蓄電システムの技術分野において、従来より、深夜に低価格の電力を利用して充電を行う一方、昼間にその充電された電力を放電する方式により、電力会社から購入する電力を削減する使用例が知られている。
図3に従来の一般的な蓄電システムの回路図を示す。図3において、1は交流系統、2は自立出力、S1,S2,S3,S4,S5,S6は開閉器、3はノイズフィルタ、C0は相間コンデンサ、L1,L2はチョークコイル、4は双方向インバータ、Q1,Q2,Q3,Q4は双方向インバータ4を構成するメインスイッチング素子、5は双方向DC/DCコンバータ、C1は第1の平滑コンデンサ、Q5,Q6は双方向DC/DCコンバータ5を構成するメインスイッチング素子、L3はチョークコイル、C2は第2の平滑コンデンサ、BTは蓄電池である。
充電動作時においては、開閉器S1〜S4をオンにするとともに、開閉器S5,S6をオフにし(交流系統1に対して自立出力2とノイズフィルタ3とが並列に接続される)、交流系統1からの交流電圧を双方向インバータ4によって昇圧された直流電圧に変換する。そして、双方向DC/DCコンバータ5によって蓄電池BTが必要とする直流電圧に降圧し、蓄電池BTを充電する。
放電動作時においては、開閉器S1〜S4をオンにするとともに、開閉器S5,S6をオフにし、双方向DC/DCコンバータ5で蓄電池BTの電圧を昇圧する。そして、双方向インバータ4で直流から降圧された交流に変換して交流系統1と自立出力2へ放電する。
交流系統1が停電したときは、開閉器S1〜S4をオフにするとともに、開閉器S5,S6をオンにし(交流系統1をノイズフィルタ3と自立出力2から切り離し、自立出力2はノイズフィルタ3に接続する)、放電動作時と同様にして蓄電池BTから自立出力2に交流を出力する。自立出力2には停電時に優先的に使用したい家電製品が接続される。
ところで、蓄電システムは、一般家庭に広く普及させるには価格が高く(特に、蓄電池BTが価格を押し上げている。)、手軽に購入することが難しいのが現状である。
一般市場にあっては、蓄電池容量を犠牲にしても価格を下げたいという要求があり、この要求に応えるには、蓄電池BTの直列数を削減し、価格を下げた製品の開発が必要になってきている。
しかし、蓄電池BTの直列数を削減すると蓄電池電圧が低下し、双方向DC/DCコンバータ5の昇降圧比(充電時は降圧比、放電時は昇圧比)が増加するが、これに起因する変換効率の悪化が問題となっている。
効率悪化対策として、高効率・双方向絶縁型DC/DCコンバータに関する論文において、双方向DC/DCコンバータの効率を改善するためのARCP回路が提案されている(非特許文献1参照)。
図4は、図3の蓄電システムにおいて、その双方向DC/DCコンバータ5に対してARCP回路を追加適用したものを示す。
図4において、6′はARCP回路、6a′は転流制御回路、6b′は整流回路、L4は共振用コイル、Q7,Q8は補助スイッチング素子、T0は充放電兼用のトランス、D1,D2は整流ダイオード、D3,D4は逆流防止用のダイオード、C3,C4は共振用コンデンサである。なお、図4において、図3で用いたのと同一符号は同一の構成要素を指すものとし、詳しい説明は省略する。
双方向DC/DCコンバータ5にはARCP回路6′が追加適用されている。ARCP回路6′は、転流制御回路6a′と整流回路6b′を有している。転流制御回路6a′は、共振用コイルL4、補助スイッチング素子Q7,Q8、共振用コンデンサC3,C4、充放電兼用のトランスT0、逆流防止用のダイオードD3,D4を有している。整流回路6b′は、整流ダイオードD1,D2で構成されている。
ARCP回路6′の機能は次のとおりである。
第2の平滑コンデンサC2の両端子間にチョークコイルL3とメインスイッチング素子Q6との直列回路が接続され、さらにメインスイッチング素子Q6の両端子間にハイサイドのメインスイッチング素子Q5の逆並列接続の寄生ダイオードと第1の平滑コンデンサC1との直列回路が接続されていて、これは放電モードの場合における昇圧チョッパの機能を形成する。
ローサイドのメインスイッチング素子Q6のスイッチングによって昇圧チョッパの機能を発揮させるのであるが、そのメインスイッチング素子Q6をターンオンさせるに際して、その前段階で、ローサイドの補助スイッチング素子Q8をオンにすることでローサイドのメインスイッチング素子Q6をソフトスイッチング方式でターンオンさせることができ、変換効率を向上させることができる。
第1の平滑コンデンサC1の両端子間にハイサイドのメインスイッチング素子Q5とローサイドのメインスイッチング素子Q6における逆並列接続の寄生ダイオードとの直列回路が接続され、さらにこの寄生ダイオードの両端子間にチョークコイルL3と第2の平滑コンデンサC2との直列回路が接続されていて、これは充電モードの場合における降圧チョッパの機能を形成する。
ハイサイドのメインスイッチング素子Q5のスイッチングによって降圧チョッパの機能を発揮させるのであるが、そのメインスイッチング素子Q5をターンオンさせるに際して、その前段階で、ハイサイドの補助スイッチング素子Q7をオンにすることでハイサイドのメインスイッチング素子Q5をソフトスイッチング方式でターンオンさせることができ、変換効率を向上させることができる。
