JP2020128356A - (メタ)アクリルシリコーン化合物の製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリルシリコーン化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリエーテルの繰り返し単位数が3以上である(メタ)アクリルシリコーン化合物を高純度にて製造する方法を提供する。【解決手段】対応する(メタ)アクリレート化合物のハイドロシリル化反応により、下記(メタ)アクリルシリコーン化合物(9)などを得ることを特徴とする製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、眼用デバイス、特にコンタクトレンズ、眼内レンズ、人口角膜などを製造するためのシリコーン化合物の製造方法に関する。詳細には、他の親水性モノマーと混合し共重合するか、あるいは単独でビニル重合することによって上記のような眼科デバイスの為の眼用レンズに好適に使用できるポリマーを与えることができるシリコーン化合物の製造方法に関する。
眼用レンズモノマー(5)として下記式で表される片末端にメタクリル基をもつ、片末端メタクリル変性シリコーンモノマー化合物が使用されている。
Figure 2020128356
(Buはn−ブチル基を表す)
しかしこの片末端メタクリル変性シリコーンモノマー化合物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)やN−ビニルピロリドン(NVP)といった、眼用レンズモノマーとして一般的に使用される親水性モノマーと相溶せず、該親水性モノマーと共重合して得られるポリマーは透明性に欠けるという欠点があった。
また、他の眼用レンズモノマーとして、通称SiGMAとして知られる下記式(6)で示されるシリコーンモノマー化合物も知られている。
Figure 2020128356
SiGMAはHEMAやNVPとの相溶性に優れ、これらを共重合して得られるポリマーは透明性が高く、かつ比較的酸素透過性が高いという特徴を有している。しかし該SiGMAと親水性モノマーとの共重合ポリマーでは、長時間連続装用するには酸素透過性が不十分であった。したがって、親水性モノマーと共重合して、透明性が高く、且つ、さらに高い酸素透過性を有するポリマーを提供できる(メタ)アクリルシリコーン変性シロキサンモノマー化合物の開発が求められていた。
特許文献1には、下記式(1)で示される(メタ)アクリルシリコーン化合物が記載されている。
Figure 2020128356
[式中、R、R、R、RおよびRは炭素数1〜20の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基である。Rは水素、または炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基である。mは1以上の整数であり、nは0もしくは1以上の整数である。Xは炭素数が2〜20のアルキレン基であり、Yは−OCHCH、−OCH(CH)CH−、または−OCHCH(CH)−であり、pは3以上の整数である]
特許文献1には、上記(メタ)アクリルシリコーン化合物を、片末端に水酸基を持つポリオルガノシロキサンと、重合性官能基を持つカルボン酸との脱水縮合反応にて製造する方法が記載されている。しかし当該製造方法で得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物はシリコーンの分子量に分布ができてしまい、高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物として得ることはできなかった。
また、特許文献1には上記(メタ)アクリルシリコーン化合物を、片末端にSi−H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、片末端に不飽和二重結合を有するポリエーテル基含有(メタ)アクリレート化合物の付加反応によって製造する方法も記載している。しかしながら特許文献1の実施例には、前記脱水縮合反応にて上記(メタ)アクリルシリコーン化合物を製造する方法が記されているのみであって、付加反応による製造の実施例は何ら記載がない。特許文献1に記載の方法では、ポリエーテル含有(メタ)アクリル化合物の(メタ)アクリル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−H基も反応してしまい、不純物として(メタ)アクリレート化合物の両末端にオルガノハイドロジェンポリシロキサンが付加した化合物が副生してしまうため、高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物を得ることは困難である。
また特許文献2には、高純度の(メタ)アクリルシリコーン化合物を製造する方法として、片末端に二重結合を有するポリエーテル含有(メタ)アクリレート化合物を、オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル数に対して過剰量添加し、付加反応することによって下記式(II)で表される化合物を製造し、次いで過剰の前記ポリエーテル含有(メタ)アクリル化合物を減圧留去によって除去することにより高純度を有する(メタ)アクリルシリコーン化合物を製造する方法が記載されている。
Figure 2020128356
特開2001−55446号公報 特許第5972090号
しかしながら特許文献2に記載の方法では、ポリエーテルの繰り返し単位数(a)が2以下のポリエーテル含有(メタ)アクリレート化合物(未反応分)を減圧留去によって除去する方法が記されているが、ポリエーテルの繰り返し単位数が3以上の化合物を用いて反応させる方法は記載されていない。ポリエーテルの繰り返し単位数が3以上の前記ポリエーテル含有(メタ)アクリル化合物は、沸点が高く、減圧下であっても留去に高温を要し、熱重合を起こすおそれがある。そのため特許文献2記載の方法では除去することが困難である。
さらに前記式(II)で表されaが3以上である(メタ)アクリルシリコーン化合物の製造においては、未反応原料であるポリエーテル基含有(メタ)アクリル化合物が残存したり、該原料(メタ)アクリル化合物から副反応にて生じる下記式(3’)の化合物が生じ、これらの不純物を減圧留去によって除去することができず、高純度を有する(メタ)アクリルシリコーン化合物を与えるには至らなかった。
Figure 2020128356
