以下、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る紫外線硬化性樹脂組成物(以下、組成物(X)ともいう)は、光重合性化合物と光重合開始剤とを含有する。常温常圧(25℃、1気圧)の大気雰囲気下で、組成物(X)から作製された厚み10μmの塗膜にピーク波長395nmの光を積算光量800mJ/cm2以上4000mJ/cm2以下の条件で照射して得られる硬化物(以下、光硬化物という)のDSC曲線は、30℃から260℃の範囲内にピークトップがあるピークを有する。本実施形態では、積算光量が前述の800mJ/cm2以上4000mJ/cm2以下の範囲内における少なくとも一つの値であるときに、光硬化物のDSC曲線が前述のピークを有すればよい。すなわち、積算光量が前述の800mJ/cm2以上4000mJ/cm2以下の範囲内の或る値であるときにDSC曲線が前述のピークを有さなくても、積算光量が前述の範囲内の別の値であるときにDSC曲線が前述のピークを有すればよい。積算光量が前述の範囲内のいずれの値であっても、DSC曲線が前述のピークを有すれば、特に好ましい。塗膜にピーク波長395nmの光を照射強度3W/cm2、積算光量1600mJ/cm2の条件で照射して得られる光硬化物のDSC曲線が前述のピークを有することも、好ましい。
組成物(X)は、光源が発する光を透過させる光学部品を作製するために用いられる。光学部品は、光学系を有する装置(例えば発光装置1)における、発光素子などの光源が発する光を透過させるための部品である。光学部品は、例えば発光素子のための封止材5である。光学部材は、例えば薄膜であり、より具体的には例えば厚み2μm以上50μm以下、又は2μm以上30μm以下の膜である。
本実施形態によると、組成物(X)に光を照射して得られる硬化物を加熱することで硬化物の硬化反応を更に進行させることができる。このため、組成物(X)の光反応性を低めつつ、組成物(X)に光を照射してから加熱することで、組成物(X)を十分に硬化させることができる。このため、組成物(X)の保存時に組成物(X)の反応を進行しにくくして、組成物(X)の保存安定性を向上しうる。
なお、光硬化物のDSC曲線は、後述する実施例に示す条件で測定される。
DSC曲線のピークから算出される発熱量は、1J/g以上400J/g以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性を特に得やすく、かつ組成物(X)に光を照射してから加熱する場合に組成物(X)を特に硬化させやすい。発熱量は、100J/g以上400J/g以下であればより好ましい。
一次硬化物の線膨張係数は、150ppm/℃以上250ppm/℃以下であることが好ましい。一次硬化物とは、常温常圧の大気雰囲気下で、組成物(X)から作製された厚み100μmの塗膜に、ピーク波長395nmの光を積算光量1500mJ/cm2以上7500mJ/cm2以下の条件の条件で照射して得られる硬化物である。本実施形態では、積算光量が前述の1500mJ/cm2以上7500mJ/cm2以下の範囲内における少なくとも一つの値であるときに、一次硬化物が前述の線膨張係数を有することが好ましい。すなわち、積算光量が前述の1500mJ/cm2以上7500mJ/cm2以下の範囲内の或る値であるときに一次硬化物が前述の線膨張係数を有さなくても、積算光量が前述の範囲内の別の値であるときに一次硬化物が前述の線膨張係数を有すれば好ましい。積算光量が前述の範囲内のいずれの値であっても、一次硬化物が前述の線膨張係数を有すれば、特に好ましい。塗膜にピーク波長395nmの光を照射強度3W/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件で照射して得られる一次硬化物が前述の線膨張係数を有することも好ましい。
本実施形態では組成物(X)に光を照射して得られた硬化物を更に加熱すると、硬化物中で硬化反応が進行することで架橋密度が高くなり、それに伴って線膨張係数が低下する。一次硬化物の線膨張係数が前述のように150ppm/℃以上250ppm/℃以下であれば、加熱後の硬化物の線膨張係数を十分に低めることができる。このため、組成物(X)から作製された封止材5などの光学部品を備える発光装置1に熱による負荷がかけられて光学部品が熱膨張及び熱収縮しても、光学部品に内部応力によるクラックを生じにくくできる。
一次硬化物の線膨張係数の、二次硬化物の線膨張係数に対する比の値は、1.2以上であることが好ましい。二次硬化物とは、一次硬化物を100℃で5分間加熱することで得られる硬化物である。この場合、組成物(X)に光を照射して得られた硬化物を更に加熱することで、硬化物の線膨張係数を十分に低めることができる。これにより、光学部品のクラックを更に生じにくくできる。
また、一次硬化物を100℃で5分間加熱することで得られる二次硬化物の線膨張係数は、80ppm/℃以上140ppm/℃以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)から作製される光学部品に内部応力によるクラックが特に生じにくくなる。二次硬化物の線膨張係数は100ppm/℃以上であればより好ましく、130ppm/℃以下であることもより好ましい。
このような組成物(X)の特性は、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
組成物(X)に光を照射してから加熱することで得られる硬化物は、80℃以上のガラス転移温度を有することが好ましい。この場合、硬化物は良好な耐熱性を有することができる。そのため、例えば硬化物に温度上昇を伴う処理が施された場合に、硬化物が劣化しにくい。硬化物のガラス転移温度は90℃以上であればより好ましく、100℃以上であれば更に好ましい。
組成物(X)の25℃での粘度は、1mPa・s以上35mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)を常温下でキャスティング法、インクジェット法等で塗布して成形することが可能である。この粘度が30mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が5mPa・s以上であることも好ましく、8mPa・s以上であればより好ましい。例えばこの粘度が8mPa・s以上35mPa・s以下であることが好ましい。
組成物(X)の40℃における粘度が1mPa・s以上35mPa・s以下であることも好ましい。この場合、常温における組成物(X)の粘度がいかなる値であっても、組成物(X)を僅かに加熱すれば低粘度化させることが可能である。このため、加熱すれば、組成物(X)をキャスティング法といった方法で成形することが容易であり、組成物(X)をインクジェット法で成形することも可能である。また、組成物(X)を大きく加熱することなく低粘度化させることができるので、組成物(X)中の成分が揮発することによる組成物(X)の組成の変化を生じにくくできる。この粘度が30mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が5mPa・s以上であることも好ましく、8mPa・s以上であればより好ましい。例えばこの粘度が8mPa・s以上35mPa・s以下であることが好ましい。
このような組成物(X)の25℃又は40℃における低い粘度も、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
組成物(X)の硬化物の、厚み寸法が10μmである場合の、全光透過率は、90%以上であることが好ましい。この場合、硬化物を発光装置1における封止材5などの光学部品に適用すると、光学部品を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を特に向上できる。このような硬化物の光透過性も、下記で詳細に説明される組成物(X)の組成によって達成可能である。
組成物(X)の表面張力が20mN/cm以上40mN/cm以下であることも好ましい。この場合、組成物(X)をインクジェット法で塗布するときに吐出安定性が良好であり、サテライトと呼ばれる不良な液滴を生じにくくできる。表面張力が30mN/cm以上40mN/cm以下であればより好ましく、31mN/cm以上38mN/cm以下であれば更に好ましい。
以下、本実施形態について、更に詳しく説明する。
1.発光装置の構造
まず、発光装置1の構造について説明する。発光装置1は、光源と、光源が発する光を透過させる光学部品とを備える。例えば、発光装置1は、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5とを備える。この場合、発光素子4が光源であり、封止材5が光学部品である。封止材5は、発光素子4に直接接触した状態で発光素子4を覆ってもよく、封止材5と発光素子4との間に何らかの層が介在した状態で発光素子4を覆ってもよい。発光装置1は、例えば照明装置であってもよく、表示装置(ディスプレイ)であってもよい。
発光素子4は、例えば発光ダイオードを含む。発光ダイオードは、例えば有機EL素子(有機発光ダイオード)とマイクロ発光ダイオードとのうち少なくとも一方を含む。発光素子4が有機発光ダイオードを含む場合は、発光素子4を備える発光装置1は例えば有機ELディスプレイである。発光素子4がマイクロ発光ダイオードを含む場合は、発光素子4を備える発光装置1は例えばマイクロLEDディスプレイである。なお、ELとはエレクトロルミネッセンスのことであり、LEDとは発光ダイオードのことである。
発光装置1の構造の第一例を、図1を参照して説明する。この発光装置1は、トップエミッションタイプである。発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある発光素子4、及び支持基板2と透明基板3との間に充填されている封止材5を備える。また、第一例では、発光装置1は、支持基板2の透明基板3と対向する面及び発光素子4を覆うパッシベーション層6を備える。すなわち、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5との間に、パッシベーション層6が介在している。
支持基板2は、例えば樹脂材料から作製されるが、これに限定されない。透明基板3は透光性を有する材料から作製される。透明基板3は、例えば、ガラス製基板又は透明樹脂製基板である。発光素子4が有機EL素子を含む場合、有機EL素子は、例えば一対の電極と、電極間にある有機発光層とを備える。有機発光層は、例えば正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層及び電子輸送層を備え、これらの層は前記の順番に積層している。図1には、発光素子4は一つだけ示されているが、発光装置1は複数の発光素子4を備え、かつ複数の発光素子4が、支持基板2上でアレイを構成していてもよい。パッシベーション層6は窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されることが好ましい。
発光装置1の構造の第二例を、図2を参照して説明する。なお、図1に示す第一例と共通する要素については、図2に図1と同じ符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。図2に示す発光装置1も、トップエミッションタイプである。発光装置1は、支持基板2、支持基板2と間隔をあけて対向する透明基板3、支持基板2の透明基板3と対向する面の上にある発光素子4、及び発光素子4を覆う封止材5を備える。
発光素子4が有機EL素子を含む場合、有機EL素子は、第一例の場合と同様、例えば一対の電極41、43と、電極41、43間にある有機発光層42とを備える。有機発光層42は、例えば正孔注入層421、正孔輸送層422、有機発光層423及び電子輸送層424を備え、これらの層は前記の順番に積層している。
発光装置1は複数の発光素子4を備え、かつ複数の発光素子4が、支持基板2上でアレイ9(以下素子アレイ9という)を構成している。素子アレイ9は、隔壁7も備える。隔壁7は、支持基板2上にあり、隣合う二つの発光素子4の間を仕切っている。隔壁7は、例えば感光性の樹脂材料をフォトリソグラフィ法で成形することで作製される。素子アレイ9は、隣合う発光素子4の電極43及び電子輸送層424同士を電気的に接続する接続配線8も備える。接続配線8は、隔壁7上に設けられている。
発光装置1は、発光素子4を覆うパッシベーション層6も備える。パッシベーション層6は窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されることが好ましい。パッシベーション層6は、第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62とを含む。第一パッシベーション層61は素子アレイ9に直接接触した状態で、素子アレイ9を覆うことで、発光素子4を覆っている。第二パッシベーション層62は、第一パッシベーション層61に対して、素子アレイ9とは反対側の位置に配置され、かつ第二パッシベーション層62と第一パッシベーション層61との間には間隔があけられている。第一パッシベーション層61と第二パッシベーション層62との間に、封止材5が充填されている。すなわち、発光素子4と、発光素子4を覆う封止材5との間に、第一パッシベーション層61が介在している。
さらに、第二パッシベーション層62と透明基板3との間に、第二封止材52が充填されている。第二封止材52は、例えば透明な樹脂材料から作製される。第二封止材52の材質は特に制限されない。第二封止材52の材質は、封止材5と同じであっても、異なっていてもよい。
