以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下、効果に関する記載は、本発明の実施の形態の効果の一側面であり、ここに記載するものに限定されない。また、以下で説明するフローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同である。
本発明において「企業」とは、営利目的のために事業活動を行う経済主体だけでなく、個人事業主やNPO法人、その他公企業等も含む概念であり、特別な主体に限定されるものではない。なお、本発明において、「貸借対照表」はB/Sと、「損益計算書」はP/Lとそれぞれ記載する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態では、コンピュータ装置において実行されるシミュレーションプログラムについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、コンピュータ装置の構成を示すブロック図である。コンピュータ装置1は、制御部11、RAM(Random Access Memory)12、ストレージ部13、サウンド処理部14、グラフィックス処理部15、DVD/CD−ROMドライブ16、通信インタフェース17、及びインタフェース部18を少なくとも備え、それぞれ内部バスにより接続されている。
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)から構成される。制御部11は、ストレージ部13や記録媒体24に格納されたプログラムを実行し、コンピュータ装置1の制御を行う。また、制御部11は時間を計時する内部タイマを備えている。
RAM12は、制御部11のワークエリアである。ストレージ部13は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。
DVD/CD−ROMドライブ16は、DVD−ROMやCD−ROMなどのプログラムが格納された記録媒体24を装着することが可能である。記録媒体24には、ゲームの実行やコンテンツの再生を行うためのプログラム及びデータが記憶されている。DVD/CD−ROMドライブ16により、コンテンツの進行に必要なプログラム及びデータが記録媒体24から読み出され、RAM12にロードされる。
制御部11は、コンテンツの進行に必要なプログラム及びデータをRAM12から読み出して処理を行う。制御部11は、RAM12にロードされたプログラム及びデータを処理することで、サウンド出力の指示をサウンド処理部14に出力し、描画命令をグラフィックス処理部15に出力する。
サウンド処理部14は、スピーカであるサウンド出力装置21に接続されている。制御部11がサウンド出力の指示をサウンド処理部14に出力すると、サウンド処理部14はサウンド出力装置21にサウンド信号を出力する。
グラフィックス処理部15は表示装置22に接続されている。表示装置22は表示画面23を有している。制御部11が描画命令をグラフィックス処理部15に出力すると、グラフィックス処理部15は、フレームメモリ(フレームバッファ)19に画像を展開し、表示画面23上に画像を表示するためのビデオ信号を出力する。グラフィックス処理部15は、フレーム単位で1枚の画像の描画を実行する。画像の1フレーム時間は、例えば30分の1秒である。
インタフェース部18には、例えば、コントローラやキーボード等の入力部20が接続される。ユーザによる入力部20に対する入力情報は、RAM12に格納され、制御部11は入力情報をもとに各種の演算処理を実行する。また、インタフェース部18には、メモリカード等の外部記憶媒体を接続することも可能である。インタフェース部18は、制御部11からの指示にしたがって、RAM12に記憶されているコンテンツの進行状況に関するデータを外部記憶媒体に記憶させる処理や、外部記憶媒体に記憶されているデータを読み出してRAM12に転送する処理を行う。
通信インタフェース17は無線又は有線により通信ネットワーク2に接続されており、外部のコンピュータ装置と必要に応じて操作指示情報やコンテンツの進行状況に関する情報の送受信を行う。
次に、プログラムの機能について説明する。図2は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、コンピュータ装置の構成を示すブロック図である。コンピュータ装置1は、決算書情報読込部1001、決算書情報記憶部1002、実績売上債権推移表出力部1003、資金繰表出力部1004、予想売上債権推移表出力部1005、及び予想決算書情報出力部1006を少なくとも備える。
決算書情報読込部1001は、決算書の情報を読み込む機能を有する。読込みとは、電子ファイルを読み込むものであっても、OCR等を使用してスキャンするものであってもよい。また、入力装置を使用して入力された情報を読み込むものであってもよい。決算書情報記憶部1002は、決算書情報読込部1001により読み込まれた決算書に関する情報を記憶する機能を有する。実績売上債権推移表出力部1003は、実績の売上債権の推移表を出力する機能を有する。資金繰表出力部1004は、資金繰り表を出力する機能を有する。予想売上債権推移表出力部1005は、予想の売上債権の推移表を出力する機能を有する。予想決算書情報出力部1006は、予想の決算書情報を出力する機能を有する。
実績売上債権推移表出力部1003は、実績売掛金回収率算出部1101、実績手形回収率算出部1102、割引譲渡回収率算出部1103、現金売上割合設定部1104、売上推移情報設定部1105、単位期初売掛残高設定部1106、単位期初手形残高設定部1107、単位期初割引譲渡手形残高設定部1108、単位売掛金回収合計額算出部1109、単位売掛金手形回収額算出部1110、単位売掛金現金回収額算出部1111、単位手形割引譲渡実行額算出部1112、単位手形割引譲渡期日前額算出部1113、単位手形割引譲渡期日落ち額算出部1114、単位売上現金回収額算出部1115、単位売掛金発生額算出部1116、単位現金回収合計額算出部1117、単位期末売掛残高算出部1118、単位期末手形残高算出部1119、単位期末割引譲渡残高算出部1120、及び合計額算出部1121を少なくとも備える。
実績売掛金回収率算出部1101は、実績の売掛金の回収率を算出する機能を有する。実績手形回収率算出部1102は、実績の手形の回収率を算出する機能を有する。割引譲渡回収率算出部1103は、実績の割引譲渡手形の回収率を算出する機能を有する。現金売上割合設定部1104は、現金売上の割合を設定する機能を有する。売上推移情報設定部1105は、所定の期間ごとの売上の情報を設定する機能を有する。
