JP2020106698A - 感光性組成物、並びにその用途としてのコーティング膜の製造方法、光造形物の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

感光性組成物、並びにその用途としてのコーティング膜の製造方法、光造形物の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法 Download PDF

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陽平 浜出
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Abstract

【課題】表面処理用のコーティング膜、光造形物、液体吐出ヘッドの部分構造等に応じて要求される特性を満たすことのできるカチオン重合性材料を含む感光性組成物を提供すること。【解決手段】カチオン重合性材料を含む感光性組成物に、架橋剤としてヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールを用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、感光性組成物、並びにその用途としてのコーティング膜の製造方法、光造形物の製造方法及び液体吐出ヘッドの製造方法に関する。
光造形物の一例として、液体を吐出する液体吐出ヘッドの積層構造が挙げられる。インクジェット記録方式に適用される液体吐出ヘッドは、一般に、微細な吐出口及び液体の流路、並びに流路から吐出口に供給された液体を吐出するためのエネルギー発生素子を複数備えている。
液体吐出ヘッドの製造方法として、基板上に設けられた吐出口及び流路を形成する部材を複数の部材の積層構造とし、各積層構造を形成する複数の部材の少なくとも一部を、感光性材料を用いて形成する方法が知られている。
特許文献1では以下の方法によりインクジェット記録ヘッドが製造される。
エネルギー発生素子を有する基板上に溶解可能なポジ型感光性樹脂で流路パターンを形成し、この流路パターン上にインク吐出口を有する部材となるネガ型感光性樹脂を塗布して被覆樹脂層を形成する。この被覆樹脂層に吐出口のパターンを露光した後、被覆樹脂層の未硬化部とポジ型感光性樹脂を別々に除去し、流路及び吐出口を有する部材を形成する。その後、基板の背面側からエッチングによりインクの供給口を形成する。
また、特許文献2には、インクジェットプリントヘッドの流路及び吐出口を有する部材の形成方法が開示されている。この形成方法においては、エネルギー発生素子を有する基板上に、露光により流路のパターンを形成した低感度ネガ型感光性樹脂の層と、露光により吐出口のパターンを形成した高感度ネガ型感光性樹脂の層を積層する。そして、これらの層を一括して現像することで、流路及び吐出口を有する部材を形成する。
液体吐出ヘッドの吐出口が開口する面に対して、液体の吐出方向における精度や複数の吐出口間での吐出方向の均一性を向上させる目的で、撥水性または親水性のコーティング等の表面処理を施すことが知られている。
特許文献3では、インクジェット記録ヘッドの吐出口が設けられた面の撥水処理に用いるフッ素含有化合物として、フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物とカチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物との縮合生成物が記載されている。縮合生成物中のカチオン性開始剤は光の照射により反応し、加熱処理によってカチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物のカチオン重合反応が進行する。縮合生成物のカチオン重合が進行することで得られる重合硬化物からなるコーティング膜は強固な膜となり、また、吐出口を形成する感光性樹脂組成物から形成された部材との接着力も増加して信頼性の高いコーティング膜が形成される。
特開平6−286149号公報 特開2009−1003号公報 特表2007−518587号公報
液体吐出ヘッドの部分構造をエポキシ樹脂等のカチオン重合性材料を含む感光性組成物の硬化物から形成する場合、形成する構造やその形成方法において要求される特性を満たす感光性組成物を選択して使用する必要がある。
本発明の目的は、液体吐出ヘッドの部分構造に応じて要求される特性を満たすことのできるカチオン重合性材料を含む感光性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、液体吐出ヘッドの部分構造のみならず、光造形物や表面コーティング膜の製造にも好適なカチオン重合性材料を含む感光性組成物を提供することにある。
本発明にかかる感光性組成物は、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合性材料と、架橋剤とを含む感光性組成物であって、前記架橋剤が、ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールを含み、前記カチオン重合性化合物の量(A)に対する前記ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールの量(B)の割合[(B/A)×100(%)]が0.1質量%以上15質量%以下であることを特徴とする。
本発明にかかるコーティング膜の製造方法は、基材上に上記の感光性組成物のコーティング膜を形成する工程と、基材上に形成された前記感光性組成物のコーティング膜を露光により硬化させる工程と、を有することを特徴とする。
本発明にかかる光造形物の製造方法は、基材上に上記の感光性組成物のコーティング膜を形成する工程と、基材上に形成された前記感光性組成物のコーティング膜への選択的な露光により硬化部を形成し、現像液により未露光部を該基材上から除去する工程と、を有することを特徴とする。
本発明にかかる液体吐出ヘッドの製造方法は、基板と、吐出口と流路を有する部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記吐出口と流路を有する部材が複数層構造を有し、該複数層構造の最表層に吐出口が開口しており、前記複数層構造の少なくとも一層を上記の感光性組成物の硬化物から形成する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、コーティング膜、光造形物及び液体吐出ヘッドの製造において要求される特性に対応し得るカチオン重合性材料を含む感光性組成物を提供することができる。
液体吐出ヘッドの構成の一例を示す模式図である。 液体吐出ヘッドの製造方法の一例を説明するための図である。 液体吐出ヘッドの吐出口形状の一例を示す模式図である。 液体吐出ヘッドの製造方法の一例を示す模式図である。
カチオン重合性材料を含むネガ型の感光性組成物を用いた光造形物やコーティング膜の製造においては、光硬化した部分が現像液等の溶剤と接触すると溶剤の浸透により亀裂が発生することがある。この亀裂(以下、ソルベントクラックと称す)はエポキシ基を有するカチオン重合性材料の種類や添加剤、それらの組成比などによって発生状況が異なり、エポキシ樹脂、特に剛直な構造であるベンゼン環を有するエポキシ樹脂で発生し易い傾向がある。
液体吐出ヘッドにおいて、ソルベントクラックが吐出口付近に発生すると液体の吐出精度に影響を及ぼすことがあり、また電気回路を有する基板に接した流路形成部材で発生するとインクの染み込みによる通電不良等を発生させる懸念がある。
一方、カチオン重合性材料を含む感光性組成物を用いて、基材上に光硬化したコーティング膜を形成する場合、カチオン重合をさらに促進させてコーティング膜の性能の向上を図ることができる。カチオン重合の促進には、カチオン性開始剤の添加量を増やしたり、加熱処理温度を高温化したりする必要がある。しかしながら、一般的なカチオン性開始剤は、溶媒種によっては溶解性が低いため、添加量が限られることがある。特に、コーティング膜の形成において、樹脂材料から成る基材上にエポキシ基を有するシラン化合物の縮合生成物を含む液状の感光性組成物を塗布する際には、基材を溶解させないために、液状組成物の溶媒としてアルコール等の親水性溶媒を用いる場合がある。親水性溶媒を液状組成物の溶媒として用いると、カチオン性開始剤の溶解性はさらに低くなることがある。また、カチオン性開始剤の添加量を増加可能な場合でも、未硬化成分であるカチオン性開始剤の添加量を増やし過ぎると逆に重合が阻害される。この結果、基材との接着性や膜の耐久性が低下し、コーティング膜の性能が十分に発揮されない場合がある。加熱処理の温度を上げる場合も、選択的な露光により得られる光硬化部からなる潜像のパターン形状への影響や、基材の耐熱性等を考慮して加熱処理の温度を十分に上げられないことがある。
本発明者らの検討によれば、カチオン性重合材料及びカチオン性開始剤を含む感光性組成物に、特定構造のポリオールを架橋剤として添加することで、目的とする特性を有する光硬化物の溶剤に対する耐性を向上させることができるとの新たな知見を得た。