なお、上記した論文に開示された回路において、補助スイッチング素子Q7,Q8には逆流防止用のダイオードD3,D4が直列に挿入されてはいないが、実際は充放電兼用のトランスT0から発生する逆電圧による逆流を防止するため、逆流防止用のダイオードD3,D4は不可欠となっている。
ところで、以上のようにARCP回路を採用しても、蓄電池BTの低価格化を考慮すると、昇降圧比が5倍程度と依然として高いものになり、変換効率のさらなる改善が課題となっている。
そこで、さらなる改良を図るべく、出願人は図5に示すような蓄電システムを提案した(システムの主要部について特許出願済み)。これは、図4における双方向DC/DCコンバータ5内のARCP回路6′に対して、変形した構成のARCP回路6を代替したものに相当する。なお、図5において、図3、図4で用いたのと同一符号は同一の構成要素を指すものとし、詳しい説明は省略する。
図5においては、図4の場合の転流制御回路6a′における充放電兼用のトランスT0を充電用のハイサイドのトランスT1と放電用のローサイドのトランスT2とに分離している。そして、このトランスの分離に応じて、整流回路6bでは図4の場合の整流ダイオードD1,D2に対して整流ダイオードD5,D6を追加している。
充電時はハイサイドの補助スイッチング素子Q7がスイッチングし充電用のハイサイドのトランスT1を駆動するが、従来のようにローサイドの補助スイッチング素子Q8で駆動する放電用のローサイドのトランスT2の巻線が充電用のハイサイドのトランスT1に存在しないので、ハイサイドの補助スイッチング素子Q7のスイッチングにより放電用のローサイドのトランスT2に電圧が発生することがなく、ローサイドの補助スイッチング素子Q8に対しては図4の場合の逆流防止用のダイオードD4は必要ではない。
放電時はローサイドの補助スイッチング素子Q8がスイッチングし放電用のローサイドのトランスT2を駆動するが、従来のようにハイサイドの補助スイッチング素子Q7で駆動する充電用のハイサイドのトランスT1の巻線が放電用のローサイドのトランスT2に存在しないので、ローサイドの補助スイッチング素子Q8のスイッチングにより充電用のハイサイドのトランスT1に電圧が発生することがなく、ハイサイドの補助スイッチング素子Q7に対しては図4の場合の逆流防止用のダイオードD3は必要ではない。
以上のように逆流防止用のダイオード(D3,D4)を挿入する必要がないため、逆流防止ダイオードで損失する電力が無くなり、変換効率を改善することができる。
以上、双方向インバータ4と双方向DC/DCコンバータ5とを備えた蓄電システムについて、その双方向DC/DCコンバータ5にARCP回路6を追加適用するに至った経緯を簡単に説明した。
以下では、ARCP回路6を双方向DC/DCコンバータ5に適用する代わりに双方向インバータ4に対して適用する場合について図6を用いて説明する。図6に示す蓄電システムは、本願発明の課題を明らかにするための構成例であり、従来技術と捉えてはならない。
図6は、図3の蓄電システムを基礎として変換効率の向上を期して検討された蓄電システムを示す回路図である。なお、図6において、図3、図4、図5で用いたのと同一符号は同一の構成要素を指すものとし、詳しい説明は省略する。
図6の蓄電システムは、図3の蓄電システムにおける双方向インバータ4に対してARCP回路を追加適用したものに相当する(繰り返しになるが、ARCP回路を双方向DC/DCコンバータ5に適用することに代えて、双方向インバータ4に対して適用している)。
図6において1つのブロックで示され符号5で指示される双方向DC/DCコンバータ5は、その内部構成の図示を省略しているが、図3におけるのと同様に、ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子Q5,Q6、チョークコイルL3、第1および第2の平滑コンデンサC1,C2を備えて構成されている。なお、第1の平滑コンデンサC1は、説明の都合上、双方向DC/DCコンバータ5を示すブロックから外側にはみ出して図示している。
図6において、図3の双方向インバータ4に対応する部分は、2つの双方向インバータ部、すなわち第1の双方向インバータ部4aと第2の双方向インバータ部4bから構成されている。
次に、第1および第2の双方向インバータ部4a,4bの構成要素を、図5における双方向DC/DCコンバータ5のARCP回路6(トランス分離方式)の構成要素を参照して説明する。
図3の回路構成で説明したが、双方向インバータ4は、電流が交流系統1の側から蓄電池BTの側に向かう方向で昇圧機能を持ち、逆に、電流が蓄電池BTの側から交流系統1の側に向かう方向で降圧機能を持つ。一方、図5に示すARCP回路6を含む双方向DC/DCコンバータ5は、電流が交流系統1の側から蓄電池BTの側に向かう方向で降圧機能を持ち、逆に、電流が蓄電池BTの側から交流系統1の側に向かう方向で昇圧機能を持つ。つまり、双方向インバータ4とARCP回路6を含む双方向DC/DCコンバータ5とでは、昇降圧の方向性に関して電流の流れ方向が対称的(逆方向)となっている。
