JP2020123305A - 遭難者救援システム - Google Patents

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Abstract

【課題】歩行中に遭難した登山者をその同行者によって救援する技術であって、その同行者の安全も確保しつつ、その同行者を現場に出動させる技術を提供する。【解決手段】登山者にとっての各同行者が使用する同行者端末90と、それと通信可能な管理サーバ50と、それによって指定された地理的エリアの環境情報を送信する環境サーバ400,500とを含むシステムにおいて、管理サーバは、登山者が遭難者である可能性があると判定すると、各同行者端末から同行者情報を受信し、その情報に基づき、各同行者ごとに、各同行者を遭難者の所在地に出動させたときの個人リスクを計算し、環境サーバから環境情報を受信し、その情報に基づき、いずれかの同行者を遭難者の所在地に出動させたときの環境リスクを計算し、いずれかの同行者を遭難者の所在地に出動させることを許可すると、複数人の同行者のうち選択された救援者に遭難者の救援を要請する。【選択図】図12

Description

本発明は、歩行者の通信端末を用いて歩行中にその歩行者を案内する技術、歩行者の通信端末を用いて歩行中に遭難したその歩行者をドローンによって捜索する技術、または歩行者に同行する同行者の通信端末を用いて歩行中に遭難したその歩行者を同行者によって救援する技術に関する。
歩行者の通信端末および歩行経路に設置された発信機を用いることにより、歩行中にその歩行者を案内する技術が既に提案されている。
この種の技術としては、例えば、特許文献1に、登山情報中継システムが記載されている。このシステムにおいては、複数の近距離無線通信装置(発信機+受信機)が登山経路に沿って並べて配置される。登山サーバが、ユーザ端末から経路情報を受信し、それに基づき、各近距離無線通信装置が必要な更新情報を、ユーザ端末に送信する。登山サーバは、ユーザ端末経由で、各近距離無線通信装置に更新情報を遠距離送信する。各近距離無線通信装置は、ユーザ端末から前記更新情報を受信し、それに基づき、ユーザ端末に発信すべき情報を更新する。
また、特許文献2に、生徒の通学路に複数の無線タグ(発信機)を設置し、各生徒に、各無線タグから近距離受信する携帯リーダ(読取り機能付き携帯端末)を所持させ、その携帯リーダに、各生徒の実際の移動経路を追跡させる技術が開示されている。
特開2018−22454号公報 特開2008−209965号公報
近年、登山がレジャーやスポーツとして注目されており、実際に、登山者が増加する傾向にある。登山者の中には、熟練者もいれば未経験者もいる。また、経験不足の登山者はもとより、熟練の登山者といえども、未経験の山岳を登山する際には、何らかの被害が予想される状況下において、それにもかかわらず、正常性バイアスという心理現象が発生し、それが原因で、遭難(例えば、歩行者が正規経路を逸脱するルート逸脱など)という不測の事態に陥るとおそれがある。
しかし、前述した従来の技術では、心理的にパニック状態にあるかもしれない登山者本人が、道に迷ったか否かの判断、遭難のおそれがあるか否かの判断、遭難を回避するための行動の決定、および、本当に遭難したか否かの判断を行わざるを得ない。
そのため、この従来の技術では、登山者本人が、遭難する前に、道に迷ったか否かを冷静に判断することを支援することも、遭難のおそれの有無を冷静に判断することを支援することも、遭難のおそれがある場合に、遭難を回避するための行動を的確に選択することを支援することもできない。
歩行者が正規経路を逸脱してしまうというルート逸脱の問題は、登山以外の活動においても発生し得る。例えば、歩行者が方向感覚を喪失し易い環境、例えば、森林や草原などの自然環境、不慣れな工場内の見学通路を歩行する場合や、児童、高齢者など、歩行者本人が未熟であるために、通学路や散歩道を歩行する場合にも発生し得る。
よって、歩行中に歩行者の歩行状態が異常であることを検知してその結果を歩行者に伝えて警告する歩行者異常判定技術が要望される。
また、歩行中に遭難した歩行者をドローンによって捜索する技術であって、その歩行者の通信端末の通信状況に応じて、ドローンで利用可能な通信方式を切り換えることにより、歩行者との通信を確保しつつ、その歩行者を捜索するドローン出動型捜索技術も要望される。
また、歩行中に遭難した歩行者をその歩行者にとっての同行者によって救援する技術であって、その同行者の安全も確保しつつ、その同行者を現場に出動させることを可能にする同行者出動型救援技術も要望される。
また、歩行中に歩行者を案内するために、歩行経路に沿って複数の発信機を離散的に設置する技術であって、設置されるべき発信機の数を削減しつつ、有効な案内情報を歩行者に提供する分岐点設置型案内技術も要望される。
<歩行者異常判定技術>
前記歩行者異常判定技術を提供したいという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、歩行中に歩行者を案内する歩行者案内システムであって、
歩行経路に沿って離散的に、かつ、直列に並ぶように設置された複数のガイド発信機であって、各ガイド発信機は、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
歩行者の通信端末であるユーザ端末であって各ガイド発信機から識別信号を近距離無線通信方式で受信可能なものと、
前記ユーザ端末と通信可能な管理サーバと
を含み、
前記ユーザ端末または前記管理サーバは、
前記ユーザ端末が各ガイド発信機からの識別信号の受信状態に基づき、歩行者の歩行状態に異常があるか否かを判定する歩行状態判定部を含み、
前記ユーザ端末は、
前記歩行状態判定部によって歩行者の歩行状態に異常があると判定されると、歩行者に対して警告を発する警告部と、
前記警告が歩行者によって確認されたときに歩行者によって操作される確認ボタンを歩行者によって操作されるまで画面上に表示し続ける確認ボタン表示部と
を含み、
前記ユーザ端末または前記管理サーバは、
前記確認ボタンの連続表示時間が所定の制限時間を超えても前記確認ボタンが歩行者によって操作されない場合に、歩行者が緊急事態に陥った可能性があると判定する緊急事態判定部と、
歩行者に同行する他の歩行者が登録されるメモリと、
前記緊急事態判定部によって歩行者が緊急事態に陥った可能性があると判定されると、前記メモリに登録されている他の歩行者の通信端末に前記緊急事態情報を送信する緊急事態情報送信部と
を含む歩行者案内システムが提供される。
この歩行者案内システムは、歩行状態の異常の有無についての段階的異常判定と、歩行状態の異常の深刻レベルに連動する救助支援(「深刻レベル連動型救助支援」)と、同行者相互連絡とをそれぞれ特徴とする。以下、各特徴を詳述する。
1.段階的異常判定
(1)第1段階の異常判定:軽い深刻レベルの異常判定
ガイド発信機からの信号に基づいて、歩行者の歩行状態の異常の有無を判定し、異常がある旨の判定(軽度の異常判定)を行うと、通信端末を介して歩行者に警告を発する。
(2)第2段階の異常判定:重い深刻レベルの異常判定
その警告に歩行者が気付かない場合には、歩行者が緊急事態に陥った可能性がある旨の判定(重度の異常判定)を行う。
具体的には、歩行者の通信端末の画面上に確認ボタンが連続して表示される連続表示時間が所定の制限時間を超えても前記確認ボタンが歩行者によって操作されない場合に、歩行者が緊急事態に陥った可能性があると判定する。
2.深刻レベル連動型救助支援
(1)軽度の異常判定時
軽度の異常判定時には、前記警告により、歩行者本人による行動の是正を促す。
(2)重度の異常判定時
重度の異常判定時には、歩行者本人が、身体的に動けないほどの深刻な事態に陥っている可能性があるため、歩行者本人にではなく、他の同行者の通信端末に、当該歩行者が緊急事態にある可能性を通報し、その他の同行者による救援活動を促す。
3.同行者相互連絡
重度の異常判定時に、ユーザ端末または管理サーバが、歩行者の通信端末にではなく、その同行者の通信端末に通報し、当該歩行者が緊急事態にある可能性を同行者と共有し、その同行者による救援活動を促す。
<ドローン出動型捜索技術>
前記ドローン出動型捜索技術を提供したいという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、歩行中に歩行者を案内する歩行者案内システムであって、
歩行経路に沿って離散的に、かつ、直列に並ぶように設置された複数のガイド発信機であって、各ガイド発信機は、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
歩行者に装着された歩行者発信機であって、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
歩行者の通信端末であるユーザ端末であって各ガイド発信機から識別信号を近距離無線通信方式で受信可能なものと、
無人で飛行するドローンであって、前記ユーザ端末のための空中移動式の中継基地局と、前記歩行者発信機から識別信号を受信可能な受信機とが搭載されたものと、
前記ユーザ端末と通信可能な管理サーバと
を含み、
前記ユーザ端末または前記管理サーバは、
前記ユーザ端末が各ガイド発信機からの識別信号の受信状態に基づき、歩行者の歩行状態に異常があるか否かを判定する歩行状態判定部を含み、
前記ユーザ端末は、
前記歩行状態判定部によって歩行者の歩行状態に異常があると判定されると、歩行者に対して警告を発する警告部と、
前記警告が歩行者によって確認されたときに歩行者によって操作される確認ボタンを歩行者によって操作されるまで画面上に表示し続ける確認ボタン表示部と
を含み、
前記ユーザ端末または前記管理サーバは、前記確認ボタンの連続表示時間が所定の制限時間を超えても前記確認ボタンが歩行者によって操作されない場合に、歩行者が緊急事態に陥った可能性があると判定する緊急事態判定部を含み、
前記管理サーバは、前記緊急事態判定部によって歩行者が緊急事態に陥った可能性があると判定されると、前記ユーザ端末と当該管理サーバとの間の接続が確立されることを条件に、前記ユーザ端末の測位機能および通信機能を利用して歩行者を捜索する通信端末利用型捜索モードと、前記歩行者発信機と前記ドローンに搭載されている前記受信機との間の接続が確立されることを条件に、前記歩行者発信機の場所認証機能および通信機能を利用して歩行者を捜索する発信機利用型捜索モードとを選択的に実行する歩行者案内システムが提供される。
この歩行者案内システムは、ドローンと歩行者発信機と歩行者の通信端末とを用いたドローン捜索を特徴として有する。以下、その特徴を詳述する。
このドローン捜索技術によれば、前述の重度の異常判定時に、歩行者を捜索するために、管理サーバが司令塔となり、ドローンと歩行者発信機と歩行者の通信端末とを用いた捜索を遠隔的に指揮する。
具体的には、管理サーバが、前述の重度の異常判定時に、
・ユーザ端末と当該管理サーバとの間の接続が確立されることを条件に、ユーザ端末の測位機能および通信機能を利用して歩行者を捜索する通信端末利用型捜索モードと、
・歩行者発信機とドローンに搭載された受信機との間の接続が確立されることを条件に、歩行者発信機の場所認証機能および通信機能を利用して歩行者を捜索する発信機利用型捜索モードと
を選択的に実行する。
<同行者出動型救援技術>
前記同行者出動型救援技術を提供したいという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、歩行中に遭難した可能性のある歩行者を救援する遭難者救援システムであって、
前記歩行者の通信端末であるユーザ端末と、
前記歩行者にとっての複数人の同行者がそれぞれ使用する通信端末である複数の同行者端末と、
前記ユーザ端末および前記複数の同行者端末と通信可能な管理サーバと、
その管理サーバと通信可能な環境サーバであって、前記管理サーバによって指定された地理的エリア内の環境を表す環境情報を前記管理サーバに送信するものと
を含み、
前記ユーザ端末は、
当該ユーザ端末に搭載されたセンサによる測定結果および/または当該ユーザ端末の外部デバイスからの受信結果に基づき、前記歩行者が遭難者である可能性があるか否かを判定する遭難者判定部を含み、
前記管理サーバは、
