JP2020117750A - 硫酸水溶液からの有価金属の回収方法及び回収設備 - Google Patents
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Abstract
Description
先ず、本発明の有価金属の回収方法が好適に適用されるHPAL法について図1を参照しながら説明する。この図1に示すHPAL法は、原料としてのニッケル酸化鉱石に対して粉砕及び篩別等の前処理を行って所定の粒度にすると共に、水を加えて所定の固形分濃度の鉱石スラリーに調製する前処理工程S1と、該前処理工程S1で調製された鉱石スラリーに硫酸を添加して高温高圧下で浸出処理を施す高温加圧酸浸出工程S2と、該高温加圧酸浸出工程S2で得た浸出スラリーを多段洗浄しながら浸出残渣を分離除去することで、ニッケル及びコバルトと共に不純物元素を含む粗硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液を得る固液分離工程S3と、該粗硫酸ニッケル水溶液にpH調整剤を添加することで不純物元素を含む中和澱物を生成し、これを分離除去してニッケル及びコバルトと共に亜鉛を含む中和終液を得る中和工程S4と、該中和終液に硫化剤を添加することで亜鉛硫化物を生成し、これを分離除去してニッケル及びコバルトを含む脱亜鉛終液を得る脱亜鉛工程S5と、該脱亜鉛終液に硫化剤を添加することでニッケル及びコバルトを含む混合硫化物を生成した後、固液分離により該混合硫化物を回収する硫化工程S6と、該硫化工程S6から排出されるニッケル貧液及び上記固液分離工程S3から排出される浸出残渣を無害化する無害化工程S7とを有している。以下、これら工程の各々について説明する。
前処理工程S1では、先ず原料としてのニッケル酸化鉱石に対して、必要に応じてジョークラッシャーなどの粉砕機に投入して粉砕し、好ましくは乾式分級により粗大な鉱石や夾雑物を除去した後、該粉砕された鉱石を所定の目開きを有するスクリーンに適量の水と共に導入することで湿式分級を行う。これにより、所定の粒度を有するニッケル酸化鉱石を鉱石スラリーの形態で篩下側に回収することができる。上記の湿式分級で得た鉱石スラリーは、一般に固形分濃度が10〜30質量%であり、そのまま後段の高温加圧酸浸出工程S2で処理するのは非効率である。そこで、一般的には上記鉱石スラリーをシックナーに導入して重力沈降により鉱石スラリーを濃縮し、該シックナーの底部から抜き出される高濃度鉱石スラリーを次工程の高温加圧酸浸出工程S2に移送することが行われている。
高温加圧酸浸出工程S2では、上記前処理工程S1で調製された高濃度鉱石スラリーをオートクレーブと称する圧力容器に硫酸と共に装入し、該高濃度鉱石スラリーを攪拌すると共に、高圧蒸気を吹き込んで該圧力容器内を圧力3〜4.5MPaG程度、温度220〜280℃程度の高温高圧条件下に維持することで酸浸出処理を行う。これにより、浸出反応及び高温熱加水分解反応が生じ、ニッケル、コバルト等の硫酸塩としての浸出と、浸出された硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化が行われ、浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーが生成される。
固液分離工程S3では、直列に連結した複数基のシックナーに上記浸出スラリーと洗浄液とを互いに向流になるように連続的に導入する向流洗浄法(CCD法)により、浸出スラリーを多段洗浄しながら、凝集剤を用いて上記浸出残渣を重力沈降により分離除去するのが好ましい。これにより、最上流のシックナーのオーバーフロー口からはニッケル及びコバルトのほか亜鉛等の不純物元素を含む粗硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液が得られ、最下流のシックナーの底部からは浸出残渣スラリーが抜き出される。この浸出残渣スラリーは、後述する無害化工程S7において中和処理により重金属が除去された後、テーリングダムに移送される。なお、上記洗浄液にはpH1.0〜3.0程度の水溶液を用いることが好ましく、この条件を満たす後工程の硫化工程S6から排出されるニッケル貧液を繰り返して利用するのが好ましい。