このことを勘案すると、図6における第1および第2の双方向インバータ部4a,4bの構成要素の配列順序は、図5の双方向DC/DCコンバータ5の構成要素の配列順序に対して逆方向の関係にあればよいことになる。
図6において、第1の双方向インバータ部4aにおけるARCP回路6は転流制御回路6aと整流回路6bを有し、第2の双方向インバータ部4bにおけるARCP回路7は転流制御回路7aと整流回路7bを有している。
転流制御回路6a,7aは、共振用コイルL5,L6、ハイサイドの補助スイッチング素子Q9,Q11、充電用のハイサイドのトランスT3,T5の一次巻線、放電用のローサイドのトランスT4,T6の一次巻線、ローサイドの補助スイッチング素子Q10,Q12を有している。転流制御回路6a,7aには、図4における逆流防止用のダイオードD3,D4は接続されていない。
第1の双方向インバータ部4aにおいては、ノイズフィルタ3側のハイサイドのチョークコイルL1が図5の蓄電池BT側に位置するチョークコイルL3に対応する。また、第2の双方向インバータ部4bにおいては、ノイズフィルタ3側のローサイドのチョークコイルL2が図5のチョークコイルL3に対応する。
同様に、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1,Q3が図5のハイサイドのメインスイッチング素子Q5に対応し、ローサイドのメインスイッチング素子Q2,Q4が図5のローサイドのメインスイッチング素子Q6に対応する。共振コイルL5,L6は図5の共振コイルL4に対応する。
補助スイッチング素子Q9,Q11は図5の転流制御回路6aにおけるハイサイドの補助スイッチング素子Q7に対応し、補助スイッチング素子Q10,Q12は図5のローサイドの補助スイッチング素子Q8に対応する。充電用のハイサイドのトランスT3,T5は図5の転流制御回路6aにおけるハイサイドの充電用のハイサイドのトランスT1に対応し、放電用のローサイドのトランスT4,T6は図5のローサイドの放電用のローサイドのトランスT2に対応する。ハイサイドの共振用コンデンサC5,C7は図5の共振用コンデンサC3に対応し、ローサイドの共振用コンデンサC6,C8は図5の共振用コンデンサC4に対応する。
図6において、第1の双方向インバータ部4aにおける整流回路6bは整流ダイオードD7,D8,D9,D10から構成され、第2の双方向インバータ部4bにおける整流回路6bは整流ダイオードD11,D12,D13,D14から構成されている。
図6における整流ダイオードD7,D8,D9,D10の部分および整流ダイオードD11,D12,D13,D14の部分は、図5の整流ダイオードD1,D2,D5,D6に対応する。
しかし、図6に示す蓄電システムにあっては、その双方向インバータ4は、双方向DC/DCコンバータ5のように直流電圧どうし間で昇圧変換または降圧変換を行うものではない。双方向インバータ4の交流系統1側または自立出力2側は交流電圧になるので、メインスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のデューティが大きな範囲で変化する。すなわち、デューティ最小(正弦波の最大電圧)からデューティ最大(正弦波のゼロ電圧)まで大きく変化する。
そのため、双方向インバータ4に対して単純にARCP回路を適用するだけであると、動作の態様がハイサイド・ローサイドの補助スイッチング素子Q9,Q10またはQ11,Q12による共振条件から外れてしまう。その結果、所期通りのソフトスイッチングが難しくなり、双方向インバータ4の動作が不安定なものになってしまうという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、ARCP回路を適用した双方向インバータに関して、動作の安定化を図り、変換効率を改善することを目的としている。
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
本発明による双方向インバータは、
一対の電源ラインを構成するハイサイドラインとローサイドラインとの間に設けられた第1の双方向インバータ部と第2の双方向インバータ部とを備え、
前記第1の双方向インバータ部は、ハイサイドのメインスイッチング素子とローサイドのメインスイッチング素子との直列回路および第1のARCP回路を有し、
前記第2の双方向インバータ部は、ハイサイドのメインスイッチング素子とローサイドのメインスイッチング素子との直列回路および第2のARCP回路を有し、
前記第1および第2のARCP回路はそれぞれ、前記ハイサイドのメインスイッチング素子に対応してハイサイドの補助スイッチング素子と、前記ローサイドのメインスイッチング素子に対応してローサイドの補助スイッチング素子とを含み、
前記ハイサイドの補助スイッチング素子は前記ハイサイドのメインスイッチング素子のターンオン前にオンされ電流を転流させることにより、前記ハイサイドのメインスイッチング素子のソフトスイッチングを実行するとともに、前記ローサイドの補助スイッチング素子は前記ローサイドのメインスイッチング素子のターンオン前にオンされ電流を転流させることにより、前記ローサイドのメインスイッチング素子のソフトスイッチングを実行するように構成され、
