以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“1”によって参照されるスイッチング電源ICは(図1参照)、スイッチング電源IC1と表記されることもあるし、電源IC1又はIC1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
まず、本発明の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。本発明の実施形態において、ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、0V(ゼロボルト)の基準電位を有する導電部を指す又は基準電位そのものを指す。本発明の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧は、グランドから見た電位を表す。レベルとは電位のレベルを指し、任意の信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。FET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通状態となっていることを指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通状態(遮断状態)となっていることを指す。以下、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。
<<第1実施形態>>
本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源装置SPSの全体構成図である。図1のスイッチング電源装置SPSは、スイッチング電源装置用の半導体集積回路を含む半導体装置であるスイッチング電源IC1と、スイッチング電源IC1に対して外付け接続される複数のディスクリート部品と、を備え、当該複数のディスクリート部品には、コンデンサC1、コイルL1並びに分圧抵抗R1及びR2が含まれる。スイッチング電源装置SPSは、所定の入力電圧Vinから所定の出力電圧Voutを生成する降圧型のスイッチング電源装置として構成されている。スイッチング電源装置SPSの出力端子OUTに出力電圧Voutが現れる。出力電圧Voutは出力端子OUTに接続された負荷LDに供給される。入力電圧Vin及び出力電圧Voutは正の直流電圧であり、出力電圧Voutは入力電圧Vinよりも低い。入力電圧Vinは例えば12Vである。分圧抵抗R1及びR2の抵抗値を調整することで12V未満の所望の正の電圧値(例えば3.3Vや5V)にて出力電圧Voutを安定化させることができる。また、出力端子OUTを介して負荷LDに流れる電流を出力電流Ioutと称する。
スイッチング電源IC1は、図2に示すような、半導体集積回路を、樹脂にて構成された筐体(パッケージ)内に封入することで形成された電子部品である。電源IC1の筐体に複数の外部端子が露出して設けられており、その複数の外部端子には、図1に示される入力端子IN、スイッチ端子SW、帰還端子FB及びグランド端子GNDが含まれる。これら以外の端子も、上記複数の外部端子に含まれうる。図2に示される電源IC1の外部端子の数及び電源IC1の外観は例示に過ぎない。図2では、電源IC1がTSSOP (Thin Shrink Small Outline Package)と称される筐体(パッケージ)を有している例を挙げているが、電源IC1の筐体の種類は任意である。また電源IC1の筐体の底面に放熱パッドが設けられることもある。
まず、スイッチング電源IC1の外部構成について説明する。電源IC1の外部より入力電圧Vinが入力端子INに供給される。スイッチ端子SWと出力端子OUTとの間にコイルL1が直列に介在している。即ち、コイルL1の一端はスイッチ端子SWに接続され、コイルL1の他端は出力端子OUTに接続される。また、出力端子OUTはコンデンサC1を介してグランドに接続される。更に、出力端子OUTは分圧抵抗R1の一端に接続され、分圧抵抗R1の他端は分圧抵抗R2を介してグランドに接続される。分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続される。
次に、スイッチング電源IC1の内部構成について説明する。スイッチング電源IC1は、出力段回路10、エラーアンプ20、位相補償部30、シールドドライブ回路40、電流検出部50、差動アンプ60、オシレータ70、PWMコンパレータ80、ゲートドライバ90、軽負荷検出コンパレータ100、クランプ回路110、タイミング制御部120、及び、電圧生成回路130を備える。電圧生成回路130は、入力電圧Vinに基づき、基準電圧Vref1、基準電圧Vref2及び内部電源電圧Vregを生成する。基準電圧Vref1、基準電圧Vref2及び内部電源電圧Vregは、互いに異なる正の電圧値を有する直流電圧である。電源IC1内の各回路(但し電圧生成回路130を除く)は内部電源電圧Vregに基づいて駆動して良い。
出力段回路10は、ハイサイドトランジスタであるトランジスタ10Hと、ローサイドトランジスタであるトランジスタ10Lと、を備える。トランジスタ10HはPチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)として構成され、トランジスタ10LはNチャネル型のMOSFETとして構成されている。トランジスタ10H及び10Lは、入力端子INとグランド端子GND(換言すればグランド)との間に直列接続された一対のスイッチング素子であり、それらがスイッチング駆動されることで入力電圧Vinがスイッチングされてスイッチ端子SWに矩形波状のスイッチ電圧Vswが現れる。トランジスタ10Hがハイサイド側に設けられ、トランジスタ10Lがローサイド側に設けられる。具体的には、トランジスタ10Hのソースは入力端子INに接続され、トランジスタ10H及び10Lの各ドレインはスイッチ端子SWに共通接続され、トランジスタ10Lのソースはグランドに接続される。尚、トランジスタ10HをNチャネル型のMOSFETとして構成する変形も可能であり、この場合、トランジスタ10Hのソース及びドレイン間の関係は上述したものと逆になる。
トランジスタ10Hは出力トランジスタとして機能し、トランジスタ10Lは同期整流トランジスタとして機能する。インダクタL1及びコンデンサC1は、スイッチ端子SWに現れる矩形波状のスイッチ電圧Vswを整流及び平滑化して出力電圧Voutを生成する整流平滑回路を構成する。分圧抵抗R1及びR2は出力電圧Voutを分圧する分圧回路を構成する。分圧抵抗R1及びR2間の接続ノードが帰還端子FBに接続されることで、その接続ノードに現れる分圧された電圧が帰還電圧Vfbとして帰還端子FBに入力される。
トランジスタ10H、10Lのゲートには、駆動信号として夫々ゲート信号G1、G2が供給され、トランジスタ10H及び10Lはゲート信号G1及びG2に応じてオン、オフされる。トランジスタ10Hはローレベル、ハイレベルのゲート信号G1が供給されているとき、夫々、オン状態、オフ状態となる。トランジスタ10Lはハイレベル、ローレベルのゲート信号G2が供給されているとき、夫々、オン状態、オフ状態となる。基本的には、トランジスタ10H及び10Lが交互にオン、オフされるが、トランジスタ10H及び10Lが共にオフとなるタイミングもある。
エラーアンプ20は、電流出力型のトランスコンダクタンスアンプである。エラーアンプ20の反転入力端子には帰還端子FBに加わる電圧(即ち帰還電圧Vfb)が供給され、エラーアンプ20の非反転入力端子には所定の基準電圧Vref1が供給される。エラーアンプ20は、出力端子21を有し、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1との差分に応じた誤差電流信号である電流信号Iaを出力端子21から出力する。出力端子21は信号配線LLに接続され、電流信号Iaによる電荷は信号配線LLに対して入出力される。具体的にはエラーアンプ20は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも低いときには信号配線LLの電位が上がるよう出力端子21を通じ信号配線LLに向けて電流信号Iaによる電流を出力し、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref1よりも高いときには信号配線LLの電位が下がるよう信号配線LLから出力端子21を通じエラーアンプ20へと電流信号Iaによる電流を引き込む。帰還電圧Vfb及び基準電圧Vref1間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号Iaによる電流の大きさも増大する。このように、エラーアンプ20は、自身の非反転入力端子及び反転入力端子間の電圧(ここでは電圧Vfb及びVref1間の差分電圧)を示す電圧信号を電流信号Iaに変換する。
位相補償部30は、信号配線LLとグランドとの間に設けられ、電流信号Iaの入力を受けて誤差電圧信号である電圧信号Vcmpを生成する。電圧信号Vcmpは信号配線LLでの電圧(電位)を示す。位相補償部30は抵抗31及びコンデンサ32の直列回路を含み、具体的には抵抗31の一端が信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受け、抵抗31の他端がコンデンサ32を介してグランドに接続される。抵抗31の抵抗値及びコンデンサ32の静電容量値を適切に設定することにより電圧信号Vcmpの位相を補償して出力帰還ループの発振を防ぐことができる。エラーアンプ20は内部電源電圧Vregを正側の電源電圧として且つグランドを負側の電源電圧として駆動するため、電圧信号Vcmpの電圧が負となることは無く且つ内部電源電圧Vregを上回ることは無い。
シールドドライブ回路40は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ41と、トランジスタ41に直列接続された定電流回路42と、を備える。トランジスタ41のゲートは信号配線LLに接続される。トランジスタ41のゲートと、抵抗31の一端と、エラーアンプ20の出力端子21とが互いに接続されるノードを、特にノードNDAと称する。トランジスタ41のドレインに内部電源電圧Vregが加えられ、トランジスタ41のソースとグランドとの間に定電流回路42が設けられる。また、トランジスタ41のソースと定電流回路42とが接続されるノードを、シールドノード43と称する。定電流回路42はシールドノード43からグランドに向けて定電流(一定の電流値を有する電流)が流れるよう動作する。シールドノード43には電圧信号Vcmpに応じた電圧信号Vcmp’が加わる。電圧信号Vcmp’での電圧は、電圧信号Vcmpでの電圧より、トランジスタ41のゲート−ソース間電圧だけ低い電圧となる。故に、信号Vcmpの電圧の上昇に連動して信号Vcmp’の電圧も上昇し、信号Vcmpの電圧の低下に連動して信号Vcmp’の電圧も低下する。トランジスタ41のゲート−ソース間電圧は実質的に一定であるとみなすことができる。シールドドライブ回路40の存在意義については後に詳説される。
電流検出部50は、コイルL1に流れるコイル電流ILの値をタイミング制御部120により指定されたタイミングでサンプリングし、サンプリングした値に応じた電流検出信号Isnsを出力する。タイミング制御部120は、トランジスタ10Hがオンとされている区間中の何れかのタイミング、又は、トランジスタ10Lがオンとされている区間中の何れかのタイミングをサンプリングタイミングとして指定することができる。電流検出信号Isnsにおける電圧値は、サンプリングされたコイル電流ILの絶対値が大きいほど大きくなる。図1の回路では、スイッチ端子SWに流れる電流を検出することでコイル電流ILが検出されているが、電流検出部50は、トランジスタ10H又は10Lに流れる電流を検出することでコイル電流ILを検出するようにしても良い。
