以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る投射光学系100の構成を、主な光束と合わせて示す断面図である。また図2は、図1の投射光学系100の構成を、光束を除いて詳しく示す断面図である。ここでの断面図とは、画像表示素子11の投射有効域MAの中心から出射する光束の主光線がスクリーンに到達するまでの光路を含む平面に沿って、投射光学系100を切断した際の断面図である。上記の平面は、主光軸Z方向と画像表示素子11の投射有効域MAの短辺方向とによって構成される平面と平行な平面である。上記の光束は、主光軸Zに近い光束と最大画角の光束、並びにそれらの中間的な光束である。図1および図2において、画像表示素子の画像表示面11側が縮小側、レンズ光学系の最終レンズL12側が拡大側である。なお以下において、レンズ光学系内の位置については、光束の進行方向を考慮して、拡大側を前方、縮小側を後方と称して説明することもある。図1および図2に示す投射光学系100は後述する実施例1に対応している。また、図1および図2に示す投射光学系100の基本的なレンズ構成は、後述する図8、14、20、26および32にそれぞれ示す実施例2、3、4、5および6の投射光学系100の基本なレンズ構成と同様である。
この投射光学系100は、例えばプロジェクタ装置に搭載されて、DMD、透過型液晶表示装置、あるいは反射型液晶表示装置等の画像表示素子の画像表示面11に表示された画像MをスクリーンSCへ投射するものとして使用可能である。図1では、プロジェクタ装置に搭載される場合を想定して、画像表示素子の画像表示面11およびカバーガラス12も併せて図示している。
このプロジェクタ装置においては、図示外の光源から発せられた後に画像表示面11で画像Mの情報を与えられた光束が、カバーガラス12を通して投射光学系100に入射され、この投射光学系100内の屈折光学系を含む第1光学系1内で第1中間像IM1が結像される。上記光束は凹面鏡3を含む第2光学系2に入射され、第1中間像IM1がさらに、第1光学系1と第2光学系2との間に第2中間像IM2として結像される。第2中間像IM2は第2光学系2によって反射、拡大され、スクリーンSC上に投射像TMとして拡大投射される。なお、この投射の方向TDは、後述する第1光学系1の主光軸Zと交差する方向である。レンズ構成に加えて光線も示す図1および、同様の後述する図38では、第1中間像IM1および第2中間像IM2を実線で示すと共に、上記中間的な光束によるそれらの結像位置を破線の直線で概略的に示している。図1および図38以外のレンズ構成図では、第1中間像IM1および第2中間像IM2については、上記のような概略的位置のみを示している(実線表示の直線)。実際の各実施例の第1中間像IM1および第2中間像IM2は、図1および図38で表されているように、主光軸Zから離れるにつれて後方側(縮小側)に傾いた(倒れた)形状を有する実像である。
図2に示すように第1光学系1は、第1屈折光学系10および第2屈折光学系20をこの順に縮小側から拡大側に向かって配置して構成されている。第1屈折光学系10は、正の屈折力を有する(以下、これを単に「正の」という)両面が非球面の両凸レンズL1、負の屈折力を有する(以下、これを単に「負の」という)を有する両凹レンズL2、負の両凹レンズL3、このレンズL3に接合された両凸レンズL4、両凸レンズL5、両凸レンズL6、および両面が非球面である負のメニスカスレンズL7を主光軸Zに沿って縮小側から拡大側に向かって順に配置して構成されている。一方第2屈折光学系20は、両面が非球面である正のメニスカスレンズL8、両凸レンズL9、両凸レンズL10、このレンズL10に接合された両凹レンズL11、および両凸レンズL12を主光軸Zに沿って縮小側から拡大側に向かって順に配置して構成されている。第2光学系2を構成する凹面鏡3は、非球面の反射面を有するものとされている。なお、レンズL1とレンズL2との間には、開口絞りStが配置されている。図示されている絞りStは必ずしも大きさや形状を厳密に表すものではなく、主光軸Z上の位置を示すものである。また図2に示す第1中間像IM1、第2中間像IM2はそれぞれ、主光軸Zに最も近い像位置を示すものである。
以下では、第1光学系1内で主光軸Zと一致することもある部分的な光軸について言及するが、この主光軸Zとは、回転対称体である最も縮小側のレンズL1と、同じく回転対称体である凹面鏡3の各回転中心軸が共有する軸を意味する。実施例では、第1屈折光学系10を構成するレンズ素子の中で最も多くのレンズ素子が共有する光軸と、第2屈折光学系20を構成するレンズ素子の中で最も多くのレンズ素子が共有する光軸と、第2光学系2の光軸(回転対称軸)とが、それぞれ共有されて主光軸Zとして構成されている。可動光学系が偏芯していない状態では、第1屈折光学系10および第2屈折光学系20は、それぞれ単一の光軸を共有する共軸光学系であり、さらに第1光学系1は単一の光軸を共有する共軸光学系であり、投射光学系100は単一の光軸を共有する共軸光学系である。
第1光学系1には、主光軸Zに沿って移動することで投射像TMの光学特性を変化させる少なくとも1枚のレンズを有する移動光学系が設けられている。図1に示す実施形態では、一例として移動光学系が正のメニスカスレンズL8から構成されている。この例では、レンズL8が主光軸Zに沿って移動することにより、投射像TMの光学特性の一つである合焦状態が変えられる。この光学特性は合焦状態に限られるものではなく、その他、投射光学系100が変倍機能を有する場合等においては、投射像TMの倍率等であってもよい。すなわち、光学特性の変化とは、フォーカス調整時のピント位置(投射光学系100の最も前方に配置された光学素子を基準にした投射像TMが結像する位置)の変化やズーム調整時の像倍率の変化または像面湾曲調整時の像面湾曲量の変化を含むのはもちろんのこと、それらの調整の際に付随して発生する収差の変化を含む、スクリーンSCを含む投射面上における投射像TMの結像状態の変化を指す。
また第1光学系1には、主光軸Zに交差する方向に光軸を変位させるように動く少なくとも1枚のレンズを有する可動光学系が設けられている。図1に示す実施形態では、一例として可動光学系が両凸レンズL6から構成されている。ここで、主光軸Zに交差する方向に光軸を変位させるように動くとは、すなわち、この凸レンズL6の光入射面L6aおよび光入射面L6aの少なくとも一方と主光軸Zとの交点の位置が変化するように動くことであり、主光軸Zに対して直交する方向に光軸を平行移動させること、および、主光軸Zに対して角度を成すように光軸を傾斜させることの双方を指すものである。図1では、前者のように平行移動された場合のレンズL6の光軸Z1を示している。なお以下では、前者の平行移動させることを「シフト」と称し、後者の傾斜させることを「チルト」と称する。このような可動光学系を設ける構成は、後述する実施例1〜15の全てにおいて適用されている。
以下、上述の可動光学系による作用について説明する。前述した通り、移動光学系の主光軸Zに沿った移動により投射像TMの光学特性を変化させ得るが、それに加えて、可動光学系を主光軸Zに交差する方向に光軸を変位させるように移動させる。これにより、移動光学系のみの移動により投射像TMの光学特性を変化させ得る場合と比較して、可動光学系も移動させることで投射像TMの光学特性を適正に変化させ得る範囲をより広くすることが可能となる。一例を挙げると、図1および図2で示した実施形態(後述する実施例1に対応)では、フォーカス調整のために、移動光学系であるレンズL7およびL8の主光軸Zに沿った移動により投射像TMの光学特性であるピント位置を変化させ得るが、それに加えて、可動光学系としてのレンズL6の光軸Z1を主光軸Zに対して変位するように動かす。これにより、上記レンズL7およびL8の主光軸Zに沿った移動のみにより投射像TMの光学特性を適正に変化させ得る範囲と比較して、より広い範囲で投射像TMのピント位置を適正に変化させることが可能になる。ここでいうところの「適正に」とは、移動光学系を移動する目的(例えばフォーカス調整)に応じて移動させた際に、意図した光学特性の変化(例えばピント位置の変化)に付随して発生する、意図していない収差、結像位置や結像倍率の変動に伴う投射像TMの結像性能の低下を十分に抑制ができていることを指す。
また、レンズL6の動きは、より詳しくは、主光軸Zと投射方向TDとを含む面に沿う方向であって主光軸Zと交差する方向の動きである。この投射光学系100は下方向から上方向へ向かって斜めに投射する投射光学系であるため、投射距離の関係上、投影像TMはスクリーンSC(通常通り横長であるとする)の長辺方向よりも短辺方向の方が、端部での結像性能のズレが大きく発生し、さらに合焦や変倍時に性能差が大きくなりやすい。よって、性能差が問題となりやすい方向成分を含むようにレンズL6を動かすことで、結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように良好に補正可能となる。
具体的には、例えば移動光学系のレンズを移動させて合焦(フォーカス調整)する時に可動光学系を用いることで、用いない場合に比べて合焦範囲(つまり投射画像の結像性能を一定以上保った状態を維持したままフォーカス調整が可能となる投射距離の範囲)を拡大することが可能となる。