前記ハイサイドおよびローサイドの補助スイッチング素子に対するスイッチング制御回路は、前記ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子のデューティが所定限界のデューティ状態に達する前に、前記各補助スイッチング素子の動作を停止させるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明による蓄電システムは、
上記構成の双方向インバータと、双方向DC/DCコンバータとが交流系統と蓄電池との間で直列に接続され、
前記双方向インバータと前記双方向DC/DCコンバータとを結ぶ前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に平滑コンデンサが接続され、
前記第1の双方向インバータ部における前記ハイサイドのメインスイッチング素子と前記ローサイドのメインスイッチング素子との共通接続点が前記交流系統側のハイサイドのチョークコイルに接続され、
前記第2の双方向インバータ部における前記ハイサイドのメインスイッチング素子と前記ローサイドのメインスイッチング素子との共通接続点が前記交流系統側のローサイドのチョークコイルに接続されていることを特徴とする。
本発明の構成によれば、双方向インバータにARCP回路を追加適用している。この場合に、交流の正の半サイクル期間用に第1の双方向インバータ部と第1のARCP回路を備えるとともに、負の半サイクル期間用に第2の双方向インバータ部と第2のARCP回路を備え、第1および第2のいずれの双方向インバータ部においても、それぞれのハイサイドのメインスイッチング素子およびローサイドのメインスイッチング素子に対して、ターンオン前にハイサイドおよびローサイドの各補助スイッチング素子をオンし電流を転流させることにより、ソフトスイッチングを実行し得る。
しかしながら、双方向インバータは、交流系統と直流系統との間に接続されるもので、直流系統どうし間に接続される双方向DC/DCコンバータとは違って、メインスイッチング素子のデューティが大きく変化する。そのため、ARCP回路が追加適用された双方向インバータにおいては、そのメインスイッチング素子のソフトスイッチングの態様が補助スイッチング素子による共振条件から外れて、ソフトスイッチングが不安定になるという問題があった。
しかるに本発明においては、ARCP回路におけるハイサイドおよびローサイドの補助スイッチング素子に対するスイッチング制御において、ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子のデューティが大きく変化して所定限界のデューティ状態に達する前に、各補助スイッチング素子の動作を停止させている。
その結果、第1の双方向インバータ部においても第2の双方向インバータ部においても、そのメインスイッチング素子のソフトスイッチングが安定化し、双方向インバータの変換効率を改善することが可能となる。
上記構成の本発明の双方向インバータには、次のような好ましい態様がある。
前記第1および第2のARCP回路はそれぞれ、転流制御回路と整流回路とを有し、
前記転流制御回路は、前記ハイサイドラインと前記ローサイドラインとの間に前記ハイサイドの補助スイッチング素子とトランスの一次巻線と前記ローサイドの補助スイッチング素子の直列回路が接続され、前記ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子の共通接続点と前記トランスの一次巻線とが共振用コイルを介して接続され、前記ハイサイドおよびローサイドのメインスイッチング素子の電流路を構成する両端子間にそれぞれハイサイドおよびローサイドの共振用コンデンサが並列に接続され、
前記整流回路は、前記トランスの二次巻線に誘起される電流を前記ハイサイドラインから前記ローサイドラインに向かう方向に供給するように構成されている、という態様がある。
この場合、メインスイッチング素子のソフトスイッチングの安定化と、双方向インバータの変換効率の改善がより実効性のあるものとなる。
さらに、前記トランスは、前記ハイサイドの補助スイッチング素子に一次巻線が接続されたハイサイドのトランスと、前記ローサイドの補助スイッチング素子に一次巻線が接続されたローサイドのトランスとを有し、前記ハイサイドのトランスと前記ローサイドのトランスとが実質的に磁気結合することなく互いに分離配置されている、という態様がある。
この場合、転流制御回路と整流回路との磁気結合のためのトランスを放電用トランスと充電用トランスとに分離してあるので、ARCP回路でソフトスイッチングのための共振動作をさせるに際し、ローサイドの一次巻線に対する励磁がハイサイドの一次巻線に逆起電力を発生させることがなく、またハイサイドの一次巻線に対する励磁がローサイドの一次巻線に逆起電力を発生させることもない。その結果、ARCP回路のハイサイド部分にもローサイド部分にも従来例のように逆流防止用のダイオードを挿入する必要がなくなり、その逆流防止用のダイオードで消費される電力を節約することが可能となる。
本発明によれば、ARCP回路を適用した双方向インバータにおいて、動作の安定化を図り、変換効率を改善することができる。
