以下に、図面を参照しつつ、光沢制御装置の一実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
[1.光沢制御メカニズム]
本開示では、記録媒体がニップ部で加熱部材と加圧部材とによって挟持され、当該挟持が解消される際の加熱部材に対する記録媒体の付着力が制御されることによって、当該記録媒体における画像を形成された面(以下、「画像形成面」ともいう)の光沢度が制御される。図1〜図3は、加熱部材に対する記録媒体の付着力の制御の一例を模式的に示す図である。
図1には、記録媒体の画像形成面の光沢度が比較的低い例が示される。図1の右上部には、ニップ部の拡大図が示される。当該拡大図では、記録媒体の一例である紙130と、紙130上に形成されたトナー層120と、紙130上のトナー層120を定着させるための加熱部材100とが示されている。加熱部材100は、たとえば、ローラーやベルトである。なお、ニップ部では、紙130は、加熱部材と加圧部材とによって挟持されるが、図1では、加圧部材の図示が省略されている。
図1の左上部には、ニップ前でトナーが溶融していない状態が拡大されて示されている。トナー層120は、ワックス122と、他の成分121とを含む。他の成分121は、たとえば顔料である。
図1の右下部には、加熱部材と加圧部材とによる紙130の挟持が解消される際の、紙130の表面の拡大図が示される。図1の例では、トナー層120において、加熱部材100に当接する面におけるワックス122の染み出し量が比較的少ない。加熱部材と加圧部材とによる挟持が解消される際、トナー層120の加熱部材に対する付着力は比較的高い。したがって、上記挟持が解消される際、トナー層120が加熱部材100から剥がれにくく、これにより、上記挟持が解消された後のトナー層120の表面状態は、比較的凹凸が大きい。これにより、図1の例では、紙130上に形成された画像の光沢度が比較的低い。
図2には、記録媒体の画像形成面の光沢度が比較的高い例が示される。図2の右上部には、図1の右上部と同様に、ニップ部の拡大図が示される。図2の左上部には、ニップ前でトナーが溶融していない状態の拡大図が示される。図2の例では、図1の例よりも、トナー層120におけるワックス122の含有率が高い。
図2の右下部には、図1の右下部と同様に、加熱部材と加圧部材とによる紙130の挟持が解消される際の、紙130の表面が示される。図2の例では、トナー層120におけるワックス122の含有率が高いため、トナー層120が加熱部材100から剥がれやすく、これにより、上記挟持が解消された後のトナー層120の表面では比較的凹凸が少なく、紙130の画像形成面の光沢度が比較的高い。
図3には、記録媒体上のワックスの染み出し量と記録媒体の画像形成面の光沢度との関係の一例が示される。図3のグラフの横軸は、記録媒体上のワックスの染み出し量を表す。ワックスの染み出し量は、一例では、画像形成面上に付与されるトナーのワックス含有量によって調整される。他の例では、ワックス含有量が異なる複数のトナーの画像形成面上に付与される割合によって調整される。線Lxで示されるように、ワックスの染み出し量に応じて、画像形成面の光沢度が変化する。
図3の例では、ワックスの染み出し量が値Vx以上の領域では、ワックスの染み出し量が多くなるほど、ニップ部から排出される際に(ニップ部による挟持が解消される際に)記録媒体が加熱部材からより分離しやすくなり、画像形成面の光沢度が高くなる。「分離しやすい」ことは、「剥がれやすい」と言うこともできる。本実施の形態では、ワックスの染み出し量を値V以上で制御して、記録媒体上の画像の光沢度を制御する。
[2.光沢制御方法(1)]
図4は、本実施の形態における画像の光沢制御方法の一例を説明するための図である。図4の例では、後述する「画像形成領域」の全域にワックス入りトナーが付与され、光沢度を下げたい部分にワックスレストナーが付与される。以下、図4中の4種類の条件A1〜A4とともに、光沢制御方法の一例を説明する。
条件A1では、トナー層120は、ワックス入りトナー125を含む。条件A2では、トナー層120は、ワックス入りトナー125に加えて、ワックスレストナー126を含む。
なお、トナー層120は、紙130上にトナーによって画像が形成される場合、紙130上に画像形成用に付与されたトナーの上に、形成された層であることが意図される。
条件A1と比較して、条件A2では、紙130が加熱部材100と当接する面にワックスレストナー126が付与されることにより、当該面においてワックスが染み出す量が少ない。これにより、条件A2では、条件A1よりも画像形成面の光沢度が低い。
条件A3では、条件A2よりも、トナー層120がより多くのワックスレストナー126を含む。これにより、条件A3では、条件A2よりも画像形成面の光沢度が低い。
一例では、ワックス入りトナー125とワックスレストナー126の双方とも、顔料を含まないトナーによって構成される。すなわち、本実施の形態では、画像を形成するための顔料入りのトナーに加えて、ワックス入りトナー125とワックスレストナー126とを用いて、紙130上の画像の光沢度を制御する。
図4には、ワックスレストナーの付与量と画像の光沢度との関係を表すグラフG01がさらに示されている。一例では、紙130上の画像を形成された領域(以下、「画像形成領域」ともいう)の全域に対してワックス入りトナー125が付与され、さらに、光沢度を低下させたい領域にワックスレストナー126が付与される。画像形成領域における、単位面積当たりのワックスレストナーの付与量が、図4のグラフG01において横軸として示される。
グラフG01では、線L01で示されるように、横軸の値が値「V0」に到達するまでは、ワックスレストナーの付与量に従って光沢度が低下する。本実施の形態では、ワックスレストナーの付与量に従って光沢度が低下する範囲(すなわち、「0」から「V0」まで)でワックスレストナーの付与量を調整することにより、画像の光沢が制御される。
条件A4は、ワックスレストナーの付与量が「V0」を超えた領域に対応する。条件A4の下では、ワックスレストナーの付与量が多すぎることにより、当該付与量の増加に伴って、形成される画像の光沢度が上昇する領域に対応する。このような領域では、染み出すワックスが少なすぎて記録媒体を加熱部材から分離するのが難しくなるため、このような領域は、画像の光沢度の制御の対象外とされることが好ましい。