単位期初売掛残高設定部1106は、単位期間の期初における売掛残高を設定する機能を有する。単位期初手形残高設定部1107は、単位期間の期初における手形の残高を設定する機能を有する。単位期初割引譲渡手形残高設定部1108は、単位期間の期初における割引譲渡手形の残高を設定する機能を有する。
単位売掛金回収合計額算出部1109は、単位期間に回収した売掛金の合計額を算出する機能を有する。単位売掛金手形回収額算出部1110は、単位期間に回収した売掛金のうち、手形により回収した金額を算出する機能を有する。単位売掛金現金回収額算出部1111は、単位期間に回収した売掛金のうち、現金により回収した金額を算出する機能を有する。
単位手形割引譲渡実行額算出部1112は、単位期間に回収した手形のうち、割引譲渡手形により回収した金額を算出する機能を有する。単位手形割引譲渡期日前額算出部1113は、単位期間内に期日を迎えることのない割引譲渡手形の金額を算出する機能を有する。単位手形割引譲渡期日落ち額算出部1114は、単位期間内に期日落ちを迎える割引譲渡手形の金額を算出する機能を有する。
単位売上現金回収額算出部1115、単位期間に売り上げた金額のうち、現金で回収した金額を算出する機能を有する。単位売掛金発生額算出部1116は、単位期間に発生した売掛金の金額を算出する機能を有する。単位現金回収合計額算出部1117は、単位期間に回収した現金の金額の合計を算出する機能を有する。
単位期末売掛残高算出部1118は、単位期間の期末における売掛金の残高を算出する機能を有する。単位期末手形残高算出部1119は、単位期間の期末における手形の残高を算出する機能を有する。単位期末割引譲渡残高算出部1120は、単位期間の期末における割引譲渡手形の残高を算出する機能を有する。合計額算出部1125は、売上債権推移表に算出された各値の合計を算出する機能を有する。
資金繰表出力部1004は、対応勘定科目記憶部1201、資金残高算出部1202、及び資金繰り表生成部1203を少なくとも備える。
対応勘定科目記憶部1201は、決算書類の勘定科目と資金繰り表の勘定科目との対応関係、及び、実績又は予想の売上債権推移表の項目の値と資金繰り表の勘定科目との対応関係を記憶する機能を有する。資金残高算出部1202は、資金残高を算出する機能を有する。資金繰り表生成部1203は、資金繰り表を生成する機能を有する。
次に、本発明の実施の形態の少なくとも1つのプログラムに含まれる機能の概要について説明する。図3は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、プログラム実行処理のフローチャートの一例を示す図である。
まず、コンピュータ装置1において、企業から提出された決算書に関する情報を読み込む(ステップS1)。情報の読み込みは、企業から提出された電子データをそのまま、あるいは、提出されたデータを加工して読み込むようにしてもよいし、紙媒体により提出された場合には、担当者がデータを入力することで読み込むこととしてもよい。つまり、情報の読み込みには、情報の入力を受け付けること、記憶された情報を読み込むことを含む。読み込まれた情報は、コンピュータ装置1のストレージ部13に記憶される。
[決算書情報読込]
図4は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、企業から提出される決算書データの一例を示す図である。決算書データには、決算2期分の貸借対照表100、決算1期分の損益計算書110、決算1期分の製造原価報告書120、決算1期分の生産高130、決算1期分の消費税140、決算1期分の棚卸資産内訳150、決算1期分の月商推移160、及び決算1期分の販売管理費内訳170が少なくとも含まれる。
以下の説明において、図4に示すように、2016年度で、決算年月が2017年1月である期間を「前期」、2017年度であって、決算年月が2018年1月である期間を「当期」とそれぞれ記載する。本発明の範囲は、当該記載された年度や決算年月に限定されるものではない。
貸借対照表100は、ある2つの時点における、企業の財務状態を表す財務諸表情報であり、資産、負債、及び資本が少なくとも含まれる。図示するように、貸借対照表100のデータは、少なくとも2つの時点における企業の財務情報を表す。2つの時点とは、例えば、2つの期末時点、あるいは、1つの期における期首時点及び期末時点をいう。損益計算書110は、ある期間における、企業の経営成績を表す財務諸表情報であり、利益及び損失が少なくとも含まれる。つまり、貸借対照表100には、前期及び当期の、連続する2期の期末時点の財務状態が示される。
製造原価報告書120は、製品の製造原価を明らかにするための情報であり、売上原価を含むものである。製造原価報告書120は、製造工程がある企業であれば、売上原価を算出するために必要な書類であることから、決算書類として開示されることが多い。生産高130は、ある期間において、企業が生産した商品の量を金額に換算した情報である。消費税140は、商品の売り上げに対し課せられた消費税の合計金額である。
棚卸資産内訳150は、期末に企業が保有する資産について、勘定科目ごと、品目ごとに内訳を示すものである。棚卸資産とは、例えば、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品、作業くず、副産物等をいう。月商推移160は、何月にいくら売り上げたかを示す情報である。販売管理費内訳170は、企業の本業において、利益を生み出す活動に使用された費用を表す情報である。
上述した決算書データは一例であり、これに限定されない。企業の業種によっては、例えば、製造原価報告書が存在しないことがあり得る。しかし、本発明の実施の形態においては、すべての情報が必須ではなく、数値もこれに限定されるものではない。
図3のフローチャートに戻る。コンピュータ装置1は、当期の売上債権の推移表である実績売上債権推移表出力処理を実行する(ステップS2)。
[実績売上債権推移表出力処理]
図5は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、実績売上債権推移表の一例を示す図である。売上債権推移表には、所定の期間ごと(例えば、月ごと)の売上債権に関する情報がシミュレートされて表される。貸借対照表や損益計算書等の決算書類から採用可能な数値に関しては採用し、決算書類からは判別できない情報に関しては、所定の条件にしたがって算出することで、売上債権推移表に記載された全ての項目の値を埋めることができる。
