JP2020111802A - 表面硬化鋼部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】疲労強度向上効果を従来より高めることができる表面硬化鋼部品の製造方法を提供する。【解決手段】鋼部品に表面硬化処理及び焼戻し処理を施し、その後、上記鋼部品を50〜200℃に加熱した状態でショットピーニングを施す。表面硬化処理は、浸炭焼入れ処理、浸炭浸窒焼入れ処理のいずれかにより行うことができる。鋼部品は、質量比において、C:0.10〜0.30%、Si:0.25〜1.50%、Mn:0.20〜2.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.20〜2.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、Mo:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることが好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、浸炭、浸炭浸窒等により表面硬化処理を施した鋼部品の製造方法に関する。
自動車のCO2排出量低減のため、車両重量の軽量化による燃費向上を図るべく、自動車に用いられる鋼部品の小型・軽量化が求められている。鋼部品の小型・軽量化のためには、従来よりも高強度にすることが必要である。通常、鋼部品の高強度化には、表面硬化熱処理(浸炭処理等)の実施、焼入れ性の確保や様々な特性を付与するためのNi、Mo等の高価な元素を添加した合金鋼の使用、表面硬化熱処理後における疲労強度を向上させるためのショットピーニングの実施等が行われる。一方、例えば歯車に対する要求は、近年益々高まり、歯元曲げ疲労強度のさらなる向上が求められている。
ショットピーニングは、高硬度の球形の玉等の投射材を高速度で金属表面に衝突させる処理である。この投射材が高速度で材料の表面に衝突すると、材料表面が凹み、表面にくぼみを残す。従ってショットピーニングを行った面は無数のくぼみ(痕)で覆われるようになり梨子地模様となるが、表面の硬さが増す。また繰返し荷重に対しては表面層に付与された圧縮残留応力が相殺する形で作用し疲れ強さが増すこととなる。これがショットピーニングによる疲労強度向上のメカニズムである。
たとえば、特許文献1においては、高強度部品や金型を対象として、高い圧縮残留応力の付与を図るために、ビッカース硬さが920HV以上の被処理材に、ビッカース硬さが1000HV以上の投射材(ショット粒)を投射することが示されている。
上述した歯車においても、その歯元疲労強度向上に、ショットピーニングによる圧縮残留応力付与が有用であることが知られている。しかし、歯車においては、通常の製造方法で920HV以上の高硬度を確保することは難しく、このような部品に上記方法は適用できない。
以上のような背景から、歯車等の表面硬化鋼部品に対して、従来から知られているショットピーニングの効果を最大限発揮させ、疲労強度向上効果を従来より高めることができる製造方法の開発が望まれていた。
本願は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、疲労強度向上効果を従来より高めることができる表面硬化鋼部品の製造方法を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、鋼部品に表面硬化処理及び焼戻し処理を施し、
その後、上記鋼部品を50〜200℃に加熱した状態でショットピーニングを施すことを特徴とする表面硬化鋼部品の製造方法にある。
その後、上記鋼部品を50〜200℃に加熱した状態でショットピーニングを施すことを特徴とする表面硬化鋼部品の製造方法にある。
上記製造方法においては、鋼部品に表面硬化処理及び焼戻し処理を施した後、上記特定の温度範囲に鋼部品を加熱した状態でショットピーニングを施す。鋼部品を上記特定の温度範囲に加熱してショットピーニングを行うことにより、室温で行う場合に比べて表面の塑性変形の度合いを従来よりも高めることができ、従来よりも高い残留圧縮応力を発生させることができる。
