図1を参照して、本発明が適用される硬貨処理装置100について説明する。硬貨処理装置100は金属円盤体処理装置の一種である。金属円盤体処理装置とは、硬貨、メダル、トークン等の円盤状の金属媒体を処理する装置である。
硬貨処理装置100は硬貨現金の取引を自動的に処理する機器である。硬貨処理装置100において取り扱う金属円盤体(金属媒体)は、日本円の硬貨のうち、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉の4つの金種である。
硬貨処理装置100は、硬貨入金口1、出金口2、硬貨補充口3、回収庫4、入金繰り出し部5、認識部6、振分部7、一時保留庫8、および収納庫9を備える。
硬貨入金口1は、主に利用者が硬貨処理装置100に硬貨を投入するための開口である。
出金口2は、硬貨処理装置100が主に利用者に対して硬貨を返却するために、硬貨を排出するための開口である。
硬貨補充口3は、硬貨処理装置100に硬貨を補充するための開口である。硬貨の補充を行うのは例えば硬貨処理装置100の点検作業者である。
回収庫4は、ひとつの金種の硬貨を収納する収納部である。硬貨処理装置100は4つの回収庫4を備える。4つの回収庫4は、それぞれ、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉のいずれかの硬貨に対応する。
入金繰り出し部5は、硬貨入金口1から入金された硬貨を1枚ずつ分離して繰り出し、硬貨同士の間隔を広げるための機構である。
認識部6は、例えば硬貨の重量や大きさ等を測定するセンサを備える。認識部6はこれらセンサによる測定結果に基づいて硬貨の金種を特定する。認識部6についての詳しい説明は省略する。
振分部7は、認識部6での認識結果に基づいて、硬貨を金種別に振り分ける。振分部7は、振り分けた硬貨を、4つの一時保留庫8のうち、その金種に予め割り当てられたものに渡す。
一時保留庫8はひとつの金種の硬貨を一時的に保留する。硬貨処理装置100は4つの一時保留庫8を備える。4つの一時保留庫8は、それぞれ、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉のいずれかの硬貨に対応する。一時保留庫8の硬貨は、所謂「機外のお金」であり、取引確定前の硬貨として取り扱われる。一時保留庫8にある硬貨は収納庫9に向かって落下する。
収納庫9は落下した硬貨を収納する。硬貨処理装置100は4つの収納庫9を備える。4つの収納庫9は、それぞれ、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉のいずれかの硬貨に対応する。各組の一時保留庫8、収納庫9は、それぞれ、滑落シュート(図示せず)によって互いに接続されている。
収納庫9に収められた硬貨は、取引確定後の硬貨であり、所謂「機内のお金」として取り扱われる。収納庫9に収められた硬貨は、金種毎に計数管理される。また、収納庫9の硬貨は釣銭等の出金にも用いられる。収納庫9への硬貨の補充や、硬貨の回収は、例えば硬貨処理装置100の点検作業者が行う。
次に、硬貨処理装置100における一連の処理動作について説明する。
まず硬貨入金口1より投入された硬貨は、すぐに入金繰り出し部5にて硬貨1枚ずつに分離されて繰出され、かつ硬貨同士の間隔を広げた状態で、図示していない搬送ベルトや搬送ローラ等で認識部6まで1枚ずつ運搬される。
認識部6にて、明示されない識別方法で、間隔をあけて通過する硬貨の金種が特定される。金種が特定された硬貨は、振分部7にて金種ごとに振分られ、一旦金種ごとの一時保留庫8へ搬送される。
お客様が取引を中止し硬貨現金を返却する場合には、この一時保留庫8に留まった入金硬貨をそのまま出金口2に搬送することになる。ゆえに一時保留庫8の硬貨は、取引確定前のお客様の硬貨「機外のお金」のままという扱いである。その後に取引確定となり、一時保留庫8の硬貨は金種ごとの収納庫9に搬送することで、お客様の手を離れいよいよ「機内のお金」として取り扱うことができる。
収納庫9に収められた硬貨は、金種ごと計数管理のもと、お客様のお釣りなどの出金に用いられ、また点検作業者によって日常的に硬貨補充、硬貨回収される。
次に、図2A、図2B、および図2Cを参照して、硬貨搬送に使用されるベルト(搬送路)の構成について説明する。図2A、図2B、および図2Cは、それぞれ、第1乃至第3の搬送方式を示している。