実績売上債権推移表には、現金売上割合201、月次回収率202、手形割合203、手形サイト204、及び割引率205が少なくとも含まれる。売上推移の項目には、売上高(税抜)211及び売上高(税込)212が少なくとも含まれる。売掛金手形推移の項目には、売掛金(月初残)221、手形(月初残)222、割引譲渡手形(月初残)223、売掛金−現金回収224、売掛金−手形回収225、売掛金回収合計226、手形割引譲渡−実行227、手形割引譲渡−期日228、手形期日落ち229、売上発生(税込)230、売上現金回収231、売掛金発生232、現金回収合計233、売掛金回収率234、売掛金(月末残)235、手形(月末残)236、及び割引譲渡手形(月末残)237が少なくとも含まれる。
現金売上割合201とは、現金売上割合とは、売上が発生した当月に現金で回収している割合をいう。換言すれば、売上額のうち、売掛金の発生する率を除いた割合ということもできる。決算書情報から、現金の売上割合を確認できない場合には、経営者へのヒアリング等により、おおよその現金売上の割合を入力するようにしてもよい。月次回収率202とは、各月月初における売掛金残高から回収される売掛金の割合を表し、売掛金の回収率ともいう。売掛金回収率は、当期内の所定の期間(例えば、ひと月)ごとに、同率の割合で売掛金を回収したと仮定した場合に、当期期首の売掛金残高及び当期期末の売掛金残高が、決算書情報に記載された残高と合致するように設定された率である。
手形割合203とは、売上のうち、手形で支払われる割合を表す。手形サイト204は、支払われる手形の支払サイトであり、取引代金の締め日から支払日までの猶予期間を表す。割引率205は、手形割引の発生する割合であり、当期内の所定の期間(例えば、ひと月)ごとに、同率の割合で手形の裏書譲渡が発生することを表す。
売上高(税抜)211は、各月の月商を表すものであり、月商推移160に記載された値を用いることができる。売上高(税込)212は、売上高(税抜)211の値に、税額分を加算した額である。金銭の流れを確認する際に、税金を考慮しなくてはならない。しかし、損益計算書等決算書類に記載されている金額は税抜きで記載されていることが多く、その状態では正しい金銭の流れを確認することができない。そこで、売上高(税抜)211を税込みの金額にすることにより、事業体における資金の流れをより正確に把握することができる。
売掛金(月初残)221は、月初の売掛金の残高を表す。手形(月初残)222は、月初の手形の残高を表す。割引譲渡手形(月初残)223は、月初の割引譲渡手形の残高を表す。売掛金(月初残)221、手形(月初残)222、及び割引譲渡手形(月初残)223は、前期の貸借対照表100に記載された値を用いることができる。
売掛金−現金回収224は、売掛金(月初残)221のうち、現金で回収した金額を表す。売掛金(月初残)221から売掛金−手形回収225を減じた値が、売掛金−現金回収224の金額である。売掛金−手形回収225は、売掛金(月初残)221のうち、手形で回収した金額を表す。売掛金(月初残)221に手形割合203を乗じた値が、売掛金−手形回収225の金額となる。
売掛金回収合計226は、売掛金(月初残)221に月次回収率202を乗じた値である。すなわち、売掛金−現金回収224の値及び売掛金−手形回収225の値の合計となる。手形割引譲渡−実行227は、売掛金−手形回収225のうち、割引譲渡を行った手形の金額である。すなわち、売掛金−手形回収225に割引率205を乗じた値となる。金額手形割引譲渡−期日228は、手形サイト204を考慮して、手形割引譲渡−実行227の支払い期日をずらした値である。例えば、手形サイト204が2か月であり、手形割引譲渡−実行227が発生した月が7月の場合に、金額手形割引譲渡−期日228は9月分として計上される。手形期日落ち229は、手形サイト204を考慮して、売掛金−手形回収225にて回収された手形の支払い期日をずらした値である。
売上発生(税込)230は、売上高(税込)212の値である。売上現金回収231は、当月において売上を現金で回収した額を表し、売上発生(税込)230に現金売上割合201を乗じて算出される。売掛金発生232は、当月において掛けで売り上げた額を表し、売上発生(税込)230から売上現金回収231を差し引いて算出される。現金回収合計233は、当月回収できた現金の額を表し、売掛金−現金回収224、手形割引譲渡−実行227、手形期日落ち229、及び売上現金回収231の和で算出される。
売掛金回収率234は、月次回収率202と同一の値である。売掛金(月末残)235は、売掛金(月初残)221から売掛金回収合計226を引き、売掛金発生232を加えた額である。当月の売掛金(月末残)235は、翌月の売掛金(月初残)221として繰り越される。手形(月末残)236は、手形(月初残)222に売掛金−手形回収225を加え、手形割引譲渡−実行227及び手形期日落ち229の和を差し引くことで算出される。割引譲渡手形(月末残)237は、割引譲渡手形(月初残)223に手形割引譲渡−実行227を加え、手形割引譲渡−期日228を引くことで算出される。
このように、売上債権推移表を出力することで、決算書類からでは判別することができなかった、例えば、決算年度内の各月の売掛金や手形といった売上債権の額を確認することができる。
図6は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、実績売上債権推移表出力処理のフローチャートの一例を示す図である。コンピュータ装置1は、売掛金の回収率を算出する(ステップS101)。売掛金の回収率とは、当期内の所定の期間(例えば、ひと月)ごとに、同率の割合で売掛金を回収したと仮定した場合に、当期期首の売掛金残高及び当期期末の売掛金残高が、決算書情報に記載された残高と合致するように設定された率をいう。算出方法については、後述する。
次に、コンピュータ装置1は、手形の回収率を算出する(ステップS102)。手形の回収率とは、売掛金の回収率と同様に、決算書情報に記載された残高と合致するように設定された率をいう。次に、コンピュータ装置1は、割引譲渡手形の回収率を算出する(ステップS103)。割引譲渡手形の回収率も、手形の回収率と同様に、決算書情報に記載された残高と合致するように設定された率をいう。
[売掛金回収率算出]
売掛金の回収率は、以下の数式により算出することができる。
ここで、売掛金回収率x以外の変数α、β、γ、及びyは、既知の値である。例えば12か月の期間の場合には、売掛金回収率xは、12次方程式を解くことで求めることができる。高次方程式は、DKA法等、既知の方法により解くことができる。
α1は、前期期末の売掛金残高(または、当期期首の売掛金残高)であり、α12は、当期期末の売掛金残高である。決算書に記載された売掛金残高と合致させるように、売掛金回収率xを算出することで、説得力のある売掛金回収率を算出することができる。