なお、本明細書において、「ワックスレストナー」は、「ワックス入りトナー」よりもワックス(離型剤)の含有量が低いトナーの一例である。「ワックスレストナー」と「ワックス入りトナー」との組合せの代わりに、ワックス(離型剤)の含有量が互いに異なる2種類のトナーが採用されてもよい。「ワックス入りトナー」は、第1のトナーの一例であり、「ワックスレストナー」は、第2のトナーの一例である。
[3.光沢制御方法(2)]
図5は、本実施の形態における画像の光沢制御方法の他の例を説明するための図である。図5の例では、十分に高い光沢が出る程度に多くワックスを含有するトナー(トナーaとする)を第1のトナーとして、十分に低い光沢が出る程度に少なくワックスを含有するトナー(トナーbとする)を第2のトナーとして用いる。部分ごとに、必要とされる光沢度に応じて、トナーaとトナーbの付与量の割合が調整される。以下、図5中の4種類の条件B1〜B4とともに、光沢制御方法の他の例を説明する。
条件B1では、トナーaの割合が最も高い。条件B4では、トナーbの割合が最も高い。トナーaの割合は、条件B1において最も高く、その次に条件B2において高く、その次に条件B3において高く、条件B4では最も低い。
トナーaの割合が高いほど、加熱部材100と当接する部分におけるワックスの染み出し量が多くなる。加熱部材100と当接する部分における、ワックスの染み出し量が多くなるほど、紙130に対する加熱部材と加圧部材との挟持が解消されるときに、紙130は加熱部材100から剥がれやすくなり、これにより、紙130上に形成される画像の光沢度が高くなる。
図5には、さらに、紙130の表面のトナーbの割合と紙130上の画像の光沢度との関係を示すグラフG02が示される。グラフG02において線L02で示されるように、トナーbの割合が高くなるほど、紙130上に形成される画像の光沢度が低くなる。
[4.光沢制御装置の構成]
本実施の形態では、光沢制御装置は、画像形成装置によって構成される。図6は、光沢制御装置の一例である画像形成装置のハードウェアブロック図である。図6を参照して、光沢制御装置の一例として、画像形成装置の構成を説明する。
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置であって、たとえば、カラーコピー機またはMFP(Multi-Functional Peripheral)によって実現される。画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像形成部30、画像処理部40、用紙搬送部50、定着部60、通信部71、記憶部72及び制御部1Aを備える。
制御部1Aは、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ等の記憶装置で構成される。本実施の形態では、後述するように「光沢度テーブル」が参照される。図6では、記憶部72において、光沢度テーブルを格納する部分が「光沢度テーブル格納部720」として示される。
制御部1Aは、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。通信部71は、たとえばネットワークカード等の通信制御カードによって実現される。制御部1Aは、紙130に形成するべき画像のデータ(画像データ)を取得し、取得した画像データに基づいて紙130上に画像を形成する。制御部1Aは、例えば外部の装置から送信された画像データを受信することで、入力画像データを取得する。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置および原稿画像走査装置(スキャナー)等の要素を備える。自動原稿給紙装置は、原稿トレイに載置された原稿を搬送機構により搬送して原稿画像走査装置へ送り出す。自動原稿給紙装置が原稿トレイに載置された多数枚の原稿を連続して原稿画像走査装置に送り出すことにより、原稿画像走査装置は、多数数の原稿の画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
原稿画像走査装置は、自動原稿給紙装置からコンタクトガラス上に搬送された原稿又はコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサーの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部は、原稿画像走査装置による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部40において所定の画像処理が施される。
図7は、画像形成装置における、画像形成部30および定着部60の要部の構成の一例を示す図である。図7を参照して、画像形成部30は、中間転写ベルト301と、中間転写ベルト301にトナーを供給する6種類の画像形成ユニット311,312,313,314,315,316と、定着部60とを含む。中間転写ベルト301は、ローラー302,303に張架されている。
画像形成ユニット311は、クリアトナー(C(1))、すなわち、顔料を含まないトナーを供給する。画像形成ユニット312は、画像形成ユニット311のクリアトナー(C(1))よりもワックス含有量が高い、クリアトナー(C(2))を供給する。クリアトナー(C(1))は、図4の「ワックス入りトナー」の一例であり、また、図5の「トナーb」の一例である。すなわち、クリアトナーC(1)は、ワックス(離型剤)を含まないトナーであってもよい。クリアトナー(C(2))は、図4および図5の「ワックス入りトナー」の一例である。
画像形成ユニット313は、イエロー(Y)のトナーを供給する。画像形成ユニット314は、マゼンタ(M)のトナーを供給する。画像形成ユニット315は、シアン(C)のトナーを供給する。画像形成ユニット316は、ブラック(K)のトナーを供給する。
ローラー302,303が図7の時計方向に回転することにより、中間転写ベルト301上に、まず画像形成ユニット311がトナーを付与し、次に画像形成ユニット312がトナーを付与し、その後、画像形成ユニット313〜316がトナーを付与する。
図7では、搬送経路300は、紙130が搬送される経路を表す。搬送経路300上には、ローラー303とともに紙130を支持するローラー304が設けられる。ローラー303とローラー304は、中間転写ベルト301と紙130とを挟持する。このとき、紙130上に、中間転写ベルト301上に形成されたトナー像が転写される。
紙130上に転写されるトナー像において、画像形成ユニット313〜316によって付与されたトナー像が最も紙130の近くに位置する。その次に、画像形成ユニット312によって付与されたクリアトナー(C(2))が紙130の近くに位置する。画像形成ユニット311によって付与されたクリアトナー(C(1))が最も紙130から遠くに位置する。