この点についてより詳しく説明すると、まず、投射距離を変化させて投射像のサイズを変更する際に、フォーカス調整用のレンズを光軸に沿って移動させることで光学性能を維持したままフォーカス調整ができる範囲には限りがある。すなわち、調整可能範囲の上限・下限を超えてフォーカス調整をしても、収差の補正が仕切れずに結像性能が低下する。しかし、可動光学系をさらに変位させることで、フォーカス調整可能範囲の上限や下限をさらに拡大することが可能になる。例えば通常のフォーカス調整用レンズの移動だけでは、投射像サイズが50inchから100inchの範囲でしかフォーカス調整ができなかったとしても、可動光学系を変位させることで、上限であった100inchよりも大きな投射像サイズである150inchまで投射像の結像性能を維持したままフォーカス調整を行うことが可能となる。
また、移動光学系のレンズを移動させて変倍(ズーム)する場合、そのレンズ単体では変倍比(最も短い焦点距離と最も長い焦点距離との比率)が例えば10倍であったとしても、さらに可動光学系を変位させることで変倍比を10倍を超えるまで伸ばすことも可能となる。
さらに可動光学系を変位させることで、像面湾曲の調整も可能となる。投射距離や投射倍率を変更したことで生じる像面湾曲は、投射像のサイズが大きいほど、または、投射画角が大きくなるほど増大する。この増大した像面湾曲を補正するために可動光学系を変位させることで、変位させない場合に比べて、より増大した像面湾曲を補正することが可能となり、よってこの点から、投射距離や投射倍率をより大きく設定することが可能になる。
なお、本実施形態の投射光学系100は画像表示面11の投射有効域MA(図99参照)に対して垂直に偏芯して配置され、主光軸Zと投射有効域MAとが交わらない、いわゆるオフセット構造を有している。また本発明においては、投射有効域MAだけではなく、画像表示面11自体と主光軸Zとが交わらないオフセット構造も適用可能である。
次に、可動光学系を構成するレンズL6への光入射について説明する。図1に示すように画像表示素子の画像表示面11において、被投射面であるスクリーンSCに投射像TMとして投射され得る範囲である投射有効域MAの中で、光軸Z1の変位方向Yに沿う方向で、主光軸Zから最も遠い端部である遠端部E1と、主光軸Zから最も近い端部である近端部E2とを考える。なお図99には、上記投射有効域MA、遠端部E1および近端部E2等を主光軸Zと平行な方向から見た場合の状態を、図1中の方向を示す矢印Yと共に概略的に示す。そして上記遠端部E1から出射する光の主光線を遠端部主光線R1とし、近端部E2から出射する光の主光線を近端部主光線R2とする。また、可動光学系L6の最も後方の光入射面Laにおける遠端部主光線R1の入射位置を遠端部主光線入射位置P1とし、光入射面Laにおける近端部主光線R2の入射位置を近端部主光線入射位置P2としたとき、可動光学系L6は、遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置に配置されている。
なお本発明の実施形態において、変位方向Yは、投射有効域MAに対する投射光学系100の偏芯方向と投射光学系100の主光軸Z方向とからなる平面に沿う方向である。例えば、投射有効域MAに対して投射光学系100が主光軸Z方向(前後方向)とは直交する一方向(上下方向)に偏芯して配置された場合、投射光学系100から出射される投射像TMの中心は主光軸Zに対して上下方向の一方側に偏った位置に斜めから投射される。その際に、投射光学系100から出射される投射像TMの中心に入射する主光線は、前後方向と上下方向とからなる平面に沿って進行する。そのため、前記主光線が沿う平面において、主光軸ZとスクリーンSCとが垂直関係にある場合、投射像TMの最も下側で結像する光束の結像位置までの光路長(投射光学系100から投射像TMまで各光束の主光線が実際に進行した距離)と最も上側で結像する光束の結像位置までの光路長とに差が生じることとなる。その上側と下側での光路長の差により投射像TMの上側の光束の結像性能と下側の光束の結像性能に差が生じ、フォーカス調整や変倍(ズーム調整)の際の投射像TM全体の結像性能に影響が生じる。そのため、可動光学系の変位方向Yを投射有効域MAに対する投射光学系100の偏芯方向(実施例では上下方向)と投射光学系100の主光軸Z方向とからなる平面に沿う方向とすることで、投射像TMの上下の結像性能の差をより適切に補正が可能となる。よって、投射像TM全体の結像性能を保ったまま、光学特性を適正に変化させ得る範囲を拡大することに有利となる。
また、可動光学系の光軸Z1の変位方向Yを、主光軸Zに対して直交する方向に変位(シフト)させた場合、可動光学系の光入射面および光出射面の主光軸Zと直交する方向への変位量は、光軸Z1の変位量と同一となる。そのため、光入射面へ入射する各入射光束の入射位置および光出射面から出射する各出射光束の出射位置は、光軸Z1の変位量に応じて入射位置および出射位置が光軸と直交する方向に変化する。よって、シフトの場合、主に可動光学系に対する各光束の入射位置および出射位置の変化によって光学性能の調整を行う。
シフトの場合、可動光学系の光入射面および光出射面の光軸Z1に近い位置および光軸Z1に遠い位置は、一律に主光軸Zに対して同一量移動するため、光入射面への入射光束および光出射面からの出射光束に対する変位に対する影響の差は、主に各レンズ面の曲率半径に影響を受ける。一般的には、光入射面および光出射面の両面において、光軸Z1に近い位置よりも光軸Z1に遠い位置の方が光線の屈折角が急になるため、変位の影響を強く受ける。
一方、可動光学系の光軸Z1の変位方向Yを、可動光学系の光軸Z1と主光軸Zとの成す角を変化(チルト)させた場合、可動光学系の光入射面および光出射面の主光軸Zと直交する方向への変位量は、各レンズ面自体の変位量よりも小さくなる。そのため、光入射面へ入射する各入射光束の入射位置および光出射面から出射する各出射光束の出射位置の光軸と直交する方向への変化は、シフトの場合に比べて少なくなる。しかし、その代わりに可動光学系の光軸Z1は主光軸Zに対してチルトすることで、可動光学系の光入射面および光出射面の光軸方向への倒れが生じ、それにより各光束の入射位置および出射位置による入射角度および出射角度の変化が生じる。よって、チルトの場合、主に可動光学系に対する各光束の入射角度および出射角度の変化によって光学性能の調整を行う。チルトの場合、可動光学系の光入射面および光出射面は光軸Z1から離間する位置ほど変位の量が増加するため、光入射面への入射光束および光出射面からの出射光束に対する変位に対する影響の差は、主に各レンズ面の曲率半径とチルトの角度の両方に影響を受ける。
以上述べたように、遠端部主光線R1と近端部主光線R2とを互いに分離した状態で可動光学系(例えば図1および図2に示す構成ではレンズL6)へ入射させる構成は、後述する実施例1〜15の全てにおいて適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。遠端部主光線R1と近端部主光線R2とを互いに分離した状態で可動光学系L6へ入射させることにより、各主光線に対する光軸Z1の変位による影響を異ならせることが可能になる。つまり、像高の高い位置へ入射する主光線ほど、光軸Z1の変位に対する感度が高くなる。そこで、各主光線間の結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように補正することが可能になるので、移動光学系であるレンズL7およびL8の移動により投射像TMの光学特性を適正に変化させ得る範囲をより好適に広げることができる。
なお、遠端部主光線入射位置P1、近端部主光線入射位置P2に各々入射する遠端部主光線R1、近端部主光線R2の入射角度の差が大きくなるほど、入射位置P1、入射位置P2における光軸Z1の変位に対する各光線の感度差が高くなる。そこで、入射角度がより大きくなる入射位置P1での結像性能の補正能力が、入射位置P2での補正能力に比べて高くなり、結果として、より収差の発生しやすい投射領域の補正を適切に行うことが可能となる。
次に、本発明の別の実施形態に係る投射光学系について、図38および図39を参照して説明する。図38は本発明の別の実施形態に係る投射光学系の構成を、主な光束と合わせて示す断面図である。図39は図38の投射光学系100の構成を、光束を除いて詳しく示す断面図である。なおこれらの図38および図39において、先に説明した図1および図2中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについては特に必要の無い限り説明を省略する(以下、同様)。またこれらの図では、プロジェクタ装置に搭載される色合成部または照明光分離部に用いられるプリズム4も併せて示している。
図38および図39に示す投射光学系100は後述する実施例7に対応している。また、図38および図39に示す投射光学系100の基本的なレンズ構成は、後述する図45、図51、図57および図63にそれぞれ示す実施例8、9、10および11の投射光学系と同様であり、さらに図70と71に示す実施例12、図77と78に示す実施例13、図84と85に示す実施例14、図91と92に示す実施例15の投射光学系の基本なレンズ構成と同様である。
