JP2020111514A - 難水溶性アミノ酸含有固体分散体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、アミノ酸には、例えばチロシンのように難水溶性のものがあり、それらの原体そのものの生理機能を有効活用することは難しい。
従って、本発明は、難水溶性アミノ酸の濃度の低下及び着色を回避しつつ、難水溶性アミノ酸の水への溶解性が向上した固体分散体を製造する方法を提供することに関する。
本明細書において、(A)水への溶解度が20g/L以下の難水溶性アミノ酸は(A)成分、(B)水溶性高分子は(B)成分、(C)還元性を示さない、糖類、オリゴ糖及び糖類の誘導体は(C)成分とも云う。
また、本明細書においては、「撹拌又は混練」を単に「撹拌等」と記載することもあり、粘稠な物質を対象とする際には「混練」と記載することもあるが、いずれも混合物を均一化させる操作を意味する。
本発明では、溶解性を向上する必要性から、水への溶解度が、16g/L以下、更に12g/L以下の難水溶性アミノ酸に好ましく適用できる。また、アミノ酸の水への溶解性の点から、水への溶解度が、0.1g/L以上、更に0.2g/L以上、更に0.4g/L以上の難水溶性アミノ酸に好ましく適用できる。
本明細書において、水溶性高分子は、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーである((C)成分を除く)。
(B)成分としては、例えば、酸性多糖類(例えば、ペクチン、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、キタンサンガム、ジェランガム、トラガントガム、イヌリン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、κ−カラギーナン、ポリガラクツロン酸、寒天、ポリフィラン、フノラン、フルセラン);中性多糖類(例えば、タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、デンプン、プルラン、ラミナラン、コンニャクマンナン);塩基性多糖類(例えば、キトサン);セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール);ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)等が挙げられる。なかでも、(A)成分の分散媒となり、(A)成分を非晶質化させる点から、好ましくは多糖類及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは酸性多糖類及びセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはペクチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カチオン化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはペクチン及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる少なくとも1種である。
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)より測定することができる。
本明細書において、糖類は、単糖類及び二糖類の総称である。オリゴ糖は、処理温度を低下させる点から、単糖の数が3〜10程度の糖であることが好ましく、3〜7がより好ましく、3〜4が更に好ましい。糖類は、無水物又は水和物であってもよい。
還元性を示さない糖類としては、例えば、二糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ラクトビオン酸)が挙げられる。
還元性を示さないオリゴ糖としては、例えば、三糖類(例えば、ラフィノース、メレジトース)、四糖類(例えば、スタキオース)が挙げられる。
還元性を示さない糖類の誘導体としては、糖類に官能基(例えば、エステル結合)を付加したもの、例えば、二糖類の誘導体(例えば、ショ糖脂肪酸エステル)が挙げられる。
なかでも、処理温度を低下させる点から、好ましくは二糖類、三糖類及び二糖類の誘導体から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはラクトビオン酸、ラフィノース及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはラフィノース、ショ糖脂肪酸エステルである。
(A)成分と(B)成分と(C)成分を混合する際、(A)成分の含有量は、固体分散体中の(A)成分の含有量を高める点から、混合物中に、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、(A)成分の水への溶解性を向上させる点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
スクリュー回転数は、30〜500r/minが好ましく、50〜300r/minがより好ましく、50〜250r/minが更に好ましく、80〜200r/minが殊更好ましい。
また、せん断速度としては、10sec-1以上が好ましく、20〜30000sec-1がより好ましく、50〜3000sec-1が更に好ましい。せん断速度が10sec-1以上であれば、有効に粉砕が進行するため好ましい。
スクリューを備えた押出機中で溶融した溶融物は、押出し、成形される。
非晶質とは、分子配列に一定の規則性を欠いている状態である。非晶質(アモルファス)であることは、粉末X線回折によって確認できる。
難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体は、粉末X線回折測定において、難水溶性アミノ酸の結晶性回折ピークが検出されないのが好ましい。