差動アンプ60の非反転入力端子はシールドノード43に接続されて電圧信号Vcmp’を受ける。差動アンプ60の反転入力端子には電流検出信号Isnsが供給される。差動アンプ60は、出力端子61を有し、電圧信号Vcmp’と電流検出信号Isnsとの差分に応じた電流信号Ibを出力端子61から出力する。差動アンプ60も電流出力型のトランスコンダクタンスアンプとして構成されている。出力端子61は信号配線GGに接続され、電流信号Ibによる電荷は信号配線GGに対して入出力される。具体的には差動アンプ60は、電圧信号Vcmp’の電圧が電流検出信号Isnsの電圧よりも高いときには信号配線GGの電位が上がるよう出力端子61を通じ信号配線GGに向けて電流信号Ibによる電流を出力し、電圧信号Vcmp’の電圧が電流検出信号Isnsの電圧よりも低いときには信号配線GGの電位が下がるよう信号配線GGから出力端子61を通じ差動アンプ60へと電流信号Ibによる電流を引き込む。信号Vcmp’及びIsns間の差分の絶対値が増大するにつれて、電流信号Ibによる電流の大きさも増大する。
尚、信号配線LLに対し位相補償部30を接続するのと同様に、信号配線GGに対しても位相補償部30と同様の位相補償部を接続するようにしても良い。
オシレータ70は、所定のスイッチング周期にて周期的に信号値(電圧値)が変化するランプ信号Vrを生成する。ランプ信号Vrは、三角波又はのこぎり波の形状を持つ電圧信号である。
PWMコンパレータ80の非反転入力端子は信号配線GGに接続されて信号配線GGに加わる電圧信号Vcを受け、PWMコンパレータ80の反転入力端子にはランプ信号Vrが供給される。PWMコンパレータ80は、電圧信号Vcをランプ信号Vrと比較して比較結果を示すパルス幅変調信号Spwmを出力する。パルス幅変調信号Spwmは、電圧信号Vcがランプ信号Vrよりも高い区間においてハイレベルとなり、電圧信号Vcがランプ信号Vrよりも低い区間においてローレベルとなる。出力段回路10のオンデューティ(即ち、上記スイッチング周期を占める、トランジスタ10Hがオン状態となる区間の割合)は、電圧信号Vcが高いほど大きくなる。
ゲートドライバ90は、パルス幅変調信号Spwmに基づき、トランジスタ10H及び10Lを交互にオン、オフさせるスイッチング制御を行う。エラーアンプ20により帰還電圧Vfbと基準電圧Vref1とが等しくなるように電流信号Iaが生成されるため、上記のスイッチング制御を通じ、出力電圧Voutが、基準電圧Vref1と分圧抵抗R1及びR2による分圧比とに応じた所定の目標電圧Vtgにて安定化される。入力電圧Vinの値及び出力電圧Voutに対する目標電圧Vtgの値は任意であるが(但しVin>Vtg)、例えば、入力電圧Vinは12V又は24Vであり、目標電圧Vtgは3.3V又は5Vである。
より具体的には上記スイッチング制御において、信号Spwmがハイレベルである区間では、ローレベルのゲート信号G1、ローレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタ10H、10Lのゲートに供給されることで、トランジスタ10Hがオン且つトランジスタ10Lがオフとなり、信号Spwmがローレベルである区間では、ハイレベルのゲート信号G1、ハイレベルのゲート信号G2が、夫々、トランジスタ10H、10Lのゲートに供給されることで、トランジスタ10Hがオフ且つトランジスタ10Lがオンとなる。尚、貫通電流の発生を確実に防止するべく、トランジスタ10Hがオン状態とされる区間とトランジスタ10Lがオン状態とされる区間との間に、トランジスタ10H及び10Lが共にオフ状態されるデッドタイムが挿入されて良い。
上述のスイッチング制御は、軽負荷検出コンパレータ100から出力されるスリープ制御信号SLPのレベルがハイレベルである場合に限り実行され、スリープ制御信号SLPのレベルがローレベルであるときは、トランジスタ10H及び10Lが共にオフ状態に維持される。
図3にゲートドライバ90の内部構成例を示す。図3のゲートドライバ90は、ハイサイドドライバとしてのNAND回路91と、ローサイドドライバとしてのAND回路92と、を備え、パルス幅変調信号Spwm及びスリープ制御信号SLPに基づき、ゲート信号G1及びG2を生成する。具体的に述べると、NAND回路91は、信号Spwmと信号SLPとの否定論理積を示す信号をゲート信号G1として出力する。AND回路92は、信号Spwmの反転信号と信号SLPとの論理積を示す信号をゲート信号G2として出力する。これにより、スリープ制御信号SLPがハイレベルである場合には信号Spwmに応じてトランジスタ10H及び10Lが交互にオン、オフとされるが、スリープ制御信号SLPがローレベルである場合には信号Spwmに依らずゲート信号G1がハイレベルとなり且つゲート信号G2がローレベルとなり、結果、トランジスタ11及び12が共にオフ状態となる。
図1を再度参照し、軽負荷検出コンパレータ100は、電圧信号Vcmp’の電圧を基準電圧Vref2と比較し、電圧信号Vcmp’の電圧が基準電圧Vref2以上であれば、ハイレベルのスリープ制御信号SLPを出力する一方、電圧信号Vcmp’の電圧が基準電圧Vref2未満であれば、ローレベルのスリープ制御信号SLPを出力する。電圧信号Vcmp及びVcmp’の電圧レベルは出力電流Ioutの大きさに依存し(従ってコイル電流ILの大きさに依存し)、その電圧レベルが基準電圧Vref2のレベルを下回るまでコイル電流ILが低下したときに、スリープ制御信号SLPはローレベルとなる。これにより、軽負荷時における効率を改善することができる。尚、コンパレータ100の非反転入力端子に対して電圧信号Vcmp’の代わりに電圧信号Vcmpを入力するようにしても良く、この場合には、電圧信号Vcmpの電圧と基準電圧Vref2との比較結果に基づきスリープ制御信号SLPが生成される。
クランプ回路110は信号配線LLに接続され、電圧信号Vcmpに上下限を設けることでコイル電流ILに上下限を設ける。即ち、クランプ回路110は、電圧信号Vcmpの電圧値を所定の上限値以下且つ所定の下限値以上の値に制限することにより、コイル電流ILに上下限を設ける。尚、クランプ回路110を信号配線LLではなくシールドノード43に接続しておいても良い。この場合には、電圧信号Vcmp’に上下限が設けられることでコイル電流ILに上下限が設けられる。
上述の如く、スイッチング電源装置SPSでは、出力電圧Voutとコイル電流ILの双方に基づき出力帰還制御を行う電流モード制御方式が採用されている。コイル電流ILに応じた電流検出信号Isnsが差動アンプ60に帰還入力されており、差動アンプ60の作用により、電圧信号Vcmpの上昇に伴って電圧信号Vcmp’が上昇するとコイル電流ILが増大し、電圧信号Vcmpの低下に伴って電圧信号Vcmp’が低下するとコイル電流ILが減少する。このように、コイル電流ILの大きさを電圧信号Vcmpに応じて制御することができる。
信号配線LL及び信号配線LLにて伝搬される信号について説明を加える。上述の説明から理解されるよう、エラーアンプ20は、自身の非反転入力端子及び反転入力端子間の電圧(ここでは電圧Vfb及びVref1間の差分電圧)を示す電圧信号を入力信号として受け、入力信号に応じた電流信号Iaを出力端子21から出力する。信号配線LLは、エラーアンプ20の出力端子21に接続され、電流信号Iaに基づく電圧信号Vcmp(対象電圧信号)を伝搬する配線である。信号配線LLはエラーアンプ20の外部に設けられる。電圧信号Vcmpはグランド(基準電位)から見た電圧を有する信号である。
図4に示す如く、信号配線LLは信号配線LL1及びLL2を含んで構成されると考えることができる。信号配線LL1は出力端子21とトランジスタ41のゲートとを接続する配線であり、信号配線LL2は出力端子21と抵抗31とを接続する配線である。図4では、出力端子21を起点として信号配線LL1と信号配線LL2とが互いに完全に分離しているかのように信号配線LL1及びLL2が示されているが(後述の図6でも同様)、出力端子21の近辺において信号配線LL1と信号配線LL2は部分的に重複することがある。信号配線LLにはクランプ回路110も接続されているが、ここでは、信号配線LL1の中に出力端子21及びクランプ回路110間の配線が含まれると考える。
図5に示した参考構成について考察する。図5の参考構成におけるアンプ20’、抵抗31’、コンデンサ32’、アンプ60’は、夫々、図1の構成におけるアンプ20、抵抗31、コンデンサ32、アンプ60に対応する回路素子であるが、図5の参考構成においては、シールドドライブ回路は設けられておらず、アンプ20’の出力端子21’が信号配線LL’を介してアンプ60’の非反転入力端子に接続されている。図5では、図示の便宜上、抵抗31’の形成領域が矩形領域にて表されている。
参考構成において生じる寄生容量Ca〜Ceが図5に示されている。寄生容量Caは、信号配線LL’の内、出力端子21’及びアンプ60’間を接続する配線とグランドとの間に生じる。寄生容量Cbは、アンプ60’の非反転入力端子及び反転入力端子間に生じる。抵抗31’及びグランド間の寄生容量は抵抗31’の形成領域の全体に亘って存在しており、当該寄生容量を、アンプ20’に対して抵抗31’が接続される端子の付近に生じる寄生容量Ccと、コンデンサ32’に対して抵抗31’が接続される端子の付近に生じる寄生容量Ceと、抵抗31’の中央付近に生じる寄生容量Cdとに、模式的に分割して考えることができる。
図5の参考構成において、アンプ20’の出力に基づく信号配線LL’での電圧信号は寄生容量Ca〜Ceの影響を受けて鈍る。アンプ20’の電流能力を大きくすれば、このような信号の鈍りを低減することができるが、アンプ20’の電流能力の増大はアンプ20’内の回路電流の増大を通じて消費電力の増大を招く。本実施形態に係る構成では、低消費電力であっても鈍りの少ない信号伝送が可能となっている。これを実現するべく、図1の電源IC1に対しては信号配線シールド技術と受動素子シールド技術が適用されている。
図6は、信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術の概念図である。
[信号配線シールド技術]
まず、信号配線シールド技術について説明する。信号配線シールド技術では、信号配線LLに対してシールド配線を併設し、シールドノード43をシールド配線に接続することでシールド配線の電圧をシールドノード43での電圧と一致させる。信号配線LLを信号配線LL1及びLL2に分けて考えた場合には、シールド配線は信号配線LL1に併設されるシールド配線SHW1と、信号配線LL2に併設されるシールド配線SHW2と、に大別される。シールド配線SHW1及びSHW2が共にシールドノード43に接続されて、シールドノード43での電圧がシールド配線SHW1及びSHW2に加わる。本実施形態において、以下、単にシールド配線と記した場合、それはシールド配線SHW1及びSHW2の夫々を指すと解される。
シールド配線は、電源IC1内においてグランドの電位を有する基準電位部と、信号配線LLと、の間に配置された導電体である。シールド配線としての導電体は、基本的には金属配線であって良いが、金属に分類されない導電性材料にてシールド配線が構成されても良い。シールド配線の設置により、信号配線LL及びグランド(基準電位部)間にシールドが形成され、信号配線LL及びグランド(基準電位部)間の寄生容量の形成が抑制される。即ち、シールド配線が設けられることで、信号配線LLとグランド(基準電位部)との間に直接的な寄生容量は発生しなくなる、或いは、シールド配線が設けらない構成との比較において信号配線LL及びグランド間の寄生容量が小さくなる。