上記に例示した構造を有する発光装置1における封止材5を、組成物(X)から作製できる。すなわち、組成物(X)は、発光素子4のための封止材5を作製するために用いられる。さらに言い換えれば、組成物(X)は、好ましくは封止材作製用の組成物、発光素子封止用の組成物、あるいは発光装置製造用の組成物である。
2.紫外線硬化性樹脂組成物
組成物(X)は、紫外線硬化性を有する硬化性成分を含有する。硬化性成分は、例えばカチオン重合性化合物(F)とカチオン硬化触媒(光カチオン重合開始剤)(G)とを含有する。硬化性成分は、ラジカル重合性化合物と光ラジカル重合開始剤(B)とを含有してもよい。
硬化性成分がラジカル重合性化合物と光ラジカル重合開始剤(B)とを含有する場合、ラジカル重合性化合物は、アクリル化合物(A)を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)に紫外線を照射すると、光ラジカル重合開始剤(B)によって光ラジカル重合反応が開始されてアクリル化合物(A)が硬化することで、硬化物を作製できる。
アクリル化合物(A)と光ラジカル重合開始剤(B)とを含有する組成物(X)(以下、組成物(X1)ともいう)の成分について更に詳しく説明する。
上記のとおり、組成物(X1)はアクリル化合物(A)を含有する。アクリル化合物(A)は、一分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する。
アクリル化合物(A)全体の25℃での粘度は50mPa・s以下であることが好ましい。この場合、アクリル化合物(A)は組成物(X1)を特に低粘度化させることができる。アクリル化合物(A)全体の粘度は30mPa・s以下であれば更に好ましく、20mPa・s以下であれば特に好ましい。また、アクリル化合物(A)全体の粘度は例えば3mPa・s以上である。
アクリル化合物(A)全体の40℃での粘度が50mPa・s以下であることも好ましい。この場合、アクリル化合物(A)は、加熱された場合の組成物(X1)を特に低粘度化させることができる。アクリル化合物(A)全体の粘度は30mPa・s以下であれば更に好ましく、20mPa・s以下であれば特に好ましい。また、アクリル化合物(A)全体の粘度は、例えば3mPa・s以上である。
アクリル化合物(A)が含みうる化合物について説明する。
アクリル化合物(A)は、一分子中に二つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル化合物(A1)を含有することが好ましい。この場合、多官能アクリル化合物(A1)は、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物及び封止材5の耐熱性を高めることができる。多官能アクリル化合物(A1)の量は、アクリル化合物(A)全体に対して50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。アクリル化合物(A)は、多官能アクリル化合物(A1)のみを含有してもよい。
多官能アクリル化合物(A1)は、例えば1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ペンタトリエストールテトラアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、ヘキサジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールトリアクリレート、ビスペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
多官能アクリル化合物(A1)のアクリル当量は、150g/eq以下であることが好ましく、90g/eq以上150g/eq以下であることがより好ましい。多官能アクリル化合物(A1)の重量平均分子量は、例えば100以上1000以下であり、200以上800以下がより好ましい。
多官能アクリル化合物(A1)は、ベンゼン環、脂環及び極性基のうち少なくとも一つを有することが好ましい。極性基は、例えばOH基及びNHCO基のうち少なくとも一方である。この場合、組成物(X1)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、硬化物と、窒化ケイ素、酸化ケイ素といった無機化合物との間の密着性を高めることもできる。多官能アクリル化合物(A1)は、特にトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタトリエストールテトラアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。これらの化合物は、組成物(X1)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、これらの化合物は、硬化物と、窒化ケイ素、酸化ケイ素といった無機化合物との間の密着性を高めることもできる。
多官能アクリル化合物(A1)が、下記式(1)に示す構造を有する化合物(A11)を含有することも好ましい。
CH2=CR1−COO−(R3−O)n−CO−CR2=CH2 …(1)
式(1)において、R1及びR2の各々は水素又はメチル基、nは1以上の整数、R3は炭素数3以上のアルキレン基であり、nが2以上の場合は一分子中の複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
化合物(A11)は、式(1)に示す構造を有すること、特に式(1)のR3の炭素数が3以上であることにより、封止材5の水との親和性を高めにくい。このため、発光素子4が水によって劣化しにくい。R3の炭素数は、例えば3以上15以下である。また、化合物(A11)は、式(1)に示す構造を有すること、特に一分子中に二つの(メタ)アクリロイル基を有することにより、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、このため、硬化物及び封止材5の耐熱性を高めることができる。また、式(1)のnは、例えば1以上12以下の整数である。
アクリル化合物(A)に対する化合物(A11)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、硬化物及び封止材5の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(A)に対する化合物(A11)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
化合物(A11)は、特に沸点が270℃以上である化合物(A12)を含有することが好ましい。すなわち、アクリル化合物(A)は、式(1)に示す構造を有し、かつ沸点が270℃以上である化合物(A12)を含有することが好ましい。この場合、組成物(X)の保存中及び組成物(X)が加熱された場合に、組成物(X)からアクリル化合物(A)が揮発しにくい。そのため、組成物(X)の保存安定性が損なわれにくい。また、組成物(X)の硬化物中及び封止材5中に化合物(A12)が未反応で残留していても、硬化物及び封止材5から化合物(A12)に起因するアウトガスが生じにくい。そのため、発光装置1内に、アウトガスによる空隙が生じにくい。発光装置1中に空隙があると空隙を通じて発光素子4に水分が侵入してしまうおそれがあるが、空隙が生じにくいと、発光素子4に水分が侵入しにくい。なお、沸点は、減圧下の沸点を換算して得られる常圧下の沸点であり、例えばScience of Petroleum, Vol.II. P.1281(1938)に示される方法で求められる。化合物(A12)の沸点は280℃以上であればより好ましい。
アクリル化合物(A)に対する化合物(A12)の百分比は50質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性が効果的に高められ、かつ封止材5からのアウトガス発生が効果的に低減され、更に封止材5の水に対する親和性が特に高められにくい。アクリル化合物(A)に対する化合物(A12)の百分比は、例えば100質量%以下であり、又は95質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
化合物(A12)の25℃での粘度は25mPa・s以下であることが好ましい。この場合、化合物(A12)は組成物(X)の粘度を低めることができる。化合物(A12)の25℃での粘度は、25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。また、化合物(A12)の25℃での粘度は、例えば1mPa・s以上であり、3mPa・s以上であれば好ましく、5mPa・s以上であれば更に好ましい。
化合物(A12)は、例えばアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルと、ポリアルキレングルコールのジ(メタ)アクリル酸エステルと、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルとからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、式(1)においてnが1である化合物である。この場合、式(1)におけるR3の炭素数は4〜12であることが好ましい。R3は、直鎖状でもよく、分岐を有していてもよい。特にアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、サートマー社製の品番SR213、大阪有機化学工業社製の品番V195、サートマー社製の品番SR212、サートマー社製の品番SR247、共栄化学工業社製の品名ライトアクリレートNP−A、サートマー社製の品番SR238NS、大阪有機化学工業社製の品番V230、ダイセル社製の品番HDDA、共栄化学工業社製の品番1,6HX−A、大阪有機化学工業社製の品番V260、共栄化学工業社製の品番1,9−ND−A、新中村化学工業社製の品番A−NOD−A、サートマー社製の品番CD595、サートマー社製の品番SR214NS、新中村化学工業社製の品番BD、サートマー社製の品番SR297、サートマー社製の品番SR248、共栄化学工業社製の品名ライトエステルNP、サートマー社製の品番SR239NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,6HX、新中村化学工業社製の品番HD−N、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,9ND、新中村化学工業社製の品番NOD−N、共栄化学工業社製の品名ライトエステル1,10DC、新中村化学工業社製の品番DOD−N、及びサートマー社製の品番SR262からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、式(1)においてnが2以上である化合物である。nは例えば2〜10であり、2〜7であることが好ましく、2〜6であることも好ましく、2〜3であることも好ましい。R3の炭素数は例えば2〜5である。炭素数が多いほど、硬化物及びカラーレジスト1の疎水性が高くなり、カラーレジスト1が水分を透過させにくい。ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、特にジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート及びトリテトラメチレングリコールジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。また、ポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、特にサートマー社製の品番SR230、サートマー社製の品番SR508NS、ダイセル社製の品番DPGDA、サートマー社製の品番SR306NS、ダイセル社製の品番TPGDA、大阪有機化学工業社製の品番V310HP、新中村化学工業社製の品番APG200、共栄化学工業株式会社製の品名ライトアクリレートPTMGA−250、サートマー社製の品番SR231NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル2EG、サートマー社製の品番SR205NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル3EG、サートマー社製の品番SR210NS、共栄化学工業社製の品名ライトエステル4EG、三菱化学社製の品名アクリエステルHX及び新中村化学工業社製の品番3PGからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。
アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、例えばプロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールを含有する。また、アルキレンオキサイド変性アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルは、例えばダイセル社製の品番EBECRYL145を含有する。