前記式(II)で示される(メタ)アクリルシリコーン化合物を、眼用レンズ、眼内レンズなどの眼科デバイスに利用する場合には、上記のような不純物は製品物性の低下や目刺激などに繋がり、高純度化は大きな課題である。従って本発明は、上記事情に鑑み、上記式(II)で表されポリエーテルの繰り返し単位数(a)が3以上である(メタ)アクリルシリコーン化合物を高純度にて製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、付加反応後に反応混合物を液液分離に付することで未反応原料や副生物を除去し、上記式(II)で表されポリエーテルの繰り返し単位数(a)が3以上である化合物を、未反応原料や副生物の含有量が少なく、高純度にて、かつ安価で製造する方法を見出した。
即ち、本発明は、
下記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を製造する方法であって
Figure 2020128356
(Xはプロピレン基又は1−メチルエチレン基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは互いに独立に、置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、mは2〜19の整数であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは3〜5の整数である)、
下記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと
Figure 2020128356
(式中、R、R、及びmは上記の通りである)、
下記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物の、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量に対して1.4倍以上となる量とを
Figure 2020128356
(式中、R、及びnは上記の通りである)、
付加反応触媒の存在下で反応させて上記(メタ)アクリルシリコーン化合物(I)を含有する混合物を得る工程、及び、該工程により得た混合物を液液分離に付して上記式(メタ)アクリルシリコーン化合物(I)を分取する工程を含むことを特徴とする、前記製造方法を提供する。
さらに本発明は高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物と他のモノマーとを共重合することによって得られるポリマーを提供する。また本発明は高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物をさらにビニル重合することによって得られるポリマーを提供する。
本発明の製造方法によれば、不純物である上記式(3)で示される(メタ)アクリル化合物や上記式(3)由来の副生物である上記式(3’)の化合物の残存量を低減できるため、高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物を提供することができる。さらに本発明の製造方法では高純度(メタ)アクリレート化合物を1ステップで得ることができ、かつ反応に使用した溶剤や液液洗浄に使用した溶剤は減圧下、加熱することにより容易に除去することができるため、目的化合物を容易に製造することができる。よって、目的とする高純度(メタ)アクリルシリコーン化合物を非常に安価で、かつ容易に製造することができる。
実施例1で得られた生成物のTHF中のゲル浸透クロマトグラフの全体図 比較例2で得られた生成物のTHF中のゲル浸透クロマトグラフの全体図
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を高純度で製造する方法である。
Figure 2020128356
(Xはプロピレン基又は1−メチルエチレン基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは互いに独立に、置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、mは2〜19の整数であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは3〜5の整数である)
上記式(1)において、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくはメチル基またはn−ブチル基であり、特に好ましくはn−ブチル基である。Rは互いに独立に、置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基が挙げられ、上記炭化水素基の一部または全部をハロゲン原子などで置換していてもよい。好ましくは非置換の炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。Rは水素原子またはメチル基である。Xはプロピレン基又は1−メチルエチレン基であり、好ましくはプロピレン基である。上記式(I)で表される化合物は、Xがプロピレン基である化合物と、Xが1−メチルエチレン基である前記化合物の異性体との混合であってもよい。
mは2〜19の整数、好ましくは5〜15の整数、最も好ましくは7〜9の整数である。mが上記下限値未満では得られるポリマーの酸素透過性が低下し、モノマーとしての特性が低下する。また、分子中の親疎水性バランスが変化し、液液分離の際にエマルション化したり、分離不良を起こすため工程的に不利であり、好ましくない。mが上記上限値より大きいと得られるポリマーの親水性が低下するため、他の親水性モノマーとの相溶性が低下し好ましくない。
nは3〜5の整数であり、好ましくは3である。nが上記下限値未満であると、得られるポリマーの親水性が低下するため、他の親水性モノマーとの相溶性が低下し好ましくない。nが上記上限値より大きい値であると、得られるポリマーの酸素透過性が低下し、モノマーとしての特性が低下する。また、分子中の親疎水性バランスが変化し、液液分離の際にエマルション化したり、分離不良を起こすため工程的に不利であり、好ましくない。
上記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物は、下記式(1)で表される化合物と、下記式(1’)で表され、下記式(1)で表される化合物の異性体との混合であってよい。
Figure 2020128356
Figure 2020128356