この別の実施形態における第1光学系1も、先に説明した実施形態におけるのと同様に、第1屈折光学系10および第2屈折光学系20をこの順に縮小側から拡大側に向かって配置して構成されている。第1屈折光学系10は、両凸レンズL1、両凸レンズL2、両凸レンズL3、このレンズL3に接合された両凹レンズL4、両凸レンズL5、このレンズL5に接合された負のメニスカスレンズL6、両凹レンズL7、およびこのレンズL7に接合された両凸レンズL8を主光軸Zに沿って縮小側から拡大側に向かって順に配置して構成されている。一方第2屈折光学系20は正のメニスカスレンズL9、両凸レンズL10、両面が非球面である負のメニスカスレンズL11、両凹レンズL12、このレンズL12に接合された両凸レンズL13、両面が非球面である正のメニスカスレンズL14、両面が非球面である負のメニスカスレンズL15、正のメニスカスレンズL16、両凸レンズL17、負のメニスカスレンズL18、およびこのレンズL18に接合された両凸レンズL19を主光軸Zに沿って縮小側から拡大側に向かって順に配置して構成されている。第2光学系2を構成する凹面鏡3は、非球面の反射面を有するものとされている。なお、レンズL8とレンズL9との間には開口絞りSt1が配置され、レンズL17とレンズL18との間には開口絞りSt2が配置されている。また、レンズL8とレンズL9との間においてレンズ9に近接した位置には、視野絞り(フレアカッタ)Sfが配置されている。
次に、本発明の投射光学系における好ましい部分的構成に関して、上述した2つの実施形態を参照して説明する。まず、可動光学系におけるレンズ配置について説明する。先に述べたように遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置される場合、可動光学系は例えば図38および図39に示すように、第1中間像IM1と、この第1中間像IM1よりも前方に配置される絞りSt2との間に配置される少なくとも1枚のレンズ(図38および図39の例ではレンズL15)を有することが望ましい。この構成は、後述する実施例7〜13において適用されている。ちなみに本発明の投射光学系では、後述する実施例1〜6のように、光学系によっては絞りSt2を実際の機械的構成として配置されていない場合もある。この場合は、絞りSt2の位置の代わりに、主光軸Zおよび遠端部主光線R1の交点と読み替え、上記1枚のレンズを、「第一中間像IM1と、この第一中間像IM1よりも前方に配置される主光軸Zおよび遠端部主光線R1の交点との間に配置される少なくとも1枚のレンズ」とする。
以下、上記構成による作用について説明する。第1中間像IM1から絞りSt2までの間の光線は、遠端部主光線と近端部主光線とが主光軸Zと直交する方向に分離した状態で光路上を進行する。このように遠端部主光線と近端部主光線とが分離している位置に可動光学系のレンズを配置することで、このレンズの光入射面における各主光線の入射角に差を持たせることができる。これにより、各主光線に対する可動光学系の変位(主光軸Zに対する光軸Z1の変位)による影響、詳しくはこの光軸Z1の変位に対する各主光線の感度を、各主光線の入射角の差に応じて変化させることが可能となる。傾向として、光入射面において像高の高い位置に入射する主光線ほど入射角が大きくなり、光軸Z1の変位による影響をより強く受ける。結果として、移動光学群の移動による投射像TMの結像位置による結像性能の差、つまり各主光線の結像位置による結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように補正することが可能となる。
特に、第1中間像IM1よりも前方に配置される第2屈折光学系20は、第1中間像IM1からの発散光を屈折させて、台形歪み等の歪曲収差および像面湾曲が強く発生した第2中間像IM2を形成する屈折光学系である。歪曲収差および像面湾曲は、画角に比例して発生量が増大する収差(軸外収差)であり、よって、第2屈折光学系20は、遠端部主光線R1および近端部主光線R2を含む各光束の、光軸方向における結像位置や結像位置における結像性能に大きな差を持たせて結像させる光学系である。そのため、第1中間像IM1よりも前方に配置される屈折光学系である第2屈折光学系20に可動光学系を配置することで、過剰な軸外収差による各主光線における結像位置および結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように適切に補正することが可能となる。
上述したように、遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置されて、かつ可動光学系が、第1中間像IM1と第1中間像IM1よりも前方に配置される絞りSt2との間に配置される少なくとも1枚のレンズを有する場合、そのようなレンズのうちの1枚は、第1中間像IM1に隣接した位置に配置されていることが望ましい。なおこの「隣接」とは、中間像IM1と当該レンズとの間に、別のレンズが存在しないことを意味する。この構成は、後述する実施例3および8において適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。中間像を形成した光線の各主光線は分離した状態になっている。そのため、中間像に隣接するレンズへ入射する光線の各主光線を分離した状態にさせ易い。よって、中間像に隣接するレンズを可動光学系に含めることで、各主光線に対する可動光学系レンズ群の変位による影響を分散する(各主光線の可動光学系レンズ群の変位に対する感度を主光線毎に変化させる)ことが可能となり、各主光線間の結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように補正することが可能となる。
また、画像光つまり画像情報を担持している光が結像する中間像の付近では、画像光の主光線、上光線および下光線同士の間隔は、中間像に近いほど狭くなる。そのため、中間像に隣接するレンズを可動光学系とすることで、軸上収差に対する影響を小さくすることが可能となる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100においては、例えば図20に示すように可動光学系(この例ではレンズL9が構成している)は、移動光学系(この例ではレンズL7およびL8が構成している)の中で最も前方に配置されたレンズL8よりも前方に配置された正レンズL9を有することが好ましい。この構成は、後述する実施例4、5および6において適用されている。
上記のような構成とすれば、移動光学系を構成するレンズL7およびL8の間に可動光学系L9を配置する必要がなくなるので、機械的な構成を単純化することが可能になる。以下、この点について詳しく説明する。移動光学系と可動光学系とはレンズが実際に駆動する方向が互いに異なるので、レンズを駆動する機械的機構も独立したものとなる。その場合、一方の光学系が他方の光学系に挟まれていると、一方の光学系によって分断された他方の光学系は分断されたそれぞれのレンズ群を移動させるために、それぞれのレンズ群に対して駆動力を伝達する機械的機構を用意する必要が生じて、機械的機構が複雑化する。それに対して、上述のようにレンズL7およびL8の間に可動光学系L9を配置しないのであれば、分断された各レンズ群に対して駆動力を伝達する機械的機構をそれぞれ用意する必要がなくなって、機械的な構成が単純化される。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、先に述べたように遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置される場合、可動光学系は例えば図26に示すように、第1光学系1のうちで最も前方に配置されるレンズ(この例ではレンズL12)を有することが望ましい。この構成は、後述する実施例5および6において適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。第1光学系1の最も前方側に配置されるレンズL12を可動光学系とすることで、各主光線が分離した状態で可動光学系の最も後方側の光入射面へ入射した光線を、各主光線の分離が小さい光線として出射することが可能となる。それにより、各主光線の結像性能の差(軸外収差)および、各主光線を含む光線(光束)における主光線と上下光線とのズレによる収差(軸上収差)無くす、あるいは少なくするように補正することが可能となる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、先に述べたように遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置される場合、可動光学系は例えば図1に示すように、第1中間像IM1と、この第1中間像IM1よりも後方に配置される絞りStとの間に配置される少なくとも1枚のレンズ(この例ではレンズL6)を有することが好ましい。この構成は、後述する実施例1、2、14および15において適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。絞りStから第1中間像IM1までの間の光線は、遠端部主光線と近端部主光線とが主光軸Zと直交する方向に分離した状態で光路上を進行する。このように遠端部主光線と近端部主光線とが分離している位置に可動光学系のレンズを配置することで、このレンズの光入射面における各主光線に差を持たせることができる。これにより、各主光線に対する可動光学系の変位(主光軸Zに対する光軸Z1の変位)による影響、詳しくはこの光軸Z1の変位に対する各主光線の感度を、各主光線の入射角の差に応じて変化させることが可能となる。傾向として、光入射面において像高の高い位置に入射する主光線ほど入射角度が大きくなり、光軸Z1の変位による影響を強く受ける。結果として、移動光学系の移動による投射像TMの結像位置による結像性能の差、つまり各主光線の結像位置による結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように補正することが可能となる。