以下、上記構成の本発明の双方向インバータおよび当該双方向インバータを搭載した蓄電システムにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
図1に示すように、交流系統(商用電力系統)1と蓄電池BTとの間にあって双方向インバータ4と双方向DC/DCコンバータ5とが直列に接続されている。双方向DC/DCコンバータ5の電源ラインであるハイサイドラインLHとローサイドラインLLとの間に第1の平滑コンデンサC1が接続されている。この第1の平滑コンデンサC1は双方向DC/DCコンバータ5の構成要素の1つであるが、説明の都合上、双方向DC/DCコンバータ5を示すブロックの外側に図示している。
交流系統1に対してハイサイド・ローサイド一対の開閉器S1,S2を介してノイズフィルタ3が接続されているとともに、自立出力2に対してハイサイド・ローサイド一対の開閉器S5,S6を介してノイズフィルタ3が接続されている。また、交流系統1と自立出力2とはハイサイド・ローサイド一対の開閉器S3,S4を介して並列に接続されている。
双方向インバータ4は、前段側の第1の双方向インバータ部4aと後段側の第2の双方向インバータ部4bとから構成されている。
ノイズフィルタ3の出力端子間には相間コンデンサC0が接続され、ノイズフィルタ3の出力側のハイサイドラインLHにはハイサイドのチョークコイルL1を介して双方向インバータ4における第1の双方向インバータ部4aが接続され、ノイズフィルタ3の出力側のローサイドラインLLにはローサイドのチョークコイルL2を介して双方向インバータ4における第2の双方向インバータ部4bが接続されている。
第1の双方向インバータ部4aは、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1とローサイドのメインスイッチング素子Q2との直列回路および第1のARCP回路6から構成されている。メインスイッチング素子Q1,Q2の直列回路は、双方向DC/DCコンバータ5における第1の平滑コンデンサC1を挟んだ電源ラインであるハイサイドラインLHとローサイドラインLLとの間に接続されている。
第1のARCP回路6は、転流制御回路6aと整流回路6bとから構成されている。
転流制御回路6aは、ハイサイドの補助スイッチング素子Q9とトランス(T3,T4)の一次巻線とローサイドの補助スイッチング素子Q10の直列回路と、共振用コイルL5とハイサイドの共振用コンデンサC5とローサイドの共振用コンデンサC6とから構成されている。
ハイサイドの補助スイッチング素子Q9とローサイドの補助スイッチング素子Q10との間に接続されたトランス(T3,T4)は、ハイサイドのトランスT3とローサイドのトランスT4とに分離されて配置されている。すなわち、ハイサイドのトランスT3の一次巻線とローサイドのトランスT4の一次巻線とが直列に接続され、その直列回路が補助スイッチング素子Q9と補助スイッチング素子Q10との間に接続されている。
ハイサイドのトランスT3の一次巻線とローサイドのトランスT4の一次巻線との共通接続点N1とハイサイドのメインスイッチング素子Q1とローサイドのメインスイッチング素子Q2との共通接続点N2との間に共振用コイルL5が接続されている。さらに、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1の電流路を構成する両端子間にハイサイドの共振用コンデンサC5が接続され、ローサイドのメインスイッチング素子Q2の電流路を構成する両端子間にローサイドの共振用コンデンサC6が接続されている。
前述したように、メインスイッチング素子Q1,Q2、共振用コイルL5、共振用コンデンサC5,C6の共通接続点N2が交流系統1側のハイサイドのチョークコイルL1に接続されている。
第1のARCP回路6における整流回路6bは、4つの整流ダイオードD7,D8,D9,D10を有している。整流ダイオードD7は、そのアノードがハイサイドのトランスT3の二次巻線の一方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。
整流ダイオードD8は、そのアノードがハイサイドのトランスT3の二次巻線の他方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。ハイサイドのトランスT3の二次巻線の中間タップはローサイドラインLLに接続されている。
整流ダイオードD9は、そのアノードがローサイドのトランスT4の二次巻線の一方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。整流ダイオードD10は、そのアノードがハイサイドのトランスT5の二次巻線の他方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。ローサイドのトランスT4の二次巻線の中間タップはローサイドラインLLに接続されている。
以上のようにして、整流回路6bは、第1の平滑コンデンサC1に対してトランス(T3,T4)の二次巻線に誘起される電流をハイサイドラインLHからローサイドラインLLに向かう一方向で供給するように構成されている。