トナー像を転写された紙130は、定着部60へと送られる。
定着部60は、定着ベルト601と、加熱ローラー602と、上加圧ローラー603と、下加圧ローラー604とを含む。加熱ローラー602はヒーターを内蔵されている。定着ベルト601は、加熱ローラー602と上加圧ローラー603に張架され、加熱ローラー602により加熱され、加熱ローラー602,上加圧ローラー603が図示せぬ駆動機構によって時計方向に回転することにより、時計方向に回転する。定着ベルト601は、加熱部材の一例である。
下加圧ローラー604は図示せぬ駆動機構によって反時計方向に回転する。下加圧ローラー604は、加圧部材の一例である。
搬送経路300上の紙130は、定着ベルト601と下加圧ローラー604とによって構成されるニップ部において、定着ベルト601と下加圧ローラー604とにより挟持された後、これらの回転に従って図7の左方へと搬送される。
図6に戻って、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21及び操作部22として機能する。表示部21は、制御部1Aから入力される表示制御信号に従って、各種操作画面・画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示、を行う。操作部22は、ソフトウェアキーであってもよいし、ハードウェアキーであってもよいし、これらの組合せであってもよい。一例では、操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部1Aに出力する。
画像処理部40は、入力画像データに対して、初期設定又はユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部40は、制御部1Aの制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部40は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された入力画像データに基づいて、画像形成部30が制御される。
用紙搬送部50は、給紙部、排紙部、及び搬送経路部等を備える。給紙部を構成するの複数の給紙トレイユニットのそれぞれには、坪量やサイズ等に基づいて識別された紙130(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部は、レジストローラー対などの複数の搬送ローラー対を有する。
図8は、画像形成装置1における、6種類のトナーの付与量の制御ブロックを模式的に示す図である。図8に示されるように、画像形成部30は、画像形成ユニット311〜316のそれぞれを制御する出力制御部321〜326を備える。出力制御部321〜326は、たとえば、画像形成ユニット311〜316のそれぞれを制御するための制御基板によって構成される。制御部1Aは、出力制御部321〜326のそれぞれを介して、画像形成ユニット311〜316のそれぞれによるトナーの付与量を制御する。
制御部1Aは、トナーの付与量を制御する際、画像データと光沢度テーブルとを参照する。画像データは、紙130上に形成される画像を規定する。光沢度テーブルは、紙130上に形成される画像の光沢度と、ワックス入りトナーおよび/またはワックスレストナーの単位面積当たりの付与量を規定する。一例では、制御部1Aは、画像データを参照して、画像形成ユニット313〜316によるトナーの付与態様を制御し、光沢度テーブルと目標とされる光沢度とを参照して、画像形成ユニット311,312によるトナーの付与態様を制御する。
光沢度テーブルの一例は、図4のグラフG01において線L01によって規定される、ワックスレストナーの付与量と光沢度との関係を規定する。光沢度テーブルの他の例は、図5のグラフG01において線L02によって規定される、トナーbの割合と光沢度との関係を規定する。
なお、本明細書において「テーブル」は複数の物理量の関係を表す情報の一例である。トナーの付与量と光沢度との関係が格納される態様はテーブル形式に限定されない。
定着ベルト601は、トナー像が形成された紙130に接触して、当該トナー像を紙130に定着温度(例えば、160〜200[℃])で加熱定着する。ここで、定着温度とは、紙130上のトナーを溶融するのに必要な熱量を供給しうる温度であり、画像形成される紙130の紙種等によって異なる。
定着ベルト601は、たとえば、厚さが50μmのPI(ポリイミド)によって外径110mmの円筒状に構成された基材と、基材の表面(外周面)上に積層された弾性層と、弾性層の表面(外周面)上に積層された離型層とを有している。定着ベルト601は加熱ローラー602および上加圧ローラー603に所定のテンションで巻き掛けられることにより、水平方向に沿った長円形状になっている。定着ベルト601の弾性層は、厚さ200μmのシリコーンゴムによって構成されており、離型層は、厚さが30μmのPFAチューブ(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体のチューブ)によって構成されている。このような構成により、定着ベルトの熱容量は、比較的小さい。
加熱ローラー602は、定着ベルト601を加熱する。加熱ローラー602は、定着ベルト601を加熱する加熱源(ハロゲンヒーター)を内蔵している。加熱源の温度は、制御部1Aによって制御される。加熱源によって加熱ローラー602が加熱され、その結果、定着ベルト601が加熱される。
加熱ローラー602は、例えば円筒状の芯金の外周面(表面)にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)コートが積層されており、外径が60mmになっている。芯金は、厚さが1mmのアルミニウム板によって構成されている。このような構成の加熱ローラー602の熱容量は、比較的小さい。
加熱ローラー602の内部には、電気−熱変換方式で加熱ローラーを加熱する複数のヒーターランプが設けられている。ヒーターランプのいずれか1つまたは複数によって加熱ローラー602が加熱されると、加熱ローラー602に巻き掛けられて走行する定着ベルト601が加熱され、加熱された定着ベルト601によって、定着ニップ(ニップ部)を通過する紙130が加熱される。ヒーターランプは、例えばハロゲンヒーターランプによって構成されており、加熱ローラー602の軸心を中心とした一定半径の円周上に、それぞれが周方向に等しい間隔をあけた状態で、加熱ローラー602の軸心に沿って配置されている。ヒーターランプの定格電力は、たとえば計1500Wである。