上記の新たな知見に基づく本発明にかかる感光性組成物は、カチオン重合性化合物を含むカチオン重合性材料と、ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールからなる架橋剤と、を特定の割合で含む。
架橋剤として用いる特定構造のポリオールは、ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールであり、カチオン架橋剤として作用する。カチオン重合性化合物がカチオン重合性のエポキシ樹脂の場合は、エポキシ架橋剤として作用する。
この架橋剤用のポリオールの分子量(以下、数平均分子量)は特に限定されないが、3000以下とすることが好ましい。
また、感光性組成物が溶剤を含み、感光性組成物から層を形成する際に溶剤を加熱処理により除去する場合には、架橋剤用のポリオールは加熱処理時の温度において不揮発性であることが好ましい。このような場合には、分子量が3000以下のポリオールから加熱処理温度において不揮発性のポリオールを選択して用いればよく、このような観点から分子量が180以上のポリオールを選択することがより好ましい。
架橋剤用のポリオールは、感光性組成物を液状に調製する場合に用いる有機溶剤に溶解するものが好ましい。
架橋剤用のポリオールとしては、末端の水酸基の数としての2官能もしくは3官能のポリオールが好ましい。
さらに、架橋剤用のポリオールは、基板等との密着面を有する層を形成する場合に基板等との密着性の観点からは、パーフルオロアルキル基及びパーフルオロアルキレン基を含まないことが好ましい。
2官能もしくは3官能のポリオールとしては、以下の式(a)〜(d)で示される化合物を挙げることができる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
Figure 2020106698
(各nはそれぞれ独立して自然数である。各Rはそれぞれ独立して、酸素原子および/または窒素原子を有してもよく、環状でもよい脂肪族基、或いは酸素原子を有してもよい芳香族基であり、炭素数は1〜15である。)
Figure 2020106698
式(a)で示される化合物としては、各社から市販されているポリエチレングリコール(200、300、400、600、1000、2000等)を挙げることができる。
式(b)及び(c)で示される化合物としては、ポリエーテルポリオール、具体的にはADEKA社製アデカ ポリエーテルPシリーズ、BPXシリーズ、Gシリーズ、SPシリーズ、SCシリーズ、CMシリーズ、AMシリーズ、EMシリーズ、BMシリーズ、PRシリーズ、GRシリーズ(いずれも製品名)などを挙げることができる。
式(a)〜(d)で示されるポリエーテルには、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類への溶解性が高いものが含まれている。これらの溶媒の1種を、あるいは2種以上を混合して、感光性組成物を液状として調製する場合に、これらの溶媒に対する溶解性が高いポリエーテルを用いることによって、濃度の調整が容易となり、架橋剤としての作用効率をより高めることができる。
明確なメカニズムは判明していないが、ヒドロキシル基を2官能以上有する多官能ポリオールを添加することで、カチオン重合性を有する置換基の反応速度と反応率が向上していることが確認されている。推測としては、ヒドロキシル基がカチオンと反応することで連鎖移動剤として働き、新たなプロトンを生成していることが考えられる。カチオンの重合反応が進行すると分子間架橋が進み、分子量の増加に反して自由度が徐々に低下するため重合の進行速度が低下する。ヒドロキシル基を2官能以上有するカチオン架橋材が添加されている場合、カチオンとヒドロキシル基が反応することで自由度が高いプロトンが生成され、新たなカチオン重合が進行し、結果的に反応速度と反応率が向上していると推測する。カチオン架橋剤はエポキシ基等と架橋反応して硬化物となるため、カチオン性開始剤よりも添加量を多くすることが可能である。しかしながら、連鎖移動剤として機能したカチオン架橋剤は、自身のカチオン重合反応自体は停止する為、過剰に添加すると逆に反応が進まなくなり、十分に分子量が増加しないことがある。
カチオン重合可能な樹脂の反応速度と反応率を向上させる為には、カチオン重合性材料に含まれるカチオン重合性化合物の量(A)に対するカチオン架橋剤の添加量(B)の割合[(B/A)×100(%)]は、0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。この範囲から添加量を選択することによって、カチオン重合における反応速度および反応率と、硬化物の機械的強度を高めることができる。また、光造形物の形成にパターニング工程を有する場合には、解像性に影響を与えずにカチオン架橋剤を添加する効果を得る上で、カチオン架橋剤の添加量は、カチオン重合性材料に含まれるカチオン重合性化合物に対して7.0質量%以下とすることがより好ましい。
ヒドロキシル基を2官能以上有する多官能ポリオールを架橋剤として添加することで、光造形物や液体吐出ヘッドの一部の構造を製造する際のソルベントクラックの発生を抑えて形状の安定した構造を製造することができる。また、各種の基材上に設けるコーティング膜の硬度を上げて、耐溶剤性や耐久性を向上さることができる。
以下、感光性組成物に含まれる成分について説明する。
<カチオン重合性材料>
カチオン重合性材料は、特に限定されず、感光性組成物の目的とする用途に応じて適宜選択する。
カチオン重合性材料に含まれるカチオン重合性化合物としては、カチオン重合性樹脂、エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物等を挙げることができる。
カチオン重合性材料としては、カチオン重合性樹脂そのもの、並びに、エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物を含有する縮合物等を挙げることができる。これらから選択される少なくとも1種をカチオン重合性材料として用いることができる。
以下、これらの成分について説明する。
(カチオン重合性樹脂)
カチオン重合性化合物としては、フォトリソグラフィー性能や硬化物の機械強度を向上させるためにカチオン重合性樹脂を用いることができる。
カチオン重合性樹脂はカチオン反応で分子間が架橋するだけでなく、エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物とも架橋することで、硬化物の強度を向上させることが可能であるので、エポキシ基を有するシラン化合物の縮合物と併用してもよい。
感光性カチオン重合性樹脂としては、エポキシ基を有するエポキシ樹脂、環状エーテルを有するオキセタン樹脂、ビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。これらの中では、特に、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂が挙げられる。これらの少なくとも1種を用いることができる。
市販のエポキシ樹脂としては、三菱化学社製「157S70」、「jER1031S」(商品名)、大日本インキ化学工業社製「エピクロンN−695」、「エピクロンN−865」(商品名)、ダイセル社製「セロキサイド2021」、「GT−300シリーズ」、「GT−400シリーズ」、「EHPE3150」(商品名)、日本化薬社製「SU8」(商品名)、プリンテック社製「VG3101」(商品名)、「EPOX−MKR1710)(商品名)、ナガセケムテックス社製「デナコールシリーズ」等が挙げられる。
強度を有する硬化物を得る際におけるソルベントクラック防止を目的の一つとする場合は、構造にベンゼン環またはシクロアルキル環を有する3官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。
ベンゼン環またはシクロアルキル環を有する3官能以上のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型ノボラック型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂等の3官能以上のエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ基を3官能以上有する上記エポキシ樹脂を用いることで、硬化物は3次元架橋することが可能となり、所望の特性を得るのに適している。市販のエポキシ樹脂としては、三菱化学社製「157S70」、「jER1031S」(商品名)、大日本インキ化学工業社製「エピクロンN−695」、「エピクロンN−865」、「エピクロンHP−7200」(商品名)等が挙げられる。
ベンゼン環またはシクロアルキル環を有する3官能以上のエポキシ樹脂は、機械的強度に優れた硬化物の形成に適している一方、剛直な骨格により硬化物の内部応力が大きく、ソルベントクラックが発生し易い傾向がある。そこで、先に挙げたポリオールを架橋剤としてベンゼン環またはシクロアルキル環を有する3官能以上のエポキシ樹脂組み合わせることで、硬化物に柔軟性を付与して、ソルベントクラック耐性を向上させることが可能となる。
(エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物の縮合物)