前記歩行者が遭難者である可能性があると判定されると、各同行者端末から各同行者に関する同行者情報を受信し、その受信した同行者情報に基づき、各同行者ごとに、前記遭難者を救援するために各同行者を前記遭難者の所在地に出動させたときの個人リスクを計算する個人リスク計算部と、
前記歩行者が遭難者である可能性があると判定されると、前記環境サーバから前記環境情報を受信し、その受信した環境情報に基づき、いずれかの同行者を前記遭難者の所在地に出動させたときの環境リスクを計算する環境リスク計算部と、
前記複数人の同行者のうち、前記計算された個人リスクが第1基準値を超えないものを、救援者として選択する救援者選択部と、
前記計算された環境リスクが第2基準値を超えない場合に、いずれかの同行者を前記遭難者の所在地に出動させることを許可する救援許可部と、
いずれかの同行者を前記遭難者の所在地に出動させることが許可された場合に、前記選択された救援者の前記同行者端末に、前記遭難者の所在地に関する情報と、その遭難者の救援を要請するためのメッセージとを送信する救援要請部と
を含む遭難者救援システムが提供される。
<分岐点設置型案内技術>
前記分岐点設置型案内技術を提供したいという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、歩行中に歩行者を複数の分岐点を有する歩行経路に沿って案内する歩行者案内システムであって、
前記複数の分岐点にそれぞれ設置された複数の発信機であって、それぞれ、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
歩行者の通信端末であるユーザ端末であって、各発信機からの信号を近距離無線方式で受信することが可能であるものと、
そのユーザ端末と通信可能な管理サーバと
を含み、
前記ユーザ端末は、
いずれかの発信機から識別信号を受信すると、その識別信号を発信機IDに変換し、その発信機IDを、発信機IDと分岐点IDとの間に予め定められた関係であってメモリに記憶されているものに従い、分岐点IDに変換し、それにより、今回の分岐点の地理的位置を特定する分岐点位置特定部と、
前記管理サーバから地図データを受信する地図データ受信部と、
前記受信した地図データのうち、前記特定された分岐点の地理的位置をカバーする部分地図データを、前記歩行者によって指定された目的地に到達するための正しい進路を表すマークと共に、当該ユーザ端末の画面上に表示する部分地図データ表示部と
を含む歩行者案内システムが提供される。
前記部分地図データ表示部の一例は、前記ユーザ端末がいずれの発信機からの識別信号の受信を開始すると、そのいずれかの発信機の設置位置に対応する部分地図データの表示を開始する。
前記部分地図データ表示部の別の例は、前記ユーザ端末がいずれの発信機からの識別信号の受信を終了すると、そのいずれかの発信機の設置位置に対応する部分地図データの表示を終了する。
前記部分地図データ表示部のさらに別の例は、前記ユーザ端末がいずれの発信機からの識別信号の受信を開始すると、そのいずれかの発信機の設置位置に対応する部分地図データの表示を開始し、前記ユーザ端末が前記いずれの発信機からの識別信号の受信を終了すると、そのいずれかの発信機の設置位置に対応する部分地図データの表示を終了する。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 歩行中に歩行者を案内する歩行者案内システムであって、
歩行経路に沿って離散的に、かつ、直列に並ぶように設置された複数の発信機であって、各発信機は、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
各歩行者の通信端末であって各発信機から識別信号を近距離無線通信方式で受信可能なものと
を含み、
各歩行者の通信端末は、
いずれかの発信機から識別信号を受信すると、そのいずれかの発信機を、歩行者の通過が確認された基準発信機に決定する基準発信機決定部と、
その基準発信機の決定後、前記歩行経路に予め割り当てられた歩行順路に沿って前記複数の発信機が並ぶ順序を表すマッピング・データを参照することにより、前記複数の発信機のうち前記歩行順路において前記基準発信機の次に位置するものを目標発信機として決定する目標発信機決定部と、
前記基準発信機から識別信号を受信した時刻から所定の制限時間が経過しても前記目標発信機から識別信号を受信しないと、歩行者の歩行状態に異常があると判定する歩行状態判定部と、
その判定結果を歩行者に伝えて警告する警告部と
を含み、
前記基準発信機決定部および前記目標発信機決定部は、それぞれ、反復的に実行される歩行者案内システム。
(2) 歩行中に歩行者を案内する歩行者案内システムであって、
歩行経路に沿って離散的に、かつ、直列に並ぶように設置された複数の発信機であって、各発信機は、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
各歩行者の通信端末であって各発信機から識別信号を近距離無線通信方式で受信可能なものと
各歩行者の通信端末と通信可能な管理サーバと
を含み、
その管理サーバは、
各歩行者の通信端末がいずれかの発信機から識別信号を受信すると、そのいずれかの発信機を、歩行者の通過が確認された基準発信機として決定する基準発信機決定部と、
その基準発信機の決定後、前記歩行経路に予め割り当てられた歩行順路に沿って前記複数の発信機が並ぶ順序を表すマッピング・データを参照することにより、前記複数の発信機のうち前記歩行順路において前記基準発信機の次に位置するものを目標発信機として決定する目標発信機決定部と、
各歩行者の通信端末が前記基準発信機から識別信号を受信した時刻から所定の制限時間が経過しても各歩行者の通信端末が前記目標発信機から識別信号を受信しないと、歩行者の歩行状態に異常があると判定する歩行状態判定部と、
その判定結果を歩行者の通信端末に送信する送信部と
を含み、
前記基準発信機決定部および前記目標発信機決定部は、それぞれ、反復的に実行される歩行者案内システム。
(3) 前記所定の制限時間は、前記歩行経路のうち前記基準発信機と前記目標発信機との間の道程、高度差、勾配および路面種類(舗装路、砂利道、泥道、崖道、幅広道、幅狭道など)のうちの少なくとも一つに応じて可変の長さを有する(1)または(2)項に記載の歩行者案内システム。
(4) 前記歩行状態が異常であるという判定結果は、歩行者に視覚的に、聴覚的におよび/または触覚的に伝えられる(1)ないし(3)項のいずれかに記載の歩行者案内システム。
(5) 前記歩行状態の異常は、歩行者が道に迷った可能性と、歩行者が前記歩行経路から逸脱した可能性とのうちの少なくとも一方を含む(1)ないし(4)項のいずれかに記載の歩行者案内システム。
(6) 前記通信端末は、さらに、
いずれかの発信機から識別信号を受信すると、当該通信端末の画面上に、地図と、現在位置と、前記いずれかの発信機の設置位置とをオーバーレイ状態で表示する表示部を含む(1)ないし(5)項のいずれかに記載の歩行者案内システム。
(7) 前記歩行経路は、山道、林道、施設内の見学通路、通学路、散歩道およびサイクリングコースであって、それぞれ、歩行順路が決まっているもののうちの少なくとも一つを含む(1)ないし(6)項のいずれかに記載の歩行者案内システム。
(8) (1)ないし(7)項のいずれかに記載の通信端末としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
本明細書の全体を通じて、「プログラム」という用語は、例えば、それの機能を果たすためにコンピュータにより実行される指令の組合せを意味するように解釈したり、それら指令の組合せのみならず、各指令に従って処理されるファイルやデータをも含むように解釈することが可能であるが、それらに限定されない。
また、このプログラムは、それ単独でコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとしたり、他のプログラムと共にコンピュータにより実行されることにより、所期の目的を達するものとすることができるが、それらに限定されない。後者の場合、本項に係るプログラムは、データを主体とするものとすることができるが、それに限定されない。
(9) (1)ないし(7)項のいずれかに記載の管理サーバとしてコンピュータを機能させるためのプログラム。
(10) (8)または(9)項に記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。
本明細書の全体を通じて、「記録媒体」という用語は、種々な形式の記録媒体を意味するように解釈することが可能であり、そのような記録媒体は、例えば、フレキシブル・ディスク等の磁気記録媒体、CD、CD−ROM等の光記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、ROM等のアンリムーバブル・ストレージ等を含むが、それらに限定されない。
(11) 歩行中に歩行者を案内する歩行者案内方法であって、
当該方法は、
歩行経路に沿って離散的に、かつ、直列に並ぶように設置された複数の発信機であって、各発信機は、固有の発信機IDを表す識別信号を発信するものと、
各歩行者の通信端末であって各発信機から識別信号を近距離無線通信方式で受信可能なものと
を用いて実行され、
当該歩行者案内方法は、
各歩行者の通信端末がいずれかの発信機から識別信号を受信すると、そのいずれかの発信機を基準発信機に決定する基準発信機決定工程と、
その基準発信機の決定後、前記歩行経路に予め割り当てられた歩行順路に沿って前記複数の発信機が並ぶ順序を表すマッピング・データを参照することにより、前記複数の発信機のうち前記歩行順路において前記基準発信機の次に位置するものを目標発信機として決定する目標発信機決定工程と、
各歩行者の通信端末が前記基準発信機から識別信号を受信した時刻から所定の制限時間が経過しても各歩行者の通信端末が前記目標発信機から識別信号を受信しないと、歩行者が道に迷っている可能性があると判定する道迷い状態判定工程と、
その判定結果を歩行者に伝えて警告する警告工程と
を含み、
前記基準発信機決定工程および前記目標発信機決定工程は、それぞれ、反復的に実行される歩行者案内方法。
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に従う登山道案内システムのハードウエア構成を概念的に表す系統図である。
図2は、図1に示す登山道案内システムにおける複数のガイド発信機が山岳地の登山道に設置される際のレイアウトの一例であって、複数のガイド発信機が登山道に沿って一列に設置されたものを示す概略斜視図である。
図3は、図2における複数のガイド発信機のうち互いに隣接する2つを取り出して拡大して示す斜視図である。
図4は、いずれも図2に示すガイド発信機および登山者発信機であって共通の構成を有するものを表す機能ブロック図である。
図5は、図1に示す登山者の携帯端末を表す機能ブロック図である。
図6(a)は、図1に示す登山道案内システムにおいて、携帯端末が発信機Aから信号を受信した時刻から制限時間が経過する前に、同じ携帯端末が隣の発信機Bから信号を受信する正常歩行状態シナリオを例示的に表すグラフであり、同図(b)は、前記登山道案内システムにおいて、携帯端末が発信機Aから信号を受信した時刻から制限時間が経過しても、同じ携帯端末が隣の発信機Bから信号を受信しない異常歩行状態シナリオを例示的に表すグラフである。
図7は、各ガイド発信機の発信機IDと地図上における各ガイド発信機の位置との間の予め定められた関係と、登山道の歩行順路に沿って複数のガイド発信機が並ぶ順序と、制限時間とを互いに関連付けて表すマッピング・データを概念的に表すテーブルである。
図8(a)は、図2に示す登山道において互いに隣接する2つの地点の間で高度が緩やかに変化する例を表すグラフであり、同図(b)は、前記2つの地点の間で高度が急に変化する例を表すグラフであり、同図(c)は、前記制限時間が基準時間Sと補正係数kとの積で表されるシナリオにおいて、前記基準時間Sの長さが、前記2つの地点の間の道程dに応じて増加することを例示的に表すグラフであり、同図(d)は、前記補正係数kが、前記2つの地点の間の高度差Δhに応じて増加することを例示的に表すグラフである。
図9は、図1に示す管理サーバを表す機能ブロック図である。
図10は、図1に示す登山道案内システムのソフトウエア構成を説明するための複数のプログラムを概念的に表すフローチャートである。