(式中、R、R、R、m、及びnは上記の通りである)。
本発明において「高純度」とは、本発明の製造方法によって得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物が、上記式(1)で表され特定の一の構造を有し、但し、nは異なる値の混合でもよい化合物を、高濃度(91質量%以上、好ましくは94質量%以上)で含有することを意味する。さらには、該(メタ)アクリルシリコーン化合物は上記式(1’)で表される式(1)化合物の異性体を含有していてもよく、上記式(1)で表される化合物と該異性体との合計として、92質量%以上、好ましくは95%質量%以上を有するのがよい。特定の一の構造を有し、但し、nは異なる値の混合でもよい化合物とは、上記式(I)で表され特定の一のm、R、R、及びRを有し、nは異なる値の混合(平均)でもよい化合物を意味する。また、該化合物の異性体としては、該化合物と同じm、R、R、及びRを有し、nは異なる値の混合でもよい、上記式(I’)で表される化合物を意味する。
本発明において、(メタ)アクリルシリコーン化合物、および、その他化合物の純度はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析、および、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)分析によって測定される値であり、含有量(質量%)で標記する。なお、本発明の製造方法によって得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物において、上記異性体(1’)の含有率は好ましくは1質量%未満、特には0.1〜0.8質量%、さらに特には0.4〜0.6質量%である。異性体の含有量は少なければ少ないほどよい。(メタ)アクリルシリコーン化合物が上記異性体との混合である場合、単離することなく混合物として使用してよく、後述するポリマーの調製においても混合物として使用可能である。
以下、本発明の製造方法について、より詳細に説明する。
本発明の製造方法は、下記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと
Figure 2020128356
(式中、R、R、及びmは上記の通りである)、
下記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物の、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量に対して1.4倍以上となる量とを
Figure 2020128356
(式中、R、及びnは上記の通りである)、
付加反応触媒の存在下で反応させて上記(メタ)アクリルシリコーン化合物(I)を含有する混合物を得る工程、及び、該工程により得た混合物を液液分離に付して上記式(メタ)アクリルシリコーン化合物(I)を分取する工程を含むことを特徴とする。
本発明の製造方法は、上記付加反応において反応に付する式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物のモル量が、式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量に対して1.4倍以上、好ましくは1.5〜2.5倍、より好ましくは1.6〜1.8倍であることを特徴とする。オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量に対して、(メタ)アクリレート化合物のモル量が上記下限値未満になると、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(メタ)アクリレート化合物における(メタ)アクリル基との付加反応が多く生じてしまうため好ましくない。
上記式(2)において、R、R、及びmは上記の通りである。該化合物は、純度98質量%以上、好ましくは99%以上を有するのがよい。上記式(2)で表される化合物の純度はガスクロマトグラフィー分析などにより分析可能である。
上記式(3)で表される化合物は任意の方法で製造されてよく、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、トリエチレングリコールモノアリルエーテルとメタクリル酸メチルをエステル交換反応に付することによって、上記式(3)においてn=3である化合物を製造することができる。n=3〜5の整数であれば、式(3)においてnが単一である化合物であっても、異なるnを持つ複数の化合物の混合物でも良い。
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンと、上記(メタ)アクリレート化合物の付加反応は、付加反応触媒の存在下で行われる。該付加反応触媒としては、付加反応に一般に用いられる触媒を単独、または併用できる。例えば白金族金属系化合物の貴金属触媒として挙げられる白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系の触媒が使用できる。これらの中でも特に白金系の触媒が好適である。白金触媒の例としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、アルデヒド溶液、あるいは塩化白金酸のオレフィン、またはビニルシロキサンとの錯体触媒などが挙げられる。この中でも塩化白金酸重曹中和−ビニルシロキサン錯体触媒(カルステッド触媒)溶液が特に好適に使用される。
上記付加触媒の添加量は触媒量でよい。特には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(メタ)アクリレート化合物の総重量に対して、触媒中金属換算量で1〜10ppm、好ましくは2〜5ppmが好適である。付加触媒量が少ないと、付加反応の速度が遅くなったり、反応が進行しないため好ましくない。また、付加触媒量が多いと副反応が起こりやすくなり、更に、反応が急速に起こることによる発熱で重合が起こる可能性があるため好ましくない。
上記の付加反応には、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンといった脂肪族炭化水素溶剤、ジオキサン、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。特にはメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレンといった活性水素を持たず、また付加反応の際に多量に揮発しにくい大気圧での沸点が約100℃以上であるものが好適である。エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤は付加反応の際に水酸基とSi−H基の間で脱水素反応を起こすことから好ましくない。また該溶剤は単独で使用しても、複数種を同時に併用してもよい。