上述の売掛金回収率算出に関する算出方法は、手形や割引譲渡手形の回収率の算出にも用いることができる。ただし、算出方法は一例であり、これに限定されない。例えば、変数xの値を変化させていき、α1及びα12が決算書データの前期売掛金残高及び当期売掛金残高と合致する売掛金回収率xを特定してもよい。
次に、コンピュータ装置1は、現金売上割合を設定する(ステップS104)。現金売上割合は、決算書データから判別できる場合にはそのデータを採用してもよいし、おおよその現金売上割合を経営者に対するヒアリングにより取得し、入力してもよい。
次に、コンピュータ装置1は、売上推移情報を設定する(ステップS105)。売上推移情報とは、単位期間ごとの売上であり、月商に相当する。ここでは、売上高(税抜)211に月商推移160の値を設定し、売上高(税込)212には、売上高(税抜)211の各値に税額を加算した値を設定する。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間ごとに処理を行う。以下では、単位期間を1か月とし、12か月分の処理を行う。ただし、単位期間を日単位にしてもよいし、年単位にしてもよい。
まず、コンピュータ装置1は、単位期間の期初における売掛残高を設定する(ステップS106)。決算期間中の期初データは、決算書における期首の売掛残高である。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間の期初における手形の残高を設定する(ステップS107)。決算期間中の期初データは、決算書における期首の手形残高である。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間の期初における割引譲渡手形の残高を設定する(ステップS108)。決算期間中の期初データは、決算書における期首の割引譲渡手形の残高である。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間に回収した売掛金の合計額を算出する(ステップS109)。具体的には、売掛金(月初残)221に月次回収率202を乗じて算出する。次に、コンピュータ装置1は、単位期間に回収した売掛金のうち、現金により回収した金額を算出する(ステップS110)。具体的には、売掛金回収合計226に(1−手形割合203の率)を乗じて算出する値であり、売掛金(月初残)221から売掛金−手形回収225を減じた値となる。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間に回収した売掛金のうち、手形により回収した金額を算出する(ステップS111)。具体的には、売掛金(月初残)221に手形割合203を乗じて算出する。次に、コンピュータ装置1は、単位期間に回収した手形のうち、割引譲渡手形により回収した金額を算出する(ステップS112)。具体的には、売掛金−手形回収225に割引率205を乗じて算出する。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間内に期日を迎えることのない割引譲渡手形の金額を算出する(ステップS113)。手形サイト204を考慮して、手形割引譲渡−実行227の支払い期日をずらして設定する。ここで、手形サイトがXか月である場合に、期首からXか月分の値は、(割引譲渡手形(月初残)223÷X)の値を設定するようにしてもよい。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間内に期日落ちを迎える割引譲渡手形の金額を算出する(ステップS114)。手形サイト204を考慮して、売掛金−手形回収225にて回収された手形の額を設定する。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間に売り上げた金額のうち、現金で回収した金額を算出する(ステップS115)。具体的には、売上発生(税込)230に現金売上割合201を乗じて算出する。次に、コンピュータ装置1は、単位期間に発生した売掛金の金額を算出する(ステップS116)。具体的には、売上発生(税込)230から売上現金回収231を差し引いて算出する。
ここで、売上発生(税込)230(つまり月商)に所定の値を乗じて、現金で回収した金額及び売掛金の金額を算出している。これは、月商に対応させて、現金及び売掛金が増減することを表している。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間に回収した現金の金額の合計を算出する(ステップS117)。具体的には、売掛金−現金回収224、手形割引譲渡−実行227、手形期日落ち229、及び売上現金回収231の和を算出する。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間の期末における売掛金の残高を算出する(ステップS118)。具体的には、売掛金(月初残)221から売掛金回収合計226を引き、売掛金発生232を加えて算出する。次に、コンピュータ装置1は、単位期間の期末における手形の残高を算出する(ステップS119)。具体的には、手形(月初残)222に売掛金−手形回収225を加え、手形割引譲渡−実行227及び手形期日落ち229の和を差し引いて算出する。次に、コンピュータ装置1は、単位期間の期末における割引譲渡手形の残高を算出する(ステップS120)。具体的には、割引譲渡手形(月初残)223に手形割引譲渡−実行227を加え、手形割引譲渡−期日228を引いて算出する。
ステップS106からステップS120までの処理を、全ての単位期間に対して実行するまで繰り返す。その後、コンピュータ装置1は、売上債権推移表に算出された各値の合計を算出し(ステップS121)、終了する。ここで算出された値は、決算書類に記載された売掛金等の値と合致する。
このように、売上債権推移表を作成することで、決算書データから、より細かい各月のデータを算出することができる。これにより、より正確に企業体の資金の動きを把握することができる。
図3に戻り、コンピュータ装置1は、実績資金繰り表を生成する(ステップS3)。
[資金繰り表]
図7は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、資金繰り表の一例を示す図である。以後の説明において、資金繰り表は当期の実績に基づいた実績資金繰り表と、翌期の予想データに基づいた予想資金繰り表とが生成されるが、表示される項目は共通である。
