JP2020105619A - 樹脂被覆金属管およびその製造方法 - Google Patents

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大道 千葉
Omichi Chiba
大道 千葉
荒井 邦仁
Kunihito Arai
邦仁 荒井
春樹 上村
Haruki UEMURA
春樹 上村
小原 禎二
Teiji Obara
禎二 小原
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Abstract

【課題】金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れる樹脂被覆金属管を提供する。【解決手段】金属管Xと、ケイ素酸化物を含む中間層Yと、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zと、を有する樹脂被覆金属管であり、前記中間層Yは、前記金属管Xの表面と前記樹脂被覆層Zとの間に介在配置される、樹脂被覆金属管。前記中間層Yは前記金属管Xの表面に直接接着していることが好ましい。また、前記金属管Xは、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂被覆金属管およびその製造方法に関するものである。
鋼管などの金属管の表面上に、ポリオレフィン等の樹脂を含む樹脂被覆層などを1層または複数層形成してなる樹脂被覆金属管は、優れた防食性を発揮し得ることから、水道管、ガス輸送管、燃料輸送管、およびケーブル保護管などに利用される。
そして、樹脂被覆金属管における防食性などの性能を高める観点から、金属管と樹脂被覆層との接着強度を向上させるための研究が盛んに行なわれている。
例えば、特許文献1では、鋼管表面に、鋼管の表面側から順に、シランカップリング剤処理層、エポキシプライマー層、接着性ポリエチレン層、ポリエチレン層を被覆した所定のポリエチレン被覆鋼管が、高温での被覆層の接着耐久性に優れる旨が開示されている。
また、特許文献2では、予熱された鋼管表面にエポキシ樹脂プライマー層、変性ポリオレフィン層、ポリオレフィン層を順次積層していく外面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、最外層のポリオレフィン層を形成後、ポリオレフィン被覆鋼管の外面および内面から水冷を行い、その水冷によって変性ポリオレフィン層の冷却速度を、当該変性ポリオレフィン樹脂の結晶化温度(Tc)±20℃の範囲において10℃/min以上とすることで、高密着強度ポリオレフィン被覆鋼管を製造し得る旨が開示されている。
特開2018−69592号公報 特開2018−1549号公報
しかしながら、上記従来技術により得られる樹脂被覆金属管は、金属管と樹脂被覆層との接着強度に依然として改善の余地があった。特に、樹脂被覆金属管が製造された直後における金属管と樹脂被覆層との接着強度(以下、単に「初期接着強度」と称することがある。)、および、樹脂被覆金属管が長期に亘って使用された後における金属管と樹脂被覆層との接着強度(以下、単に「長期接着強度」と称することがある。)が十分ではなかった。
そこで、本発明は、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れる樹脂被覆金属管を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、金属管と、ケイ素酸化物を含む中間層と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層と、を有し、中間層が金属管の表面と樹脂被覆層との間に介在配置されてなる樹脂被覆金属管であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の樹脂被覆金属管は、金属管Xと、ケイ素酸化物を含む中間層Yと、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zと、を有する樹脂被覆金属管であり、前記中間層Yは、前記金属管Xの表面と前記樹脂被覆層Zとの間に介在配置されることを特徴とする。このように、金属管と、ケイ素酸化物を含む中間層と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層と、を有し、中間層が金属管の表面と樹脂被覆層との間に介在配置されてなる樹脂被覆金属管であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れている。
ここで、本発明の樹脂被覆金属管は、前記中間層Yが前記金属管Xの表面に直接接着していることが好ましい。このように、中間層Yが金属管Xの表面に直接接着していれば、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高め得ると共に、および樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
また、本発明の樹脂被覆金属管は、前記金属管Xが、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなることが好ましい。このように、金属管Xが、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高めることができる。
さらに、本発明の樹脂被覆金属管は、前記中間層Y表面のケイ素割合が、2.0atom%以上30.0atom%以下であることが好ましい。このように、中間層Y表面のケイ素割合が上記所定範囲内であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
なお、本発明において、中間層Y表面のケイ素割合は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本発明の樹脂被覆金属管は、前記中間層Yが、イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により形成されることが好ましい。このように、中間層Yが、イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により形成されていれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高めることができる。
さらに、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、金属管Xの表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する中間層形成工程と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで前記中間層Yの表面を被覆する樹脂被覆工程と、を含むことを特徴とする。このように、金属管の表面上にケイ素酸化物を含む中間層を形成した後に、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層で中間層の表面を被覆して製造される樹脂被覆金属管は、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度に優れている。
ここで、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、前記金属管Xの表面に前記中間層Yを直接形成することが好ましい。このように、金属管Xの表面に中間層Yを直接形成すれば、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
また、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、前記金属管Xが、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなることが好ましい。このように、金属管Xが、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高めることができる。
さらに、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、前記中間層Y表面のケイ素割合が、2.0atom%以上30.0atom%以下であることが好ましい。このように、中間層Y表面のケイ素割合が上記所定範囲内であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
また、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により前記中間層Yを形成することが好ましい。このように、イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により中間層Yを形成すれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高めることができる。
本発明によれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れる樹脂被覆金属管を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明の樹脂被覆金属管は、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法により製造することができる。
(樹脂被覆金属管)
本発明の樹脂被覆金属管は、金属管Xと、ケイ素酸化物を含む中間層Yと、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zと、を有する樹脂被覆金属管である。そして、前記中間層Yは、前記金属管Xの表面と前記樹脂被覆層Zとの間に介在配置される。
このように、金属管と、ケイ素酸化物を含む中間層と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層と、を有し、中間層が金属管の表面と樹脂被覆層との間に介在配置されてなる樹脂被覆金属管であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れている。
なお、本発明の樹脂被覆金属管は、任意で、上述した金属管X、中間層Y、および樹脂被覆層Z以外のその他の部材を有していてもよい。
そして、本発明の樹脂被覆金属管は、水道管、ガス輸送管、燃料輸送管、およびケーブル保護管などとして好適に使用することができる。
なお、本明細書中において、金属管の「表面」は、金属管の外側の表面(外表面)でもよいし、金属管の内側の表面(内表面)でもよいものとする。
したがって、本発明の樹脂被覆金属管は、金属管Xの外表面側のみに中間層Yおよび樹脂被覆層Zを有していてもよいし、金属管Xの内表面側のみに中間層Yおよび樹脂被覆層Zを有していてもよいし、金属管Xの外表面側および内表面側のそれぞれに中間層Yおよび樹脂被覆層Zを有していてもよい。
ここで、本発明の樹脂被覆金属管が外表面側および内表面側のそれぞれに中間層Yおよび樹脂被覆層Zを有している場合、外表面側の中間層Yと内表面側の中間層Yとでは、ケイ素酸化物等の成分組成が同じであってもよいし、異なっていてもよく、外表面側の樹脂被覆層Zと内表面側の樹脂被覆層Zとでは、シラン変性樹脂等の成分組成が同じであってもよいし、異なっていてもよいものとする。
また、本発明の樹脂被覆金属管においては、金属管Xの表面の少なくとも一部と樹脂被覆層Zとの間に中間層Yが介在配置されていればよく、本発明の所望の効果が得られる範囲内で、金属管Xの表面の一部と樹脂被覆層Zとが直接接着する構造が存在してもよいが、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、金属管Xの表面全体と樹脂被覆層Zとの間に中間層Yが介在配置されていることが好ましい。即ち、本発明の樹脂被覆金属管においては、金属管Xの表面と樹脂被覆層Zとが直接接着する構造が存在しないことが好ましい。