また、ショットピーニングを行う上記特定の温度範囲の加熱によっては、若干の焼戻し効果は得られるものの、ショットピーニング処理時間は、通常の焼戻し処理の保持時間と比べ短時間となるため、鋼部品に対し通常行う焼戻し処理と同レベルの焼戻し処理効果を与えることが難しい。そのため、鋼部品に表面硬化処理を施した後には、必ず焼戻し処理を実施する。そして、この焼戻し処理の実施により、鋼部品の内部においても安定した金属組織状態が得られる。さらに、焼戻し処理を必須とすることによって、表面硬化処理を実施した後長時間放置することにより生じる焼き割れ(置き割れ)を確実に防止することができるため、熱処理後ショットピーニングを施すまでの時間の制限をなくすことができる。
また、本発明者等が多くの実験で確認した結果、あらかじめ焼戻し処理を行ってからショットピーニング処理を行った場合には、焼戻し処理を行なうことなく、ショットピーニング処理を行った場合と比較して、より深く圧縮の残留応力を付与させることができることを新規に見出した。そして、この効果により、疲労強度をさらに高められることがわかった。
なお、本発明で使用できる投射材は、形状が球のものに限定されない。形状に関係なく市販の投射材を用い、効果を得ることができる。
このように、上記製造方法においては、焼戻し処理による作用効果の確保と、上記特定の温度範囲でのショットピーニングによる圧縮の残留応力の向上効果とが相俟って、鋼部品(表面硬化鋼部品)の疲労強度を従来以上に高めることが可能となる。すなわち、疲労強度向上効果を、従来より高めることができる表面硬化鋼部品の製造方法を提供することができる。
上記製造方法においては、上記鋼部品を50〜200℃に加熱した状態でショットピーニングを施す。この処理温度(加熱温度)が低すぎると圧縮の残留応力向上効果が十分に得られないため、処理温度の下限値は50℃とする。一方、処理温度が高すぎると鋼部材が焼戻されて硬度低下のおそれがあるため、処理温度の上限値は200℃とする。
また、ショットピーニングに用いる投射材の硬さは、処理対象の鋼部品の表面硬さに対して、硬いほど塑性変形効果が得られやすく圧縮の残留応力を付与させやすい一方、あまり硬さの差があり過ぎる場合には鋼部材の表面を削ってしまったり、割れを生じさせるため、適度な硬さ範囲にあることが好ましい。具体的には、投射材としては、鋼部品の表面硬さよりHVにおいて100〜200程度硬い材料を選定するのが好ましい。そして、同様の理由から、具体的な投射材の硬さは、600〜1200HVが好ましく、より好ましくは、750〜900HV程度がよい。
また、ショットピーニングの条件としては、投射材が衝突して鋼部材の表面に残った衝突痕が表面を覆う面積比に処理時間を加味した値であるカバレージが100%以上とする。なお、好ましくは、得られる疲労強度のバラツキを抑制するために200%以上、より好ましくは300%以上とするのがよい。なお、カバレージはある程度までは高いほど好ましいが、高すぎると逆に強度が低下するオーバーピーニングが起きるおそれがあることから、400%以下の範囲で行うのが通常である。
上記表面硬化処理は、浸炭焼入れ処理、浸炭浸窒焼入れ処理のいずれかであることが好ましい。また、浸炭処理については、いわゆる減圧(真空)浸炭処理、通常のガス浸炭処理、その他公知の種々の方法を用いることができる。また、浸窒処理についても、大気圧あるいは減圧状態でアンモニアガスを用いて行う方法等を用いることができる。浸炭処理の後、あるいは、浸炭処理及び浸窒処理の後、直接油中等に投入して急冷され、その後焼戻し処理される。
上記鋼部品としては、様々な用途が想定されるが、特に歯車に適用した場合に有効である。
上記ショットピーニング処理は、表面に浸炭、浸炭浸窒処理がされて使用される鋼部品においては、幅広い材質に対し同様の効果が得られ、材質は特に限定されるものではない。ただし、次の化学成分を採用して上記製造方法を適用することによって、より確実に優れた表面硬化鋼部品を得ることが可能となる。以下に、好ましい化学成分を示す。