エポキシ基を有する加水分解性のシラン化合物を含有する縮合物(以下、「縮合物」という)は、少なくともエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物(成分A)と、光硬化物に必要な機能に合わせた、カチオン重合性基を持たない加水分解性シラン化合物(成分B)を、少なくとも水及び有機溶媒の存在下で縮合反応させて得ることができる。
成分Aは、カチオン重合性化合物である。
成分Bは、例えば、撥水性能を必要とするコーティング膜であればフッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物を選択することができる。親水性能を必要とするコーティング膜であればカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミド基およびエーテル結合など親水性の高い官能基を有する加水分解性シラン化合物を選択することが可能である。成分Bとしては、市販の加水分解性シラン化合物や公知の加水分解性シラン化合物から目的用途に応じて選択した少なくとも1種を用いることができる。
成分Aは、主に縮合物にカチオン重合による硬化性を付与するための成分であり、成分Bとともに目的とする縮合物を形成できるエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物であれば特に限定されない。成分Aの好ましい化合物として下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
式(1):R−SiX (3−a)
式(1)中、Rはエポキシ基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基を示す。
aは1から3の整数であり、aは2または3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
としては、グリシジル基またはグリシジルオキシ基を有する炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖のアルキル基を挙げることができる。このグリシジル基またはグリシジルオキシ基置換アルキル基としては、例えば、グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。これらの中では、γ−グリシドキシプロピル基及びエポキシシクロヘキシルエチル基が好ましい。
としては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐鎖のアルキル基及びフェニル基等が挙げられる。
としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、水素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、F、Cl、Br及びIを挙げることができる。Xとしては、加水分解反応により脱離した基がカチオン重合反応を阻害せず、反応性を制御しやすいという観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖のアルコキシ基が好ましい。
式(1)の化合物が複数のRを有する場合には、複数のRはそれぞれ独立して上記の意味を表す。式(1)の化合物が複数のXを有する場合には、複数のXはそれぞれ独立して上記の意味を表す。また、一部が加水分解によって水酸基になっていたり、脱水縮合によりシロキサン結合を形成していたりするものを用いてもよい。
成分Bとしてのフッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物は、縮合物に撥水性能を付与するための成分である。このシラン化合物は、縮合反応によって目的とする縮合物を形成できれば特に限定されないが、フッ素含有基として非加水分解性フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物が好ましい。この非加水分解性フッ素含有基としては、直鎖または分岐鎖のパーフルオロアルキル基及び直鎖または分岐鎖のパーフルオロポリエーテル基を挙げることができる。
成分Bとしてのフッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物の具体例として以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2020106698
成分Bとしてのカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミド基またはエーテル結合を有する加水分解性シラン化合物は、縮合物に親水性能を付与するための成分である。このシラン化合物は、縮合反応によって目的とする縮合物を形成できれば特に限定されない。リン脂質分子の親水基であるホスホリルコリン基を有する加水分解性シラン化合物は特に好ましい親水性能を発現する。
成分Bとしてのカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ヒドロキシ基、アミド基またはエーテル結合を有する加水分解性シラン化合物の具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
Figure 2020106698
縮合物には、先に挙げた成分Aおよび成分Bに加えて、アルキル基またはアリール基を有し、非カチオン重合性の加水分解性シラン化合物を成分Cとして用いることができる。縮合物の形成用として成分Aと成分Bに加えて成分Cを併用することで、縮合物の極性や架橋密度の制御が可能である。このような非カチオン重合性のシラン化合物を併用した場合、パーフルオロポリエーテル基やエポキシ基等の置換基の自由度が向上し、パーフルオロポリエーテル基の空気界面側への配向、エポキシ基の重合、未反応のシラノール基の縮合などが促進される。
成分Cの具体例として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランを挙げることができる。これらの1種または2種以上の組合せを用いることができる。
成分Bの添加量は、成分A+成分B+成分Cの合計量に対して1質量%以上20質量%以下の範囲から選択することが好ましい。
加水分解性シラン化合物の縮合物は、上述した加水分解性シラン化合物を水の存在下、溶媒中で加熱することにより、加水分解と縮合反応を進行させて得ることが出来る。溶媒は一般的には極性有機溶剤が用いられ、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジエチレングリコール、などのグリコール類などの極性有機溶媒が挙げられる。
また、成分Bとしてフッ素含有加水分解性シラン化合物を使用する場合は、その溶解性を維持するため、ハイドロフルオロエーテル(住友スリーエム製HFE7200)などフッ素を含有する溶媒を併用する場合もある。ただし、水を合成に用いるため、水への溶解性が高いアルコール類が最適である。また、水分量制御の観点から加熱は100℃以下で行うことが好ましい。そのため、加熱還流で反応を行う場合には、沸点が100℃以下であるアルコール類が適している。
(カチオン性開始剤)
カチオン性開始剤は、主に光を吸収して酸(プロトン)を発生させる反応開始剤である。
酸(プロトン)はエポキシ樹脂等のカチオン重合可能な化合物と反応し、カチオン化した化合物を連鎖的生成しながら分子間の架橋を進め、分子量を増加させて硬化物を形成させる。この重合反応の反応速度や反応率は、一般的に硬化物の耐熱性や密着性、溶剤耐性等の性能に影響する。重合反応の反応速度や反応率を向上させるには、同じカチオン性開始剤を用いる場合は添加量が多いほど発生する酸(プロトン)が多くなり効果的である。一方で、カチオン性開始剤自体は架橋反応をしない為、最終的には硬化物に取り込まれた添加剤となり、添加量が多過ぎると硬化物の性能を低下させることがある。また、一般的なカチオン性開始剤はアルコール類の溶剤に対して溶解性が低いものが多い。
カチオン性開始剤としては、スルホン酸化合物、ジアゾメタン化合物、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジスルホン系化合物などが好ましい。市販品ではADEKA社製「アデカオプトマーSP−170」、「アデカオプトマーSP−172」、「SP−150」(商品名)、みどり化学社製「BBI−103」、「BBI−102」(商品名)、三和ケミカル社製「IBPF」、「IBCF」、「TS−01」、「TS−91」(商品名)、サンアプロ社製、「CPI−210」、「CPI−300」、「CPI−410」(商品名)、BASFジャパン社製「Irgacure290」(商品名)等が挙げられる。
感光性組成物に含まれるカチオン性開始剤の割合は特に限定されず、目的とする硬化性を得ることがきるように設定すればよい。感光性組成物全体に対するカチオン性開始剤の割合は、感光性組成物の溶媒を除いた成分の合計に対して0.1質量%以上5.0質量%以とすることが好ましい。
(溶媒)