そして、シールドノード43がシールド配線に接続されるのでシールド配線には電圧信号Vcmpに連動する電圧信号Vcmp’の電圧が加わる。即ち、シールドドライブ回路40は、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が上昇すると、それに連動してシールド配線の電圧も上昇させ、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が低下すると、それに連動してシールド配線の電圧も低下させるように動作する。
より具体的には、電圧信号Vcmpが或る電圧値を有している状態を基準にして、電圧信号Vcmpが上昇する向きに電流信号Iaが出力されるとき、電圧信号Vcmp’も上昇することになるが、電圧信号Vcmp’の上昇はシールドノード43からシールド配線に向けた電荷(正の電荷)の供給を伴う。このときの電荷はトランジスタ41のソースからシールドノード43を通じてシールド配線に供給され、シールド配線とグランドとの間の寄生容量(図6では寄生容量210)の充電に供される。
逆に、電圧信号Vcmpが或る電圧値を有している状態を基準にして、電圧信号Vcmpが低下する向きに電流信号Iaが出力されるとき、電圧信号Vcmp’も低下することになるが、電圧信号Vcmp’の低下はシールド配線からシールドノード43に向けた電荷(正の電荷)の引き抜きを伴う。このときの電荷はシールド配線からシールドノード43を通じ定電流回路42へと流れ、シールド配線とグランドとの間の寄生容量(図6では寄生容量210)の放電に供される。
このように、シールドドライブ回路40は、シールドノード43とシールド配線との間において電圧信号Vcmpに応じた電荷の入出力を行うことでシールド配線の電圧を制御する。
信号配線シールド技術によれば、図5の寄生容量Caに相当する寄生容量が生じなくなる。代わりにシールド配線及びグランド間に寄生容量が生じることになるが、その寄生容量の充放電はシールドドライブ回路40により行われる。また、シールド配線及び信号配線LL間にも寄生容量が生じるが、電圧信号Vcmpの変化に連動してシールドドライブ回路40が電圧信号Vcmp’を変化させるため、シールド配線及び信号配線LL間の寄生容量の充放電に対するエラーアンプ20の負担は無い又は十分に小さい。結果、エラーアンプ20の電流能力が低くても鈍りの少ない電圧信号Vcmpを生成することが可能となる。つまり、低消費電力でありつつも、鈍りの少ない信号を伝送することが可能となる。更に、シールドドライブ回路40により図5の寄生容量Cbに相当する寄生容量の充放電が行われるため、その分だけ、エラーアンプ20の電流能力を更に下げることが可能なる(結果、更なる低消費電力化が図られる)。
尚、電圧信号Vcmpの電圧が0V近辺にまで低下している状況にあってはトランジスタ41がオフとなってトランジスタ41を通じた電流の流れが生じなくなるが、電源IC1の通常動作時において、そのような状況は発生しないものとし、ここでは当該状況の存在を無視する。
[受動素子シールド技術]
次に、受動素子シールド技術について説明する。受動素子シールド技術では、信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受ける受動素子と、電源IC1内においてグランドの電位を有する基準電位部と、の間にシールド領域が設けられ、シールドドライブ回路40により電圧信号Vcmpに応じてシールド領域の電圧が制御される。図6において、破線SHRはシールド領域を概念的に示したものである。本実施形態において、信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受ける受動素子は抵抗31である。
シールド領域は、電源IC1を構成する半導体基板内に形成された領域であり、その構造例については後述される。シールド領域の設置により、上記受動素子及びグランド(基準電位部)間にシールドが形成され、上記受動素子及びグランド(基準電位部)間の寄生容量の形成が抑制される。即ち、シールド領域が設けられることで、上記受動素子とグランド(基準電位部)との間に直接的な寄生容量は発生しなくなる、或いは、シールド領域が設けらない構成との比較において受動素子及びグランド間の寄生容量が小さくなる。
そして、シールドノード43がシールド領域に接続されてシールド領域には電圧信号Vcmpに連動する電圧信号Vcmp’の電圧が加わる。即ち、シールドドライブ回路40は、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が上昇すると、それに連動してシールド領域の電圧も上昇させ、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が低下すると、それに連動してシールド領域の電圧も低下させるように動作する。
より具体的には、電圧信号Vcmpが或る電圧値を有している状態を基準にして、電圧信号Vcmpが上昇する向きに電流信号Iaが出力されるとき、電圧信号Vcmp’も上昇することになるが、電圧信号Vcmp’の上昇はシールドノード43からシールド領域に向けた電荷(正の電荷)の供給を伴う。このときの電荷はトランジスタ41のソースからシールドノード43を通じてシールド領域に供給され、シールド領域とグランドとの間の寄生容量(図6では寄生容量220)の充電に供される。
逆に、電圧信号Vcmpが或る電圧値を有している状態を基準にして、電圧信号Vcmpが低下する向きに電流信号Iaが出力されるとき、電圧信号Vcmp’も低下することになるが、電圧信号Vcmp’の低下はシールド領域からシールドノード43に向けた電荷(正の電荷)の引き抜きを伴う。このときの電荷はシールド領域からシールドノード43を通じ定電流回路42へと流れ、シールド領域とグランドとの間の寄生容量(図6では寄生容量220)の放電に供される。
このように、シールドドライブ回路40は、シールドノード43とシールド領域との間において電圧信号Vcmpに応じた電荷の入出力を行うことでシールド領域の電圧を制御する。
受動素子シールド技術によれば、図5の寄生容量Cc、Cd及びCeに相当する寄生容量が生じなくなる。代わりにシールド領域及びグランド間に寄生容量が生じることになるが、その寄生容量の充放電はシールドドライブ回路40により行われる。また、シールド領域及び受動素子(ここでは抵抗31)間にも寄生容量が生じるが、電圧信号Vcmpの変化に連動してシールドドライブ回路40が電圧信号Vcmp’を変化させるため、シールド領域及び受動素子間の寄生容量の充放電に対するエラーアンプ20の負担は無い又は十分に小さい。結果、エラーアンプ20の電流能力が低くても鈍りの少ない電圧信号Vcmpを生成することが可能となる。つまり、低消費電力でありつつも、鈍りの少ない信号を伝送することが可能となる。
第1実施形態は、以下の実施例EX1_1〜EX1_5を含む。第1実施形態において上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の実施例EX1_1〜EX1_5に適用され、各実施例において、上述の事項と矛盾する事項については各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、実施例EX1_1〜EX1_5の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
尚、以下では、受動素子シールド技術の対象となる抵抗(図1では抵抗31)を、説明の便宜上、対象抵抗と称することがある。
[参考実施例]
まず、後述の実施例EX1_1等との比較に供される参考実施例を説明する。図7は、参考実施例に関わる半導体装置の縦断面図である。図7の半導体装置はP型半導体基板2101を有する。P型半導体基板2101上にP型ウェル2102が形成され、P型ウェル2102の上方に酸化膜2103を介してポリシリコンから成る抵抗2104が形成される。抵抗2104の一端及び他端に夫々コンタクト電極2105及び2106が設けられる。P型半導体基板2101はグランドの電位を有する。図7の縦構造は図5の参考構成に対応しており、抵抗2104は図5の抵抗31’に相当する。図7の縦構造においては、P型半導体基板2101とP型ウェル2102とが導通するため、抵抗2104とP型半導体基板2101との間に、相応に大きな寄生容量が形成される。
[実施例EX1_1]
実施例EX1_1を説明する。図8(a)は、実施例EX1_1に係る電源IC1の内、受動素子シールド技術に関わる要部の縦断面図である。図8(b)は、実施例EX1_1に係る縦構造において形成される寄生容量及び寄生ダイオードを図8(a)に付加した図である。実施例EX1_1に係る電源IC1はP型半導体基板301を有し、P型半導体基板301上に、対象抵抗31に相当する対象抵抗304が形成される。P型半導体基板301上には電源IC1を構成する各素子が形成されているが、対象抵抗304以外の素子を図8(a)及び(b)では省略している(後述の図10においても同様)。符号CT_S、CT_R1及びCT_R2は、実施例EX1_1に係る電源IC1に設けられたコンタクト電極を表している。
説明の明確化のため、図9に示す如く、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から成る三次元直交座標系を定義する。X軸及びY軸に平行な平面をXY面と称する。P型半導体基板301及び後述の任意の半導体基板は、夫々に、互いに対向する2面を有し、その2面の内、一方を主面と称し、他方を裏面と称する。図9では、半導体基板の例としてP型半導体基板301が示されている。主面及び裏面はXY面に平行である。主面側に電源IC1を構成する各素子が形成される。半導体集積回路の縦構造において、裏面から主面に向かう向きが上向きと捉えられ、その逆向きが下向きと捉えられる。
図8(a)を参照し、P型半導体基板301の主面側に(換言すればP型半導体基板301の上方側に)N型半導体領域であるN型ウェル302が形成される。N型ウェル302の上方に酸化膜303を介して対象抵抗304が形成される。即ち、N型ウェル302と対象抵抗304との間に酸化膜303が設けられることで、N型ウェル302と対象抵抗304とが互いに分離される。酸化膜303は選択酸化膜であるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)による酸化膜であって良い。抵抗304は例えばポリシリコン抵抗である。
XY面上において、N型ウェル302の大きさは対象抵抗304の大きさよりも大きく、対象抵抗304の全体に亘って対象抵抗304とP型半導体基板301との間にN型ウェル302が介在する。
実施例EX1_1において、コンタクト電極CT_Sは酸化膜303を貫通するコンタクトホール305を介してN型ウェル302に接続される。コンタクトホール305内には、N型ウェル302を構成するN型半導体と同じN型半導体が存在する。コンタクトホール305はN型ウェル302の一部であると解しても良い。図1も参照し、コンタクト電極CT_Sは金属配線を通じてシールドノード43に接続される(図8(a)及び(b)では金属配線を図示せず)。故に、シールドノード43における電圧がN型ウェル302に加わる。