溶剤の量は任意であるが、付加反応が効率よく進行するのに有効な量を添加することが望ましく、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(メタ)アクリレート化合物の合計量に対して、50〜200質量%、好ましくは80〜150質量%である。
上記の付加反応は発熱を伴う。そのため、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(メタ)アクリレート化合物の反応は、両者を一括で仕込み反応させるよりも、オルガノハイドロジェンポリシロキサンまたは(メタ)アクリレート化合物のいずれかを滴下しながら反応を行うことが望ましい。特には、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを滴下しながら(メタ)アクリレート化合物と反応させることが好ましい。(メタ)アクリレート化合物を滴下してオルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応させた場合、(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリル基に対してもオルガノハイドロジェンポリシロキサンが付加反応するおそれがあるため、避けるべきである。
滴下開始温度は30〜80℃、好ましくは40〜70℃である。熟成温度は60〜80℃、熟成時間は1〜4時間が好ましい。熟成温度が高すぎると重合等の副反応が生じるため好ましくない。
上記の付加反応後、任意の吸着剤を添加し攪拌、濾過することによって付加反応触媒を吸着除去してもよい。吸着剤としては、例えば、活性炭やシリカゲルなどが挙げられるが、付加反応触媒除去には特に活性炭が好適に用いられる。吸着剤の量は反応液中の付加反応触媒を効率よく除去するのに有効な量を添加することが望ましく、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(メタ)アクリレート化合物、溶媒を含んだ反応液の総重量において、0.1〜5質量%、好ましくは0.4〜2質量%である。吸着剤の添加量が上記下限値未満になると吸着効率が低下し、触媒の除去が行えない場合があり好ましくない。また上記上限値より大きくなると吸着は効率的に行えるが、吸着剤を濾過により除去する行程に時間を要し、ロスが発生することから工業的に不利であり好ましくない。
上記(メタ)アクリレート化合物の重合等の副反応を抑制する目的で重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては前記(メタ)アクリルシリコーン化合物(1)に対して相溶するものであれば任意に選択することができ、また単独で使用しても、複数種を併用してもよい。重合禁止剤の例として、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,5−ジ−t−アミル−ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン、2−t−ブチル−ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,t−ブチル−ヒドロキシアニソールなどのフェノール化合物や、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、クエン酸、トコフェロール、カテコール、フェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルなどが挙げられる。これらの中でも、後の行程である液液洗浄によって除去し易い2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが特に好ましい。
本発明における重合禁止剤は、反応中の重合等の副反応を抑制するために有効な量を添加することが望ましく、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(メタ)アクリレート化合物、溶媒を含んだ反応液の総重量において、0.005〜0.5質量%であり、より好ましくは0.007〜0.1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.05質量%である。重合禁止剤の添加量が上記下限値未満になると反応における重合等の副反応を引き起こす可能性があがるため、好ましくない。また0.5質量%を上回ると、最終生成物中の不純物量の増加につながるため好ましくない。
本発明の製造方法によれば、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが(メタ)アクリレート化合物の(メタ)アクリル基と付加反応することを抑制できる。そのため、オルガノポリシロキサンが(メタ)アクリレート化合物のアリル基と(メタ)アクリル基との両方に反応した化合物(以下、両末端シロキサン化合物という)の生成量を低減することができる。したがって本発明の方法によれば、得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物、及び、前記異性体等の最終生成物の合計に対して、上記両末端シロキサン化合物の含有量(質量%)を、1H−NMRによる測定で3質量%未満、好ましくは2質量%未満に抑えることができる。
本発明の製造方法は、上記付加反応により生成した上記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を含む反応混合物を液液分離に付すことによって、該反応混合物から未反応原料である(メタ)アクリレート化合物(即ち、上記式(3)で表される化合物)、および下記式(3’)で表される、上記式(3)化合物由来の副生成物を除去する行程をさらに含むことを特徴とする。
Figure 2020128356
液液分離に使用する溶媒(溶剤)は、前記反応液と混合した際に相分離するものであれば任意に選択可能である。また、溶媒(溶剤)は複数の異なる溶媒を任意の比率で混合して使用してもよい。