塗布性の向上や他の成分の溶解性を調整するための溶媒を用いてもよい。感光性組成物が縮合物を含む場合には、水酸基、カルボニル基、エーテル結合等の酸素原子を有する基または単位を有する化合物からなる極性有機溶媒が、縮合物の溶解性が高く好適である。
溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、PGMEA(プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート)などのエステル類、ジグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジエチレングリコール、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)などのグリコール類などの極性有機溶媒、ハイドロフルオロエーテルなどフッ素を含有する溶媒が挙げられる。これらから選択された1種または2種以上の組合せを用いることができる。
感光性組成物を適用する基材や部材の被処理面の少なくとも一部が、未硬化の感光性樹脂であり、ケトン類、エステル類、エーテル類などの溶媒に対して溶解性を有し、アルコール類に対して溶解性を有しない場合、溶媒としてアルコール類を用いることが好ましい。
被処理面を有する基材や部材の構成材料としては、エポキシ樹脂及びカチオン性開始剤を含む感光性樹脂組成物を挙げることができる。基材の被処理面に、基材の未硬化部分に対する溶解性を有する溶媒を含む感光性組成物を積層すると、基材や部材の被処理面の荒れや積層した層の膜さのバラツキ、形状の崩れなどを生じる場合ある。このような場合には、上述のように、基材や部材の未硬化部分に対して溶解性を持たない溶媒を選択することが好ましい。
溶媒の添加割合は、目的とする特性を感光性組成物に付与できる添加割合であれば特に制限されない。感光性組成物全体に対する溶媒の割合は、20質量%以上95質量%以下の範囲から選択することが好ましい。
(添加剤)
感光性組成物には、感光性塗布性や反応性、フォトリソグラフィー性能、硬化物の機械強度等の性能を考慮して各種の添加剤を添加してもよい。この添加剤としては公知の添加剤から選択して用いることができる。
縮合物を含む感光性組成物の場合では、さらに密着性能の向上を目的に、シランカップリング剤を添加してもよい。市販のシランカップリング剤としては例えば、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製「SILQUEST A−187」(製品名)等が挙げられる。また、パターン解像性の向上や感度(硬化に必要な露光量)の調整に、アントラセン化合物などの増感剤、アミン類などの塩基性物質や弱酸性(pKa=−1.5〜3.0)のトルエンスルホン酸を発生させる酸発生剤などを添加することもできる。市販のトルエンスルホン酸を発生させる酸発生剤としては、みどり化学社製「TPS−1000」(製品名)や和光純薬工業社製「WPAG−367」(製品名)等が挙げられる。
シランカップリング剤の添加量は特に限定されず、硬化物に目的とする効果が得られるように設定すればよい。
本発明にかかる感光性組成物は、基材や部材の表面処理、光造形物、液体吐出ヘッドの部分構造の形成用に用いることができる。
(表面処理)
各種の基材の表面処理に本発明にかかる感光性組成物を用いることができる。なお、基材としては、各種の基板や各種の部材を挙げることができ、部材は、各種構造物の構成部材であってもよい。
基材の構成材料は特に限定されないが、感光性組成物の硬化物との密着性を考慮すると樹脂材料であることが好ましい。さらに、感光性組成物の硬化物との密着性を高めるために、基材にはカチオン重合性材料が含有されていることが特に好ましい。
また、感光性組成物にカチオン性開始剤が含まれていない場合、基材にカチオン性開始剤を添加することで、この基材側のカチオン性開始剤を、カチオン性開始剤を含まない感光性組成物の硬化に利用することが可能である。基材の構成材料としてのカチオン重合性材料およびカチオン性開始剤としては、先に説明したものが挙げられる。
以下、本発明にかかる感光性組成物を用いたコーティング膜、光造形物、液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。
[コーティング膜の製造方法]
コーティング膜の製造方法の一形態は、基材上に感光性組成物のコーティング膜を形成する工程と、基材上に形成された前記感光性組成物のコーティング膜を露光により硬化させる工程と、を有する。
基材がカチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含む場合は、基材に含まれるカチオン性開始剤を感光性組成物のコーティング膜の硬化に利用することができる。この場合、感光性組成物として、カチオン性開始剤を含まない感光性組成物を用いることができる。
[光造形物の製造方法]
光造形物の製造方法の一形態は、基材上に感光性組成物のコーティング膜を形成する工程と、基材上に形成された前記感光性組成物のコーティング膜への選択的な露光により硬化部を形成し、現像液により未露光部を該基材上から除去する工程と、を有する。
基材がカチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含む場合は、基材に含まれるカチオン性開始剤を感光性組成物のコーティング膜の硬化に利用することができる。この場合、感光性組成物として、カチオン性開始剤を含まない感光性組成物を用いることができる。
光造形物の製造方法の一実施形態では、まず、シリコンやガラスなどの基板上に感光性組成物を任意の膜厚で成膜する。成膜方法としてはスピンコート法やスリット塗布法、ドライフィルム化した材料の転写による転写法などがある。
次に、所望のパターンを有し、選択的露光を行なうフォトマスクを介して、感光性組成物の膜をパターン露光し、さらに熱処理(Post Exposure Bake)することで露光部を硬化させ、未硬化部を溶剤で溶解除去させることで光造形物を作成する。フォトマスクは、露光波長の光を透過するガラスや石英などの材質からなる基板に、パターンに合わせてクロム膜などの遮光膜が形成されたものである。露光装置としては、i線露光ステッパー、KrFステッパーなどの単一波長の光源や、水銀ランプのブロード波長を光源に持つ投影露光装置を用いることができる。
感光性組成物は、その硬化物が機械的強度とフォトリソグラフィー材料としての解像性を有する必要がある。さらに、未硬化部を除去する際の現像工程で、ソルベントクラック耐性が必要である。本発明にかかる感光性組成物によれば、これらの要求に対応することができる。
[液体吐出ヘッドの製造方法]
(第一の形態)
液体吐出ヘッドの製造方法の第一の形態は、基板と、吐出口と流路を有し、複数層構造からなる部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、複数層構造の少なくとも一層を感光性組成物の硬化物から形成する工程を有する。
(第二の形態)
液体吐出ヘッドの製造方法の第二の形態は、第一の形態における複数層構造が、流路形成部材と吐出口形成部材を有し、以下の工程を有する。
基板上に感光性の第一の樹脂層を設ける工程。
基板上に設けた第一の樹脂層に露光により流路のパターンを形成する工程。
流路のパターンを形成した第一の樹脂層上に感光性を有する第二の樹脂層を設ける工程。
第二の樹脂層に露光により吐出口のパターンを形成する工程。
流路のパターンが形成された第一の樹脂層を現像して流路形成部材を形成する工程。
吐出口のパターンが形成された第二の樹脂層を現像して吐出口形成部材を形成する工程。
上記の第二の形態においては、第一の樹脂層及び第二の樹脂層の少なくとも一方に、カチオン重合性樹脂を含む本発明にかかる感光性組成物が用いられる。この場合、第一の樹脂層及び第二の樹脂層の一方に本発明にかかる感光性組成物以外の公知の感光性樹脂組成物を用いてもよい。
上記の第二の形態において、流路のパターンが形成された第一の樹脂層と吐出口のパターンが形成された第二の感光性を有する樹脂層を一括して現像してもよい。
(第三の形態)
液体吐出ヘッドの製造方法の第三の形態は、液体吐出ヘッドの吐出口と流路を有する部材の吐出口を有する面に、感光性組成物の硬化膜を形成する工程を有する。
(第四の形態)
液体吐出ヘッドの製造方法の第四の形態は、第三の形態における吐出口と流路を有する部材が、流路形成部材と、吐出口が吐出口形成部材を有し、以下の工程を有する。
基板上に感光性の第一の樹脂層を設ける工程。
基板上に設けた第一の樹脂層に露光により流路のパターンを形成する工程。
流路のパターンを形成した第一の樹脂層上に感光性を有する第二の樹脂層を設ける工程。
第二の樹脂層上に、縮合物を含む本発明にかかる感光性組成物からなる第三の層を設ける工程。
第二の樹脂層と第三の層に吐出口のパターンを形成する工程。
流路のパターンが形成された第一の樹脂層を現像して流路形成部材を形成する工程。
吐出口のパターンが形成された第二の樹脂層と第三の層を現像して前記吐出口形成部材を形成する工程。
上記の第四の形態において、第二の樹脂層は、カチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含んでもよい。第二の樹脂層に含まれるカチオン性開始剤を、第三の層における硬化に利用することができる。この場合、第三の層の形成にカチオン性開始剤を含まない感光性組成物を用いることができる。