図11(a)は、図1に示す携帯端末の画面上に表示される第1ページであって登山を行うのか下山を行うのかを区別するためのユーザのデータ入力を支援するものを例示的に表す平面図であり、同図(b)は、前記画面上に表示される第2ページであってユーザが道に迷った可能性があるときにユーザに対して警告を行うためのものを例示的に表す平面図であり、同図(c)は、前記画面上に表示される第3ページであってユーザに対して警告が行われた後に前記管理サーバを実行している処理をユーザに説明するためのものを例示的に表す平面図である。
図12は、本発明の例示的な第2の実施形態に従う遭難者救援システムのハードウエア構成のうちの要部を概念的に表す系統図である。
図13は、図12に示す遭難者救援システムのソフトウエア構成を説明するための複数のプログラムを概念的に表すフローチャートである。
図14は、本発明の例示的な第3の実施形態に従う登山道案内システムにおける複数の発信機の設置レイアウトを概念的に表す斜視図である。
図15は、図14に示す登山道案内システムにおける登山者の通信端末の画面上に表示される例示的な画像を表す平面図である。
図16は、図14に示す登山道案内システムにおける管理サーバのメモリのうちの地図データベースの内容を概念的に表す図である。
図17は、図14に示す登山道案内システムのソフトウエア構成を説明するための複数のプログラムを概念的に表すフローチャートである。
図18(a)は、図14に示す登山道案内システムの作動中、登山者がある分岐点を歩行して通過する様子の一例を示す斜視図であり、同図(b)は、同図(a)の歩行例において携帯端末が発信機を受信する状態の時間的変化を表すタイムチャートであり、同図(c)は、同図(a)の歩行例において登山者の携帯端末の画面上における表示状態の時間的変化を表すタイムチャートである。
以下、本発明のさらに具体的で例示的な複数の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1には、本発明の第1の実施形態に従う登山道案内システム(以下、単に「システム」という。)10のハードウエア構成が概念的に系統図で表されている。システム10は、本発明の一実施形態に従う歩行者案内方法を実施するように設計されている。
<システムの概略について>
概略的に説明するに、このシステム10は、図2に示すように、ユーザである登山者(「歩行者」の一例)を、山岳地12の登山道14(「歩行経路」の一例。山道の一例。山岳ルートの一例など)において、登山者の歩行状態が異常である(道に迷った可能性があるか、登山道14から逸脱した可能性があるかなど)を判定し、その結果を登山者に伝えて警告し、最終的に、登山者を、正しい歩行順路に沿って(正しい進行方向に、正しい進路に沿って)案内することを支援し、それにより、遭難を予防する登山道案内機能を有する。
<登山道案内機能>
このシステム10においては、登山道案内機能を実現するために、複数のガイド発信機30が、登山道14に沿って離散的に、かつ、直列に並ぶように設置されている。それらガイド発信機30は、例えば、等間隔(例えば、10m、50m、100m、500m、1kmの間隔)で直列に配列される。これに代えて、複数のガイド発信機30は、登山道14の終点に近づくにつれて減少する可変の間隔で直列に配列されてもよい。
各ガイド発信機30は、登山道14に人工的に設置されたもの、例えば、支柱、標識に装着されてもよいし、また、登山道14に生育している自然物、例えば、自然木、樹木に装着されてもよい。
複数のガイド発信機30からの信号は、登山者が歩行するにつれて順次、その登山者の携帯端末90(「ユーザ端末」の一例)によって近距離無線通信方式で受信される。その携帯端末90は、山岳地12から遠隔の地に設置された管理センタ40によって運営・管理される管理サーバ50と無線で通信することが可能である。
携帯端末90は、登山道案内機能を実現するために、単独で、または、管理サーバ50との協働により、登山中または下山中に、登山者の歩行経路(どの場所を歩くか)および歩行順路(どの向きに歩くか)の双方が正規のものから逸脱しないように、登山者に対して警告(道に迷っている可能性があることを登山者に告知してその登山者の注意を喚起することなど)およびルート誘導を行う。
ここに、「警告」としては、例えば、登山者が、山岳地12において道に迷った可能性があることを告知したり、その登山者に注意を喚起したり、是正行動を促すとか、そのまま歩行し続けると、携帯端末90の電波が、他の携帯端末90には届かない通信圏外に進入してしまうことを通知することなどがある。通信圏外としては、例えば、受信可能な地上基地局300(図2参照)が近くに存在しないエリアとか、登山者の周辺に背の高い木々や隣の山が存在するために、その登山者の携帯端末90の電波が遮断されてしまうエリアがある。
また、「ルート誘導(経路誘導、コース誘導、順路誘導など)」としては、例えば、実際の歩行経路および進路を正規の歩行経路および進路に是正するための位置情報・向き情報を登山者に提供すること、例えば、「道迷い状態にあるから、今のルートを引き返すことが望ましい」旨のメッセージをユーザに視覚的に、聴覚的にまたは触覚的に知らせることがある。
この例においては、道迷い状態にある登山者の携帯端末90は、ガイド発信機30を用いて道迷い状態にあることを検知すると、注意喚起のため、および、今のルートを引き返すことを決断することを促すために、前記メッセージを文字、画像や音声で出力したり、前記メッセージを今回の登山者が確認したことを「確認ボタン」の操作として確認してもよい。この場合、今回の登山者の携帯端末90は、その「確認ボタン」がユーザによってタップされるまで、同じボタンを表示し続けてもよい。
それにもかかわらず、その「確認ボタン」の連続表示時間が所定の制限時間を超えても、その「確認ボタン」がユーザによってタップされない場合には、今回の登山者の携帯端末90が、そのユーザである登山者が緊急事態(例えば、遭難)に陥った可能性があると判定し、そのことを管理サーバ50に送信し、さらに、同じパーティーに属する他の登山者(同行者)のそれぞれの携帯端末90に一斉に送信する。
さらに、各登山者の携帯端末90は、登山中、常時、または、前記警告を登山者に対して発令したときから、それの測位機能(例えば、GPSを利用した測位機能、地上基地局300を利用した測位機能)による位置情報を時間離散的に取得し、遭難時の捜索作業を容易にするために、その位置情報を順次、管理サーバ50に送信する。
その位置情報を受信すると、管理サーバ50は、その位置情報を順次、各登山者の携帯端末90のユーザID/デバイスIDに関連付けてメモリ162(図9参照)に時系列的に保存する。その登山者に遭難が発生すると、その登山者の携帯端末90が管理サーバ50にアクセスし、その管理サーバ50は、その登山者である遭難者の行動履歴をメモリ162から抽出し、他の同行者の携帯端末90に送信する。したがって、管理サーバ50および他の同行者は、遭難者の位置を、少なくとも前記警告がその遭難者に対して行われた時刻から追跡することが可能となる。
遭難者の行動履歴すなわち追跡結果は、例えば、他の同行者や救助隊員による遭難者の捜索作業に利用される。また、遭難者の行動履歴は、管理サーバ50が、後述のドローン200の飛行目標地点を決定する際に利用される。
このシステム10においては、登山道案内機能を実現するために、登山者の携帯端末90は、いずれかのガイド発信機30から識別信号を受信すると、そのいずれかのガイド発信機30を、登山者の通過が確認された基準発信機(スタート発信機、出発地点発信機など)として決定する。
その基準発信機の決定後、携帯端末90は、管理サーバ50からダウンロードした後述のマッピング・データ(図7参照)を参照することにより、複数のガイド発信機30のうち歩行順路(図2参照)において基準発信機の次に位置するものを目標発信機(前方発信機、隣接発信機、目標地点発信機など)として決定する。
携帯端末90は、さらに、基準発信機から識別信号を受信した時刻から所定の制限時間fが経過する前に、目標発信機から識別信号を受信すると、登山者の歩行状態が正常である(道に迷っていない)と判定する一方、前記所定の制限時間fが経過しても目標発信機から識別信号を受信しないと、登山者の歩行状態に異常がある(道に迷っている可能性がある)と判定する。
図3は、図2における複数のガイド発信機30のうち互いに隣接する2つを取り出して拡大して示す斜視図である。それら2つのガイド発信機30は、互いに隣接する2つの地点A,Bにそれぞれ設置されている。図3に示す例においては、地点Aが、登山道14の入口地点(始点、開始点)に位置し、また、地点Zが、登山道14の頂上地点(折り返し地点、終点、終了点)に位置する。
登山中(登山道14を登っているとき)(登山中の歩行順路、上り方向、登り方向において)、地点Bは、地点Aに対し、進行方向前方にあるから、地点Aのガイド発信機30が基準発信機である場合には、地点Bのガイド発信機30が目標発信機となる。
これに対し、下山中(登山道14を下っているとき)(下山中の歩行順路、下り方向、降り方向において)、地点Aは、地点Bに対し、進行方向前方にあるから、地点Bのガイド発信機30が基準発信機である場合には、地点Aのガイド発信機30が目標発信機となる。
さらに、図3に例示するように、地点Aのガイド発信機30と地点Bのガイド発信機30との間に道程d、正確には、最短距離ではなく、登山道14をそれに沿って測定したときの長さが存在する。また、地点Aのガイド発信機30と地点Bのガイド発信機30との間に高度差Δhも存在する。
さらに、図3に例示するように、地点Aのガイド発信機30にとっての受信圏と地点Bのガイド発信機30にとっての受信圏とは、互いにオーバーラップしないように、それぞれのガイド発信機30の受信レンジが設定されているため、1台の携帯端末90が、各瞬間において、2個のガイド発信機30から同時に識別信号を有効に受信することはない。
図6(a)には、このシステム10において、携帯端末90が地点Aのガイド発信機30から信号を受信した時刻から所定の制限時間fが経過する前に、同じ携帯端末90が隣の地点Bのガイド発信機30から信号を受信する正常歩行状態シナリオが例示的にグラフで表されている。
これに対し、図6(b)には、このシステム10において、携帯端末90が地点Aのガイド発信機30から信号を受信した時刻から所定の制限時間fが経過しても、同じ携帯端末90が隣の地点Bのガイド発信機30からは信号を受信しない異常歩行状態シナリオが例示的にグラフで表されている。
図6(b)に示すように、このシステム10においては、所定の制限時間fが経過しても、携帯端末90が隣の地点Bのガイド発信機30から信号を受信しないと、携帯端末90が、登山者の歩行状態(進行方向など)が異常である(例えば、道に迷っている)と判定し、登山者に対して警告を行う。
その警告に登山者が気付かない場合には、その登山者の携帯端末90または管理サーバ50が、他の同行者のそれぞれの携帯端末90に対し、今回の登山者が遭難する可能性があることを一斉に送信する。さらに、前述の遭難者捜索機能を実現するために、管理サーバ50が、遭難者捜索モードを実行する。
図7には、各ガイド発信機30の発信機IDと地図上における各ガイド発信機30の設置位置との間の予め定められた関係と、登山道14の正しい歩行順路に沿って複数のガイド発信機30が並ぶ順序と、前述の制限時間fの長さとを互いに関連付けて表すマッピング・データが概念的にテーブルで表されている。
そのマッピング・データは、もともと、管理サーバ50のメモリ162に保存されており、任意の携帯端末90からアクセスがあると、その携帯端末90に管理サーバ50がマッピング・データを送信し、それにより、その携帯端末90は管理サーバ50からマッピング・データをダウンロードし、自身のメモリ132(図5参照)に保存する。
<制限時間fの設定について>
このシステム10においては、制限時間fは、図7に示すように、互いに隣接する2つの地点より成る地点対ごとに設定される。制限時間fは、通常の運動能力を有する登山者を想定し、互いに隣接する2つの地点間の実際の道程dおよび高度差Δhを踏まえ、その平均的な登山者が2つの地点間を踏破するのに必要な最低時間を下回らないように予め設定される。