アクリル化合物(A)中の、沸点が270℃以上である成分の百分比が80質量%以上であることが好ましい。アクリル化合物(A)が化合物(A12)を含有する場合は、アクリル化合物(A)中の、化合物(A12)を含めた沸点が270℃以上である成分の百分比が、80質量%以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)の保存安定性が特に損なわれにくく、かつ硬化物及び封止材5からアウトガスが特に生じにくい。アクリル化合物(A)中の、沸点が280℃以上である成分の百分比が80質量%以上であれば、更に好ましい。
化合物(A11)は、化合物(A12)以外の化合物(A13)を含有してもよい。
多官能アクリル化合物(A1)は、一分子中に三つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(A14)を含有してもよい。すなわち、アクリル化合物(A)は、化合物(A14)を含有してもよい。この場合、化合物(A14)は、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。アクリル化合物(A)が化合物(A14)を含有すると、化合物(A14)は、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができ、このため、硬化物及びカラーレジスト1の耐熱性を特に高めることができる。
アクリル化合物(A)が化合物(A14)を含む場合、アクリル化合物(A)に対する化合物(A14)の百分比は0質量%より多く25質量%以下であることが好ましい。化合物(A14)の百分比は10質量%以上であればより好ましい。この場合、硬化物のガラス転移温度を特に高めることができる。また、化合物(A14)が25質量%以下であると、化合物(A14)に起因する組成物(X)の粘度上昇が生じにくい。化合物(A14)の百分比は20質量%以下であれば、組成物(X)の粘度上昇が特に生じにくくなる。
アクリル化合物(A)が式(1)に示す構造を有する化合物(A11)を含有する場合、化合物(A11)は、式(1)中のnの値が5以上の化合物を含まないことが好ましい。(R3−O)nがポリエチレングリコール骨格である場合に、式(1)中のnの値が5より大きい化合物を含まないことが特に好ましい。化合物(A11)が式(1)中のnの値が5より大きい化合物を含む場合でも、アクリル化合物(A)に対する、式(1)中のnの値が5より大きい化合物の百分比は、20質量%以下であることが好ましい。また、化合物(A11)が式(1)中のnの値が5より大きい化合物を含む場合でも、化合物(A11)は、nの値が9よりも大きい化合物を含まないことが好ましく、nの値が7よりも大きい化合物を含まないことが更に好ましい。これらの場合、組成物(X)の粘度上昇が特に生じにくくなる。
アクリル化合物(A)は、一分子中に一つのみの(メタ)アクリロイル基を有する単官能アクリル化合物(A2)を含有することも好ましい。単官能アクリル化合物(A2)は、組成物(X1)の硬化時の収縮を抑制できる。
アクリル化合物(A)全量に対する単官能アクリル化合物(A2)の量は、0質量%より多く50質量%以下であることが好ましい。単官能アクリル化合物(A2)の量が0質量%より多ければ、組成物(X1)の硬化時の収縮を抑制できる。また、単官能アクリル化合物(A2)の量が50質量%以下であれば、多官能アクリル化合物(A1)の量が50質量%以上になりうることで、硬化物及び封止材5の耐熱性を特に向上できる。単官能アクリル化合物(A2)の量が5質量%以上であれば更に好ましく、30質量%以下であることも更に好ましい。
単官能アクリル化合物(A2)は、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジキシルエチルアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、イソオクチルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、トリデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシ化(4)のニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(550)モノアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加物、2−フェノキシエチルアクリレートのプロピレンオキサイド付加物、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
単官能アクリル化合物(A2)は、脂環式構造を有する化合物及び環状エーテル構造を有する化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。
脂環式構造を有する化合物は、例えばフェノキシエチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加物、2−フェノキシエチルアクリレートのプロピレンオキサイド付加物、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、及び1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
環状エーテル構造を有する化合物における環状エーテル構造の環員数は3以上が好ましく、3以上4以下がより好ましい。環状エーテル構造に含まれる炭素原子数は、2以上9以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。環状エーテル構造を有する化合物は、例えば3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
アクリル化合物(A)は、分子骨格中にケイ素を有する化合物(A41)、分子骨格中にリンを有する化合物(A42)、及び分子骨格中に窒素を有する化合物(A43)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を更に含有することが好ましい。この場合、硬化物及び封止材5と無機材料製の部材との間の密着性が向上する。このため、封止材5とパッシベーション層6との間に隙間が生じにくく、この隙間を通じた発光素子4への水分の侵入が起こりにくい。
なお、化合物(A41)、化合物(A42)及び化合物(A43)は分子骨格中にある原子の種類で規定されている。そのため、多官能アクリル化合物(A1)及び単官能アクリル化合物(A2)の各々に含まれる化合物と、化合物(A41)、化合物(A42)及び化合物(A43)の各々に含まれる化合物とは、重複しうる。
化合物(A41)は、例えばアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(例えば信越化学工業社製の品番KBM5103)及び(メタ)アクリル基含有アルコキシシランオリゴマー(例えば信越化学工業社製の品番KR−513)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。ただし、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの沸点は260℃であるため、アクリル化合物(A)がアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルを含有する場合、アクリル化合物(A)に対するアクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピルの百分比は10質量%以下である必要がある。
化合物(A42)は、例えばアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレートといった、アシッドホスホキシ(メタ)アクリレートを含む。
化合物(A43)は、例えばアクリロイルモルホリン、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びペンタメチルピペリジルメタクリレ−トからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
アクリル化合物(A)が化合物(A41)、化合物(A42)及び化合物(A43)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する場合、アクリル化合物(A)に対する化合物(A41)、化合物(A42)及び化合物(A43)の合計量の百分比は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であれば更に好ましい。
アクリル化合物(A)が、イソボルニル骨格を有する化合物を含有することも好ましい。この場合、インクジェット法で吐出される組成物(X)の液滴が寸法を小さくした場合にサテライトを特に発生させにくくできる。すなわち、サテライトを発生させることなく液滴を小型化させやすい。このため、インクジェット法で組成物(X)の小さな液滴を高密度に成形しやすくなり、このため封止材5の薄型化を実現させやすい。アクリル化合物(A)がイソボルニル骨格を有する化合物を含有する場合、アクリル化合物(A)全体に対するイソボルニル骨格を有する化合物の百分比は、0質量%より多く80質量%以下であることが好ましい。この百分比が、0質量%より多いことで、特に液滴の寸法を小型化させやすい。また、この百分比が、80質量%以下であることで、アウトガスが低減しやすい。特にアウトガスを低減するためには、アクリル化合物(A)全体に対するイソボルニル骨格を有する化合物の百分比は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であれば更に好ましい。
イソボルニル骨格を有する化合物は、例えば、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
アクリル化合物(A)は、25℃での粘度が20mPa・s以下である少なくとも一種の化合物からなる成分(a)を含有することが好ましい。この場合、成分(a)は、組成物(X1)を低粘度化できる。成分(a)に含まれる化合物は、多官能アクリル化合物(A1)に含まれる化合物であってもよく、単官能アクリル化合物(A2)に含まれる化合物であってもよい。
アクリル化合物(A)全量に対する成分(a)の割合は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X1)を特に低粘度化でき、組成物(X1)をインクジェット法で特に塗布しやすくなる。成分(a)の割合は、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、成分(a)の割合は、95質量%以下であることもより好ましく、90質量%以下であることも更に好ましい。
成分(a)は、80℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有することが好ましい。すなわち、成分(a)は、25℃での粘度が20mPa・s以下であり、かつ80℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有することが好ましい。この場合、成分(a)は、組成物(X1)を低粘度化しながら、硬化物のガラス転移温度を高めることができる。成分(a)は、90℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有すればよりこの好ましく、100℃以上のガラス転移温度を有する化合物を含有すれば更に好ましい。成分(a)に含まれる化合物のガラス転移温度の上限に制限はないが、例えば150℃以下である。
成分(a)は、例えばイソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート及びポリエチレングリコール200ジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
成分(a)が、イソボルニルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート及びポリエチレングリコール200ジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。これらの化合物は、組成物(X1)の最大ピーク値を特に低減でき、そのため組成物(X1)の最大ピーク値が350mPa・s以下、かつ25℃での粘度に対する最大ピークの値の比の値が20以下を達成することに寄与できる。
成分(a)がイソボルニルアクリレートを含有すれば、特に好ましい。イソボルニルアクリレートは、組成物(X1)の最大ピーク値を低減でき、硬化物のガラス転移温度を高めることができ、かつ組成物(X1)が硬化する際の収縮を低減できる。
アクリル化合物(A)全量に対する、イソボルニルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート及びポリエチレングリコール200ジアクリレートの合計量の割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この場合、最大ピーク値を低減でき、また硬化物のガラス転移温度を高めることができ、かつ組成物(X1)が硬化する際の収縮を低減できる。これらの化合物の合計量は、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以下であることも更に好ましい。