第一の樹脂層及び第二の樹脂層の少なくとも一方の形成に、カチオン重合性樹脂を含む本発明にかかる感光性組成物を用いてもよい。この場合、第一の樹脂層及び第二の樹脂層の一方に本発明にかかる感光性組成物以外の公知の感光性樹脂組成物を用いてもよい。
流路のパターンが形成された第一の樹脂層と吐出口のパターンが形成された第二の樹脂層及び第三の層を一括して現像してもよい。
(液体吐出ヘッドの製造方法の実施形態)
以下、液体吐出ヘッドの製造方法の実施形態について説明する。
図1(A)は、本発明の実施形態に係わる液体吐出ヘッドの構成の一例を示す模式図である。また、図1(B)は図1(A)におけるA−Bを通る基板に垂直な面で見た本実施形態に係わる液体吐出ヘッドの模式的断面図である。
本実施形態の液体吐出ヘッドは、インクを吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子1が所定のピッチで形成された基板2を有している。基板2にはインクを供給する供給口3が開口されている。
基板2上には、流路及び吐出口を有する部材が形成されている。流路及び吐出口を有する部材は、流路形成部材4及び吐出口形成部材8を有し、図1(A)では流路形成部材は省略されている。流路形成部材4によって流路5の側壁が形成されており、さらに、流路形成部材4の流路5の上に、吐出口6を有する吐出口形成部材8が形成されている。さらに、吐出口形成部材8上にコーティング膜9が形成されている。
この液体吐出ヘッドでは、供給口3から流路5を通って供給される液体としてのインクを、エネルギー発生素子1によって発生する圧力を加えることによって、吐出口6からインク滴として吐出させる。
基板2の流路5及び吐出口6が形成された面にはバンプ7が形成されており、バンプ7を介して基板2の外部から供給された電力によってエネルギー発生素子1が駆動する。
次に、液体吐出ヘッドの製造方法について以下に説明する。
図2は液体吐出ヘッドの製造方法の一例を示す模式的断面図であり、完成した状態で図1(B)と同じ断面の位置でみた図である。
まず、少なくともエポキシ樹脂およびカチオン性開始剤から成るネガ型の感光性樹脂組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリイミド等から成るフィルム基材に塗布し、ドライフィルム化する。エネルギー発生素子1と供給口3を配置した基板2に、このドライフィルムをラミネート法で転写して基板2上に成膜して第一の樹脂層10とする(図2(A))。
次に、流路パターンを有するフォトマスク11を介して、第一の樹脂層10に流路のパターンを露光し、さらに熱処理することで露光部を硬化させて流路形成部材4を形成する(図2(B))。なお、第一の樹脂層中の未露光部は未硬化状態の部分として残され、露光による硬化部は潜像として第一の樹脂層中に保持される。
フォトマスク11は、露光波長の光を透過するガラスや石英などの材質からなる基板に、流路などのパターンに合わせてクロム膜などの遮光膜が形成されたものである。露光装置としては、i線露光ステッパー、KrFステッパーなどの単一波長の光源や、マスクアライナーMPA−600Super(商品名、キヤノン製)などの水銀ランプのブロード波長を光源に持つ投影露光装置を用いることができる。
次に、少なくともエポキシ樹脂およびカチオン性開始剤から成る感光性樹脂組成物をPETやポリイミド等から成るフィルム基材に塗膜する。その後、ドライフィルム化して、流路のパターンが形成された第一の樹脂層10上にラミネート法で転写して成膜して第2の樹脂層12とする。さらに、光硬化したコーティング膜9の形成用の感光性樹脂組成物から第三の層15を成膜する(図2(C))。コーティング膜9にインクに対する撥水性が要求される場合、撥水性を付与した縮合物を含む感光性組成物をコーティング膜9の形成用に用いる。縮合物の形成に、カチオン重合性を有するパーフルオロアルキルシラン化合物やパーフルオロポリエーテルシラン化合物が好適に用いられる。一般に、パーフルオロアルキルシラン化合物やパーフルオロポリエーテルシラン化合物は、塗布後のベーク処理によってフッ化アルキル鎖が、コーティング膜と空気の界面に配向することが知られており、コーティング膜表面の撥水性を高めることが可能である。
次に、吐出口パターンを有するフォトマスク13を介して、第二の樹脂層12と第三の層15をパターン露光する。さらに熱処理することで露光部を硬化させ、吐出口形成部材8およびコーティング膜9を形成する(図2(D))。フォトマスク13は、露光波長の光を透過するガラスや石英などの材質からなる基板に、吐出口のパターンに合わせてクロム膜などの遮光膜が形成されたものである。
次に、第一の樹脂層10、第二の樹脂層12、第三の層15の未硬化部を有機溶剤で一括除去し、流路5、吐出口6、を形成し、必要に応じて熱処理をして液体吐出ヘッドを完成させる(図2(E))。吐出口6は、複数層構造の最表層に開口している。
単一波長の光を用いて露光する際は、感光性の第二の樹脂層12を硬化させる露光量を、感光性の第一の樹脂層10を硬化させる露光量よりも少なくする必要がある。つまり、第二の樹脂層12を露光する際に、第二の樹脂層12を透過した光が第一の感光層10を硬化させる露光量である場合、後の工程で第一の樹脂層10の未露光部の除去が困難となり、流路5を形成出来なくなる。このことから、第二の樹脂層12は第一の樹脂層10よりも相対的に高感度であることが好ましく、第一の樹脂層及び第二の樹脂層を形成するための感光性組成物の感度をその組成により調整する。
さらにコーティング膜となる第三の層15も第二の樹脂層12と同時に硬化させる必要があり、第二の樹脂層12と同様に高感度である必要がある。しかしながら、縮合物を含む第三の層15はエポキシ樹脂を主成分とする第二の樹脂層12に比べて硬化性が低く、カチオン性開始剤の添加だけでは高感度化が困難な場合がある。このような場合に対して、本発明では、特定のポリオールを架橋剤として用いることで、第三の層15を光硬化して得られるコーティング膜の機械的強度を向上させている。
さらに、未硬化の第二の樹脂層12を基材として第三の層15を形成するための感光性組成物を塗布するには、第2の樹脂層12の溶解を制御するために第三の層15を形成するための組成物に含まれる溶媒はアルコール類であることが好ましい。この場合、架橋剤としてアルコール類に対して溶解性の高い特定のポリオールを用いることで、架橋剤を効果的に利用することが可能となる。
本実施形態では、第一の樹脂層、第二の樹脂層及び第三の層の形成に、以下の組合せにおいて本発明にかかる感光性組成物を用いることができる。なお、本発明にかかる組成物以外のものを用いる場合は、公知の感光性樹脂組成物を用いることができる。
・使用形態1:
第一の樹脂層及び第二の樹脂層の少なくとも一方を本発明にかかるカチオン重合性樹脂を含む感光性樹脂組成物で形成する。
・使用形態2:
第三の層を本発明にかかる縮合物を含む感光性組成物で形成する。
・使用形態3:
第一の樹脂層及び第二の樹脂層の少なくとも一方を本発明にかかるカチオン重合性樹脂を含む感光性樹脂組成物で形成し、かつ、第三の層を本発明にかかる縮合物を含む感光性組成物で形成する。
吐出口のパターンは必ずしも円形状であるある必要はなく、吐出特性などを考慮して図3(a)〜(c)に示す形をはじめ、適宜形状を選定してもよい。特に、図3(c)のような吐出口内に突起14を設けた吐出口を用いることで、突起14間で液体を保持し、インク液滴吐出時にインク滴が複数(主滴とサテライト)に分割するのを大幅に低減し、高画質印字を実現することができる。しかしながら、図3(c)のような複雑な形状パターン場合、未露光部を有機溶剤で一括除去する工程でソルベントクラックが発生し易い傾向がある。一方、図3(a)のような楕円形は、ソルベントクラックが発生し易い起点が存在しない為、図3(c)と比較してソルベントクラックが発生し難い。一般的にソルベントクラックは、硬化過程で発生した内部応力(歪み)を有する硬化物が、有機溶剤との接触および浸透によって、分子間の滑りが良くなり、応力が急速に解放されることで発生すると考えられている。従って、図3(c)のような複雑な形状パターンでソルベントクラックが発生し易い原因は、図3(a)のような楕円形と異なり、局所的に内部応力(歪み)が大きくなっているためと考えられる。
ソルベントクラックを抑制する手段としては、樹脂の硬化密度を向上させ、応力が解放されても滑りを発生させないことが有効であることを著者等は経験している。具体的には、第二の樹脂層12及び第三の層15を硬化させる際の露光量を増加させる、もしくは、熱処理(Post Exposure Bake)温度を上げることで、ソルベントクラックを低減させることが可能である。しかしながら、この場合、第一の樹脂層10の硬化も促進され、一括除去時に流路5を形成出来なくなる場合がある。また、露光量の増加は露光時間の増加につながり、生産性を低下させる懸念がある。