第2の双方向インバータ部4bは、ハイサイドのメインスイッチング素子Q3とローサイドのメインスイッチング素子Q4との直列回路および第2のARCP回路7から構成されている。メインスイッチング素子Q3,Q4の直列回路は、ハイサイドラインLHとローサイドラインLLとの間に接続されている。
第2のARCP回路7は転流制御回路7aと整流回路7bとから構成されている。転流制御回路7aは、ハイサイドの補助スイッチング素子Q11とトランス(T5,T6)の一次巻線とローサイドの補助スイッチング素子Q12の直列回路と、共振用コイルL6とハイサイドの共振用コンデンサC7とローサイドの共振用コンデンサC8とから構成されている。
ハイサイドの補助スイッチング素子Q11とローサイドの補助スイッチング素子Q12との間に接続されたトランス(T5,T6)は、ハイサイドのトランスT5とローサイドのトランスT6とに分離されて配置されている。すなわち、ハイサイドのトランスT5の一次巻線とローサイドのトランスT6の一次巻線とが直列に接続され、その直列回路が補助スイッチング素子Q11と補助スイッチング素子Q12との間に接続されている。
ハイサイドのトランスT5の一次巻線とローサイドのトランスT6の一次巻線との共通接続点N3とハイサイドのメインスイッチング素子Q3とローサイドのメインスイッチング素子Q4との共通接続点N4との間に共振用コイルL6が接続されている。さらに、ハイサイドのメインスイッチング素子Q3の電流路を構成する両端子間にハイサイドの共振用コンデンサC7が接続され、ローサイドのメインスイッチング素子Q4の電流路を構成する両端子間にローサイドの共振用コンデンサC8が接続されている。
前述したように、メインスイッチング素子Q3,Q4、共振用コイルL6、共振用コンデンサC7,C8の共通接続点N4が交流系統1側のローサイドのチョークコイルL2に接続されている。
第2のARCP回路7における整流回路7bは、4つの整流ダイオードD11,D12,D13,D14を有している。整流ダイオードD11は、そのアノードがハイサイドのトランスT5の二次巻線の一方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。整流ダイオードD12は、そのアノードがハイサイドのトランスT5の二次巻線の他方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。ハイサイドのトランスT5の二次巻線の中間タップはローサイドラインLLに接続されている。
整流ダイオードD13は、そのアノードがローサイドのトランスT6の二次巻線の一方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。整流ダイオードD14は、そのアノードがローサイドのトランスT6の二次巻線の他方端に接続され、そのカソードがハイサイドラインLHに接続されている。ローサイドのトランスT6の二次巻線の中間タップはローサイドラインLLに接続されている。
以上のようにして、整流回路7bは、第1の平滑コンデンサC1に対してトランス(T5,T6)の二次巻線に誘起される電流をハイサイドラインLHからローサイドラインLLに向かう一方向で供給するように構成されている。
そして、本発明では、ハイサイドの補助スイッチング素子Q9,Q11およびローサイドの補助スイッチング素子Q10,Q12に対するスイッチング制御回路8は、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1,Q3のデューティが所定限界のデューティ状態に達する前に、ハイサイドの補助スイッチング素子Q9,Q11の動作を停止させるとともに、ローサイドのメインスイッチング素子Q2,Q4のデューティが所定限界のデューティ状態に達する前に、ローサイドの補助スイッチング素子Q10,Q12の動作を停止させるように構成されている。
補助スイッチング素子Q9,Q10,Q11,Q12の動作を停止させるときの所定限界のデューティ状態については、個々の蓄電システムにおける各構成要素の回路定数に応じて定めればよい。
図2は所定限界のデューティについての一例を示す。例えば、デューティ15パーセントの下限値以下およびデューティ80パーセントの上限値以上で、補助スイッチング素子Q9,Q10,Q11,Q12の共振条件から外れる場合、スイッチング制御回路8は、入力交流電圧に対するメインのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のデューティを監視し、例えばデューティ15パーセント以下となる第1および第2の領域reg1,reg2に達する前と、例えばデューティ80パーセント以上となる第3および第4の領域reg3,reg4に達する前とにおいて、補助スイッチング素子Q9,Q10,Q11,Q12の動作を停止させる。