図8(a)には、登山道14において互いに隣接する2つの地点A,Bの間で高度が緩やかに変化する例がグラフで表されている。同図(b)には、それら地点A,Bの間で高度が急に変化する例がグラフで表されている。
このシステム10においては、制限時間fが基準時間Sと補正係数kとの積として計算される。図8(c)には、基準時間Sの長さが、2つの地点A,Bの間の道程dに応じて増加することが例示的にグラフで表されている。同図(d)には、補正係数kが、2つの地点A,Bの間の高度差Δhに応じて増加することが例示的にグラフで表されている。
<同行者相互連絡機能>
このシステム10は、上述の登山道案内機能に加え、同じパーティー(チーム、グループなど)に属する複数人の登山者の間でそれぞれの携帯端末90を用いて相互に連絡を取り合って互助を支援する同行者相互連絡機能を有する。この同行者相互連絡機能は、遭難者の安否確認を行う機能としても作用する。
このシステム10においては、同行者相互連絡機能(互助機能)により、複数人が1つのパーティーとして登山するような場合に、一人の登山者が緊急事態に陥ると、それに関する情報を他の登山者と間で共有し、相互に携帯端末90で連絡を取り合って情報を共有することによって遭難を未然に防いだり、直ぐに救助に向かったり、たとえ遭難してもすぐに捜索できるようにする。
具体的には、例えば、複数人が1つのパーティーとして登山するような場合に、そのうちの一人の登山者が緊急事態に陥ったことが判明する(例えば、その登山者の携帯端末90または管理サーバ50がその緊急事態の存在を推測する)と、その登山者の携帯端末90または管理サーバ50が、自動的に、同じパーティーの他の登山者のそれぞれの携帯端末90に一斉に、前記緊急事態に関する情報を無線送信する。
一例においては、同じパーティーに属する複数人の登山者の携帯端末90は、遭難の有無を問わず、または、必要に応じ、自動で相互接続の確立を試行し(例えば、ユーザに気付かれない状態で)、それにもかかわらず、接続が確立しない他の携帯端末90が存在すると、そのことを、管理サーバ50に報告する。その管理サーバ50は、接続が確立しない他の携帯端末90のユーザである登山者が緊急事態に陥った可能性があると判定し、そのことを、接続が確立する他の登山者のそれぞれの携帯端末90に一斉に送信する。
別の例においては、管理サーバ50が定期的に各携帯端末90との接続の確立を試行し、それにもかかわらず、いずれかの携帯端末90との間での接続が確立しない場合に、そのいずれかの携帯端末90を所有すべき登山者が緊急事態に陥った可能性があると判定し、そのことを他の登山者のそれぞれの携帯端末90に一斉に送信する。
ここに、「緊急事態」としては、例えば、前記警告が行われても歩行順路が是正されない場合、ある携帯端末90との接続が確立しない場合などがある。後者の場合としては、例えば、ある登山者が通信圏外に居る場合や、ある登山者の携帯端末90のバッテリーが不足している場合があり、いずれも場合も、万一登山者が遭難すると、その登山者を携帯端末90を頼りに捜索することが不可能となり、捜索が難航するおそれがある場合である。
<遭難者捜索機能>
このシステム10は、上述の登山道案内機能および同行者相互連絡機能に加え、万一登山者が山岳地12において遭難してしまった場合に、その遭難者を捜索する遭難者捜索機能を有する。この遭難者捜索機能は、遭難者の安否確認を行う機能としても作用する。
このシステム10においては、遭難者捜索機能を実現するために、登山者に、登山前に、登山者発信機32が装着される。その登山者発信機32は、装着者である登山者と一体的に移動し、登山者発信機32の位置が、登山者の位置と一致する。
さらに、このシステム10は、遭難者を上空から捜索するために無人小型飛行機すなわちドローン200を備えている。そのドローン200は、自身のコントローラ202を用い、かつ、管理サーバ50からの指示に従って遠隔的に操作される形式としたり、コントローラ202を用いて自律航行を行う形式とすることが可能である。
管理サーバ50は、いずれかの登山者が遭難したおそれがあると判定すると、その登山者が登山している山岳地12の代表空間座標値(例えば、山頂、登山道14の入口などの特定の代表地点の緯度、経度および高度)を、飛行目標地点を表す情報として、ドローン200の通信装置204に送信し、コントローラ202を介してドローン200に対して出動(配備)を指示する。
ドローン200は、コントローラ202と、それに接続された通信装置204とを備えている。その通信装置204は、管理サーバ50との間で無線通信が可能である。この通信装置204は、地上基地局300を利用する通常の携帯電話(移動電話)として機能するものであっても、人工衛星を利用する衛星電話として機能するものであってもよい。
ドローン200は、通信装置204に加えて、携帯端末90用の固定式の地上基地局300に代わる空中移動式(可動式)の空中基地局(以下、「中継基地局」という。)206を搭載している。中継基地局206は、それの通信圏内にある携帯端末90から位置情報を受信し、その位置情報を、その中継基地局206の通信圏内にある地上基地局300に送信する。
ドローン200は、さらに、遭難者の登山者発信機32からの信号を受信可能な受信機210を有する。コントローラ202は、その受信機210が登山者発信機32から受信した電波の強度を時々刻々測定する。コントローラ202は、電波強度測定値の今回値が前回値より増加する向きに、ドローン200を航行させる。
このシステム10においては、遭難した登山者を捜索するために、その遭難者の携帯端末90を頼りにその遭難者本人の捜索を行う携帯端末利用モードと、遭難者の登山者発信機32を頼りにその遭難者本人の捜索を行う発信機利用モードとが存在する。
まず、概略的に説明するに、携帯端末利用モードは、携帯端末90と管理サーバ50との間の接続が確立されることを条件に、携帯端末90の測位機能および通信機能を利用して遭難者を捜索するために実行される。この捜索シナリオにおいては、遭難者の一装備品としての携帯端末90が、遭難者の捜索のために直接的に利用される。
これに対し、発信機利用モードは、遭難者の携帯端末90と管理サーバ50との間での接続が確立されない状態、例えば、その携帯端末90のバッテリが不足している状態やその携帯端末90が通信圏外に位置する状態において、登山者発信機32の場所認証機能および送信機能を利用して遭難者を捜索するために実行される。
具体的には、この発信機利用モードにおいては、ドローン200が出動し、そのドローン200に搭載されている受信機210が遭難者の登山者発信機32から受信する電波の強度が順次測定され、その測定値が時間と共に増加するようにドローン200を飛行ルートが決定される。その結果、遭難者を捜索するという捜索シナリオ、または、遭難者の携帯端末90が正常に作動すること(例えば、バッテリが不足していないこと、携帯端末90が故障していないこと)を条件に、その携帯端末90が、ドローン200に搭載されている中継基地局206を介して、さらには、最寄りの地上基地局300を経由して管理サーバ50に接続される状態を生起するという捜索シナリオが実現される。
前者の捜索シナリオにおいては、遭難者の一装備品としての登山者発信機32が、ドローン200による遭難者の捜索のために直接的に利用される。これに対し、後者の捜索シナリオにおいては、発信機利用モードが、前述の携帯端末利用モードを実行可能にするために実行される。
具体的には、後者の捜索シナリオにおいては、ドローン200が出動し、やがて遭難者に接近し、遭難者の携帯端末90が中継基地局206の通信圏内に入ると、その中継基地局206の中継機能により、遭難者の携帯端末90と地上基地局300との間で接続が確立し、ひいては、遭難者の携帯端末90と管理サーバ50との間で接続が確立する。この場合には、前記携帯端末利用モードが実行され、遭難者は、管理サーバ50と通信することが可能となる。この場合、例えば、遭難者は、自身の携帯端末90を介して、管理センタ40の電話のオペレータと通話することもデータを送信すること(メッセージング)も可能となる。
ドローン200は、さらに、上空から地上を静止画または動画として撮影するカメラ220を有する。そのカメラ220は、地上の画像を表す撮像データを生成し、その撮像データは、通信装置204を介して管理サーバ50に送信される。管理センタ40のオペレータは、カメラ220を介して、山岳地12の地表の様子を遠隔的に監視することができる。これにより、管理センタ40のオペレータは、遭難者を視覚的にかつ遠隔的に捜索することが可能となる。カメラ40の作動状態(オンオフなど)、撮影条件(ズーム率、露出など)および姿勢(アングルなど)は、コントローラ202を介し、管理サーバ50によって遠隔制御される。
ドローン200は、さらに、上空から音声を出力するスピーカ230を有する。そのスピーカ230は、コントローラ202を介し、管理サーバ50によって遠隔制御される。例えば、そのコントローラ202は、管理サーバ50から受信した音声データに基づいてスピーカ230を駆動させ、それにより、音声を生成して出力する。その結果、管理センタ40のオペレータは、スピーカ230を介して、山岳地12に向けて上空から音声を出力することができる。
その音声出力のおかげで、管理センタ40のオペレータは、遭難者が見つかる前においては、遭難者に、現在捜索中であることとドローン200の存在およびその現在位置とを音声で知らせることができ、また、遭難者が見つかった後においては、遭難者の安否の確認や、救出のために遭難者が行うべき行動の指示や救援活動の現状に関する情報提供を行うことができる。
ドローン200は、さらに、上空から地上の標的位置に向けて必要なアイテムを、必要に応じてパラシュートを装備した状態で落下させるかまたは投下するシューター240を有する。そのシューター240は、コントローラ202を介し、管理サーバ50によって遠隔制御される。落下されるアイテムとしては、例えば、救援物資(例えば、遭難者の携帯端末90に使用可能な予備の充電済のバッテリーパック、水や食糧など)や、遭難者付近を局地的に照らして救援活動を容易にするための照明具などがある。
アイテムをシューター240から落下させる際には、遭難者の注意を喚起するために、スピーカ230を用いて音声で救援活動の内容を説明したり、照明具を一緒に投下することが可能である。その照明具のおかげで、遭難者は、投下されたアイテムの着地点を正確に把握でき、そのアイテムを確実に捕捉することが可能となる。
<ガイド発信機および登山者発信機について>
図4には、いずれも図2に示すガイド発信機30および登山者発信機32であって共通の構成を有するものが機能ブロック図で表されている。それらガイド発信機30および登山者発信機32は、共通の構成を有するため、以下、その共通の構成は、ガイド発信機30のみについて代表的に説明する。
図4に示すように、各ガイド発信機30は、固有の信号を発信し、その固有の信号は、固有の発信機IDを表す。各ガイド発信機30が、登山道14のうちのいずれの位置に設置されているのかは既知であるため、発信機IDにその設置位置すなわち空間座標値(x,y,z)が予め割り当てられる。
まず、概念的に説明するに、ガイド発信機30は、固有の発信機IDを識別し得る識別信号を局地的に発信する非接触式または接触(近接)式の通信デバイスである。
次に、作動方式を説明するに、ガイド発信機30は、固有の識別信号を外部からのトリガ信号を要することなく能動的に、局地的に、かつ、供給電力が不足しない限り永続的に発信する。
ガイド発信機30は、一般に、識別信号としてのビーコン信号を発信するビーコン装置、無線標識などの名称でも知られている装置である。このガイド発信機30は、一例においては、原信号を変調することにより、対応する発信機IDを表す識別信号を生成し、その生成された識別信号を、IR信号、Bluetooth(登録商標)信号、NFC(近距離無線通信)信号などとして局地的に発信する。
次に、図4を参照してハードウエア構成を説明するに、ガイド発信機30は、プロセッサ100およびそのプロセッサ100によって実行される複数のアプリケーションを記憶するメモリ102を有するコンピュータ104を主体として構成されている。
このガイド発信機30は、さらに、電源としての交換可能な使い捨て電池106を有している。電池106に代えて、充電可能な電池を採用したり、外部電源としての商用電源または太陽電池を採用することが可能である。
