JP2020113654A - 金属層形成基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な基板上に保存性を有するナノインクで配線等を形成した後、優れた導電性を持つ導電層を得ることが可能な方法を提供する。【解決手段】基板上に、金属/非金属ナノ粒子と保護剤とを含むナノインクを塗布(又は印刷)し、乾燥及び焼結を行った後、温度が100℃未満の水蒸気プラズマ処理を施す。水蒸気プラズマ処理で生成される水素イオンH+又は水素ラジカルにより、基板上に塗布されたナノインク中の金属ナノ粒子の酸化物が還元され、一方、OH-イオン、OHラジカルや酸素ラジカル等により有機バインダーや保護剤が酸化分解される。これらの分解物は真空引きによって処理室から排除されるため、基板には残らない。これにより、基板上に塗布(印刷)された層は優れた導電性を持つ。そして、基板として、ポリエステル、塩化ビニル、ナイロン等、ガラス転移温度(Tg)が100℃未満の材料を用いることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、ナノインクを用いた金属層形成基板の製造方法に関する。
電子回路を微細化するとともに、多様な回路構成(パターン)の回路を作製するため、エッチングによる回路作製から、ナノサイズの銀や銅の微粒子を樹脂バインダーに分散させたナノインクで基板に配線等を印刷する技術(プリンタブルエレクトロニクス)が広く用いられるようになってきている。プリンタブルエレクトロニクスはまた、折り曲げ可能な電子装置(フレキシブル電子装置)を作製する場合にも有用な技術であり、ポリエステルやポリイミドのような柔軟な基板表面上にナノインクでナノサイズの厚さの配線等を印刷し、曲げに強い回路を作製する。
しかし、金属粒子がナノサイズまで小さくなると表面エネルギーが増大するため、粒子表面での融点降下が生じる。その結果、金属粒子同士の凝集が起こりやすくなり、ナノインクの保存安定性が悪くなる。そのような凝集を防止するために金属粒子表面を保護剤で保護すると、保護剤が配線中に残留するとともに、樹脂バインダーも残留しやすくなり、プリントされた配線等の導電性が阻害される。
特許文献1には、平均粒子径1〜100nmの酸化銅ナノ粒子を含む、有機物からなる分散液を用いたナノインクを基板上に塗布した後、還元性気体に由来するプラズマを用いた還元反応により酸化銅の還元を行い、同時に、銅ナノ粒子による焼結体層の形成を行うことが開示されている。具体的には、水素ガスや一酸化炭素ガスのような還元性気体の存在下において生起される低圧プラズマ雰囲気中で300℃以下の温度に加熱することにより、該プラズマ反応種により酸化銅を還元するとともに、還元された銅ナノ粒子相互の焼結を行う。しかし、このプロセスでは分散液中の有機物が焼結体層に残留し、焼結体層の導電性が低くなるおそれがある。
特許文献2には、ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルム等の絶縁基板上に、銅や銀などの金属粉末(0.01〜20μm)と有機バインダーとを主成分とする金属粉ペーストを用いて塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて金属粉末含有乾塗膜を得た後、さらに、該塗膜に大気圧下、100℃〜450℃で水蒸気プラズマ処理を施すことにより導電性の優れた導電性塗膜を得ることが開示されている。ここで、プラズマ処理は低圧プラズマよりも大気圧プラズマが望ましいとされている([0028])。
特開2004-119686号公報 特開2012-174374号公報
プリンタブルエレクトロニクスをフレキシブル基板に適用することによりフレキシブル電子回路が可能となるが、従来の方法では、プラズマ処理の温度が100℃を超えるため、その基板の材料に制約がある。例えば、ポリエステルはガラス転移温度(Tg)が約80℃、塩化ビニルでは約80℃、ナイロンでは約50℃であり、フレキシブル基板にこれらの材料を用いる場合には、従来の方法を用いることができない。
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、様々な基板上に保存性を有するナノインクで配線等を形成した後、優れた導電性を持つ層(導電層)を得ることが可能な方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係る導電層形成基板の製造方法は、
