JP7476740B2 - 低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法 - Google Patents

低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法に関し、特に有価金属のニッケル及びコバルトを含有する硫酸塩溶液に対して、加圧下で硫化剤を添加することでこれら有価金属を混合硫化物として回収するニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法に関する。
ニッケル湿式製錬の技術分野においては、低ニッケル品位のニッケル酸化鉱石原料に対して高温高圧下で酸浸出処理を施すことによって、ニッケル等の有価金属を効率よく回収するHPAL法(High Pressure Acid Leach)と称する技術が実用化されている。このHPAL法では、上記の酸浸出処理において硫酸により浸出されたニッケル、コバルト等の有価金属を含む硫酸塩溶液からなる浸出液に対して、中和処理を施すことで鉄等の不純物を除去した後、加圧下で硫化水素ガスなどの硫化剤を添加することでニッケル・コバルト混合硫化物を生成している。このニッケル・コバルト混合硫化物を含んだスラリーを濃縮及び脱水することで、粉粒状のニッケル・コバルト混合硫化物の製品(MS製品とも称する)を回収することができる。
上記のニッケル酸化鉱石原料には、不純物として上記した鉄のほか亜鉛が含まれており、この亜鉛は上記酸浸出処理によってほぼ全量が浸出される。そのため、適切に処理しなければ、浸出液中に含まれる亜鉛は、後工程の混合硫化物生成工程における硫化剤の添加によりニッケルやコバルトと共に硫化し、亜鉛硫化物としてニッケル・コバルト混合硫化物に混入する。このニッケル・コバルト混合硫化物に混入した亜鉛はMS製品の利用先では不純物となるため、混合硫化物生成工程よりも前工程で除去するのが好ましい。そこで、例えば特許文献1には、硫酸塩溶液からなる浸出液のpHを調整した後、該浸出液中に硫化水素ガスを吹き込むことで、硫化反応の反応速度を抑制した弱い反応条件下で亜鉛を選択的に硫化亜鉛として沈澱させ、これをろ過等により除去する技術が開示されている。
特開2005-350766号公報
上記のHPAL法によるニッケル湿式製錬で製造されたニッケル・コバルト混合硫化物製品は、特殊鋼や電池材料などに使用される高ニッケル品位の電気ニッケルの製造プラントの原料として用いられたり、溶媒抽出等により精製することでニッケルめっき、アルミ発色、触媒、電池材料等の幅広い用途に利用される硫酸ニッケルの原料として用いられたりする。そのため、上記のニッケル・コバルト混合硫化物製品においては、亜鉛等の不純物の含有率をできるだけ低くして品質を高めることが求められている。
しかしながら、上記のように、混合硫化物生成工程よりも前工程において亜鉛を硫化亜鉛として除去するプロセスは、反応条件の変動等により亜鉛の除去効率が低下することがあり、この場合は、混合硫化物生成工程において亜鉛品位の高いニッケル・コバルト混合硫化物が生成されることがあった。このニッケル・コバルト混合硫化物中に含まれる硫化亜鉛は、混合硫化物生成工程よりも後工程で除去するのは困難であるため、亜鉛品位に関して規格値を超えた規格外のニッケル・コバルト混合硫化物となり、製品として出荷することができなくなる。
従来、上記のような高亜鉛品位であるため規格外と認定されたニッケル・コバルト混合硫化物は、これによる歩留まりの低下を解消するため、亜鉛品位に関して規格値の要件を満たす別ロットのニッケル・コバルト混合硫化物と混合して亜鉛品位をいわゆる希釈することで製品として出荷することが行なわれていた。しかしながら、亜鉛品位が規格値よりもはるかに高い規格外のニッケル・コバルト混合硫化物の場合は少しずつしか混合することができないため、貯蔵スペースに規格外品として大量に積み上がる状況が発生することがあった。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、ニッケル・コバルト混合硫化物中に不純物として含まれている硫化亜鉛を除去することが可能な低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、高亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物を一旦空気中に暴露するなどの方法により酸化処理を施すことで、該ニッケル・コバルト混合硫化物に含まれている硫化亜鉛を硫酸亜鉛に酸化させた後、この酸化処理されたニッケル・コバルト混合硫化物を硫酸酸性水溶液に接触させて該硫酸亜鉛を溶解させることで、低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法は、ニッケル及びコバルトを含有する硫酸水溶液に対して加圧下で硫化剤を添加することで生成したニッケル・コバルト混合硫化物を固液分離により回収するニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法であって、硫化亜鉛を高品位で含有する規格外のニッケル・コバルト混合硫化物を酸化処理することで、該硫化亜鉛の少なくとも一部を酸化させて硫酸亜鉛にする酸化工程と、該酸化工程により生じた硫酸亜鉛を硫酸水溶液に溶解させる溶解工程とを有することを特徴としている。