上述した場合に対しては、第二の樹脂層及び第三の層の形成のための感光性組成物に、本発明にかかる特定のポリオールを架橋剤として用いることが好ましい。感光性組成物に本発明にかかる特定のポリオールを架橋剤として用いることにより、感度の調整を効果的に行なうとともに、ソルベントクラックの発生を効果的に防止することができる。
以下に実施例を示すことによってさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[縮合物の調製]
以下の実施例及び比較例において用いる加水分解性シラン化合物からなる縮合物を以下の手順により調製した。
下記式(2)および式(3)で表される加水分解性シラン化合物と表1−1に示す各成分(質量部基準)を、冷却管を備えるフラスコ内に投入して室温で20分撹拌した。その後、30時間加熱還流することによって縮合物(A)を得た。なお、表1−1〜1−8に示す各材料の組成は、各成分の質量比を記載している。
Figure 2020106698
Figure 2020106698
[実施例1−1〜1−3][比較例1−1〜1−3]
表1−2に示す組成(質量部基準)の各感光性組成物をシリコンウエハ上に塗布し、90℃5分間加熱処理して成膜した。次にi線露光ステッパーを用いて700J/mの露光量を照射し、さらに90℃5分の熱処理することで露光部を硬化させて光硬化コーティング膜を作成した。カチオン架橋剤は三洋化成工業社製のPEG−600、カチオン性開始剤はサンアプロ社製のCPI−410、カチオン重合可能な樹脂はダイセル社製のエポキシ樹脂であるEHPE−3150、溶剤はエタノール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)、2−ブタノールを用いた。
なお、表1−2、1−4、1−6及び1−8における「カチオン架橋剤/エポキシ化合物計比率」における「エポキシ化合物計」は縮合物(A)に用いたエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物(式(2)の化合物)とエポキシ樹脂(EHPE−3150)の合計質量である。
Figure 2020106698
[実施例1−4〜1−6][比較例1−4〜1−6]
表1−3に示す組成(質量部基準)の各基板用組成物をシリコンウエハ上に塗布し、100℃1時間分間加熱処理してエポキシ樹脂を硬化させ、光硬化コーティング膜を形成する基板を作成した。基板用組成物に使用しているエポキシ樹脂は三菱化学社製の157S70、ナガセケムテックス社製のEX121、酸無水物硬化剤は日本曹達社製のBN1015、硬化促進剤は味の素ファインテクノ社製のPN23、無機充填剤は電気化学工業社製のFB940を用いた。
次に、表1−4に示す組成(質量部基準)の各感光性組成物を前記基板上に塗布し、90℃5分間加熱処理して成膜した。さらに、i線露光ステッパーを用いて4000J/mの露光量で基板全面を照射し、90℃5分の熱処理することで露光部を硬化させて光硬化コーティング膜を作成した。
Figure 2020106698
Figure 2020106698
[実施例1−7〜1−12][比較例1−1〜1−3]
表1−5に示す組成(質量部基準)の感光性樹脂組成物(1−2)をシリコンウエハ上に塗布し、90℃5分間加熱処理して成膜した。添加剤として酸発生剤はみどり化学社製のTPS−1000、シランカップリング剤はモメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製のSILQUEST A−187を用いた。
次に、表1−6に示す組成(質量部基準)の各感光性組成物を前記感光性樹脂組成物(1−2)から形成した膜上に塗布し、70℃5分間加熱処理して成膜した。さらに、直径が16μmの真円遮光パターンが40μmピッチで形成されたマスクを介して、前記感光性樹脂組成物(1−2)から形成した膜および前記感光性組成物から形成した膜をi線露光ステッパーを用いて700J/mの露光量でパターン露光した。次に、90℃5分の熱処理することで露光部を硬化させ、未硬化部をPGMEAで溶解除去して光硬化コーティング膜が形成された光造形物を作成した。
Figure 2020106698
Figure 2020106698
[実施例1−13〜1−16][比較例1−10〜1−12]
図2(A)〜(E)の工程により液体吐出ヘッドを作成した。
まず、表1−7に記載の組成(質量部基準)の感光性樹脂組成物(1−1)を100μm厚のPETフィルム上に塗布し、90℃5分でベークしてPGMEA溶媒を揮発させ、厚さ16μmのドライフィルムを成膜した。
なお、表1−7における「N695」は、DIC社製エポキシ樹脂N695(商品名)であり、「SP−172」はADEKA社製 アデカオプトマーSP−172(商品名)である。
次に、エネルギー発生素子1と供給口3を配置した基板2に、ドライフィルム10を80℃の熱を加えながらラミネート法で転写した(図2(A))。
次に、流路パターンを有するフォトマスク11を介して、ドライフィルム10を、i線露光ステッパーを用いて8000J/mの露光量でパターン露光し、さらに50℃5分の熱処理することで露光部を硬化させて流路形成部材4を形成した(図2(B))。
次に、表1−5に記載の組成(質量部基準)の感光性樹脂組成物(1−2)を100μm厚のPETフィルム上に塗布し、90℃5分でベークして厚さ5μmのドライフィルムを成膜した。さらにこのドライフィルム12を流路形成部材4の部分を含むドライフィルム10上に、ラミネート法を用いて50℃の熱を加えながら転写して積層した(図2(C))。
次に、表1−8に示す組成(質量部基準)の各感光性組成物をドライフィルム12上に塗布して塗布層15を形成し、70℃5分間加熱処理して成膜した。
次に、吐出口パターンを有するフォトマスク13を介して、ドライフィルム12および塗布層15を、i線露光ステッパーを用いて700J/mの露光量でパターン露光した。さらに90℃5分の熱処理することで露光部を硬化させて吐出口形成部材8を形成した(図2(D))。吐出口パターンは直径16μmの真円をマスクパターンとして用いた。
次に、ドライフィルム10、ドライフィルム12及び塗布層15の未硬化部をPGMEA溶剤で一括除去し、流路5及び吐出口6を形成し、200℃の熱でキュアして液体吐出ヘッドを得た(図4(E))。
Figure 2020106698
Figure 2020106698
[評価1]
実施例1−1〜1−6、比較例1−1〜1−6で作成した光硬化コーティング膜において、硬化状態を評価した。評価のために、エチレングリコール/尿素/イソプロピルアルコール/N−メチルピロリドン/1,2−ヘキサンジール/水=5/3/2/5/3/82(質量部基準)からなる溶液に光硬化コーティング膜を70℃で1週間浸漬し、浸漬後の膜表面の純水に対する動的後退接触角を微小接触角計(マイクロジェット社製)で測定した。硬化状態が良好な光硬化コーティング膜は接触角が高いが、硬化が不十分な膜は浸漬によって膜質が劣化し、動的後退接触角が低下する傾向がある。硬化状態は以下に示す基準で評価した。
◎;接触角95°以上
〇;接触角85°以上95°未満
×;接触角85°未満
[評価2]
実施例1−7〜1−12、比較例1−7〜1−9で作成した光硬化コーティング膜が形成された光造形物において、形成したパターンの面積を白色干渉顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製)で測定した。測定の結果、マスク面積(201μm)との比から以下に示す基準でマスクに対するパターン形状再現性を判定した。
〇;パターンの面積/マスク面積が0.9以上1.1未満
△;パターンの面積/マスク面積が0.7以上0.9未満、もしくは1.1以上1.2未満
×;パターンの面積/マスク面積が0.7未満、もしくは1.2以上
[評価3]
実施例1−13〜1−16、比較例1−10〜1−12で作成した光硬化コーティング膜が形成された液体吐出ヘッドにおいて、コーティング膜に顔料インクを吹き付けながらHNBR(水素化ニトリルゴム)のブレードを用いてワイピングを5000回実施した。ワイピング前後の液体吐出ヘッドに、エチレングリコール/尿素/イソプロピルアルコール/N−メチルピロリドン/黒色染料/水=5/3/2/5/3/82(質量部基準)からなるインクを充填して印字を行った。以下に示す基準で印字品位を評価した。
◎;ほぼ全てのノズルにおいてインクの着弾ズレが小さく印字が良好
〇;若干のノズルにおいてインクの着弾ズレが発生しているが印字は良好
×;ほぼ全てのノズルにおいてインクの着弾ズレが発生しており印字が乱れている
以下の各実施例および比較例で使用する感光性樹脂組成物は表2−1、表2−2、表2−3に記載の組成(質量部基準)で調合した。表2−1に三菱化学社製エポキシ樹脂157S70を用いてエポキシ架橋剤の効果を確認した結果を示す。表2−2にDIC社製エポキシ樹脂N695を用いてエポキシ架橋剤の効果を確認した結果を示す。表2−3に光造形物の一例である液体吐出ヘッドの作成に感光性樹脂組成物を用いた結果を示す。
エポキシ架橋剤としては三洋化成工業社製のPEG−200、600、1000、4000Nを用いた。これらの分子量はカタログに記載の数平均分子量を参考にした。なお、各表において組成は質量部で表されており、エポキシ架橋剤添加比はエポキシ樹脂に対するエポキシ架橋剤の比率を質量%で示している。感光性樹脂組成物を溶解する溶媒はポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)を使用し、その添加量は樹脂組成物を成膜する膜厚に応じて適宜調整した。
