性や、pHを調整することを考慮すれば、アミンを用いることが好ましい。オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられ、その中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミン、ジメチルアルキルアミン、アルカノールアミンが好ましい。特にリン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は中和し、インキ中で安定化させることで書き出し性能や書き味を向上する効果が得られやすいため好ましい。
また、前記アミンの中でも、インキ中での安定性を考慮すれば、有機アミンが好ましく、インキ中の他成分との反応性については、1級アミンが最も強く、次いで2級アミン、3級アミンと反応性が小さくなるので、インキ経時安定性を考慮して、2級アミンまたは3級アミンを用いることが好ましい。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
前記アミンの含有量は、前記造塩染料やその他の成分との安定性を考慮すれば、インキ組成物全量に対し、0.1〜10.0質量%が好ましく、さらにリン酸エステル系界面活性剤に対する中和を考慮すれば、0.1〜5.0質量%が好ましい。
また、本発明による油性ボールペン用インキ組成物には、その他の添加剤として、潤滑性やインキ経時安定性を向上させるために、(i)界面活性剤、例えば脂肪酸アルカノールアミド、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を、(ii)粘度調整剤、例えば脂肪酸アマイド、水添ヒマシ油などの擬塑性付与剤、また、(iii)着色剤安定剤、(iv)可塑剤、(v)キレート剤、または(vi)助溶剤としての水などを適宜用いても良い。これらは、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
本発明による油性ボールペン用インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ撹拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種撹拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
また、本発明のように、ジベンジリデンソルビトール類を用いて油性ボールペン用インキ組成物を作成する時の攪拌温度は、70℃以下に設定してインキ製造することが好ましい。これは、70℃を超えると、ジベンジリデンソルビトール類が有機溶剤に溶解しやすく、インキ中で粒子として、存在しづらくなり、インキ漏れ抑制効果が得られにくくなるためで、より上記のインキ漏れ抑制を考慮すれば、油性インキを作成する時の攪拌温度は、60℃以下とすることが好ましい。
また、ボ−ルペンチップの材料はステンレス鋼、洋白、ブラス(黄銅)、アルミニウム青銅、アルミニウムなどの金属材、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABSなどの樹脂材が挙げられるが、ボール座の摩耗、経時安定性、コストを考慮するとステンレス製のチップ本体とすることが好ましい。
また、ボールの直径は特に限定されないが、ボールの直径が大きいと、ボールペンチップ本体とボールとの隙間からインキ漏れをしやすいが、本発明のようにジベンジリデンソルビトール類を用いた場合、インキ漏れ抑制効果があるため、ボール径を通常よりも大きくして1.0mm〜2.0mmとした場合でも好適に用いられ、特に1.2mm〜2.0mmとした場合は、より効果的である。特に、ジベンジリデンソルビトール類、ポリビニルブチラール樹脂を併用した場合は、高いインキ漏れ抑制効果が得られるため、好ましく、さらにケトン樹脂を併用して3種併用すると、より高いインキ漏れ抑制効果を相乗的に期待しやすいため、好ましい。
また、100mあたりのボールペンのインキ消費量は、インキ漏れ抑制、書き味、書き出し性能、インキ追従性および泣きボテなどを考慮して、20〜100mgであることが好ましく、より考慮すれば30〜80mgが好ましく、さらに、ジベンジリデンソルビトール類によるインキ漏れ抑制効果を考慮すれば、30〜70mgであることが好ましい。
なお、インキ消費量については20℃、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度70°、筆記荷重200gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本を用いてらせん筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値をボールペンの100mあたりのインキ消費量と定義する。
また、ジベンジリデンソルビトール類を用いて、よりインキ漏れ抑制効果、書き味、書き出し性能、インキ追従性および泣きボテなどを向上するにはインキ消費量を設定するだけではなく、ボール径との関係も重要である。ボール径B(mm)に対するインキ消費量A(mg)「(インキ消費量A(mg)/ボール径B(mm))」は、10〜100(mg/mm)が好ましく、20〜80(mg/mm)とすることが好ましく、より考慮すれば30〜70(mg/mm)が好ましく、よりインキ漏れ抑制を考慮すれば30〜60(mg/mm)とすることが好ましい。