本発明によれば、歩留まりを低下させることなく亜鉛品位の低いニッケル・コバルト混合硫化物製品を製造することが可能になる。
本発明の実施形態に係る低硫化亜鉛のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法を示す工程フロー図である。 図1のMS生成工程、酸化工程、溶解工程及びMS回収工程が行なわれる設備の構成図である。
以下、図1を参照しながら本発明の実施形態に係る低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法について説明する。この図1に示すニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法は、原料としてのニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して高温高圧下で酸浸出処理を行うことでニッケル及びコバルトを浸出する浸出工程S1と、該酸浸出処理後に残る浸出残渣を分離除去して浸出液を得る固液分離工程S2と、該浸出液に中和剤を添加して鉄分等の不純物を分離除去して中和終液を得る中和工程S3と、該中和終液に硫化剤を添加して不純物の亜鉛を亜鉛硫化物として分離除去してニッケル及びコバルトを含む母液を得る脱亜鉛工程S4と、該母液に硫化剤を添加してニッケル・コバルト混合硫化物を生成するMS生成工程S5と、硫化亜鉛を高品位で含有する規格外のニッケル・コバルト混合硫化物を酸化処理することで該硫化亜鉛の少なくとも一部を硫酸亜鉛に変化させる酸化工程S6と、該酸化処理された規格外のニッケル・コバルト混合硫化物を上記のMS生成工程S5で生成したニッケル・コバルト混合硫化物を含む硫酸水溶液に混合することで、該硫酸亜鉛を該硫酸水溶液に溶解させる溶解工程S7と、該溶解工程S7で混合されたMS生成工程S5からのニッケル・コバルト混合硫化物と規格外のニッケル・コバルト混合硫化物との混合物を濃縮して製品として回収するMS回収工程S8とから構成される。以下、これら工程の各々について具体的に説明する。
(1)浸出工程S1
浸出工程S1では、略円筒形状の圧力容器を横向きにしてその内部を堰で複数の貯留部で区画した構造のオートクレーブに、ニッケル酸化鉱石原料に水を加えて調製した鉱石スラリーを硫酸と共に導入し、撹拌しながら高圧蒸気を吹き込むことで、温度220~280℃程度、圧力3~4.5MPaG程度の高温高圧条件下で酸浸出処理を施す。これにより、ニッケル及びコバルト等の硫酸塩としての浸出と、この浸出により生じた硫酸鉄のヘマタイトとしての固定化とが行なわれる。上記のニッケル酸化鉱石原料には、リモナイト鉱やサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が主として用いられる。このラテライト鉱は、一般的にニッケルを0.8~2.5質量%程度、鉄を10~50質量%程度含有する水酸化物やケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)を主成分とする鉱物である。
(2)固液分離工程S2
固液分離工程S2では、上記浸出工程S1の酸浸出処理後に残る浸出残渣を含む浸出スラリーを、好適にはCCD法により固液分離する。このCCD法は、直列に接続された複数のシックナーのうち最も上流側のシックナーに該浸出スラリーを導入すると共に、最も下流側のシックナーに洗浄液を導入してこれらを互いに向流に流すことで洗浄しながら固液分離を行うものであり、ニッケル及びコバルトを含む浸出液を最も上流側のシックナーのオーバーフロー部から上澄液として効率よく回収することができる。なお、主にヘマタイトからなる浸出残渣は、最も下流側のシックナーの底部から濃縮スラリーの形態で抜き出される。この浸出残渣は、必要に応じて無害化処理が施された後、系外に排出される。上記洗浄液はpHが1~3程度であるのが好ましく、後工程のMS回収工程S8から排出される貧液はこの条件を満たすので上記洗浄液に好適に利用される。
(3)中和工程S3
中和工程S3では、上記固液分離工程S2において回収された浸出液に対して、酸化を抑制しながら炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等の中和剤を添加してpHを好ましくは1~4の範囲内に、より好ましくは2.5~3.5の範囲内に調整する。これにより、浸出液に含まれる不純物元素である鉄やアルミニウムの大部分を中和澱物として析出させることができる。この中和澱物をシックナー等の固液分離手段により除去することにより、ニッケルやコバルト等の有価金属を含んだ中和終液が得られる。なお、上記の固液分離手段で除去された中和澱物スラリーには回収しきれなかった有価金属が含まれているので、固液分離工程S2に繰り返される。
