JP2019026868A - 残留硫化水素の除去方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】反応容器内に残存する硫化水素を、短時間で効率的に除去する方法を提供する。【解決手段】本発明は、溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせた反応容器において、その反応容器内に残存する硫化水素を除去する残存硫化水素の除去方法であって、反応容器から溶液を抜き、溶液を抜いた後の反応容器に全容積の30体積%以上100体積%以下に相当する量の水を入れて撹拌し、水を抜いた後の反応容器に硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスを反応容器の上部から導入することによって、その反応容器の内部に残った硫化水素を反応容器の上部の別の箇所から排出させる。【選択図】図2

Description

本発明は、硫化剤を用いた硫化反応による処理を行う硫化反応容器内に残存した硫化水素を除去する方法に関する。
ニッケル酸化鉱石を原料とするニッケル湿式製錬の分野においては、近年、高温高圧下で酸浸出する高圧酸浸出(HPAL:High Pressure Acid Leach)法による、低ニッケル品位鉱石からの有価金属の回収が実用化されている。そして、HPAL法によってニッケル酸化鉱石より浸出されたニッケル、コバルト等の有価金属の回収については、加圧下で有価金属を含む硫化浴に硫化水素ガス等の硫化剤を添加することにより、硫化物として回収する方法が一般的に行われている。
しかしながら、このような硫化物としての回収方法においては、反応容器の内壁や配管内壁上でも硫化反応が生じ、その内壁に反応生成物が付着してしまうという問題が発生する。その付着物は、硫化反応を続けることにより成長していくため、付着を放っておくと反応容器の容積が次第に減少していく。そうなると、反応容器内での滞留時間が低下して硫化反応効率が悪化したり、配管の閉塞により供給液量が低下したりするため、生産効率が低下してしまう。
これらの問題に関しては、例えば特許文献1に示すように、反応容器の圧力、反応温度、及び種晶の添加を調整することにより、反応容器内壁への付着物の発生とその成長を抑制する方法が知られている。ところが、このような方法を用いることで、反応容器内への付着物の発生をある程度抑えることができるものの、完全に無くすことはできない。そのため、例えば半年に1回程度の頻度で操業を停止し、反応容器を開放して、反応容器の内壁に付着した付着物を除去する作業が必要となる。
さて、そういった付着物除去作業を行うために反応容器を開放するにあたっては、その前処理として、反応容器内の残存硫化水素濃度を人体に影響の無いレベルの値にまで低下させる作業(以下、「残存硫化水素除去作業」と称する)が必要になる。ところが、その残存硫化水素除去作業において、効率的に行う方法に関する知見は従来から無く、単にガスを反応容器内へ吹き込んで残存硫化水素と置換する方法が一般的に行われている。
なお、例えばその置換用のガスとして空気等を用いた場合には、硫化水素と混合した際に爆発の危険性がある。そのため、ガス置換のために用いるガスとしては、窒素やアルゴン等の不活性ガスが用いられる。
しかしながら、上述した不活性ガスを用いたガス置換による方法では、反応容器内の残存硫化水素濃度を人体に影響の無いレベルの値にまで下げるためには、2日〜3日程度の時間が必要となり、操業効率が著しく低下するという問題があった。また、過剰に不活性ガスを吹き込む必要があるため、コストが上昇してしまう問題もあった。
このように、操業停止する期間を短縮させながら、反応容器内に残存した硫化水素ガスを効率的に除去する硫化水素除去作業の方法が求められていた。
特開2011−241446号公報
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、反応容器内に残存する硫化水素を、短い作業時間で効率的に除去する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、反応容器内に残存する硫化水素を不活性ガスによって置換して除去するに先立ち、反応容器内に所定量の水を装入して撹拌処理を施し、そしてその後、水を抜いた反応容器内に、硫化水素よりも比重が大きい不活性ガスを導入して置換処理を実施することで、置換処理の処理時間を有効に短縮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1の発明は、溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせた反応容器において、該反応容器内に残存する硫化水素を除去する残存硫化水素の除去方法であって、前記反応容器から溶液を抜き、溶液を抜いた後の該反応容器に全容積の30体積%以上100体積%以下に相当する量の水を入れて撹拌し、前記水を抜いた後の前記反応容器に硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスを該反応容器の上部から導入することによって、該反応容器の内部に残った硫化水素を該反応容器の上部の別の箇所から排出させる、残存硫化水素の除去方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記不活性ガスとして、アルゴンガスを用いる、残存硫化水素の除去方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記反応容器に入れた水の撹拌時間を、10分以上とする、残存硫化水素の除去方法である。
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記溶液は、ニッケル酸化鉱石に硫酸を用いて高温高圧下で酸浸出してニッケル及びコバルトを含む浸出液を得て、該浸出液を中和した後、中和後の浸出液に対して硫化剤による硫化処理を施して生成したニッケル及びコバルトの硫化物を分離した後に得られる溶液である、残存硫化水素の除去方法である。
(5)本発明の第5の発明は、溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせる硫化反応容器であって、不活性ガスを内部に導入する導入口と、硫化反応後に内部に残存する硫化水素を、当該硫化反応容器の外部に排出させるガス排出口と、を備え、前記導入口及び前記排出口は、当該硫化反応容器の上部の別々の箇所に設けられ、前記不活性ガスとして硫化水素よりも比重が大きいガスを前記導入口から導入することによって、残存する硫化水素を前記ガス排出口から排出させる、硫化反応容器である。
本発明によれば、反応容器内に残存する硫化水素を短い作業時間で効率的に除去することができる。これにより、操業を停止する時間を短縮させて効率的なプロセス操業を行うことが可能となる。
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの流れを示す工程図である。 残存硫化水素の除去方法の流れを説明するための図である。 硫化反応容器の構成の一例を示す模式図である。
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.概要≫
本実施の形態に係る残存硫化水素の除去方法は、溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせた反応容器において、その反応容器内に残存する硫化水素を除去する方法である。
より具体的には、例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける硫化工程で使用した硫化反応容器、すなわち、ニッケル酸化鉱石に硫酸を用いて高温高圧下で酸浸出してニッケル及びコバルトを含む浸出液を得て、その浸出液を中和した後に、浸出液に対して硫化水素ガス等の硫化剤を添加して硫化処理を施し、生成したニッケル及びコバルトの硫化物を分離した後の硫化反応容器の内部に残存する硫化水素を除去する方法である。
そして、この残存硫化水素の除去方法では、反応容器から溶液を抜き、溶液を抜いた後の反応容器に、その反応容器の全容積の30体積%以上100体積%以下の割合に相当する量の水を入れて撹拌する。次いで、反応容器から水を抜き、水を抜いた後の反応容器に硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスを反応容器の上部から導入することによって、その反応容器の内部に残った硫化水素をその反応容器の上部の別の箇所から排出させる。
つまり、この方法では、先ず、反応容器内に所定の割合で水を張り込んで撹拌し、これによって、反応容器内の硫化水素の量を最低限まで低減させる。続いて、硫化水素を低減させた反応容器内に、硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスをその反応容器の上部から導入し、内部に残存している硫化水素を反応容器の上部の別の箇所から排出させる。