<金属管X>
金属管Xは、金属材料からなる管状の部材である。
金属管Xを構成する金属材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄(Fe)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の遷移金属;アルミニウム(Al);鉛(Pb);亜鉛(Zn);スズ(Sn);これらを主成分とする合金;などを用いることができる。中でも、腐食耐久性の観点から、金属材料としては、銅(Cu)、炭素鋼、およびステンレス鋼を用いることが好ましく、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高める観点から、炭素鋼および/またはステンレス鋼を用いることがより好ましい。なお、炭素鋼としては、S55C、SUS316、SUS410、SUS430等を用いることができる。また、ステンレス鋼としては、SUS304、S15C、S65C等を用いることができる。
金属管Xの形状、厚み、大きさ、長さ等は、樹脂被覆金属管の用途に応じて、適宜選択できるものとする。
なお、樹脂被覆金属管における金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高める観点から、金属管Xにおける中間層Yおよび樹脂被覆層Zが形成される側の表面は、ブラスト処理などの除錆方法により、除錆されていてもよい。
<中間層Y>
中間層Yは、ケイ素酸化物を含み、任意にケイ素酸化物以外のその他の成分を含む。そして、中間層Yは、金属管Xの表面と樹脂被覆層Zとの間に介在配置されている。
ケイ素酸化物を含む中間層Yが、金属管Xの表面と樹脂被覆層Zとの間に介在配置されることにより、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を高めることができる。
なお、中間層Yは、例えば、後述する有機接着層などの他の層を介して、金属管Xの表面に接着していてもよいが、中間層Yは、金属管Xの表面に直接接着していることが好ましい。中間層Yが金属管Xの表面に直接接着していれば、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
そして、中間層Yは、中間層Yおよび樹脂被覆層Z以外の他の層を介して、樹脂被覆層Zに接着していてもよいが、中間層Yは樹脂被覆層Zに直接接着していることが好ましい。中間層Yが樹脂被覆層Zに直接接着していれば、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
中間層Yに含まれるケイ素酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、およびこれらの混合物などが挙げられる。また、中間層Yに含まれるケイ素酸化物以外のその他の成分としては、後述する中間層Yの形成時の表面処理で使用した有機ケイ素化合物などに由来する炭素、および炭素含有化合物などが挙げられる。
中間層Y表面のケイ素割合は、特に限定されないが、2.0atom%以上であることが好ましく、5.0atm%以上であることがより好ましく、10.0atom%以上であることが更に好ましく、30.0atom%以下であることが好ましく、25.0atom%以下であることがより好ましい。中間層Y表面のケイ素割合が上記所定範囲内であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高めることができる。
なお、中間層Y表面のケイ素割合は、例えば、後述する中間層Yの形成方法において、イトロ処理のテーブル速度、処理回数等の各種条件を変更することにより調節することができる。
<<中間層Yの形成方法>>
中間層Yは、特に限定されず、例えば、イトロ処理、大気圧プラズマコーティング処理、減圧プラズマコーティング処理等の表面処理により形成される。中でも、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度を更に高める観点から、中間層Yはイトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により形成されることが好ましい。
なお、上記表面処理により中間層Yを形成する場合、例えば、樹脂被覆層Zに対して上記表面処理を行なうことで、樹脂被覆層Zの金属管X側の表面上に中間層Yを形成してもよいが、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高めると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高める観点から、金属管Xに対して上記表面処理を行なうことで、金属管Xの表面上に中間層Yを形成することが好ましい。
また、事前に被処理体(金属管Xまたは樹脂被覆層Z)の表面上に、中間層Yおよび樹脂被覆層Z以外の他の層を形成した後に、当該他の層を介して被処理体に間接的に表面処理を行なうことで、形成された中間層Yと被処理体の表面との間に当該他の層が介在配置されてもよいが、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高めると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高める観点から、被処理体に対して表面処理を直接行なうことで、形成される中間層Yが被処理体(金属管Xまたは樹脂被覆層Z)の表面に直接接着することが好ましい。
さらに、被処理体(金属管Xまたは樹脂被覆層Z)の被覆層形成面の一部に対して表面処理を行なうことで、被処理体の被覆層形成面の一部の上に中間層Yを形成してもよいが、樹脂被覆金属管における金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、被処理体の被覆層形成面全体に対して表面処理を行なうことで、被処理体の被覆層形成面全体の上に中間層Yを形成することが好ましい。
なお、被処理体(金属管Xまたは樹脂被覆層Z)の被覆層形成面の少なくとも一部である領域上に中間層Yを形成した場合において、中間層Yを構成するケイ素酸化物等の成分は、当該領域上に隙間無く存在することで当該領域を完全に被覆していてもよいし、当該領域上に点在することで当該領域を部分的に被覆していてもよいものとする。
[イトロ処理]
イトロ処理では、可燃性ガスと、ケイ素供給源であるシラン化合物を気液平衡状態下で蒸発させて得られる気体と、空気との混合物を着火して放出される火炎を、被処理体(金属管Xまたは樹脂被覆層Z)の表面に当てて(吹き付けて)、ケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する。
ここで、可燃性ガスとしては、例えば、プロパンガスまたはLPG(プロパンガス単独以外の液化石油ガス)を用いることができる。なお、LPGとしては、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ブタン/プロパンの混合ガス、エタン、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)等が挙げられる。
また、ケイ素供給源であるシラン化合物としては、ケイ素原子を含み、イトロ処理によりケイ素酸化物を含む層を形成できるものであれば、特に限定されず、例えば、有機ケイ素化合物が挙げられる。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン;ヘキサメチルジシラザン;テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジフェニルシラン、ジエチルジクロロシラン、ジエチルジフェニルシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリフェニルシラン、ジメチルジエチルシラン等のアルキルシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリクロロメトキシシラン、トリクロロエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン;などを用いることができる。
なお、イトロ処理は、例えば、上述した可燃性ガスとシラン化合物と空気との混合物を着火して火炎を放出するバーナー、および、被処理体を搬送するテーブルなどを備えるイトロ社製「イトロ処理装置」などの装置を用いて行なうことができる。
上記装置を用いたイトロ処理において、バーナーのノズルと被処理体との間の距離、ケイ素供給源の流量、エアー流量、可燃性ガス流量、処理回数などの各種の条件は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜設定することができる。
[大気圧プラズマコーティング処理]
大気圧プラズマコーティング処理では、ケイ素供給源であるシラン化合物をプラズマと共に被処理体(金属管Xまたは樹脂被覆層Z)の表面に当てて、ケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する。
ケイ素供給源であるシラン化合物としては、「イトロ処理」の項で上述したシラン化合物を用いることができる。中でも、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、ヘキサメチルジシランを用いることが好ましい。
また、大気圧下でのプラズマの発生に必要なガスとしては、酸素、窒素、アルゴン、およびこれらの混合ガスが挙げられる。
なお、大気圧プラズマコーティング処理は、例えば、AcXys Technologies社製「UL−Coat」などの装置を用いることができる。
大気圧プラズマコーティング処理における各種の条件は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。
[減圧プラズマコーティング処理]
減圧プラズマコーティング処理では、ケイ素供給源であるシラン化合物を、減圧下で発生させたプラズマと共に金属管Xの表面に当てて、ケイ素酸化物を含む中間層を形成する。
ケイ素供給源であるシラン化合物としては、「イトロ処理」の項で上述したシラン化合物を用いることができる。
また、減圧下でのプラズマの発生に必要なガスとしては、例えば、酸素、アルゴンなどが挙げられる。
減圧プラズマコーティング処理は、例えば、ULVAC社製「CME−200E」などの装置を用いることができる。
なお、減圧プラズマコーティング処理における各種の条件は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。
<樹脂被覆層Z>
樹脂被覆層Zは、シラン変性樹脂を含み、任意に、添加剤などの、シラン変性樹脂以外の成分を含む層である。
樹脂被覆層Zは、金属管Xにおける中間層Yが配置される側の表面を被覆している。即ち、樹脂被覆層Zは、中間層Yを介して、金属管Xの表面を被覆している。このように、樹脂被覆層Zが、中間層Yを介して、金属管Xの表面を被覆することで、金属管Xが腐食されることを良好に抑制している。
ここで、樹脂被覆層Zは、中間層Yを介して、金属管Xの表面の少なくとも一部を被覆していればよいが、樹脂被覆金属管の防食性を高める観点から、中間層Yを介して、金属管Xの表面の全体を被覆していることが好ましい。
<<シラン変性樹脂>>
樹脂被覆層Zに含まれるシラン変性樹脂とは、シラン変性された樹脂、即ち、樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる変性体である。