アクリル化合物(A)は、ジシクロペンタジエン骨格、ジシクロペンタニル骨格、ジシクロペンテニル骨格、及びビスフェノール骨格からなる群から選択される少なくとも一種の骨格を有する化合物からなる成分(b)を含有してもよい。成分(b)は、硬化物と、窒化ケイ素、酸化ケイ素といった無機化合物との間の密着性を高めることができる。成分(b)に含まれる化合物は、多官能アクリル化合物(A1)に含まれる化合物であってもよく、単官能アクリル化合物(A2)に含まれる化合物であってもよい。成分(b)に含まれる化合物は、成分(a)に含まれる化合物であってもよい。
ただし、インクジェット法で吐出される組成物(X)の液滴が寸法を小さくした場合にサテライトを発生させにくくするため、すなわちサテライトを発生させることなく液滴を小型化させるためには、アクリル化合物(A)は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を含有しないことが好ましい。
アクリル化合物(A)全量に対する成分(b)の割合は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。成分(b)の割合が5質量%以上であると、硬化物の密着性がより高まる。また、成分(b)の割合が50質量%以下であると、組成物(X1)の最大ピーク値を低くすることができ、さらに組成物(X1)の粘度を低くして組成物(X1)をインクジェット法で成形しやすくできる。成分(b)の割合は、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以下であることも更に好ましい。なお、アクリル化合物(A)が成分(b)を含有しなくてもよく、この場合、組成物(X1)の最大ピーク値を特に低くできる。
成分(b)は、例えばトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート及びビスフェノールFポリエトキシジアクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
アクリル化合物(A)は、下記式(100)に示す化合物、モルホリンアクリレート、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びペンタメチルピペリジルメタクリレ−トからなる群から選択される少なくとも一種の成分である成分(c)を含有することも好ましい。成分(c)によって、組成物(X)から作製される封止材5に、パッシベーション層6といった無機材料製の部材との密着性が付与されうる。成分(c)に含まれる化合物は、成分(a)に含まれる化合物であってもよい。
式(100)において、R0はH又はメチル基である。Xは単結合又は二価の炭化水素基である。R1からR11の各々はH、アルキル基又は−R12−OH、R12はアルキレン基でありかつR1からR11のうち少なくとも一つはアルキル基又は−R12−OHである。R1からR11は互いに化学結合していない。
Xが二価の炭化水素基である場合、Xの炭素数は1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。二価の炭化水素基は、例えばメチレン基、エチレン基又はプロピレン基である。Xが単結合又はメチレン基であれば特に好ましい。この場合、化合物(A1)が分子量が小さく低粘度であるという利点がある。
R1からR11のうち少なくとも一つがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1以上8以下であることが好ましい。アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基である。アルキル基は直鎖状であって分岐を有してもよい。すなわち、例えばアルキル基がブチル基である場合、ブチル基は、t−ブチル基でもよく、n−ブチル基でもよく、sec−ブチル基でもよい。アルキル基がヘキシル基である場合、ヘキシル基は、t−ヘキシル基でもよく、n−ブチル基でもよく、sec−ブチル基でもよい。アルキル基がオクチル基である場合、オクチル基は例えばt−オクチル基でもよい。アルキル基がメチル基又はt−ブチル基であれば特に好ましい。この場合、化合物(A1)が分子量が小さく低粘度であるという利点がある。
式(100)において、シクロヘキサン環の4位のみに、アルキル基又は−R12−OHが接続していることが好ましい。すなわち、R1からR11のうち、R6及びR7の少なくとも一方がアルキル基又は−R12−OHであり、残りの各々がHであることが、好ましい。R1からR11のうち、R6のみがアルキル基又は−R12−OHであり、残りの各々がHであることが、特に好ましい。この場合、式(100)に示す化合物は、良好な反応性を有することができ、かつ封止材5に無機材料製の部材との密着性を特に付与しやすい。これは、式(100)に示す化合物におけるシクロヘキサン環がボート型の立体配座を有し、かつ4位にある嵩高いアルキル基又は−R12−OHが擬エクアトリアル位に位置しやすいためであると、考えられる。式(100)に示す化合物がこのような構造を有することで、式(100)に示す化合物における(メタ)アクリロイル基の反応性が高められると考えられる。また、式(100)に示す化合物がこのような構造を有すると、式(1)に示す化合物は、封止材5中の自由体積を大きくしうる。そのため封止材5と無機材料製の部材との間の界面自由エネルギーが小さくなりやすく、そのため封止材5と無機材料製の部材との密着性が高くなりやすいと、考えられる。アルキル基又は−R12−OHが嵩高いほど、アルキル基又は−R12−OHが擬エクアトリアル位に位置しやすくなる。この観点からすると、アルキル基又は−R12−OHの炭素数が多いほど好ましく、またアルキル基又は−R12−OHが分岐を有していることが好ましい。例えばアルキル基又は−R12−OHがt−ブチル基を有することが好ましい。
式(100)において、シクロヘキサン環の3位及び5位の各々のみに、アルキル基又は−R12−OHが接続していることも好ましい。すなわち、R1からR11のうち、R4及びR5の少なくとも一方がアルキル基又は−R12−OHであり、R8及びR9の少なくとも一方がアルキル基又は−R12−OHであり、残りの各々がHであることが、好ましい。R1からR11のうち、R4及びR5の一方のみがアルキル基又は−R12−OHであり、R8及びR9の少なくとも一方がアルキル基又は−R12−OHであり、残りの各々がHであることが、より好ましい。R1からR11のうち、R4及びR5の少なくとも一方がアルキル基又は−R12−OHであり、R8及びR9の一方のみがアルキル基又は−R12−OHであり、残りの各々がHであることも、より好ましい。この場合も、式(100)に示す化合物は、良好な反応性を有することができ、かつ封止材5に無機材料製の部材との密着性を特に付与しやすい。これは、式(100)に示す化合物におけるシクロヘキサン環がボート型の立体配座を有し、かつ3位と5位の各々における嵩高いアルキル基又は−R12−OHが擬エクアトリアル位に位置しやすいためであると、考えられる。このために、シクロヘキサン環の4位のみにアルキル基又は−R12−OHが接続している場合と同様に、式(100)に示す化合物における(メタ)アクリロイル基の反応性が高められ、かつ封止材5と無機材料製の部材との密着性が高くなりやすいと、考えられる。アルキル基又は−R12−OHが嵩高いほど、アルキル基又は−R12−OHが擬エクアトリアル位に位置しやすくなる。この観点からすると、アルキル基又は−R12−OHの炭素数が多いほど好ましく、またアルキル基又は−R12−OHが分岐を有していることが好ましい。例えばアルキル基又は−R12−OHがt−ブチル基であることが好ましい。
R1からR11のうち少なくとも一つが−R12−OHである場合、R12の炭素数は1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。R12は、例えばメチレン基、エチレン基又はプロピレン基である。R12はがメチレン基であれば特に好ましい。この場合、化合物(A1)が分子量が小さく低粘度であるという利点がある。
式(100)において、R1からR11の各々がH又はアルキル基であり、かつR1からR11のうち少なくとも一つがアルキル基であれば、特に好ましい。この場合、式(100)に示す化合物は、特に低い粘度を有することができ、そのため組成物(X)が特に低い粘度を有することができる。そのため、組成物(X)をインクジェット法で特に成形しやすくなる。
成分(c)は、下記式(110)に示す化合物、下記式(120)に示す化合物及び下記式(130)に示す化合物からなる群から選択される、少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。この場合、組成物(X1)が硬化する際の収縮を特に低減できる。さらに、これらの化合物は、硬化物と、窒化ケイ素、酸化ケイ素といった無機化合物との間の密着性を特に高めることもできる。
化合物(A1)が、式(110)に示す化合物と式(120)に示す化合物とのうち少なくとも一方を含有すれば、特に好ましい。この場合、組成物(X)を特に低粘度化しやすく、封止材5のガラス転移温度を特に高めやすく、更に封止材5と無機材料製の部材との密着性を特に高めやすい。また、式(110)に示す化合物及び式(120)に示す化合物は、揮発しにくいため、組成物(X)の保存安定性を向上させやすい。
また、化合物(A1)がモルホリンアクリレート、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びペンタメチルピペリジルメタクリレ−トからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することも好ましい。これらの化合物は、窒素を含むことで無機材料との良好な親和性を有し、そのため封止材5と無機材料製の部材との密着性を特に高めやすい。また、これらの化合物の粘度は低く、そのため、これらの化合物は組成物(X)の粘度を増大させにくい。さらに、これらの化合物揮発しにくいため、組成物(X)の保存安定性を向上させやすい。
アクリル化合物(A)全体に対する、化合物(A1)の量は、5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この場合、封止材5は、高いガラス転移温度と無機材料製の部材との密着性とを両立できる。化合物(A1)の量は5質量%以上60質量%以下であればより好ましく、5質量%以上50質量%以下であれば特に好ましい。
組成物(X1)が後述する吸湿剤(C)を含有する場合、特に吸湿剤(C)を含有しかつ吸湿剤(C)がゼオライト粒子を含有する場合は、アクリル化合物(A)は窒素を有する化合物を含有しないことが好ましい。このため、アクリル化合物(A)は、上記のモルホリンアクリレート、ジエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びペンタメチルピペリジルメタクリレ−トのいずれも含有しないことが好ましい。この場合、組成物(X1)の保存中に組成物(X1)の粘度上昇が起こりにくい。これは、組成物(X1)が窒素を有する化合物及び吸湿剤(C)を含有すると、窒素を有する化合物と吸湿剤(C)とが反応しやすいためであると考えられる。
組成物(X1)は、アクリル化合物(A)以外のラジカル重合性化合物(E)を更に含有してもよい。ラジカル重合性化合物(E)は、一分子に二つ以上のラジカル重合性官能基を有する多官能ラジカル重合性化合物(E1)と、一分子に一つのみのラジカル重合性官能基を有する単官能ラジカル重合性化合物(E2)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。アクリル化合物(A)とラジカル重合性化合物(E)との合計量に対するラジカル重合性化合物(E)の量は、例えば10質量%以下である。多官能ラジカル重合性化合物(E1)は、例えば一分子中にエチレン性二重結合を2つ以上有する芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー及びその他特殊オリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。単官能ラジカル重合性化合物(E2)は、例えばN−ビニルホルムアミド、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタムからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
光ラジカル重合開始剤(B)は、紫外線が照射されるとラジカル種を生じさせる化合物であれば、特に制限されない。光ラジカル重合開始剤(B)は、例えば芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
光ラジカル重合開始剤(B)は、フォトブリーチング性を有する成分を含むことが好ましい。フォトブリーチング性を有する成分は、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤を含むことが好ましく、オキシムエステル系光開始剤のうちのフォトブリーチング性を有する化合物を含むことも好ましい。
光ラジカル重合開始剤(B)は、分子中に増感剤骨格を有する成分を含むことも好ましい。増感剤骨格は、例えば9H−チオキサンテン−9−オン骨格とアントラセン骨格とのうち少なくとも一方を含む。すなわち、光ラジカル重合開始剤(B)は、9H−チオキサンテン−9−オン骨格とアントラセン骨格とのうち少なくとも一方を有する成分を含むことが好ましい。
光ラジカル重合開始剤(B)は、硬化性を向上させ、硬化物からアウトガスを生じにくくさせる観点から、フォトブリーチング性の有無にかかわらず、オキシムエステル系光開始剤を含むことも好ましい。