基板に、導電性ナノ粒子と保護剤とを含むナノインクを塗布、または、印刷した後、温度が100℃未満の水蒸気プラズマ処理を施すことを特徴とする。
ここで言うナノインクの「塗布」には、基板上の全面や一定領域に塗布する場合の他、パターンを形成して塗布する場合を含む。また、「印刷」には、グラビアオフセット印刷、反転オフセット印刷等の各種印刷方法を用いることができる。
ナノインクに含まれる導電性ナノ粒子には、金属ナノ粒子と非金属ナノ粒子が含まれる。金属ナノ粒子の素材としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、シリコン(Si)等が挙げられる。非金属ナノ粒子の素材としては、グラフェン、酸化グラフェン(GO)、カーボンナノチューブ(CNT)等が挙げられる。なかでも、高い導電性が得られ、一般にプリンタブルエレクトロニクスで用いられている点で、導電性ナノ粒子の素材には金属ナノ粒子が好ましい。導電性ナノ粒子の大きさは、一般的には5〜200nm程度であるが、微細パターンを形成するためには、7〜20nm程度とすることが望ましい。粒子形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状(デンドライト状)など、様々なものを目的・状況に応じて選択する。保護剤は、ナノ粒子の凝集を防止し、ナノインクの保存性を良くするためのもので、分散剤とも呼ばれる。その成分としては、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、燐酸エステル、スルフォン酸エステル等を挙げることができる。
一般に知られているとおり、ナノインクにはこれらの他に有機バインダーが含まれ、それらが溶媒により所定の粘度の溶剤となるように調製されている。有機バインダーには一般に、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドあるいはアクリル等の樹脂が用いられる。樹脂中にエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合等を有するものが、金属粉末の安定性から好ましい。溶媒としては、水の他、アルコール(イソプロピルアルコール等)、エーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アミド等の有機溶媒が用いられる。
本発明に係る導電層形成基板製造方法では、処理室の内部を大気圧以下の圧力としておくことにより、温度が100℃未満の水蒸気プラズマ処理を施す。処理室内部には、水蒸気(H2O)の他、酸素(O2)を0〜80%混入させてもよい。
このプラズマ処理で生成される水素イオンH+又は水素ラジカルにより、基板上に塗布された(又は、印刷された)ナノインク中の導電性ナノ粒子の酸化物が還元され、一方、OH-イオンやOHラジカル、酸素ラジカル等により有機バインダーや保護剤が酸化分解される。これらの分解物は真空引きによって処理室から排除されるため、基板には残らない。これにより、基板上に塗布された(又は、印刷された)導電層は優れた導電性を持つ。
このようなメカニズムによるため、ナノインク中の有機バインダーや保護剤の量が少ない場合、プラズマガスをH2Oのみとすることも可能である。
本発明に係る導電層形成基板製造方法では、温度が100℃未満の水蒸気プラズマで処理を行うことから、基板としてガラス転移温度(Tg)が100℃未満の材料、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル、Tg 80〜87℃)、ナイロン(Tg 50℃)、HPE(高密度ポリエチレン、Tg -120〜-20℃)、PET(ポリエチレンテレフタラート、Tg 70℃)等、を用いることができる。もちろん、100℃以上の温度に耐える基板を用いることもできる。例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート、Tg 155℃)、やCOP(シクロオレフィンポリマー、Tg 100〜138℃)、PC(ポリカーボネート、Tg 145℃)などは、それぞれ電子基板として有用な特性を持つことから、本発明に係る方法でプラズマ処理を行うことにより、それらの有用な特性を持った基板上に、微細な電子回路、或いは、多様な回路構成(パターン)の回路を作製することができる。