実施例EX1_1において、コンタクト電極CT_R1は対象抵抗304の一端に接続され、コンタクト電極CT_R2は対象抵抗304の他端に接続される。図1も参照し、コンタクト電極CT_R1は金属配線にて構成される信号配線LLに接続され(換言すれば該金属配線を介してノードNDAに接続され)、コンタクト電極CT_R2は金属配線を介してコンデンサ32の一端に接続される(図8(a)及び(b)では金属配線及びコンデンサ32を図示せず)。
P型半導体基板301はグランドの電位を有し、上述の基準電位部に相当する。即ち例えば、P型半導体基板301の裏面がグランド端子GNDに接続されることで、P型半導体基板301にグランドの電位が与えられる。N型ウェル302は上述のシールド領域に相当する。即ち、実施例EX1_1に係る縦構造では、信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受ける受動素子(304)と、グランドの電位を有する基準電位部(301)と、の間にシールド領域(302)が設けられている。
図8(a)のP型半導体基板301には、半導体集積化プロセスを経て電源IC1を形成するための様々な素子(トランジスタ等)やウェル(不純物がドープされた領域)が形成されることになるが、P型半導体基板301の内、グランドの電位を有する基板部が基準電位部に相当する、と考えても良い。この場合、P型半導体基板301における基板部と、P型半導体基板301上に形成された対象抵抗304との間に、N型ウェル302(シールド領域)が設けられている、と考えることができる。後述の他の任意の半導体基板についても同様である。
図8(b)に示す如く、実施例EX1_1に係る縦構造では、N型ウェル302とP型半導体基板301との間に寄生ダイオードが形成されるが、シールドノード43に接続されたN型ウェル302の電圧が負となることは無いため、当該寄生ダイオードを通じ電流は流れない。故に、P型半導体基板301及びN型ウェル302間の絶縁は確保されている。
対象抵抗304とN型ウェル302との間に寄生容量が形成されると共にN型ウェル302とP型半導体基板301との間にも寄生容量が形成されるが、対象抵抗304とP型半導体基板301との間に直接的な寄生容量は発生しない。対象抵抗304及びN型ウェル302間の寄生容量並びにN型ウェル302及びP型半導体基板301間の寄生容量に対する充放電はシールドドライブ回路40(図1参照)により行われるため、エラーアンプ20自体の電流能力は低くて済む。
尚、実施例EX1_1に係る電源IC1において、図10に示す如く、N型ウェル302とP型半導体基板301との間にN型半導体領域306が形成されていても良い。N型半導体領域306の不純物濃度は、N型ウェル302の不純物濃度よりも高い又は低い。図10の構造ではN型ウェル302とN型半導体領域306とでシールド領域が形成される。図10の構造でも、図8(a)に構造と同等の作用及び効果(受動素子シールド技術に関わる作用及び効果)が得られる。
[実施例EX1_2]
実施例EX1_2を説明する。図11(a)は、実施例EX1_2に係る電源IC1の内、受動素子シールド技術に関わる要部の縦断面図である。図11(b)は、実施例EX1_2に係る縦構造において形成される寄生容量及び寄生ダイオードを図11(a)に付加した図である。実施例EX1_2に係る電源IC1はP型半導体基板321を有し、P型半導体基板321上に、対象抵抗31に相当する対象抵抗324が形成される。P型半導体基板321上には電源IC1を構成する各素子が形成されているが、対象抵抗324以外の素子を図11(a)及び(b)では省略している。符号CT_V、CT_S、CT_R1及びCT_R2は、実施例EX1_2に係る電源IC1に設けられたコンタクト電極を表している。
図11(a)を参照し、P型半導体基板321の主面側に(換言すればP型半導体基板321の上方側に)N型半導体領域であるN型ウェル326が形成され、更にN型ウェル326内にP型半導体領域であるP型ウェル322が形成される。P型ウェル322の上方に酸化膜323を介して対象抵抗324が形成される。即ち、P型ウェル322と対象抵抗324との間に酸化膜323が設けられることで、P型ウェル322と対象抵抗324とが互いに分離される。酸化膜323は選択酸化膜であるLOCOSによる酸化膜であって良い。抵抗324は例えばポリシリコン抵抗である。
XY面上において、P型ウェル322の大きさは対象抵抗324の大きさよりも大きく、対象抵抗324の全体に亘って対象抵抗324とP型半導体基板321との間にP型ウェル322が介在する。また、XY面上において、N型ウェル326の大きさはP型ウェル322の大きさよりも大きく、P型ウェル322の全体に亘ってP型ウェル322とP型半導体基板321との間にN型ウェル326が介在する。P型ウェル322はN型ウェル326にて取り囲まれており、P型ウェル322とP型半導体基板321との間は導通していない。
実施例EX1_2において、コンタクト電極CT_Sは酸化膜323を貫通するコンタクトホール325を介してP型ウェル322に接続される。コンタクトホール325内には、P型ウェル322を構成するP型半導体と同じP型半導体が存在する。コンタクトホール325はP型ウェル322の一部であると解しても良い。図1も参照し、コンタクト電極CT_Sは金属配線を通じてシールドノード43に接続される(図11(a)及び(b)では金属配線を図示せず)。故に、シールドノード43における電圧がP型ウェル322に加わる。
実施例EX1_2において、コンタクト電極CT_R1は対象抵抗324の一端に接続され、コンタクト電極CT_R2は対象抵抗324の他端に接続される。図1も参照し、コンタクト電極CT_R1は金属配線にて構成される信号配線LLに接続され(換言すれば該金属配線を介してノードNDAに接続され)、コンタクト電極CT_R2は金属配線を介してコンデンサ32の一端に接続される(図11(a)及び(b)では金属配線及びコンデンサ32を図示せず)。
実施例EX1_2において、コンタクト電極CT_Vは酸化膜323を貫通するコンタクトホール327を介してN型ウェル326に接続される。コンタクトホール327内には、N型ウェル326を構成するN型半導体と同じN型半導体が存在する。コンタクトホール327はN型ウェル326の一部であると解しても良い。コンタクト電極CT_Vには金属配線を介して内部電源電圧Vregが供給される(図11(a)及び(b)では金属配線を図示せず)。故に、内部電源電圧VregがN型ウェル326に加わる。
P型半導体基板321はグランドの電位を有し、上述の基準電位部に相当する。即ち例えば、P型半導体基板321の裏面がグランド端子GNDに接続されることで、P型半導体基板321にグランドの電位が与えられる。P型ウェル322は上述のシールド領域に相当する。即ち、実施例EX1_2に係る縦構造では、信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受ける受動素子(324)と、グランドの電位を有する基準電位部(321)と、の間にシールド領域(322)が設けられている。
図11(b)に示す如く、実施例EX1_2に係る縦構造では、P型ウェル322とN型ウェル326との間に寄生ダイオードが形成されるが、N型ウェル326に対してP型ウェル322よりも高い電圧が加わるため、ウェル322及び326間の絶縁は確保される。同様に、N型ウェル326とP型半導体基板321の間に寄生ダイオードが形成されるが、N型ウェル326に対してP型半導体基板321よりも高い電圧が加わるため、N型ウェル326及びP型半導体基板321間の絶縁は確保される。
対象抵抗324とP型ウェル322との間に寄生容量が形成されると共にP型ウェル322とN型ウェル326との間にも寄生容量が形成されるが、対象抵抗324とP型半導体基板321との間に直接的な寄生容量は発生しない。対象抵抗324及びP型ウェル322間の寄生容量並びにP型ウェル322及びN型ウェル326間の寄生容量に対する充放電はシールドドライブ回路40(図1参照)により行われるため、エラーアンプ20自体の電流能力は低くて済む。N型ウェル326及びP型半導体基板321間の寄生容量には直流電圧(Vreg)が加わり、その寄生容量は信号伝送に影響しない。
[実施例EX1_3]
実施例EX1_3を説明する。図12は、実施例EX1_3の電源IC1における受動素子シールド技術に関わる要部のイメージ図であって、当該要部を構成する対象抵抗404、酸化膜403及びN型ウェル402の配置関係を金属配線と共に示した図である。対象抵抗404、酸化膜403及びN型ウェル402は、夫々、実施例EX1_1の対象抵抗304、酸化膜303及びN型ウェル302に相当する(図8(a)等参照)。対象抵抗404は複数の抵抗体を直列接続することで構成される。対象抵抗404を構成する抵抗体の個数は幾つでも構わないが、ここでは、図12に示す如く、4つの抵抗体404[1]〜404[4]を直列接続することで対象抵抗404が形成されるものとする。
各抵抗体はXY面に平行な長方形の形状を有する。複数の抵抗体は互いに同じ形状を有していて良い。抵抗体404[1]〜404[4]の長辺の方向が第1の方向(例えばY軸の方向)に平行となるように、第1の方向に直交する第2の方向(例えばX軸の方向)に沿って抵抗体404[1]〜404[4]が並べて配置される。この際、ノードNDAからコンデンサ32に向けて、抵抗体404[1]、404[2]、404[3]及び404[4]が、この順番で並べられ、且つ、この順番で直列接続される。
より具体的には、抵抗体404[1]の一端に金属配線411が接続される。抵抗体404[1]の一端と金属配線411との導通を確保するためのコンタクト電極(図12において不図示)が上述のコンタクト電極CT_R1(図8(a)等参照)に相当し、当該コンタクト電極(CT_R1)は信号配線LLの一部を構成する金属配線411を介してノードNDAに接続される。抵抗体404[1]の他端と抵抗体404[2]の一端が金属配線412にて接続され、抵抗体404[2]の他端と抵抗体404[3]の一端が金属配線413にて接続され、抵抗体404[3]の他端と抵抗体404[4]の一端が金属配線414にて接続され、抵抗体404[4]の他端が金属配線415に接続される。抵抗体404[4]の他端と金属配線415との導通を確保するためのコンタクト電極(図12において不図示)が上述のコンタクト電極CT_R2(図8(a)等参照)に相当し、当該コンタクト電極(CT_R2)は金属配線415を介してコンデンサ32の一端(コンデンサ32の両端の内、グランドに接続されていない側の端部)に接続される。金属配線411〜415は上記第2の方向に沿って伸びる金属配線であって良い。金属配線411〜415及び後述の金属配線421を含む任意の金属配線はアルミニウム又はタングステンにより構成される。
対象抵抗404の下方に酸化膜403が形成され、酸化膜403の更に下方にN型ウェル402が設けられる。
N型ウェル402の所定位置にて金属配線421が接続される。その所定位置に設けられた、N型ウェル402及び金属配線421間の導通を確保するためのコンタクト電極(図12において不図示)が、上述のコンタクト電極CT_S(図8(a)等参照)に相当する。当該コンタクト電極(CT_S)は金属配線421を介してシールドノード43に接続される。上記所定位置は、XY面上において抵抗体404[1]〜404[4]を内包する最小の矩形の外側に位置する。