ヒーターランプは、電力が供給されることによって点灯(発熱)状態になり、供給される電力にほぼ比例した発熱量で加熱ローラー602を加熱する。複数のヒーターランプは、たとえば290mmという同じ長さを有する。複数のヒーターランプのそれぞれでは、定着ベルト601における幅方向(用紙の搬送方向に直交する方向)の両側の各端部での定着性を確保するために、長手方向の両側の各端部における配光(光の強度、加熱強度に相当)が、長手方向の中央部における配光よりも大きくなっている。本実施形態では、ヒーターランプのそれぞれの両側の各端部における20mmの長さの部分の配光は、両側の端部以外の長さ250mmの中央部の配光を100%とすると、それぞれ115%になっている。
加熱ローラー602の近傍には、定着ベルト601の表面温度を検出する温度センサー(図示略)が設けられている。温度センサーは、定着ベルト601における走行方向の上流側部分に対向して配置されている。温度センサーとしては、たとえば非接触サーミスターが使用される。
上加圧ローラー603は、定着部60における主駆動源(図示略)により駆動回転する下加圧ローラー604に定着ベルト601を介して圧接される。下側定着部60Bは、例えば裏面側支持部材である下加圧ローラー604を有する(ローラー加圧方式)。制御部1Aは、主駆動源(駆動モーター)を制御して、下加圧ローラー604を反時計回り方向に回転させる。駆動モーターの駆動制御(例えば、回転のオン/オフ、周速度等)は、制御部1Aによって行われる。下加圧ローラー604には、ハロゲンヒーター等の加熱源(図示略)が内蔵されている。この加熱源が発熱することにより、下加圧ローラー604は加熱される。制御部1Aは、加熱源に供給する電力を制御し、下加圧ローラー604を所定温度(例えば、80〜120[℃])に制御する。
上加圧ローラー603は、たとえば、アルミニウム製(直径30mm)の芯金と、芯金の外周面(表面)上に15mmの厚さで積層された弾性層とを有している。弾性層は、たとえばJIS A硬度10度のシリコーンゴムによって構成されている。上加圧ローラー603がこのように軟らかい弾性層を有することによって、下加圧ローラー604と圧接した時にニップ部で大きく変形して、ニップ部が定着用に十分な面積を持ち得る。
下加圧ローラー604は、定着ベルト601を介して上加圧ローラー603に所定の定着荷重(例えば、2650[N])で圧接される。このようにして、定着ベルト601と下加圧ローラー604との間には、紙130を狭持して搬送する定着ニップが形成される。下加圧ローラー604が駆動回転すると、定着ベルト601が時計回り方向に従動回転する。これに伴い、上加圧ローラー603は、時計回り方向に従動回転する。
下加圧ローラー604は、たとえば、アルミニウム製(厚さ5mm)の芯金と、芯金の外周面(表面)上に積層された弾性層と、弾性層の外周面(表面)上に積層された離型層(図示していない)とを有している。弾性層はシリコーンゴムによって構成されている。離型層は、例えば厚さが30μmのPFAチューブによって構成されている。このように、下加圧ローラー604は、厚さ5mmのアルミニウム製の芯金を有することによって高剛性に構成されており、しかも、定着ベルトよりも大きな熱容量になっている。下加圧ローラー604は、長手方向中央部になるほど径が小さい、いわゆる逆クラウン形状を有する。端部の外形をD1、中央部の外形をD2としたときに両者の差分を逆クラウン量とする。逆クラウン量は0.1〜0.8mm程度に設定される。下加圧ローラー604は、駆動部によって、所定の表面速度で回転される。
定着部60は、上加圧ローラー603を回転させる駆動源と下加圧ローラー604を回転させる駆動源とを有している。これら駆動源としては、たとえば、一般的な交流モーターやDCブラシレスモーターが使用され得る。DCブラシレスモーターは構造的には交流モーターの永久磁石式同期モーターと類似の構成を有し、回転子に永久磁石を使用し、回転子の回転位置をホール素子などでセンシングして参照して回転磁界を発生しこれをコントロールすることで、トルクや速度が制御され得る。これらの駆動源には、駆動制御装置が接続されており、駆動制御装置によって速度等が制御され得る。
図示しない給紙トレイユニットに収容されている紙130は、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路300上の種々のローラーにより画像形成部30に搬送される。このとき、画像形成部30の直前に設置されているレジストローラー対が配設されたレジストローラー部により、給紙された紙130の傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部30において、中間転写ベルト301のトナー像が紙130の一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された紙130は、排紙ローラーを備えた排紙部により機外に排紙される。なお、機外に排紙された用紙は、例えば、排紙トレイ上に排紙される。また、複数の印刷用紙に対して連続的に画像形成を行う連続印刷時においては、複数の用紙が排紙トレイ上に積載される。
[5.光沢制御方法(1)に従った制御]
図9および図10は、図4を参照して説明された光沢制御方法に従って紙130の画像形成面の光沢度を制御するために実行する処理のフローチャートである。図4の光沢制御方法では、画像形成領域の全域にワックス入りトナーが付与され、光沢度を下げたい部分にワックスレストナーが付与される。各フローチャートに示された処理は、たとえばCPU101が所与のプログラムを実行することによって実現される。
(図9:ワックスレストナーの付与態様を制御)
図9は、ワックスレストナーの付与態様を制御する処理を表す。ステップSA10にて、CPU101は、画像形成ユニット313〜316によって画像形成される画像について、部分ごとに、目標の光沢度を読み出す。本実施の形態では、たとえば、画像データが、目標の光沢度を特定する方法を含む。より具体的には、画像データは、形成される画像の部分ごとに目標の光沢度を特定する情報を含む。一例では、画像データは、背景部分の画像情報と、当該背景部分の目標光沢度と、文字部分の画像情報と、当該文字部分の目標光沢度とを含む。
ステップSA20にて、CPU101は、ステップSA10において読み出された部分ごとの目標光沢度に基づいて、ワックスレストナーを紙130上に付与するパターン(第2無色トナーパターン)を生成する。CPU101は、第2無色トナーパターンの生成において、図4のグラフG01に示された関係を利用して、各部分のワックスレストナーの付与量を決定する。