液液分離に使用する溶媒は(A)無極性溶媒の少なくとも1と、(B)極性非プロトン性溶媒又は極性プロトン性溶媒の少なくとも1の組合せがよい。詳細には、(A)誘電率が10以下の無極性溶媒と(B)誘電率が15以上の極性溶媒の組み合わせであるのがよい。好適な組み合わせとしては、(A)ヘキサン、トルエン、酢酸エチルのいずれかまたはその混合物から選択される溶媒と、(B)任意の無機塩を含んでいてもよい水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリルのいずれか、またはその混合物、から選択される溶媒である。特には、ヘキサン/アセトニトリル、ヘキサン/水、トルエン/水、ヘキサン/水/メタノール混合液などが好適であり、分離の容易さの観点から、ヘキサン/アセトニトリルの組合せが好適である。上記(A)無極性溶媒と(B)極性非プロトン性溶媒又は極性プロトン性溶媒の少なくとも1の量比は適宜調整されればよいが、極性溶媒の量比が多すぎると目的物自体も廃液である極性溶媒側へ流れてしまい、収率が低下するおそれがある。従って、極性溶媒の量は、洗浄する化合物と非極性溶媒の総重量に対して20重量%以下であるのが好ましい。
また、液液分離に付する際には、前記付加反応の際の溶剤を含んだ反応液をそのまま使用しても、別の溶剤に置換しても良い。溶媒置換には任意の方法を用いることができるが、特には減圧ストリップによって反応時の溶媒を留去し、新たに洗浄用の溶媒を添加する方法が好ましい。減圧ストリップの温度は、特に限定はしないが、好ましくは20〜80℃、更に好ましくは30〜70℃である。80℃を超えると生成物が増粘し、高分子量化する恐れがある。
液液分離に際して、分離効率を上げるため溶剤に任意の添加物を添加してもよい。例えばトルエン/水洗浄の際には水相に硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの無機塩を3〜15質量%、特には5〜10質量%添加することが好ましい。
液液分離に使用する溶剤量は任意であるが、好ましくは仕込み原料の合計1質量部に対してに対して0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜2質量部となる量比であればよい。上記下限値未満であると除去効率が低下したり、分離不良を引き起こす可能性があるため好ましくない。また上記上限値より大きい値であると、生成物の(メタ)アクリルシリコーン化合物も分離され収率が低下したり、ポットイールド低下につながるため好ましくない。
液液分離する方法は、バッチ式に反応溶液中に新たに洗浄用の溶媒を加えた後、静置し分離する方法、または連続式に反応溶液中に洗浄用の溶媒を加えつつ連続式に分離する方法、遠心分離機、静置分離機、等の公知の方法が挙げられるが、混合および分離が十分に行われるのであれば特に限定されない。
液液分離の回数は、未反応原料である上記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物、および上記式(3’)で表される副生成物が十分に除去できる回数であれば任意に選択することができるが、好ましくは2〜5回であって、特には3〜4回が好ましい。前記下限値未満であると上記式(3)及び式(3’)で表される(メタ)アクリレート化合物が十分に除去されず純度低下につながり、前記上限値以上であると主成分も廃棄層に移行し収率低下につながるため好ましくない。
当該液液分離において、上記式(I)で表される(メタ)アクリレート化合物は低極性相(即ち、上記(A)に記載される溶媒)に溶解し、上記式(3)及び式(3’)で表される(メタ)アクリレート化合物は高極性相(即ち、上記(B)に記載される溶媒)に溶解する。従って、例えば、ヘキサン/アセトニトリルで液液分離する場合は、ヘキサン相を回収することにより、上記式(I)で表される(メタ)アクリレート化合物を得ることができる。
液液分離する時の温度は10〜60℃の範囲で任意に設定できるが、好ましくは20〜40℃である。液液分離の温度が上記範囲内であれば効率よく層分離する。尚、液液分離の温度とは液全体の温度を意味する。加温が必要な場合は分液層の外部から加温するなどして温度を調節すればよい。
液液分離後に得られる生成物を含む反応液は、液液分離に使用した溶剤を減圧下ストリップすることで、上記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を得ることができる。ストリップ工程での目的物の熱重合を抑制する目的で、任意の重合禁止剤を再度添加してもよい。重合禁止剤の例、および添加量に関しては前記に示した通りである。
本発明の製造方法によれば、上述した液液分離により(メタ)アクリルシリコーン化合物の製造工程で残存する式(3)で表される未反応の(メタ)アクリレート化合物および式(3’)で表される副生成化合物の量を低減することができる。したがって、得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物は上述した高純度を有することができる。最終生成物の合計質量のうち式(3)および式(3’)で表される(メタ)アクリレート化合物の含有量(質量%)は3質量%未満、好ましくは1質量%未満とするのが好ましく、少なければ少ないほどよい。更に、本発明の製造方法によれば、前記式(3)で表される(メタ)アクリレートのアリル基と(メタ)アクリル基との両方に前記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが反応して得られる化合物の量も低減することができ、好ましくは3質量%未満、より好ましくは2質量%未満とすることができる。
本発明は高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物と他のモノマーとを共重合することによって得られるポリマーをも提供できる。他のモノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、スチレン系モノマーなど一般に使用される任意のモノマー種であればよい。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、及びN−ビニルピロリドン(NVP)などが挙げられる。モノマー種が本発明により得られる高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物と相溶する場合は無溶剤で混合でき、また相溶しない場合も相溶する溶媒を使用すればよい。また本発明は高純度な(メタ)アクリルシリコーン化合物をさらにビニル重合することによって得られるポリマーを提供する。