XY面上の形状に注目して、対象抵抗404、酸化膜403及びN型ウェル402間の位置関係及び大きさ関係を説明する。XY面上において抵抗体404[1]〜404[4]を内包する最小の矩形を酸化膜403に投影したとき、その矩形は酸化膜403の外形よりも小さく、且つ、その矩形の全体は酸化膜403の外形に内包される。図12では、XY面上における酸化膜403の外形形状が矩形となっているが、その外形形状は矩形に限定されず、曲線を含んでいて良い(抵抗体404[1]〜404[4]及びN型ウェル402についても同様)。同様に、XY面上において抵抗体404[1]〜404[4]を内包する最小の矩形をN型ウェル402に投影したとき、その矩形はN型ウェル402の外形よりも小さく、且つ、その矩形の全体はN型ウェル402の外形に内包される。故に、対象抵抗404の全体に亘って対象抵抗404とP型半導体基板(図8(a)等のP型半導体基板301に相当;図12では図示せず)との間にN型ウェル402が介在することになり、対象抵抗404及びP型半導体基板間の寄生容量の生成が効果的に抑制される。
また、XY面上における酸化膜403の外形をN型ウェル402に投影したとき、酸化膜403の外形はN型ウェル402の外形よりも小さて良く且つN型ウェル402の外形に内包されて良い(図12では、その様子が図示されている)。但し、XY面上における酸化膜403及びN型ウェル402の大きさ関係は、これに限定されず、XY面上における酸化膜403及びN型ウェル402の大きさ関係は上述の逆であり得る。
実施例EX1_3において上述した事項は、実施例EX1_2の構成(図11(a)及び(b))にも適用できる。この場合、上述のN型ウェル402をP型ウェル402に読み替えた上で、対象抵抗404、酸化膜403及びP型ウェル402は、夫々、実施例EX1_2の対象抵抗324、酸化膜323及びP型ウェル322に相当すると解せば良い。
[実施例EX1_4]
実施例EX1_4を説明する。実施例EX1_4では、信号配線シールド技術に係る配線のレイアウトについて説明する。図13は、電源IC1における、シールドの対象となる信号配線LLaの周辺の概略的な平面図である。信号配線LLaは図6の信号配線LL1又はLL2に相当する。図14は、図13のB−B’線に沿った、信号配線LLaの周辺の断面図である。信号配線LLaが伸びる方向とB−B’線による断面とは互いに直交しているものとする。電源IC1は510及び複数の金属層を備え、半導体部510の上方に複数の金属層が配置される。複数の金属層は、半導体部510の上方に位置する第1金属層と、第1金属層の更に上方に位置する第2金属層を備える。各金属層の必要な箇所にアルミニウム又はタングステンから成る金属配線が設けられる。
半導体部510は、半導体基板、半導体基板上に形成されたシールド領域及び対象抵抗を含む部位である。例えば、図10の構成に関して言えば、半導体部510は、P型半導体基板301と、P型半導体基板301上に形成されたN型半導体領域306、N型ウェル302、酸化膜303及び対象抵抗304を含む。図11の構成に関して言えば、半導体部510は、P型半導体基板321と、P型半導体基板321上に形成されたN型ウェル326、P型ウェル322、酸化膜323及び対象抵抗324を含む。半導体部510は、更に、電源IC1を構成する素子であって且つP型半導体基板301上に形成された各素子(例えばエラーアンプ20、シールドドライブ回路40及び差動アンプ60等)を含む。
半導体部510における必要な箇所が、コンタクト電極(図14において不図示)を介し、第1金属層に設けられた対応する金属配線に接続される。第1金属層に設けられた金属配線は、必要な箇所において、第2金属層に設けられた金属配線に対しビアを介して接続される。
信号配線LLa並びにシールド配線SHWa1及びSHWa2は、第2金属層に設けられた金属配線である。第2金属層において信号配線LLaに隣接してシールド配線SHWa1及びSHWa2が設けられる。即ち、第2金属層において、シールド配線SHWa1とシールド配線SHWa2との間に信号配線LLaが配置される。第2金属層には、信号配線LLa並びにシールド配線SHWa1及びSHWa2とは別に、金属配線OW1〜OW4を含む多数の金属配線も配置されている。第2金属層において、信号配線LLa及びシールド配線SHWa1間に金属配線OW1〜OW4を含む他の金属配線が存在しないようにすると良く、信号配線LLa及びシールド配線SHWa2間に金属配線OW1〜OW4を含む他の金属配線が存在しないようにすると良い。
シールド配線SHWa3は第1金属層に設けられた金属配線である。シールド配線SHWa3は信号配線LLaと半導体部510との間に設けられる。即ち、信号配線LLa及び半導体部510間を最短で結ぶ線分上にシールド配線SHWa3が位置するよう、シールド配線SHWa3が形成される。シールド配線SHWa3はビアを介してシールド配線SHWa1及びSHWa2に接続される。シールド配線SHWa3は、B−B’線に沿った断面上において、シールド配線SHWa1及びSHWa2間の距離以上の長さを有していて良く、信号配線LLaと半導体部510との間だけでなく、シールド配線SHWa1と半導体部510との間にも且つシールド配線SHWa2と半導体部510との間にもシールド配線SHWa3が介在していると良い。即ち例えば、第1金属層内の領域であって、且つ、シールド配線SHWa1の直下の位置から信号配線LLaの直下の位置を介してシールド配線SHWa2の直下の位置に至るまでの領域512に、シールド配線SHWa3を設けると良い。領域512を含み且つ領域512より大きな領域にシールド配線SHWa3が設けられていても良い。
第1金属層には、シールド配線SHWa3とは別に金属配線OW5〜OW8を含む多数の金属配線も配置されている。ここでは、半導体部510の上面視において、金属配線OW1〜OW4が金属配線OW5〜OW8と重なり合っていること想定しているため、図13上では金属配線OW5〜OW8が現れていない。
シールド配線SHWa1、SHWa2及びSHWa3はシールドノード43に接続される。故に、信号配線LLaが図6の信号配線LL1に相当する場合、シールド配線SHWa1、SHWa2及びSHWa3によりシールド配線SHW1が構成される。信号配線LLaが図6の信号配線LL2に相当する場合、シールド配線SHWa1、SHWa2及びSHWa3によりシールド配線SHW2が構成される。
シールド配線SHWa1、SHWa2及びSHWa3は、上述のようにして信号配線LLaに対して併設され、信号配線LLaとグランドの電位を有する基準電位部との間にシールドを形成することで、信号配線LLa及び基準電位部間の寄生容量の形成を抑制する。基準電位部は半導体部510内に含まれ、例えば上述のP型半導体基板301又は321に相当する。信号配線LLaは、実質的に、P型半導体基板301又は321に対して且つ周囲の金属配線(OW1〜OW8)に対して直接的な寄生容量を持たず、シールド配線SHWa1、SHWa2及びSHWa3に対してのみ寄生容量を持つことになる。
通常、信号配線LLaの直下に位置する箇所であって且つ半導体部510内の箇所にはトランジスタ等の素子が形成されず、当該箇所にはP型半導体基板301又は321のみが存在することになるが、当該箇所にトランジスタ等の素子が形成されても良い。
信号配線LLaは図6の信号配線LL1又はLL2に相当すると述べたが、実施例EX1_4にて上述した事項は、信号配線LL1及びLL2の夫々に対して適用されると良い。但し、実施例EX1_4にて上述した事項は、信号配線LL1及びLL2の内、一方の信号配線に対してのみ適用されても良い。
[実施例EX1_5]
実施例EX1_5を説明する。第1実施形態では、基本的に信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術の双方を実施することを想定しているが、信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術の内、一方のみを実施するようにしても良い。
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態及び後述の第3〜第7実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2〜第7実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2〜第7実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い(後述の第3〜第7実施形態についても同様)。矛盾の無い限り、第1〜第7実施形態の内、任意の複数の実施形態を組み合わせても良い。
電源IC1において、シールドドライブ回路40の配置位置、及び、シールドドライブ回路40と他の回路との接続状態を、以下のように変形しても良い。図15は、当該変形が適用された電源IC1の一部回路図であって、第2実施形態に係る電源IC1の一部回路図である。以下では、主として第1及び第2実施形態間の相違部分に注目して第2実施形態に係る電源IC1を説明する。
第2実施形態において、エラーアンプ20と信号配線LLと位相補償部30との接続関係は第1実施形態と同じである。故に、エラーアンプ20の出力端子21が信号配線LLに接続されて、電流信号Iaによる電荷が信号配線LLに対して入出力され、エラーアンプ20及び位相補償部30の機能により信号配線LLに電圧信号Vcmpが現れる。
第2実施形態に係る位相補償部30及びシールドドライブ回路40の構成及び動作も第1実施形態のそれらと同じであり、第2実施形態において電圧信号Vcmp及びVcmp’間の関係についても第1実施形態と同じである。即ち、第2実施形態においても、トランジスタ41のゲートと抵抗31の一端とエラーアンプ20の出力端子21とが互いにノードNDAにて接続されることでトランジスタ41のゲートに電圧信号Vcmpが加えられ、且つ、トランジスタ41のドレインに内部電源電圧Vregが加えられ、且つ、トランジスタ41のソースと定電流回路42とがシールドノード43にて互いに接続され、且つ、定電流回路42はシールドノード43からグランドに向けて定電流(一定の電流値を有する電流)が流れるよう動作する。これにより、シールドノード43には電圧信号Vcmpに応じた電圧信号Vcmp’が加わる。但し、第2実施形態においては、差動アンプ60の非反転入力端子に対し信号配線LLが直接接続され、故に、差動アンプ60の非反転入力端子には電圧信号Vcmp’の代わりに電圧信号Vcmpが加わる。特に図示しないが、これに伴って、第2実施形態では、軽負荷検出コンパレータ100の非反転入力端子も信号配線LLに直接接続され、軽負荷検出コンパレータ100の非反転入力端子に対し電圧信号Vcmp’ の代わりに電圧信号Vcmpが加わる。
第2実施形態の構成に対しても、第1実施形態と同様に、信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術を適用できる。図16は、第2実施形態に係る信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術の概念図である。上述したように信号配線LLは信号配線LL1及びLL2を含んで構成されると考えることができるが、第2実施形態では、信号配線LL1は出力端子21と差動アンプ60の非反転入力端子とを接続する配線であると解される。信号配線LL2については、第1実施形態と同様に、出力端子21と抵抗31とを接続する配線である。尚、図16では、出力端子21を起点として信号配線LL1と信号配線LL2とが互いに完全に分離しているかのように信号配線LL1及びLL2が示されているが、出力端子21の近辺において信号配線LL1と信号配線LL2は部分的に重複することがある。第2実施形態において、信号配線LLにはクランプ回路110及び軽負荷検出コンパレータ100も接続されることになるが、ここでは、信号配線LL1の中に出力端子21及びクランプ回路110間の配線並びに出力端子21及び軽負荷検出コンパレータ100間の配線が含まれると考える。