上記鋼部品は、質量比において、C:0.10〜0.30%、Si:0.25〜1.50%、Mn:0.20〜2.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.20〜2.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、Mo:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることが好ましい。各元素について、好ましい含有範囲と判断した理由は以下の通りである。
C:0.10〜0.30%、
C(炭素)は、内部硬さを確保するために0.10%以上含有させることが好ましい。一方、C含有率が高すぎると、被削性の劣化や冷鍛性の劣化を招くおそれがあるため、0.30%以下とすることが好ましい。
C(炭素)は、内部硬さを確保するために0.10%以上含有させることが好ましい。一方、C含有率が高すぎると、被削性の劣化や冷鍛性の劣化を招くおそれがあるため、0.30%以下とすることが好ましい。
Si:0.25〜1.50%、
Si(ケイ素)は、焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果を得るために0.25%以上含有させることが好ましい。一方、Si含有率が高すぎると、靭性の劣化や加工性の劣化を招くおそれがあるため、1.50%以下とすることが好ましい。
Si(ケイ素)は、焼き戻し軟化抵抗性を向上させる効果を得るために0.25%以上含有させることが好ましい。一方、Si含有率が高すぎると、靭性の劣化や加工性の劣化を招くおそれがあるため、1.50%以下とすることが好ましい。
Mn:0.20〜2.00%、
Mn(マンガン)は、内部硬さ(強度)を確保するために0.20%以上含有させることが好まし言い。一方、Mn含有率が高すぎると、被削性の劣化や浸炭異常層の増加等を招くおそれがあるため、2.00%以下とすることが好ましい。
Mn(マンガン)は、内部硬さ(強度)を確保するために0.20%以上含有させることが好まし言い。一方、Mn含有率が高すぎると、被削性の劣化や浸炭異常層の増加等を招くおそれがあるため、2.00%以下とすることが好ましい。
P:0.035%以下、
P(リン)は、製造上不可避に少量含有する元素であるが、その含有率が高すぎると粒界に偏析し疲労強度を低下させる要因となるため、0.035%以下とすることが好ましい。
P(リン)は、製造上不可避に少量含有する元素であるが、その含有率が高すぎると粒界に偏析し疲労強度を低下させる要因となるため、0.035%以下とすることが好ましい。
S:0.035%以下、
S(硫黄)は、Pと同様に製造上不可避に少量含有する元素であるが、その含有率が高すぎると疲労破壊起点となり強度低下の要因となるため、0.035%以下とすることが好ましい。
S(硫黄)は、Pと同様に製造上不可避に少量含有する元素であるが、その含有率が高すぎると疲労破壊起点となり強度低下の要因となるため、0.035%以下とすることが好ましい。
Cr:0.20〜2.00%、
Cr(クロム)は、焼入れ性の向上による内部硬さ(強度)の確保に有効であるため、その効果を得るために0.20%以上含有させることが好ましい。一方、Cr含有率が高すぎても、前記効果が飽和し、コスト高となるとともに、表面硬化処理として浸窒処理を採用した場合には、浸炭浸窒層に粗大なCrNが生成しやすくなり、周囲のマトリックスのCr含有率が低下して焼入性が低下し、浸炭浸窒層の硬さが低下するおそれがあるため、上限を2.00%とするのが好ましい。
Cr(クロム)は、焼入れ性の向上による内部硬さ(強度)の確保に有効であるため、その効果を得るために0.20%以上含有させることが好ましい。一方、Cr含有率が高すぎても、前記効果が飽和し、コスト高となるとともに、表面硬化処理として浸窒処理を採用した場合には、浸炭浸窒層に粗大なCrNが生成しやすくなり、周囲のマトリックスのCr含有率が低下して焼入性が低下し、浸炭浸窒層の硬さが低下するおそれがあるため、上限を2.00%とするのが好ましい。
Al:0.020〜0.060%、
Al(アルミニウム)は、AlNとして鋼中に存在し、ピン止め効果により、結晶粒粗大化を抑制する効果があるため、その効果を得るために0.020%以上含有させることが好ましい。一方、Al含有率が高すぎてもその効果が飽和するとともに、アルミナ系介在物が増加して、疲労強度低下に繋がるおそれがあるため、0.060%以下とすることが好ましい。