このような方法によれば、不活性ガスによる処理に先立ち水を張り込んで撹拌処理しているため、次の不活性ガスを用いた処理の作業時間を有効に短縮させて、効率的にかつ効果的に残存硫化水素の除去作業を行うことができる。
また、不活性ガスを用いた処理においては、汎用容器の内部から除去する硫化水素よりも比重が大きい不活性ガスを用い、その不活性ガスを反応容器の上部から導入するようにしていることから、導入された不活性ガスは、残存する硫化水素の下方に潜り込むようになる。そして、そのまま不活性ガスの導入を続けることで、残存する硫化水素の下方に潜り込んだ不活性ガスによって硫化水素が上方に押し上げられるようになり、その反応容器の上部の排出口から硫化水素を効率的に排出除去することができる。
これにより、不活性ガスを用いた置換処理の作業時間をより一層に短縮させることができる。そして、反応容器の開放のために操業を停止させる時間を短くすることが可能となるため、プロセス操業の効率性を向上させることができる。
以下、より詳細に、残存硫化水素の除去方法について説明する。
≪2.残存硫化水素の除去方法について≫
残存硫化水素の除去方法は、上述したように、溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせた反応容器内に残存する硫化水素を除去する方法であり、例えば、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける硫化処理後の反応容器内での作業を挙げることができる。以下では、その湿式製錬プロセスにおける硫化処理後の反応容器において、その内部に残存する硫化水素を除去する処理を一例として挙げながら説明する。
<2−1.ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセス>
図1は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスの流れを示す工程図である。この湿式製錬プロセスは、ニッケル酸化鉱石を高温高圧下で硫酸により酸浸出して浸出液と浸出残渣とを得る浸出工程S11と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物と中和後液とを得る中和工程S12と、中和後液に硫化剤を添加して硫化物と硫化後液とを得る硫化工程S13とを有する。また、この湿式製錬プロセスでは、硫化工程S13にて排出された硫化後液を回収して無害化する最終中和工程S14を有する。
本実施の形態に係る残存硫化水素の除去方法は、例えばこの湿式製錬プロセスにおける硫化工程S13での処理後に反応容器内に残存する硫化水素を除去するものである。
(1)浸出工程
浸出工程S11は、例えば高温加圧容器(オートクレーブ)等を用いて、ニッケル酸化鉱石のスラリーに硫酸を添加して、例えば約220℃〜280℃の温度下で、加圧しながら撹拌処理を施し、ニッケル及びコバルトを含有する浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを生成させる工程である。
ここで、ニッケル酸化鉱石としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、0.8〜2.5質量%程度であり、水酸化物又はケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含有される。
浸出工程S11では、得られた浸出液と浸出残渣とからなる浸出スラリーを洗浄しながら、ニッケルやコバルト等を含む浸出液と、ヘマタイト(主としてFe)である浸出残渣とに固液分離する。この固液分離処理では、例えば、浸出スラリーを洗浄液と混合した後、凝集剤供給設備等から供給される凝集剤を用いて、シックナー等の固液分離設備により固液分離処理を施す。具体的には、先ず、浸出スラリーが洗浄液により希釈され、次に、スラリー中の浸出残渣がシックナーの沈降物として濃縮される。
浸出スラリーに対する固液分離処理で分離された浸出液は、次工程の中和工程S12に移送され、一方で、浸出残渣はシックナーの底部から回収される。なお、回収された浸出残渣は、浸出残渣洗浄工程へと移送されて、洗浄水による洗浄処理が施される。
(2)中和工程
中和工程S12は、上述した浸出工程S11により得られた浸出液に中和剤を添加してpHを調整し、不純物元素を含む中和澱物と中和後液とを得る工程である。この中和工程S12における中和処理により、ニッケルやコバルト等の有価金属は中和後液に含まれるようになり、鉄、アルミニウム等の不純物の大部分が中和澱物となる。