信号配線LLとシールド配線とシールドノード43との間の関係は第1実施形態で述べた通りである。即ち、信号配線LLにシールド配線を併設し、シールドノード43をシールド配線に接続することでシールド配線の電圧をシールドノード43での電圧と一致させる。信号配線LLを信号配線LL1及びLL2に分けて考えた場合には、シールド配線は信号配線LL1に併設されるシールド配線SHW1と信号配線LL2に併設されるシールド配線SHW2とに大別され、シールド配線SHW1及びSHW2が共にシールドノード43に接続されてシールドノード43での電圧がシールド配線SHW1及びSHW2に加わる。そして、第1実施形態で述べたように、シールド配線はグランドの電位を有する基準電位部と信号配線LLとの間に配置された導電体であって、シールドドライブ回路40は、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が上昇すると、それに連動してシールド配線の電圧も上昇させ、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が低下すると、それに連動してシールド配線の電圧も低下させるように動作する。
受動素子シールド技術の内容及び実現方法は、第1及び第2実施形態間で何ら変わりは無い。即ち、信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受ける受動素子(ここでは対象抵抗31)とグランドの電位を有する基準電位部との間にシールド領域が設けられる。図16において破線SHRはシールド領域を概念的に示したものである。そして、シールドドライブ回路40は、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が上昇すると、それに連動してシールド領域の電圧も上昇させ、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が低下すると、それに連動してシールド領域の電圧も低下させるように動作する。
第2実施形態の構成においても第1実施形態の構成と類似の作用及び効果が得られる。但し、第2実施形態の構成においては、差動アンプ60の入力端子間の寄生容量(図5の寄生容量Cbに相当)の充放電や差動アンプ60内の初段回路に付加される寄生容量(特に図示せず)の充放電をエラーアンプ20が担う必要があり、その分だけ、エラーアンプ20の電流能力を高める必要がある、又は、電圧信号Vcmpに鈍りが生じる可能性がある。故に、第2実施形態の構成よりも第1実施形態の構成の方が好ましい。
ここで、第1実施形態に係る図1の回路構成と、第2実施形態に係る図15の回路構成とを比較する。電源IC1は、電圧信号Vcmpに応じて動作すべき後段回路を備えており、当該後段回路には少なくとも差動アンプ60が含まれる。図1の構成においては、エラーアンプ20と後段回路との間にシールドドライブ回路40が挿入されており、電圧信号Vcmpそのものの代わりに、電圧信号Vcmp’が電圧信号Vcmpに応じた信号として後段回路(詳細には差動アンプ60の非反転入力端子)に供給されている。これに対し、図15の構成においては、エラーアンプ20の出力端子21から伸びる信号配線LLの一端が後段回路(詳細には差動アンプ60の非反転入力端子)に接続されることで、電圧信号Vcmpそのものが後段回路(詳細には差動アンプ60の非反転入力端子)に供給されている。
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態を説明する。図17に電源IC1におけるレイアウトの例を示す。第3実施形態におけるレイアウトは、上述の第1及び第2実施形態の何れに対しても適用可能であり、矛盾無き限り、後述の他の実施形態にも適用可能である。図17には、半導体基板上に電源IC1を構成する各素子が集積化された半導体チップCP1の概略平面図が示されている。電源IC1における半導体集積回路が半導体チップCP1に実装されている。説明の具体化ため、半導体チップCP1が長方形(正方形を含む)の外形形状を有していることを想定した上で、X軸及びY軸が半導体チップCP1の中心にて互いに直交するものとし、半導体チップCP1の中心に原点Oをとる。但し、半導体チップCP1の外形形状は長方形に限定されない、
XY面上における半導体チップCP1の構成を説明する。半導体チップCP1の外形形状としての長方形は、互いに対向する辺501及び502と、互いに対向する辺503及び504と、を有する。辺501及び502はY軸に平行であって、辺501はX軸の正側に位置し、辺502はX軸の負側に位置する。辺503及び504はX軸に平行であって、辺503はY軸の正側に位置し、辺504はY軸の負側に位置する。
半導体チップCP1において、Y軸の負側の領域に領域511〜514が設けられる。領域511はハイサイドトランジスタ10Hが形成されるハイサイドトランジスタ領域であり、領域512はローサイドトランジスタ10Lが形成されるローサイドトランジスタ領域である。領域513はハイサイドドライバ(図3ではNAND回路91に相当)が形成されるハイサイドドライバ領域であり、領域514はローサイドドライバ(図3ではAND回路92に相当)が形成されるはローサイドドライバ領域である。辺502から辺501に向けて、領域513、511、512、514の順に配置される。図17の半導体チップCP1では領域512の方が領域511よりも大きくなっているが、領域511の方が領域512よりも大きくても良いし、領域511及び512の大きさは互いに同じであっても良い。また、領域511及び512はY軸の負側と正側の領域に跨って形成されていても良い(領域513及び514についても同様)。
半導体チップCP1において、Y軸の正側の領域に領域521〜525が設けられる。領域521にはエラーアンプ20及びシールドドライブ回路40が形成される。領域521において更にクランプ回路110が形成されていても良い。領域522には差動アンプ60が形成される。領域523には位相補償部30が形成される。領域524には、エラーアンプ20及び対象抵抗31間を接続するための信号配線LL2が設けられる。領域525に設けられる配線は第1及び第2実施形態間で異なる。即ち、第1実施形態の構成(図1参照)においては、領域525に対しシールドノード43と差動アンプ60の非反転入力端子とを接続する配線が設けられ、第2実施形態の構成(図15及び図16参照)においては、領域525に対しエラーアンプ20の出力端子21と差動アンプ60の非反転入力端子とを接続する配線(即ち第2実施形態での信号配線LL1)が設けられる。
X軸方向においては辺502から辺501に向かう向きに沿って且つY軸方向においては辺504から辺503に向かう向きに沿って、領域522、525、521、524、523が、この順番で並んでいる。
XY面上における領域521〜523の位置関係は上述したものに限定されない。即ち、XY面上において、上述の如く領域522及び523間に領域521が設けられていても良いが、これに代えて領域521及び523間に領域522を設けるようにしても良いし、領域521及び522間に領域523を設けるようにしても良い。何れの場合であっても、XY面に平行な一つの直線上に領域521〜523が配置されていて良い。
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態では対象抵抗の縦構造に関わる変形例を説明する。図18(a)は、第4実施形態に係る電源IC1の内、受動素子シールド技術に関わる要部の縦断面図である。図18(b)は、第4実施形態に係る縦構造において形成される寄生容量及び寄生ダイオードを図18(a)に付加した図である。第4実施形態に係る電源IC1はP型半導体基板341を有し、P型半導体基板341上に、対象抵抗31に相当する対象抵抗344が形成される。P型半導体基板341上には電源IC1を構成する各素子が形成されているが、対象抵抗344以外の素子を図18(a)及び(b)では省略している。符号CT_S、CT_R1及びCT_R2は、第4実施形態に係る電源IC1に設けられたコンタクト電極を表している。
図18(a)を参照し、P型半導体基板341の主面側に(換言すればP型半導体基板341の上方側に)N型半導体領域であるN型ウェル342が形成される。但し、ここでは、N型ウェル342とP型半導体基板341との間にN型半導体領域346が形成されている。N型半導体領域346の不純物濃度は、N型ウェル342の不純物濃度よりも高い又は低い。N型半導体領域346は省略されることもある。
N型ウェル342の形成後、N型ウェル342の形成領域の一部に対し上方から所定の不純物を打ち込むことでN型ウェル342の上側一部領域をP型半導体領域とする。このP型半導体領域が対象抵抗344となる。一般的なバイポーラトランジスタのベース領域を形成する半導体と同じ種類の半導体にて対象抵抗344を作成することができる。対象抵抗344の上側を除き、対象抵抗344の全方位において対象抵抗344はN型ウェル342に取り囲まれる。N型ウェル342の上部において、N型ウェル342を取り囲む位置に酸化膜343が設けられることでN型ウェル342が他の素子と分離される。酸化膜343は選択酸化膜であるLOCOSによる酸化膜であって良い。
第4実施形態において、コンタクト電極CT_Sは、P型半導体領域としての対象抵抗344の外側の位置であって且つN型ウェル342の上部にてN型ウェル342が露出している位置に設けられ、これによってN型ウェル342に接続される。コンタクト電極CT_Sには金属配線を通じてシールド電圧が印加され、故にシールド電圧がN型ウェル342に加わる(シールド電圧については後述)。
第4実施形態において、コンタクト電極CT_R1は対象抵抗344の一端に接続され、コンタクト電極CT_R2は対象抵抗344の他端に接続される。図1又は図15も参照し、コンタクト電極CT_R1は金属配線にて構成される信号配線LLに接続され(換言すれば該金属配線を介してノードNDAに接続され)、コンタクト電極CT_R2は金属配線を介してコンデンサ32の一端に接続される(図18(a)及び(b)では金属配線及びコンデンサ32を図示せず)。
P型半導体基板341はグランドの電位を有し、上述の基準電位部に相当する。即ち例えば、P型半導体基板341の裏面がグランド端子GNDに接続されることで、P型半導体基板341にグランドの電位が与えられる。N型ウェル342は上述のシールド領域に相当する。即ち、第4実施形態に係る縦構造では、信号配線LLに接続されて電圧信号Vcmpを受ける受動素子(344)と、グランドの電位を有する基準電位部(341)と、の間にシールド領域(342)が設けられている。
図18(b)に示す如く、第4実施形態に係る縦構造では、P型半導体領域としての対象抵抗344とN型ウェル342との間に寄生ダイオードが形成される。対象抵抗344及びN型ウェル342間の寄生ダイオードに電流が流れないよう、第4実施形態では、シールド電圧がノードNDAの電圧以上の電圧とされる。第4実施形態におけるシールド電圧は、ノードNDAの電圧以上の電圧でありながら、第1又は第2実施形態のシールドノード43の電圧と同様の挙動を示す。