ここで、樹脂被覆層Zにおけるシラン変性樹脂の含有割合は、初期接着強度、長期接着強度、および耐湿性の観点から、65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましく、100質量%以下であることが好ましい。
シラン変性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン樹脂、アイオノマー樹脂等の樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる変性体を用いることができる。中でも、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、シラン変性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂および/またはポリスチレン系樹脂にアルコキシシリル基が導入されてなる変性体(即ち、シラン変性ポリオレフィン系樹脂および/またはシラン変性ポリスチレン系樹脂)を用いることが好ましい。
ここで、シラン変性ポリオレフィン系樹脂の調製に良好に使用し得るポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、環状オレフィン樹脂などが挙げられる。中でも、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、ポリエチレンおよびポリプロピレンを用いることが好ましい。
また、シラン変性樹脂の調製に良好に使用し得るポリスチレン系樹脂としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)等の芳香族ビニル単量体および共役ジエン単量体から製造されるブロック共重合体;ポリスチレン;スチレン−アクリル酸エステル共重合体;これらの共重合体の水素化物;などが挙げられる。
そして、上記シラン変性樹脂の調製に使用し得るポリスチレン系樹脂の中でも、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、
(i)芳香族ビニル単量体および共役ジエン単量体から製造されるブロック共重合体およびその水素化物を用いることが好ましく、
(ii)芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体(直鎖状共役ジエン、分岐鎖状共役ジエン)単位を主成分とする重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]、および、当該ブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]を用いることがより好ましく、
(iii)芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]とからなるブロック共重合体[C]を水素化してなるブロック共重合体水素化物[D]を用いることが更に好ましい。
なお、本明細書中において、「芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]」は、「芳香族ビニル単量体単位を50質量%超含有する重合体ブロック[A]」を意味し、「鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]」は、「鎖状共役ジエン単量体単位を50質量%超含有する重合体ブロック[B]」を意味する。また、「単量体単位を含有する」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の構造単位が含まれている」ことを意味する。
以下、樹脂被覆層Zに好適に使用し得るシラン変性樹脂として、上記ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入されてなる変性ブロック共重合体水素化物[E]について詳述する。
―変性ブロック共重合体水素化物[E]―
変性ブロック共重合体水素化物[E]は、前駆体であるブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入された高分子である。
――ブロック共重合体水素化物[D]――
ブロック共重合体水素化物[D]は、前駆体であるブロック共重合体[C]を水素化してなる高分子であり、より詳しくは、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]と鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを有する高分子であるブロック共重合体[C]を水素化してなる高分子である。
ここで、ブロック共重合体水素化物[D]は、ブロック共重合体[C]の鎖状共役ジエン単量体に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化した高分子であってもよいし、ブロック共重合体[C]の鎖状共役ジエン単量体に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル単量体に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した高分子であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
ブロック共重合体[C]の鎖状共役ジエン単量体に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合のみを選択的に水素化する場合、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、通常95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上であり、芳香族ビニル単量体に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
なお、「主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における鎖状共役ジエン単量体に由来の二重結合を水素化すること」を意味し、「芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化すること」は、「ブロック共重合体における芳香環に由来の二重結合を水素化すること」を意味する。
ブロック共重合体[C]の鎖状共役ジエン単量体に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香族ビニル単量体に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する場合、水素化率は、通常全炭素−炭素不飽和結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。水素化の程度を示す水素化率が高いほど、樹脂被覆層Zの耐光性、および耐熱性が良好である。
なお、本発明において、「主鎖および側鎖における炭素−炭素不飽和結合の水素化」は、「ブロック共重合体[C]における鎖状共役ジエン単量体に由来の二重結合の水素化」を意味し、「芳香環における炭素−炭素不飽和結合の水素化」は、「ブロック共重合体[C]における芳香環に由来の二重結合の水素化」を意味する。また、本発明において、ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、ブロック共重合体[C]およびブロック共重合体水素化物[D]のH−NMRを測定する方法等により求めることができる。
炭素−炭素不飽和結合の水素化方法や反応形態等は、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよい。
ブロック共重合体[C]の鎖状共役ジエン単量体に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合を選択的に水素化する方法としては、例えば、特開2015−78090号公報等に記載された方法を挙げることができる。
また、ブロック共重合体[C]の鎖状共役ジエン単量体に由来する主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合並びに芳香族ビニル単量体に由来する芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法としては、例えば、国際公開第2011/096389号、国際公開第2012/043708号等に記載された方法を挙げることができる。
水素化反応終了後においては、水素化触媒および/または重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態としては、特に制限はないが、ペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することが好ましい。
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量としては、特に制限はないが、樹脂被覆層Zの耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、THFを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが更に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましい。
また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、樹脂被覆層Zの耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.7以下であることが更に好ましい。
〔ブロック共重合体[C]〕
ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロック[A]を1個以上と、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロック[B]を1個以上有する高分子であるが、重合体ブロック[A]2個以上と、重合体ブロック[B]1個以上とからなる高分子であることが好ましい。
ここで、ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[A]の数は、3個以下であることが好ましく、2個であることがより好ましい。
また、ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[B]の数は、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
ブロック共重合体[C]中における重合体ブロック[A]および重合体ブロック[B]の数をそれぞれ上記範囲内にすることにより、ブロック共重合体[C]を用いて得られるブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入してなる変性ブロック共重合体水素化物[E]を含む樹脂組成物において、重合体ブロック[A]由来の水素化重合体ブロック(以下、「水素化重合体ブロック[A]」ということがある。)と重合体ブロック[B]由来の水素化重合体ブロックとの相分離が不明瞭となるのを防止して、水素化重合体ブロック[A]に基づく高温側のガラス転移温度が低下するのを防止し、ひいては、樹脂被覆層Zの耐熱性が低下するのを防止することができる。
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、特に制限はなく、鎖状型ブロックであっても、ラジアル型ブロックであってもよいが、樹脂被覆層Zの機械的強度を向上させる観点から、鎖状型ブロックであることが好ましい。ここで、ブロック共重合体[C]の特に好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]−[B]−[A])である。ブロック共重合体である共重合体は、ブロック重合後水素化前の段階では、末端変性がなされていないことが好ましい。