Al(アルミニウム)は、AlNとして鋼中に存在し、ピン止め効果により、結晶粒粗大化を抑制する効果があるため、その効果を得るために0.020%以上含有させることが好ましい。一方、Al含有率が高すぎてもその効果が飽和するとともに、アルミナ系介在物が増加して、疲労強度低下に繋がるおそれがあるため、0.060%以下とすることが好ましい。
N:0.0080〜0.0250%、
N(窒素)は、Alの場合と同様に、結晶粒粗大化を抑制する効果があるため、その効果を得るために0.0080%以上含有させることが好ましい。一方、N含有率が高すぎてもその効果が飽和するとともに、疲労強度低下に繋がるおそれがあるため、0.0250%以下とすることが好ましい。
N(窒素)は、Alの場合と同様に、結晶粒粗大化を抑制する効果があるため、その効果を得るために0.0080%以上含有させることが好ましい。一方、N含有率が高すぎてもその効果が飽和するとともに、疲労強度低下に繋がるおそれがあるため、0.0250%以下とすることが好ましい。
Mo:0.01〜1.00%、
Mo(モリブデン)は、内部硬さ(強度)確保に有効であるため、その効果を得るために0.01%以上含有させることが好ましい。一方、Mo含有率が高すぎると、コストアップ及び切削加工性劣化のおそれがあるため、1.00%以下とすることが好ましい。
Mo(モリブデン)は、内部硬さ(強度)確保に有効であるため、その効果を得るために0.01%以上含有させることが好ましい。一方、Mo含有率が高すぎると、コストアップ及び切削加工性劣化のおそれがあるため、1.00%以下とすることが好ましい。
上記表面硬化鋼部品の製造方法に係る実施例について説明する。
本例では、表1に示すごとく、化学成分が異なる6種類の鋼材(鋼種1〜6)を用いて各種試験片を作製し、評価した。
本例では、表1に示すごとく、化学成分が異なる6種類の鋼材(鋼種1〜6)を用いて各種試験片を作製し、評価した。
<回転曲げ試験片の作製>
上記各鋼材からなる丸棒鋼を準備し、当該丸棒鋼から平行部直径φ10mmであって平行部にこれと直角方向の深さ1mmの切欠き(切欠き係数:1.78)を全周にわたって設けた回転曲げ疲労試験片を作製した。その後、表面硬化処理、焼戻し処理、及びショットピーニングを施して、回転曲げ疲労試験片とした。
上記各鋼材からなる丸棒鋼を準備し、当該丸棒鋼から平行部直径φ10mmであって平行部にこれと直角方向の深さ1mmの切欠き(切欠き係数:1.78)を全周にわたって設けた回転曲げ疲労試験片を作製した。その後、表面硬化処理、焼戻し処理、及びショットピーニングを施して、回転曲げ疲労試験片とした。
表面硬化処理としては、表2に示すように、以下の4種類の処理方法から選択して実施した。
(1)ガス浸炭焼入れ処理(表2においては「ガス浸炭」と記載。)
プロパンガスおよびプロパンガスの変成ガスにより、浸炭処理温度950℃で150分間浸炭処理した後、850℃に降温して30分間保持した後、130℃の油に投入して焼入れを行った。
プロパンガスおよびプロパンガスの変成ガスにより、浸炭処理温度950℃で150分間浸炭処理した後、850℃に降温して30分間保持した後、130℃の油に投入して焼入れを行った。
(2)減圧浸炭焼入れ処理(表2においては「減圧浸炭」と記載。)
アセチレンを用いて、1030Paの減圧条件で、浸炭処理温度950℃で45分間浸炭処理した後、850℃に降温して30分間保持後、130℃の油に投入して焼入れを行った。
アセチレンを用いて、1030Paの減圧条件で、浸炭処理温度950℃で45分間浸炭処理した後、850℃に降温して30分間保持後、130℃の油に投入して焼入れを行った。
(3)ガス浸炭浸窒焼入れ処理(表2においては「ガス浸炭浸窒」と記載。)
プロパンガスおよびプロパンガスの変成ガスにより、浸炭処理温度950℃で150分間浸炭処理した後、850℃に降温し、アンモニアおよび変成ガスにより240分間浸窒処理を行った後、その温度のまま、130℃の油に投入して焼入れを行った。