外部電源として太陽電池を採用する場合、昼間に太陽電池を用いて発電された電気エネルギーのうち余剰のものをバッテリに蓄積し、夜間には、そのバッテリから電池エネルギーを取り出してガイド発信機30を作動させてもよい。
このガイド発信機30は、さらに、識別信号を生成して発信する発信部108を有している。その発信部108は、電池106によって作動させられるとともに、コントローラ110によって制御される。そのコントローラ110は、コンピュータ100によって制御される。
ガイド発信機30のソフトウエア構成を説明するに、プロッサ100は、発信機IDが反映されるように、原信号(例えば、搬送信号)を変調するための信号をコントローラ110に対して出力する。そのコントローラ110は、発信部108を制御し、その結果、発信部108は、今回発信すべき識別信号を生成する。その後、その生成された識別信号が発信部108から発信される。
<携帯端末について>
登山者(ユーザ)の携帯端末90は、ユーザによって携帯されるとともに無線通信機能を有するデバイス、例えば、携帯電話機、スマートフォン、ラップトップ型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、PDAなどである。また、携帯端末90は、ユーザの通信端末の一例である。
次に、図5を参照して携帯端末90のハードウエア構成を説明するに、携帯端末90は、プロセッサ130およびそのプロセッサ130によって実行される複数のプログラム(「アプリケーション」ともいう)を記憶するメモリ132を有するコンピュータ134を主体として構成されている。
この携帯端末90は、さらに、情報を表示する表示部(例えば、液晶ディスプレイ)136と、ガイド発信機30および管理サーバ50からの信号を受信する受信部138と、信号を生成してその信号を管理サーバ50に送信する送信部140とを有する。ここに、受信部138は、ガイド発信機30からの識別信号を感知する部分でもある。
この携帯端末90は、さらに、ユーザからデータやコマンドを入力するための入力部150を有する。その入力部150は、例えば、所望の情報(例えば、コマンド、データなど)を携帯端末90に入力するためにユーザによって操作可能な操作部を有する。その操作部としては、ユーザによって操作可能なアイコン(例えば、仮想的なボタン)を表示するタッチスクリーン、ユーザによって操作可能な物理的な操作部(例えば、キーボード、キーパッド、ボタンなど)、音声を感知するマイクなどがあるが、これらに限定されない。
この携帯端末90は、さらに、GPS(衛星測位システム)受信機152を有する。GPS受信機152は、よく知られているように、複数のGPS衛星から複数のGPS信号を受信し、それらGPS信号に基づき、GPS受信機152の地球上における位置(緯度、経度および高度)を三角測量によって測定する。
この携帯端末90は、さらに、自身の加速度を検出する加速度センサ154を内蔵している。その加速度センサ154は、携帯端末90に搭載されているため、携帯端末90と一体的に振動し、その結果、加速度センサ154自体に作用する加速度を、携帯端末90およびそれを携帯しているユーザに作用する加速度と等価なものとして検出する。
ここで、ガイド発信機30に関連付けてユーザの携帯端末90の一機能を説明するに、その携帯端末90は、ガイド発信機30から識別信号を受信している状態で、その携帯端末90のコンピュータに予めインストールされているあるプログラム、すなわち、ガイド発信機処理のための専用アプリケーション(以下、「発信機用アプリケーション」という。)を起動させる(ログイン)と、前記受信した識別信号を復調し、それにより、前記発信機IDを解読する。
さらに、携帯端末90は、ガイド発信機30から識別信号を受信している状態で、前記発信機用アプリケーションを起動させると、前記受信した識別信号(例えば、その識別信号の強度)に基づき、その識別信号を発信したときのガイド発信機30の位置と、その識別信号を受信したときの携帯端末90の位置との間の距離を測定することも行う。
すなわち、携帯端末90は、ガイド発信機30から受信した識別信号に基づき、そのガイド発信機30に固有の発信機IDと、そのときのガイド発信機30との距離との双方を獲得するようになっているのである。
<発信機の受信レンジ>
ガイド発信機30には、みかけ上、2種類の受信エリアが割り当てられる。それらは、受信可能エリアと有効受信エリア(以下、「受信レンジ」または「受信圏」ともいう。)である。
それらエリアは、いずれも、ガイド発信機30の設置位置を中心とする1つの球で概して画定される。受信圏のいくつかの例が、図3に示されている。
ガイド発信機30の受信可能エリアは、最大受信半径(例えば、約50m)を有するのに対し、有効受信エリアは、有効受信半径(例えば、0mから約50mまでの範囲内の任意の値)を有する。最大受信半径は不変値であるのに対し、有効受信半径は、後述のように、携帯端末90によって随時設定可能な可変値である。
受信可能エリアは、ガイド発信機30の電力供給が正常である場合に、ガイド発信機30からの識別信号が到達可能なエリア、すなわち、そのエリア内に存在する限り、携帯端末90がその識別信号を受信可能なエリアを意味する。
これに対し、有効受信エリアは、受信可能エリアの最大受信半径より小さい有効受信半径を有している。最大受信半径は、任意に設定することが不可能であるのに対し、有効受信半径は、携帯端末90においてソフト的に任意に設定することが可能である。
すなわち、最大受信半径は、ハードウエアによって決まる受信限度を意味するのに対し、有効受信半径は、ソフトウエアによって決まる受信限度を意味するということが可能なのである。
前述のように、携帯端末90は、それが受信した識別信号の強度に基づき、ガイド発信機30との距離を測定する。その距離測定値は、有効受信半径を超えることもあれば、超えないこともある。そして、その距離測定値が受信有効半径を超えないときは、携帯端末90が有効受信エリア内に存在するときであるのに対し、その距離測定値が受信有効半径を超えるときは、携帯端末90が受信可能エリア内には存在するが有効受信エリア内には存在しないときである。
本実施形態においては、ガイド発信機30の受信レンジが、例えば、半径が約0m−5mの球状領域であるように設定される。すなわち、携帯端末90内において使用される受信有効半径が約0m−5m内の固定値に設定されるのである。その受信有効半径は、例えば、各ガイド発信機30の受信圏が、登山道14のうち各ガイド発信機30が設置されている部分の道幅全体をカバーするように設定してもよい。
<管理サーバについて>
次に、管理サーバ50のハードウエア構成を説明するに、図9には、管理サーバ50が機能ブロック図で表されている。管理サーバ50は、プロセッサ160およびそのプロセッサ160によって実行される複数のアプリケーションを記憶するメモリ162を有するコンピュータ164を主体として構成されている。
この管理サーバ50は、さらに、情報を表示する表示部(例えば、液晶ディスプレイ)166と、携帯端末90からの信号を受信する受信部168と、信号を生成してその信号を携帯端末90に送信する送信部170と、時計172とを有する。この管理サーバ50は、発信機30からの受信を直接的には行わず、事実上、携帯端末90を介して行うことになる。
<登山道案内システムのソフトウエア構成>
図10には、このシステム10のソフトウエア構成を説明するための複数のプログラムが概念的にフローチャートで表されている。それらプログラムは、各登山者の携帯端末90において実行されるプログラムとしての登山道案内アプリケーション(ステップS101−S122)と、管理サーバ50において実行されるプログラム(ステップS151−S158)とを有する。
各登山者の携帯端末90において、登山道14への登山に先立ち、登山道案内アプリケーションが起動されると、まず、ステップS101において、ユーザの操作により、管理サーバ50へのログイン・リクエストと、今回の登山者であるユーザの個人情報とが携帯端末90に入力される。今回の登山者の個人情報としては、例えば、その登山者のユーザID、ユーザの氏名および住所、他の同行者のそれぞれの携帯端末90の電話番号または電子メールアドレスなどがある。それらログイン・リクエストおよび個人情報は、管理サーバ50に送信され、その後、その管理サーバ50により、ステップS151において、受信される。
次に、ステップS102において、ユーザの操作により、今回の登山道14を識別するための登山道識別情報(例えば、登山道14の名称またはID、その登山道14が存在する山岳地12の名称またはID)が携帯端末90に入力され、その登山道識別情報は、管理サーバ50に送信され、その後、その管理サーバ50により、ステップS151において、受信される。
続いて、ステップS152において、管理サーバ50が、受信した個人情報と登山道識別情報とをメモリ162に登録する。その後、管理サーバ50は、ステップS153において、メモリ162に保存されている複数のマッピング・データ(図7参照)のうち、今回、携帯端末90から受信した登山道識別情報によって表される登山道14に対応するものをメモリ162から読み出して今回の携帯端末90に送信する。
これに応答し、携帯端末90は、ステップS103において、登山道14に対応するマッピング・データを管理サーバ50からダウンロードする。そのダウンロードしたマッピング・データは、登山道14および日付けに関連付けてメモリ132に保存される。
続いて、ステップS104において、携帯端末90が、図11(a)に示す如きページを画面上に表示し、その画面に対し、ユーザが、今回の登山道14に対してこれから行うべき行動が登山であるのか下山であるのかを区別するためのデータを入力する。
ある典型例においては、最初に(例えば、登山道14の始点Aにおいて)、図11(a)に示すように、ユーザにより、「登山」を表すボタンが操作され、それに応答し、携帯端末90において前述の登山道案内モードが、登山であって下山ではないことを条件に発動する。
その後、ユーザが、その登山道14の終点Zに無事に到着し、やがて下山を開始しようとすると、それに先立ち、図11(a)に示すように、ユーザにより、「リセット」を表すボタンが操作され、さらに、「下山」を表すボタンが操作される。それに応答し、携帯端末90において前述の登山道案内モードが、今度は、下山であって登山ではないことを条件に、最初のステップから発動する。
続いて、携帯端末90は、ステップS105において、いずれかのガイド発信機30から識別信号を受信することを試行する。その後、携帯端末90は、ステップS106において、いずれかのガイド発信機30から識別信号を有効に受信したか否かを判定する。識別信号を有効に受信しなかった(有効受信に失敗した)場合には、判定がNOとなり、ステップS105に戻る。これに対し、識別信号を有効に受信した(有効受信に成功した)場合には、ステップS106の判定がYESとなる。
携帯端末90が、前記いずれかのガイド発信機30(複数のガイド発信機30のうち、ユーザの現在位置に最も接近しているもの)から識別信号を有効に受信した(有効受信に成功した)場合には、続いて、ステップS107において、携帯端末90が、画面上に、登山道14を表す地図であって現在位置をカバーするものと、前記受信したいずれかのガイド発信機30の設置位置と、内蔵された前述のGPSを用いて測定された現在位置とをオーバーレイ状態で表示する。
携帯端末90に方位センサも搭載されている場合には、ユーザが、携帯端末90を水平に保持した状態で、携帯端末90の向きを、画面上に表示される地図の方角と携帯端末90の方角とが互いに一致するように調整し、それにより、登山者のこれからの進行方向を画面を用いて視覚的に案内することが可能となる。
その後、携帯端末90は、ステップS108において、今回受信したガイド発信機30を前述の基準発信機として決定する。
続いて、携帯端末90は、ステップS109において、今回は、下山中であるか否かを判定する。下山中ではなく、登山中であれば、その判定がNOとなり、ステップS110において、複数のガイド発信機30のうち、登山道14の登り方向に見た場合に、今回受信したガイド発信機30の直ぐ隣に位置する別のガイド発信機30を前述の目標発信機として決定する。