ステップSA30にて、CPU101は、出力制御部321を、ステップSA20において生成されたパターンでワックスレストナーを付与するように制御する。これにより、画像形成ユニット311は、ステップSA20において生成されたパターンで、ワックスレストナーを紙130上に付与する。一例では、目標光沢度が低い部分ほど多くのワックスレストナーが付与される。
(図10:ワックス入りトナーの付与態様を制御)
図10は、ワックス入りトナーの付与態様を制御する処理を表す。ステップSB10にて、CPU101は、画像データから、紙130上に有色トナーによって形成される画像のパターンを読み出す。
ステップSB20にて、CPU101は、ステップSB10において読み出された画像のパターンに基づいて、ワックス入りトナーを紙130上に付与するパターン(第1無色トナーパターン)を生成する。
ステップSB30にて、CPU101は、出力制御部321を、ステップSB20において生成されたパターンでワックス入りトナーを付与するように制御する。これにより、画像形成ユニット312は、ステップSB20において生成されたパターンで、ワックス入りトナーを紙130上に付与する。
以上、図9および図10を参照して説明された処理によれば、紙130上に、画像形成ユニット313〜316によって形成された有色トナーの画像の上に、画像形成ユニット312によってワックス入りトナーが付与され、さらに、低い光沢度が要求される部分に、画像形成ユニット311によってワックスレストナーが付与される。
[6.光沢制御方法(2)に従った制御]
図11は、図5を参照して説明された光沢制御方法に従って紙130の画像形成面の光沢度を制御するために実行する処理のフローチャートである。図5の光沢制御方法では、画像形成領域において、部分ごとに、必要とされる光沢度に応じて、トナーaとトナーbの付与量の割合が調整される。図11のフローチャートに示された処理は、たとえばCPU101が所与のプログラムを実行することによって実現される。
図11を参照して、ステップSC10にて、CPU101は、画像形成ユニット313〜316によって画像形成される画像について、部分ごとに、目標の光沢度を読み出す。
ステップSC20にて、CPU101は、ステップSC10において読み出された目標光沢度に基づいて、画像の部分ごとに、トナーaとトナーbを付与する割合を決定する。CPU101は、当該割合の決定に、図5のグラフG02に示された関係を利用する。
ステップSC30にて、CPU101は、ステップSC20において決定された各部分の割合に基づいて、トナーbを紙130上に付与するパターン(第2無色トナーパターン)を生成する。当該パターンの決定において、予め定められたトナーbとトナーaの単位面積当たりの総量が利用されてもよい。
ステップSC40にて、CPU101は、出力制御部321を、ステップSC30において生成されたパターンでトナーbを付与するように制御する。これにより、画像形成ユニット311は、ステップSC30において生成されたパターンで、トナーbを紙130上に付与する。一例では、目標光沢度が低い部分ほど多くのトナーbが付与される。
ステップSC50にて、CPU101は、ステップSC20において決定された各部分の割合に基づいて、トナーaを紙130上に付与するパターン(第1無色トナーパターン)を生成する。当該パターンの決定において、予め定められたトナーbとトナーaの単位面積当たりの総量が利用されてもよい。
ステップSC60にて、CPU101は、出力制御部322を、ステップSC50において生成されたパターンでトナーaを付与するように制御する。これにより、画像形成ユニット311は、ステップSC50において生成されたパターンで、トナーaを紙130上に付与する。
[7.光沢制御装置の構成の変形例]
図6〜図8を参照して説明された例では、光沢制御装置は、画像形成装置として構成された。なお、光沢制御装置は、画像形成手段を備えていなくてもよい。すなわち、既に画像を形成された紙130に対して無色トナー(シアン等の顔料を含まないトナー)を付与することにより、当該紙130の画像形成面の光沢度を制御してもよい。
(変形例(1))
図12は、光沢制御装置の1つ目の変形例の構成を示す図である。図12には、光沢制御装置1200と、画像形成装置1210と、画像データ出力装置1220とを含む画像形成システムが示されている。
画像形成装置1210は、たとえば、いわゆるプリンターとして実現される。画像データ出力装置1220は、画像形成装置1210に対して、画像データに従った有色画像を紙130上に形成することを指示する。これに応じて、画像形成装置1210は、紙130上に有色画像を形成する。その後、画像形成装置1210は、光沢制御装置1200に向けて、有色画像を形成された紙130を搬送する。
図12の光沢制御装置1200は、画像形成ユニット311,312および定着部60に加えて、制御部1201およびスキャナー1202を含む。光沢制御装置1200の外郭には、画像形成装置1210から搬送される紙130を受け付ける挿入口1209が形成されている。紙130は、挿入口1209を介して光沢制御装置1200内の搬送経路300へと導入される。
制御部1201は、たとえばCPUなどの情報処理機器によって構成され、画像形成ユニット311,312を制御する。図12の例では、図9および図10の処理、または、図11の処理は、制御部1201によって実行される。
制御部1201は、画像データ出力装置1220または画像形成装置1210から、画像データを取得し、当該画像データを利用して、第1無色トナーパターンおよび第2無色トナーパターン(図9〜図11)を生成する。
スキャナー1202は、搬送経路300上の紙130の画像パターンを検出する。制御部1201は、スキャナー1202からの検出出力に基づく画像パターンの位置(またはタイミング)情報を利用して、画像形成ユニット311,312が中間転写ベルト301にトナーを付着する位置を制御する。
図12に示された例では、光沢制御装置1200は、いかなる方式で形成された画像に対してもトナーを付与し得る。すなわち、画像形成装置1210における印刷方式は、オフセット印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷など、いかなる方式であってもよい。また、画像形成装置1210で画像形成していない、何も画像が印刷されていない状態の紙を光沢制御装置1200に入力してもよい。