故に、第4実施形態においてシールドドライブ回路40は以下の機能を持つように変形される。即ち、第4実施形態に係るシールドドライブ回路40は、電圧信号Vcmpに応じた電圧であって且つノードNDAの電圧(即ち電圧信号Vcmpの電圧)以上のシールド電圧を生成する機能を有し、この際、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が上昇すると、それに連動してシールド電圧も上昇させ、信号配線LLにて伝搬される電圧信号Vcmpの電圧が低下すると、それに連動してシールド電圧も低下させる。第1実施形態と第4実施形態を組み合わせる場合にあっては、図1の構成に対し、シールド電圧を生成する機能をシールドドライブ回路40に追加して良い。そして、このように生成されたシールド電圧をN型ウェル342として構成されたシールド領域に供給し、更にシールド配線に供給すると良い。尚、N型ウェル342及びN型半導体領域346とP型半導体基板341との間に寄生ダイオードが形成されるが、シールド電圧がグランドの電位を下回ることは無いため、当該寄生ダイオードを通じた電流は流れない。
対象抵抗344とN型ウェル342との間に寄生容量が形成されると共にN型ウェル342及びN型半導体領域346とP型半導体基板341との間にも寄生容量が形成されるが、対象抵抗344とP型半導体基板341との間に直接的な寄生容量は発生しない。対象抵抗344とN型ウェル342との間の寄生容量、並びに、N型ウェル342及びN型半導体領域346とP型半導体基板341との間の寄生容量に対する充放電はシールドドライブ回路40により行われるため、エラーアンプ20自体の電流能力は低くて済む。
尚、第4実施形態に係る構造を実施例EX1_4(図13及び図14)に適用する場合、図14の半導体部510は、P型半導体基板341と、P型半導体基板341上に形成されたN型半導体領域346、N型ウェル342、酸化膜343及び対象抵抗344を含むと解される。
第1実施形態で示したようにポリシリコンにて対象抵抗を形成した場合、対象抵抗は負の温度係数を有する。これに対し、第4実施形態の如く対象抵抗を形成した場合、対象抵抗は正の温度係数を有することになる。必要な温度特性などに応じて何れかの形成方法を採用できる。
<<第5実施形態>>
本発明の第5実施形態を説明する。上述の各実施形態に示された電源IC1を含むスイッチング電源装置SPSを、任意の装置に搭載することができ、任意の負荷に対する電源装置として利用できる。図19に、自動車等の車両CCに電源装置600を搭載する構成例を示す。車両CCには、所定の直流電圧を出力可能なバッテリBATが搭載されている。バッテリBATの出力電力を用いて、車両CCのエンジン(不図示)の始動が行われると共に車両CCに搭載された様々な電装品(ヘッドライト等)が駆動される。
電源装置600として、上述の何れかの実施形態に記載された電源IC1を含むスイッチング電源装置SPSを用いることができる。電源装置600に対する入力電圧(図1の電圧Vinに相当)は、バッテリBATの出力電圧そのものであっても良いし、バッテリBATの出力電圧に基づいて生成された他の直流電圧であっても良い。電源装置600の出力電圧(図1の電圧Voutに相当)を、車両CCに搭載される様々な負荷(例えば、エアーコンディショナ、ナビゲーション装置、表示機器、他の電源回路)に対して供給することができる。
<<第6実施形態>>
本発明の第6実施形態を説明する。電圧入力及び電流出力のアンプ(即ちトランスコンダクタンスアンプ)に対して本発明を適用する構成例を上述したが、本発明は電圧入力及び電圧出力のアンプに対しても適用できる。
図20に、電圧入力及び電圧出力のアンプに対して本発明が適用された装置の例として、半導体装置1000を示す。図20は半導体装置1000に含まれる回路の一部回路図である。半導体装置1000は、スイッチング電源装置等を構成するための回路を含んでいて良い。半導体装置1000は、電圧信号Vsiを入力信号として受け、電圧信号Vsiに応じた電圧信号Vsoを出力信号として出力するアンプ1020と、アンプ1020の出力側の電圧を入力側に帰還するためのフィードバック回路1030と、シールドドライブ回路1040と、後段回路1060と、を備える。フィードバック回路1030はコンデンサ1031及び抵抗1032を備える。シールドドライブ回路1040は、Nチャネル型のMOSFETとして構成されたトランジスタ1041と、トランジスタ1041に直列接続された定電流回路1042と、を備える。
アンプ1020は、非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子を備える演算増幅器であって、非反転入力端子の電圧を基準にして反転入力端子に対し電圧信号Vsiが加わる。アンプ1020の出力端子は信号配線JJに接続されて信号配線JJを通じてコンデンサ1031の一端に接続され、コンデンサ1031の他端は抵抗1032を介してアンプ1020の反転入力端子に接続される。そうすると、信号配線JJには、アンプ1020の出力信号に基づく信号であって、電圧信号Vsiに応じた電圧信号Vsoが生じる。電圧信号Vsoはグランドから見た電位を有する信号である。アンプ1020は電源電圧VDDを正側の電源電圧として且つグランドを負側の電源電圧として駆動するため、電圧信号Vsoは0V以上且つ電源電圧VDD以下の範囲内の電圧値を持つ。
一方、アンプ1020の出力端子は信号配線JJを通じてトランジスタ1041のゲートにも接続される。トランジスタ1041のゲートと、コンデンサ1031の一端と、アンプ1020の出力端子とが互いに接続されるノードを、特にノードNDBと称する。トランジスタ41のドレインに正の直流の電源電圧VDDが加えられ、トランジスタ1041のソースとグランドとの間に定電流回路1042が設けられる。また、トランジスタ1041のソースと定電流回路1042とが接続されるノードを、シールドノード1043と称する。定電流回路1042はシールドノード1043からグランドに向けて定電流(一定の電流値を有する電流)が流れるよう動作する。シールドノード1043には電圧信号Vsoに応じた電圧信号Vso’が加わる。電圧信号Vso’での電圧は、電圧信号Vsoでの電圧より、トランジスタ1041のゲート−ソース間電圧だけ低い電圧となる。故に、信号Vsoの電圧の上昇に連動して信号Vso’の電圧も上昇し、信号Vsoの電圧の低下に連動して信号Vso’の電圧も低下する。トランジスタ1041のゲート−ソース間電圧は実質的に一定であるとみなすことができる。
後段回路1060は電圧信号Vsoに応じて動作すべき任意の回路である。電圧信号Vso’は電圧信号Vsoに連動して変化する電圧信号であるため、後段回路1060は電圧信号Vso’に基づいて所望の動作を実現できる。
信号配線JJは電圧信号Vsoを伝搬する配線として機能する。この信号配線JJに対し、上述の信号配線シールド技術を適用することができる。また、コンデンサ1031は信号配線JJに接続されて電圧信号Vsoを受ける受動素子として機能する。このコンデンサ1031に対し、上述の受動素子シールド技術を適用することができる。信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術によりもたらされる効果は上述した通りである。
図21は、第6実施形態に係る信号配線シールド技術及び受動素子シールド技術の概念図である。
信号配線シールド技術では、信号配線JJにシールド配線を併設し、シールドノード1043をシールド配線に接続することでシールド配線の電圧をシールドノード1043での電圧と一致させる。シールド配線は、グランドの電位を有する基準電位部と信号配線JJとの間に配置された導電体である。シールド配線としての導電体は、基本的には金属配線であって良いが、金属に分類されない導電性材料にてシールド配線が構成されても良い。シールド配線の設置により、信号配線JJとグランド(基準電位部)との間の寄生容量の形成が抑制される。即ち、シールド配線が設けられることで、信号配線JJとグランド(基準電位部)との間に直接的な寄生容量は発生しなくなる、或いは、シールド配線が設けらない構成との比較において信号配線JJ及びグランド間の寄生容量が小さくなる。
そして、シールドノード1043がシールド配線に接続されるのでシールド配線には電圧信号Vsoに連動する電圧信号Vso’の電圧が加わる。即ち、シールドドライブ回路1040は、信号配線JJにて伝搬される電圧信号Vsoの電圧が上昇すると、それに連動してシールド配線の電圧も上昇させ、信号配線JJにて伝搬される電圧信号Vsoの電圧が低下すると、それに連動してシールド配線の電圧も低下させるように動作する。
より具体的には、電圧信号Vsoが或る電圧値を有している状態を基準にして、アンプ1020が電圧信号Vsoを上昇方向に変化させるとき、電圧信号Vso’も上昇することになるが、電圧信号Vso’の上昇はシールドノード1043からシールド配線に向けた電荷(正の電荷)の供給を伴う。このときの電荷はトランジスタ1041のソースからシールドノード1043を通じてシールド配線に供給され、シールド配線とグランドとの間の寄生容量(図21では寄生容量1210)の充電に供される。
逆に、電圧信号Vsoが或る電圧値を有している状態を基準にして、アンプ1020が電圧信号Vsoを低下方向に変化させるとき、電圧信号Vso’も低下することになるが、電圧信号Vso’の低下はシールド配線からシールドノード1043に向けた電荷(正の電荷)の引き抜きを伴う。このときの電荷はシールド配線からシールドノード1043を通じ定電流回路1042へと流れ、シールド配線とグランドとの間の寄生容量(図21では寄生容量1210)の放電に供される。
尚、電圧信号Vsoの電圧が0V近辺にまで低下している状況にあってはトランジスタ1041がオフとなってトランジスタ1041を通じた電流の流れが生じなくなるが、半導体装置1000の通常動作時において、そのような状況は発生しないものとし、ここでは当該状況の存在を無視する。
受動素子シールド技術では、信号配線JJに接続されて電圧信号Vsoを受ける受動素子と、グランドの電位を有する基準電位部と、の間にシールド領域が設けられ、シールドドライブ回路1040により電圧信号Vsoに応じてシールド領域の電圧が制御される。第6実施形態において、信号配線JJに接続されて電圧信号Vsoを受ける受動素子はコンデンサ1031である。
シールド領域は、半導体装置1000を構成する半導体基板内に形成された領域である。シールド領域の設置により、上記受動素子とグランド(基準電位部)との間の寄生容量の形成が抑制される。即ち、シールド領域が設けられることで、上記受動素子とグランド(基準電位部)との間に直接的な寄生容量は発生しなくなる、或いは、シールド領域が設けらない構成との比較において受動素子及びグランド間の寄生容量が小さくなる。
そして、シールドノード1043がシールド領域に接続されてシールド領域には電圧信号Vsoに連動する電圧信号Vso’の電圧が加わる。即ち、シールドドライブ回路1040は、信号配線JJにて伝搬される電圧信号Vsoの電圧が上昇すると、それに連動してシールド領域の電圧も上昇させ、信号配線JJにて伝搬される電圧信号Vsoの電圧が低下すると、それに連動してシールド領域の電圧も低下させるように動作する。
より具体的には、電圧信号Vsoが或る電圧値を有している状態を基準にして、アンプ1020が電圧信号Vsoを上昇方向に変化させるとき、電圧信号Vso’も上昇することになるが、電圧信号Vso’の上昇はシールドノード1043からシールド領域に向けた電荷(正の電荷)の供給を伴う。このときの電荷はトランジスタ1041のソースからシールドノード1043を通じてシールド領域に供給され、シールド領域とグランドとの間の寄生容量(図21では寄生容量1220)の充電に供される。
逆に、電圧信号Vsoが或る電圧値を有している状態を基準にして、アンプ1020が電圧信号Vsoを低下方向に変化させるとき、電圧信号Vso’も低下することになるが、電圧信号Vso’の低下はシールド領域からシールドノード1043に向けた電荷(正の電荷)の引き抜きを伴う。このときの電荷はシールド領域からシールドノード1043を通じ定電流回路1042へと流れ、シールド領域とグランドとの間の寄生容量(図21では寄生容量1220)の放電に供される。