具体的には、図2に示す例においては、基準発信機が、地点E(始点Aから数えて5番目)に位置するガイド発信機30である場合には、地点F(始点Aから数えて6番目)に位置するガイド発信機30が目標発信機として決定される。
これに対し、今回は、登山中ではなく、下山中であれば、ステップS109の判定がYESとなり、ステップS111において、複数のガイド発信機30のうち、登山道14の下り方向に見た場合に、今回受信したガイド発信機30の直ぐ隣に位置する別のガイド発信機30を前述の目標発信機として決定する。
具体的には、図2に示す例においては、基準発信機が、地点E(始点Aから数えて5番目)に位置するガイド発信機30である場合には、地点D(始点Aから数えて4番目)に位置するガイド発信機30が目標発信機として決定される。
いずれの場合にも、その後、携帯端末90は、ステップS112において、今回の目標発信機から識別信号を受信することを試行する。その後、携帯端末90は、ステップS113において、今回の目標発信機から識別信号を有効に受信したか否かを判定する。識別信号を有効に受信しなかった(有効受信に失敗した)場合には、判定がNOとなり、ステップS115に移行する。
このステップS115においては、携帯端末90が、ステップS112の初回の実行開始時刻からの経過時間が制限時間fを超えていないか否かを判定する。超えていない場合には、その判定がYESとなり、ステップS112に戻る。
これに対し、携帯端末90が、今回の目標発信機から識別信号を有効に受信した(有効受信に成功した)場合には、ステップS113の判定がYESとなる。
続いて、携帯端末90は、ステップS114において、上述のステップS107と同様にして、画面上に、現在位置近傍の地図と、前記受信した目標発信機の設置位置と、測定された現在位置とをオーバーレイ状態で表示する。その後、ステップS108に戻り、今回の目標発信機が、今度は、次回の基準発信機として決定される。
これに対し、ステップS112の実行開始時刻からの経過時間が制限時間fを超えても携帯端末90が目標発信機から識別信号を有効に受信しない場合には、ステップS115の判定がNOとなる。
その後、携帯端末90は、ステップS116において、今回の登山者の歩行状態が異常であると判定する。この異常判定は、例えば、今回の登山者が、今回の基準発信機から今回の目標発信機までの間の区間において、今回の目標発信機に到着できず、道に迷っている可能性がある旨の判定を意味する。
続いて、携帯端末90は、ステップS117において、図11(b)に例示するように、今回の登山者に対して視覚的な警告を行う。一例においては、携帯端末90が、「道に迷った可能性があります。ルートを引き返すことをお勧めします」旨のメッセージと、そのメッセージを今回の登山者が読んだことを確認するために操作される確認ボタンとを画面上に互いに関連付けて表示する。
その後、携帯端末90は、ステップS118において、内蔵された前述のGPSを用いることにより、現在位置を測定する。続いて、携帯端末90は、ステップS119において、その測位結果を表す位置情報をユーザIDおよび現在時刻に関連付けて管理サーバ50に送信する。
これに対し、管理サーバ50は、ステップS154において、今回の携帯端末90から位置情報をユーザIDおよび現在時刻に関連付けて受信し、続いて、ステップS155において、メモリ162に、位置情報をユーザIDおよび現在時刻に関連付けて保存する。その結果、メモリ162には、今回の登山者の行動履歴が、時刻に関連付けて、時系列的に保存され、その情報は、その登山者を追跡する際に有用な情報となる。
携帯端末90は、その後、ステップS120において、図11(b)に例示するように、ユーザによって確認ボタンが操作されたか否かを判定する。確認ボタンが操作されなかった場合には、その判定がNOとなり、携帯端末90は、ステップS121において、ステップS120の初回の実行開始時刻からの経過時間が所定の制限時間gを超えていないか否かを判定する。超えていない場合には、その判定がYESとなり、ステップS117に戻る。やがて前記経過時間が制限時間gを超えるに至ると、ステップS121の判定がNOとなる。
その後、携帯端末90は、ステップS122において、今回の登山者を遭難者と判定し、その遭難者を捜索するための前述の遭難者捜索モードのリクエストを管理サーバ50に送信する。続いて、携帯端末90は、ステップS123において、図11(c)に例示するように、「同行者に連絡中である」旨のメッセージと、「救援を要請中である」旨のメッセージとを画面上に表示する。
これに対し、管理サーバ50は、ステップS156において、今回の携帯端末90から遭難者捜索モードのリクエストを受信し、続いて、ステップS157において、今回の登山者に同行している他の登山者であって管理サーバ50のメモリ162に登録されているもののそれぞれの携帯端末90に、今回の登山者が遭難した可能性があることを知らせるためのメッセージを一斉に送信する。
具体的には、この同行者一斉送信サービスのため、今回の登山者にとっての1人または複数人の同行者(例えば、同じ登山道14を登山するパーティーのメンバ)の各々に関連付けて、管理サーバ50のメモリ162に、個人情報、すなわち、例えば、氏名、住所、年齢、性別、体調データ(例えば、健康データ)や運動能力(例えば、スポーツの経験年数)と、連絡先情報、すなわち、例えば、各同行者の携帯端末90の電話番号、電子メール・アドレスやIPアドレスとが、同行者データベースを構築するように、登録される。
その後、管理サーバ50は、ステップS158において、ドローン200を、今回の登山道14を到着目標地点として出動させる。そのドローン200は、前述のように、今回の登山者に装着されている登山者発信機32から受信する電波を頼りに、登山者の位置を探索する。これにより、前述の遭難者捜索機能を実現する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、心理的にパニック状態にあるかもしれない登山者本人が、道に迷ったか否かの判断、遭難のおそれがあるか否かの判断、遭難を回避するための行動内容の選択、および、本当に遭難したか否かの判断を行うことが不要となる。その結果、本実施形態によれば、登山者が、遭難する前に、道に迷ったか否かの状態を的確に知ることも、遭難のおそれの有無を的確に知ることも、遭難のおそれがある場合に、遭難を回避するための行動を的確に知ることが可能となる。
本実施形態においては、携帯端末90のコンピュータ134のうち、図10におけるステップS105,S106およびS108を実行する部分が、前記基準発信機決定部の一例を構成すると考えることが可能であり、また、携帯端末90のコンピュータ134のうち、同図におけるステップS109−S111を実行する部分が、前記目標発信機決定部の一例を構成すると考えることが可能であり、また、携帯端末90のコンピュータ134のうち、同図におけるステップS115およびS116を実行する部分が、前記歩行状態判定部の一例を構成すると考えることが可能であり、また、携帯端末90のコンピュータ134のうち、同図におけるステップS117を実行する部分が、前記警告部の一例を構成すると考えることが可能であるる。
なお付言するに、本実施形態においては、前記基準発信機決定部として機能する第1特徴部も、前記目標発信機決定部として機能する第2特徴部も、前記歩行状態判定部として機能する第3特徴部も、同じ携帯端末90のコンピュータ134に実装されているが、これに代えて、それら3つの特徴部がすべて管理サーバ50のコンピュータ164に実装される態様で本発明を実施してもよいし、それら3つの特徴部の一部が管理サーバ50のコンピュータ164に実装される態様で本発明を実施してもよい。
さらに付言するに、本実施形態においては、登山者が、登山道14から滑落しないこと(登山者が登山道14から横方向に逸脱しないこと)を前提に、携帯端末90が目標発信機からの信号を制限時間f内に受信できないと、登山者が道に迷っている可能性があると判定する。
これに対し、本発明は、携帯端末90が目標発信機からの信号を制限時間f内に受信できない場合に、携帯端末90の加速度センサ154を用いて携帯端末90の加速度、すなわち、登山者の加速度を測定し、その測定値の絶対値が所定値を超えた場合には、登山者が、基準発信機の近傍において、登山道14から逸脱し、しかも、滑落した可能性があると判定する態様で実施してもよい。ここに、「登山者が登山道14から滑落した可能性」は、前述の「歩行状態が異常であること」の一例である。
[第2の実施形態]
次に、本発明の例示的な第2の実施形態に従う遭難者救援システム10を図面に基づいて詳細に説明するが、上述の第1の実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。遭難者救援システム10は、本発明の一実施形態に従う遭難者救援方法を実施するように設計されている。
前述のように、第1の実施形態においては、図10に示すように、管理サーバ50が、ステップS156において、今回の登山者の携帯端末90(「ユーザ端末」の一例)から遭難者捜索モードのリクエストを受信すると、ステップS157において、今回の登山者に同行している他の登山者であって管理サーバ50のメモリ162に登録されているもののそれぞれの携帯端末90(「同行者端末」の一例)に、今回の登山者が遭難した可能性があることを知らせるためのメッセージを一斉に送信する。各同行者の携帯端末90は、構成上、前記登山者の携帯端末90と共通する。
これに対し、本実施形態においては、管理サーバ50が、メモリ162に登録されている複数人の同行者のすべてに、無条件で、一斉に、前記メッセージ、すなわち、今回の登山者すなわち遭難者の捜索および救援を要請するためのメッセージを送信するのではなく、それら同行者(複数人の候補救援者)を、その同行者を遭難者の所在地に出動させてもその同行者に及ぶ身体的リスクが基準値を超えないものに絞り込み、そのようにして選択された各同行者すなわち各救援者(最終救援者)のみに前記メッセージを送信する。
複数人の候補救援者を、それより少数人の最終的な救援者を絞り込む方法としては種々のものを採用し得る。
図12に示す一例においては、管理サーバ50が、複数人の同行者のそれぞれの携帯端末90から、各同行者の複数種類の個人リスク(その同行者を遭難者の所在地に出動させた場合にその同行者に及ぶ事故リスク)を、各同行者の携帯端末90から受信する。
それら個人リスクとしては、遭難者の所在地(所在地と推定される位置)に到着するまでに歩行しなければならない距離(距離が長いほど、救援時における同行者の事故リスク(例えば、負傷リスク、死亡リスクなど)が高い)を測定するために、各同行者の携帯端末90の前記GPSによって測定された3次元位置(緯度x,軽度y,高度z)であって、各同行者の現在位置を表す地理情報(「同行者情報」の一例)がある。
別の個人リスクとしては、各同行者の所在地におけるローカルな気象条件(「同行者情報」の別の例)を考慮して各同行者に救援を要請することの是非を判断するために、各同行者の携帯端末90の温度センサによって測定された温度(気温が低いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
さらに別の個人リスクとしては、各同行者の所在地におけるローカルな別の気象条件(「同行者情報」のさらに別の例)を考慮して各同行者に救援を要請することの是非を判断するために、各同行者の携帯端末90の照度センサによって測定された照度(外界の明るさが暗いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
さらに別の個人リスクとしては、各同行者の所在地におけるローカルな地理的条件(「同行者情報」のさらに別の例)を考慮して各同行者に救援を要請することの是非を判断するために、各同行者の携帯端末90の前記GPSによって測定された高度(z)(高度が高いほど、気圧が低く、酸素濃度も低いから、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
さらに別の個人リスクとしては、各同行者の体調を考慮して各同行者に救援を要請することの是非を判断するために、各同行者の携帯端末90の体調データ(「同行者情報」のさらに別の例)であってユーザによって入力されたもの(例えば、体調が良い、普通、悪いというような段階的な体調レベルであり、例えば、その体調レベルが低いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