(4)脱亜鉛工程S4
脱亜鉛工程S4では、上記中和工程S3で回収した中和終液を脱亜鉛反応容器に装入し、該脱亜鉛反応容器内を微加圧に保ちながら硫化水素、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等の硫化剤を添加する。このように微加圧に保つことで、ニッケルやコバルトに比べて硫化されやすい亜鉛を選択的に硫化することができる。生成された亜鉛硫化物は、シックナー等の固液分離手段により分離除去することができ、これにより、ニッケルやコバルト等の有価金属を含む母液が得られる。
(5)MS生成工程S5
MS生成工程S5では、上記脱亜鉛工程S4で亜鉛が除去されたニッケル及びコバルトを含む硫酸酸性水溶液からなる母液を加圧状態が維持された反応容器に導入し、ここに硫化水素、硫化ナトリウム、水素化硫化ナトリウム等の硫化剤を添加する。これにより、該母液に含まれるニッケル及びコバルトが硫化され、ニッケル・コバルト混合硫化物(MSとも称する)が生成される。
(6)酸化工程S6
酸化工程S6では、硫化亜鉛の品位が所定の規定値を超えているため、例えばフレキシブルコンテナバッグ(以下、フレコンバッグと称する)の荷姿で貯蔵スペースに積み上げられている規格外品としてのニッケル・コバルト混合硫化物(以下、規格外MSとも称する)を原料に用いる。この規格外MSを上記フレコンバッグから払い出してアスファルトやコンクリート等の地面(場面とも称する)の上に高さ50cm程度の山状に拡げ、そのまま1~10時間程度、好ましくは3~5時間程度かけて大気雰囲気の下で空気に曝露させることで酸化処理を行う。
上記のフレコンバッグに詰めて保管されている規格外MSは、通常はニッケル・コバルト混合硫化物製品と同様に窒素ガスが封入されているため酸化が抑制されているが、上記のようにフレコンバッグから払い出すことで大気に曝される。亜鉛はニッケル・コバルト混合硫化物と比較して硫化物よりも硫酸塩の方が安定な形態であるため、規格外MSに不純物として含まれている硫化亜鉛の少なくとも一部は容易に酸化される。その結果、下記式1に示す酸化反応が生じて硫化亜鉛は硫酸亜鉛に変化する。
[式1]
ZnS+2O=ZnSO
上記の大気雰囲気下で酸化処理された規格外MSは、次に図2に示すように、上記酸化処理を行なった場面の近傍に設けられている調製ピット1に工業用水を用いて流し込まれ、更に必要に応じて調製ピット1内に直接工業用水を注水する。これにより、好ましくは固形分濃度20質量%程度以下の酸化処理済みの規格外MSスラリーが調製される。この規格外MSスラリーの固形分濃度が20質量%を超えると、該スラリーの流動性が低下するので移送配管内で閉塞等の問題が生じやすくなるので好ましくない。
上記の酸化処理済みの規格外MSスラリーは、そのままでは固形分が沈降分離して調製ピット1の底部に堆積するので、該調製ピット1内の底部近傍に設けたスパージャー等の空気導入手段1aを介して図示しないブロワーやプラントエアーなどの空気供給源から空気を吹き込むのが好ましい。これにより、調製ピット1内で上記酸化処理済みの規格外MSスラリーが撹拌されるので均質な懸濁状態が維持されるうえ、上記の大気雰囲気下での酸化処理では酸化されなかった硫化亜鉛を硫酸亜鉛に酸化させる効果が得られる。
上記のように、吹き込んだ空気による硫化亜鉛の酸化の効果をも考慮すると、調製ピット1内のスラリー1m当たり1~10Nm/hr程度の流量で空気を吹き込むのが好ましい。なお、上記の酸化処理の対象となる規格外MSの量があまり多くない場合や酸化亜鉛の品位があまり高くない場合などのように、調製ピット1内での酸化処理だけで足りる場合は、上記の大気雰囲気下での酸化処理を省いてもよい。上記の調製ピット1で調製された酸化処理済の規格外MSスラリーは、次に溶解工程S7で処理される。
(7)溶解工程S7
溶解工程S7では、上記の酸化工程S6で酸化処理された規格外MSスラリーと、上記のMS生成工程S5において、前工程で正常に脱亜鉛された母液から生成された低亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物(正常MSとも称する)のスラリーとを混合する。これにより、上記の酸化処理済の規格外MSに含まれる硫酸亜鉛を上記正常MSのスラリーに含まれる硫酸酸性水溶液に溶解させることができる。上記の混合による硫酸亜鉛の溶解処理は、専用の混合溶解槽を用いて行なってもよいが、図2に示すように、MS生成工程S5で生成した正常MSのスラリーを沈降分離することでニッケル・コバルト混合硫化物の回収を行うMS回収工程S8のシックナーを用いて行うのが設備コストを抑えることができるので好ましい。
前工程の酸化工程S6で酸化処理された規格外MSと、上記のMS生成工程S5で生成された正常MSとの混合割合は、各々に含まれる硫化亜鉛の品位、目標とするMS製品の硫化亜鉛の品位、酸化工程S6において大気雰囲気下で空気に曝露する時間や調製ピット1への空気吹込み量などの様々な要因により適切な割合が変わりうるので、ラボスケールやパイロットプラントで適切な混合割合を定めてもよいし、あるいはMS製品の亜鉛品位が規定値を超えないように安全サイドに運転しながらMS製品の亜鉛品位の分析結果に基づいて適切な混合割合となるように調整してもよい。