画像データ出力装置1220では画像データに基づいて、画像各部の光沢度を決定し、決定された光沢度を光沢制御装置に送る。光沢の決定方法の具体例は、たとえば以下の例1〜例4として説明される。制御部1201は、画像データ出力装置1220から受信した光沢度が実現されるように、また、スキャナーで読み取った画像の位置に整合する位置に、2種の無色トナーを紙130上に付与する。
例1:画像データ(RGBデータ)から、輝度情報(例えばL*値)を演算して、輝度値と比例する光沢値とする。比例定数は、たとえば、予めユーザーが光沢制御装置1200に対して設定する。
例2:紙130上に形成された各部の画像の種類(写真、絵画、文字、等)を判別し、写真部・絵画部は高光沢になり、文字部は低光沢になるように、2種の無色トナーを付与する。高光沢と低光沢のそれぞれに対応する光沢度は、たとえば、予めユーザーが光沢制御装置1200に対して設定する。
例3:制御部1201は、AI(Artificial Intelligence)等の機械学習によって画像パターンとそれにとって最適な光沢値を学習し、当該学習によって生成されたモデルを利用して紙130上に形成された各部の画像の種類を決定し、各部の適切な光沢値を決定する。
例4:光沢制御装置1200は、紙130上に形成された画像を表示するモニターを備える。モニターに表示された画像を見ながら、ユーザーが、光沢制御装置1200に対して、各部の光沢度を設定する。画像の表示は、画像データ出力装置1220から送信された画像データの表示であってもよいし、スキャナー1202によって読み取られた画像の表示であってもよい。
(変形例(2))
図13は、光沢制御装置の2つ目の変形例の構成を示す図である。図13には、光沢制御装置1300が示されている。
図13の光沢制御装置1300は、画像形成ユニット311,312および定着部60に加えて、制御部1301、スキャナー1302、入力部1303、決定部1304、ディスプレイ1305、および、挿入口1309を含む。既に画像を形成された紙130は、挿入口1309を介して光沢制御装置1300内の搬送経路300へと導入される。
制御部1301および決定部1304は、それぞれ、たとえばCPUなどの情報処理機器によって構成される。決定部1304は、紙130上の画像形成面の各部の光沢度を決定する。制御部1301は、画像形成ユニット311,312を制御する。図13の例では、図9および図10の処理、または、図11の処理は、制御部1301によって実行される。
入力部1303は、タッチパネル、キーボード、マウス等の各種の入力機器によって構成される。入力部1303は、外部からの情報の入力を受け付ける通信機器によって構成されてもよい。制御部1301は、スキャナー1302によって読み取られた画像と、入力部1303から入力された各部の光沢度の設定値とを用いて、第1無色トナーパターンおよび第2無色トナーパターン(図9〜図11)を生成する。
スキャナー1302は、搬送経路300上の紙130の画像パターンを検出する。制御部1301は、スキャナー1302からの検出出力に基づく画像パターンの位置(またはタイミング)を利用して、画像形成ユニット311,312が中間転写ベルト301にトナーを付着する位置を制御する。
図13に示された例では、光沢制御装置1300は、いかなる方式(オフセット印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷など、いかなる方式)で形成された画像に対してもトナーを付与し得る。また、何も画像が印刷されていない状態の紙を光沢制御装置1300に入力してもよい。
決定部1304は、画像各部の光沢度を決定し、光沢度データを制御部1301に送る。光沢の決定方法の具体例は、たとえば上記の例1〜例4として説明される。制御部1301は、決定部1304から入力された光沢度が実現されるように、また、スキャナーで読み取った画像の位置に整合する位置に、2種の無色トナーを紙130上に付与する。
[8.トナーの製造例]
<樹脂分散液の製造例1>
テレフタル酸85質量部、トリメリット酸6質量部、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物250質量部、を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド0.1質量部を添加し、窒素ガス気流下で約180℃で8時間撹拌反応を行った。更にチタンテトラブトキサイド0.2質量部を添加し温度を約220℃に上げ6時間撹拌反応を行った後、反応容器内を10mmHgまで減圧し、減圧下で反応を行いポリエステル樹脂〔A1〕を得た。
ポリエステル樹脂〔A1〕のガラス転移点(Tg)は59℃、重量平均分子量(Mw)は9,000であった。
非晶性ポリエステル樹脂〔A1〕200質量部を酢酸エチル200質量部に溶解し、この溶液を撹拌しながら、イオン交換水800質量部にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるよう溶解させた水溶液をゆっくりと滴下した。この溶液を減圧下、酢酸エチルを除去した後、アンモニアでpHを8.5に調整した。その後、固形分濃度を20質量%に調整した。これにより、水系媒体中にポリエステル樹脂〔A1〕の微粒子が分散された非晶性ポリエステル樹脂〔A1〕の微粒子の分散液を調製した。
<樹脂分散液の製造例2>
ドデカン二酸315質量部、1,6−ヘキサンジオール220質量部を、撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド0.1質量部を添加し、窒素ガス気流下で約180℃で8時間撹拌反応を行った。更にチタンテトラブトキサイド0.2質量部を添加し温度を約220℃に上げ6時間撹拌反応を行った後、反応容器内を10mmHgまで減圧し、減圧下で反応を行いポリエステル樹脂〔B1〕を得た。
ポリエステル樹脂〔B1〕の融点(Tm)は72℃、重量平均分子量(Mw)は14,000であった。
ポリエステル樹脂〔B1〕を溶剤に溶解させ、アンモニア水を加え、その後イオン交換水を滴下して転相乳化法によりポリエステル樹脂溶液〔B1〕を得た。ポリエステル樹脂溶液〔B1〕の固形分濃度は20%であった。
<ワックス分散液の調整例>
エステル系ワックス(融点:73℃)200質量部を95℃に加温し溶融させた。これを、更にアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが3質量%の濃度となるようイオン交換水800質量部に溶解させた界面活性剤水溶液に投入した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理を行った。固形分濃度は20質量%に調整した。これにより、水系媒体中にワックスの微粒子が分散されたワックス分散液を調製した。