図7に示す資金繰り表には、経常収入、変動経常支出、固定経常支出、経常外収入、経常外支出、財務収入、財務支出等の欄が用意され、各欄には、勘定科目が予め設定されている。対応勘定科目記憶部1201により、資金繰り表の各勘定科目と、決算書データの勘定科目又は上述の売上債権推移表の各項目とは、関連付けられてコンピュータ装置1のストレージ部13に記憶されている。
[資金繰り表出力処理]
次に、資金繰り表出力処理について説明する。図8は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、資金繰り表出力処理のフローチャートの一例を示す図である。
コンピュータ装置1は、決算書類情報を読み込む(ステップS201)。ストレージ部13に記憶された決算書類情報から読み込まれてもよいし、再度決算書データを読み込み直してもよい。
次に、コンピュータ装置1は、対応勘定科目記憶部1201に記憶された勘定科目の関連付けに基づいて、決算書類情報及び売上債権推移表の項目の値を、資金繰り表の勘定科目に振り分ける(ステップS202)。振り分けは、決算書類情報の値であれば、1年間の値であるため、略12等分した値にして、各月に振り分けてもよい。あるいは、売上債権推移表のように、既に各月の値が算出されている場合には、加工しない値を採用して設定するようにしてもよい。
また、賞与や消費税、法人税の支払いのように、所定の月に支払うことが予め決定されている値に関しては、等分するのではなく、所定の月にまとめて計上するように設定してもよい。
さらに、消費税は、期中の納付を1回か3回かを、前期の消費税額から自動で判断するようにしてもよい。例えば、前期の消費税額が、400万円超かつ4800万円以下である場合には、3か月ごとの納付であるが、400万円以下かつ48万円超である場合には、半年ごとの納付となる。
資金繰り表に値を振り分ける際に、課税対象の項目については、税抜きの金額で振り分ける。つまり、対応勘定科目記憶部1201は、勘定科目に関連付けて、勘定科目が課税対象か否かについても記憶している。詳細は後述の図13にて説明する。
次に、コンピュータ装置1は、設定された値から資金残高を算出する(ステップS203)。資金残高は、繰越金残高、経常収支、経常外収支、及び財務収支の和を算出することで、各月の資金残高を算出することができる。例えば、当月末の資金残高は、翌月初の繰越金残高と合致する。
このように、資金残高を算出することで、決算書データからでは発見することができない、月単位の資金の状況を把握することができる。より具体的には、いずれかの月において、資金残高が負の値となった場合には、資金がショートしていることを表すので、借入を行っている可能性が高い。しかし、決算データに借入金が計上されていない場合には、データが不足しているということであるから、融資の審査においては、企業に対してヒアリングを行う必要がある。つまり、融資の担当者のノウハウに依存することなく、決算データからヒアリングするべき項目を担当者に通知することが可能となり、担当者の負担を軽減し、担当する人によるばらつきの少ない評価につなげることができる。
最後に、コンピュータ装置1は、資金繰り表を出力し(ステップS204)、終了する。ここで、出力とは、電子データとして出力してもよいし、紙媒体に印刷することで出力してもよい。
当期の実績に関する決算書データを用いて実績の資金繰り表を出力できることでで、本発明の効果は奏するが、本発明はさらに、企業の定性評価に関して、言い換えれば、企業の体質、特性を知ることに関して、金融機関の担当者の負担を軽減する機能を含むものである。より具体的には、翌期の決算書データを生成することで、企業体の将来の経営状態を予想する機能を有する。
金融機関の担当者が、融資先の企業に対して理解を深めるためには、資金繰りの予想を行うことが必須である、と出願人は考えている。例えば、借入れが必要になる時期と額を経営者に伝えることができれば、直前になって資金繰りに苦労することが減る。ところが、中小企業においては、資金繰りの正確な予想はできないことが多い。理由は、経理部門に正しい情報収集、及び整理の方法を指導したことが無いからである。そこで、本発明は、正しい情報収集や整理の方法を指導されたことのない金融機関の担当者であっても、簡単に翌期の資金繰り表を生成する機能、及び、翌期の決算書データを生成する機能をさらに提供する。
図3に戻り、コンピュータ装置1は、予想売上債権推移表を生成する(ステップS4)。図9は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、予想売上債権推移表の一例を示す図である。予想売上債権推移表に含まれる項目は、実績売上債権推移表に含まれる項目と同じであり、理解し易さのため、詳細な説明は割愛する。
図10は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、予想売上債権推移表出力処理のフローチャートの一例を示す図である。予想の売上債権推移表は、例えば、実績の売上債権推移表の作成時に算出した回収率を用いることにより、生成することができる。
コンピュータ装置1は、実績の売上債権の回収率を読み込む(ステップS301)。回収率が記憶されていなければ、上述の回収率算出方法により、再度算出してもよい。
次に、コンピュータ装置1は、予想の売上高を設定する(ステップS302)。予想の売上高とは、翌期の月商であり、実績の月商と等価でもよいし、例えば、図9のように、売り上げが5%上昇するという予想に基づいて、全ての月商を5%上乗せして算出するようにしてもよい。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間における売上債権等を算出し(ステップS303)、終了する。ステップS303における処理は、図6におけるステップS106からステップS121までの処理を必要な範囲で採用することができる。
図3に戻り、コンピュータ装置1は、予想資金繰り表を生成する(ステップS5)。図11は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、予想資金繰り表の一例を示す図である。また、資金繰り表出力処理は、図8に示すフローチャートを必要な範囲で採用することができる。
予想資金繰り表の生成において、予想の決算書データは存在しない。そこで、実績の決算書データの一部を用いて、かつ、予想売上債権推移表の値を用いることで、予想の資金繰り表を作成することができる。
予想資金繰り表を生成する際に、実績の決算書のデータの一部又は全部を加工してもよい。より正確に予想資金繰り表を作成するためには、売掛金の入金予想、買掛金の支払い予想、経費の支払い予想、消費税・法人税等税金の支払い予想、経常外収支の予想、財務収支の予想等、複数の予想を行う必要がある。売掛金の入金予想とは、翌期の月商の予想から入金の予想を行うことである。買掛金の支払い予想とは、前年の売上支払い実績、及び、売り上げ予想に基づいて算出する。