中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、消石灰、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
中和工程S12における中和処理では、分離された浸出液の酸化を抑制しながら、pHを1〜4の範囲に調整することが好ましく、1.5〜2.5の範囲に調整することがより好ましい。pHが1未満であると、中和が不十分となり中和澱物と中和後液とに分離できない可能性がある。一方で、pHが4を超えると、アルミニウム等の不純物のみならず、ニッケルやコバルト等の有価金属も中和澱物に含まれる可能性がある。
(3)硫化工程
硫化工程S13は、上述した中和工程S12により得られた中和後液に硫化剤を添加してニッケル及びコバルトの硫化物(ニッケル・コバルト混合硫化物)と硫化後液とを得る工程である。この硫化工程S13における硫化処理により、ニッケル、コバルト、亜鉛等は硫化物となり、その他は硫化後液に含まれることになる。
具体的に、硫化工程S13では、得られた中和後液に対して硫化剤を添加し、中和後液に含まれるニッケルやコバルトを硫化物の形態に硫化させる硫化反応を生じさせる。これにより、不純物成分の少ないニッケル及びコバルトの硫化物と、ニッケル濃度を低い水準で安定させた硫化後液(貧液)とを生成させる。
硫化剤としては、例えば、硫化水素ガス、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム(水硫化ソーダ)等を用いることができるが、その中でも、硫化水素ガスを用いることが、取扱い容易さやコスト等の点で特に好ましい。また、これら硫化剤を複数添加してもよい。
この硫化処理では、ニッケル・コバルト混合硫化物のスラリーをシックナー等の沈降分離装置を用いて沈降分離処理して、ニッケル・コバルト混合硫化物をシックナーの底部から分離回収する。
ここで、本実施の形態に係る残存硫化水素の除去方法は、上述したように、この硫化工程S13における硫化処理後の反応容器において、その反応容器の内部に残存する硫化水素を除去するものである。硫化工程S13での硫化処理において、硫化剤として硫化水素ガスを使用した場合には、反応後に未反応の硫化水素が残存し、また、硫化剤として硫化ナトリウムや硫化水素ナトリウム等の塩を使用した場合であっても、溶液の状態により硫化水素が発生する。この残存硫化水素の除去方法では、これらの処理反応後に反応容器内に残存した硫化水素を除去する。
(4)最終中和工程
最終中和工程S14では、上述した硫化工程S13にて生成した硫化後液、すなわち、ニッケル・コバルト混合硫化物を分離させた後の、鉄、マグネシウム、マンガン等の不純物元素を含む硫化後液に対して、排出基準を満たす所定のpH範囲に調整する中和処理(無害化処理)を施す。
最終中和工程S14における無害化処理の方法、すなわちpHの調整方法としては、特に限定されないが、例えば炭酸カルシウム(石灰石)スラリーや水酸化カルシウム(消石灰)スラリー等の中和剤を添加することによって所定の範囲に調整する。
<2−2.残存硫化水素の除去>
図2は、本実施の形態に係る残存硫化水素の除去方法の流れを説明するための図である。この残存硫化水素の除去方法では、例えば上述した硫化工程S13での硫化処理後に反応容器内に残存する硫化水素を除去対象とする。
[工程液の抜き出し]
具体的には、先ず、硫化処理後の反応容器内に存在する溶液を抜き出す。ここで、反応容器から抜き出す溶液とは、例えば硫化反応により得られた硫化後液であり、一般的に、その硫化反応により得られたその硫化後液には、硫化水素が溶存している。以下ではこの溶液を「工程液」ともいう。
なお、例えば上述した硫化工程S13では、シックナー等の沈降分離装置によって、ニッケル・コバルト混合硫化物がシックナーの底部から分離回収され、一方で硫化後液は、その装置からオーバーフローにより別途抜き出されるが、ここでの「溶液の抜き出し」は、広義ではこのようなオーバーフローによる抜き出しの意味も含み、またオーバーフローによる抜き出し後に反応容器内に残留した微量の工程液を抜き出す意味も含む。
工程液を反応容器から抜き出す方法としては、特に限定されないが、反応容器からほぼ完全に工程液を抜き出すことが可能な方法であることが好ましい。
[水を入れて撹拌]
次に、工程液を抜いた後の反応容器内に対して、水を張り込む。反応容器内に水を張る方法としては、特に限定されないが、大容量の水を短時間で装入して効率性を高める観点からすると、ポンプ等を用いた方法により行うことが好ましい。なお、ポンプとしては、通常のプロセス操業において、処理後の溶液を次工程に送液するために用いるものを使用することができる。
