JP3740476B2 - 遭難者の位置特定・捜索支援システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、登山者の山岳遭難、雪崩遭難、山菜,きのこ採取者が山で迷うなどの遭難において、遭難者を早期に発見し、早期の救助と救助活動の安全確保に寄与するための、遭難者の位置特定・捜索支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、登山者の山岳遭難、雪崩遭難、山菜,きのこ採取者が山で迷うなどの遭難において、遭難者の発見は、基本的に地上またはヘリコプタからの救助員の目視に依存している。また、ヘリコプタから遭難位置の方向までの絞り込みは、相応の精度で可能な技術が確立されつつあるが、山岳地等では遭難現場の高度が高い場合が多く、このような場合、方向だけでは位置の特定精度が極めて低い。遭難現場の位置がほぼ特定できた場合でも、現場周辺の地形(岩場、登山道からの距離など)は、土地感に優れた案内人や、二次元の平面地図に頼っているのが現状である。そして上記の捜索活動はいずれも天候が良い場合にはできるが、視界の悪い風雨時や風雪時にはできない。
【0003】
山岳遭難などの救助における最大のポイントは、遭難者の早期発見である。近年、中高年登山者の増加などに伴い遭難件数も増加傾向にある。その中において、最近携帯電話による遭難者からの通報によって救助されるケースが頻繁に見られるようになったこともあり、電源を入れた状態の携帯電話から発せられる電波をヘリコプタなどの小型航空機に特殊なアンテナを装備して、キャッチし、遭難場所をいち早く発見する研究が行われている。
また、電波ビーコンとしては、冬期登山者用に「やまたんシステム」や「雪崩ビーコン」等が遭難者の救助に活用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、遭難者の早期発見の実現に寄与すべく、上記の研究からさらに進めて、地図上の遭難者の位置を特定し、さらに周辺の三次元地図情報と組み合わせて遭難場所周辺の地形などいち早く救助隊などに情報提供し、早期の救助と救助活動の安全確保に役立てるための遭難者の位置特定・捜索支援システムを提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の基本となる遭難者の位置特定・捜索支援システムの1つは、ヘリコプタなどの小型航空機に搭載され、遭難者の携帯電話,無線通信機,電波ビーコンなどのいずれかから発せられる電波を受信し、その遭難者の方位角、俯角/仰角を得る受信装置と、同じく小型航空機に搭載され、GPSによる自機位置データと前記遭難者の方位角、俯角/仰角を地上局に送信するデータ送信装置とから成るものである。
【0006】
本発明の基本となる遭難者の位置特定・捜索支援システムの他の1つは、ヘリコプタの航空機から送信された自機位置データと遭難者の方位角、俯角/仰角から位置特定手段により遭難者の正確な緯度,経度,高度データを得る地上局のデータ処理装置と、データ処理装置にて得た遭難者の緯度,経度,高度データを三次元地図上に表示させると共に小型航空機に返信し機上のGPS−MAPに表示させる表示・送信装置とから成るものである。
【0007】
本発明の実際的な遭難者の位置特定・捜索支援システムは、ヘリコプタなどの小型航空機に搭載され、遭難者の携帯電話,無線通信機,電波ビーコンなどのいずれかから発せられる電波を受信し、その遭難者の方位角、俯角/仰角を得る受信装置と、同じく小型航空機に搭載され、GPSによる自機位置データと前記遭難者の方位角、俯角/仰角を地上局に送信するデータ送信装置と、送信された自機位置データと遭難者の方位角、俯角/仰角から位置特定手段により遭難者の正確な緯度,経度,高度データを得る地上局のデータ処理装置と、データ処理装置にて得た遭難者の緯度,経度,高度データを三次元地図上に表示させると共に小型航空機に返信し機上のGPS−MAPに表示させる表示・送信装置とから成るものである。
【0008】
