JP2020125409A - ワイパーブレードゴム - Google Patents

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JP2020125409A JP2019018588A JP2019018588A JP2020125409A JP 2020125409 A JP2020125409 A JP 2020125409A JP 2019018588 A JP2019018588 A JP 2019018588A JP 2019018588 A JP2019018588 A JP 2019018588A JP 2020125409 A JP2020125409 A JP 2020125409A
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貴則 茅野
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Abstract

【課題】スキールノイズの発生がなく、広い温度範囲で損失係数(tanδ)に優れ、引張永久伸びの小さいワイパーブレードゴムを提供する。【解決手段】イソプレンゴムおよびクロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性ゴム100質量部に対し、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンを5質量部以上15質量部以下とカーボンブラックとを配合したワイパーブレードゴム。【選択図】なし

Description

本発明は、ワイパーブレードゴムに関する。より具体的には、ポリマーに対して、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンとカーボンブラックとを配合したワイパーブレードゴムに関する。
従来、自動車などの車両では、前方の視界を確保するため、フロントガラス面に付着した、雨滴、塵埃などを払拭する方法としてワイパー装置が利用されている。このワイパー装置は、フロントガラス面との接触位置にワイパーブレードゴムが装着されたワイパーブレードと、このワイパーブレードを往復運動させる駆動力を伝達するワイパーアームと、このワイパーアームを駆動する駆動用モータとが接続されて構成される。
ワイパーブレードゴムには、ガラス面の拭き取り性能、及び摩耗や亀裂、変形が発生しないなどの耐久性に加えて、払拭の際に発生する異音を防止する性能が求められる。
ワイパーブレードゴムの異音は、(1)ワイパーの振動に起因する100Hz以下の低周波数の音であるビビリ、(2)ガラス面との摩擦によるゴムの振動に起因する1000Hz付近の高周波数の音であるスキールノイズ、(3)ワイパーの反転時にゴムとガラス又はゴムとゴムがぶつかるときに発生する500Hz以下の衝撃音である反転音の3種に大別できる。
この中で(2)のスキールノイズの発生を抑える対策処方としては、ワイパーブレードゴム材料の減衰特性(tanδ)を向上させる、ワイパーブレードゴム主要部の形状変更により減衰性を向上させる、ワイパーブレードゴムのネック部バネ定数を大きくする、ワイパーブレードゴム肩部バネ定数を小さくする、の4つが有効であると言われている(例えば、デンソーテクニカルレビュー Vol.5,No.2,2000など)
そこで、ワイパーブレードゴムの減衰特性を向上させることに着目し、以下のようなアプローチがなされてきた。なお、以下に記載する減衰特性の指標として損失弾性率/貯蔵弾性率の比を取ったtanδが広く用いられている。従来、ワイパーブレードゴム素材のtanδを大きくする方法としては、ガラス転移温度を利用したクロロプレンゴム(CR)ブレンド手法がある。ゴムのガラス転移温度付近では、ポリマーの分子運動がかなり抑制された状態にある。この状態のゴムに力を加えると、変形により生ずるポリマー分子同士の擦れによりエネルギーロスが大きくなり、その結果、損失弾性率が上昇し、tanδが大きくなる。すなわち、ガラス転移温度付近ではtanδはピークを持つこととなる。ポリマーごとにtanδのピーク位置は異なるが、クロロプレンゴム(CR)の場合はtanδのピークは10Hzで−30〜−20℃にある。このピークのtanδの値は、tanδの温度−周波数換算則により10〜20℃の1000Hzと同じ値となり、室温域付近でちょうどスキールノイズ低減に効果のある周波数帯でtanδが大きくなる。これが、クロロプレンゴム(CR)ブレンド手法が良く使われている理由である。