<ワックス入りトナー無色(トナーa)>
ポリエステル樹脂〔A1〕分散液300質量部、ポリエステル樹脂〔B1〕分散液100質量部、ワックス分散液75質量部、イオン交換水225質量部およびポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2.5質量部を、撹拌機、冷却管、温度計を備えた反応容器に投入し、撹拌しながら0.1Nの塩酸を加えてpHを2.5に調整した。
次いで、ポリ塩化アルミニウム水溶液(AlCl3換算で10%水溶液)0.3質量部を10分間かけて滴下した後、撹拌しつつ内温を60℃まで昇温した。更に徐々に75℃まで昇温を行い、内温を75℃に維持し、コールターカウンターで測定を行い、平均粒径が6μm台に到達した所で3−ヒドロキシ−2,2’−イミノジコハク酸4ナトリウム水溶液(40%水溶液)2質量部を加えて、粒径成長を停止し内温を85℃まで昇温し「FPIA−2000」を用いて測定した形状係数が0.96になった時点で、10℃/minの速度で室温まで冷却した。この反応液を、濾過、洗浄を繰り返した後、乾燥することにより、トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子に、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)1質量%および疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)1質量%を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により混合し、その後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去することにより、ワックス入り無色トナー(トナーa)を得た。
ワックス入り無色トナー(トナーa)の体積基準のメジアン径は6.10μm、平均円形度は0.965であった。
<ワックスレス無色トナー>
上記ワックス入り無色トナー(トナーa)の製造方法において、ワックス分散液の使用を省略することにより、ワックスレス無色トナーを生成した。
<無色トナー(トナーb)>
上記ワックス入り無色トナー(トナーa)の製造方法において、ワックス分散液の量を25部(トナーaの製造において用いられた量の1/3)に変更することにより、無色トナー(トナーb)を生成した。なお、上記のように製造されたトナーaとワックスレス無色トナーとを、1:2で混合することによって、トナーbが製造されてもよい。
[9.制御例]
図14は、本実施の形態の光沢制御装置の制御例を実施するために利用された画像形成装置の構成を模式的に示す図である。より具体的には、図14の画像形成装置1Aは、図7に示された画像形成装置1から2種類の画像形成ユニット311,312が省略された構成を有する。
以下に、3つの例(制御例(1),参考例,および制御例(2))について説明する。3つの制御例では、いずれも、画像形成装置1Aとして、bizhub PRESS C1070(コニカミノルタ製)が用いられた。bizhub PRESS C1070では、中間転写ベルト301上に、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーの順でトナーが付与される。すなわち、用紙に転写された後の画像において、紙130の上にブラックトナーが付与され、ブラックトナーの上にシアントナーが付与され、シアントナーの上にマゼンタトナーが付与され、マゼンタトナーの上にイエロートナーが付与されることになる。
この点において、これから説明する3つの例では、イエロートナーの代わりに第2無色トナーを付与し、マゼンタトナーの代わりに第1無色トナーを付与し、さらに、形成する画像においてマゼンタトナーとシアントナーを付与する部分に対してはトナーの付与を行なわないように、bizhub PRESS C1070が改造された。
制御例(1)、制御例(2)および参考例では、紙130として、日本製紙社製のエスプリコートC紙(157.0g/m2)が用いられた。
制御例(1)、制御例(2)および参考例は、定着器としてbizhub PRESS C1070の定着器が使用され、定着ベルト601の表面温度が、ニップ部直前において190℃になるように制御された場合の例である。ただし、無色トナーのワックス含有量、ワックス入りトナーの付与量、および、ワックスレストナーの付与量は、定着器の種類やその設定条件によって変わるものである。したがって、後述する図15〜図17において示された数値は、あくまでも一例であり、本開示から導出される発明をこれらの数値に限定するものではない。
制御例(1)
図15は、制御例(1)に従って形成された画像の結果を示す図である。制御例(1)では、第1無色トナーとしてワックスがトナー中に9%含有されたワックス入りトナーが使用され、第2無色トナーとしてワックスが全く含まれていないワックスレストナーが使用された。制御例(1)では、図4を参照して説明された光沢制御方法に従って紙の画像形成面の光沢度が制御された。
制御例(1)では第1無色トナー(ワックス入りトナー)を白紙状態の紙に4.0g/m2が載せられ、その上に第2無色トナー(ワックスレストナー)が載せられた。第2無色トナーの量が0〜2g/m2の範囲で11水準に変わるように調整しながら、それぞれの水準(条件)で10枚ずつ通紙してトナーが定着された後の用紙表面の60度光沢度を測定した。10枚通紙した中で、用紙が定着ベルト601から剥がれず、装置から出力できなかったものを分離NGとしてカウントした。図15には、4種類の項目(ワックスレストナー量、光沢度、分離、分離NG枚数/通紙枚数)と、各項目の値とが示される。「ワックスレストナー量」は、第2無色トナーの付与量を表す。「60度光沢度」は、各条件に従って形成された10枚の紙上の画像の60度光沢度の平均値を表す。「分離」は、各条件で分離NGが生じたか否かを表す。「○」は分離NGが生じなかったことを表し、「×」は分離NGが生じたことを表す。「分離NG枚数/通紙枚数」は、各条件における、通紙枚数(画像を形成した枚数)に対する分離NGが生じた枚数の比を表す。