オキシムエステル系光開始剤は、組成物(X)から分解物が生じることによる組成物(X)及び製造装置の汚染を起こりにくくするため、並びに硬化物からアウトガスを更に生じにくくするために、芳香環を有する化合物を含むことが好ましく、芳香環を含む縮合環を有する化合物を含むことがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環とを含む縮合環を有する化合物を含むことが更に好ましい。
オキシムエステル系光開始剤は、例えば1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−、2−(o−ベンゾイルオキシム)]、及びエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)、並びに特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2010−527339、特表2010−527338、特開2013−041153号公報、及び特開2015−93842号公報等に記載されているオキシムエステル系光開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オキシムエステル系光開始剤は、市販品であるカルバゾール骨格を有するイルガキュアOXE−02(BASF製)、アデカアークルズNCI−831、N−1919(ADEKA社製)及びTR−PBG−304(常州強力電子新材料社製)、ジフェニルスルフィド骨格を有するイルガキュアOXE−01、アデカアークルズNCI−930(ADEKA社製)、TR−PBG−345及びTR−PBG−3057(以上、常州強力電子新材料社製)、並びにフルオレン骨格を有するTR−PBG−365(常州強力電子新材料社製)及びSPI−04(三養製)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有してもよい。特にオキシムエステル系光開始剤がジフェニルスルフィド骨格又はフルオレン骨格を有する化合物を含むと、フォトブリーチングによって硬化物が着色しにくい点で好ましい。オキシムエステル系光開始剤がカルバゾール骨格を有する化合物を含むことも、露光感度が高まりやすい点で好ましい。
オキシムエステル系光開始剤が二種以上の化合物を含有することも好ましい。この場合、例えばオキシムエステル系光開始剤が露光感度の異なる二種以上の化合物を含有することで、良好な露光感度を維持しつつ、光ラジカル重合開始剤(B)の量を減らすことが可能なため、硬化物からアウトガスを更に生じにくくできる。
組成物(X1)中のラジカル重合性化合物に対する光ラジカル重合開始剤(B)の量は、0.5質量%以上4質量%未満であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤(B)の量が0.5質量%以上であることで、組成物(X1)に良好な光硬化性を付与できる。また光ラジカル重合開始剤(B)の量が4質量%未満であることで、組成物(X1)の反応性を適度に緩やかにでき、光硬化物のDSC曲線が、30℃から260℃の範囲内にピークトップがある発熱ピークを有することを、実現しやすくする。
組成物(X1)は、光ラジカル重合開始剤(B)に加えて、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤は、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸−2−ジメチルアミノエチル、p−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物を含有する。
光ラジカル重合開始剤(B)は、この光ラジカル重合開始剤(B)の一部として増感剤を含有してもよい。増感剤は、光ラジカル重合開始剤(B)のラジカル生成反応を促進させて、ラジカル重合の反応性を向上させ、かつ架橋密度を向上させうる。増感剤は、例えば9,10−ジブトキシアントラセン、9−ヒドロキシメチルアントラセン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アントラキノン、1,2−ジヒドロキシアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ジエトキシナフタレン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、及びp−ジエチルアミノベンズアルデヒドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
組成物(X1)中の増感剤の含有量は、例えば組成物(X1)の固形分100質量部に
対して、0.1質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。増感剤の含有量がこのような範囲であれば、空気中で組成物(X1)を硬化させることができ、組成物(X1)の硬化を窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行う必要がなくなる。
組成物(X1)は、光ラジカル重合開始剤(B)に加えて、重合促進剤を含有してもよい。重合促進剤は、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、安息香酸−2−ジメチルアミノエチル、p−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチルといったアミン化合物を含有する。
組成物(X)中の硬化性成分がカチオン重合性化合物(F)とカチオン硬化触媒(G)とを含有する場合の、組成物(X)(以下、組成物(X2)ともいう)の成分について説明する。
組成物(X2)中のカチオン重合性化合物(F)は、例えば多官能カチオン重合性化合物(F1)と単官能カチオン重合性化合物(F2)とのうち少なくとも一方を含有する。
多官能カチオン重合性化合物(F1)は、シロキサン骨格を有さない多官能カチオン重合性化合物(F11)と、シロキサン骨格を有する多官能カチオン重合性化合物(F12)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。
多官能カチオン重合性化合物(F11)は、シロキサン骨格を有さず、一分子あたり二以上のカチオン重合性官能基を有する。多官能カチオン重合性化合物(F11)の一分子あたりのカチオン重合性官能基の数は2〜4個であることが好ましく、2〜3個であれば更に好ましい。
カチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
多官能カチオン重合性化合物(F11)は、例えば多官能脂環式エポキシ化合物、多官能ヘテロ環式エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、及びアルキレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルからなる群から選択される化合物のうち、少なくとも一種の化合物を含有する。
多官能脂環式エポキシ化合物は、例えば下記式(1)に示す化合物と下記式(20)に示す化合物とのうち、いずれか一方又は両方を含有する。
式(1)において、R1〜R18の各々は独立に水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素
基である。炭化水素基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましい。炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1〜20のアルキル基;ビニル
基、アリル基といった炭素数2〜20のアルケニル基;又はエチリデン基、プロピリデン基といった炭素数2〜20のアルキリデン基である。炭化水素基は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい。R1〜R18の各々は独立に、水素原子又は炭素数1〜2
0の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
式(1)において、Xは単結合又は二価の有機基であり、有機基は、例えば−CO−O−CH2−である。
式(1)に示す化合物の例は、下記式(1a)に示す化合物及び下記式(1b)に示す化合物を含む。
式(20)中、R1〜R12の各々は独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜20の炭化水素基である。ハロゲン原子は、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。炭素数1〜20の炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、アリル基といった炭素数2〜20のアルケニル基;又はエチリデン基、プロピリデン基といった炭素数2〜20のアルキリデン基である。炭素数1〜20の炭化水素基は、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい。
R1〜R12の各々は独立に、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
式(20)に示す化合物の例は、下記式(20a)に示すテトラヒドロインデンジエポキシドを含む。
多官能ヘテロ環式エポキシ化合物は、例えば下記式(2)に示すような三官能エポキシ化合物を含有する。
多官能オキセタン化合物は、例えば下記式(3)に示すような二官能オキセタン化合物を含有する。
アルキレングリコールジグリシジルエーテルは、例えば下記式(4)〜(7)に示す化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有する。
アルキレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルは、例えば下記式(8)に示す化合物を含有する。
より具体的には、多官能カチオン重合性化合物(F11)は、例えばダイセル製のセロキサイド2021P及びセロキサイド8010、日産化学製のTEPIC−VL、東亞合成製のOXT−221、並びに四日市合成製の1,3−PD−DEP、1,4−BG−DEP、1,6−HD−DEP、NPG−DEP及びブチレングリコールモノビニルモノグリシジルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
多官能カチオン重合性化合物(F11)は、多官能脂環式エポキシ化合物を含有することも好ましい。この場合、組成物(X2)は特に高いカチオン重合反応性を有することができる。
多官能脂環式エポキシ化合物は、特に式(1)に示す化合物及び式(20)に示す化合物のうち、いずれか一方又は両方を含有することが好ましい。この場合、組成物(X2)はより高いカチオン重合反応性を有することができる。
多官能脂環式エポキシ化合物が式(1)に示す化合物を含有する場合、式(1)に示す化合物は、式(1a)に示す化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X2)は、より高いカチオン重合反応性を有するとともに、特に低い粘度を有することができる。
また、特に式(20)に示す化合物は、低い粘度を有するため、式(20)に示す化合物を含有する場合、組成物(X2)は、良好な紫外線硬化性を有することができるとともに、特に低い粘度を有することができる。さらに、式(20)に示す化合物は、低い粘度を有するわりには、揮発しにくい性質を有する。そのため、組成物(X2)が式(20)に示す化合物を含有しても、組成物(X2)には、式(20)に示す化合物の揮発による組成の変化が生じにくい。このため、組成物(X2)は、式(20)に示す化合物を含有することで、保存安定性を損なうことなく低粘度化されうる。
式(20)に示す化合物は、例えばテトラヒドロインデン骨格を有する環状オレフィン化合物を、酸化剤を用いて酸化することで合成できる。
式(20)に示す化合物は、2つのエポキシ環の立体配置に基づく4つの立体異性体を含みうる。式(20)に示す化合物は、4つの立体異性体のいずれを含んでもよい。すなわち、式(20)に示す化合物は、4つの立体異性体からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。式(20)に示す化合物中における、4つの立体異性体のうちのエキソ−エンド体とエンド−エンド体の合計量の割合は、エポキシ化合物(A1)全体に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であれば更に好ましい。この場合、硬化物の耐熱性を向上できる。なお、式(20)に示す化合物中の特定の立体異性体の割合は、ガスクロマトグラフィーで得られるクロマトグラムに現れるピーク面積比に基づいて、求めることができる。
式(20)に示す化合物中のエキソ−エンド体及びエンド−エンド体の量を少なくするためには、式(20)に示す化合物を精密蒸留する方法、シリカゲルなどを充填剤として用いたカラムクロマトグラフィーを適用する方法といった、適宜の方法を適用できる。