最初に、図2Aを参照して、第1の搬送方式について説明する。図2Aに示されるように、第1の搬送方式は、硬貨の両面を2枚のベルト21および22で挟んで搬送する構成である。この第1の搬送方式では、滑りの影響を受けにくく安定した搬送が期待できる。しかしながら、第1の搬送方式は、その一方で、両ベルト21、22とも駆動させる必要が生じる。そのため、第1の搬送方式は、複雑で高価な構成となり、また実装スペースも増加するため、適用範囲は上り斜面などに限定される。
安価な構成としては、以下に述べる、第2及び第3の搬送方式として、硬貨の片面のみベルトに接触させて搬送させる構成がある。
次に、図2Bを参照して、第2の搬送方式について説明する。図2Bに示されるように、第2の搬送方式は、硬貨をベルト22の上に乗せて搬送するベルトコンベアー方式である。第2の搬送方式は、硬貨を、その自重の摩擦抵抗によってベルト22に追従させており、複数枚の硬貨をまとめて搬送する場合に向いている。しかしながら、第2の搬送方式は、硬貨1枚ずつを正確に搬送することは難しい。
次に、図2Cを参照して、第3の搬送方式について説明する。図2Cに示されるように、第3の搬送方式は、認識部6(図1)の手前で硬貨を搬送するために、一般的に採用されている方式である。第3の搬送方式は、硬貨の片面(第1の面)を駆動ベルト10と接触させ、もう片面(第2の面)を平滑面11に押し当てて、平滑面11を滑らせて硬貨を搬送させる方式である。この第3の搬送方式の場合、摩擦力の管理がしやすく、安価で安定した硬貨の搬送が実現できる。
[関連技術]
図3は、上記第3の搬送方式を採用した、関連技術における一般的な認識部6の手前の硬貨搬送路の概略図である。搬送路上の硬貨は、その上面(第1の面)を駆動ベルト10に、その下面(第2の面)を平滑面11に接触させている。図示されていない駆動ベルトの動力源を用いて、搬送路上の硬貨は、一定のベルト搬送速度vで認識部6へ搬送される。
認識部6と駆動ベルト10とは、図の奥行方向で干渉のない位置関係で硬貨と対面している。駆動ベルト10は摩擦力の高いゴム製とし、必要に応じすべり止めの表面形状10aが設けられている。
また平滑面11の材料は、滑りやすいように表面摩擦力の低い金属製やセラミック製の素材が望ましい。認識部6の手前の搬送路上には、認識センサ(SENSOR:SNS)12が配置され、硬貨通過の開始と終了とを監視している。詳述すると、認識センサ12は、硬貨の認識を開始する合図となる“スタート情報”と、硬貨の認識を終了する合図となる“エンド情報”とを通知する。すなわち、認識センサ12は、搬送路上での各硬貨の通過の開始と終了とを認識して、“スタート情報”と“エンド情報”とから成る通過状況信号を出力する。
認識センサ12での硬貨通過開始の合図である“スタート情報”をトリガとして、硬貨が認識部6と認識センサ12との間の距離L1分進んだ時刻で、認識部6は認識処理を開始する。認識センサ12での硬貨通過終了の合図である“エンド情報”をトリガとして、硬貨が認識部6と認識センサ12との間の距離L1分進んだ時刻で、認識部6は認識処理を終了する。
認識処理の開始と終了の間の距離情報は、硬貨の金種を特定する上で必要となる硬貨の外径情報となり、正確さが求められる。認識部6と認識センサ12との間の距離L1は離れすぎると正確性を欠くことになり、硬貨1枚ほど離れた30mm程度が望ましい。
ここでは、2種類の硬貨、すなわち、第1の硬貨aと第2の硬貨bが、入金繰り出し部5(図1参照)によって、平滑面11上を第1の硬貨aおよび第2の硬貨b同士の距離L2分の間隔を保持して通過するとする。第1の硬貨aの直径がDaであり、第2の硬貨bの直径がDbであるとする。また、ベルト搬送速度がvであるとする。
図4は、関連技術のタイムチャートである。図4において、第1行目は第1の硬貨aが認識センサ12に対して通過する動作を示し、第2行目は第2の硬貨bが認識センサ12に対して通過する動作を示す。第3行目は認識センサ12における検出動作を示す。第4行目は認識部6の認識動作を示す。
最初に、認識センサ12は、時刻t1に、第1の硬貨aの通過開始(即ち、第1の硬貨aの前端)を検出する。認識センサ12は、この時刻t1から(Da/v)の時間経過した時刻t3に、第1の硬貨aの通過終了(すなわち、第1の硬貨aの後端)を検出する。これにより、認識部6は、第1の硬貨aが認識センサ12を通過するのに要した時間(t3−t1)=(Da/v)を計測することによって、第1の硬貨aの距離Da分の距離情報を認識することができる。