プロパンガスおよびプロパンガスの変成ガスにより、浸炭処理温度950℃で150分間浸炭処理した後、850℃に降温し、アンモニアおよび変成ガスにより240分間浸窒処理を行った後、その温度のまま、130℃の油に投入して焼入れを行った。
(4)減圧浸炭浸窒焼入れ処理(表2においては「減圧浸炭浸窒」と記載。)
アセチレンを用いて、1030Paの減圧条件で、浸炭処理温度950℃で45分間浸炭処理した後、950℃のままアンモニアを用いて100000Pa(=大気圧)の圧力条件で60分間浸窒処理を行った後、その温度のまま、130℃の油に投入して焼入れを行った。
アセチレンを用いて、1030Paの減圧条件で、浸炭処理温度950℃で45分間浸炭処理した後、950℃のままアンモニアを用いて100000Pa(=大気圧)の圧力条件で60分間浸窒処理を行った後、その温度のまま、130℃の油に投入して焼入れを行った。
表面硬化処理を行った後、一部の焼戻し処理を省略する比較例を除く全ての試料に対して、150℃に60分間保持する焼戻し処理を行った。
その後、さらにショットピーニングを行った。ショットピーニングは、試料を所定の処理温度に保持した状態で行った。投射材としては、硬度:700HV、粒径:φ0.6mmのものを用い、カバレージは300%とした。
<回転曲げ疲労試験>
疲労強度の評価として回転曲げ疲労試験を行った。具体的には、株式会社島津製作所製の小野式回転曲げ試験装置(型番:H6型)に、上記のように作成した回転曲げ試験片をセットして、回転数3600rpmで繰り返し曲げ応力を付与して行った。曲げ疲労限度は、繰り返し回数107回における疲労限度をJISZ2274の基準に従って求めた。そして、基準とする試料の疲労限度の値に対して+20%以上に向上した場合を(◎)、+5%以上〜20%未満に向上した場合を(○)、±5%未満の場合を(□)、−5%以上〜−20%未満に低下した場合を(△)、−20%以上に低下した場合を(×)として示すこととした。後述の応力分布測定結果についても、同様に表2に記載した。
疲労強度の評価として回転曲げ疲労試験を行った。具体的には、株式会社島津製作所製の小野式回転曲げ試験装置(型番:H6型)に、上記のように作成した回転曲げ試験片をセットして、回転数3600rpmで繰り返し曲げ応力を付与して行った。曲げ疲労限度は、繰り返し回数107回における疲労限度をJISZ2274の基準に従って求めた。そして、基準とする試料の疲労限度の値に対して+20%以上に向上した場合を(◎)、+5%以上〜20%未満に向上した場合を(○)、±5%未満の場合を(□)、−5%以上〜−20%未満に低下した場合を(△)、−20%以上に低下した場合を(×)として示すこととした。後述の応力分布測定結果についても、同様に表2に記載した。
ここで、基準とする試料の評価結果の値とは、室温においてショットピーニングした場合の値を意味する。測定した評価値は、鋼種によって同じ表面硬化処理、ショットピーニング処理を行った場合でも、その値が異なるため、後述の他の評価結果も含めて、同一鋼種の室温にてショットピーニングした結果と比較して、◎○□△×の評価を行った。
<応力分布測定>
X線応力測定装置により残留応力を測定した。測定に際し、表面からの位置に応じて応力を測定するため、各測定位置において電解研磨を施して評価面とした。
X線応力測定装置により残留応力を測定した。測定に際し、表面からの位置に応じて応力を測定するため、各測定位置において電解研磨を施して評価面とした。
(試験A)
表2に示すように、各種の鋼種(表1参照)に対して、表面硬化処理、焼戻し及びショットピーニングの処理温度を設定して、上述した試験片を作製し、回転曲げ疲労試験と応力分布測定を実施した。その結果を表2に示す。
表2に示すように、各種の鋼種(表1参照)に対して、表面硬化処理、焼戻し及びショットピーニングの処理温度を設定して、上述した試験片を作製し、回転曲げ疲労試験と応力分布測定を実施した。その結果を表2に示す。
図1には、横軸にショットピーニングの処理温度をとり、縦軸には上記応力分布測定の最大圧縮残留応力値の結果に基づき、基準である室温でショットピーニングした場合の最大圧縮残留応力を1とした比率(最大残留応力比)をとった結果を示した。なお、図1は、試験Aにおける鋼種1の結果を示したものである。