そしてこのとき、反応容器内への水の装入量としては、溶液を抜いた反応容器の全容積の30体積%以上100体積%以下の割合に相当する量を装入する。また、好ましくは反応容器の全容積の40体積%以上とし、より好ましくは全容積の50体積%以上とする。水の装入量が、反応容器の全容積の30体積%未満のように少なすぎると、水による硫化水素ガスの吸収と、容器内に付着した溶液(工程溶液)の洗浄が不十分になる。
続いて、反応容器内に張り込んだ水を撹拌する。このように、硫化水素ガスが残存した反応容器内に所定量の水を張り込み、撹拌処理を施すことによって、反応容器に付着している、硫化水素が溶存した工程液を洗浄除去することができる。また、反応容器に残存している硫化水素ガスは水に溶解しやすいことから、水を装入して撹拌処理を施すことで、その気相から硫化水素ガスを効果的に吸収除去することができる。
水の撹拌方法としては、特に限定されず、公知の撹拌機を用いたり、不活性ガスを水の中に吹き込む等の方法により行うことができる。また、撹拌時間としては、残存した硫化水素ガスの吸収と、反応容器内に付着した工程液の洗浄を十分に行うという観点から、10分以上の時間とすることが好ましい、30分以上とすることがより好ましい。なお、当然に撹拌処理の処理時間を長くすることが、硫化水素ガスの溶解や工程液の洗浄等の観点からすると好ましいが、長すぎると反応容器の開放時間が長くなり好ましくない。
水の撹拌処理が終了すると、その水を反応容器から抜き出す。なお、抜き出した水には、硫化水素が溶存していることから、除害処理を行う設備等に送液することが好ましい。
[不活性ガスの導入]
次に、水を抜いた後の反応容器に対して、不活性ガスを吹き込んで内部に導入する。このとき、不活性ガスとしては、除去対象の硫化水素よりも比重の大きいものを用いる。
例えば、窒素ガスのような比重が小さいガスを用いた場合、反応容器の内部に残存する硫化水素と窒素ガスとを混合する時間が必要になるため、連続的な処理の過程で、導入した窒素ガスがそのまま排出されてしまうことがあり、処理効率(置換効率)が悪化する。これに対して、硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスを用い、その反応容器の上部から内部に導入すると、硫化水素との比重差によりその不活性ガスが硫化水素の下方に移動するようになる。すると、連続的な不活性ガスの導入により、徐々に硫化水素が上方に押し上げられて、反応容器の上部(ただし、反応容器の上部における不活性ガスを導入する箇所とは別の箇所)から連続的に硫化水素が排出除去される。
このように、硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスを用い、反応容器の上部からその不活性ガスを導入し、そして不活性ガスと置換した硫化水素を反応容器の上部から排出させるようにすることで、連続的に置換処理を行うことができる。また、比重差を効果的に利用した処理であることから、導入した不活性ガスがそのまま容器外に排出されることを防ぎ、効率的にかつ効果的に硫化水素を除去することができる。
下記表1に、種々の不活性ガスの比重(気体の標準状態(0℃、1atm)における空気に対する比重)を示す。なお、硫化水素の空気に対する比重は1.190である。
Figure 2019026868
上述したように、不活性ガスとしては、硫化水素よりも比重が大きいものを用い、具体的には表1に示すように、アルゴンやクリプトン等を用いることができる。その中でも、安価であって大量に使用することができる点で、アルゴンを用いることが好ましい。
ここで、図3に、硫化反応容器の構成の一例を示す概略模式図を示す。硫化反応容器10は、溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせる反応容器であり、不活性ガスを内部に導入する導入口11と、硫化反応後に内部に残存する硫化水素を外部に排出させるガス排出口12と、を備えている。そして、導入口11とガス排出口12とは、当該硫化反応容器10の上部における別々の箇所に設けられている。
なお、図3に示す硫化反応容器10において、符号「13」は硫化反応始液を供給する始液供給口を示し、符号「14」は硫化反応により生じた硫化物を含む反応後スラリーを排出するスラリー排出口を示す。また、硫化反応容器10のガス排出口12は、除去して回収した硫化水素を中和して除害するための除害設備(図示しない)に配管等を介して接続されており、ガス排出口12から排出された硫化水素は、その除害設備にて除害(無害化)処理が行われた後に放出される。