以下に実施例および比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。下記実施例においてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析による測定は下記に示す条件によって行った。
測定装置:東ソー社製HLC−8320GPC
カラム:TSKgel SuperH2500 6.0mmI.D.×15cm、3μm
TSKgel SuperHM−H 6.0mmI.D.×15cm、3μm
リファレンスカラム: TSKgel SuperH−RC
溶媒:テトラヒドロフラン
測定時間:14分
流速:0.6mL/分
注入量:50μL
検出器温度:40℃
カラム温度:40℃
サンプル温度:40℃
検出器:RI(示差屈折検出器)
また本実施例において核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)測定は、BRUKER社のAVANCE III/ULTRASHIELDTM400PLUSを用い、重クロロホルム中で測定した。
[実施例1]
<高純度メタクリルシリコーン化合物の合成>
下記式(7)で示される片末端メタクリレート化合物(ビニル価343mmol/100g)233g(0.8mol、下記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量の1.6倍)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール72mg、ジメトキシエタン200g、およびトルエン400gをジムロート冷却管、温度計、滴下漏斗を備えた2Lフラスコに仕込み、65℃まで昇温した。塩化白金酸アルカリ中和物−ビニルシロキサン錯体触媒のトルエン溶液(白金含有量として0.5質量%)を0.48g添加し、滴下漏斗を用いて平均構造が下記式(8)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si−H濃度138mmol/100g、GC純度99.2%)362g(0.5mol)を約1時間かけて滴下した。
Figure 2020128356
(上記式(7)で示される片末端メタクリレート化合物は、nが3〜5の整数である化合物の混合であり、n=3の化合物を42%、n=4の化合物を40%、及びn=5の化合物を18%含む)
Figure 2020128356
滴下後、内温は75℃まで上昇した。滴下終了後、該反応混合物を80℃にて4時間熟成した後、H−NMRにて反応物を確認したところ、原料のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−Hのピークが消失し、反応が完結していた。反応液に活性炭を5.0g添加し2時間攪拌した後、濾紙を用いて活性炭を濾過した。濾液からトルエンとジメトキシエタンを内温65℃で減圧下ストリップして、588gの生成物を得た。得られた生成物をヘキサン980gに溶解し分液漏斗へと移した。次いでアセトニトリル250gを加え、分液操作を行った。具体的には、下層を廃棄して上層を回収し、再度アセトニトリル250gを加え、同様の分液操作を3回繰り返し、上層を回収した。回収した洗浄液に対して、36mgの2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを加え、内温65℃で減圧下ストリップして溶剤を留去し、無色透明の433gの生成物(収率85%)を得た。得られた生成物の構造を1H−NMRで解析したところ、主成分は下記式(9)で表される化合物であった。
Figure 2020128356
1H−NMRから、nは平均3.7であった。
得られた化合物のH−NMRスペクトルは以下の通りである。
・ケイ素隣接メチル基由来水素 δ0.10ppm
・メタクリル二重結合由来水素 δ5.65ppm、6.15ppm
・メタクリル、メチル基由来水素 δ1.95ppm
・ケイ素隣接プロピレン基(シリコーン-ポリエーテル間)水素
δ0.50ppm、1.60ppm、3.40ppm
・ケイ素隣接ブチル基由来水素 δ0.50ppm、0.90ppm、1.30ppm
・ポリエーテル由来水素 δ3.50ppm〜3.80ppm
・Si−H/メタクリル付加体由来水素
δ0.55ppm、1.20ppm、2.60ppm
ここで、Si−H由来のピーク(4.70ppm)と、前記式(7)で示される片末端メタクリレート化合物、および前記式(7)由来の副生物(下記式(7’)で表される化合物)由来のピークは確認されなかった。また、得られた生成物の純度を1H−NMRによる測定で算出したところ、上記式(9)で表される化合物と、該化合物の異性体(下記式(9’)で表される化合物)の合計として96.5質量%であった。また、得られた生成物において、1H−NMRの積分値から、前記式(7)で示される片末端メタクリレート化合物の両末端にオルガノポリシロキサンが導入された化合物の量は1.7質量%であった。
Figure 2020128356
(nは上記式(7)の化合物と同じである)
Figure 2020128356
(nは平均3.7)
得られた生成物のゲル浸透クロマトグラフを図1に示す。上記式(7)および式(7’)で表される化合物は保持時間9分以降にピークを生じるところ、図1のクロマトグラフでは保持時間9分以降にピークが確認されず、式(7)および式(7’)で表される化合物を含まないことがわかる。
[比較例1]
上記式(7)で示される片末端メタクリレート化合物(ビニル価343mmol/100g)175g(0.6mol、下記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量の1.2倍)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール72mg、ジメトキシエタン200gおよびトルエン400gをジムロート冷却管、温度計、滴下漏斗を備えた2Lフラスコに仕込み、65℃まで昇温した。塩化白金酸アルカリ中和物−ビニルシロキサン錯体触媒のトルエン溶液(白金含有量として0.5質量%)を0.43g添加し、滴下漏斗を用いて平均構造が上記式(8)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si−H濃度138mmol/100g、GC純度99.2%)362g(0.5mol)を約1時間かけて滴下した。