水蒸気プラズマの温度は、50℃以下とすることが望ましい。これにより、樹脂基板の寸法変化や変性を更に防ぐことができ、より良好な印刷回路装置を作製することができるようになる。
本発明に係る導電層形成基板製造方法で、水蒸気プラズマ処理を行う前に、塗布した(又は印刷した)ナノインクの溶媒を除去するための乾燥処理を行うことが望ましい。この乾燥処理は、加熱によるものであってもよいし、減圧によるものであってもよい。さらには、時間をかけることにより自然乾燥を行ってもよい。
本発明に係る導電層形成基板製造方法においては、導電層と基板との密着性がより強くなる点で、導電層形成基板を焼成(焼結)することが好ましい。また、導電層形成基板を焼成(焼結)する工程は、水蒸気プラズマ処理の前または後のいずれでも良い。導電層形成基板を焼成(焼結)する前に水蒸気プラズマ処理をすると、プラズマ処理室内を真空引きして減圧することによりナノインク中の溶媒を早く除去しつつ保護剤(分散剤)を酸化して除去することができる。また、導電層形成基板を焼成(焼結)した後に水蒸気プラズマ処理をすると、焼結(焼成)により熱酸化されたナノ粒子の表面を還元しつつ焼結(焼成)後に残留する保護剤(分散剤)を酸化して除去することができる。
本発明に係る導電層形成基板製造方法では、温度が100℃未満の水蒸気プラズマで処理を行うことから、ガラス転移温度(Tg)が100℃未満の樹脂を材料とする基板に、保存性を目的として保護剤を含有させたナノインクを塗布(又は、印刷)した場合でも、保護剤を粒子間から除去し、良好な導電性を有する導電性層を形成することができる。
また、基板上に形成した導電層の上に、更に絶縁体または有機半導体等の皮膜を形成するような場合、保護剤等の残留物があるとそれら皮膜の密着力が低下することがあるが、本発明に係る導電層形成基板製造方法では、そのような皮膜も強い密着力で形成することができる。
本発明の一実施形態であるフレキシブル基板上での導電層形成方法のフローチャート。 前記実施形態で処理対象とした、導電層が塗布(または印刷)されたフレキシブル基板の断面図。 前記実施形態で用いるプラズマ処理装置の一例の概略構成図。
以下、本発明の好適な実施形態である、ナノインクを用いたフレキシブル基板上での導電層形成方法の一例について、図面を参照しつつ説明する。
まず、基板として、樹脂製フィルムを用意する。フレキシブル基板とするためには、樹脂製フィルムには厚さ100μm程度のものを好適に用いることができるが、用途によっては更に薄いものを用いることもできる。表面は、平均表面粗さRaが20nm以下となるように調製しておく。樹脂製フィルムの素材についても、作製する基板、或いは印刷回路装置の用途に応じて選択するが、使用されるナノインクの種類に応じても選択される。例えば、低温焼成タイプや室温焼成タイプのナノインクを用いる場合はガラス転移温度(Tg)が約80℃のポリエステルを用いる。120℃で焼成するナノインクを用いる場合は、耐熱性の高いポリイミドを用いることが好ましい。
こうして用意した基板21上に、バーコーター等を用いてナノインク22を塗布する(図2)。或いは、印刷で回路を形成する(図1、ステップ11)。印刷回路装置の場合、ナノインクはその回路装置の用途に応じて選択されるが、例えば、銀ナノインクの場合、含有する銀粒子の平均粒径は7〜10nmのものが多く用いられる。多くの場合、溶媒はアルコール系または水系であり、銀粒子を約20重量%含有し、更に、有機系の分散剤を含有する。
塗布するナノインク22の厚さも、印刷回路装置の用途に応じて設定される。バーコーターを用いてナノインク22を塗布する場合、バーコーターとフィルム表面の間隔を例えば200μmに設定することができる。
基板21上に塗布したナノインク22は、まず溶媒を蒸発させる(ステップ12)。前記厚さに塗布した場合、室温で例えば3分間放置することにより、通常の湿度環境下では溶媒が十分に蒸発し、ナノインクが乾燥する。