Figure 2020106698
Figure 2020106698
Figure 2020106698
[実施例2−1〜2−12、比較例2−1、2−2]
光造形物として膜厚が10μmの感光性樹脂組成物から形成した膜に、1辺が18μmの正方形抜きパターンを40μmピッチで形成した。
感光性樹脂組成物をスピン塗布でシリコンウエハ上に塗布し、90℃で5分間ベークしてPGMEA溶剤を揮発させて膜厚10μmに成膜した。次に、1辺が18μmの正方形遮光パターンが40μmピッチで形成されたマスクを介して、感光性樹脂組成物から形成した膜をi線露光ステッパーでパターン露光した。さらに90℃で5分間の熱処理を行うことで露光部を硬化させ、感光性樹脂組成物から形成した膜の未硬化部(1辺が18μmの正方形パターン)をPGMEA溶剤により除去して光造形物を形成した。
[評価1]
実施例2−1〜2−12および比較例2−1、2−2で作成した光造形物において、正方形パターンの角から硬化物に発生したクラックの長さを光学顕微鏡(ニコン社製)で計測した。また、クラック抑制効果として実施例2−1〜2−6は比較例2−1と、実施例2−7〜2−12は比較例2−2とクラックの長さを比較して表2−4に示す基準でクラック抑制効果を判定した。さらに正方形パターンの面積を白色干渉顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製)で測定し、マスク値(324μm)との比から表2−5に示す基準でパターン形状を判定した。
Figure 2020106698
Figure 2020106698
[実施例2−13〜2−15、比較例2−3]
図4(A)〜(E)の工程により液体吐出ヘッドを作成した。
まず、表2−3に記載の組成(質量部基準)の感光性樹脂組成物(2−2)を100μm厚のPETフィルム上に塗布し、90℃5分でベークしてPGMEA溶媒を揮発させてドライフィルム化し、6μmの膜を成膜した。次に、エネルギー発生素子1と供給口3を配置した基板2に、ドライフィルム10を、ラミネート法を用いて80℃の熱を加えながら転写した(図4(A))。
次に、流路のパターンを有するフォトマスク11を介して、ドライフィルム10を、i線露光ステッパーを用いて15000J/mの露光量でパターン露光し、さらに50℃5分の熱処理することで露光部を硬化させて流路形成部材4を形成した(図4(B))。
次に、表2−3に記載の組成(質量部基準)感光性樹脂組成物(2−1)を100μm厚のPETフィルム上に塗布し、90℃5分でベークして4μmのドライフィルムを成膜した。さらに、このドライフィルム12を流路形成部材4の部分を含むドライフィルム10上に、ラミネート法を用いて50℃の熱を加えながら転写して積層した(図4(C))。
次に、吐出口のパターンを有するフォトマスク13を介して、ドライフィルム12をi線露光ステッパーを用いて1500J/mの露光量でパターン露光し、さらに90℃5分の熱処理することで露光部を硬化させて吐出口形成部材8を形成した(図4(D))。吐出口のパターンには図3(a)および図3(c)の形状をそれぞれ用い、突起14はL=4.5μm、H=3.0μmとした。
次に、ドライフィルム10、ドライフィルム12の未硬化部をPGMEA溶剤で一括除去し、流路5及び吐出口6を形成し、200℃の熱でキュアして液体吐出ヘッドを得た(図4(E))。
[評価2]
作製したそれぞれの液体吐出ヘッドに、エチレングリコール/尿素/イソプロピルアルコール/N−メチルピロリドン/黒色染料/水=5/3/2/5/3/82(質量部基準)からなるインクを充填し、印字を行った。吐出口のソルベントクラックが軽減された液体吐出ヘッドでは印字品が良好であった。また、液体吐出ヘッドを前記インクに浸漬させ、70℃の環境で1週間保管した。保管後に流路形成部材4の側壁から染み込んだインクの有無を光学顕微鏡(ニコン社製)で観察した。大きなクラックが発生していた液体吐出ヘッドではインクの染み込みが確認出来た。
1 エネルギー発生素子
2 基板
3 供給口
4 流路形成部材
5 流路
6 吐出口
7 バンプ
8 吐出口形成部材
9 コーティング膜

Claims (38)

  1. カチオン重合性化合物を含むカチオン重合性材料と、架橋剤とを含む感光性組成物であって、
    前記架橋剤が、ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールを含み、
    前記カチオン重合性化合物の量(A)に対する前記ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールの量(B)の割合[(B/A)×100(%)]が0.1質量%以上15質量%以下である
    ことを特徴とする感光性組成物。
  2. カチオン重合性化合物を含むカチオン重合性材料と、カチオン性開始剤と、架橋剤とを含む感光性組成物であって、
    前記架橋剤が、ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールを含み、
    前記カチオン重合性化合物の量(A)に対する前記ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオールの量(B)の割合[(B/A)×100(%)]が0.1質量%以上15質量%以下である
    ことを特徴とする感光性組成物。
  3. 前記架橋剤が、以下の式(a)で示されるポリオールの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の感光性組成物。
    Figure 2020106698
    (nは自然数)
  4. 前記架橋剤の分子量が3000以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  5. 前記カチオン重合性化合物の量(A)に対する前記ヒドロキシル基を2官能以上有するポリオール(B)の量の割合[(B/A)×100(%)]が7.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の感光性組成物。
  6. 前記カチオン重合性化合物が、エポキシ樹脂、環状エーテルを有するオキセタン樹脂及びビニルエーテル系樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  7. 前記カチオン重合性材料が、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項6に記載の感光性組成物。
  8. 前記エポキシ樹脂が、3官能以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の感光性組成物。
  9. 前記多官能エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型ノボラック型及び脂環式型の多官能エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の感光性組成物。
  10. 前記エポキシ樹脂が、ベンゼン環またはシクロアルキル環を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項8または9に記載の感光性組成物。
  11. 前記ベンゼン環またはシクロアルキル環を有するエポキシ樹脂が、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型ノボラック型、ジシクロペンタジエン骨格を有する3官能以上のエポキシ樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載の感光性組成物。
  12. 溶剤を更に含むことを特徴とする請求項6乃至11のいずれかに記載の感光性組成物。
  13. 前記カチオン重合性材料が、前記カチオン重合性化合物としてエポキシ基を有する加水分解性シラン化合物を含有する縮合物を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  14. 前記カチオン重合性材料が、エポキシ樹脂、環状エーテルを有するオキセタン樹脂及びビニルエーテル系樹脂から選択されるカチオン重合性化合物の少なくとも1種を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の感光性組成物。
  15. 前記カチオン重合性材料が、エポキシ樹脂を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の感光性組成物。