一方、時刻t1から(L1/v)の時間経過した時刻t2に、認識部6は第1の硬貨aに対する認識処理を開始する。また、時刻t3から(L1/v)の時間経過した時刻t5で、認識部6は第1の硬貨aに対する認識処理を終了する。このことから、認識部6はDaという外径情報を認識センサ12から取得し、他の情報も含めて通過硬貨が第1の硬貨aであるとの識別処理を行う。
また、認識センサ12は、時刻t3から(L2/v)の時間経過した時刻t4に、第2の硬貨bの通過開始(即ち、第2の硬貨bの前端)を検出する。認識センサ12は、この時刻t4から(Db/v)の時間経過した時刻t7に、第2の硬貨bの通過終了(すなわち、第2の硬貨bの後端)を検出する。これにより、認識部6は、第2の硬貨bが認識センサ12を通過するのに要した時間(t7−t4)=(Db/v)を計測することによって、第2の硬貨bの距離Db分の距離情報を認識することができる。
一方、時刻t4から(L1/v)の時間経過した時刻t6に、認識部6は第2の硬貨bに対する認識処理を開始する。また、時刻t7から(L1/v)の時間経過した時刻t8で、認識部6は第2の硬貨bに対する認識処理を終了する。このことから、同様に、認識部6はDbという外径情報を認識センサ12から取得し、他の情報も含めて通過硬貨が第2の硬貨bであるとの識別処理を行う。
図5は関連技術の硬貨搬送の構成において、流通硬貨に付着した汚れ等の影響や、長期使用による経年劣化の影響でベルトの搬送力が低下した際の挙動を示している。
図5は、汚れや経年劣化によってベルトの摩擦が著しく低下すると、第1の硬貨aに滑りが発生し、やがて入金繰り出し部5(図1)でつくられた硬貨同士の間隔L2がなくなり、その後に第2の硬貨bとの連鎖状態となって、連鎖状態となった硬貨(a+b)として、認識センサ12まで搬送される例を示している。
この場合、認識センサ12は、連鎖状態となった硬貨(a+b)が当該認識センサ12を通過開始してから、当該認識センサ12を通過終了するまでにかかる時間に対応する、(Da+Db)分の距離情報を認識部6に通知することになる。これでは合致する硬貨がなく、金属媒体の検出を正常に行うことができない結果となる。この場合、認識部6はやむを得ず識別エラーとさせる。このため、関連技術では、エラーが発生する度に運用停止となり、お客様を待たせてしまうことが課題であった。
図6は関連技術の構成における連鎖搬送時のタイムチャートである。図6において、第1行目は第1の硬貨aが認識センサ12に対して通過する動作を示し、第2行目は第2の硬貨bが認識センサ12に対して通過する動作を示す。第3行目は認識センサ12における検出動作を示す。第4行目は認識部6の認識動作を示す。
最初に、認識センサ12は、時刻t11に、第1の硬貨aの通過開始(即ち、第1の硬貨aの前端)を検出する。この時刻t11から(Da/v)の時間経過した時刻t13に、第1の硬貨aの後端が認識センサ12に対して通過する。しかしながら、第1の硬貨aと第2の硬貨bとは連鎖状態となった硬貨(a+b)になっているので、認識センサ12は、第1の硬貨aの通過終了を検出することができない。その結果、認識部6は、第1の硬貨aが認識センサ12を通過するのに要した時間(t13−t11)=(Da/v)を計測することができず、第1の硬貨aの距離Da分の距離情報を認識することができない。
一方、時刻t11から(L1/v)の時間経過した時刻t12に、認識部6は連鎖状態となった硬貨(a+b)に対する認識処理を開始する。しかしながら、認識センサ12から上記時刻t13の情報が通知されないので、認識部6は第1の硬貨aに対する認識処理を終了できない。
また、上記時刻t13に、第2の硬貨bの前端が認識センサ12に対して通過する。しかしながら、第1の硬貨aと第2の硬貨bとは連鎖状態となった硬貨(a+b)になっているので、認識センサ12は、第2の硬貨bの通過開始を検出することができない。認識センサ12は、この時刻t13から(Db/v)の時間経過した時刻t15に、第2の硬貨bの通過終了(すなわち、第2の硬貨bの後端)を検出することはできる。しかしながら、認識部6は、第2の硬貨bが認識センサ12を通過するのに要した時間(t14−t13)=(Db/v)を計測することができず、第2の硬貨bの距離Db分の距離情報を認識することができない。
したがって、時刻t14から(L1/v)の時間経過した時刻t15で、認識部6は連鎖状態となった硬貨(a+b)に対する認識処理を終了する。
よって、上述したように、認識センサ12は、連鎖状態となった硬貨(a+b)が、当該認識センサ12を通過開始した時刻t11から当該認識センサ12を通過終了する時刻t14までに要する時間(t14−t11)に対応する、(Da+Db)分の距離情報を認識部6に通知することになる。