ブロック共重合体が、2つの重合体ブロック[A](第1の重合体ブロック[A1]、第2の重合体ブロック[A2])と、1つの重合体ブロック[B]とにより構成されたトリブロック共重合体([A1]−[B]−[A2])である場合において、第1の重合体ブロック[A1]由来の芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率、および、第2の重合体ブロック[A2]由来の芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体全体に占める質量分率のうち、一方をSt1とし、他方をSt2(ただし、St1≦St2)としたとき、St1とSt2との比(St1/St2)は20/80以上であることが好ましく、50/50以下であることが好ましい。
ブロック共重合体[C]中の全芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率をwAとし、ブロック共重合体[C]中の全鎖状共役ジエン単量体単位がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率をwBとしたときに、wAは60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましく、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、wBは80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更に好ましく、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。
ブロック共重合体[C]中の全芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率(wA)を60%以下にすることにより、得られる樹脂被覆層Zの柔軟性を確保することができる。一方、ブロック共重合体[C]中の全芳香族ビニル単量体単位がブロック共重合体[C]全体に占める質量分率(wA)を20%以上にすることにより、樹脂被覆層Zの耐熱性を確保することができる。
ブロック共重合体[C]の分子量は、特に制限はないが、樹脂被覆層Zの耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、35,000以上であることが好ましく、38,000以上であることがより好ましく、40,000以上であることが更に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましい。
また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、特に制限はないが、樹脂被覆層Zの耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.7以下であることが更に好ましい。
ブロック共重合体[C]の製造方法は特に限定されず、例えば、国際公開第2003/018656号、国際公開第2011/096389号、等に記載の方法を採用することができる。
〔〔重合体ブロック[A]〕〕
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル単量体単位を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[A]中における芳香族ビニル単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[A]を構成する全構造単位を100質量%として、通常50質量%超であり、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。なお、重合体ブロック[A]中における芳香族ビニル単量体単位の含有割合の上限は特に限定されず、100質量%以下とすることができる。
重合体ブロック[A]中における芳香族ビニル単量体単位の含有割合が50質量%超であると、樹脂被覆層Zの耐熱性を確保することができる。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位(その他の単量体単位)を含有していてもよい。
重合体ブロック[A]が含有しうるその他の単量体単位としては、後述する鎖状共役ジエン単量体単位および/またはその他のビニル単量体単位などが挙げられる。重合体ブロック[A]中における鎖状共役ジエン単量体単位およびその他のビニル単量体単位の含有割合の合計は、重合体ブロック[A]を構成する全単量体単位を100質量%として、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。重合体ブロック[A]中における鎖状共役ジエン単量体単位およびその他のビニル単量体単位の含有割合の合計が10質量%以下であると、樹脂被覆層Zの耐熱性を確保することができる。
なお、重合体ブロック[A]が鎖状共役ジエン単量体単位および/またはその他のビニル単量体単位を含む場合は、重合体ブロック[A]は、通常、芳香族ビニル単量体単位、鎖状共役ジエン単量体単位、およびその他のビニル単量体単位を不規則的に繰り返してなる部分を有することが好ましい。
また、ブロック共重合体[C]が複数の重合体ブロック[A]を有する場合、重合体ブロック[A]同士は、互いに同一であってもよく、相異していてもよい。
芳香族ビニル単量体単位を形成し得る芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン等の、置換基として炭素数1以上6以下のアルキル基を有するスチレン類;4−メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1以上6以下のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等の、ビニルナフタレン類;が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
そしてこれらの中でも、樹脂被覆層Zの吸湿性を低下させる観点から、スチレンや、置換基として炭素数1以上6以下のアルキル基を有するスチレン類などの、極性基を含有しない芳香族ビニル単量体が好ましく、さらに、工業的な入手の容易さから、スチレンがより好ましい。
その他のビニル単量体単位を形成し得るその他のビニル単量体としては、芳香族ビニル単量体および鎖状共役ジエン単量体以外のビニル化合物、例えば、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物、などが挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。また、これらの化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。そしてこれらの中でも、樹脂被覆層Zの吸湿性を低下させる観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の、炭素数2以上20以下の鎖状ビニル化合物(鎖状オレフィン);ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン等の炭素数5以上20以下の環状ビニル化合物(環状オレフィン);1,3−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン化合物;などであって、極性基を含有しないものが好ましい。
〔〔重合体ブロック[B]〕〕
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体単位を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]中における鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合は、重合体ブロック[B]を構成する全構造単位を100質量%として、通常50質量%超であり、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。なお、重合体ブロック[B]中における鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合の上限は特に限定されず、100質量%以下とすることができる。
重合体ブロック[B]中における鎖状共役ジエン単量体単位の含有割合が50質量%超であると、樹脂被覆層Zの柔軟性が高まり、例えば、樹脂被覆層Zが、環境の急激な温度変化に対しても割れ等の不具合を発生し難いため、好ましい。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体単位以外の単量体単位(その他の単量体単位)を含有していてもよい。重合体ブロック[B]が含有しうるその他の単量体単位としては、上述した芳香族ビニル単量体単位および/または上述したその他のビニル単量体単位などが挙げられる。重合体ブロック[B]中における芳香族ビニル単量体単位およびその他のビニル単量体単位の含有割合の合計は、重合体ブロック[B]を構成する全構造単位を100質量%として、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。重合体ブロック[B]中における芳香族ビニル単量体単位およびその他の単量体単位の含有割合の合計が30質量%以下であると、樹脂被覆層Zの柔軟性が高まり、例えば、樹脂被覆層Zが、環境の急激な温度変化に対して割れ等の不具合を発生し難いため、好ましい。
なお、重合体ブロック[B]が芳香族ビニル単量体単位および/またはその他のビニル単量体単位を含む場合は、重合体ブロック[B]は、通常、鎖状共役ジエン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、およびその他のビニル単量体単位を不規則的に繰り返してなる部分を有することが好ましい。
また、ブロック共重合体[C]が重合体ブロック[B]を複数有する場合、重合体ブロック[B]同士は、互いに同一であってもよく、相異なっていてもよい。
ここで、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体単位の一部が、1,2−結合および/または3,4−結合で重合した構造単位(1,2−および3,4−付加重合由来の構造単位)を有し、鎖状共役ジエン単量体単位の残部が、1,4−結合(1,4−付加重合由来の構造単位)で重合した構造単位を有していてもよい。重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン単量体単位により構成される鎖状共役ジエン部分において、「1,2−結合(3,4−結合)」と「1,4−結合」との合計に対する「1,4−結合」の比率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
1,2−結合および/または3,4−結合で重合した鎖状共役ジエン単量体に由来する構造単位を含有する重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン単量体、必要に応じて、芳香族ビニル単量体、その他のビニル単量体を、ランダム化剤として電子供与原子を有する特定の化合物の存在下で重合させることにより得ることができる。1,2−結合および/または3,4−結合で重合した鎖状共役ジエン単量体に由来する構造単位の含有量は、ランダム化剤の添加量により制御することができる。