  16. 前記縮合物が、前記エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物とフッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物の縮合物であることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  17. 前記フッ素含有基を有する加水分解性シラン化合物が、パーフルオロポリエーテル基、もしくはパーフルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物であることを特徴とする請求項16に記載の感光性組成物。
  18. 前記エポキシ基を有する加水分解性シラン化合物が、以下の式(1)で表される化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の感光性組成物。
    式(1):式(1):R−SiX (3−a)
    (式(1)中、Rはエポキシ基を有する非加水分解性置換基、Rは非加水分解性置換基、Xは加水分解性置換基を示し、aは1から3の整数である。)
  19. 前記エポキシ樹脂が、3官能以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項14乃至18のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  20. 前記多官能エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型ノボラック型及び脂環式型の多官能エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項19に記載の感光性組成物。
  21. 溶剤を更に含むことを特徴とする請求項13乃至20のいずれかに記載の感光性組成物。
  22. 基板上での光硬化物からなるコーティング膜、光造形物または液体吐出ヘッドの部分構造の形成用であることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  23. カチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含む基材上でのコーティング膜または光造形物の形成用であることを特徴とする請求項1、3乃至5、13乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物。
  24. 基材上に感光性組成物のコーティング膜を形成する工程と、基材上に形成された前記感光性組成物のコーティング膜を露光により硬化させる工程と、を有する光硬化物からなるコーティング膜の製造方法であって、
    前記感光性組成物が、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物であることを特徴とするコーティング膜の製造方法。
  25. 前記基材が、カチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含む基材であり、該基材に含まれるカチオン性開始剤が前記感光性組成物のコーティング膜の硬化に利用されることを特徴とする請求項24に記載のコーティング膜の製造方法。
  26. 前記感光性組成物が、請求項1、3乃至5、13乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物である請求項25に記載の光造形物の製造方法。
  27. 基材上に感光性組成物のコーティング膜を形成する工程と、
    基材上に形成された前記感光性組成物のコーティング膜への選択的な露光により硬化部を形成し、現像液により未露光部を該基材上から除去する工程と、
    を有する光造形物の製造方法であって、
    前記感光性組成物が、請求項1乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物であることを特徴とする光造形物の製造方法。
  28. 前記基材が、カチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含む基材であり、該基材に含まれるカチオン性開始剤が前記感光性組成物のコーティング膜の硬化に利用されることを特徴とする請求項27に記載の光造形物の製造方法。
  29. 前記感光性組成物が、請求項1、3乃至5、13乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物である請求項28に記載の光造形物の製造方法。
  30. 基板と、吐出口と流路を有する部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記吐出口と流路を有する部材が複数層構造を有し、該複数層構造の最表層に吐出口が開口しており、
    前記複数層構造の少なくとも一層を請求項2乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物の硬化物から形成する工程を有する
    ことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  31. 前記吐出口と流路を有する部材が流路形成部材と吐出口形成部材を有し、
    基板上に感光性の第一の樹脂層を設ける工程と、
    前記基板上に設けた第一の樹脂層に露光により流路のパターンを形成する工程と、
    前記流路のパターンを形成した第一の樹脂層上に感光性を有する第二の樹脂層を設ける工程と、
    前記第二の樹脂層に露光により吐出口のパターンを形成する工程と、
    前記流路のパターンが形成された第一の樹脂層を現像して前記流路形成部材を形成する工程と、
    前記吐出口のパターンが形成された第二の樹脂層を現像して前記吐出口形成部材を形成する工程と
    を有し、
    前記第一の樹脂層及び前記第二の樹脂層の少なくとも一方が、請求項2乃至13のいずれか一項に記載の感光性組成物を含むことを特徴とする請求項30に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  32. 前記流路のパターンが形成された第一の樹脂層と前記吐出口のパターンが形成された第二の感光性を有する樹脂層を一括して現像することを特徴とする請求項31に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  33. 基板と、吐出口と流路を有する部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
    前記吐出口と流路を有する部材の吐出口を有する面に、請求項1乃至5並びに13乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物の硬化膜を形成する工程を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  34. 前記吐出口と流路を有する部材が、流路形成部材と、吐出口形成部材を有し、
    基板上に感光性の第一の樹脂層を設ける工程と、
    前記基板上に設けた第一の樹脂層に露光により流路のパターンを形成する工程と、
    前記流路のパターンを形成した第一の樹脂層上に感光性を有する第二の樹脂層を設ける工程と、
    前記第二の樹脂層上に、感光性を有する第三の層を設ける工程と、
    前記第二の樹脂層と前記第三の層に前記吐出口のパターンを形成する工程と、
    前記流路のパターンが形成された第一の樹脂層を現像して前記流路形成部材を形成する工程と、
    前記吐出口のパターンが形成された第二の樹脂層と第三の層を現像して前記吐出口形成部材を形成する工程と、
    を有し、
    前記第三の層が、請求項1乃至5並びに13乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物を含むことを特徴とする請求項31に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  35. 前記第二の樹脂層が、カチオン重合性材料とカチオン性開始剤を含むことを特徴とする請求項34に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  36. 前記第三の層が、請求項1、3乃至5並びに13乃至21のいずれか1項に記載の感光性組成物を含み、前記第二の樹脂層に含まれるカチオン性開始剤が前記第二の樹脂層の硬化に利用されることを特徴とする請求項35に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  37. 前記第一の樹脂層及び前記第二の樹脂層の少なくとも一方が、請求項2乃至12のいずれか一項に記載の感光性組成物を含むことを特徴とする請求項34乃至36のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  38. 前記流路のパターンが形成された第一の樹脂層と前記吐出口のパターンが形成された第二の樹脂層及び第三の層を一括して現像することを特徴とする請求項34乃至37のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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