次に、基板21上のナノインク22を焼成する(ステップ13)。低温焼成タイプや室温焼成タイプのナノインクの場合は、100℃未満の温度や室温でナノインクを焼成することができる。室温以上(例えば、80℃)で焼成する場合は、加熱装置を用いて加熱を行う。例えば、ホットプレート等を用いることができる。一方、120℃で焼成するタイプのナノインクの場合は、ナノインクを塗布したフィルムをその温度に加熱した加熱装置上に載置し、30分程度加熱する。こうしてナノインクを焼結することにより、ナノインク同士が結合して導電性を有するようになる。しかし、銀ナノインクの場合、焼結したナノインク表面は空気中の酸素により急速に酸化されて黒色を呈し、また、ナノインクの銀粒子間には有機系の分散剤が残留していることから、塗布層の電気抵抗は未だ大きい。
そこで、こうしてナノインク22層が形成された基板21を、減圧下、100℃より低い温度で、水蒸気プラズマ処理を行う(ステップ14)。水蒸気プラズマ処理は、例えば、次のような工程で行うことができる。まず、プラズマ処理装置としては平行平板型(容量結合型)プラズマ処理装置(サムコ株式会社製AQ-2000)を使用する。ここで使用するプラズマ処理装置について、図3により簡単に説明する。
プラズマ処理装置100は、処理室31内に、上下に平行に配置された下部電極32及び上部電極33が設けられており、上部電極33にはコンデンサ34を介してRF電源35から高周波電力が供給される。処理室31には、その内部に水(水蒸気)を導入する水導入部40と、酸素ガスを導入する酸素ガス導入部50と、処理室31内を排気する排気部60が接続されている。水導入部40には、水供給源41と、水を気化して水蒸気とするヴェーパライザ(気化装置)42と、流量を調整するマスフローコントローラ43と、バルブ44が設けられている。酸素ガス導入部50には、酸素ガス供給源51と、マスフローコントローラ52と、バルブ53が設けられている。以上の各部は、制御部70により制御される。
前記のナノインク22層が形成された基板21を水蒸気プラズマ処理する場合、プラズマ処理装置100の上下の電極32、33のサイズを400mm×400mm、電極間隔を50mmとし、下部電極32上に被処理物を載置するPE(Plasma Etching)モードで使用する。処理室31内のバックグラウンドプレッシャー(B.G.P.)を10Paとし、そこに水蒸気を流量20sccmで流し、処理中の温度を50℃以下としつつ、RF電源35から投入するRFパワーを500Wとして、20秒間〜10分間の水蒸気プラズマ処理を行う。
水蒸気プラズマ処理後のフィルム上のナノインク22層の表面は還元されて銀白色を呈し、また、層全体の電気抵抗が低下する。これは、銀粒子間の有機系の分散剤が酸化除去されたことによるものと考えられる。ナノインクを焼結すると金属粒子同士の多くは結合するが、部分的には金属粒子同士が結合せず、空隙が残っている。水蒸気プラズマで生成されるヒドロキシルラジカルは、このような空隙から金属層内に侵入する。このため、分散剤はナノインク22層の表面だけでなく深層部においても水蒸気プラズマで酸化除去される。
また、基板21を減圧下で100℃より低い温度で水蒸気プラズマ処理を行うことから、基板21として耐熱性の低いフィルムを用いても、金属粒子が十分に還元されたナノインク22層を形成することができる。
21…基板
22…ナノインク
31…処理室
32…下部電極
33…上部電極
40…水導入部
50…酸素ガス導入部
60…排気部
70…制御部
100…プラズマ処理装置

Claims (4)

  1. 基板に、導電性ナノ粒子と保護剤とを含むナノインクを塗布、または、印刷した後、温度が100℃未満の水蒸気プラズマ処理を施すことを特徴とする導電層形成基板の製造方法。
  2. 前記水蒸気プラズマで使用されるプラズマガスが、水蒸気(H20)と酸素(O2)の混合ガスから成る請求項1に記載の導電層形成基板の製造方法。
  3. 前記混合ガス中の水蒸気(H20)と酸素(O2)の比率がH20:O2=100:0〜H20:O2=20:80である請求項2に記載の金属層形成基板の製造方法。
  4. 前記水蒸気プラズマの温度を50℃以下とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電層形成基板の製造方法。
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