また、経常外収支の予想においては、設備の更新費用を予想しておくことも重要である。例えば、製造業では、毎年一定額の設備の維持費がかかることを念頭に予想をすることが重要である。
さらに、当期の決算書データ及び実績の資金繰り表から、消費税額の予想値を算出することができる。予想の消費税額は、当期に大きな設備投資をした場合等において、投資に係る消費税負担分が相殺され、消費税の確定額が少なくなる。加えて、翌期に設備投資がなかった場合には、確定した消費税額と期中の中間納付額との差が大きくなり、期末の未払消費税が多額になる。そのような場合には、消費税の分納をせざるを得ない状況となってしまうことがあり得る。
本発明の実施の形態における予想の消費税額の算出は、勘定科目ごとの金額が明らかであることから、消費税額を計算することができ、上述のように資金繰りが苦しくなる状況を予め知ることができ、融資の担当だけでなく、経営者にとっても有用である。
このように、複数の条件を組み合わせて作成した予想資金繰り表を確認することで、例え、業績が現状維持だったとしても、資金がショートするような危機をいち早く察知することができる。つまり、予想資金繰り表を作成することで、企業の体質や状態をより正確に把握することができ、融資の審査をより正確に行うことができる。さらに、予想資金繰り表を作成することで、企業が本来入金や支払予定等、管理すべき事項を適切に管理することができる。
図3のフローチャートに戻り、最後に、予想の決算書類を生成し(ステップS6)、終了する。図12は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、予想の決算書データの一例を示す図である。
対応勘定科目記憶部1201に記憶された勘定科目に基づいて、予想資金繰り表に記載されたデータを集計することで、翌期の予想の決算書類を生成することができる。なお、資金繰り表作成機能において、消費税額を算出できることから、翌期の貸借対照表である予想貸借対照表には、未払消費税額を記載することが可能であり、経営者及び融資担当者は、必要な資金が明確に把握することができる。
勘定科目の対応について詳述する。コンピュータ装置1は、第1対応勘定科目マスタテーブル及び第2対応勘定科目マスタテーブルを記憶している。図13は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、対応勘定科目マスタテーブルを表す図である。図13(A)は、第1対応勘定科目マスタテーブルを表す。第1対応勘定科目マスタテーブル500には、資金繰り勘定科目501に関連付けて、決算書勘定科目502及び課税対象503が少なくとも記憶されている。資金繰り勘定科目501は、資金繰り表に設定されている勘定科目である。決算書勘定科目502は、決算書に設定されている勘定科目である。課税対象503は、当該勘定科目が課税の対象であるか否かを表す。このような対応関係があることにより、決算書の勘定科目に記載された金額を資金繰り表に振り分けることができ、逆に資金繰り表に記載された金額を決算書の情報として集計することができる。なお、課税対象503が「○」の場合には、当該勘定科目は課税の対象であるから、消費税を考慮して計算する必要があることに留意する。
図13(B)は、第2対応勘定科目マスタテーブルを表す。第2対応勘定科目マスタテーブル510は、資金繰り勘定科目511に関連付けて、売上債権項目512及び課税対象513が少なくとも記憶されている。資金繰り勘定科目511は、資金繰り表に設定されている勘定科目である。売上債権項目512は、売上債権推移表に設定された項目である。課税対象513は、当該勘定科目が課税の対象であるか否かを表す。このような対応関係があることにより、売上債権推移表の項目に記載された金額を資金繰り表に振り分けることができ、逆に資金繰り表に記載された金額を売上債権推移表の項目の情報として集計することができる。なお、課税対象513が「○」の場合には、当該勘定科目は課税の対象であるから、消費税を考慮して計算する必要があることに留意する。
対応勘定科目対応勘定科目記憶部1201には、勘定科目に関連付けて、課税対象か否かが記憶されている。つまり、予想の決算書類においても、消費税を算出することができ、より正確な決算書類を予測することができ、企業の定性評価の品質を向上させることができる。
[借入提案処理]
次に、借入提案処理について説明する。シミュレーションプログラムは、ステップS5において生成される予想資金繰り表において、資金がショートする場合や、資金残高が所定の金額より低くなった場合に、借入を提案する機能を有してもよい。図14は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、借入提案処理のフローチャートの一例を示す図である。
コンピュータ装置1は、借入れを提案する閾値(以下、キャッシュポジションともいう)を設定する(ステップS401)。閾値は、ユーザにより入力された値であってもよいし、ステップS1において読み込まれた決算書情報、ステップS2において出力された実績売上債権推移表の情報、ステップS3において出力された実績資金繰り表の情報、ステップS4において出力された予想売上債権推移表の情報、ステップS5において出力された予想資金繰り表の情報、及びステップS6において出力された予想決算概要に含まれるいずれかの情報に記載された値、又は当該情報を用いて算出した値であってもよい。借り入れを提案する閾値の一例として、図7に示す実績の資金繰り表に記載された、経常支出合計金額から算出される、ひと月平均の経常支出に関する金額を用いてもよい。
次に、コンピュータ装置1は、借入単位金額を設定する(ステップS402)。借入単位金額とは、1回の借り入れ提案により借り入れる借入額をいう。借入単位金額は、一例として、図4の月商推移160に示す月商推移の合計額から算出される、月平均の金額(つまり平均の月商)を設定してもよく、さらに当該平均月商の一千万円以下の値を切り捨てた金額を用いるようにしてもよい。
次に、コンピュータ装置1は、資金残高を確認する単位の単位期間tに1を設定し、初期化する(ステップS403)。つまり、ここでいう単位期間tは第1期に相当する。単位期間は日、月、及び年いずれであってもよく、図6のフローチャートの説明における単位期間と同じ単位である。