組成物(X2)が多官能カチオン重合性化合物(F11)を含有する場合、樹脂成分全量に対する多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合は、5〜95質量%の範囲内であることが好ましい。なお、樹脂成分とは、組成物(X2)中のカチオン重合性を有する化合物のことをいい、多官能カチオン重合性化合物(F1)及び単官能カチオン重合性化合物(F2)を含む。多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合が5質量%以上であれば組成物(X2)は光カチオン重合反応時に特に優れた反応性を有することができ、またそれによって、硬化物が高い強度(硬度)を有することができる。また、多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合が95質量%以下であれば、組成物(X2)が吸湿剤(C)を含有する場合に、組成物(X2)中で吸湿剤(C)を特に均一に分散させやすくできる。この多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合は、12質量%以上であればより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましく、20質量%以上であれば更に好ましく、25質量%以上であれば特に好ましい。またこの多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合は、85質量%以下であればより好ましく、60質量%以下であれば更に好ましい。例えば多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合が20〜60質量%の範囲内であることが好ましい。
多官能カチオン重合性化合物(F11)が多官能脂環式エポキシ化合物を含有する場合、多官能脂環式エポキシ化合物は、多官能カチオン重合性化合物(F11)の一部であってもよく、全部であってもよい。多官能カチオン重合性化合物(F11)に対する、多官能脂環式エポキシ化合物の割合は、15〜100質量%の範囲内であることが好ましい。この割合が15質量%以上であると、多官能脂環式エポキシ化合物は組成物(X2)の紫外線硬化性の向上に特に寄与できる。
多官能カチオン重合性化合物(F12)は、シロキサン骨格と、一分子あたり二以上のカチオン重合性官能基とを有する。多官能カチオン重合性化合物(F12)の一分子あたりのカチオン重合性官能基の数は、2〜6個であることが好ましく、2〜4個であれば更に好ましい。多官能カチオン重合性化合物(F12)は、組成物(X2)のカチオン重合反応性の向上に寄与できるとともに、硬化物及び封止材5の耐熱変色性の向上に寄与できる。封止材5の耐熱変色性が高いと、封止材5を備える発光装置1の発光強度の経時劣化及び発光色の経時変化を抑制できる。また、多官能カチオン重合性化合物(F12)は硬化物及び封止材5の低弾性率化にも寄与することができ、このため、封止材5を備える発光装置1にフレキシブル性を付与することも可能である。また、組成物(X2)が吸湿剤を含有する場合、多官能カチオン重合性化合物(F12)は組成物(X2)中及び硬化物中の吸湿剤の分散性の向上に寄与できる。このため、たとえ吸湿剤に分散性向上のための表面処理などを施さない場合であっても、組成物(X2)中及び硬化物中において、吸湿剤が良好に分散できる。
多官能カチオン重合性化合物(F12)は、25℃で液体であることが好ましい。特に多官能カチオン重合性化合物(F12)の25℃における粘度は、10〜300mPa・sの範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X2)の粘度上昇を抑制できる。
多官能カチオン重合性化合物(F12)が有するカチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
多官能カチオン重合性化合物(F12)が有するシロキサン骨格は、直鎖状でも分岐鎖状でも環状でもよい。シロキサン骨格が有するSi原子の数は、2〜14の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X2)は特に低い粘度を有することができる。このSi原子の数は、2〜10の範囲内であればより好ましく、2〜7の範囲内であれば更に好ましく、3〜6の範囲内であれば特に好ましい。
多官能カチオン重合性化合物(F12)は、例えば式(10)に示す化合物と、式(11)に示す化合物とのうち、少なくとも一方を含有する。
式(10)及び式(11)の各々におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、アルキレン基であることが好ましい。Yはシロキサン骨格であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれでもよく、そのSi原子の数は2〜14の範囲内の範囲内であることが好ましく、2〜10の範囲内であることがより好ましく、2〜7の範囲内であれば更に好ましく、3〜6の範囲内であれば特に好ましい。nは2以上の整数であり、2〜4の範囲内であることが好ましい。
より具体的には、例えば多官能カチオン重合性化合物(F12)は、次の式(10a)に示す化合物を含有する。
式(10a)におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。式(10a)におけるnは0以上の整数である。nは、0〜12の範囲内であることが好ましく、0〜8の範囲内であることがより好ましく、0〜5の範囲内であれば更に好ましく、1〜4の範囲内であれば特に好ましい。
式(10a)に示す化合物は、下記式(30)に示す化合物を含有することが好ましい。すなわち、多官能カチオン重合性化合物(F12)は、下記式(30)に示す化合物を含有することが好ましい。
式(30)中、nは0以上の整数であり、0〜12の範囲内であることが好ましく、0〜8の範囲内であることがより好ましく、0〜5の範囲内であれば更に好ましく、1〜4の範囲内であれば特に好ましい。
式(30)に示す化合物の例は、下記式(10a−1)に示す化合物を含む。
多官能カチオン重合性化合物(F12)は、式(10a)に示す化合物に代えて、或いは式(10a)に示す化合物とともに、次の式(10b)〜(10d)並びに(11a)〜(11b)に示す化合物のうち少なくとも一種の化合物を含有してもよい。
式(10d)におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。式(10d)におけるnは0以上の整数である。式(10d)におけるmは2以上の整数である。
式(11a)におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。式(11a)におけるnは0以上の整数であり、8〜80の範囲内であることが好ましい。式(11a)におけるmは2以上の整数であり、2〜6の範囲内であることが好ましい。
式(11b)におけるRは、単結合又は二価の有機基であり、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。式(11b)におけるnは0以上の整数であり、8〜80の範囲内であることが好ましい。
より具体的には、多官能カチオン重合性化合物(F12)は、例えば信越化学株式会社製の品番X−40−2669、X−40−2670、X−40−2715、X−40−2732、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−2046、X−22−343、X−22−163、及びX−22−163Bからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
多官能カチオン重合性化合物(F12)は脂環式エポキシ構造を有することが好ましく、多官能カチオン重合性化合物(F12)が式(10a)に示す化合物を含有すれば特に好ましい。式(10a)に示す化合物は、組成物(X2)のカチオン重合反応性の向上と低粘度化とに特に寄与できるとともに、硬化物及び封止材5の耐熱変色性の向上及び低弾性率化に特に寄与できる。組成物(X2)が吸湿剤(C)を含有する場合は組成物(X2)中の吸湿剤(C)の分散性向上にも特に寄与できる。
組成物(X2)が多官能カチオン重合性化合物(F12)を含有する場合、樹脂成分全量に対する多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合は、5〜95質量%の範囲内であることが好ましい。多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合が5質量%以上であれば、特に組成物(X2)が吸湿剤(C)を含有する場合に、組成物(X2)中及び硬化物中での吸湿剤(C)の分散性が特に向上することで、硬化物の透明性が特に向上する。また、多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合が95質量%以下であれば、組成物(X2)が特に高い光カチオン重合反応性を有することができ、そのため、硬化物は特に高い強度(硬度)を有することができる。この多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合は、6質量%以上であればより好ましく13質量%以上であれば更に好まく、20質量%以上であれば特に好ましい。また、この多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合は、70質量%以下であればより好ましく、この場合、硬化物を高屈折率化できる。多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合は、45質量%以下であれば更に好ましい。例えば多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合が20〜70質量%の範囲内であることが好ましい。
単官能カチオン重合性化合物(F2)は、カチオン重合性官能基を一分子に対して一つのみ有する。カチオン重合性官能基は、例えばエポキシ基、オキセタン基及びビニルエーテル基からなる群から選択される少なくとも一種の基である。
単官能カチオン重合性化合物(F2)の25℃における粘度は8mPa・s以下であることが好ましい。この場合、組成物(X2)が溶媒を含有しなくても、単官能カチオン重合性化合物(F2)は組成物(X2)の粘度を低減できる。特に単官能カチオン重合性化合物(F2)の25℃における粘度は、0.1〜8mPa・sの範囲内であることが好ましい。
単官能カチオン重合性化合物(F2)は、例えば下記式(12)〜(17)に示す化合物及びリモネンオキシドからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
樹脂成分全量に対する単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合は、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合が5質量%以上であれば組成物(X2)の粘度を特に低減できる。また、単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合が50質量%以下であれば、組成物(X2)は光カチオン重合反応時に特に優れた反応性を有することができ、またそれによって、硬化物が高い強度(硬度)を有することができる。この単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合は、10質量%以上であればより好ましく、15質量%以上であれば更に好ましい。また、この単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合は、40質量%以下であればより好ましく、35質量%以下であれば更に好ましく、30質量%以下であれば特に好ましい。単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合が特に35質量%以下であれば、組成物(X2)を保管している間の組成物(X2)中の成分の揮発量を効果的に低減でき、そのため組成物(X2)を長期間保存しても組成物(X2)の特性が損なわれにくい。さらに、硬化物にタックが生じることを特に抑制できる。例えば単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合が10〜35質量%の範囲内であることが好ましい。
また、特に組成物(X2)が多官能カチオン重合性化合物(F11)と多官能カチオン重合性化合物(F12)とを含有する場合、樹脂成分全量に対して、多官能カチオン重合性化合物(F11)の割合は、30〜60質量%の範囲内、多官能カチオン重合性化合物(F12)の割合は15〜30質量%の範囲内、単官能カチオン重合性化合物(F2)の割合は15〜40質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物(X2)の良好な保存安定性と低い粘度と良好なカチオン重合反応性とをバランス良く達成でき、更に硬化物の優れた透明性、優れた吸湿性及び高い屈折率をバランス良く達成できる。
カチオン重合性化合物(F)は、オキセタン基を有する化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物(X2)から光硬化物を作製する場合の硬化反応の進行を適度に緩やかにしやすく、これにより、光硬化物のDSC曲線が、30℃から260℃の範囲内にピークトップがあるピークを有することが、実現されやすい。