電子供与原子(例えば、酸素(O)、窒素(N))を有する化合物としては、エーテル化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物、などが挙げられる。これらの中でも、ランダム共重合体ブロックの分子量分布を小さくすることができ、その水素添加反応を阻害し難いという観点から、エーテル化合物が好ましい。
電子供与原子を有する化合物の具体例としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジ(2−テトラヒドロフリル)メタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラメチルエチレンジアミン、などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの電子供与原子を有する化合物の含有量は、鎖状共役ジエン単量体100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、10質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
鎖状共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。そしてこれらの中でも、樹脂被覆層Zの吸湿性を低下させる観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン単量体が好ましく、さらに、工業的な入手の容易さから、1,3−ブタジエン、イソプレンがより好ましい。
――ブロック共重合体水素化物[D]へのアルコキシシリル基の導入――
上述したブロック共重合体水素化物[D]に導入するアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1〜20アルキル)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1〜6アルコキシ)シリル基;などが挙げられる。
また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D]に、炭素数1以上20以下のアルキレン基や、炭素数2以上20以下のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していてもよい。
〔アルコキシシリル基の導入量〕
ブロック共重合体水素化物[D]100質量部に対するアルコキシシリル基の導入量としては、特に制限はなく、0.5質量部以上であることが好ましく、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。
アルコキシシリル基の導入量が5質量部以下であると、得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]を成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋を抑制して、ゲル化したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりするのを防止することができる。一方、アルコキシシリル基の導入量が0.5質量部以上であると、樹脂被覆層Zの接着性が向上し、例えば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高めることができる。
なお、アルコキシシリル基が導入されたことは、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]のIRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、アルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]のH−NMRスペクトルにて算出することができる。
〔アルコキシシリル基の導入方法〕
ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入する方法としては、特に制限はなく、例えば、ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させることにより、アルコキシシリル基を導入する方法、より詳細には、ブロック共重合体水素化物[D]、エチレン性不飽和シラン化合物および有機過酸化物からなる混合物を、二軸混練機、二軸押出機等にて溶融状態で所望の時間混練する方法、などが挙げられる。
前述した導入方法で用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物[D]とグラフト化反応し、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト化反応に使用する有機過酸化物としては、特に制限はないが、1分間半減期温度が170℃以上190℃以下のものが好ましく、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシド、1,4−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
例えば、二軸押出機による混練温度としては、特に制限はないが、180℃以上であることが好ましく、185℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることが更に好ましく、220℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
また、加熱混練時間としては、特に制限はないが、0.1分間以上であることが好ましく、0.2分間以上であることがより好ましく、0.3分間以上であることが更に好ましく、10分間以下であることが好ましく、5分間以下であることがより好ましく、2分間以下であることが更に好ましい。
加熱混練温度および加熱混練時間(滞留時間)を上記好ましい範囲内にすることにより、連続的な混練および押出しを効率的に行うことができる。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E]の形態としては、特に制限はないが、通常は、ペレット形状にして、その後の成形加工や添加剤の配合に供することが好ましい。
――変性ブロック共重合体水素化物[E]の性状――
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量としては、導入されるアルコキシシリル基の分子量が、通常、小さいため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D]の分子量と実質的には変わらない。ただし、ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応(グラフト化反応)させるため、重合体の架橋反応および切断反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布の値は大きくなる。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量としては、特に制限はないが、樹脂被覆層Zの耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、20,000以上であることが好ましく、25,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましい。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布(Mw/Mn)としては、特に制限はないが樹脂被覆層Zの耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.5以下であることが更に好ましい。
<<添加剤>>
樹脂被覆層Zが任意に含み得る添加剤としては、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、光安定剤、加工助剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、樹脂被覆層Zにおける上記の各添加剤の含有割合は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。
―酸化防止剤―
酸化防止剤を配合することで、樹脂被覆層Zの加工性等を高めることができる。
酸化防止剤の具体例としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、などが挙げられる。
―ブロッキング防止剤―
ブロッキング防止剤を配合することで、熱可塑性樹脂を主成分とするペレットのブロッキングを防止することができる。
ブロッキング防止剤の具体例としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸バリウム、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、などが挙げられる。
―光安定剤―
光安定剤を配合することで、樹脂被覆層Zの耐久性を高めることができる。
光安定剤の具体例としては、ヒンダードアミン系光安定剤、などが挙げられる。
―加工助剤―
加工助剤としては、変性ブロック共重合体水素化物[E]に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量が300以上5,000以下の炭化水素系重合体がより好ましい。
炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、ポリイソプレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、透明性、耐光性を維持し、軟化効果に優れている点で、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500以上3,000以下、より好ましくは500以上2,500以下)のポリイソブチレン水素化物、低分子量(数平均分子量が、好ましくは500以上3,000以下、より好ましくは500以上2,500以下)のポリブテン水素化物が好ましい。
低分子量の炭化水素系重合体の配合量は、共重合体水素化物100質量部に対して、通常、40質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。低分子量の炭化水素系重合体の配合量を多くすると、合わせガラス用の中間膜とした場合に、耐熱性が低下したり、溶出物が増加し易くなる傾向がある。
<<樹脂被覆層Zの製造方法>>
樹脂被覆層Zは、例えば、少なくともシラン変性樹脂を含み、そして任意に上述した添加剤を含む樹脂組成物を、シート状、管状等の所望の形状に成形することで得られる。
シラン変性樹脂に添加剤を配合する方法としては、一般に用いられる公知の方法が適用でき、例えば、(i)シラン変性樹脂のペレットおよび添加剤を、タンブラー、リボンブレンダー、ヘンシェルタイプミキサー等の混合機を使用して均等に混合した後、二軸押出機等の連続式溶融混練機により溶融混合し、押出すことで、ペレット状にする方法や、(ii)シラン変性樹脂を、サイドフィーダーを備えた二軸押出機により、サイドフィーダーから各種添加剤を連続的に添加しながら、溶融混練し、押出すことで、ペレット状にする方法、が挙げられる。これらの方法によって、添加剤をシラン変性樹脂に均一に分散させた樹脂組成物を製造することができる。
ここで、樹脂組成物を所望の形状に成形する方法としては、特に制限はなく、例えば、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、などの成形方法が挙げられる。