後者の調整方法について具体的に説明すると、先ず規格外MSとMS生成工程S5で生成された正常MSとをそれぞれサンプリングしてそれらの亜鉛品位を分析する。そしてこれらの分析結果に基づいて、規格外MSの硫化亜鉛が酸化工程S6及び溶解工程S7において全く除去されない場合においてもMS製品が所望の亜鉛品位を満たすために必要な暫定的な混合割合を計算により求める。この暫定的な混合割合で運転を開始し、実際に製造されたMS製品の亜鉛品位を分析してその分析結果を上記の所望の亜鉛品位と比べる。これにより、酸化工程S6及び溶解工程S7で除去された硫化亜鉛の割合(除去率とも称する)を求めることができる。得られた除去率から最適な混合割合を計算することができるので、この最適な混合割合となるように規格外MSの処理量を増やしていけばよい。
(8)MS回収工程S8
MS回収工程S8では、前工程の溶解工程S7において混合された、MS生成工程S5からの正常MSと、酸化工程S6及び溶解工程S7を経た規格外MSとが混合された混合物のスラリーを固液分離し、MS製品として回収する。この固液分離には、中心部に向って徐々に深くなる底面を備えた略円筒形状の槽と、該底面に沿って低速で回転するレーキとから構成されるシックナーを用いることが好ましい。
上記シックナーでは、槽内に導入された正常MSのスラリーに含まれる固形分が重力沈降して槽内底部に堆積するように十分な滞留時間が確保されている。そのため、このシックナー内において該スラリーの沈降分離と同時並行的に前述した溶解工程S7の溶解処理を行うことで、正常MSのスラリーの沈降分離のための滞留時間を利用して、該スラリーに含まれる硫酸酸性水溶液に規格外MS由来の硫酸亜鉛を溶解させることができる。
具体的には、脱亜鉛工程S4で正常に脱亜鉛処理が行なわれた場合は、図2に示すように、上記MS生成工程S5においてMSが生成される硫化反応容器3の底部からは、低亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物を含んだ硫酸酸性水溶液からなる正常MSのスラリーが抜き出されるので、これをMSスラリーポンプ4を介してシックナー5に導入する。このシックナー5には、更に前述した調製ピット1において調製された酸化処理済みの規格外MSスラリーがピットポンプ2を介して導入される。これにより、該規格外MSスラリーのニッケル・コバルト混合硫化物に含まれる硫酸亜鉛が硫酸酸性水溶液に溶解する溶解工程S7が行なわれる。この溶解した硫酸亜鉛を含んだ硫酸酸性水溶液は、シックナー5の上端部のオーバーフローから上澄液として排出される。この上澄液は有価金属をほとんど含んでいないので貧液とも称され、排水処理工程へ送られて排水処理されるか、あるいは前述したように固液分離工程S2の洗浄液として系内に繰り返される。
一方、硫化亜鉛の少なくとも一部が除去された規格外MSスラリーの固形分は、硫化反応容器3から導入される正常MSスラリーの固形分とシックナー内で混合され、亜鉛品位が規格値以下のMS製品となって濃縮スラリーの形態でシックナー5の底部から抜き出される。この濃縮スラリーの形態のMS製品は、貯留槽6に一旦貯められた後、ろ過器などの固液分離手段7に送られて粉粒体の形態のMS製品となる。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法を採用することにより、既存の製造設備の大幅な改造や増設を特に必要としないので、コストをかけることなく低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物を製造することができる。また、原料として用いる高亜鉛品位の規格外ニッケル・コバルト混合硫化物は、フレコンバッグから払い出して場面に広げた後、ピットに流し込むだけなので、作業員に特段の負担をかけることもない。次に、実施例を用いて本発明の低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法を説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
図1に示す工程フロー図に沿ってニッケル酸化鉱石からMS製品を製造した。この図1の工程フロー図に示す各種工程のうち、MS生成工程S5、酸化工程S6、溶解工程S7、及びMS回収工程S8は図2に示すような設備を用いた。具体的には、酸化工程S6において亜鉛品位1100ppmの規格外の高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物を空気中に曝露するため、該高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物が収容されている窒素で封入されているフレコンバッグをフォークリフトで吊り下げ、この状態で該フレコンバッグの底を切り開き、ピット形状の調製ピット1に隣接する地面に、高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物を高さ50cm程度の山状に広げた。