冷却方法は、例えば、固体分散体を50℃以下、更に30℃以下、更に室温(25℃)の雰囲気下におくことが好ましい。また、加熱処理後の固体分散体に冷風を吹き付けて急冷することが好ましい。加熱処理温度から25℃まで低下するのに要した時間から算出される固体分散体の冷却速度は、好ましくは0.1℃/s以上、より好ましくは0.2℃/s以上、更に好ましくは0.3℃/s以上であり、また、製造設備の制約等の点から、好ましくは100℃/s以下、より好ましくは50℃/s以下である。
冷却時間は、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、更に好ましくは10分以下、更に好ましくは5分以下である。
冷却により固化した固体分散体は、任意の形、大きさに成形可能である。例えば、ペレット状、顆粒状が挙げられる。更に、必要に応じて粉砕してもよい。
固体分散体における難水溶性アミノ酸の残存率は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。
また、本発明の製造方法で得られる難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体は、水への溶解性に極めて優れる。
固体分散体における難水溶性アミノ酸の水に対する溶解度(25℃)は、好ましくは未処理の難水溶性アミノ酸に対して1.5倍以上、より好ましくは3倍以上、更に好ましくは5倍以上である。
更に、本発明の製造方法で得られる難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体は、着色が少ない。
難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の着色度は、20以下である。なお、本明細書における着色度はL*a*b*色空間におけるΔEの数値で表現される色差をいい、その測定法は実施例に示した方法に従う。
飲食品としては、例えば、飲料、パン類、麺類、クッキー等の菓子類、スナック類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、粉末コーヒー等のインスタント食品、でんぷん加工製品、加工肉製品、その他加工食品、調味料、栄養補助食品等の液状、固形状又は半固形状の飲食品が挙げられる。また、医薬品としては、錠剤(チュアブル錠等)、カプセル剤、粉末剤等の剤型が挙げられる。また、化粧品としては、洗浄料、化粧水、メイクアップ用化粧料、日焼け止め用化粧料、ニキビ用化粧料、デオドラント用化粧料、美白用化粧料、洗髪剤、育毛剤等が挙げられる。
難水溶性アミノ酸の溶解液として5%乳酸水溶液を用い、難水溶性アミノ酸の濃度が0.005−0.0015質量%の濃度範囲となるように、所定量の難水溶性アミノ酸含有粉末又は溶液を希釈した後、沈殿物が無くなるまで5%乳酸水溶液と混合、溶解させた状態でHPLC分析用の試料バイアル瓶内に充填した。
島津製作所製のHPLC装置:SCL−10AVPを用い、カラムにはL−カラムTM ODS4.6 mmφ×250 mmを用いた。移動相A液として酢酸0.1mol/L含有蒸留水を、移動相B液としてアセトニトリルを使用し、以下に示したグラジェント条件にて移動相をカラムに送液した。
時間(分) 移動相A液(体積%) 移動相B液(体積%)
00 100 0
05 100 0
25 0 100
30 100 0
40 100 0
試料注入量:10μL、UV検出波長:275nm、カラム温度:35℃の条件でHPLC測定を行った。HPLC分析によって得られた難水溶性アミノ酸の濃度と希釈倍率により、希釈前の難水溶性アミノ酸の濃度を算出した。
加熱溶融後の難水溶性アミノ酸の残存率は仕込み組成と固体分散体の難水溶性アミノ酸の濃度から次式で算出した。
残存率(%)=〔(固体分散体中の難水溶性アミノ酸濃度)/(難水溶性アミノ酸の仕込み組成)〕×100
固体分散体と水を50mLのサンプル瓶に所定量仕込み、マグネチックスターラーを用いて、回転数:500r/min(0.4m/s)、撹拌時間:30minで撹拌を行った。なお、固体分散体と水を混合した全量を30gとし、難水溶性アミノ酸の仕込み量は4.5g/Lとした。経時で混合液を1.0mLサンプリングし、孔径0.8μmと0.45μmのセルロースアセテートシリンジフィルターで濾過し、得られた濾液の難水溶性アミノ酸の濃度を前述のHPLCにて定量分析した。
加熱溶融前の原料の混合物と加熱溶融、混練処理後に冷却した固体分散体のL*、a*、b*の値を日本電色工業株式会社製簡易型分光色差計NF333を用いて測定し、各値から次式でΔE値を算出した。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
チロシン:L−チロシン、富士フィルム和光純薬(株)製
トリプトファン:L−トリプトファン、富士フィルム和光純薬(株)製
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、信越化学工業(株)製メトローズ SE‐06、重量平均分子量35000、融点185℃
ペクチン:ユニテックフーズ(株)製 UTFC LM QS 400C、重量平均分子量260000、融点150℃
ラフィノース:D(+)−ラフィノース五水和物、富士フィルム和光純薬(株)製、融点85℃
ショ糖脂肪酸エステル:ショ糖ステアリン酸エステル、三菱ケミカルフーズ(株)製、融点55℃
ラクトビオン酸:富士フィルム和光純薬(株)製、融点113℃
マルトース:D(+)−マルトース一水和物、富士フィルム和光純薬(株)製
エリスリトール:meso−Erythritol、東京化成工業(株)製
ソルビトール:D(−)−ソルビトール、富士フィルム和光純薬(株)製