本発明のように、インキ漏れ抑制効果や書き出し性能の両性能を向上するためには、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールをコイルスプリングなどの弾発部材により直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
実施例1(油性ボールペン用インキ組成物配合)
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、着色剤としては有機溶剤に顔料とポリビニルブチラール樹脂(顔料分散剤)を添加し分散機で分散させた顔料分散体、および染料、有機溶剤としてベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、樹脂としてはポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、界面活性剤としてはリン酸エステル系界面活性剤、有機アミンとしてはオキシエチレンアルキルアミン、曳糸性付与剤としてはポリビニルピロリドンを採用し、これを所定量秤量して60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させ、その後ジベンジリデンソルビトールを所定量秤量しインキ中に添加して油性ボールペン用インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して、実施例1のインキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度5.0sec−1、インキ粘度=4500mPa・s、剪断速度10sec−1、インキ粘度=4400mPa・sであり、粘性指数nを算出したところ、n=0.97であった。
実施例1
顔料(顔料分散体) 15.0質量%
着色剤(染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料) 2.0質量%
着色剤(染料、酸性染料とアミンとの造塩染料) 1.0質量%
着色剤(酸性染料と塩基性染料との造塩染料) 6.0質量%
有機溶剤(ベンジルアルコール) 3.4質量%
有機溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル) 53.3質量%
ジベンジリデンソルビトール類(化1:R1,R2が共にメチル基) 5.0質量%
界面活性剤(リン酸エステル系界面活性剤) 2.0質量%
有機アミン(エチレンオキシドを有するアミン) 1.0質量%
曳糸性付与剤(ポリビニルピロリドン) 0.8質量%
樹脂(ポリビニルアルコール樹脂)
(水酸基量:36mol%、平均重合度:300) 3.5質量%
樹脂(ケトン樹脂) 7.0質量%
実施例2〜14
表1に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜14の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して、実施例2、3、9のインキ粘度を測定したところ、
実施例2では、20℃の環境下、剪断速度5.0sec−1、インキ粘度=2700mPa・s、剪断速度10sec−1、インキ粘度=2640mPa・sであり、粘性指数nを算出したところ、n=0.97であった。
実施例3では、20℃の環境下、剪断速度5.0sec−1、インキ粘度=4960mPa・s、剪断速度10sec−1、インキ粘度=4800mPa・sであり、粘性指数nを算出したところ、n=0.95であった。
実施例9では、20℃の環境下、剪断速度5.0sec−1、インキ粘度=10100mPa・s、剪断速度10sec−1、インキ粘度=10000mPa・sであり、粘性指数nを算出したところ、n=0.99であった。
比較例1〜3
表に示すように、インキ成分とチップ仕様を変更した以外は実施例1と同様の手順で、比較例1〜の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に、評価結果を示す。
試験及び評価
実施例1〜14及び比較例1〜3で作製した油性ボールペン用インキ組成物をインキ収容筒の先端にボール(φ1.2mm)を回転自在に抱時したボールペンチップ(チップ内に、ボールを直接チップ先端縁の内壁に押圧するコイルスプリングを有し、ボールの縦軸方向の移動量が12μm)を装着するとともに、インキ収容筒内に実施例1の油性ボールペン用インキ(0.27g)を直に収容してボールペンレフィルを(株)パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(商品名:スーパーグリップ)に配設して、油性ボールペンを作製し、筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験及び評価を行った。
また、実施例1をボール径(B)1.2mmのボールペンでらせん筆記試験を行ったところ、100mあたりのインキ消費量(A)は48mg/100mで、ボール径B(mm)に対するインキ消費量A(mg)は、40(mg/mm)であった。