例えば、溶融押出し成形法により樹脂被覆層Zを成形する場合、樹脂組成物の温度を、170℃以上とすることが好ましく、180℃以上とすることがより好ましく、190℃以上とすることが更に好ましく、250℃以下とすることが好ましく、240℃以下とすることがより好ましく、230℃以下とすることが更に好ましい。樹脂組成物の温度を170℃以上とすることにより、流動性が悪化するのを防止して、樹脂被覆層Zの表面にゆず肌やダイライン等の不良を生じるのを防止すると共に、押出し速度を上げて、工業的に有利に成形することができる。一方、樹脂組成物の温度を250℃以下とすることにより、樹脂組成物の流動性が高くなり過ぎることを抑制して、均等な厚みの樹脂被覆層Zを成形することができる。
上述のようにして得られる樹脂被覆層Zの厚みは、特に限定されることはなく、樹脂被覆金属管の用途に応じて適宜設定することができる。
<その他の部材>
本発明の樹脂被覆金属管は、任意で、上述した金属管X、中間層Y、および樹脂被覆層Z以外のその他の部材を有していてもよい。
例えば、本発明の樹脂被覆金属管は、金属管Xの表面と中間層Yとの間、中間層Yと樹脂被覆層Zとの間、および樹脂被覆層Zの外側(即ち、中間層Yと隣接する側とは反対側)の少なくともいずれか1つの箇所に、中間層Yおよび樹脂被覆層Z以外のその他の層を有していてもよい。
このようなその他の層としては、特に限定されないが、例えば、金属管Xの表面と中間層Yとの間に介在配置される有機接着層などが挙げられる。
<<有機接着層>>
本発明の樹脂被覆金属管は、金属管Xの表面と中間層Yとの間に介在配置される有機接着層を更に有していてもよい。
なお、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高めると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高める観点から、中間層Yは金属管Xの表面に直接接着していることが好ましいため、金属管Xと中間層Yとの間には有機接着層が介在配置されていないことが好ましい。即ち、樹脂被覆金属管は、金属管Xの表面と中間層Yとの間に介在配置される有機接着層を有しないことが好ましい。
有機接着層は、特に限定されないが、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの有機ケイ素化合物を含む。
なお、有機接着層の成分組成は、上述した中間層Yおよび樹脂被覆層Zのいずれの成分組成とも異なるものとする。
有機接着層は、例えば、上述した有機ケイ素化合物を含む水溶液または水分散液を処理液として調製し、浸漬および塗布等の既知の方法により、基材の表面上に当該処理液の被膜を形成し、形成された被膜を加熱した後、洗浄、再加熱および乾燥等の処理を適宜行なって、水を除去することにより、形成することができる。なお、上記基材としては、例えば、金属管Xを用いることができる。
(樹脂被覆金属管の製造方法)
本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、金属管Xの表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する中間層形成工程と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで前記中間層Yの表面を被覆する樹脂被覆工程と、を含む。このように、金属管Xの表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成して、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで当該中間層Yの表面を被覆して製造される樹脂被覆金属管は、金属管Xの表面と樹脂被覆層Zとの初期接着強度および長期接着強度に優れている。
なお、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、上述した中間層形成工程および樹脂被覆工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
<中間層形成工程>
中間層形成工程では、金属管Xの表面上に、ケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する。
ここで、金属管Xとしては、「樹脂被覆金属管」の項で上述した金属管Xを用いることができる。
金属管Xの表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する方法としては、特に限定されず、例えば、「樹脂被覆金属管」の項で上述した中間層Yの形成方法を用いることができる。具体的には、金属管Xに対して、「樹脂被覆金属管」の項で上述した表面処理を行なうことで、金属管Xの表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成することができる。そして、中間層形成工程では、金属管の表面と樹脂被覆層Zとの初期接着強度を更に高める観点から、イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により中間層Yを形成することが好ましい。
なお、金属管Xの表面上に、事前に中間層Yおよび樹脂被覆層Z以外の他の層(例えば、有機接着層)を形成した後に、当該他の層を介して金属管Xに間接的に表面処理を行なうことで、金属管Xの表面と形成される中間層Yとの間に当該他の層が介在配置されてもよいが、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高めると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高める観点から、金属管Xに対して表面処理を直接行なうことで、金属管Xの表面に中間層Yを直接形成することが好ましい。
また、中間層形成工程では、金属管Xの表面の少なくとも一部の上に中間層Yを形成すればよいが、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、金属管Xの表面全体の上に中間層Yを形成することが好ましい。
<樹脂被覆工程>
樹脂被覆工程では、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで上述した中間層Yの表面を被覆する。即ち、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで、金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面を被覆する。したがって、中間層Yの金属管Xと隣接する側とは反対側に樹脂被覆層Zが形成される。これにより、金属管Xと、ケイ素酸化物を含む中間層Yと、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zと、を有し、中間層Yが金属管Xの表面と樹脂被覆層Zとの間に介在配置される樹脂被覆金属管が製造される。
なお、樹脂被覆工程では、上記樹脂被覆層Zで中間層Yの表面の少なくとも一部を被覆すればよいが、樹脂被覆金属管の防食性を高める観点から、上記樹脂被覆層Zで中間層Yの表面の全体を被覆することが好ましい。
また、上記樹脂被覆層Zで中間層Yの表面を被覆する際、中間層Yと樹脂被覆層Zとの間には、中間層Yおよび樹脂被覆層Z以外の他の層を介在させてもよいが、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度を更に高める観点から、中間層Yと樹脂被覆層Zとを直接接着させることが好ましい。
ここで、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで、金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面を被覆する方法としては、例えば、
(i)シラン変性樹脂を含む樹脂組成物を、金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面を被覆する形状に成形しながら、樹脂被覆層Zを形成する方法(即ち、樹脂組成物の成形と被覆とを同時に行なう方法)、および、
(ii)シラン変性樹脂を含む樹脂組成物をシート状に予め成形して樹脂被覆層Zを得た後、当該シート状の樹脂被覆層Zを、任意に変形させながら、金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面に貼り付ける方法(即ち、樹脂組成物を成形した後に被覆を行なう方法)
のいずれを採用してもよい。
ここで、上記(i)および(ii)の方法において、シラン変性樹脂としては、「樹脂被覆金属管」の項で上述したシラン変性樹脂を用いることができる。
また、シラン変性樹脂を含む樹脂組成物は、任意で、「樹脂被覆金属管」の項で上述した添加剤を含んでいてもよい。
さらに、シラン変性樹脂を含む樹脂組成物を、上記(i)および(ii)における所望の形状に成形する方法としては、「樹脂被覆金属管」の項で上述した成形方法を用いることができる。
また、上記(i)の方法において、「金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面を被覆する形状」とは、例えば、中間層Yを介して金属管Xの外表面もしくは内表面を被覆する管の形状、または、当該管の一部に相当する形状などを指す。
また、上記(ii)の方法において、シート状の樹脂被覆層Zを任意に変形させながら、金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面に貼り付ける方法としては、例えば、平板プレス、ロールプレス、真空ラミネータ装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、仮圧着後にオートクレーブで加圧する方法、TOM工法(Thrree−dimension Over−lay Method)などを使用することができる。
例えば、仮圧着後にオートクレーブで加圧する方法では、金属管Xの表面上に形成された中間層Yの表面上にシート状の樹脂被覆層Zを重ねて得られる積層物を、耐熱バッグに入れて脱気することで仮圧着した後、オートクレーブで加熱加圧し、樹脂被覆層Zを溶融させて、樹脂被覆層Zを中間層Yの表面に貼り付けることができる。
なお、耐熱バックを用いて脱気する際の減圧条件およびオートクレーブでの加熱温度および加圧条件は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜設定することができる。
<その他の工程>
本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、上述した中間層形成工程および樹脂被覆工程以外のその他の工程を含んでいてもよい。
本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、例えば、中間層形成工程の前に、金属管Xの表面上に有機接着層を形成する有機接着層形成工程を含んでいてもよい。
<<有機接着層形成工程>>
有機接着層形成工程では、上述した中間層形成工程の前に、金属管Xの表面上に有機接着層を形成する。
金属管Xの表面上に有機接着層を形成する方法は、特に限定されない。例えば、「樹脂被覆金属管」の項で上述した有機接着層の形成方法により、金属管Xを基材とすることで、金属管Xの表面上に有機接着層を形成することができる。
なお、上述したように、金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高めると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高める観点から、金属管Xの表面と中間層Yとを直接接着させることが好ましいため、金属管Xの表面上には有機接着層を形成しないことが好ましい。即ち、本発明の樹脂被覆金属管の製造方法は、中間層形成工程の前に、上述した有機接着層形成工程を含まないことが好ましい。