さらに別の個人リスクとしては、各同行者の体調を考慮して各同行者に救援を要請することの是非を判断するために、各同行者の携帯端末90の運動能力データ(「同行者情報」のさらに別の例)であってユーザによって入力されたもの(例えば、スポーツの、当日までの本人の経験年数であり、例えば、経験年数が0に近いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
図12に示す一例においては、管理サーバ50が、さらに、遭難者の所在地の気象特性(「環境情報」の一例)に基づき、各同行者の複数種類の環境リスク(その同行者を遭難者の所在地に出動させた場合にその同行者に及ぶ事故リスク)を、気象サーバ400(「環境サーバ」の一例)から受信する。
環境リスクとしては、遭難者の所在地(遭難者の携帯端末90の前記GPSによって測定される位置として推定される)における天候リスク(天候が悪い(雨天、降雪など)ほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
別の環境リスクとしては、遭難者の所在地における温度リスク(気温が適正範囲から外れる量が多いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
さらに別の環境リスクとしては、遭難者の所在地における風速リスク(風速が高いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
図12に示す一例においては、管理サーバ50が、さらに、遭難者の所在地の地形特性(「環境情報」の別の例)に基づき、各同行者の複数種類の環境リスクを、地形サーバ500(「環境サーバ」の別の例)から受信する。
環境リスクとしては、遭難者の所在地における地形リスク(例えば、勾配が急であるほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
別の環境リスクとしては、遭難者の所在地における地表リスク(例えば、地滑り、雪崩、土石流などの自然災害が山岳地に発生する可能性が高いほど、救援時における同行者の事故リスクが高い)がある。
図12に示す一例においては、管理サーバ50が、各同行者ごとに、同行者の位置(正確には、同行者と遭難者との間の距離D(Distance))と、同行者の所在地における温度(気温)T(Temperature)と、同行者の所在地における照度L(Lightness)と、同行者の所在地における高度H(Height)と、同行者の体調C(Condition)と、同行者の運動能力M(Motor Skill)とから、次式のように、総合個人リスクFを計算する。
F=D・k+T・k+L・k+H・k+C・k+M・k
,k,k,k,k,k:各リスク変数に乗算される重み係数(既定値)
総合個人リスクFの計算値が大きいほど、救援時における同行者の事故リスクが高い。
図12に示す一例においては、管理サーバ50が、遭難者ごとに、その遭難者の所在地における天候リスクMと、温度リスクMと、風速リスクMと、地形リスクSと、地表リスクSとから、次式のように、総合環境リスクGを計算する。
G=M・k+M・k+M・k+S・k10+S・k11
,k,k,k10,k11:各リスク変数に乗算される重み係数(既定値)
総合環境リスクGの計算値が大きいほど、救援時における同行者の事故リスクが高い。
図13には、上述の同行者一斉送信サービスを実現するために複数人の同行者の携帯端末90と、管理サーバ50と、気象サーバ400と、地形サーバ500との間で行われる通信と、各構成要素のプロセッサによって実行されるプログラムとが、それぞれ、概念的なシーケンスで表されている。
図10に示すように、管理サーバ50が、ステップS156において、今回の携帯端末90から遭難者捜索モードのリクエストを受信すると、図13に示すように、ステップS1351において、管理サーバ50が、各同行者(各候補救援者)から個人リスクを要求するためのリクエストを複数人の同行者の複数の携帯端末90のすべてに一斉に送信する。
各同行者の携帯端末90は、ステップS1301において、前記リクエストを受信すると、ステップS1302において、前記GPSにより、各携帯端末90の現在位置を、各同行者の所在地として測定する。
続いて、各同行者の携帯端末90は、ステップS1303において、各同行者の携帯端末90の温度センサにより、各同行者の所在地における温度(気温)Tを検出する。さらに、各同行者の携帯端末90の照度センサにより、各同行者の所在地における照度Lを検出する。さらに、各同行者の携帯端末90の前記GPSにより、各同行者の所在地の高度Hを検出する。
その後、各同行者の携帯端末90は、ステップS1304において、上述の複数の検出値T,L,Hを、各同行者の携帯端末90の体調Cのレベルであってユーザによって入力されたもの(例えば、同行者の疲労度が高いほど、高くなるレベル)および各同行者の携帯端末90の運動能力Mのレベルであってユーザによって入力されたもの(例えば、同行者の運動能力が低いほど、高くなるレベル)と共に、かつ、それらをそれぞれ、個人リスクとして、管理サーバ50に送信する。
これに対し、管理サーバ50は、ステップS1352において、それら個人リスクを各同行者の携帯端末90から受信し、続いて、ステップS1353において、それら受信した個人リスクを、各同行者に関連付けて、メモリ162に保存する。
続いて、管理サーバ50は、ステップS1354において、管理サーバ50が前記登山者である遭難者の携帯端末90から最後に受信した現在位置を、遭難者の所在地と推定してメモリ162から読み出し、その所在地を、救援地点に設定し、メモリ162に登録する。
その後、管理サーバ50は、ステップS1355において、その設定された救援地点と共に、気象サーバ400および地形サーバ500にそれぞれ、複数の環境リスクを要求するためのリクエストを送信する。
気象サーバ400および地形サーバ500のそれぞれは、ステップS1371において、前記リクエストを受信し、続いて、ステップS1372において、気象サーバ400の気象データベースおよび地形サーバ500のデータベースのそれぞれにおいて、前記救援地点をカバーする一定エリアについての環境リスクを検索する。
その後、気象サーバ400および地形サーバ500のそれぞれは、ステップS1373において、その検索された複数の環境リスクを管理サーバ50に送信する。
これに対し、管理サーバ50は、ステップS1357において、受信した複数の環境リスクについて、前述のようにして、前記総合環境リスクGを計算する。
管理サーバ50は、続いて、ステップS1358において、その総合環境リスクGの計算値が、予め設定された上限値(「第2基準値」の一例)以下であるか否か、すなわち、救援者の事故リスクが低いか否かを判定する。前記計算値が前記上限値以下である場合には、判定がYESとなり、ステップS159において、いずれかの同行者による救援を許可するが、前記計算値が前記上限値より高い場合には、ステップS1358の判定がNOとなり、例えば、ステップS1351に戻り、同じ救援地点について、環境リスクが改善するのを待つか、または、別の救援地点についての救援の是非を判定する。
管理サーバ50は、ステップS1359の実行後、ステップS1360において、各候補救援者(各同行者)ごとに、前記受信した複数の個人リスクから、前記総合個人リスクFを計算する。その後、管理サーバ50は、ステップS1361において、複数の候補救援者のうち、計算された総合個人リスクFが、予め設定された基準点(「第1基準値」の一例)以下であるものを、それぞれ、最終的な救援者として選択する。
続いて、管理サーバ50は、ステップS1362において、選択された各救援者の携帯端末90に、前記遭難者の捜索および救援を要請するためのメッセージを、前記遭難者の氏名、推定所在地、身体的特徴および服装上の特徴と共に送信する。
これに対し、各救援者の携帯端末90は、ステップS1306において、前記受信したメッセージを画面上に表示し(または、音声で出力し)、さらに、画面上に確認ボタンを表示する。その後、各救援者の携帯端末90は、前記確認ボタンが、その携帯端末90のユーザすなわち救援者によって操作されることを条件に、ステップS1307において、該当する救援者が、前記確認ボタンを操作し、それにより、救援要請を受諾したという意思を管理サーバ50に送信する。
これに対し、管理サーバ50は、ステップS1363において、いずれかの救援者の携帯端末90から、前記確認ボタンを操作した旨の情報を受信し、救援要請を受諾した救援者を特定し、メモリ162に登録する。
しかし、管理サーバ50は、制限時間が経過しても、いずれの救援者の携帯端末90からも、前記確認ボタンが操作された旨の情報が受信できないと、ステップS1364において、前記基準点を、現在値から所定量だけ減少するように更新し、その後、ステップS1361に戻る。これにより、このステップS1361の次回の実行により、救援要請を打診する複数人の救援者の範囲が拡大され、それにより、救援要請を受諾する救援者が発見される確率が上昇する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、説明の便宜上、登山者の携帯端末90のうち、図10におけるステップS105−S117およびS120−S122を実行する部分が、「遭難者判定部」の一例を構成すると考えることが可能である。その「遭難者判定部」の例は、携帯端末90の外部デバイスとしての複数のガイド発信機30を用いて遭難者判定を行うものであるが、その「遭難者判定部」の別の例は、前述の加速度センサ154(登山者の挙動を測定するモーション・センサの一例)を用いて前述のようにして遭難者判定を行うものである。
さらに、本実施形態においては、説明の便宜上、管理サーバ50のうち、図13におけるステップS1352およびS1360を実行する部分が、「個人リスク計算部」の一例を構成し、また、管理サーバ50のうち、同図におけるステップS1354−S1357を実行する部分が、「環境リスク計算部」の一例を構成し、また、管理サーバ50のうち、同図におけるステップS1359を実行する部分が、「救援許可部」の一例を構成し、また、管理サーバ50のうち、同図におけるステップS1361およびS1364を実行する部分が、「救援者選択部」の一例を構成し、また、管理サーバ50のうち、同図におけるステップS1362を実行する部分が、「救援要請部」の一例を構成していると考えることが可能である。
[第3の実施形態]
次に、本発明の例示的な第3の実施形態に従う登山道案内システム10を図面に基づいて詳細に説明するが、前述の第1の実施形態と共通する要素については、同一の名称または符号を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。システム10は、本発明の一実施形態に従う歩行者案内方法を実施するように設計されている。
前述のように、第1の実施形態においては、図2に示すように、登山道14に沿って複数のガイド発信機30が、出発地点(始点)から目標地点(終点)まで、場所の如何を問わず、設置されている。そのうえで、登山者が、あるガイド発信機30から次のガイド発信機30まで歩行するのに必要な時間が制限時間を超えたことをもって、その登山者が道に迷った可能性があると判定される。
これに対し、一般に、登山者が、登山道において道に迷う可能性の原因は、登山道14のうちの一本道の部分ではなく分岐点がある部分である。同じ登山道14の全体にくまなく発信機30をガイド発信機として設置するのではなく、分岐点のみ(または、複数の分岐点のうち、統計的または経験的に見て、登山者が進路に迷う可能性が高い分岐点のみ)に発信機30を分岐点発信機として設置した方が、設置される発信機30の総数が少なくて済み、コスト的にも工数的にも有利である。
この事実に鑑み、本実施形態においては、図14に例示するように、登山道14のうち、複数の分岐点の部分のみに、分岐点発信機30が設置される。
さらに、本実施形態においては、登山者の携帯端末90がいずれかの分岐点発信機30からの受信を開始すると、それに応答して、図15に例示するように、画面上に、登山道14のうち、今回の分岐点の近傍のエリアのみを表す地図画像が、登山者の現在位置を表すマークおよび正しい進路を表すマークならびに分岐点名(加えて、登山者に有用な登山情報など)と共に表示されるという動作が開始される。