このような手法を用いた先行技術の一つである特許文献1では、耐摩耗性を損なうことなく、かつワイパー作動時の振動による異音発生を抑えたワイパーブレードゴムを提供することを目的として、天然ゴムとクロロプレンゴムのブレンド比、カーボンブラックの添加量、使用するカーボンブラックのグレード最適化により、ワイパーブレードゴムの1024Hz,10℃における損失係数が0.4以上で、かつ耐摩耗性の優れたワイパーブレードゴムが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の発明にも依然として若干の問題点がある。すなわち、天然ゴムやイソプレンゴムをベースとした際にはクロロプレンゴムを添加することでtanδを向上させることは出来るが、低温性や引張永久伸びの悪化が生じてしまう。また、クロロプレンゴムのtanδが高いことはそのガラス転移温度に起因するものであり、10℃付近でのtanδは大きく上昇するが、30〜50℃といった比較的高温ではtanδの上昇はかなり小さくなるため、夏期では異音抑制効果が著しく低下する。加えて、天然ゴムやイソプレンゴム以外がベースポリマー(クロロプレンゴムやEPDM等)の場合には当該手法によるtanδ向上を適用することが出来ない。
特開平8−319375号公報
本発明の目的は、上記課題を解決し、ベースポリマーの種類に関わらず、そのベースポリマーの持つ材料特性を損なうことなく、広い温度域でtanδを上昇させ、異音発生を抑制することが可能なワイパーブレードゴムを提供することである。
本発明は以下を包含する。
[1] ポリマーに対して、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンとカーボンブラックとを配合したワイパーブレードゴム。
[2] 前記ポリマーはイソプレンゴムおよびクロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性ゴムからなり、
前記液状ポリオレフィンは数平均分子量500以上1400以下の液状ポリブテンであり、
前記ポリマー100重量部に対し、5質量部以上15質量部以下の前記液状ポリブテンを含むことを特徴とする[1]のワイパーブレードゴム。
[3] 前記ワイパーブレードゴムの引張永久伸びは10.8%未満であり、
かつ、
−10℃における損失係数をtanδ(−10)、
+10℃における損失係数をtanδ(+10)、
+30℃における損失係数をtanδ(+30)、
+50℃における損失係数をtanδ(+50)としたとき、下記式、
tanδ(−10)≧0.42、
tanδ(+10)≧0.24、
tanδ(+30)≧0.17、
tanδ(+50)≧0.15のすべてを満足することを特徴とする[1]または[2]に記載のワイパーブレードゴム。
本発明によれば、ベースポリマーの種類に関わらず、そのベースポリマーの持つ材料特性を損なうことなく広い温度域でtanδを上昇させ、異音発生を抑制しつつ、耐久性(引張永久伸び)が非常に優れ、広い温度域でも使用可能なワイパーブレードゴムを得ることができる。
本発明のワイパーブレードゴムの一実施態様を示す部分斜視図である。 タンデム形状のワイパーブレードゴム基材の断面図である。
[オイル及びフィラーの高充填化によるtanδアップメカニズム]
本発明によれば、ポリマーに対して、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンとカーボンブラックとを配合し、高充填化した(ポリマー成分の少ない)ワイパーブレードゴムを得る。このようなワイパーブレードゴムでは、ポリマー同士、カーボンブラック同士、及びポリマー−カーボンブラック間での擦れが増加し、エネルギーロスが増大する。その結果、ワイパーブレードゴムの損失弾性率が上昇し、tanδを大きくすることができる。上記メカニズムは、ガラス転移温度のように温度依存性は殆どないので、10〜20℃の1000Hzだけでなく、夏場のような30℃以上となる場合においてもワイパーブレードゴムのtanδを大きくすることができ、併せてスキールノイズ低減効果をも得られる。
[分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンを用いる利点]