中和工程S4では、上記固液分離工程S3において浸出残渣から分離された粗硫酸ニッケル水溶液に炭酸カルシウム等のpH調整剤を添加し、これによりpH調整することで遊離硫酸を中和すると共に、不純物元素から中和澱物を生成させる。この中和澱物を固液分離により除去することで、ニッケル及びコバルトのほか主に亜鉛からなる不純物元素を含む中和終液が得られる。この中和工程S4では、中和終液のpHが4.0以下、好ましくは3.0〜3.5、より好ましくは3.1〜3.2になるように上記pH調整を行うのが好ましく、これにより上記粗硫酸ニッケル水溶液中に残留する主に3価の鉄イオンやアルミニウムイオンを中和澱物として効果的に除去できる。
脱亜鉛工程S5では、微加圧された反応槽内に上記中和工程S4で不純物が除去された中和終液を導入し、該反応槽の気相中への硫化水素ガスの吹き込みなどによる硫化剤の添加により硫化処理を施す。これにより、ニッケル及びコバルトに対して亜鉛を選択的に硫化して亜鉛硫化物を生成させることができる。この亜鉛硫化物を分離除去することで、ニッケル及びコバルトを含む硫酸水溶液からなる脱亜鉛終液(ニッケル回収用母液)が得られる。
硫化工程S6では、上記脱亜鉛工程S5の反応槽よりも高い圧力に加圧された硫化反応容器に上記脱亜鉛終液を導入し、この脱亜鉛終液に対して水硫化ナトリウム水溶液と過剰の硫化水素ガスとを硫化剤として添加する。これにより、硫化反応を生じさせてニッケル及びコバルトを含む硫化物(ニッケルコバルト混合硫化物)を生成させる。このニッケルコバルト混合硫化物は、ろ過などの固液分離により回収することができ、その際、液相側にニッケル貧液が排出される。なお、この硫化工程S6で処理される脱亜鉛終液には、Fe、Al、Mn等の不純物金属イオンが各々数g/L程度含まれる場合があるが、これら不純物成分はニッケル及びコバルトに比べて硫化物としての安定性が低く、よって上記ニッケルコバルト混合硫化物にはほとんど分配されない。
無害化工程S7では、上記硫化工程S6から排出される鉄、アルミニウム、マンガン等の不純物金属イオン及び未反応のNiイオンを含むニッケル貧液と、上記の固液分離工程S3から排出される重金属を含む浸出残渣とに対して中和処理を施す。これにより、排出基準を満たす程度まで上記の金属イオンや重金属を除去することができる。この無害化工程S7における中和処理は、石灰石を中和剤として用いる第1の中和処理と、消石灰を中和剤として用いる第2の中和処理とからなる2段階の中和処理が好ましく、これにより上記金属イオンの濃度を1mg/L程度まで効率的に除去することができる。
上記の硫化工程S6においては、有価金属の回収率を高めるため、直列に接続された2基以上の加圧した硫化反応容器が用いられ、それらのうち最上流に位置する硫化反応容器に、ニッケル及びコバルトを含有する硫酸水溶液(以下、硫化始液とも称する)が硫化剤としての水硫化ナトリウム水溶液及び純度95〜99体積%の硫化水素ガスと共に供給される。この最上流に位置する硫化反応容器には、更に種晶として硫化工程S6において生成したニッケルコバルト混合硫化物の一部が繰り返される。これにより、該硫化反応容器内では、下記式1で示される硫化水素による硫化反応と、下記式2で示される水硫化ナトリウムによる硫化反応が生じる(式中、MはNi及びCoを表す)。
[式1]
MSO4+H2S→MS+H2SO4
[式2]