次に、コンピュータ装置1は、単位期間tの資金残高が、ステップS401において設定された資金残高閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS404)。資金残高が資金残高閾値よりも小さいと判定された場合(ステップS404にてYES)には、コンピュータ装置1は、単位期間tに借り入れを実施する(ステップS405)。借り入れた金額は、原則長期借入金とするように設定してもよい。
次に、コンピュータ装置1は、借り入れた金額の単位期間あたりの返済金額を算出する(ステップS406)。返済額は、例えば、予め5年60回払いで返済するように設定されていてもよく、ユーザの指定により設定された期間及び回数で返済するようにしてもよい。次に、コンピュータ装置1は、借り入れ後の資金残高を算出する(ステップS407)。次に、コンピュータ装置1は、単位期間tをt+1に更新する(ステップS408)。
また、資金残高が資金残高閾値以上と判定された場合(ステップS404にてNO)には、コンピュータ装置1は、単位期間tをt+1に更新する(ステップS408)。
コンピュータ装置1は、ステップS404からステップS408までの処理を、tが最終の単位期間になるまで繰り返し実行する。すべての単位期間についてステップS404からステップS408までの処理を実行すると、各単位期間における資金残高は、資金残高閾値以上の状態になっている。
次に、コンピュータ装置1は、提案結果情報を出力する(ステップS409)。提案結果の出力とは、ユーザが認識可能な態様で情報が出力されるものであればよい。具体的には、文字の大きさや色等の表示態様を他の情報と区別して出力する、新たなウィンドウに表示する、音声により報知する、あるいは、予め登録されていたユーザのメールアドレスに宛ててコンピュータ装置1からメールを送信する等の処理を含むものである。
提案結果情報を出力すると、借入提案処理を終了する。その後、コンピュータ装置1は、ステップS407において更新された資金残高を用いて、ステップ5の予想資金繰り表出力処理及びステップ6の予想決算概要出力処理を行い、提案された借入金額、及び、提案された借入金額の返済金額を予想資金繰り表及び予想決算概要に反映させる。つまり、提案された借入金額が予想の貸借対照表、予想の損益計算書、及び予想の資金繰り表に反映される。
具体的には、借入れが増大することにより、支払利息が増加する。その結果、利益が減少し、借入を行わなかった場合よりも予想結果は厳しいものになる。しかし、借入を行わなければ、資金がショートするおそれがあるため、企業活動の維持が難しくなる。そこで、例えば、銀行の担当者等、企業の経営を補助する役割の人間が、借入を行い、企業活動を維持しつつ、減少した利益を増やし、かつ、借り入れた金額を減らすように改善案を提案する。改善案とは、売掛金の回収率を上げる、在庫を減らす、買掛金の支払率を下げる等をいう。このように、貸借対照表、損益計算書、資金繰り表が一体となって出力されることで、どこを改善するべきか、担当者が容易に、直感的に把握することができ、担当者の経験に依らず、負担を軽減することができる。
借入提案処理において提案した借入金額を減らすように、コンピュータ装置1が改善案を提示してもよい。例えば、現時点における予想の貸借対照表、予想の損益計算書、及び予想の資金繰り表から、借入提案処理の提案結果として、1億円の借入れを提案されたとする。このとき、コンピュータ装置1が、例えば、売上げを2%増やした場合や、売掛金の回収率を85%から88%に改善させた場合の借入金額を提示するようにしてもよい。あるいは、固定費を1%減らした場合の借入金額を提示するようにしてもよい。つまり、改善案は、改善するための方法及び提案する借入金額を含めた情報である。
これらの例では、借入金額が、例示した1億円より下回る可能性が高く、例えば、借入金額が1億円から7千万円に減額されることもある。コンピュータ装置1により提示される改善案は、1つ以上が表示されればよく、複数を並べて比較できるように表示してもよい。
また、コンピュータ装置1が、所定の条件を満たした場合に、借り過ぎの警告を出力してもよい。例えば、粗利益が5億円の企業において、短期及び長期の借入金が4億7千万円ある場合を想定する。この場合に、不足する借入提案の5千万円を借り入れてしまうと、粗利額の5億円を超えてしまう。一例として、粗利額を超える借入れは、借入金を利益で完済することができない状態となるため、経営上非常に危険であるから、コンピュータ装置1は、借入提案をすると同時に、借入金額を3千万円までに抑えるように、改善案を提案するようにしてもよい。
借入れ提案に関する画面について、具体的な例を挙げて説明する。図15は、本発明の実施の形態の少なくとも1つに対応する、借入れの提案を示す画面を表す図である。図15(A)は、借入れ提案を行う前の画面であり、図15(B)は、借入提案後の画面である。単位期間は月単位とした。
借入提案画面には、経常収支600、調達−短期601、調達−長期602、調達−長期−サジェスト603、調達−役員604、調達−設備未払605、調達−その他606、返済−短期611、返済−長期612、返済−長期−サジェスト613、返済−役員614、返済−設備未払615、返済−その他616、財務収支621、資金残622、キャッシュポジション631、借入単位金額632、及び繰越金残高633が表示される。調達−長期−サジェスト603、返済−長期−サジェスト613、財務収支621、資金残622、キャッシュポジション631、借入単位金額632及び繰越金残高633以外の項目については、図11に示した予想資金繰り表の財務収入及び財務支出に記載された各項目の値を表示する。
経常収支600には、図7の実績資金繰り表の経常収支が表示される。財務収支621には、直前の単位期間の資金残に、調達−短期601、調達−長期602、調達−長期−サジェスト603、調達−役員604、調達−設備未払605、及び調達−その他606の合計額を加えた額から、返済−短期611、返済−長期612、返済−長期−サジェスト613、返済−役員614、返済−設備未払615、及び返済−その他616の合計額を差し引いた金額が表示される。資金残622には、直前の単位期間の資金残高に経常収支600及び財務収支621を加えた額が表示される。
キャッシュポジション631には、ステップS401において設定された資金残高閾値が表示される。借入単位金額632には、ステップS402において設定された借入単位金額が表示される。ここでは、一例として、月商の平均金額から、一千万円以下を切り捨てた金額を用いており、1億円が設定される。繰越金残高633には、図7に示す実績資金繰り表の期末における資金残額が表示される。
1か月目の資金残622の額は、繰越金残高633の額に、1か月目の経常収支600及び財務収支621を加えた額である。2か月目の資金残622の額は、1か月目の資金残622の額に、2か月目の経常収支600及び財務収支621を加えた額である。同様にコンピュータ装置1は、各単位期間の資金残622を算出し、表示する。