高充填化に使用するオイルとして鉱物油や可塑剤を用いるとワイパーブレードゴムの変形性などの物性低下が生じる。これに対し、驚くべきことには、鉱物油や可塑剤の代わりに分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィン(例えば、液状ポリブテン)を用いるとワイパーブレードゴムの物性低下を起こさずにtanδを上げることが出来る。理論には拘束されないが、そのメカニズムは以下のように推定される。すなわち、鉱物油や可塑剤が未添加のゴムにおいては、架橋点または分子鎖同士の絡まりが密な箇所は変形を与えたときに弾性(戻ろうとする力)が強く働き、高い物性を維持している。このようなゴムに鉱物油または可塑剤を添加した場合、鉱物油や可塑剤は分子量が比較的小さいため、ポリマーの架橋点または分子鎖同士の絡まりが密な箇所にも入っていく。その結果、ポリマーの分子鎖間が広げられ、更には分子鎖同士の絡まりが解ける箇所も出てくる。こうして、ポリマーの架橋点または分子鎖同士の絡まりの密な部分が粗な部分に変えられ、ポリマーの弾性が低下し、物性が悪化すると考えられる。これに対し、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィン(例えば、液状ポリブテン)は分子量が比較的大きいため、ポリマーの架橋点または分子鎖同士の絡まりが密な箇所には入っていかない。また、分子鎖中に二重結合を持たないのでポリマー分子と架橋することもない。そのため、ポリマーの架橋点または分子鎖同士の絡まりが密な部分は未添加の場合と同様の状態を維持し、弾性(戻ろうとする力)が損なわれないため、物性低下が起きないと考えられるのである。
ところで、液状ブタジエンゴムは、液状ポリブテンと同様に液状ゴムであるにもかかわらず、物性の低下を招く。理論には拘束されないが、そのメカニズムは以下のように推定される。すなわち、液状ブタジエンゴムは分子鎖中に二重結合を持っているため、液状ブタジエンゴムの一部がポリマー分子と架橋する。すると、ポリマー同士の架橋点が奪われるので、ゴムの架橋密度が低下し、本来は密であるべき箇所の架橋が粗になる。その結果、弾性が低下してワイパーブレードゴムの物性(引張永久伸び)が低下すると考えられるのである。
上記メカニズムはポリマーの種類に関わらず生じるものであるため、ポリマー種が天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、EPDM、又はこれらのブレンドのいずれであっても物性(引張永久伸び)低下を抑えつつtanδを向上させることができる。
なお、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンであっても分子の小さいもの(分子量の小さいもの)の場合は鉱物油や可塑剤と同じようなメカニズムに従う傾向があり、分子の大きいものに比べるとワイパーブレードゴムの引張永久伸びが劣ることがある。反対に分子の大きすぎるものはポリマー分子鎖間に全く入ることが出来ずにブリードアウトしてしまうことがある。
更に、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンを多量に添加すると分子が大きくても架橋が密なポリマー分子鎖間にも入りこんでしまうため、やはりワイパーブレードゴムの引張永久伸びが劣ることがある。
分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンの好ましい分子量及び配合量の範囲については以下に記載し、実施例において検討する。
以下、本発明の実施形態を順に説明する。
[ワイパーブレードゴム]
図1は、本発明のワイパーブレードゴムの一実施態様を示す部分斜視図である。
ワイパーブレードゴムは、図1に示すように、例えば、自動車のフロントおよびリアのウィンドシールドガラスのガラス面払拭用に用いる長尺状のブレードに形成されている。図1において、ワイパーブレードゴム11は、ガラス面に接触し摺動するリップ摺動部を有するリップ部4と、図示せぬワイパーブレード保持具に図示せぬバーテブラとともに組み付けられ保持される保持部5と、上記リップ部4と上記保持部5を接続するネック部6からなっている。12は表面処理部であり、この表面処理部12はワイパーブレードゴム11のリップ部4のリップ側面部4aに形成されている。そして、上記ワイパーブレードゴム11をワイパー装置に組み付けることによって、好適なワイパー装置とすることが出来る。
ワイパーブレードゴムは、ポリマーに対して、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンとカーボンブラックとを配合し、これを成形することによって得ることができる。
[ポリマー]
本発明に係るワイパーブレードゴムに用いられるポリマーとしては、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリレ−トゴム(AEM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロンゴム)(CMS)、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられる。