特に、第1中間像IM1よりも後方に配置される第1屈折光学系10は、画像Mからの発散光を屈折させて像面湾曲、非点収差およびコマ収差が発生した第1中間像IM1を形成する屈折光学系である。像面湾曲、非点収差およびコマ収差は、画角に比例して発生量が増大する収差であり、よって、第1屈折光学系10は、遠端部主光線R1および近端部主光線R2を含む各光束の、光軸方向における結像位置や結像位置における結像性能に差を持たせて結像させる光学系である。そのため、第1中間像IM1よりも後方に配置される第1屈折光学系10に可動光学系を配置することにより、遠端部主光線R1および近端部主光線R2を含む各光束の結像性能の差を調整して第1中間像IM1を結像することが可能となる。さらに、第1中間像IM1よりも前方に配置される第2屈折光学系20は、第1中間像IM1を拡大投影して第2中間像IM2を形成するため、第1中間像IM1で発生する収差もまた増大させることになるが、第1屈折光学系10に可動光学系を配置すれば、可動光学系による補正の効果を第2屈折光学系20による拡大により増大することができるため、上記調整の量を小さくすることが可能となる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、上述したように、遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置されて、かつ可動光学系が、第1中間像IM1と、この第1中間像IM1よりも後方に配置される絞りStとの間に配置される少なくとも1枚のレンズを有する場合、可動光学系は例えば図2に示すように、第1光学系1の中で第1中間像IM1よりも後方に配置される正レンズの中で最も前方に配置されるレンズ(この例ではレンズL6)を有することが好ましい。この構成は、後述する実施例2において適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。第1中間像IM1を形成した光線は、各主光線が分離した状態になっている。そのため、中間像に隣接するレンズへ入射する光線を分離した状態にさせ易い。これにより、各主光線間の結像性能の差を無くす、あるいは少なくするように補正することが可能となる。また、絞りSt、St1と第1中間像IM1との間において、有効表示域MAからの光線は、主光線前方へ進行するほどに主光軸Zから離れるように発散している。そのため、投射光学系100の外形寸法の過度な増大を防ぐために、その間にある正レンズは、各主光線の光線角度を光軸側へ向かうように屈折させる作用を有する。そのため、当該正レンズを可動光学系とすることで、光線角度を強く曲げることで増大する収差を良好に補正することが可能となる。また、可動光学系を構成する正レンズの入射面を凸面とすることで、光入射面において像高が高い光線ほど入射角度が大きくなり、かつ、像高の高い光線ほど正レンズの入射面に入射するまでの光路長が長くなる。そのため、可動光学系の変位から受ける影響も強くなり、結果として、上記補正を行う上で有利となる。また、画像光が結像する中間像の付近では、画像光の主光線、上光線および下光線の相互間の間隔は、中間像に近いほど狭くなる。そのため、中間像に隣接するレンズを可動光学系とすることで、軸上収差に対する感度が小さくなり、軸上収差が増大することを防止できる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、上述したように、遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置されて、かつ可動光学系が、第1中間像IM1と、この第1中間像IM1よりも後方に配置される絞りとの間に配置される少なくとも1枚のレンズを有する場合、可動光学系は例えば図8に示すように、第1中間像IM1とこの第1中間像IM1よりも後方に配置される絞りStとの間に配置される少なくとも1枚のメニスカスレンズ(この例ではレンズL7)を有することが好ましい。この構成は、後述する実施例2および13において適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。メニスカスレンズはレンズ面の曲率の大きさに対してレンズ自体のパワーが強くないため、光学系の焦点距離の変化を抑制しながら光線の角度の調整を行うことに適したレンズである。そのため、可動光学系として変位させた際に、光入射面へ入射する各主光線の入射角度を変化させる各主光線の差を調整しつつも、他の収差に対する影響を小さくすることが可能となる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、先に述べたように遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置される場合、例えば図1に示すように、遠端部主光線入射位置P1と主光軸Zとの間の距離である入射位置距離Y1と、近端部主光線入射位置P2と主光軸Zとの間の距離Y2と、投射光学系100の全系の焦点距離f(近点投射時の広角端における焦点距離とする)とが、
4.0 >(Y1−Y2)/|f|≧0.8 ・・・ (1)
の関係を満たしていることが好ましい。なお図1では、距離Y2を図示することが困難であるので、便宜的に近端部主光線入射位置P2の位置にY2の表示をしている。距離Y2は正しくは、Y2表示の位置から主光軸Zに直交する方向(図中矢印Yで示す方向)に主光軸Zまで降ろした線分の長さである。この構成は、後述する実施例1〜15において適用されている。
以下、上記構成による作用について説明する。可動光学系を動かして光軸Z1をシフトあるいはチルトさせることで、移動光学系により投射像TMの光学特性を適正に変化させることができる範囲を広げることができる。なお、上記(Y1−Y2)/|f|の値が仮に(1)式が規定している下限値を下回ると、Y1とY2との差が小さくなり、各主光線の光軸までの高さの差が小さくなり過ぎるため、各主光線ごとの結像位置による結像性の差の補正が難しくなる。また、上記(Y1−Y2)/|f|の値が仮に(1)式が規定している上限値以上になると、Y1が大きくなり過ぎてレンズ系が増大し、もしくは焦点距離fが小さくなり過ぎて収差の発生量が過剰になり、補正が難しくなる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、先に述べたように遠端部主光線入射位置P1と近端部主光線入射位置P2とが互いに異なる位置にあるように可動光学系が配置される場合、例えば図1に示すように、可動光学系(この例ではレンズL6)の最も後方の光入射面Laにおける遠端部主光線R1の入射位置を遠端部主光線入射位置P1とし、最も前方の光出射面Lbにおける遠端部主光線R1の出射位置を遠端部主光線出射位置P3としたとき、
遠端部主光線入射位置P1と主光軸Zとの間の距離である入射位置距離Y1と、遠端部主光線出射位置P3と主光軸Zとの間の距離である出射位置距離Y3とが、
1.3≧Y3/Y1≧0.7 ・・・ (2)
の関係を満たしていることが好ましい。この構成は、後述する実施例5および6以外の全ての実施例において適用されている。
上記の構成とすることにより、可動光学系を動かす際における像シフトを抑制することができる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、可動光学系の焦点距離f5と、第1光学系1の焦点距離f1(近点投射時の広角端における焦点距離とする)とは、
70 > |f5| / |f1| ≧ 1.0 ・・・ (3)
の関係を満たしていることが好ましい。この構成は、後述する実施例5以外の全ての実施例において適用されている。
上記の構成とすることにより、移動光学系の移動時における像シフトを抑制することができる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において、可動光学系は例えば図32に示すように、第1光学系1のうちで、2枚以上のレンズからなるレンズ群(この例ではレンズL10、L11およびL12)として構成されていることが好ましい。この構成は、後述する実施例5、6および13において適用されている。
上記の構成とすることにより、複数のレンズ面により屈折角を調整することができる。そこで、フォーカス調整、変倍、像面湾曲の補正時に変動する収差をより精度良く補正することが可能となる。
次の好ましい部分的構成について説明する。投射光学系100において移動光学系は、投射像TMの投射距離を変更して合焦状態を変化させる合焦(フォーカス調整)用光学系、投射像TMの投射倍率を変更する変倍用光学系、および投射像TMの像面湾曲の補正を行う像面湾曲補正用光学系の少なくとも1つを備えることが好ましい。この構成は、後述する実施例1〜15全てにおいて適用されている。
次に、本開示の実施形態に係る実施例1〜15について説明する。まず、実施例1の投射光学系について説明する。実施例1の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図1および図2に断面図を示した投射光学系100の構成と対応している。実施例1の投射光学系について、構成要素の基本データを図3に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図4に、非球面係数に関するデータを図5に示す。以下では、それらの図中で用いられている記号の意味について、実施例1のものを例にとって説明するが、実施例2〜15についても基本的に同様である。