上記0006又は0007に記載の本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムにおいて、位置特定手段は、本件特許出願人が保有する特許第2695393号「位置特定方法および装置」の技術の一部を利用するもので、その内容は予め作成されている地表面の起伏についての高度情報を含む三次元地勢データから遭難者が位置する地表面を求め、地表面と自機位置からの遭難者の方向に延びる直線との交点位置として、遭難者の正確な位置、即ち遭難者の緯度,経度,高度データを特定することである。
【0009】
また、上記0006又は0007若しくは0008に記載の本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムにおいて、遭難者の緯度,経度,高度データを表示する三次元地図は、地図上に登山道,岩場,山小屋,難所,ヘリコプタ着陸可能場所,距離・所要時間,障害物,過去の遭難データなどが予め入力されたものであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムの実際的な実施形態を、山岳遭難の場合について説明する。登山者は一般に携帯電話,無線通信機,電波ビーコンなどのいずれかを所持しており、万が一の遭難時には救助の発信がなされる。図1に示される山岳での遭難者1が救助の発信をしなくとも携帯電話は電源を入れておくと10数秒毎に電波を発信する。この電波信号を捜索飛行中の小型航空機、例えば捜索救助用ヘリコプタ2に搭載されている受信装置3にて受信し、ヘリコプタ2からの遭難者1の方位角、俯角/仰角を探知する。受信装置3は、本例の場合、機体に固定した受信用アンテナ3aと、機体の移動に伴う電波受信位置の変更により遭難者1の携帯電話の方位角、俯角/仰角を算出する方向探知装置3bと、探知した方位角、俯角/仰角を表示する位置表示器3cとより成る。この受信装置3により探知した遭難者1の方位角、俯角/仰角は、GPSによるヘリコプタ2の自機位置データと共に、自機に搭載したデータ送信装置4により地上局5に送信する。地上局5におけるデータ処理装置6では送信された遭難者1の方位角、俯角/仰角とヘリコプタ2の自機位置データから位置特定手段により、即ち予め作成されている地表面の起伏についての高度情報を含む三次元地勢データから図2に示すように遭難者1が位置する地表面Gを求め、地表面Gと自機位置からの遭難者1の方向に延びる直線Lとの交点位置Cとして、遭難者1の正確な位置である緯度,経度,高度データを特定する。こうして特定した遭難者の位置データは地上局5における表示・送信装置7により図3に示す地上局5の三次元地図上にシンボルマークで表示すると共に正確な遭難者の位置データをヘリコプタ2に返信し、機上のGPS−MAP上に表示させる。
尚、地上局5の三次元地図には、図3に示すように予め国土地理院などのデータに基づいて登山道,山小屋,岩場,難所,ヘリコプタ着陸可能場所,距離・所要時間,索道・送電線・鉄塔などの障害物,過去の遭難データなど捜索・救難活動に有用な情報を入力しておくことが重要である。
【0011】
上記の処理動作をする遭難者の位置特定・捜索支援システムにより天候不順で視界が悪くとも遭難者の正確な遭難位置が特定され、遭難現場周辺の地形情報などが三次元映像として、図1の遭難対策本部8や現地対策本部、地方救急センターなどにリアルタイムに提供することができる。従って、遭難対策本部8では三次元地図に基づき、捜索方法の検討・指揮を行うことができる。即ち、ヘリコプタ飛行状況を確認、管理することにより、ヘリコプタ2がどのルートで飛行して調査を行うか、次にどこに向かうか等、ヘリコプタ2の動きに関して指示を行い、捜索ルートの検討ができる。また、遭難者1までの距離はいくらか、遭難者1までのルートはどのルートか、救助は何人で行うかなど救助方法の検討・指示ができる。さらに二次災害などの危険要因を排除して安全な救助活動を実現することが可能となる。そして遭難対策本部8では、実行に着手した捜索範囲、捜索状況などの記録をデータとして保存することができ、これの有効活用も可能となる。
【0012】
以上本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムの処理動作とその結果に基く遭難対策本部での活動の流れを図4に示す。この図4に示す流れはリアルタイムに実施されるので、迅速で安全確実な救助活動の実現に寄与できることとなる。
【0013】
【発明の効果】