これらの中でも、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、及びこれらの任意の重量比のブレンドが好ましい。
イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、及びこれらの任意の重量比のブレンドが更に好ましい。ブレンドの重量比は特に限定されないが、好ましくはイソプレンゴム(IR)とクロロプレンゴム(CR)の重量比は6:4〜8:2の範囲である。この範囲であれば、広い温度域でワイパーブレードゴムの柔軟性、及び高周波(1000Hz)での損失係数(tanδ)が優れているためである。
[分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィン]
本発明において使用する分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンとは、常温常圧において液体状態を呈し、分子中に不飽和結合を含まないポリオレフィンをいう。かかるポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリへプテン、ポリヘキセン、ポリシクロヘキセン、ポリオクテン、及びそれらの共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記液状ポリオレフィンは好ましくは、数平均分子量500以上1400以下の液状ポリブテンである。
液状ポリブテンとしては、日油ポリブテン(商標)015N、3N、10N、30N(日油株式会社製)、日石ポリブテン(商標)HV−15、HV−50、HV−100、HV−300(JXTGエネルギー株式会社)等が市販品で入手可能である。
液状ポリオレフィンは好ましくは、ポリマー100質量部に対し、5質量部以上15質量部以下の範囲で配合する。
[カーボンブラック]
種々の特性を有するカーボンブラックが市販されているので、適切なものを選択し使用することが出来る。
[摩擦低減表面処理]
ワイパーブレードゴムには、摩擦を低減するための表面処理を施されていることが好ましい。表面処理としては、化学表面処理、潤滑コーティング処理などがあり、特に化学表面処理が好ましい。また、化学表面処理が施された後のワイパーブレードゴムの払拭面に、更に潤滑コーティング層が形成されていてもよい。
表面処理は、ワイパーブレードゴムの全体にわたって施しても良いし、払拭動作時にガラス面に接触するワイパーブレードゴムの払拭面に選択的に施しても良い。例えば、図1に示すリップ部4において、ワイパーの払拭作動時に、ガラス面に接触する範囲、すなわち払拭面12に帯状に表面処理を施す。払拭面12は、リップ部4の長手方向側面に相当する。ワイパーブレードゴムの払拭面12の静摩擦係数は、低い方が好ましい。払拭面12の静摩擦係数が低いと、ワイパーの払拭作動時におけるビビリ・異音の発生の防止に有効である。
以下、表面処理である「化学表面処理」、「潤滑コーティング処理」について説明する。
[化学表面処理]
表面処理の一つの方法として、化学表面処理が挙げられる。化学表面処理によって、ワイパーブレードゴムの表層を改質し、一般には、硬化させることにより低摩擦化される。化学表面処理としては、成形後のワイパーブレードゴムの表面に対してハロゲン処理を施すことが好ましい。
[潤滑コーティング処理]
表面処理のさらに別の方法として、ワイパーブレードゴムの表面に潤滑コーティング処理を施すことが好ましい。
本発明において使用可能なコーティング剤は、例えば下記の特許文献に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
WO 2015/080202 A1
WO 2018/030046 A1
WO 2018/030047 A1
WO 2018/030084 A1
[その他の添加剤]
ワイパーブレードゴムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常のゴム組成物に使用される補強剤、老化防止剤、加工助剤、滑剤、発泡剤、加硫剤、加硫促進剤等を併用してもよい。
また、カーボンブラック以外の補強材としては、例えば、シリカ、炭素繊維等を用いることができる。これらの補強材は、1種類だけでなく、2種類以上のものを併用することもできる。
老化防止剤としては、特に制限されないが、例えば、公知のものを用いることができ、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤等が挙げられる。