オキセタン基を有する化合物の量は、樹脂成分全量に対して25質量%以上80質量%以下であることが好ましい。オキセタン基を有する化合物の量が25質量%以上であると、組成物(X)の保存安定性が特に向上しやすい。また、オキセタン基を有する化合物の量が80質量%以下であると、組成物(X)に紫外線を照射した後に加熱することで硬化させる際に、十分に反応を進行させやすくなる。これにより、例えば硬化物のガラス転移温度を高めやすく、かつ硬化物の線膨張係数を低めやすくなる。オキセタン基を有する化合物の量が30質量%以上70質量%以下であればより好ましく、30質量%以上65質量%以下であれば更に好ましい。
オキセタン基を有する化合物は、式(3)に示す化合物と式(16)に示す化合物とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。すなわち、カチオン重合性化合物(F)は、式(3)に示す化合物と式(16)に示す化合物とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、組成物(X2)から光硬化物を作製する場合の硬化反応の進行を適度に緩やかにしやすい。このうち、式(16)に示す化合物は、式(3)に示す化合物と比べると、反応性はやや高いが、組成物(X2)を低粘度化させやすく、更に単官能カチオン重合性化合物(F2)が含有しうる成分のなかでは、沸点が高く、揮発性が低い。そのため、式(16)に示す化合物は、組成物(X2)の粘度の経時的な上昇を効果的に抑制できる。そのため、組成物(X2)は、長期間保存された場合でも、良好な塗布性を有することができ、良好なインクジェット塗布性を維持することも可能である。
カチオン重合性化合物(F)が、式(3)に示す化合物と式(16)に示す化合物とを含有すれば、両者の比率を調整することで、組成物(X2)から光硬化物を作製する場合の硬化反応の進行のしやすさを適度に調整しつつ、組成物(X2)の低粘度化と保存安定性の向上とを実現できる。
式(16)に示す化合物の量は、組成物(X2)が前記の特性を有するように適宜調整される。例えば式(16)に示す化合物の量は、樹脂成分全量に対して10質量%以上40質量以下であることが好ましい。
カチオン硬化触媒(G)は、光照射を受けてプロトン酸又はルイス酸を発生する触媒であれば、特に制限されない。カチオン硬化触媒(G)は、イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒と、非イオン性光酸発生剤のカチオン硬化触媒とのうち、少なくとも一方を含有できる。
イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、オニウム塩類と有機金属錯体とのうち少なくとも一方を含有できる。オニウム塩類の例は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、及び芳香族スルホニウム塩を含む。有機金属錯体の例は、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、及びアリールシラノール−アルミニウム錯体を含む。イオン性光酸発生型のカチオン硬化触媒は、これらの成分のうち少なくとも一種の成分を含有できる。
非イオン性光酸発生剤のカチオン硬化触媒は、例えばニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、及びN−ヒドロキシイミドホスホナートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
カチオン硬化触媒(G)が含有できる化合物のより具体的な例は、みどり化学製のDPIシリーズ(105,106、109、201など)、BI−105、MPIシリーズ(103、105、106、109など)、BBIシリーズ(101、102、103、105、106、109、110、200、210、300、301など)、TSPシリーズ(102、103、105、106、109、200、300、1000など)、HDS−109、MDSシリーズ(103、105、109、203、205、209など)、BDS−109、MNPS−109、DTSシリーズ(102、103、105、200など)、NDSシリーズ(103、105、155、165など)、DAMシリーズ(101、102、103、105、201など)、SIシリーズ(105、106など)、PI−106、NDIシリーズ(105、106、109、1001、1004など)、PAIシリーズ(01、101、106、1001、1002、1003、1004など)、MBZ−101、PYR−100、NBシリーズ(101、201など)、NAIシリーズ(100、1002,1003、1004、101、105、106、109など)、TAZシリーズ(100、101、102、103、104、107、108、109、110、113、114、118、122、123、203、204など)、NBC−101、ANC−101、TPS−Acetate、DTS−Acetate、Di−Boc Bisphinol A、tert−Butyl lithocholate、tert−Butyl deoxycholate、tert−Butyl cholate、BX、BC−2、MPI−103、BDS−105、TPS−103、NAT−103、BMS−105、及びTMS−105;
米国ユニオンカーバイド社製のサイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、及びサイラキュアUVI−950;
BASF社製のイルガキュア250、イルガキュア261及びイルガキュア264;
チバガイギー社製のCG−24−61;
株式会社ADEKA製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−151、アデカオプトマーSP−170及びアデカオプトマーSP−171;
株式会社ダイセル製のDAICAT II;
ダイセル・サイテック株式会社製のUVAC1590及びUVAC1591;
日本曹達株式会社製のCI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758、及びCIT−1682;
ローディア社製のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トルイルクミルヨードニウム塩であるPI−2074;
3M社製のFFC509;
米国Sartomer社製のCD−1010、CD−1011及びCD−1012;
サンアプロ株式会社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−110P、CPI−110A及びCPI−210S;並びに
ダウ・ケミカル社製のUVI−6992及びUVI−6976を、含む。カチオン硬化触媒(G)は、これらの化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
樹脂成分全量に対するカチオン硬化触媒(G)の割合は、1質量%以上4質量%以下であることが好ましい。この割合が1質量%以上であることで、組成物(X2)は特に良好なカチオン重合反応性を有することができる。また、この割合が4質量%以下であることで、組成物(X2)は良好な保存安定性を有することができ、また過剰なカチオン硬化触媒(G)を含有しないことで製造コスト削減が可能である。樹脂成分全量に対するカチオン硬化触媒(G)の割合が、0.5質量%以上3質量%以下であることも好ましい。この場合、組成物(X2)の反応性を適度に緩やかにでき、光硬化物のDSC曲線が30℃から260℃の範囲内にピークトップがあることを実現しやすくなる。
組成物(X2)は増感剤(H)を含有してもよい。増感剤(H)は、例えば9,10−ジブトキシアントラセン及び9,10−ジエトキシアントラセンのうちいずれか一方又は両方を含有する。樹脂成分全量に対する増感剤(H)の割合は、0質量%より多く、1質量%以下の範囲内であることが好ましい。この場合、増感剤(H)が硬化物の透明性を阻害しにくく、そのため硬化物は良好な透明性を有することができる。増感剤(H)の量が、樹脂成分全量に対して0質量%より多く0.8質量%以下であることが更に好ましい。この場合、組成物(X2)の反応性を適度に緩やかにでき、光硬化物のDSC曲線が30℃から260℃の範囲内にピークトップがあることを実現しやすくなる。
組成物(X)が如何なる硬化性成分を含有する場合であっても、組成物(X)は、吸湿剤(C)を更に含有してもよい。すなわち、組成物(X1)は吸湿剤(C)を更に含有してもよく、組成物(X2)も吸湿剤(C)を更に含有してもよい。組成物(X)が吸湿剤(C)を含有すると、硬化物は優れた吸湿性を有することができる。吸湿剤(C)の平均粒径が200nm以下であることが好ましい。この場合、吸湿剤(C)を含有するにもかかわらず、硬化物は高い透明性を有することができる。また、特に組成物(X)をインクジェット法で塗布する場合、吸湿剤(C)の平均粒径が200nm以下であると、組成物(X)がノズルに詰まりにくいという利点がある。さらに、吸湿剤(C)の平均粒径が200nm以下であると、吸湿剤(C)は、組成物(X)から作製される封止材の表面の平滑性を損ないにくい。そのため、封止材の表面は良好な平滑性を有することができる。
上記のとおり、吸湿剤(C)によって、硬化物は高い吸湿性を有することができる。硬化物の吸湿率は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であればより好ましく、2質量%以上であれば最も好ましい。なお、吸湿率は、次の方法で求められる。アルゴン雰囲気下で、組成物(X)を塗布してから紫外線を照射することで、厚み10μmのフィルムを作製する。紫外線照射条件は、例えば紫外線のピーク波長365nm、紫外線強度3000mW/cm2、紫外線照射時間10秒間である。このフィルムを、例えば真空乾燥器を用いて、加熱温度120℃、加熱時間3時間の条件で、真空乾燥する。乾燥後のフィルムの質量を測定する。この測定結果を初期質量(M0)とする。続いて、フィルムを十分に吸湿させる。そのために、例えばフィルムを85℃、85%RHの条件下に24時間曝露する。吸湿後のフィルムの質量を測定する。この測定結果を吸湿後質量(M)という。これらの初期質量(M0)及び吸湿後質量(M)から、吸湿率を、(M−M0)/M0×100(質量%)の式で算出できる。
吸湿剤(C)は、吸湿性を有する無機粒子であることが好ましく、例えばゼオライト粒子、シリカゲル粒子、塩化カルシウム粒子、及び酸化チタンナノチューブ粒子からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。吸湿剤(C)がゼオライト粒子を含有することが特に好ましい。
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子は、例えば一般的な工業用ゼオライトを粉砕することで製造できる。ゼオライト粒子を製造するに当たって、ゼオライトを粉砕してから水熱合成などによって結晶化させてもよく、この場合、ゼオライト粒子は特に高い吸湿性を有することができる。このようなゼオライト粒子の製造方法は、特開2016−69266号公報、特開2013−049602号公報などにより公知である。
ゼオライト粒子は、ナトリウムイオンを含有するゼオライトを原料として作製されることが好ましく、ナトリウムイオンを含有するゼオライトのうちA型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種を原料とすることがより好ましい。ゼオライト粒子が、A型ゼオライトのうち4A型ゼオライトを原料として作製されることが特に好ましい。これらの場合、ゼオライト粒子は、水分の吸着に好適な結晶構造を有する。
平均粒径200nm以下のゼオライト粒子の製造方法の一具体例を示す。まず、原料であるゼオライト粉を準備し、このゼオライト粉を物理粉砕する。例えばゼオライト粉を水と混合してスラリーを調製し、このスラリーをビーズミル粉砕機にかけることで、ゼオライト粉を物理粉砕できる。
続いて、水熱合成によりゼオライト粉を結晶化させる。例えば物理粉砕後のゼオライト粉を含むスラリーを、オートクレーブで加熱することで、水熱合成を行うことができる。水熱合成の条件は、例えば加熱温度150〜200℃の範囲内、加熱時間15〜24時間の範囲内である。
続いて、ゼオライト粉を乾燥する。乾燥温度は例えば150〜200℃の範囲内であり、乾燥時間は例えば2〜3時間の範囲内である。続いて、必要に応じ、乾燥後のゼオライト粉を乳鉢などを用いて解砕してから篩いにかけることで粒径を整える。
続いて、必要に応じ、ゼオライト粉にイオン交換処理を施す。特にゼオライト粉がLTAなどのナトリウムを含むゼオライトである場合は、ゼオライト粉中のナトリウムをマグネシウムと交換するイオン交換処理を施すことが好ましい。
イオン交換処理は、例えばゼオライト粉を、マグネシウムイオンを含有する水溶液中に分散させて混合物を調製し、この混合物を加熱することで行われる。より具体的には、イオン交換処理は例えば次のように行われる。まずゼオライト粉を、塩化マグネシウム及び水と混合し、得られた混合物を加熱しながら撹拌する処理をする。この処理の間、撹拌を一時的に停止してから混合物の上澄みを捨て、続いて混合物に水を補充してから撹拌を再開するという操作を、適当な間隔をあけて複数回繰り返すことが好ましい。この処理における加熱温度は40〜80℃の範囲内、処理時間は6〜8時間の範囲内であることが好ましい。
イオン交換処理を施した場合、続いて、ゼオライト粉を乾燥する。乾燥温度は例えば150〜200℃の範囲内であり、乾燥時間は例えば2〜3時間の範囲内である。続いて、必要に応じ、乾燥後のゼオライト粉を乳鉢などを用いて解砕してから篩いにかけることで粒径を整える。これにより、平均粒径200nm以下のゼオライト粒子を得ることができる。