チロシンを15質量%、HPMCを45質量%、ラフィノースを40質量%の割合で、各粉体をプラスティックカップに計量し、混合することで混合物を得た。加熱温度:130℃、回転速度:20r/minに設定した2軸エクストルーダー(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製)にあらかじめ混合した粉体の混合物を投入し、回転速度:80r/min、時間:10minの条件で装置内を循環させながら混練処理を行った。所定時間後、循環路を排出側に切り替え、送風により5minで25℃まで(冷却速度0.35℃/s)冷却を行いながら固体分散体を回収した。
回収した固体分散体は乳鉢を用いて粉砕し、得られた固体分散体の粉末について分析、評価を行った。
ラフィノースに代えて、ラフィノースを20質量%、ショ糖脂肪酸エステルを20質量%とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
ラフィノースに代えて、ショ糖脂肪酸エステルを40質量%とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
ラフィノースに代えて、ラクトビオン酸を40質量%とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
HPMCに代えて、ペクチンを45質量%、加熱温度を110℃とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
ラフィノースに代えて、ショ糖脂肪酸エステルを用い、チロシン、HPMC、ショ糖脂肪酸エステルの割合を表1に記載したように代えた以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
チロシンを15質量%、HPMCを45質量%、ラフィノースを40質量%の割合で、各粉体をプラスティックカップに計量し、撹拌することでチロシン混合物を得た。得られたチロシン混合物について分析、評価を行った。
ラフィノースに代えて、ラフィノースを20質量%、ショ糖脂肪酸エステルを20質量%とした以外は、比較例1と同様にしてチロシン混合物を得た。
ラフィノースに代えて、ショ糖脂肪酸エステルを40質量%とした以外は、比較例1と同様にしてチロシン混合物を得た。
ラフィノースに代えて、ラクトビオン酸を40質量%とした以外は、比較例1と同様にしてチロシン混合物を得た。
HPMCに代えて、ペクチンを45質量%とした以外は、比較例1と同様にしてチロシン混合物を得た。
ラフィノースに代えて、ショ糖脂肪酸エステルを用い、チロシン、HPMC、ショ糖脂肪酸エステルの割合を表2に記載のように代えた以外は、比較例1と同様にしてチロシン混合物を得た。
チロシン、HPMC、ショ糖脂肪酸エステルの割合を表2に記載したように代えた以外は実施例1と同様に処理を試みたが混練できず、固体分散体を製造できなかった。
加熱温度:170℃とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
ラフィノースに代えて、マルトースを40質量%とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
HPMCに代えて、ペクチンを45質量%、ラフィノースに代えて、マルトースを40質量%、加熱温度を130℃又は110℃とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
ラフィノースに代えて、エリスリトール又はソルビトール用いた以外は実施例1と同様に処理を試みたが排出口で固化してしまい、固体分散体を製造できなかった。
トリプトファンを40質量%、HPMCを20質量%、ラフィノースを40質量%の割合とした以外は、実施例1と同様に処理して固体分散体を製造した。
トリプトファンを40質量%、HPMCを20質量%、ラフィノースを40質量%の割合とした以外は、比較例1と同様にしてトリプトファン混合物を得た。
Claims (6)
- 難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の製造方法であって、(A)水への溶解度が20g/L以下の難水溶性アミノ酸と(B)水溶性高分子と(C)還元性を示さない、糖類、オリゴ糖及び糖類の誘導体から選ばれる少なくとも1種を、前記(B)成分に対する前記(C)成分の質量比[(C)/(B)]が0.4〜20となるように混合した後、170℃未満で加熱して溶融させる工程と、混合物を撹拌又は混練する工程と、撹拌又は混練した溶融物を冷却し固化させる工程を含む、製造方法。
- 加熱温度が55〜150℃である請求項1記載の難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の製造方法。
- 前記(A)成分がチロシン及び/又はトリプトファンである請求項1又は2記載の難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の製造方法。
- 前記(B)成分が酸性多糖類及びセルロース誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の製造方法。
- 前記(C)成分が還元性を示さない、二糖類、三糖類及び二糖類の誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項記載の難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の製造方法。
- スクリューを備えた押出機を用いて、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合した後、加熱して溶融させる工程、並びに混合物を撹拌又は混練する工程が行われる請求項1〜5のいずれか1項記載の難水溶性アミノ酸を含有する固体分散体の製造方法。
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