図22(a)は、第6実施形態に係る半導体装置1000の内、受動素子シールド技術に関わる要部の縦断面図である。図22(b)は、第6実施形態に係る縦構造において形成される寄生容量及び寄生ダイオードを図22(a)に付加した図である。第6実施形態に係る半導体装置1000はP型半導体基板1301を有し、P型半導体基板1301上にコンデンサ1031に相当するコンデンサCAPが形成される。P型半導体基板1301上には半導体装置1000を構成する各素子が形成されているが、コンデンサCAP以外の素子を図22(a)及び(b)では省略している。符号CT_S、CT_C1及びCT_C2は、第6実施形態に係る半導体装置1000に設けられたコンタクト電極を表している。
図22(a)を参照し、P型半導体基板1301の主面側に(換言すればP型半導体基板1301の上方側に)N型半導体領域であるN型ウェル1302が形成される。N型ウェル1302とP型半導体基板1301との間に、N型ウェル1302の不純物濃度よりも高い又は低い不純物濃度を有するN型半導体領域が形成されていても良い。N型ウェル1302の上方に酸化膜1303を介して導電体1304が形成される。導電体1304の上方に酸化膜1305を介して導電体1306が形成される。導電体1304及び1306は、ポリシリコン、低抵抗の半導体又は金属により構成される。酸化膜1303及び1305はLOCOSによる酸化膜であって良い。導電体1304、酸化膜1305及び導電体1306によりコンデンサCAPが形成される。コンデンサCAPとN型ウェル1302は酸化膜1303により分離される。
P型半導体基板1301の主面及び裏面に平行なXY面上において、N型ウェル1302の大きさはコンデンサCAPの大きさ(即ち導電体1304、酸化膜1305及び導電体1306の夫々の大きさ)よりも大きく、コンデンサCAPの全体に亘ってコンデンサCAPとP型半導体基板1301との間にN型ウェル1302が介在する。
第6実施形態において、コンタクト電極CT_Sは酸化膜1303を貫通するコンタクトホール1307を介してN型ウェル1302に接続される。コンタクトホール1307内には、N型ウェル1302を構成するN型半導体と同じN型半導体が存在する。コンタクトホール1307はN型ウェル1302の一部であると解しても良い。図20も参照し、第6実施形態におけるコンタクト電極CT_Sは金属配線を通じてシールドノード1043に接続される(図22(a)及び(b)では金属配線を図示せず)。故に、シールドノード1043における電圧がN型ウェル1302に加わる。
第6実施形態において、コンタクト電極CT_C1はコンデンサCAPの一端に相当する導電体1304に接続され、コンタクト電極CT_C2はコンデンサCAPの他端に相当する導電体1306に接続される。図20も参照し、コンタクト電極CT_C1は金属配線にて構成される信号配線JJに接続され(換言すれば該金属配線を介してノードNDBに接続され)、コンタクト電極CT_C2は金属配線を介して抵抗1032の一端に接続される(図22(a)及び(b)では金属配線及び抵抗1032を図示せず)。
P型半導体基板1301はグランドの電位を有し、上述の基準電位部に相当する。即ち例えば、P型半導体基板1301の裏面がグランド端子GNDに接続されることで、P型半導体基板1301にグランドの電位が与えられる。N型ウェル1302は上述のシールド領域に相当する。即ち、第6実施形態に係る縦構造では、信号配線JJに接続されて電圧信号Vsoを受ける受動素子(CAP、1031)と、グランドの電位を有する基準電位部(1301)と、の間にシールド領域(1302)が設けられている。
図22(b)に示す如く、N型ウェル1302とP型半導体基板1301との間に寄生ダイオードが形成されるが、N型ウェル1302にはコンタクト電極CT_Sを通じてシールドノード1043(図21参照)の電圧が加わり、シールドノード1043の電圧がグランドの電位を下回ることは無いため当該寄生ダイオードに電流は流れない。
導電体1304とN型ウェル1302との間に寄生容量が形成されると共にN型ウェル1302とP型半導体基板1301との間にも寄生容量が形成されるが、導電体1304とP型半導体基板1301との間に直接的な寄生容量は発生しない。導電体1304及びN型ウェル1302間の寄生容量並びにN型ウェル1302及びP型半導体基板1301間の寄生容量に対する充放電はシールドドライブ回路1040により行われる。
アンプ1020が通常の電流能力を有しておれば、シールドドライブ回路1040及びN型ウェル1302(シールド領域)を設けずに、コンデンサCAP及びP型半導体基板1301間の寄生容量の充放電をアンプ1020に任せれば足る。但し、アンプ1020の電流能力を極力抑えたいケースにおいては、上述の如くシールドドライブ回路1040及びN型ウェル1302(シールド領域)を設けることが有益となる。
尚、第6実施形態において、コンデンサ1031と抵抗1032との位置関係を逆にしても良い。この場合、図20において、アンプ1020の出力端子が信号配線JJを通じて抵抗1032の一端に接続され、抵抗1032の他端がコンデンサ1031を介してアンプ1020の反転入力端子に接続されることになる。そしてこの場合には、抵抗1032に対して受動素子シールド技術を適用すれば良い。
<<第7実施形態>>
本発明の第7実施形態を説明する。第7実施形態では、第1〜第6実施形態に対する幾つかの変形技術等を説明する。
電源IC1を用いてスイッチング電源装置SPSを構成する方法を上述したが、複数のディスクリート部品を用いて電源IC1内の回路と同等の回路を構成するようにしても良い。電源IC1内に含まれるものとして上述した任意の幾つかの素子(例えばトランジスタ10H及び10L)は、電源IC1外に設けられて電源IC1に対し外付け接続されても良い。逆に、電源IC1外に設けられるものとして上述した任意の幾つかの素子を、電源IC1内に設けるようにしても良い。
電源IC1は、入力電圧Vinをスイッチングする出力段回路10と、当該スイッチングにより生成された出力電圧Voutに応じた帰還電圧Vfbに基づき出力段回路10を制御する制御回路とを備えた、スイッチング電源装置SPS用の半導体集積回路を形成している(換言すれば前記半導体集積回路を含んでいる)。電源IC1において、制御回路は、エラーアンプ20、位相補償部30、シールドドライブ回路40、電流検出部50、差動アンプ60、オシレータ70、PWMコンパレータ80、ゲートドライバ90、軽負荷検出コンパレータ100、クランプ回路110及びタイミング制御部120を含んでいる、と考えることができる。
図1等を参照し、同期整流方式の降圧型スイッチング電源装置に本発明を適用した構成を例に挙げたが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、非同期整流方式のスイッチング電源装置に本発明を適用しても構わないし(即ちトランジスタ10Lをダイオードに置換する構成が採用されても良いし)、昇圧型や昇降圧型のスイッチング電源装置に本発明を適用しても構わない。
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。
上述の主旨を損なわない形で、幾つかのFETの型をNチャネル型及びPチャネル型間で入れ替える変形も可能である。また、上述の縦構造の説明にて示された半導体の型をN型及びP型間で入れ替える変形も可能である。
上述の主旨を損なわない形で、上述の各トランジスタを任意の種類のトランジスタとすることが可能である。例えば、MOSFETとして上述されたトランジスタを、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
グランドの電位を有する基準電位部は半導体基板のみに限定されず、半導体基板以外の部分もグランドの電位を有している限り、基準電位部に含まれることもある。
<<発明の考察>>
上述の各実施形態にて具体化された本発明について考察する。
本発明の一側面に係る半導体装置WAは(図1、図4、図6等参照)、出力端子(例えば21)を有し、供給される入力信号に応じた信号(例えばIa)を前記出力端子から出力するアンプ(例えば20)と、前記出力端子に接続されて前記アンプの出力信号に基づく対象電圧信号(例えばVcmp)を伝搬する信号配線(例えばLL)と、前記信号配線に併設されるシールド配線(例えばSHW1、SHW2)と、前記対象電圧信号に基づき前記シールド配線の電圧(例えばVcmp’)を制御するシールドドライブ回路(例えば40)と、を備えたことを特徴とする。
例えば、半導体装置WAにおいて、前記シールドドライブ回路は、前記対象電圧信号での電圧の上昇、低下に応答して、前記シールド配線の電圧を、夫々、上昇、低下させると良い。
より具体的には例えば、半導体装置WAにおいて、前記シールドドライブ回路は、前記対象電圧信号を受けるゲートを有したトランジスタ(例えば41)と、前記トランジスタに直列接続された定電流回路(例えば42)と、を備え、前記トランジスタ及び前記定電流回路間の接続ノード(例えば43)と前記シールド配線との間において前記対象電圧信号に応じた電荷の入出力を行うことで前記シールド配線の電圧を制御すると良い。
本発明の他の一側面に係る半導体装置WBは(図1、図4、図6等参照)、出力端子(例えば21)を有し、供給される入力信号に応じた信号(例えばIa)を前記出力端子から出力するアンプ(例えば20)と、前記出力端子に接続されて前記アンプの出力信号に基づく対象電圧信号(例えばVcmp)を伝搬する信号配線(例えばLL)と、前記信号配線に接続されて前記対象電圧信号を受ける受動素子(例えば対象抵抗31)と、シールドドライブ回路(例えば40)と、を備え、前記対象電圧信号は所定の基準電位(グランド)から見た電圧を有する信号として生成され、前記基準電位を有する基準電位部(例えば図8(a)ではP型半導体基板301)と前記受動素子(例えば図8(a)では対象抵抗304)との間にシールド領域(例えば図8(a)ではN型ウェル302)が形成され、前記シールドドライブ回路は、前記対象電圧信号に基づき前記シールド領域の電圧を制御することを特徴とする。
例えば、半導体装置WBにおいて、 前記シールドドライブ回路は、前記対象電圧信号での電圧の上昇、低下に応答して、前記シールド領域の電圧を、夫々、上昇、低下させると良い。
より具体的には例えば、半導体装置WBにおいて、前記シールドドライブ回路は、前記対象電圧信号を受けるゲートを有したトランジスタと、前記トランジスタに直列接続された定電流回路と、を備え、前記トランジスタ及び前記定電流回路間の接続ノードと前記シールド領域との間において前記対象電圧信号に応じた電荷の入出力を行うことで前記シールド領域の電圧を制御すると良い。
また例えば、半導体装置WA又はWBにおいて、前記対象電圧信号(例えばVcmp)に応じて動作すべき後段回路(例えば60)が更に設けられ、前記トランジスタ及び前記定電流回路間の接続ノード(例えば43)における信号(例えばVcmp’)が、前記対象電圧信号に応じた信号として前記後段回路に供給されて良い(図1参照)。或いは例えば、半導体装置WA又はWBにおいて、前記対象電圧信号(例えばVcmp)に応じて動作すべき後段回路(例えば60)が更に設けられ、前記出力端子(例えば21)から伸びる前記信号配線の一端が前記後段回路に接続されても良い(図15参照)。
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。