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて、より具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断りがない限り、質量基準である。
なお、複数種類の単量体を共重合して調製される重合体において、ある単量体単位の当該重合体全体に占める質量分率は、別に断らない限り、通常は、その重合体の調製時に重合する全単量体の総質量に占める当該ある単量体の質量の比率(仕込み比)と一致する。
本実施例における測定および評価は、以下の方法に従って行なった。
<重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)>
ブロック共重合体[C]、ブロック共重合体水素化物[D]、および変性ブロック共重合体水素化物[E]の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリスチレン換算値として求めた。GPCは40℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製「HLC8320GPC」を用いた。
さらに上記と同様にして、数平均分子量(Mn)を測定した後、ブロック共重合体[C]、ブロック共重合体水素化物[D]、および変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
<水素化率>
共重合体水素化物の水素化率(モル%)は、H−NMR測定(測定溶媒:CDCl)を実施し、共重合体中に存在した全不飽和結合のうち消失した不飽和結合の割合を算出することで導出した。
<中間層Y表面のケイ素割合>
各実施例で形成した中間層Yについて、XPS(アルバック・ファイ社製、「PHI5000 VersaProbeII」)を用いて、X線の照射径を100μmにして表面の元素分析を実施して、中間層Y表面のケイ素割合を測定した。分析対象元素はケイ素、酸素、炭素、窒素、鉄、クロム、ニッケルの7元素とした。
<初期接着強度>
各実施例および比較例で作製した評価用試験片(幅100mm×長さ150mm×厚み7mm)の樹脂被覆層Z側の面に、カッターナイフを用いて、樹脂被覆層Zを完全に貫通するように、且つ、評価用試験片の長さ方向と平行に、10mm間隔で2本の切り込みを入れた。次いで、2本の切り込みの間に形成された帯状部分の一方の端部側において、樹脂被覆層Zと金属片とを一部引き剥がした状態にした。上記処理を施した評価用試験片を、樹脂被覆層Zのみを引っ張れるように、引っ張り試験機(島津製作所社製「AGS−10KNX」)に固定し、JIS G3477−1に準じて、23℃で、180°ピール強度試験を行ない、得られた値を、金属片の表面と樹脂被覆層Zとの初期接着強度として、下記の基準により評価を行なった。なお、初期接着強度の値が高いほど、金属片(金属管X)の表面と樹脂被覆層Zとの初期接着強度が優れていることを示す。
A:初期接着強度が100N/10mm以上
B:初期接着強度が50N/10mm以上100N/10mm未満
C:初期接着強度が30N/10mm以上50N/10mm未満
D:初期接着強度が30N/10mm未満
<温度サイクル試験後の接着強度>
各実施例および比較例で作製した評価用試験片について、−50℃で12時間保管した後、60℃で12時間保管することを1サイクルとする温度サイクル試験を30サイクル繰り返した。その後、各評価用試験片を更に23℃で24時間保管した後に、上述した初期接着強度と同様の処理および操作により180°ピール強度試験を行ない、得られた値を、金属片の表面と樹脂被覆層Zとの温度サイクル試験後の接着強度とした。なお、温度サイクル試験後の接着強度の値が高いほど、金属片(金属管X)の表面と樹脂被覆層Zとの長期接着強度が優れていることを示す。
A:温度サイクル試験後の接着強度が100N/10mm以上
B:温度サイクル試験後の接着強度が50N/10mm以上100N/10mm未満
C:温度サイクル試験後の接着強度が30N/10mm以上50N/10mm未満
D:温度サイクル試験後の接着強度が30N/10mm未満
<耐陰極剥離性>
作製した評価用試験片を用いて、JIS G3477−1に準じて、電圧−1.5V、温度60℃、試験期間28日間の条件で耐陰極剥離性試験を行ない、試験終了後の塗膜の剥離距離を測定し、下記の基準により、評価を行なった。なお、試験終了後の塗膜の剥離距離が短いほど、耐陰極剥離性が優れていることを示す。
A:試験終了後の塗膜の剥離距離が5mm以下
B:試験終了後の塗膜の剥離距離が5mm超10mm以下
C:試験終了後の塗膜の剥離距離が10mm超20mm以下
D:試験終了後の塗膜の剥離距離が20mm超
(実施例1)
<中間層形成工程>
金属管Xの一部に相当する部材として、ブラスト処理により除錆された金属片(材質:炭素鋼(S55C)、幅100mm×長さ150mm×厚み5mm)を用意した。当該金属片をアセトンで洗浄して乾燥した後、イトロ処理(以下、「イトロ処理(1)」と称することがある。)により、金属片の一方の表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成した。なお、イトロ処理(1)は、下記の装置および条件により行なった。そして、形成された中間層Y表面のケイ素割合を測定した。結果を表1に示す。
装置:イトロ社製「イトロ処理装置」
バーナーノズルと金属片との間の距離:5mm
ケイ素供給源(イトロ社製「イトロ処理剤<A>」)流量:1.2NL/min
エアー流量:150NL/min
可燃性ガス(LPG)流量:8NL/min
テーブル速度:750mm/sec
処理回数:1往復
<樹脂被覆工程>
<<シート状の樹脂被覆層Zの作製>>
シラン変性樹脂としてのシラン変性ポリエチレン(三菱ケミカル社製「リンクロン(登録商標)XCF800N」)を、直径37mmのスクリューを備えた二軸混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅400mm)、キャストロール、ゴム製ニップロール、および、シート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度90℃の条件にて押出し成形し、ブロック共重合体水素化物[E]を含むシート状の樹脂被覆層Z(幅:330mm、厚み:0.5mm)を得た。得られたシート状の樹脂被覆層Zは、ロールに巻き取って回収した。
<<樹脂被覆層Zによる被覆>>
次いで、上記で作製したシート状の樹脂被覆層Z(厚み:0.5mm)を、幅100mm×長さ150mmに切り出し、金属片の一方の表面上に形成された中間層Yの表面上に4枚重ねた。得られた積層物を、NY(ナイロン)/PP(ポリプロピレン)製の厚み75μmの耐熱バッグに入れ、耐熱バッグの開口部の中央部を200mm幅残して、両側をヒートシーラーでヒートシールした後、密封パック器(パナソニック社製「BH−951」)を使用し、耐熱バッグ内を脱気しながら開口部をヒートシールして、積層物を密封包装することで仮圧着した。その後、密封包装された積層物をオートクレーブに入れて、温度125℃、30分間、圧力0.8MPaで加熱加圧することで、金属片と、中間層Yと、樹脂被覆層Zとを備え、中間層Yが金属片の表面と樹脂被覆層Zとの間に介在配置されてなる評価用試験片(金属片/中間層Y/樹脂被覆層Zの順に積層、幅100mm×長さ150mm×厚み7mm)を得た。
得られた評価用試験片を用いて、初期接着強度、長期接着強度、および耐陰極剥離性の評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の中間層形成工程において、上記所定のイトロ処理(1)に代えて、下記の装置および条件下での大気圧プラズマコーティング処理により中間層Yを形成すると共に、実施例1の樹脂被覆工程におけるシート状の樹脂被覆層Zの作製において、シラン変性樹脂として、シラン変性ポリエチレンに代えて、シラン変性ポリプロピレン(三菱ケミカル社製「リンクロン(登録商標)XPM800HM」)を使用し、押出し成形時の条件として、溶融樹脂温度を200℃から240℃に、Tダイ温度を200℃から240℃に、キャストロール温度を90℃から110℃にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用試験片を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
装置:大気圧プラズマ処理装置(AcXys Technologies社製「UL−Coat」)
出力:0.2kW
ノズルと金属片との間の距離:15mm
空気流量:5NL/min
ケイ素供給源(ヘキサメチルジシラン)流量:120μL/min
テーブル速度:320mm/min
(実施例3)
実施例1の中間層形成工程において、金属管Xの一部に相当する部材としての金属片の材質を炭素鋼(S55C)からステンレス鋼(SUS304)に変更し、実施例1の樹脂被覆工程におけるシート状の樹脂被覆層Zの作製において、シラン変性樹脂として、シラン変性ポリエチレンに代えて、下記の方法により調製した変性ブロック共重合体水素化物[E]を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用試験片を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
<変性ブロック共重合体水素化物[E]の調製>
<<ブロック共重合体[C]の合成>>
攪拌装置を備え、内部が十分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、ランダム化剤としてのn−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%n−ヘキサン溶液)2.93部を加え、重合を開始し、65℃で60分間重合反応させた。反応液をガスクロマトグラフィー(GC)により分析したところ、この時点での重合転化率は99.9%であった。
次に、反応液に脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま40分間攪拌を続けた。反応液をGCにより分析したところ、この時点で重合転化率は99.6%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分間反応させた。反応液をGCにより分析したところ、この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここで、メタノール2.0部を加えて反応を停止した。得られたブロック共重合体[C]の重量平均分子量(Mw)は42,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。また、得られたブロック共重合体[C]は、スチレン単量体単位からなる重合体ブロック[A]とイソプレン単量体単位からなる重合体ブロック[B]とが[A]−[B]−[A]の順に並んでなるトリブロック共重合体であった。
<<ブロック共重合体水素化物[D]の合成>>
次に、上記で得られたブロック共重合体[C]の溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてのシリカーアルミナ担持型ニッケル触媒(クラリアント触媒(株)社製「T−8400RL」)4.0部および脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。常温状態にて、反応器内部を水素ガスで置換し、反応器内部をゲージ圧力で2.0MPaまで加圧した状態で、180℃まで昇温した。耐圧反応器の内部温度が180℃になったところで、水素の供給はせずに60分間180℃の温度を保った。60分後、水素圧を4.5MPaまで加圧し、6時間水素化反応を行なった。水素化反応により得られた反応溶液に含まれるブロック共重合体水素化物[D]の重量平均分子量(Mw)は43,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.45であった。また、ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は99.9%であった。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、得られた溶液に、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](松原産業社製「Songnox1010」)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して溶解させた。