10袋のフレコンバッグから規格外のMSを全て払い出して空気に曝露させた後、作業員によってホースで工業用水を散水することで、上記にて酸化処理された高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物を調製ピット1に流し込んだ。なお、空気との暴露時間に相当するフレコンバッグの解袋から該調製ピット1への流し込み作業開始までに要した時間は約4時間であった。調製ピット1内では、高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物が沈降して規格外MSスラリーの移送用のピットポンプ2の吸込口を閉塞させたり、調製ピット1の底部に堆積したりするのを防ぐため、スラリー1m/hに対して5Nm/hの圧縮エアーを滞留時間1分程度となるように導入して調製ピット1内の規格外MSスラリーをバブリングした。これにより、高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物を更に酸化処理した。
上記の方法で調製ピット1内において工業用水で固形分濃度10~20質量%に調製した高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物を含むスラリーを、ピットポンプ2を介して容量1600mのシックナー5に乾燥重量換算で35t/日の流量で導入した。このシックナー5には、硫化反応容器3から亜鉛品位66ppmの低亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物とpH2程度の硫酸酸性水溶液とからなる固形分濃度1質量%の混合硫化物スラリーが乾燥重量換算で217t/日で導入されているため、酸化工程S6及び溶解工程S7で硫化亜鉛が全く除去されないと仮定した場合のニッケル・コバルト混合硫化物製品中の亜鉛品位の計算値は210ppmとなる。
すなわち、低亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物によってシックナー5に導入される1日当たりの亜鉛の量は「66ppm×217t/日=14,322g」であり、高亜鉛品位ニッケル・コバルト混合硫化物によってシックナー5に導入される1日当たりの亜鉛の量は「1100ppm×35t/日=38,500g」であるので、これらの合計は「14,322g+38,500g=52,822g」となる。従って、「52,822g÷(217t+35t)」から上記の計算値210ppmが得られる。
これに対して、24時間操業した期間においてろ過器から得られたニッケル・コバルト混合硫化物製品の亜鉛品位は平均140ppmであった。よって、硫化亜鉛の一部が除去されていることが確認できた。この結果から、MS製品によってシックナー5の底部から抜き出される1日当たりの亜鉛の量は「140ppm×(217t+35t)=35,280g」であり、亜鉛削除量は「52,822g-35,280g=17,542g」となる。よって酸化工程S6及び溶解工程S7における亜鉛削減割合(除去率)は「17,542g÷38,500g×100=45.5%」となる。
S1 浸出工程
S2 固液分離工程
S3 中和工程
S4 脱亜鉛工程
S5 MS生成工程
S6 酸化工程
S7 溶解工程
S8 MS回収工程
1 調製ピット
1a 空気導入手段
2 ピットポンプ
3 硫化反応容器
4 MSスラリーポンプ
5 シックナー
6 貯留槽
7 固液分離手段

Claims (2)

  1. ニッケル及びコバルトを含有する硫酸水溶液に対して加圧下で硫化剤を添加することで生成したニッケル・コバルト混合硫化物を固液分離により回収するニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法であって、硫化亜鉛を高品位で含有する規格外のニッケル・コバルト混合硫化物を酸化処理することで、該硫化亜鉛の少なくとも一部を酸化させて硫酸亜鉛にする酸化工程と、該酸化工程により生じた硫酸亜鉛を硫酸水溶液に溶解させる溶解工程とを有することを特徴とする低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法。
  2. 前記酸化工程が、前記硫化亜鉛を高品位に含有する規格外のニッケル・コバルト混合硫化物を地面に広げて空気に曝す処理及び/又は該規格外のニッケル・コバルト混合硫化物に水を加えて調製したスラリーに空気を吹き込む処理からなり、前記溶解工程が、前記酸化処理された規格外のニッケル・コバルト混合硫化物を前記固液分離する前のニッケル・コバルト混合硫化物を含む硫酸水溶液に混合することで行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の低硫化亜鉛品位のニッケル・コバルト混合硫化物の製造方法。
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