上述したように、本実施の形態に係る残存硫化水素の除去方法においては、不活性ガスとして硫化水素よりも比重が大きいガスを、硫化反応容器10の上部に設けられた導入口11から導入する。これにより、硫化水素と不活性ガスとの比重差を利用して、硫化反応容器10の内部に残存する硫化水素を、硫化反応容器10の上部の別に箇所に設けられたガス排出口12から排出させる。
導入口11から導入する不活性ガスの量(吹き込み量)は、硫化水素の排出先となる除害設備から放出されるガス中の硫化水素濃度を観測しながら決めることができる。そして、所定量の不活性ガスを導入口11から連続的に導入し、硫化水素と連続的に置換する。
置換処理の終了は、導入口11を介して吹き込んだ不活性ガスの総量が硫化反応容器10の容量相当以上となり、除害設備から放出されるガス中の硫化水素濃度の低下と、ガス排出口12から排出される排出ガス中の硫化水素濃度の低下とを確認することによって行うことができる。なお、硫化水素濃度の測定は、硫化水素濃度計や定電位電解式の硫化水素検知器等を用いて行うことができ、硫化水素濃度の低下は、それら測定装置により測定されるガス中の硫化水素濃度が規定値以下となっているか否かを基準として判断することができる。
このようにして特定の不活性ガスを導入して硫化水素と置換する処理を施すことで、短時間で硫化水素の除去作業を行うことができる。具体的には、例えば、不活性ガスとして窒素ガス(硫化水素よりも比重が小さい不活性ガス)を用いた場合と比べて、置換処理時間をおよそ半分程度にまで短縮することができる。
しかも、本実施の形態に係る残留硫化水素の除去方法によれば、不活性ガスによる置換処理の前に、反応容器内に所定量の水を装入して撹拌処理を行い、残存する硫化水素ガスをその水に吸収させて予め洗浄除去していることから、置換処理を行う前に多くの残存硫化水素を除去することができ、効率的に硫化水素の除去作業を行うことができる。したがって、従来の方法に比して、不活性ガスとの置換対象である硫化水素が低減された状態となるため、この置換処理の処理時間をより一層に短くすることができる。
[不活性ガスの分離]
不活性ガスの導入による硫化水素との置換処理の後、導入した不活性ガスを分離する。上述したように、置換処理の終了の時点については、硫化水素濃度計や定電位電解式の硫化水素検知器等を用いて、反応容器内における硫化水素ガスの濃度を測定し、人体に影響のないレベルにまで低下した時点に基づいて判断することができる。
以下、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
≪実施例、比較例≫
(実施例1)
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおける硫化工程として、中和処理後の溶液(中和後液)に、硫化水素ガスと水硫化ソーダとを硫化剤として用いた硫化反応を生じさせた。なお、この硫化反応は、撹拌機を有する4基の硫化反応容器を直列に連結させて用い、連続的に硫化処理を実施する反応系にて行った。
[1]工程液の抜き出し
硫化反応を停止させた後、その硫化反応容器内に残っていた硫化後液(工程液)をその容器から抜き出した。
[2]反応容器への水張り、撹拌、水の抜き出し
次に、反応容器の全容量の50体積%に相当する量の水を、ポンプを用いて硫化反応容器内に供給した。なお、ポンプとしては、生成した工程液を硫化反応容器へ送液する際に用いていたものと同様のものを使用した。
続いて、硫化反応容器内に装入した水を、その硫化反応容器に設置されたパドル型撹拌翼を備えた撹拌機によって1時間に亘って撹拌し、撹拌処理後に水を抜き出した。なお、抜き出した水は、除害設備へと送液した。
[3]不活性ガスの導入(硫化水素との置換)
次に、水を抜き出した後の硫化反応容器内に、不活性ガスとして、硫化水素よりも比重が大きいアルゴンガスを導入して、残存する硫化水素ガスの置換作業を行った。具体的には、硫化反応容器の上部に設けられた導入口にアルゴンガスのボンベを接続することによってアルゴンガスを連続的に吹き込み、その硫化反応容器の上部における別の箇所に設けられたガス排出口から硫化水素を排出させるようにした。
なお、ガス排出口を、配管を介して除害設備に接続させ、排出させた硫化水素を除害設備(アルカリ除害塔)へと移行させた。また、一定条件でアルカリ中和処理が施されるアルカリ除害塔の出口からのガス中の硫化水素濃度が3ppm以下となるまで、硫化反応容器内にアルゴンガスを吹き込んだ。ボンベが空になった場合には、都度新しいボンベに取り換えるようにした。