ここで、コンピュータ装置1は、ステップS404の判定を行い、各単位期間の資金残622の額が、キャッシュポジション631より小さいか否か判定する。
例えば、図15(A)の3か月目の資金残の金額640は、キャッシュポジション631より小さい額である。そこで、借入単位金額632の1億円を借り入れるよう、コンピュータ装置1はサジェスト(提案)する。サジェストした結果は、図15(A)の641に示すように、借入れを行う月の調達−長期−サジェスト603に計上され、表示される。これにより、コンピュータ装置1は、資金残622を更新し、図中642に示す金額として計上する。
その後、借り入れた金額に対する返済金額及び支払い利息が算出される。借り入れを行った月の翌月から返済完了となる月まで、月々の返済金額(図15(A)の643に示す金額)が返済−長期−サジェスト613に計上され、月々支払う利息額が支払利息(非図示。損益計算書の項目)として計上される。金利は、企業の借入残高と支払利息とから算出することができる。借入残高は平均残高を用いる。
借入金額及び返済金額により変更があった金額について、文字を大きくする、フォントを変更する、あるいは、文字色を変更する等により強調表示をするようにしてもよい。このようにすることで、ユーザは変更があった箇所を容易に把握することができ、長期にわたって無理なく返済可能か否かを判断することができる。
このように、借入れをコンピュータ装置1が提案することで、ユーザは資金不足に陥るリスクを回避することができ、健全な会社経営を行うことができるようになる。また、金融担当者による資金ショートのリスクを見逃す可能性を低減させ、金融機関の担当者の負担を軽減可能となる。
第1の実施の形態において、説明のために、売上債権推移表や資金繰り表を出力したが、本発明はこれに限定されない。つまり、表として出力せず、例えば、CSVデータのようなテキストファイルとして出力してもよい。あるいは、資金残高の値が所定の閾値(例えば、1か月分の固定費)より下回った場合に、警告メッセージを生じるようにしてもよい。
第1の実施の形態において、現金売上割合は、ヒアリング等により手動で入力することとして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、売掛金等の回収率に、企業の属する業界の平均的な回収率を適用し、売上額と、回収した売掛金の額とを比較して、売上額の方が大きい場合には、両方の金額の差分を現金により売り上げたものとして自動的に計算するようにしてもよい。
第1の実施の形態において、予想の回収率は、実績の回収率を採用して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ヒアリング等により、翌期の企業のあり方に変更がある場合には、情報を反映するため、担当者の入力により回収率を設定できるようにしてもよい。
第1の実施の形態において、予想の売上債権推移表作成に、実績の売上債権推移表の作成時に算出した回収率を用いる方法を説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ユーザの入力に基づいて回収率を設定するようにしてもよい。
第1の実施の形態において、第1対応勘定科目マスタテーブルと第2対応勘定科目マスタテーブルとを分けて記載したが、本発明はこれに限定されない。つまり、1つのマスタテーブルを用いてもよい。
第1の実施の形態において、売上債権の推移表を作成し、売掛金及び手形の回収について説明したが、本発明は、売掛金及び手形に限定されるものではない。つまり、売掛金及び手形の合計である売上債権のみの回収率を算出するようにしてもよい。
第1の実施の形態において、借り入れ金額の提案内容がユーザの操作指示を受け付けることなく、コンピュータ装置1により自動で更新される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ステップS409において提案結果情報が出力された際に、提案を受け入れるか否かをユーザに問い合せて、提案を受け入れるというユーザからの指示を受け付けた場合に金額を反映し、提案を受け入れない場合には金額を反映しないようにしてもよい。
第1の実施の形態において、「定性評価」とは、例えば、企業に属する要素、外部の関係者や法人に属する要素、又は、業界及び市場に関する要素に基づいて定められる性質・特徴に関する評価をいい、表面上の数値からでは判断できない事項(例えば、売掛金の回収の遅さ、営業効率の悪さ等)も含む。「コンピュータ装置」とは、例えば、デスクトップ型又はノート型パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、又は、PDA等をいい、表示画面にタッチパネルセンサを備える携帯型端末であってもよい。「事業体」とは、例えば、企業をいい、営利目的のために事業活動を行う経済主体だけでなく、個人事業主やNPO法人、その他公企業等も含むものである。「売上債権」とは、例えば、企業が商品やサービスを販売することによって得た対価で、販売後、一定日後に支払われることを約束した金銭債権をいい、具体的には、売掛金や手形を指す。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態では、コンピュータ装置と、該コンピュータ装置と通信により接続可能なサーバ装置とを備えるシミュレーションシステムについて説明する。第2の実施の形態におけるシステムの構成は、図2に示したコンピュータ装置の構成を必要な範囲で採用することができる。つまり、システムが、第1の実施の形態におけるコンピュータ装置の機能を実行し得る。
第2の実施の形態では、例えば、サーバ装置が、第1の実施の形態におけるコンピュータ装置の機能を実行するようにしてもよい。このようにすることで、ASP型のサービスを提供することができ、ユーザの利便性が向上する。
第2の実施の形態において、「コンピュータ装置」、及び「事業体」とは、第1の実施の形態において記載した内容を必要な範囲で採用することができる。
第2の実施の形態において、「システム」とは、例えば、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク等を組み合わせたものをいう。「サーバ装置」とは例えば、端末装置からの要求に応じて処理を実行する装置をいう。
以上、望ましい実施形態を通じて本発明を詳しく説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明の範囲において多様に実施することができる。