次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製「コントロ」)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、上記溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレンおよびその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットしてブロック共重合体水素化物[D]からなるペレットを得た。
<<ブロック共重合体水素化物[D]へのアルコキシシリル基の導入>>
得られたブロック共重合体水素化物[D]のペレット100部に対して、エチレン性不飽和シラン化合物としてのビニルトリメトキシシラン3.0部、および、有機過酸化物としての2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ(登録商標)25B」)0.1部を添加した。この混合物を、二軸押出し機を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒間で混練した。得られた混練物を、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E]のペレットを得た。
得られたブロック共重合体水素化物[E]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解させた後、得られた溶液を脱水メタノール400部中に注いで、変性ブロック共重合体水素化物[E]を凝固させた。得られた凝固物を25℃で真空乾燥して、変性ブロック共重合体水素化物[E]のクラム9.0部を単離した。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E]のクラムを用いて、FT−IRスペクトルを測定したところ、1090cm−1にSi−OCH基、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのSi−OCH基、Si−CH基に由来する吸収帯(1075cm−1、808cm−1および766cm−1)と異なる位置に観察された。
また、変性ブロック共重合体水素化物[E]のH−NMRスペクトル(重クロロホルム中)を測定したところ、3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づくピークが観察された。ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D]の100部に対してビニルトリメトキシシラン2.6部が結合したことが確認された。
なお、変性ブロック共重合体水素化物[E]の重量平均分子量(Mw)は40,000、
分子量分布(Mw/Mn)は2.38であった。
(実施例4)
実施例1の中間層形成工程において、上記所定のイトロ処理(1)の条件のうち、ケイ素供給源流量を、1.2NL/minから0.6NL/minに変更したイトロ処理(2)により中間層Yを形成したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用試験片を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1の中間層形成工程において、中間層を形成する前に、下記の有機接着層形成工程を実施することにより、金属片の表面上に有機接着層を形成すると共に、中間層を形成する際に、上記所定のイトロ処理(1)により、金属片の一方の表面上に形成された有機接着層の表面上にケイ素酸化物を含む中間層を形成することで、金属片/有機接着層/中間層Y/樹脂被覆層Zの順に積層された評価用試験片を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用試験片を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
<有機接着層形成工程>
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM−5103」)の1質量%水溶液を調製した。次いで、金属片を、当該水分散液に23℃の環境下で5分間浸漬した。その後、金属片を希釈液から取り出して、40℃のオーブン中で5分間保持した。金属片をオーブンから取り出し、23℃の環境下で純水に5分間浸漬した。純水から取り出した金属片を、40℃のオーブン中で120分間保持して、溶媒としての水を蒸発させることにより、金属片の表面上に有機接着層を形成した。
(比較例1)
実施例5において、中間層形成工程にてイトロ処理(1)による中間層Yの形成を行なわず、有機接着層形成工程にて金属片の表面上に有機接着層のみを形成すると共に、樹脂被覆工程にて、金属片の一方の表面上に形成された有機接着層の表面上に、シート状の樹脂被覆層Zを直接重ねることで、金属片/有機接着層/樹脂被覆層Zの順に積層された評価用試験片を作製したこと以外は、実施例5と同様にして、評価用試験片を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、中間層形成工程にてイトロ処理(1)を行なわず、樹脂被覆工程で、金属片の一方の表面上に、シート状の樹脂被覆層Zを直接重ねることで、金属片の表面と樹脂被覆層Zとの間に中間層Yが介在配置されていない評価用試験片(金属片/樹脂被覆層Zの順に積層)を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、評価用試験片を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を表1に示す。なお、金属片と樹脂被覆層Zとの接着が不十分であったため、温度サイクル試験後の接着強度および耐陰極剥離性については適切に評価ができなかった。
Figure 2020105619
表1より、ケイ素酸化物を含む中間層が、金属片の表面と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層との間に介在配置されてなる実施例1〜5の評価用試験片は、金属片の表面と樹脂被覆層との初期接着強度に優れていることがわかる。よって、金属管と、ケイ素酸化物を含む中間層と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層と、を有し、中間層が金属管の表面と樹脂被覆層との間に介在配置されてなる樹脂被覆金属管であれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度に優れることがわかる。
一方、金属片の表面と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層との間に、ケイ素酸化物を含む中間層に代えて、有機シラン化合物を含む有機接着層が介在配置されてなる比較例1の評価用試験片は、金属片の表面と樹脂被覆層との初期接着強度は良好であるものの、金属片の表面と樹脂被覆層との長期接着強度に劣ることがわかる。
また、金属片の表面と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層との間に、ケイ素酸化物を含む中間層が介在配置されておらず、金属片とシラン変性樹脂を含む樹脂被覆層とが直接接着されてなる比較例2の評価用試験片は、金属片の表面と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度のいずれにも劣ることがわかる。
よって、金属管と、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層との間にケイ素酸化物を含む中間層を介在配置させなければ、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度の双方に優れた樹脂被覆金属管は得られないことがわかる。
また、表1より、ケイ素酸化物を含む中間層が金属片の表面に直接接着している実施例1〜4の評価用試験片は、ケイ素酸化物を含む中間層が金属片の表面に有機接着層を介して間接的に接着している実施例5の評価用試験片と比較して、金属片の表面と樹脂被覆層との長期接着強度に更に優れると共に、耐陰極剥離性にも優れていることがわかる。よって、ケイ素酸化物を含む中間層が金属管の表面に直接接着していれば、樹脂被覆金属管における金属管と樹脂被覆層との長期接着強度を更に高め得ると共に、樹脂被覆金属管の耐陰極剥離性を高め得ることがわかる。
本発明によれば、金属管と樹脂被覆層との初期接着強度および長期接着強度に優れる樹脂被覆金属管を提供することができる。

Claims (10)

  1. 金属管Xと、ケイ素酸化物を含む中間層Yと、シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zと、を有する樹脂被覆金属管であり、
    前記中間層Yは、前記金属管Xの表面と前記樹脂被覆層Zとの間に介在配置される、樹脂被覆金属管。
  2. 前記中間層Yが前記金属管Xの表面に直接接着している、請求項1に記載の樹脂被覆金属管。
  3. 前記金属管Xが、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなる、請求項1または2に記載の樹脂被覆金属管。
  4. 前記中間層Y表面のケイ素割合が、2.0atom%以上30.0atom%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆金属管。
  5. 前記中間層Yが、イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により形成される、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被覆金属管。
  6. 金属管Xの表面上にケイ素酸化物を含む中間層Yを形成する中間層形成工程と、
    シラン変性樹脂を含む樹脂被覆層Zで前記中間層Yの表面を被覆する樹脂被覆工程と、
    を含む、樹脂被覆金属管の製造方法。
  7. 前記金属管Xの表面に前記中間層Yを直接形成する、請求項6に記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
  8. 前記金属管Xが、炭素鋼および/またはステンレス鋼からなる、請求項6または7に記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
  9. 前記中間層Y表面のケイ素割合が、2.0atom%以上30.0atom%以下である、請求項6〜8のいずれかに記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
  10. イトロ処理および/または大気圧プラズマコーティング処理により前記中間層Yを形成する、請求項6〜9のいずれかに記載の樹脂被覆金属管の製造方法。
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