そして、導入したアルゴンガスの総量が、硫化反応容器の容量相当以上となり、それ以上にアルゴンガスの吹き込み量を増加させてもアルカリ除害塔の出口からの硫化水素濃度が1ppm以上にはならないことを確認し、また、硫化反応容器内の硫化水素濃度を測定して50ppm以下となった時点で、硫化水素の置換が完了したとみなし、アルゴンガスの吹き込みを停止した。なお、硫化水素濃度の測定は、定電位電解式の硫化水素検知器を用いて行った。
以上のような作業を行い、一連の工程を、[1]「工程液の抜き出し」工程、[2]「反応容器への水張り、撹拌、水の抜き出し」工程、[3]「不活性ガスの導入」工程、にそれぞれに分け、各工程に要する時間を測定した。
その結果、[1]工程が4時間、[2]工程が6時間、[3]工程が12時間であり、反応容器内の残存硫化水素を除去するのに要した時間は、合計22時間であった。
(比較例1)
比較例1では、実施例1と異なり、[2]工程を行わなかった。なお、それ以外は、実施例1と同様の手順により、反応容器内の残存硫化水素の除去作業を実施した。
実施例1と同様に、各工程で要した時間を測定したところ、[1]工程が4時間、[2]工程が0時間、[3]工程が73時間であり、反応容器内の残存硫化水素を除去するのに要した時間は、合計で77時間であった。
(比較例2)
比較例2では、実施例2と異なり、[3]工程においてアルゴンガスの代わりに窒素ガスを導入して置換処理を行った。なお、それ以外は、実施例1と同様の手順により、反応容器内の残存硫化水素の除去作業を実施した。
実施例1と同様に、各工程で要した時間を測定したところ、[1]工程が4時間、[2]工程が6時間、[3]工程が24時間であり、反応容器内の残存硫化水素を除去するのに要した時間は、合計で34時間であった。
比較例1と比べると作業時間は大きく改善されたものの、実施例1と比較して不活性ガスの導入による硫化水素との置換処理の作業時間がおよそ2倍も多くなった。
≪結果≫
以上の実施例1、比較例1及び2の結果から、窒素ガスによる置換処理に先立ち、反応容器内に水を装入して撹拌する処理を行い、その後、硫化水素よりも比重が大きい不活性ガスであるアルゴンガスを導入して置換処理を行った実施例1では、従来の方法に比べて硫化水素の除去作業を大幅に短縮させることができた。
また、比較例2の結果との比較から、不活性ガスとして硫化水素よりも比重が大きいガスを用いることにより、置換処理に要する時間を半分程度にまで短縮することができ、極めて効率的に処理できることが分かった。
10 硫化反応容器
11 導入口
12 ガス排出口
13 始液供給口
14 スラリー排出口

Claims (5)

  1. 溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせた反応容器において、該反応容器内に残存する硫化水素を除去する残存硫化水素の除去方法であって、
    前記反応容器から溶液を抜き、溶液を抜いた後の該反応容器に全容積の30体積%以上100体積%以下に相当する量の水を入れて撹拌し、
    前記水を抜いた後の前記反応容器に硫化水素よりも比重の大きい不活性ガスを該反応容器の上部から導入することによって、該反応容器の内部に残った硫化水素を該反応容器の上部の別の箇所から排出させる
    残存硫化水素の除去方法。
  2. 前記不活性ガスとして、アルゴンガスを用いる
    請求項1に記載の残存硫化水素の除去方法。
  3. 前記反応容器に入れた水の撹拌時間を、10分以上とする
    請求項1又は2に記載の残存硫化水素の除去方法。
  4. 前記溶液は、
    ニッケル酸化鉱石に硫酸を用いて高温高圧下で酸浸出してニッケル及びコバルトを含む浸出液を得て、該浸出液を中和した後、中和後の浸出液に対して硫化剤による硫化処理を施して生成したニッケル及びコバルトの硫化物を分離した後に得られる溶液である
    請求項1乃至3のいずれかに記載の残存硫化水素の除去方法。
  5. 溶液に硫化剤を添加して硫化反応を生じさせる硫化反応容器であって、
    不活性ガスを内部に導入する導入口と、
    硫化反応後に内部に残存する硫化水素を、当該硫化反応容器の外部に排出させるガス排出口と、を備え、
    前記導入口及び前記排出口は、当該硫化反応容器の上部の別々の箇所に設けられ、
    前記不活性ガスとして硫化水素よりも比重が大きいガスを前記導入口から導入することによって、残存する硫化水素を前記ガス排出口から排出させる
    硫化反応容器。
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