図3の基本データにおいて、面番号No.の欄には最も縮小側の構成要素の面を1番目として拡大側に向かうに従い順次増加する面番号を示している。曲率半径Riの欄には各面の曲率半径を示している。曲率半径Riの符号は、面形状が縮小側に凸の場合を正、拡大側に凸の場合を負としている。面間隔diの欄には面番号=iの面と面番号=i+1の面との主光軸Z上の間隔を示す。以上の曲率半径Ri、面間隔diおよび有効径Diの単位はmmである。また、屈折率ndの欄には各光学要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、アッベ数νdの欄には各光学要素のd線に対するアッベ数を示す。「レンズ等」の欄には、図1および図2に示した光変調器の画像表示面11に形成される画像Mの面、カバーガラス12、開口絞りSt、結像される第1中間像IM1、第2中間像IM2、凹面鏡3、スクリーンSC上の位置となる投射像TMの面も含めて示している。それらについては、上記の記載順に従ってそれぞれ「OBJ」、「CG」、「絞り」、「中間像1」、「中間像2」、「MIR」、「IMG」と表記している。面間隔diの中で可変の面間隔については、その面の番号に*の表記を付して示している。また非球面形状の面は、面番号No.の欄に*の表記を付して示している。
図4に示す面間隔は、上述のように可変である面間隔を、近点投射時(合焦範囲内で最も近い位置に投射した場合:図面内では「近点」と表記)と遠点投射時(合焦範囲内で最も遠い位置に投射した場合:図面内では「遠点」と表記)のそれぞれについて示している。また、図4に示す偏芯量は、可動光学系を構成するレンズ等について、前述した「シフト」あるいは「チルト」の量を示している。「シフト」については、可動光学系を構成するレンズ等の光軸Z1が主光軸Zから平行移動した距離(mm)を、図1中で上方向へ移動した場合を正値、図1中で下方向へ移動した場合を負値として示している。「チルト」については、可動光学系を構成するレンズ等の光軸Z1が主光軸Zに対して傾いた角度(度)を、図1に表れている入射面に回転中心を設定して反時計回りに回転した場合を正値、同様にして時計回りに回転した場合を負値として示している。
この実施例1ではレンズL7とレンズL8とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つのレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例1では図4に示す通り、レンズL6がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例1では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図3に示すNo.14、15の面となる。なお、可動光学系を構成するこのレンズL6に対する画像光の入・出射角の変化は、投射像TMの光学特性に顕著に影響する。そのため、こうしてレンズL6をチルトさせる場合は、その動き量を比較的小さくしても光学特性の変化範囲を大きく広げることができるという効果を奏する。特にこのチルトを、レンズL6の最も後方の面である光入射面と主光軸Zとの交点を中心に行うようにすれば、上記の効果がより大きくなる。
図5に示す非球面係数に関するデータには、非球面の面番号と、非球面に関する非球面係数を示す。非球面の形状は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸に垂直な方向の座標、光の進行方向を正、Rdyを近軸曲率半径として、図5に示した係数K、A、B、C、およびDを用いて次式で表わされる。なお、「e−n」は、「10のn乗」を意味する。
X=(1/Rdy)Y2/[1+{1−(1+K)(1/Rdy)2Y2}1/2]
+AY4+BY6+CY8+DY10
以上のように実施例1に関して説明した各データの記号、意味、記載方法は、特に断りがない限り後述する実施例2〜15に関しても同様であるので、以下では重複した説明は省略する。なお、図3〜図5に示す数値データには、適宜所定の桁でまるめた値も示してある。
図6には、実施例1の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを示す。図中の(a)は近点投射時、(b)は遠点投射時のスポットダイアグラムである。各スポットダイアグラムの左側に示す4つの数値のうち下側左右の数値(単位:MM、ミリメートル)は、画像表示面11における光線出射位置(X座標,Y座標)を示す。また上側左右の数値は、それらのX座標とY座標の最大物体高に対する相対値を示している。図6では、X座標が0.000でY座標が−1.30、−5.62、−9.94である3つの場合、X座標が3.456でY座標が−1.30、−5.62、−9.94である3つの場合、X座標が6.912でY座標が−1.30、−5.62、−9.94である3つの場合、の合計9つの場合についてスポットダイアグラムを示している。図中のスケールは(a)では20.0ミリメートル、(b)では30.0ミリメートルである。この図6より、本実施例の投射光学系を用いれば、9点の物体高について光学諸収差が良好に補正され得ることが分かる。
図7には、実施例1の投射光学系100を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を示す。図中の(a)は近点投射時、(b)は遠点投射時の歪曲形状を示している。
次に、実施例2の投射光学系について説明する。実施例2の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図1および図2に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図8に示す。実施例2の投射光学系について、構成要素の基本データを図9に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図10に、非球面係数に関するデータを図11に示す。
この実施例2ではレンズL7とレンズL8とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つのレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例2では図10に示す通り、レンズL7がシフトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例2では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図9に示すNo.16、17の面となる。なお、可動光学系を構成するこのレンズL7に入射する画像光の主光軸Zからの距離の変化が、投射像TMに与える影響は、該距離の変化に対して緩慢である。そのため、こうしてレンズL7をシフトさせる場合は、レンズL7を動かすことによる光学特性の変化範囲の調整を行い易くなる。
実施例2の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図12に示す。また、実施例2の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図13に示す。
次に、実施例3の投射光学系について説明する。実施例3の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図1および図2に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図14に示す。実施例3の投射光学系について、構成要素の基本データを図15に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図16に、非球面係数に関するデータを図17に示す。
この実施例3ではレンズL7とレンズL8とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つのレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例3では図16に示す通り、レンズL8がシフトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例3では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図15に示すNo.19、20の面となる。
実施例3の投射光学系を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図18に示す。また、実施例3の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図19に示す。
次に、実施例4の投射光学系について説明する。実施例4の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図1および図2に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図20に示す。実施例4の投射光学系について、構成要素の基本データを図21に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図22に、非球面係数に関するデータを図23に示す。
この実施例4ではレンズL7とレンズL8とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つのレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例4では図22に示す通り、レンズL9がシフトおよびチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例4では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図21に示すNo.21、22の面となる。