[実施の形態]
次に本発明の実施の形態について説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る認識部6の手前の硬貨搬送路の概略図である。本実施形態に係る硬貨搬送路は、次に述べるような2つの特徴を有する。
1つ目の特徴は、認識部6直前の認識センサ12と同じ位置で、平滑面11に段差11aを設けたことである。上記位置は、例えば、認識部6からの距離30mm程度だけ離間した位置である。段差11aは、上流(入金繰り出し部5)から下流(認識部6)に向かって落下する段差方向とし、硬貨の搬送を阻害するものではない。また、段差11aは、ベルト搬送性能に影響がない1〜2mm程度の段差とする。同様に段差11aは、認識センサ12の検出性能に影響を与えるものではない。
駆動ベルト10によって認識部6まで搬送される硬貨は、段差11aを通過した際、落下による衝撃音を発するものとする。この衝撃音は、電車が線路を通過する際のガタンゴトン音と同様な「継ぎ目音」である。この「継ぎ目音」は硬貨の種類によらず、硬貨が通過する度に発せられるものとする。
2つ目の特徴は、認識部6がマイクロホン13を内蔵していることである。マイクロホン13は、音データを電気信号に変換して、電気信号を認識部6に供給する。認識部6は、この電気信号を識別処理に取り込む機能を有している。またマイクロホン13は、硬貨が段差11aを通過する際の「継ぎ目音」が感知できる感度を有するものとする。すなわち、マイクロホン13は、段差11aを各硬貨が通過する際に発する衝撃音を検出して、電気信号に変換する音検出手段として働く。認識部6は、電気信号に基づいて各硬貨を認識する。したがって、認識センサ12とマイクロホン13と認識部6との組み合わせは、各硬貨(各金属円盤体)を認識するための認識手段として働く。
これら2つの特徴は、複雑な機構を周知の硬貨処理装置に追加する必要はなく、比較的容易に実現することができる。
図8を用いて本発明の実施形態の動作について説明する。
図8に示されるように、本実施形態の上記特徴を有した構成の硬貨処理装置100において、認識部6の手前の搬送路上を第1の硬貨aと第2の硬貨bとが搬送されている。この状態で、第1の硬貨aは汚れの影響を受け、滑りが発生し、第2の硬貨bとの連鎖状態となって、連鎖状態となった硬貨(a+b)として、認識センサ12まで搬送される。
認識センサ12では、連鎖状態となった第1の硬貨aの通過終了の合図を受け取ることができない。しかしながら、認識部6は、第1の硬貨aが段差11aを通過する際の「継ぎ目音」をマイクロホン13より感知することにより、この感知音を第1の硬貨aの“エンド情報”と認識する。
つまり、本発明の実施形態においては、硬貨の“エンド情報”は、関連技術の認識センサ12の通過終了の合図ではなく、段差11aを硬貨が通過する際の「継ぎ目音」を通過終了の合図としている。「継ぎ目音」による“エンド情報”を基に、認識部6は、第1の硬貨aの1枚分の識別情報の範囲を特定し、正しく識別を行うことができる。すなわち、認識部6は、上記電気信号と上記通過状況信号とに基づいて、各硬貨(各金属円盤体)の外径情報を認識することができる。
次に連鎖状態となった第2の硬貨bについては、認識センサ12にて通過開始の合図が通知されることなく、段差11aを第2の硬貨bが通過する際の「継ぎ目音」による通過終了の合図を受けることになる。この場合、第2の硬貨bの“スタート情報”は、第1の硬貨aの“エンド情報”が兼ねることとする。
つまり、本発明の実施形態においては、硬貨の“スタート情報”は関連技術の通りの認識センサ12の通過開始の合図であるが、認識センサ12の通過開始の合図を受けることなく、「継ぎ目音」の通過終了の合図を受けた場合のみ、前の硬貨の“エンド情報”が次の硬貨の“スタート情報”を兼ねている。
図9は本発明の実施形態における連鎖搬送時のタイムチャートである。図9において、第1行目は第1の硬貨aが認識センサ12に対して通過する動作を示し、第2行目は第2の硬貨bが認識センサ12に対して通過する動作を示す。第3行目は認識センサ12における検出動作を示し、第4行目はマイクロホン13の動作を示す。第5行目は認識部6の認識動作を示す。