図15に示された結果によれば、ワックスレストナーの付与量が増加することによって光沢度を下げられることがわかる。一方で、ワックスレストナーの付与量がある量よりも増加すると、光沢度は下がらなくなり、その量から通紙不良が起こりやすくなることが確認される。このことから、ワックスレストナーの付与量の最大値として、光沢度を下げる効果がある上限の値(光沢度の極小値)に対応する量が設定されることが望ましい。すなわち、図15で示された例では、太線で囲まれた範囲でワックスレストナーを制御することが望ましい。
したがって、図4を参照して説明された光沢制御方法に従って紙の画像形成面の光沢度が制御される場合、「光沢度テーブル」の一例として、図15の太線の枠で示された範囲における「ワックスレストナー量」と「60度光沢度」との関係が光沢度テーブル格納部720(図6)に格納され、また、参照され得る。
(参考例)
図16は、参考例に従って形成された画像の結果を示す図である。参考例は、図5を参照して説明された光沢制御方法に従って、紙の画像形成面の光沢度が制御において、トナーbの適切なワックス含有量を確認するための実験例に相当する。
参考例では、第1無色トナーとして、ワックス含有量が1〜9g/m2の範囲で11水準に変わるように試作した無色トナーを用いた。それぞれの水準のトナーを10枚ずつ白紙状態の用紙に4.0g/m2載せて通紙し、トナーが定着された後の用紙表面の60度光沢度を測定した。10枚通紙した中で、紙が定着ベルト601から剥がれず、装置から出力できなかったものを分離NGとしてカウントした。図16の4種類の項目(無色トナー量、光沢度、分離、分離NG枚数/通紙枚数)は、図15と同様の意味を表す。
図16に示された結果によれば、トナーbとして利用したトナーにおけるワックスの含有量が減少することによって、光沢度が下がることがわかる。一方で、ワックスの含有量がある量よりも減少すると、ワックスの含有量を減少させても光沢度は下がらなくなり、また、その量から通紙不良が起こりやすくなることが確認される。このことから、トナーbとしては、十分低い光沢度と通紙性能を両立させるため、光沢度を下げる効果がある下限のワックス含有量のトナーを用いることが望ましい。すなわち、この例においては、トナーbとしてワックス含有量が3%のトナーを用いることが望ましい。
制御例(2)
図17は、制御例(2)に従って形成された画像の結果を示す図である。制御例(2)では、図5を参照して説明された光沢制御方法に従って、紙の画像形成面の光沢度が制御された。制御例(2)では、第1無色トナー(トナーa)と第2無色トナー(トナーb)を、合わせて4.0g/m2でそれぞれの比率が6水準に変わるように調整しながら、白紙状態の紙に載せた。それぞれの水準で10枚ずつ通紙してトナーが定着された後の用紙表面の60度光沢度を測定した。10枚通紙した中で、用紙が加熱ベルトから剥がれず、装置から出力できなかったものを分離NGとしてカウントした。図17の3種類の項目(60度光沢度、分離、分離NG枚数/通紙枚数)は、図15と同様の意味を表す。
制御例(2)により、参考例の実験結果から導出されたワックス含有量のトナーを「トナーb」として用いることにより、「トナーaとトナーbの比率の変化に従った光沢度の制御」と「通紙性能」との両立が可能になることが確認された。
したがって、図5を参照して説明された光沢制御方法に従って紙の画像形成面の光沢度が制御される場合、「光沢度テーブル」の一例として、図17に示された「トナーa:トナーb(トナーaとトナーbの割合)」と「60度光沢度」との関係が光沢度テーブル格納部720(図6)に格納され、また、参照され得る。
[10.トナーの付与態様例]
図18〜図20を参照して、光沢制御方法に対応する好ましいトナーの付与態様の具体例について説明する。なお、この説明は、あくまで例であって、本明細書に示された光沢制御方法に対応するトナーの付与態様は、この説明における例に限定されるものではない。
図18は、未定着状態のカラートナーの断面の模式図である。図19は、未定着のカラートナーの上に2種類の無色トナーを付与した状態を示す断面の模式図である。図20は、図19とは他の方法で未定着のカラートナーの上に2種類の無色トナーを付与した状態を示す断面の模式図である。すなわち、紙の表面の状態は、一例では、図18に示された状態から図19に示された状態へと変化し、他の例では、図18に示された状態から図20に示された状態へと変化する。
図18は、紙131とカラートナー120−CLとが示されている。図19および図20には、さらに、2種類の無色トナー(ワックス入りトナー120−WI、および、ワックスレストナー120−WL)が示されている。
図19では、カラートナー120−CLが最も多く付与されている部分以外の部分にワックス入りトナー120−WIが補われることにより、カラートナー120−CLとワックス入りトナー120−WIによる層の高さが均一になる。すなわち、ワックス入りトナー120−WIが付与される領域および量が、カラートナー120−CLが付与される領域および量によって調整される。この上に、光沢を制御したい部分に対して、所望の光沢になるようにワックスレストナー120−WLが付与される。
図19に示された制御によれば、出力される画像において段差が少なく、画像の見栄えがよくなる。
一方、図20では、ワックス入りトナー120−WIは、カラートナー120−CLが付与される領域および量に拘わらず、一律に付与される。その上に、光沢を制御したい部分に対して、所望の光沢になるようにワックスレストナー120−WLが付与される。
図20に示された制御に従った画像では、表面に多少の段差が生じ得るため、図19に示された制御に従った画像に対して見栄えが多少劣る可能性はあるが、ワックス入りトナー120−WIの付与態様を、カラートナー120−CLの付与態様に応じて制御する必要はない。したがって、画像形成のための制御を簡易なものとしつつ、光沢度の調整が可能である。
なお、以下の条件を満たす場合には、図20に示された方法よりも、図19に示された方法の方が好ましい。
条件1:光沢度制御に、図4を参照して説明された光沢制御方法が採用される場合
条件2:図7に示されたように、電子写真印刷によって形成される画像の光沢を制御する場合であって、カラートナーと無色トナーとを同時に未定着の状態で紙上に付与して同時に定着する場合(図12または図13に示された既に他の画像形成装置によって形成された画像の光沢を制御する場合ではない場合)
条件3:カラートナーとワックス入り無色トナーのワックス含有量が略同一である場合
今回開示された各実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態および各変形例において説明された発明は、可能な限り、単独でも、組合わせても、実施することが意図される。