実施例4の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図24に示す。また、実施例4の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図25に示す。
次に、実施例5の投射光学系について説明する。実施例5の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図1および図2に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図26に示す。実施例5の投射光学系について、構成要素の基本データを図27に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図28に、非球面係数に関するデータを図29に示す。
この実施例5ではレンズL7とレンズL8とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つのレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例5では図28に示す通り、レンズL9、レンズL10、レンズL11、レンズL12および凹面鏡3がシフトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例5では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図27に示すNo.21、29の面となる。
実施例5の投射光学系を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図30に示す。また、実施例5の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図31に示す。
次に、実施例6の投射光学系について説明する。実施例6の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図1および図2に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図32に示す。実施例6の投射光学系について、構成要素の基本データを図33に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図34に、非球面係数に関するデータを図35に示す。
この実施例6ではレンズL7とレンズL8とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つのレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例6では図34に示す通り、レンズL10、レンズL11およびレンズL12がシフトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例6では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図33に示すNo.23、27の面となる。
実施例6の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図36に示す。また、実施例6の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図37に示す。
次に、実施例7の投射光学系について説明する。実施例7の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応している。実施例7の投射光学系について、構成要素の基本データを図40に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図41に、非球面係数に関するデータを図42に示す。
図40の基本データにおいて、「レンズ等」の欄には、図38および図39に示した光変調器の画像表示面11に形成される画像Mの面、カバーガラス12、プリズム4、開口絞りSt1、視野絞りSf、結像される第1中間像IM1、開口絞りSt2、第2中間像IM2、凹面鏡3、スクリーンSC上の位置となる投射像TMの面も含めて示している。それらについては、上記の記載順に従ってそれぞれ「OBJ」、「CG」、「PRISM」、「絞り1」、「出射絞り」、「中間像1」、「絞り2」、「中間像2」、「MIR」、「IMG」と表記している。また図40の基本データには、レンズ等の欄に「ダミー」なる要素(面)を挙げて面番号も与えているが、これは設計用に採った便宜上の面で、実際のレンズ構成においては存在しない。これらの表記は、以下で述べる実施例8〜15に関しても同様である。
この実施例7ではレンズL14とレンズL15とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例7では図41に示す通り、レンズL15がシフトおよびチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例7では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図40に示すNo.34、35の面となる。
この実施例7では、いずれも両面が非球面である負のメニスカスレンズL11、正のメニスカスレンズL14、負のメニスカスレンズL15、および反射面が非球面である凹面鏡3において、それぞれの非球面は下記の(数1)で定義される奇数次非球面とされている。この(数1)式においてzは非球面の光軸方向の座標、cは近軸曲率半径Rdyの逆数、rは光軸からの高さ、Kは円錐定数であり、図42に示す各次数の非球面定数Aiを用いて、座標zが求められる。
実施例7の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図43に示す。各スポットダイアグラムの左側に示す4つの数値のうち下側左右の数値(単位:MM、ミリメートル)は、画像表示面11における光線出射位置(X座標,Y座標)を示す。また上側左右の数値は、それらのX座標とY座標の最大物体高に対する相対値を示している。図43では、X座標が0.000でY座標が−3.41、−7.95、−12.5である3つの場合、X座標が3.629でY座標が−3.41、−7.95、−12.5である3つの場合、X座標が7.258でY座標が−3.41、−7.95、−12.5である3つの場合、の合計9つの場合についてスポットダイアグラムを示している。図中のスケールは(a)では10.0ミリメートル、(b)では62.5ミリメートルである。以上の点は、以下で述べる実施例8〜15に関しても同様である。この図43より、本実施例の投射光学系を用いれば、9点の物体高について光学諸収差が良好に補正され得ることが分かる。
また、実施例7の投射光学系100を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図44に示す。
次に、実施例8の投射光学系について説明する。実施例8の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図45に示す。実施例8の投射光学系について、構成要素の基本データを図46に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図47に、非球面係数に関するデータを図48に示す。
この実施例8ではレンズL14とレンズL15とが互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの2つレンズによって移動光学系が構成されている。また、この実施例8では図47に示す通り、レンズL14がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例8では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図46に示すNo.31、32の面となる。
実施例8の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図49に示す。また、実施例8の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図50に示す。
次に、実施例9の投射光学系について説明する。実施例9の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図51に示す。実施例9の投射光学系について、構成要素の基本データを図52に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図53に、非球面係数に関するデータを図54に示す。
この実施例9ではレンズL2〜L9のレンズ群、レンズL10〜L13のレンズ群、そしてレンズL14〜L15のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの3つレンズ群によって移動光学系が構成されている。また、この実施例9では図53に示す通り、レンズL15がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例9では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図52に示すNo.34、35の面となる。