最初に、認識センサ12は、時刻t21に、第1の硬貨aの通過開始(即ち、第1の硬貨aの前端)を検出する。マイクロホン13は、この時刻t21から(Da/v)の時間経過した時刻t23に、第1の硬貨aが段差11aを通過する際に発せされる“カチンッ”という「継ぎ目音」検出する。この時刻t23は、認識センサ12に対して、第1の硬貨aの通過が終了する(すなわち、第1の硬貨aの後端が通過する)時刻に等しい。これにより、認識部6は、第1の硬貨aが認識センサ12によって検出された通過開始時刻t21から段差11aを通過する時刻t23までの時間(t23−t21)=(Da/v)を計測することによって、第1の硬貨aの距離Da分の距離情報を認識することができる。
一方、時刻t21から(L1/v)の時間経過した時刻t22に、認識部6は第1の硬貨aに対する認識処理を開始する。また、時刻t23から(L1/v)の時間経過した時刻t24で、認識部6は第1の硬貨aに対する認識処理を終了する。このことから、認識部6はDaという外径情報を認識センサ12とマイクロホン13とから取得し、他の情報も含めて通過硬貨が第1の硬貨aであるとの識別処理を行う。
また、上記時刻t23は、認識センサ12に対して、第2の硬貨bの通過が開始する(すなわち、第2の硬貨bの前端が通過する)時刻に等しい。認識センサ12は、この時刻t23から(Db/v)の時間経過した時刻t25に、第2の硬貨bの通過終了(すなわち、第2の硬貨bの後端)を検出する。と同時に、マイクロホン13は、第2の硬貨bが段差11aを通過する際に発せされる“カチンッ”という「継ぎ目音」を検出する。これにより、認識部6は、第2の硬貨bが認識センサ12を通過するのに要した時間(t25−t23)=(Db/v)を計測することによって、第2の硬貨bの距離Db分の距離情報を認識することができる。
一方、時刻t23から(L1/v)の時間経過した時刻t24に、認識部6は第2の硬貨bに対する認識処理を開始する。また、時刻t25から(L1/v)の時間経過した時刻t26で、認識部6は第2の硬貨bに対する認識処理を終了する。このことから、同様に、認識部6はDbという外径情報を認識センサ12およびマイクロホン13から取得し、他の情報も含めて通過硬貨が第2の硬貨bであるとの識別処理を行う。
これらの応用として、硬貨が3枚以上連鎖してしまった場合も、同様に、硬貨処理装置100は、硬貨を正しく検知することが可能である。
次に、本発明の実施形態の効果について説明する。
本発明の実施形態においては、ベルト搬送力低下の影響を受けて、認識部に到達する前に硬貨の連鎖状態が発生してしまった場合においても、複雑な機構を追加することなく、硬貨1枚分の識別情報の範囲を特定し、正しく硬貨の識別を行うことができ、安定した運用が可能となる。
次に、本発明の変形例について説明する。
本発明の構成は硬貨処理装置100に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、認識センサ12と段差11aとを搬送路上の同じ位置としたが、本発明は、認識センサ12と段差11aとは同じ位置でなくても良い。
また、本発明では、入金繰り出し部5にて硬貨同士の間隔をあける必要がなくなるため、この機能(入金繰り出し部5)を省略しても良い。
さらに、本発明では、図10に示されるように、硬貨の通過開始の合図を、通過終了の合図と同様に「継ぎ目音」としても良い。図10においては、図7の構成に対して、金属レバー14とバネ15との組み合わせを更に追加している。
本発明では、認識センサ12の機能を認識部6自体に持たせ、認識センサ12を削除しても良い。その場合は、認識部6と段差11aとの間の距離L1が分かっていればよい。
上述の実施の形態では、日本円の硬貨のうち、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉の4つの金種を取り扱う硬貨処理装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。硬貨処理装置で取り扱う金種の種類とその組み合わせは問わない。処理対象とする硬貨が日本円であれば、500円玉、100円玉、50円玉、10円玉、5円玉、1円玉の6つの金種のうち、1〜6種の任意の金種を処理対象としてよい。処理対象とする金種の組み合わせも任意である。
また、取り扱う硬貨は日本円に限定されるものではなく、他国の硬貨、例えば米ドル、中国元等の硬貨であってもよい。また、複数の国の硬貨が混在してもよい。
更に、本発明の金属円盤体処理装置が処理対象とする金属円盤体は硬貨に限らない。メダル、トークン等の金属媒体を含む、円盤状の金属媒体全般を処理対象とすることができる。