実施例13は、実施例1のインキを用いて、ボールペンチップの仕様をボール(φ1.6mm、ボールの縦軸方向の移動量15μm)に変更した以外は実施例1と同様な方法で油性ボールペンを作製して、ボール径(B)1.6mmのボールペンでらせん筆記試験を行ったところ、100mあたりのインキ消費量(A)は、70mg/100mで、ボール径B(mm)に対するインキ消費量A(mg)「(インキ消費量A(mg)/ボール径B(mm))」は44(mg/mm)であった。
実施例14は、実施例1のインキを用いて、ボールペンチップの仕様をボール(φ0.7mm、ボールの縦軸方向の移動量8μm)に変更した以外は実施例1と同様な方法で油性ボールペンを作製して、ボール径(B)0.7mmのボールペンでらせん筆記試験を行ったところ、100mあたりのインキ消費量(A)は38mg/100mで、ボール径B(mm)に対するインキ消費量A(mg)「(インキ消費量A(mg)/ボール径B(mm))」は54(mg/mm)であった。
インキ漏れ抑制試験:30℃、85%RHの環境下にペン先下向きで7日放置し、チップ先端からのインキ漏れを確認した。
チップ先端のインキ滴がないもの ・・・◎
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以内のもの ・・・○
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/4以上、1/2以内のもの ・・・△
チップ先端のインキ滴がテーパー部の1/2以上のもの ・・・×
書き味:手書きによる官能試験を行い評価した。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
実用上問題ないレベルの滑らかさであるもの ・・・△
重いもの ・・・×
実施例1〜14では、インキ漏れ抑制試験、書き味ともに良好な性能が得られた。
また、実施例1〜14の中で、着色剤として顔料を用いたインキを、顕微鏡で見たところ、顔料分散性が良好で、析出物もなく良好であった。
比較例1、2では、ジベンジリデンソルビトール類を用いなかったため、インキ漏れ抑制性能が劣ってしまった。
比較例3では、ボールの縦軸方向の移動量が25μmを超えており、ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れを抑制できなかった。
また、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具(出没式ボールペン)を用いた場合では、インキ漏れ抑制性能、書き出し性能が最も重要な性能の1つであるため、本発明のように筆記先端部の間隙からインキ漏れ(ボールとチップ先端の間隙からのインキ漏れ)を抑制して、かつ、書き出し性能を良好とすることが可能である本発明のような油性ボールペンを用いると効果的である。
また、本実施例では、インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容したボールペンレフィルを軸筒内に配設した油性ボールペンなどを例示したが、本発明の油性ボールペンは、軸筒自体をインキ収容筒とし、軸筒内に、油性ボールペン用インキ組成物を直に収容した直詰め式の油性ボールペンであっても良く、インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容したもの(ボールペンレフィル)をそのままボールペンとして使用した構造であっても良い。
本発明は、油性ボールペンとして利用でき、さらに詳細としては、キャップ式、出没式等の油性ボールペンとして広く利用することができる。

Claims (6)

  1. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に油性ボールペン用インキ組成物を収容してなる油性ボールペンであって、前記ボールの縦軸方向の移動量が25μm以下であり、前記油性ボールペン用インキ組成物が着色剤、有機溶剤、ジベンジリデンソルビトール類を含んでなることを特徴とする油性ボールペン。
  2. 前記ジベンジリデンソルビトール類が、一般式(化1)であることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン。
  3. 前記ジベンジリデンソルビトールの含有量は、インキ組成物全量に対し、0.1〜15質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン。
  4. 前記油性ボールペン用インキ組成物に、ポリビニルブチラール樹脂および/またはケトン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
  5. 前記有機溶剤が、グリコールエーテル溶剤であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
  6. 20℃、剪断速度5.0sec−1におけるインキ粘度が、1000〜50000mPa・sであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン。
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