実施例9の投射光学系を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図55に示す。また、実施例9の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図56に示す。
次に、実施例10の投射光学系について説明する。実施例10の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図57に示す。実施例10の投射光学系について、構成要素の基本データを図58に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図59に、非球面係数に関するデータを図60に示す。
この実施例10ではレンズL2〜L9のレンズ群、レンズL10〜L13のレンズ群、そしてレンズL14〜L15のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの3つレンズ群によって移動光学系が構成されている。
また、この実施例10では図59に示す通り、レンズL15がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例10では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図58に示すNo.34、35の面となる。特にこの場合はレンズL15がチルトすると、非球面であるその入射側のレンズ面34と、同じく非球面であるその出射側のレンズ面35が双方共チルトおよびシフトするようになっている。なおレンズL15はウェッジレンズであり、各レンズ面が主光軸Zに対してシフトおよびチルトした状態に配置される。具体的にNo.34の面は図57中で主光軸Zから下方向に0.006mmシフトし、かつ、同図中で反時計回りに0.281度回転するようにチルトし、No.35の面は同図中で主光軸Zから上方向に0.021mmシフトし、かつ、同図中で反時計回りに0.282度回転するようにチルトして配置される。
実施例10の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図61に示す。また、実施例10の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図62に示す。
次に、実施例11の投射光学系について説明する。実施例11の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図63に示す。実施例11の投射光学系について、構成要素の基本データを図64に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図65に、非球面係数に関するデータを図66に示す。
この実施例11ではレンズL2〜L9のレンズ群、レンズL10〜L13のレンズ群、そしてレンズL14〜L15のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらの3つレンズ群によって移動光学系が構成されている。またこの実施例11では図65に示す通り、レンズL15がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例11では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図64に示すNo.34、35の面となる。
この実施例11では特に上記レンズL15が、光入射側の面34および光出射側の面35が共に自由曲面である自由曲面レンズとされている。この自由曲面は、下に(数2)式として示す自由曲面多項式で光軸方向座標zが定義される曲面である。面34および35に関する自由曲面係数を図67に示す。なお(数2)式においてcは近軸曲率半径Rdyの逆数、rは光軸からの高さ、Kは円錐定数であり、図67に示す自由曲面係数を用いて、座標zが求められる。
実施例11の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図68に示す。また、実施例11の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図69に示す。
次に、実施例12の投射光学系について説明する。実施例12の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図70および図71に示す。この実施例12および後述する実施例13、14、15の投射光学系はいずれも、第1光学系1が変倍(ズーム)機能を有するものであり、図70には第1光学系1が広角端にある状態を(WIDE)の表示と共に示し、図71には第1光学系1が望遠端にある状態を(TELE)の表示と共に示している。
実施例12の投射光学系について、構成要素の基本データを図72に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図73に、非球面係数に関するデータを図74に示す。
この実施例12ではレンズL2〜L8のレンズ群、レンズL9、レンズL10、レンズL11〜L13のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによって変倍がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズ群およびレンズによって移動光学系が構成されている。この点の構成は、以下に述べる実施例13〜15においても同様である。図73には、この変倍によって面間隔が変わる面について、広角端にあるときの面間隔をWIDEの表示と共に示し、望遠端にあるときの面間隔をTELEの表示と共に示している。またこの実施例12では、レンズL14、レンズL15が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズL14およびL15が移動光学系を構成している。
またこの実施例12では図73に示す通り、レンズL15がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例12では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図72に示すNo.35、36の面となる。
実施例12の投射光学系を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図75に示す。この図75中の(a)、(b)はそれぞれ第1光学系1が広角端にある場合の近点投射時、遠点投射時のスポットダイアグラムであり、(c)、(d)はそれぞれ第1光学系1が望遠端にある場合の近点投射時、遠点投射時のスポットダイアグラムである。また、実施例12の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図76に示す。この図76中の(a)、(b)はそれぞれ第1光学系1が広角端にある場合の近点投射時、遠点投射時の歪曲形状図であり、(c)、(d)はそれぞれ第1光学系1が望遠端にある場合の近点投射時、遠点投射時の歪曲形状図である。
次に、実施例13の投射光学系について説明する。実施例13の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図77および図78に示す。この実施例13の投射光学系100も、第1光学系1が変倍(ズーム)機能を有するものであり、図77には第1光学系1が広角端にある状態を(WIDE)の表示と共に示し、図78には第1光学系1が望遠端にある状態を(TELE)の表示と共に示している。
実施例13の投射光学系100について、構成要素の基本データを図79に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図80に、非球面係数に関するデータを図81に示す。
この実施例13ではレンズL2〜L8のレンズ群、レンズL9、レンズL10、レンズL11〜L13のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによって変倍がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズ群およびレンズによって移動光学系が構成されている。図80には、この変倍によって面間隔が変わる面について、第1光学系1が広角端にあるときの面間隔をWIDEの表示と共に示し、第1光学系1が望遠端にあるときの面間隔をTELEの表示と共に示している。またこの実施例13では、レンズL14、レンズL15が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズL14およびL15も移動光学系を構成している。
またこの実施例13では図80に示す通り、レンズL11〜レンズL13がシフトによって偏芯して変倍する可動光学系を構成し、レンズL15がチルトによって偏芯してフォーカス調整する可動光学系を構成している。したがって本実施例13では、変倍用可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図79に示すNo.25、29の面となり、フォーカス調整用可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図79に示すNo.35、36の面となる。シフト量については、第1光学系1が広角端にある場合のシフト量をWIDEの表示と共に示し、第1光学系1が望遠端にあるときのシフト量をTELEの表示と共に示している。