滴下後、内温は76℃まで上昇した。滴下終了後、該反応混合物を80℃にて4時間熟成した後、H−NMRにて反応物を確認したところ、原料のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−Hのピークが消失し、反応が完結していた。反応液に活性炭を5.0g添加し2時間攪拌した後、濾紙を用いて活性炭を濾過した。濾液からトルエンとジメトキシエタンを内温65℃で減圧下ストリップして、519gの生成物を得た。得られた生成物をヘキサン866gに溶解し分液漏斗へと移した。次いでアセトニトリル220gを加え、分液操作を行った。分液操作を3回繰り返し、下層を廃棄して上層を回収した。回収した洗浄液に対して、35.5mgの2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを加え、内温70℃で減圧下ストリップして溶剤を留去し、無色透明の407gの生成物(収率80%)を得た。得られた生成物の構造を1H−NMRで解析したところ、主成分は下記式(9)で表される化合物であった。
Figure 2020128356
nは1H−NMRから平均3.7であった。
得られた化合物のH−NMRスペクトルは以下の通りである。

・ケイ素隣接メチル基由来水素 δ0.10ppm
・メタクリル二重結合由来水素 δ5.65ppm、6.15ppm
・メタクリル、メチル基由来水素 δ1.95ppm
・ケイ素隣接プロピレン基(シリコーン-ポリエーテル間)水素
δ0.50ppm、1.60ppm、3.60ppm
・ケイ素隣接ブチル基由来水素 δ0.50ppm、0.90ppm、1.30ppm
・ポリエーテル由来水素 δ3.50ppm〜3.80ppm
・Si−H/メタクリル付加体由来水素
δ0.55ppm、1.20ppm、2.60ppm
・アリル基由来
δ5.15ppm、5.25ppm、5.85ppm
・アリル基内部転移体由来
δ4.40ppm、4.75ppm、5.95ppm、6.25ppm
Si−H由来のピーク(4.70ppm)は確認されなかった。また、得られた生成物の純度を1H−NMRによる測定で算出したところ、該生成物は、上記式(9)で表される化合物と、該化合物の異性体(上記式(9’))を合計で91.5質量%有していた。さらに1H−NMRの積分値から、前記式(7)で示される片末端メタクリレート化合物の両末端にオルガノポリシロキサンが導入された化合物の量は5.7質量%であった。また、アリル基およびアリル基の内部転移によるピークが確認され、前記化合物(7)および(7’)のメタクリルのみに付加した(10)および(10’)のような化合物が生成し、その量は1.2質量%であった。
Figure 2020128356
Figure 2020128356
[比較例2]
実施例1と同様にしてオルガノハイドロジェンポリシロキサンと片末端メタクリレート化合物を付加反応させた後、同様に活性炭処理をし、濾過後にトルエンとジメトキシエタンを減圧下ストリップすることによって無色透明の588gの生成物を得た。得られた生成物の構造を1H−NMRで解析したところ、生成物は主として下記式(9)、式(7)及び式(7’)で表される構造の化合物の混合物であった。
Figure 2020128356
Figure 2020128356
Figure 2020128356
nは1H−NMRから平均3.7であった。
得られた化合物のH−NMRスペクトルは以下の通りである。
・ケイ素隣接メチル基由来水素 δ0.10ppm
・メタクリル二重結合由来水素 δ5.65ppm、6.15ppm
・メタクリル、メチル基由来水素 δ1.95ppm
・ケイ素隣接プロピレン基(シリコーン-ポリエーテル間)水素
δ0.50ppm、1.60ppm、3.60ppm
・ケイ素隣接ブチル基由来水素 δ0.50ppm、0.90ppm、1.30ppm
・ポリエーテル由来水素 δ3.50ppm〜3.80ppm
・Si−H/メタクリル付加体由来水素
δ0.55ppm、1.20ppm、2.60ppm
・アリル基由来
δ5.15ppm、5.25ppm、5.85ppm
・アリル基内部転移体由来
δ4.40ppm、4.75ppm、5.95ppm、6.25ppm
Si−H由来のピーク(4.70ppm)は確認されなかった。また、得られた生成物の純度を1H−NMRによる測定で算出したところ、該生成物は、上記式(9)で表される化合物と、該化合物の異性体(上記式(9’)で表される化合物)を合計で81.3質量%有していた。さらに1H−NMRの積分値から、前記式(8)で示される片末端メタクリレート化合物の両末端にオルガノポリシロキサンが導入された化合物の含有量は1.0質量%であった。
得られた生成物のTHF中のゲル浸透クロマトグラフを図2に示す。図2に示す通り、保持時間9分より後にピークを有する。これは前記式(7)および式(7’)で表される化合物のピークである。該生成物は式(7)および式(7’)で表される化合物を約23質量%含んでいた。
[比較例3]
実施例1と同様にしてオルガノハイドロジェンポリシロキサンと片末端メタクリレート化合物を付加反応させた後、同様に活性炭処理をした。濾過後に内温120℃でトルエンとジメトキシエタン、未反応の上記式(7)で表される化合物、および副生物である上記式(7’)で表される化合物を減圧ストリップにより除去しようとしたところ、減圧ストリップ途中で増粘が確認されたため操作を中止した。式(7)及び式(7‘)で表される化合物は熱重合を起こすため、減圧ストリップによる留去はできない。該製造方法では上記式(9)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を高純度で得ることは出来なかった。
[比較例4]
下記式(10)で示される片末端メタクリレート化合物(ビニル価470mmol/100g)171g(0.8mol)、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール65mg、ジメトキシエタン200g、およびトルエン400gをジムロート冷却管、温度計、滴下漏斗を備えた2Lフラスコに仕込み、65℃まで昇温した。塩化白金酸アルカリ中和物−ビニルシロキサン錯体触媒のトルエン溶液(白金含有量として0.5質量%)を0.43g添加し、滴下漏斗を用いて平均構造が下記式(8)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(Si−H濃度138mmol/100g、GC純度99.2%)362g(0.5mol)を約1時間かけて滴下した。
Figure 2020128356