加硫剤としては、例えば、硫黄、ポリスルフィド、塩化硫黄等の含硫黄化合物からなる硫黄系や、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンオキシム等のオキシム系、t−ハイドロパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系が挙げられる。これらの加硫剤は、1種類だけでなく、2種類以上のものを併用することもできる。
加硫反応の促進を目的に加硫促進剤を使用してもよい。加硫促進剤としては、例えば、チウラム系、チアゾール系、ジチオカルバミン酸塩系、アルデヒドアミン系、スルフェンアミド系、グアニジン系、チオウレア系等を挙げられる。
チウラム系の加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
チアゾール系の加硫促進剤の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアゾールジスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤の具体例としては、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
アルデヒドアミン系の加硫促進剤の具体例としては、n−ブチルアルデヒドアニリン等が挙げられる。
スルフェンアミド系の加硫促進剤の具体例としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等が挙げられる。
グアニジン系の加硫促進剤の具体例としては、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン等が挙げられる。
チオウレア系の加硫促進剤の具体例としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N’−ジフェニルチオウレア等が挙げられる。
これらの加硫促進剤は、1種類だけでなく、2種類以上のものを組み合わせて使用してもよい。
有機過酸化物には、必要に応じて架橋助剤を併用することもできる。この架橋助剤としては、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄化合物、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、メタフェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド等の多官能性単量体類、p−キノンオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンオキシム等のオキシム化合物などを使用することができる。これらの架橋助剤は、1種類だけでなく、2種類以上のものを併用することもできる。
さらに、ワイパーブレードゴムには、シリカなどの無機補強剤とポリマーとの結合力を高め、ワイパーブレードゴムの引張強度の向上や耐摩耗性を高める目的でシランカップリング剤を用いることができる。
以下、ワイパーブレードゴムの製造方法について説明する。
[ワイパーブレードゴムの製造方法]
ワイパーブレードゴムは、例えば、次のような方法によって製造することができる。
ポリマー、カーボンブラック、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィン、及び任意選択的にその他の添加剤を、バンバリーミキサー、インターミックス、ニーダー等の混練機又はオープンロールなどで混練し、カーボンブラック等の粒子をポリマーに均一に分散させてワイパーブレード用ゴム組成物を作製する。
このワイパーブレード用ゴム組成物を圧縮成形機、加硫プレス機、押出成形機、射出成形機等を用いて成形する。ワイパーブレードゴムは典型的には、図2のように、2つのワイパーブレードゴム基材1の先端部同士が当接しているタンデム形状で成形される。このワイパーブレードゴム基材1のくびれ部にあるリップ部2の両面に、任意選択的にコーティング剤を適用し、硬化又は乾燥して、コーティング層3を形成してもよい。その後、リップ部2の中央(図2の符号7で図示する切断部)で切断し、リップ部2の両面に層3を有し、リップ部の端面にゴム基材が露出したワイパーブレードゴムを形成する。こうして、ワイパーブレードゴムを製造することができる。
ゴム基材の形状に特に制限があるわけではないが、上記したようにタンデム形状の断面を有することが好ましい。これによって、リップ部先端をきれいに切断することが容易になり、また、リップ部に固体潤滑剤を分散したコーティング層が設けられたワイパーブレードゴムを経済的に製造することが可能になる。