また、図2には、横軸に試料の表面からの深さをとり、縦軸には残留応力値(−は圧縮残留応力を意味する)をとり、試験Aの鋼種1の結果を示した。
表2及び図1の結果からわかるように、ショットピーニングについては、50℃〜200℃の範囲で加熱して実施することにより、室温で行う場合よりも格段に残留応力向上効果が得られることがわかる。特に100℃〜200℃の範囲、その中央の150℃近傍が最も効果が高いことがわかる。一方、少なくとも、225℃以上に加熱した場合には、室温で行う場合よりも残留応力が低下してしまうこともわかった。
なお、鋼種2〜6については、表2に結果を示すが、鋼種1と同様の優れた結果が得られることを確認できた。
なお、鋼種2〜6については、表2に結果を示すが、鋼種1と同様の優れた結果が得られることを確認できた。
表2及び図2の結果からわかるように、ショットピーニングを、50℃〜200℃の範囲で加熱して実施することにより、評価した鋼種1〜6の全てについて、室温で行う場合よりもより大きな圧縮残留応力値が得られることがわかる。特に100℃〜200℃の範囲、その中央の150℃近傍が最も効果が高いことがわかる。一方、少なくとも、225℃以上に加熱した場合には、室温で行う場合よりも残留応力が低下してしまうこともわかった。
(試験B)
表3に示すように、鋼種1を代表として、上述した焼戻し処理を行った場合と省略した場合の差異を評価する試験を行った。ショットピーニングについては、150℃に加熱した状態で行った。そして、上述した試験片を作製し、回転曲げ疲労試験と応力分布測定を実施した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、鋼種1を代表として、上述した焼戻し処理を行った場合と省略した場合の差異を評価する試験を行った。ショットピーニングについては、150℃に加熱した状態で行った。そして、上述した試験片を作製し、回転曲げ疲労試験と応力分布測定を実施した。その結果を表3に示す。
また、図3には、横軸に試料の表面からの深さをとり、縦軸には残留応力値(−は圧縮残留応力を意味する)をとり、焼戻しを行った試験B1と、焼戻しを行わなかった試験B2の結果を示した。
図3の結果からわかるように、表面硬化処理の後の焼戻し処理を行った場合と省略した場合とを比較すると、圧縮の残留応力値の最大値には、大きな差異はないが、焼戻し処理を行った場合の方が、表面からより深い位置まで、より大きな圧縮の残留応力が生成し、表3の結果にみられるように、前記残留応力の結果を反映して、疲労強度も向上することが確認できた。なお、試験B3は、表面硬化処理後、1週間以上という長時間放置した後にショットピーニングを行った結果を示すものであるが、ショットピーニング前に置き割れが発生していたため、その後の試験は実施しなかった。
これらの結果から、表面硬化処理とショットピーニングの間に焼戻し処理を行うことは、置き割れの防止だけではなく、より深い位置まで、高い圧縮残留応力を生成させ、その結果疲労強度の改善にも有効であることがわかる。
Claims (4)
- 鋼部品に表面硬化処理及び焼戻し処理を施し、
その後、上記鋼部品を50〜200℃に加熱した状態でショットピーニングを施すことを特徴とする表面硬化鋼部品の製造方法。 - 上記表面硬化処理は、浸炭焼入れ処理、浸炭浸窒焼入れ処理のいずれかである、請求項1に記載の表面硬化鋼部品の製造方法。
- 上記鋼部品は、歯車である、請求項1又は2に記載の表面硬化鋼部品の製造方法。
- 上記鋼部品は、質量比において、C:0.10〜0.30%、Si:0.25〜1.50%、Mn:0.20〜2.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.20〜2.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、Mo:0.01〜1.00%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面硬化鋼部品の製造方法。
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