以上の説明で判るように本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムによれば、天候不順で視界が悪くとも地図上の遭難者の正確な遭難位置を特定できる。また、遭難現場周辺の地形情報を三次元映像として遭難対策本部などにリアルタイムに提供することができて、早期救助の実現に寄与できると共に二次災害などの危険を避けて救助活動の安全確保に寄与できる。さらに、捜索救助用ヘリコプタとデータ通信による正確な通信が可能となり、音声による誤認識などによるトラブルを回避できる。また、本システムの処理動作の結果による捜索範囲、捜索状況などの記録をデータとして保存することができるので、これの有効活用も可能となる。そして本システムは、ヘリコプタに搭載され遭難者の方位角、俯角/仰角を受信する受信装置と必要な情報を送信するためのデータ送信装置及び地上のデータ処理装置と表示・送信装置があれば実現するので、ヘリコプタ1機と遭難対策本部だけでも活用でき、非常に小規模なシステム構成で大きい効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムの構成を示す簡略化した斜視図である。
【図2】遭難者の方位角、俯角/仰角とヘリコプタの自機位置データから位置特定手段により遭難者の正確な位置である緯度,経度,高度データを特定する要領を示す側面図である。
【図3】本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムにおいて、遭難者の正確な位置を表示した三次元地図の例を示す図である。
【図4】本発明による遭難者の位置特定・捜索支援システムの処理動作とその結果に基づく遭難対策本部での活動の流れを示すブロック図である。
【符号の説明】
1 遭難者
2 捜索救助用ヘリコプタ
3 受信装置
3a 受信用アンテナ
3b 方向探知装置
3c 位置表示器
4 データ送信装置
5 地上局
6 データ処理装置
7 表示・送信装置
8 遭難対策本部
Claims (5)
- ヘリコプタなどの小型航空機に搭載され、遭難者の携帯電話,無線通信機,電波ビーコンなどのいずれかから発せられる電波を受信し、その遭難者の方位角、俯角/仰角を得る受信装置と、同じく小型航空機に搭載され、GPSによる自機位置データと前記遭難者の方位角、俯角/仰角を地上局に送信するデータ送信装置とから成る遭難者の位置特定・捜索支援システム。
- ヘリコプタなどの小型航空機から送信された自機位置データと遭難者の方位角、俯角/仰角から位置特定手段により遭難者の正確な緯度,経度,高度データを得る地上局のデータ処理装置と、データ処理装置にて得た遭難者の緯度,経度,高度データを三次元地図上に表示させると共に小型航空機に返信し機上のGPS−MAPに表示させる表示・送信装置とから成る遭難者の位置特定・捜索支援システム。
- ヘリコプタなどの小型航空機に搭載され、遭難者の携帯電話,無線通信機,電波ビーコンなどのいずれかから発せられる電波を受信し、その遭難者の方位角、俯角/仰角を得る受信装置と、同じく小型航空機に搭載され、GPSによる自機位置データと前記遭難者の方位角、俯角/仰角を地上局に送信するデータ送信装置と、送信された自機位置データと遭難者の方位角、俯角/仰角から位置特定手段により遭難者の正確な緯度,経度,高度データを得る地上局のデータ処理装置と、データ処理装置にて得た遭難者の緯度,経度,高度データを三次元地図上に表示させると共に小型航空機に返信し機上のGPS−MAPに表示させる表示・送信装置とから成る遭難者の位置特定・捜索支援システム。
- 位置特定手段が、予め作成されている地表面の起伏についての高度情報を含む三次元地勢データから遭難者が位置する地表面を求め、地表面と自機位置からの遭難者の方向に延びる交点位置として、遭難者の正確な緯度,経度,高度データを特定するものであることを特徴とする請求項2又は3記載の遭難者の位置特定・捜索支援システム。
- 遭難者の緯度,経度,高度データが表示される三次元地図が、地図上に登山道,岩場,山小屋,難所,ヘリコプタ着陸可能場所,距離・所要時間,障害物,過去の遭難データなどが予め入力されたものであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の遭難者の位置特定・捜索支援システム。
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