その後、携帯端末90が、同じ分岐点発信機30からの信号を受信しなくなると、それまで表示されていた地図画像が画面から消失する。
さらに、本実施形態においては、図16に例示するように、管理サーバ50のメモリ162に、目的地別に、すなわち、複数本の登山道14のそれぞれについて(例えば、山岳地別に)、各登山道14の全体についての地図データを表す地図データベースが構築される。ただし、本実施形態においては、その地図データベースが、説明の便宜上、登山者が登山道14を頂上に向かって登山するときに限り有効であるように構築されている。
よって、いずれかの目的地が特定されると、1つの地図データが特定される。
各地図データは、複数の部分地図データの集まりとして構成され、各地図データにおいては、各部分地図データと、その部分地図データに含まれる1つの分岐点を表す分岐点IDとが、互いに関連付けられる。
図15に例示するように、各部分地図データは、該当する分岐点および登山道14のうちその分岐点において交わる少なくとも3本の経路と、登山者によって指定された目的地との関係において決まる正しい進路をその位置に関連付けて表すマークとを含むように構成される。
管理サーバ50のメモリ162には、さらに、図示しないが、各分岐点発信機30が発信機する識別信号によって表される発信機IDと、各分岐点発信機30が設置される分岐点を表す分岐点IDとの間に予め定められた関係も記憶されている。
よって、携帯端末90が、いずれかの分岐点発信機30からの信号を受信すると、1つの発信機IDが特定され、さらに、1つの分岐点IDが特定され、ひいては、1つの部分地図データが特定される。
図17には、上述の分岐点案内サービスを実現するために複数の分岐点発信機30と、登山者の携帯端末90と、管理サーバ50との間で行われる通信と、各構成要素のプロセッサによって実行されるプログラムとが、それぞれ、概念的なシーケンスで表されている。携帯端末90には、該当するプログラムとして、登山者案内アプリケーションがメモリ132にインストールされている。
図18(a)には、システム10の作動中、登山者がある分岐点を歩行して通過する様子の一例が斜視図で示されている。同図(b)には、同図(a)の歩行例において携帯端末90がいずれかの分岐点発信機30を受信する状態の時間的変化がタイムチャートで表されている。同図(c)には、同図(a)の歩行例において登山者の携帯端末90の画面上における表示状態の時間的変化がタイムチャートで表されている。
図17に示すように、携帯端末90において前記登山者案内アプリケーションが起動すると、登山者は、ステップS1701において、自身の携帯端末90に、目的地を入力する。続いて、携帯端末90は、ステップS1702において、その入力された目的地に該当する地図データを要求するためのリクエストをその目的地と共に管理サーバ50に送信する。
これに対し、管理サーバ50は、ステップS1731において、前記リクエストを受信し、続いて、管理サーバ50は、ステップS1732において、前記地図データベースにおいて、携帯端末90から受信した目的地をキーにして、該当する地図データを検索する。その後、管理サーバ50は、ステップS1733において、その検索された今回の地図データ(複数の部分地図データの集まり)を登山者の携帯端末90に送信する。
これに対し、登山者の携帯端末90は、ステップS1703において、今回の地図データを管理サーバ50から受信し、その地図データを携帯端末90のメモリ132に、今回の目的地に関連付けて保存する。
続いて、登山者の携帯端末90は、ステップS1704において、いずれかの分岐点発信機30からの信号の受信を試行する。その後、登山者の携帯端末90は、ステップS1705において、携帯端末90がいずれかの分岐点発信機30から信号を有効に受信したか否か、すなわち、携帯端末90が、いずれかの分岐点発信機30の受信圏(有効受信エリア)内に存在するか否かを判定する。有効に受信していない場合には、判定がNOとなり、ステップS1704に戻るが、有効に受信し始めた場合には、判定はYESに転ずる。
図18(b)の例において時刻t1で示すタイミングで、ステップS1705の判定がYESとなると、登山者の携帯端末90は、ステップS1706において、前記受信した信号から、今回の発信機IDを取得し、続いて、ステップS1707において、その取得した発信機IDを、前記関係に従い、分岐点IDに変換する。
その後、登山者の携帯端末90は、ステップS1708において、携帯端末90のメモリ132に保存されている複数の部分地図データのうち、今回の分岐点IDに対応するものを選択し、今回の部分地図データをメモリ132から読み出す。続いて、登山者の携帯端末90は、ステップS1709において、その読み出した部分地図データを、図18(c)の例において時刻t3で示すタイミングで、図15に例示するように、画面上に表示することを開始する。
続いて、登山者の携帯端末90は、ステップS1710において、いずれかの分岐点発信機30からの信号の受信を試行する。その後、登山者の携帯端末90は、ステップS1711において、携帯端末90がいずれかの分岐点発信機30から信号を有効に受信したか否か、すなわち、携帯端末90が、いずれかの分岐点発信機30の受信圏(有効受信エリア)内に存在するか否かを判定する。
登山者の携帯端末90がいずれかの分岐点発信機30から信号を有効に受信している場合には、ステップS1711の判定がYESとなり、続いて、ステップS1712において、その受信した信号から取得された発信機IDが、上述のステップS1706の前回の実行時に取得された発信機IDと一致するか否か、すなわち、携帯端末90が同じ分岐点発信機30から信号を有効に受信し続けているか否かを判定する。
このステップS1712の判定がYESであると、ステップS1709に戻り、今回の部分地図データの表示が継続されるが、そのステップS1712の判定がNOであると、ステップS1706に移行し、別の分岐点について、上述と同様にして、部分地図データの表示が開始される。
これに対し、図18(b)の例において時刻t2で示すタイミングで、登山者の携帯端末90がいずれかの分岐点発信機30から信号を有効に受信する有効受信状態から、いずれかの分岐点発信機30からも信号を有効に受信しない非有効受信状態に遷移すると、ステップS1711の判定がNOとなる。
その後、登山者の携帯端末90は、図18(c)の例において時刻t4で示すタイミングで、ステップS1713において、今回の部分地図データの表示を終了する。その後、ステップS1704に移行する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、説明の便宜上、登山者の携帯端末90のうち、図17におけるステップS1704−S1707を実行する部分が、「分岐点位置特定部」の一例を構成し、また、登山者の携帯端末90のうち、同図におけるステップS1701−S1703を実行する部分が、「地図データ受信部」の一例を構成し、また、登山者の携帯端末90のうち、同図におけるステップS1708−S1713を実行する部分が、「部分地図データ表示部」の一例を構成していると考えることが可能である。
なお付言するに、以上説明したいくつかの実施形態は、本発明を、登山道14における登山者の道案内という用途に適用したものであるが、他の用途に適用することが可能である。
例えば、本発明を、他の種類の山道における歩行者の道案内、林道における歩行者の道案内、施設(例えば、工場、美術館、博物館、公共施設など)内における見学者の見学順路の案内または行動監視(入室禁止区域、危険区域への進入の有無など)、複数の商品が陳列されている店舗内における顧客の道案内、通学路における生徒の行動監視(正規の通学路からの逸脱の有無など)、散歩道における歩行者の道案内、サイクリングコースにおける自転車の道案内などの用途に適用してもよい。
さらに付言するに、以上説明したいくつかの実施形態において、携帯端末90において実行されていた処理の全部または一部をその代わりに管理サーバ50において実行してもよいし、逆に、管理サーバ50において実行されていた処理の全部または一部をその代わりに携帯端末90において実行してもよい。実行されるべき処理がいずれのデバイスで実行されるのかは、そのときの事情、例えば、取り扱われるデータの量や種類、各デバイスの処理速度および記憶容量などによって決まるのが通常であるからである。
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

Claims (9)

  1. 歩行中に遭難した可能性のある歩行者を救援する遭難者救援システムであって、
    前記歩行者の通信端末であるユーザ端末と、
    前記歩行者にとっての複数人の同行者がそれぞれ使用する通信端末である複数の同行者端末と、
    前記ユーザ端末および前記複数の同行者端末と通信可能な管理サーバと、
    その管理サーバと通信可能な環境サーバであって、前記管理サーバによって指定された地理的エリア内の環境を表す環境情報を前記管理サーバに送信するものと
    を含み、
    前記ユーザ端末は、
    当該ユーザ端末に搭載されたセンサによる測定結果および/または当該ユーザ端末の外部デバイスからの受信結果に基づき、前記歩行者が遭難者である可能性があるか否かを判定する遭難者判定部を含み、
    前記管理サーバは、
    前記歩行者が遭難者である可能性があると判定されると、各同行者端末から各同行者に関する同行者情報を受信し、その受信した同行者情報に基づき、各同行者ごとに、前記遭難者を救援するために各同行者を前記遭難者の所在地に出動させたときの個人リスクを計算する個人リスク計算部と、
    前記歩行者が遭難者である可能性があると判定されると、前記環境サーバから前記環境情報を受信し、その受信した環境情報に基づき、いずれかの同行者を前記遭難者の所在地に出動させたときの環境リスクを計算する環境リスク計算部と、
    前記複数人の同行者のうち、前記計算された個人リスクが第1基準値を超えないものを、救援者として選択する救援者選択部と、
    前記計算された環境リスクが第2基準値を超えない場合に、いずれかの同行者を前記遭難者の所在地に出動させることを許可する救援許可部と、
    いずれかの同行者を前記遭難者の所在地に出動させることが許可された場合に、前記選択された救援者の前記同行者端末に、前記遭難者の所在地に関する情報と、その遭難者の救援を要請するためのメッセージとを送信する救援要請部と
    を含む遭難者救援システム。
  2. 前記同行者情報は、対応する同行者の所在地、その所在地における温度、照度および高度、ならびに、対応する同行者の体調および運動能力のうちの少なくとも一つを含む請求項1に記載の遭難者救援システム。
  3. 前記環境サーバは、前記指定された地理的エリア内の気象条件を表す気象情報を前記管理サーバに送信する気象サーバと、前記指定された地理的エリア内の地形を表す地形情報を前記管理サーバに送信する地形サーバとのうちの少なくとも一方を含む請求項1または2に記載の遭難者救援システム。
  4. 前記気象情報は、前記指定された地理的エリア内の天候、温度および風速のうちの少なくとも一つを含む請求項3に記載の遭難者救援システム。
  5. 前記地形情報は、前記指定された地理的エリアの地形条件および地表条件のうちの少なくとも一つを含む請求項3に記載の遭難者救援システム。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載のユーザ端末としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  7. 請求項1ないし5のいずれかに記載の同行者端末としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  8. 請求項1ないし5のいずれかに記載の管理サーバとしてコンピュータを機能させるためのプログラム。
  9. 請求項6ないし8のいずれかに記載のプログラムをコンピュータ読み取り可能に記録した記録媒体。
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