MSO4+2NaHS→Na2SO4+MS+H2S
[式3]
CO2+2NaOH→Na2CO3+H2O
[式4]
CO2+Na2CO3+H2O→2NaHCO3
[式5]
2NaHCO3+H2SO4→Na2SO4+2H2O+2CO2
図1に示すHPAL法のプロセスフローに沿ってニッケル酸化鉱石を湿式処理してニッケルコバルト混合硫化物を作製した。その際、図2に示すような設備を用いて、脱亜鉛工程S5によって得た硫化始液としての硫酸水溶液から有価金属としてのニッケル及びコバルトを回収した。具体的には、直列に接続した第1〜第4反応容器1〜4には、各々容量約750m3の硫化反応槽を用い、それらのうちの第1反応容器1に連続的に硫化始液を導入し、順に後段の反応容器に移送することで硫化反応を進行させ、ニッケルコバルト混合硫化物を生成させた。
[式6]
N=(硫化始液体積供給量×硫化始液ニッケル濃度−硫化後液体積抜出量×硫化後液ニッケル濃度)÷(硫化始液体積供給量×硫化始液ニッケル濃度)
低濃度水硫化ナトリウム水溶液と種晶用の硫化物スラリーとを種晶貯槽17で混合せずに、別々に第1反応容器1に添加した以外は上記実施例と同様に運転した。その結果、4基の反応容器の液面レベル指示値の標準偏差は3.58%まで増加し、ニッケル回収率は96%まで低下した。
S2 高温加圧酸浸出工程
S3 固液分離工程
S4 中和工程
S5 脱亜鉛工程
S6 硫化工程
S7 無害化工程
1 第1反応容器
2 第2反応容器
3 第3反応容器
4 第4反応容器
5 第1スクラバー
6 第1スクラバーポンプ
7 脱気槽
8 固液分離装置
9 真空ポンプ
10 コンプレッサー
11 硫化水素除去槽
12 ブロワー
13 貧液ポンプ
14 吸引ファン
15 第2クスラバー
16 第2スクラバーポンプ
17 種晶貯槽
18 濃縮スラリーポンプ
19 スラリー貯槽
20 硫化物スラリーポンプ
21 種晶ポンプ
Claims (4)
- 加圧された硫化反応容器内において硫酸水溶液に硫化水素ガスを添加することで該硫酸水溶液に含まれるニッケル及びコバルトから硫化物を生成した後、該硫化物を固液分離により回収する有価金属の回収方法であって、該固液分離時に液相側に排出される溶存硫化水素を含んだ貧液を曝気し、該曝気により排出される硫化水素を含んだガスを苛性ソーダ水溶液で吸収し、得られた炭酸根を含む水硫化ナトリウム水溶液を種晶用の硫化物スラリーと混合して該炭酸根を除去した後に該硫化反応容器に供給することを特徴とする有価金属の回収方法。
- 前記炭酸根を除去した後の前記水硫化ナトリウム水溶液をそのまま前記硫化反応容器に供給することを特徴とする、請求項1に記載の有価金属の回収方法。
- 前記硫酸水溶液が、ニッケル酸化鉱石に硫酸を加えて高温高圧下で酸浸出処理することで生成される浸出液であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有価金属の回収方法。
- 加圧下において硫酸水溶液に硫化水素ガス、水硫化ナトリウム水溶液及び種晶を添加することで該硫酸水溶液に含まれるニッケル及びコバルトから硫化物を生成する硫化反応容器と、該硫化反応容器から排出される硫化物を含むスラリーを固液分離する固液分離装置と、該固液分離装置から液相側として排出される溶存硫化水素を含んだ貧液を曝気する曝気設備と、該曝気設備から排出される硫化水素を含んだガスを苛性ソーダ水溶液で吸収させて炭酸根を含む水硫化ナトリウム水溶液を生成する吸収設備と、該水硫化ナトリウム水溶液を前記硫化物を含むスラリーの一部と混合して該炭酸根を除去することで前記硫化反応容器に添加する種晶及び水硫化ナトリウム水溶液を生成する混合槽とを有することを特徴とする有価金属の回収設備。
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