(1)あるフェーズにおいて、メインスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4、補助スイッチング素子Q9,Q10,Q11,Q12がオフ状態にあるとする。これは、転流動作以前の定常状態である。転流前にあっては、転流制御回路6a,7aには電流は流れず、整流回路6b,7bにも電流は流れない。この状態で、相間コンデンサC0→ハイサイドのチョークコイルL1→共通接続点N2→ハイサイドのメインスイッチング素子Q1の逆並列接続の寄生ダイオード→ハイサイドラインLH→第1の平滑コンデンサC1→ローサイドラインLL→ローサイドのメインスイッチング素子Q4の逆並列接続の寄生ダイオード→共通接続点N4→相間コンデンサC0の経路に電流が流れる。
(2)次のフェーズにおいて、ローサイドの補助スイッチング素子Q10とハイサイドの補助スイッチング素子Q11がターンオンする。その結果、転流によって、共通接続点N2→共振用コイルL5→ローサイドのトランスT4の一次巻線→ローサイドの補助スイッチング素子Q10の経路からハイサイドの補助スイッチング素子Q11→ハイサイドのトランスT5の一次巻線→共振用コイルL6→共通接続点N4の経路が形成される。ローサイドのトランスT4の二次巻線に誘起された電圧により、整流ダイオードD9,D10からハイサイドラインLHを介して、また、ハイサイドのトランスT5の二次巻線に誘起された電圧により、整流ダイオードD11,D12からハイサイドラインLHを介して、それぞれ第1の平滑コンデンサC1に充電が行われる(整流回路6b,7bによる充電)。
(3)次のフェーズにおいて、さらに転流によって、ローサイドの共振用コンデンサC6およびハイサイドの共振用コンデンサC7が活性化され、共振動作が生じる。整流回路6b,7bによる第1の平滑コンデンサC1への充電は継続される。
(4)次のフェーズにおいて、ローサイドの共振用コンデンサC6の両端電圧が0レベルになると、ローサイドのメインスイッチング素子Q2がターンオンする。また、ハイサイドの共振用コンデンサC7の両端電圧が0レベルになると、ハイサイドのメインスイッチング素子Q3がターンオンする。このメインスイッチング素子Q2,Q3のターンオンは、高周波共振現象によるソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング(ZVS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。
ローサイドのメインスイッチング素子Q2がターンオンした時点から共振用コイルL5に流れる電流が徐々に減少し、ローサイドのメインスイッチング素子Q2を中心とする電流へと遷移する。同様に、ハイサイドのメインスイッチング素子Q3がターンオンした時点から共振用コイルL6に流れる電流が徐々に減少し、ハイサイドのメインスイッチング素子Q3を中心とする電流へと遷移する。整流回路6b,7bによる第1の平滑コンデンサC1への充電は継続される。
(5)次のフェーズにおいて、共振用コイルL5の電流が無くなり、ローサイドの補助スイッチング素子Q10がターンオフするとともに、共振用コイルL6の電流が無くなり、ハイサイドの補助スイッチング素子Q11がターンオフする。この補助スイッチング素子Q10,Q11のターンオフはソフトスイッチング(ゼロ電流スイッチング(ZCS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。この定常状態では、電流は、相間コンデンサC0→ハイサイドのチョークコイルL1→共通接続点N2→ローサイドのメインスイッチング素子Q2→ローサイドラインLL→第1の平滑コンデンサC1→ハイサイドラインLH→ハイサイドのメインスイッチング素子Q3→共通接続点N4→ローサイドのチョークコイルL2→相間コンデンサC0の経路のみを流れることになる。したがって、ハイサイドのチョークコイルL1、ローサイドのチョークコイルL2がエネルギーを蓄積する。ローサイドのトランスT4の一次巻線、ハイサイドのトランスT5の一次巻線には電流が流れないので、整流回路6b,7bでは電流は流れない。
(6)次のフェーズにおいて、ローサイドのメインスイッチング素子Q2およびハイサイドのメインスイッチング素子Q3がターンオフされる。その瞬間から電流が共振用コンデンサC6,C7へ転流し、共振用コンデンサC6,C7へ充電が行われる。メインスイッチング素子Q2,Q3の両端電圧がゆっくり上昇するのに対し、電流は素早く共振用コンデンサC6,C7へ転移するため、スイッチングロスはほとんど生じない。
(7)次のフェーズにおいて、メインスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4、補助スイッチング素子Q9,Q10,Q11,Q12がオフ状態にあって、ハイサイドのチョークコイルL1およびローサイドのチョークコイルL2がエネルギーを蓄積し、相間コンデンサC0→ローサイドのチョークコイルL2→共通接続点N4→ハイサイドのメインスイッチング素子Q3の逆並列接続の寄生ダイオード→ハイサイドラインLH→第1の平滑コンデンサC1→ローサイドラインLL→ローサイドのメインスイッチング素子Q2の逆並列接続の寄生ダイオード→共通接続点N2→ハイサイドのチョークコイルL1→相間コンデンサC0の経路で電流が流れる。これは、転流動作以前の定常状態である。転流前にあっては、転流制御回路6a,7aには電流は流れず、整流回路6b,7bにも電流は流れない。