Figure 2020128356
滴下後、内温は75℃まで上昇した。滴下終了後、該反応混合物を80℃にて4時間熟成した後、H−NMRにて反応物を確認したところ、原料のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSi−Hのピークが消失し、反応が完結していた。反応液に活性炭を5.0g添加し2時間攪拌した後、濾紙を用いて活性炭を濾過した。濾液からトルエンとジメトキシエタンを内温65℃で減圧下ストリップして、517gの生成物を得た。得られた生成物をヘキサン770gに溶解し分液漏斗へと移した。次いでアセトニトリル200gを加え、分液操作を行った。具体的には、下層を廃棄して上層を回収し、再度アセトニトリル200gを加え、同様の分液操作を3回繰り返し、上層を回収した。回収した洗浄液に対して、36mgの2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを加え、内温65℃で減圧下ストリップして溶剤を留去し、無色透明の384gの生成物(収率82%)を得た。得られた生成物の構造を1H−NMRで解析したところ、主成分は下記のような構造(11)であった。
Figure 2020128356
[相溶性の評価]
上記実施例1で得られた化合物、又は上記比較例4で得られた化合物と、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)とを、混合物全体に対してHEMAが50重量%となる量で混合した。実施例1で得られた化合物はHEMAに溶解し、透明な溶液が得られた。一方、比較例4で得られた化合物はHEMAに溶解せず、混合物は白濁した。
本発明の製造方法によれば、上記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を高純度で、安価かつ容易に提供することができる。また該高純度を有する本発明の(メタ)アクリルシリコーン化合物は無色透明であり、酸素透過性に優れ、親水性モノマーへ高い溶解性を示すことができる。従って、本発明の製造方法は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、及び人口角膜などの医療用眼科デバイスの製造において好適に使用できる。

Claims (5)

  1. 下記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物を製造する方法であって
    Figure 2020128356
    (Xはプロピレン基又は1−メチルエチレン基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは互いに独立に、置換または非置換の炭素数1〜10のアルキル基、又は、置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、mは2〜19の整数であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは3〜5の整数である)、
    下記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと
    Figure 2020128356
    (式中、R、R、及びmは上記の通りである)、
    下記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物の、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンのモル量に対して1.4倍以上となる量とを
    Figure 2020128356
    (式中、R、及びnは上記の通りである)、
    付加反応触媒の存在下で反応させて上記(メタ)アクリルシリコーン化合物(I)を含有する混合物を得る工程、及び、該工程により得た混合物を液液分離に付して、上記式(メタ)アクリルシリコーン化合物(I)を分取する工程を含むことを特徴とする、前記製造方法。
  2. 請求項1記載の製造方法により得られる(メタ)アクリレート化合物において、前記式(3)で表される化合物及び前記式(3)で表される化合物由来の下記式(3’)で表される化合物の量が2質量%未満である、請求項1記載の製造方法。
    Figure 2020128356
    (式中、R及びnは上記の通りである)。
  3. 上記式(I)で表される(メタ)アクリルシリコーン化合物が下記式(1)で表される化合物であり、または、該式(1)で表される化合物と、下記式(1’)で表される前記化合物の異性体との混合であり、
    Figure 2020128356
    Figure 2020128356
    (式中、R、R、R、m、及びnは上記の通りである)
    前記製造方法により得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物において、
    上記式(1)で表され特定の一のm、R、R、及びRを有し、nは異なる値の混合でもよい化合物と、上記式(1’)で表され上記式(1)で表される化合物と同じm、R、R、及びRを有し、nは異なる値の混合でもよい異性体との合計として92質量%以上を有する、請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記液液分離に用いられる溶媒が、(A)ヘキサン、トルエン、及び酢酸エチルのいずれか、またはその混合物から選択される溶媒と、(B)任意の無機塩を含んでいてもよい水、メタノール、エタノール、プロパノール、及びアセトニトリルのいずれか、またはその混合物から選択される溶媒の組み合わせである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 上記請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法により得られる(メタ)アクリルシリコーン化合物において、前記式(3)で表される(メタ)アクリレートのアリル基と(メタ)アクリル基との両方に前記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが反応して得られる化合物の量が3質量%未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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