以下、本発明の実施例について、[試験片詳細]「評価方法」[評価結果]の順に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」、「分子量」は「数平均分子量」を表す。
[試験片について]
試験片には2種あり、1つはテストピース(T.P.)であり、もう1つは実際のワイパー形状の試験片である。なお、いずれの試験片ともゴム材料は同一である。
[試験片に用いるゴム材料]
・イソプレンゴム(IR)基準配合:
カーボンブラック、添加剤、および加硫系薬品を混合し、加硫後のゴム硬度が55〜65度(JIS K 6253 タイプAデュロメーター)になるように調製した。
・クロロプレンゴム(CR)基準配合:
カーボンブラック、添加剤、および加硫系薬品を混合し、加硫後のゴム硬度が55〜65度(JIS K6253 タイプAデュロメーター)になるように調製した。
・イソプレンゴム(IR)/クロロプレンゴム(CR)ブレンド:
上記イソプレンゴム(IR)基準配合とクロロプレンゴム(CR)基準配合とを6:4の重量比で混合し、加硫後のゴム硬度が55〜65度(JIS K6253 タイプAデュロメーター)になるように調製した。
<試験片作成方法>
[ワイパーブレード形状試験片]
バンバリーミキサーにて、イソプレンゴム(IR)基準配合、クロロプレンゴム(CR)基準配合、又はイソプレンゴム(IR)/クロロプレンゴム(CR)ブレンドのゴムを混練りし、ワイパーブレード用ゴム組成物を作製した。このワイパーブレード用ゴム組成物を加硫成形機にて、加硫を行い、全長10cmのワイパーブレード試験片を作製した。なお、ワイパーブレード形状試験片には、コーティング塗装は施していない。
[テストピース試験片]
上記ゴムを用い、ワイパーブレード用ゴム組成物と同じゴム組成物を用いて加硫を行い、2mm厚のシート状テストピース(T.P.)を作成した。
<評価方法>
[物性値評価方法]
tanδおよび引張永久伸びは、上述したテストピース(T.P.)を用いて測定した。
試験条件を以下に示す。
[tanδおよび引張永久伸び試験条件]
・tanδ:温度範囲−10〜+50℃、周波数5,10,30,60Hz、変位1%で測定を行い、得られたデータからマスターカーブを作成し、所定温度での1000Hzのtanδを算出した。
・引張永久伸び:ポリマー種イソプレンゴム(IR)及びイソプレンゴム(IR)/クロロプレンゴム(CR)ブレンドは100%伸長、ポリマー種クロロプレンゴム(CR)は50%伸長させ、80℃のギアオーブンに45時間暴露した。その後、ギアオーブンから取出して室温で30分静置した後、伸長を解放して室温でさらに60分静置した後の残留ひずみを測定した(JIS K 6273に準拠)。
上述したワイパーブレード形状試験片を用いて、スキールノイズを下記に示す試験条件で測定した。
[スキールノイズ試験条件]
各試料のワイパーブレードゴムをワイパーブレード治具に取り付け、このワイパーとガラスが接する全面に水がかかるよう散水作動させ、該作動時にスキールノイズが発生しているかどうかを試験者が聴覚でチェックすることにより行う。気温は20℃で評価を実施した。評価結果は以下の3段階で表示した。
○:スキールノイズが発生しない。
△:スキールノイズは発生しないが、ワイパーブレードゴム表面にブリード発生有り。
×:スキールノイズが発生する。
作製したテストピース(T.P.)及びワイパーブレードゴムについて、上記各測定および試験を実施し、性能を評価した。具体的には、例1〜16に係るテストピース(T.P.)及びワイパーブレードゴムを、上記材料を用いて下記表に示す配合に基づいて作製し、所定の表面処理を施した後、試験に供した。
(例1)
ポリマーとしてはイソプレンゴム(IR)を用いた。可塑剤としては数平均分子量500の液状ポリブテンを用い、イソプレンゴム(IR)100質量部に対して10質量部配合した。ワイパーブレードゴムに対して化学表面処理のみを施し、試験に供した。
(例2)
液状ポリブテンの数平均分子量を800とした以外は例1と同様に行った。
(例3)
液状ポリブテンの数平均分子量を1400とした以外は例1と同様に行った。
(例4)
液状ポリブテンの配合量を5質量部とした以外は例3と同様に行った。
(例5)
液状ポリブテンの配合量を15質量部とした以外は例3と同様に行った。
(例6)
ポリマーとしてクロロプレンゴム(CR)を用いた以外は例3と同様に行った。
(例7)
ポリマーとしてイソプレンゴム(IR)とクロロプレンゴム(CR)の重量比6:4混合物を用いた以外は例3と同様に行った。
(例8)
可塑剤、軟化剤を配合しなかった以外は例3と同様に行った。
(例9)
液状ポリブテンの代わりにナフテニック油を用いた以外は例3と同様に行った。
(例10)
液状ポリブテンの代わりにアジピン酸系可塑剤を用いた以外は例3と同様に行った。