(8)次のフェーズにおいて、ローサイドの補助スイッチング素子Q12とハイサイドの補助スイッチング素子Q9がターンオンする。その結果、転流によって、共通接続点N4→共振用コイルL6→ローサイドのトランスT6の一次巻線→ローサイドの補助スイッチング素子Q12の経路からハイサイドの補助スイッチング素子Q9→ハイサイドのトランスT3の一次巻線→共振用コイルL5→共通接続点N2の経路が形成される。ローサイドのトランスT6の二次巻線に誘起された電圧により、整流ダイオードD13,D14からハイサイドラインLHを介して、また、ハイサイドのトランスT3の二次巻線に誘起された電圧により、整流ダイオードD7,D8からハイサイドラインLHを介して、それぞれ第1の平滑コンデンサC1に充電が行われる(整流回路6b,7bによる充電)。
(9)次のフェーズにおいて、さらに転流によって、ローサイドの共振用コンデンサC8およびハイサイドの共振用コンデンサC5が活性化され、共振動作が生じる。整流回路6b,7bによる第1の平滑コンデンサC1への充電は継続される。
(10)次のフェーズにおいて、ローサイドの共振用コンデンサC8の両端電圧が0レベルになると、ローサイドのメインスイッチング素子Q4がターンオンする。また、ハイサイドの共振用コンデンサC5の両端電圧が0レベルになると、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1がターンオンする。このメインスイッチング素子Q4,Q1のターンオンは、高周波共振現象によるソフトスイッチング(ゼロ電圧スイッチング(ZVS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。
ローサイドのメインスイッチング素子Q4がターンオンした時点から共振用コイルL6に流れる電流が徐々に減少し、ローサイドのメインスイッチング素子Q4を中心とする電流へと遷移する。同様に、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1がターンオンした時点から共振用コイルL5に流れる電流が徐々に減少し、ハイサイドのメインスイッチング素子Q1を中心とする電流へと遷移する。整流回路6b,7bによる第1の平滑コンデンサC1への充電は継続される。
(11)次のフェーズにおいて、共振用コイルL6の電流が無くなり、ローサイドの補助スイッチング素子Q12がターンオフするとともに、共振用コイルL5の電流が無くなり、ハイサイドの補助スイッチング素子Q9がターンオフする。この補助スイッチング素子Q12,Q9のターンオフはソフトスイッチング(ゼロ電流スイッチング(ZCS))を利用するものであり、スイッチングロスが軽減されている。この定常状態では、電流は、相間コンデンサC0→ローサイドのチョークコイルL2→共通接続点N4→ローサイドのメインスイッチング素子Q4→ローサイドラインLL→第1の平滑コンデンサC1→ハイサイドラインLH→ハイサイドのメインスイッチング素子Q1→共通接続点N2→ハイサイドのチョークコイルL1→相間コンデンサC0の経路のみを流れることになる。したがって、ローサイドのチョークコイルL2、ハイサイドのチョークコイルL1がエネルギーを蓄積する。ローサイドのトランスT6の一次巻線、ハイサイドのトランスT3の一次巻線には電流が流れないので、整流回路6b,7bでは電流は流れない。
(12)次のフェーズにおいて、ローサイドのメインスイッチング素子Q4およびハイサイドのメインスイッチング素子Q1がターンオフされる。その瞬間から電流が共振用コンデンサC8,C5へ転流し、共振用コンデンサC8,C5へ充電が行われる。メインスイッチング素子Q4,Q1の両端電圧がゆっくり上昇するのに対し、電流は素早く共振用コンデンサC8,C5へ転移するため、スイッチングロスはほとんど生じない。
上記のように構成され、動作する実施例の蓄電システムにおいて、スイッチング制御回路8は、入力交流電圧に対するメインのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4のデューティを監視し、デューティ15パーセント以下(一例)となる第1および第2の領域reg1,reg2に達する前と、デューティ80パーセント以上(一例)となる第3および第4の領域reg3,reg4に達する前とにおいて、補助スイッチング素子Q9,Q10,Q11,Q12の動作を停止させる。その結果、第1の双方向インバータ部4aにおいても第2の双方向インバータ部4bにおいても、そのメインスイッチング素子Q1,Q2あるいはQ3,Q4のソフトスイッチング動作の安定化を図り、変換効率を改善することができる。その結果、蓄電システムの充放電動作を高効率化することができる。
なお、上記の実施例においては、双方向DC/DCコンバータ5の具体的構成については特に言及していないが、図3のようにARCP回路を持たない回路構成でもよいし、あるいは図4のように充放電兼用のトランスを備えたARCP回路を具備する回路構成や、図5のように充電用のハイサイドのトランスと放電用のローサイドのトランスとに分離した回路構成としても構わない。