実施例13の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図82に示す。また、実施例13の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図83に示す。図82および図83における表示の仕方は、実施例12に関して先に説明したものと同じである。
次に、実施例14の投射光学系について説明する。実施例14の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図84および図85に示す。この実施例14の投射光学系100も、第1光学系1が変倍(ズーム)機能を有するものであり、図84には第1光学系1が広角端にある状態を(WIDE)の表示と共に示し、図85には第1光学系1が望遠端にある状態を(TELE)の表示と共に示している。
実施例14の投射光学系100について、構成要素の基本データを図86に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図87に、非球面係数に関するデータを図88に示す。
この実施例14ではレンズL2〜L8のレンズ群、レンズL9、レンズL10、レンズL11〜L13のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによって変倍がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズ群およびレンズによって移動光学系が構成されている。図87には、この変倍によって面間隔が変わる面について、広角端にあるときの面間隔をWIDEの表示と共に示し、望遠端にあるときの面間隔をTELEの表示と共に示している。またこの実施例14では、レンズL14、レンズL15が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズL14およびL15も移動光学系を構成している。
またこの実施例14では図87に示す通り、レンズL10がシフトによって偏芯して変倍する可動光学系を構成している。したがって本実施例14では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図86に示すNo.23、24の面となる。シフト量については、第1光学系1が広角端にある場合のシフト量をWIDEの表示と共に示し、第1光学系1が望遠端にあるときのシフト量をTELEの表示と共に示している。
実施例14の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図89に示す。また、実施例14の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図90に示す。図89および図90における表示の仕方は、実施例12に関して先に説明したものと同じである。
次に、実施例15の投射光学系について説明する。実施例15の投射光学系の構成は、先に説明した通り、図38および図39に断面図を示した投射光学系100の構成と対応しており、その断面形状を図91および図92に示す。この実施例15の投射光学系も、第1光学系1が変倍(ズーム)機能を有するものであり、図91には第1光学系1が広角端にある状態を(WIDE)の表示と共に示し、図92には第1光学系1が望遠端にある状態を(TELE)の表示と共に示している。
実施例15の投射光学系100について、構成要素の基本データを図93に、位置や角度が変わる面あるいは構成要素に関するデータを図94に、非球面係数に関するデータを図95に示す。
この実施例15ではレンズL2〜L8のレンズ群、レンズL9、レンズL10、レンズL11〜L13のレンズ群が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによって変倍がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズ群およびレンズによって移動光学系が構成されている。図94には、この変倍によって面間隔が変わる面について、広角端にあるときの面間隔をWIDEの表示と共に示し、望遠端にあるときの面間隔をTELEの表示と共に示している。またこの実施例15では、レンズL14、レンズL15が互いに独立して主光軸Zに沿って移動し、それによってフォーカス調整がなされる。すなわち本実施例では、これらのレンズL14およびL15も移動光学系を構成している。
またこの実施例15では図94に示す通り、レンズL9がチルトによって偏芯して変倍する可動光学系を構成している。したがって本実施例15では、可動光学系の光入射面、光出射面はそれぞれ図93に示すNo.21、22の面となる。チルト角については、第1光学系1が広角端にある場合のチルト角をWIDEの表示と共に示し、第1光学系1が望遠端にあるときのチルト角をTELEの表示と共に示している。
実施例15の投射光学系100を用いてスクリーンSCに光線を投射した場合の、スクリーンSC上における光線のスポットダイアグラムを図96に示す。また、実施例15の投射光学系を用いてスクリーンSCに格子パターンを投射した場合の、スクリーンSC上における格子パターンの歪曲形状を図97に示す。図96および図97における表示の仕方は、実施例12に関して先に説明したものと同じである。
以上説明した通り本発明の投射光学系によれば、移動光学系の移動によってなされフォーカス調整の範囲(つまり投射距離の範囲)やフォーカス調整の範囲(つまり焦点距離の範囲)を、可動光学系を動かすことによって、移動光学系の移動だけで実現される範囲を超えてより広くすることが可能になる。この効果を考慮すれば可動光学系の移動は、少なくとも、移動光学系が有する合焦光学系が投射光学系の最短の投射距離に対応した位置、または最長の投射距離に対応した位置に配置されている状態下で動く、あるいは少なくとも、移動光学系が有する変倍光学系が投射光学系の最短の焦点距離に対応した位置、または最長の焦点距離に対応した位置に配置されている状態下で動くことが好ましい。さらに、本発明の投射光学系によれば可動光学系を動かすことによって像面湾曲も補正できるので、移動光学系が像面湾曲調整光学系を有する場合、可動光学系は、少なくとも、上記像面湾曲調整光学系が最もアンダーの像面湾曲を発生させる位置に配置されている状態下で、または最もオーバーの像面湾曲を発生させる位置に配置されている状態下で動くことが好ましい。
ここで図98に、以上説明した実施例1〜15の投射光学系100の主な仕様をまとめて示す。同図における上段の「焦点距離」中の「近点f」、「遠点f」、「偏芯FOCUS」、「偏芯ZOOM」はそれぞれ「近点投射時の全系の焦点距離」、「遠点投射時の全系の焦点距離」、「フォーカス調整する可動光学系の焦点距離」、「変倍する可動光学系の焦点距離」を意味する。また「偏芯f」は「フォーカス調整または変倍する可動光学系の焦点距離」を意味し、「第1光学系f1」は第1光学系1の焦点距離を意味する。したがって「|偏芯f|/|第1光学系f1|」は前述した(3)式における|f5|/|f1|に相当する。
一方、図98の下段の主光線高さに関する「主光線高さ(入射)」とは、可動光学系の最も後方の光入射面における主光線高さを意味し、「主光線高さ(出射)」とは、可動光学系の最も前方の光出射面における主光線高さを意味する。そして「上限」は、前述した「遠端部主光線の高さ」つまりY1を示し、「下限」は「近端部主光線の高さ」つまりY2を示している。また主光線高さに関連する「FOCUS」、「ZOOM」はそれぞれ、「移動光学系によってフォーカス調整がなされる場合」、「移動光学系によって変倍がなされる場合」を意味する。つまりここに記されている「FOCUS下限」は、フォーカス調整時に使用される可動光学系のY2を表し、「FOCUS上限」は、フォーカス調整時に使用される可動光学系のY1を表し、「ZOOM下限」は、変倍時に使用される可動光学系のY2を表し、「ZOOM上限」は、変倍時に使用される可動光学系のY1を表す。したがって、この下段における「(上限−下限)/|近点f|は、前述した条件式(1)における「(Y1−Y2)/|f|」を、特に投射光学系100の全系の焦点距離fを近点投射時の焦点距離とした場合に相当する。なお図98では、上記近点投射時の全系の焦点距離fを、特に広角端における値として計算した例を挙げている。
また、同じく図98の下段の「有効径比率」は、前述した式(2)におけるY3/Y1を示している。つまり、この有効径比率の欄に記した「FOCUS上限」とは、フォーカス調整時に使用される可動光学系の最も後方の光入射面と最も前方の光出射面(図1の例ではレンズL6の面Laと面Lb)に関する遠端部主光線入射位置P1と主光軸Zとの間の距離である入射位置距離Y1と、遠端部主光線出射位置P3と主光軸Zとの間の距離である出射位置距離Y3との比を表し、「ZOOM上限」とは、変倍時に使用される可動光学系に関する上記と同様の入射位置距離Y1と出射位置距離Y3との比を表している。
この図98の表から、条件式(1)が全ての実施例で満足されており、条件式(3)が実施例5を除くその他全ての実施形態で満足されていることが確認される。また、条件式(2)も実施例5、6を除くその他全ての実施例で満足されていることが確認される。
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明の投射光学系は、上記実施例のものに限られるものではなく種々の態様の変更が可能であり、例えば各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数を適宜変更することが可能である。
また、本発明のプロジェクタ装置も、例えば、用いられるライトバルブや、光束分離または光束合成に用いられる光学部材について種々の態様の変更が可能である。