(例11)
液状ポリブテンの代わりに液状ブタジエンゴムを用いた以外は例3と同様に行った。
(例12)
液状ポリブテンの数平均分子量を300とした以外は例1と同様に行った。
(例13)
液状ポリブテンの数平均分子量を2900とした以外は例1と同様に行った。
(例14)
液状ポリブテンの配合量を20質量部とした以外は例3と同様に行った。
(例15)
可塑剤、軟化剤を配合しなかった以外は例6と同様に行った。
(例16)
可塑剤、軟化剤を配合しなかった以外は例7と同様に行った。
サンプル詳細と評価結果を表1に示す。
[評価結果]
(A)軟化剤、可塑剤の種類による効果
例8は軟化剤、可塑剤を配合しない比較例である。例3は本発明の実施例である。例9−11は本発明とは軟化剤、可塑剤の種類の異なる比較例である。
例8ではスキールノイズが発生しているが、例3、9−11ではスキールノイズが発生していない。また、例8に比べて、例3、9、11では全測定温度で損失係数(tanδ)が改善している。一方、例8に比べて、例9−11においては引張永久伸びが悪化しているのに、例3では引張永久伸びは改善している。
以上により、代表的な分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンである液状ポリブテンのみが引張永久伸びの改善効果を有することがわかる。
(B)液状ポリブテンの分子量による効果
例12、1、2、3、13は、配合する液状ポリブテンの分子量を300から2900まで変えたものである。
例12ではスキールノイズが発生し、例13ではワイパーブレードゴム表面にブリードが生じるという不具合があった。
以上により、液状ポリブテンの分子量の範囲は500以上1400以下が好適であることがわかる。
(C)液状ポリブテンの配合量による効果
例8は軟化剤、可塑剤を配合しない比較例である。例4、3、5、14は、液状ポリブテンの配合量を5質量部から20質量部まで変えたものである。例8ではスキールノイズが発生している。例14では引張永久伸びの悪化が確認された。
これらの結果より、液状ポリブテンの配合量の範囲は5質量部以上15質量部以下が好適であることがわかる。
(D)ポリマーの種類による効果
例15、例16は軟化剤、可塑剤を配合しない比較例である。例6、例7は本発明の実施例である。各比較例に対し、各実施例では、全測定温度で損失係数(tanδ)が改善し、引張永久伸びも改善している。
このことから、本発明がイソプレンゴム(IR)だけでなく、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)とクロロプレンゴム(CR)の混合物に対しても有効であることがわかる。
以上、本発明のワイパーブレードゴムを自動車用に構成した場合を例に挙げて説明したが、本発明のワイパーブレードゴムの適用対象は、自動車用に限定されない。
本発明のワイパーブレードゴムは、ウィンドシールドガラスのガラス面の付着物を除去する実質的機能を有するブレードラバーとして、その種類を問わず適用することができる。
本発明によれば、スキールノイズの発生がなく、広い温度範囲で損失係数(tanδ)に優れ、耐久性(引張永久伸び)が非常に優れたワイパーブレードゴムを提供することができ、産業上有用である。

Claims (3)

  1. ポリマーに対して、分子中に不飽和結合を含まない液状ポリオレフィンとカーボンブラックとを配合したワイパーブレードゴム。
  2. 前記ポリマーはイソプレンゴムおよびクロロプレンゴムからなる群より選択される少なくとも一種の熱硬化性ゴムからなり、
    前記液状ポリオレフィンは数平均分子量500以上1400以下の液状ポリブテンであり、
    前記ポリマー100質量部に対し、5質量部以上15質量部以下の前記液状ポリブテンを含むことを特徴とする請求項1のワイパーブレードゴム。
  3. 前記ワイパーブレードゴムの引張永久伸びは10.8%未満であり、
    かつ、
    −10℃における損失係数をtanδ(−10)、
    +10℃における損失係数をtanδ(+10)、
    +30℃における損失係数をtanδ(+30)、
    +50℃における損失係数をtanδ(+50)としたとき、下記式、
    tanδ(−10)≧0.42、
    tanδ(+10)≧0.24、
    tanδ(+30)≧0.17、
    tanδ(+50)≧0.15のすべてを満足することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイパーブレードゴム。
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