ゼオライト粉の結晶化を、シリケート及びアルカリ金属酸化物の存在下で行うこともできる。その場合の平均粒径200nm以下のゼオライト粒子の製造方法の具体例を示す。まず、ゼオライト粉を準備する。ゼオライト粉は、aM12O・bSiO2・Al2O3・cMeの組成を有することが好ましい。M1はアルカリ金属、プロトン、又はアンモニウムイオン(NH4 +)であり、Meはアルカリ土類金属であり、aは0.01〜1の範囲内の数であり、bは20〜80の範囲内の数であり、cは0〜1の範囲内の数である。ゼオライト粉は、ナトリウムイオンを含有するゼオライトを含むことが好ましく、ナトリウムイオンを含有するゼオライトのうちA型ゼオライト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含むことがより好ましい。ゼオライト粉がA型ゼオライトのうち4A型ゼオライトを含むことが特に好ましい。このゼオライト粉を物理粉砕する。例えばゼオライト粉をビーズミル粉砕機にかけることで、ゼオライト粉を物理粉砕できる。
物理粉砕後のゼオライト粉を、M22O、SiO2及びH2Oを含有する溶液に分散させ、スラリーを調製する。M2はアルカリ金属であり、好ましくはK又はNaである。M22O/H2Oのモル比は例えば0.003〜0.01の範囲内であり、SiO2/H2Oのモル比は例えば0.006〜0.025の範囲内である。ゼオライト粉の量は、例えば溶液100mlに対して0.5〜10gである。
このスラリーをオートクレーブで加熱することで、ゼオライト粉の結晶化を行うことができる。その条件は、例えば加熱温度100〜230℃の範囲内、加熱時間1〜24時間の範囲内である。続いて、ゼオライト粉を洗浄してから乾燥させる。これにより、平均粒径200nm以下のゼオライト粒子を得ることができる。
ゼオライト粒子のpHは7以上10以下であることが好ましい。ゼオライト粒子のpHが7以上であると、ゼオライト粒子の結晶が破壊されにくくなり、そのためゼオライト粒子を含有する組成物(X)から作製された封止材が特に高い吸湿性を有することができる。また、ゼオライト粒子のpHが10以下であると、組成物(X)を硬化させる場合にゼオライト粒子が硬化を阻害しにくい。
なお、ゼオライト粒子のpHは、イオン交換水99.95gにゼオライト粒子0.05gを入れて得られた分散液を、90℃で24時間加熱してから、分散液の上澄みのpHをpH測定器で測定することで得られる値である。pH測定器としては、例えば堀場製作所製のコンパクトpHメータ<LAQUAtwin>B−711を用いることができる。
ゼオライト粒子のpHが7以上10以下であるためには、ゼオライト粒子が、カウンターカチオンとしてプロトンを有するFAU Y型のゼオライトからなることが好ましい。
ゼオライト粒子を作製する過程において、ゼオライトの水熱合成を行う場合に、pHの調整のための処理を施してもよい。pHの調整のための処理は、例えば水熱合成のために調製されたゼオライト粉を含むスラリーを加熱する前、スラリーの加熱中、又はスラリーの加熱後に行われる。pHの調整は、例えばスラリーに酸を添加することで行われる。酸は、例えば塩酸、硫酸、硝酸といった無機酸と、ギ酸、酢酸、シュウ酸といった有機酸とからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
吸湿剤(C)の平均粒径は、10nm以上200nm以下であることが好ましい。この平均粒径が200nm以下であれば、硬化物は特に高い透明性を有することができる。また、この平均粒径が10nm以上であれば、吸湿剤(C)の良好な吸湿性を維持できる。なお、この平均粒径は、動的光散乱法による測定結果から算出されるメディアン径、すなわち累積50%径(D50)である。なお、測定装置としては、マイクロトラック・ベル株式会社のナノトラックNanotrac Waveシリーズを用いることができる。
吸湿剤(C)の平均粒径は、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であれば更に好ましく、70nm以下であれば特に好ましい。また、吸湿剤(C)の平均粒径が20nm以上であることが好ましく、50nm以上であればより好ましい。この場合、硬化物は、特に良好な透明性と吸湿性とを有することができる。
吸湿剤(C)の累積90%径(D90)が100nm以下であることも好ましい。この場合、硬化物は特に高い透明性を有することができる。
組成物(X)の全量に対する吸湿剤(C)の割合は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。吸湿剤(C)の割合が1質量%以上であれば硬化物は特に高い吸湿性を有することができる。また、吸湿剤(C)の割合が20質量%以下であれば組成物(X)の粘度を特に低減でき、組成物(X)がインクジェット法で塗布可能な程度の十分な低粘度を有することもできる。吸湿剤(C)の割合は、3質量%以上であれば更に好ましく、5質量%以上であれば特に好ましい。また、吸湿剤(C)の割合は、15質量%以下であればより好ましく、13質量%以下であれば特に好ましい。
組成物(X)は、吸湿剤(C)以外の無機充填材を更に含有してもよい。特に、組成物(X)は、ナノサイズの高屈折率粒子を含有することが好ましい。高屈折率粒子の例はジルコニア粒子を含む。組成物(X)が高屈折率粒子を含有すると、硬化物の良好な透明性を維持しながら、硬化物を高屈折率化することができる。そのため、硬化物を発光装置1における封止材5に適用した場合に、封止材5を透過して外部へ出射する光の取り出し効率を向上することができる。高屈折率粒子の平均粒径は、5〜30nmの範囲内であることが好ましく、10〜20nmの範囲内であれば更に好ましい。
組成物(X)中の高屈折率粒子の割合は、硬化物が所望の屈折率を有するように適宜設計される。特に高屈折率粒子は、硬化物の屈折率が1.45以上、1.55未満の範囲内になるように組成物(X)に含有されることが好ましい。この場合、発光装置1の光の取り出し効率が特に向上する。
組成物(X)が吸湿剤(C)を含有する場合、組成物(X)は、分散剤(D)を更に含有してもよい。分散剤(D)は、吸湿剤(C)に吸着しうる界面活性剤である。分散剤(D)は、例えば吸湿剤(C)の粒子に吸着しうる吸着基(アンカーともいう)と、吸着基が吸湿剤(C)の粒子に吸着することでこの粒子に付着する鎖状又は櫛形状の分子骨格であるテールとを、有する。分散剤(D)は、例えばテールがアクリル系の分子鎖であるアクリル系分散剤と、テールがウレタン系の分子鎖であるウレタン系分散剤と、テールがポリエステル系の分子鎖であるポリエステル系分散剤とからなら群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
組成物(X)が分散剤(D)を含有すると、吸湿剤(C)を組成物(X)中及び硬化物中で良好に分散させることができる。このため、硬化物及び封止材5が吸湿剤(C)を含有するにもかかわらず、硬化物及び封止材5の透明性が吸湿剤(C)によって低下されにくい。また、分散剤(D)は、組成物(X)の保管中における吸湿剤(C)の凝集を効果的に抑制できる。そのため組成物(X)の保存安定性が吸湿剤(C)によって低下されにくい。
さらに、硬化物と窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の密着性が分散剤(D)によって低下されにくい。これは、分散剤(D)が前記のように吸湿剤(C)に吸着しやすいため、分散剤(D)が硬化物と窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の界面に影響を与えにくいからであると、考えられる。このため、封止材5はガラス製の基材との高い密着性を有することができる。また、窒化ケイ素及び酸化ケイ素は発光装置1におけるパッシベーション層6の材料として使用されることがある。このため、パッシベーション層6が窒化ケイ素又は酸化ケイ素から作製されている場合、封止材5はパッシベーション層6と高い密着性を有することができる。
分散剤(D)の沸点は200℃以上であることが好ましい。この場合、組成物(X)から分散剤(D)が揮発しにくいことから、組成物(X)の保存安定性が更に向上する。
分散剤(D)は、吸着基として、塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうちいずれか一方又は両方を有することが好ましい。この場合、吸湿剤(C)を組成物(X)中及び硬化物中で特に良好に分散させることができる。これは、分散剤(D)が塩基性の極性官能基と酸性の極性官能基とのうちいずれか一方又は両方を有することで、吸湿剤(C)に吸着しやすく、そのため吸湿剤(C)を分散させる作用が著しく発現するためと考えられる。
分散剤(D)は、ポリマーを含んでもよい。ポリマーの重量平均分子量は例えば1000以上である。ポリマーは、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルとの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルとの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、及びステアリルアミンアセテートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。分散剤(D)がポリマーを含有すると、ポリマーが吸湿剤(C)の粒子に吸着した際に生じる立体障害効果が向上することで、吸湿剤(C)の分散性が向上しうる。
分散剤(D)は、例えば塩基性の極性官能基を有する分散剤(F1)と酸性の極性官能基を有する分散剤(F2)とのうち、いずれか一方又は両方を含有できる。
塩基性の極性官能基を有する分散剤(F1)における塩基性の極性官能基は、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、及び含窒素複素環基からなる群から選択される少なくとも一種の基を含む。分散剤(F1)が塩基性の極性官能基を有すると、分散剤(F1)は吸湿剤(C)に吸着しやすいため、吸湿剤(C)の分散性が向上しうる。塩基性の極性官能基は、分散剤(F1)の吸湿剤(C)への吸着能を特に高めることができること、吸湿剤(C)の分散性を特に向上できること、及び組成物(X)の粘度を特に低下できることから、アミノ基を含むことが好ましい。
塩基性の極性官能基を有する分散剤(F1)は、例えば商品名:ソルスパース24000(アミン価:41.6mgKOH/g)、商品名:ソルスパース32000(アミン価:31.2mgKOH/g)、商品名:ソルスパース39000(アミン価:25.7mgKOH/g)、商品名:ソルスパースJ100、商品名:ソルスパースJ200等の日本ルーブルリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ;商品名:DISPERBYK−108、DISPERBYK−2013、DISPERBYK−180、DISPERBYK−106、DISPERBYK−162(アミン価:13mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK−163(アミン価:10mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK−168(アミン価:11mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK−2050(アミン価:30.7mgKOH/g)、商品名:DISPERBYK−2150(アミン価:56.7mgKOH/g)等のビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ;商品名:BYKJET−9151(アミン価:17.2mgKOH/g)、商品名:BYKJET−9152(アミン価:27.3mgKOH/g)等のビックケミー・ジャパン株式会社製のBYKJETシリーズ、;及び商品名:アジスパーPB821(アミン価:11.2mgKOH/g)、商品名:アジスパーPB822(アミン価:18.2mgKOH/g)、商品名:アジスパーPB881(アミン価:17.4mgKOH/g)等の味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズを含む。
分散剤(F1)のアミン価は、10mgKOH/g以上であることが好ましく、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下が更に好ましい。また、分散剤(F1)は、リン酸基を有さないことが好ましい。分散剤(F1)がリン酸基を有する場合は、リン酸基に由来する酸価がアミン価の値以下であることが好ましい。この場合、分散剤(F1)が、吸湿剤(C)を特に良好に分散させることができ、組成物(X)の保存安定性を特に高めることができ、硬化物の透明性を特に高めることができ、更に硬化物と窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の密着性を特に高めることができる。分散剤(F1)に含まれうる成分のうち、アミノ基を有しリン酸基を有さない分散剤の例は、ビックケミー社製のDISPERBYK−108を含む。アミノ基及びリン酸基を有しかつリン酸基に由来する酸価がアミン価の値以下である分散剤の例は、ビックケミー社製のDISPERBYK−2013及びビックケミー社製のDISPERBYK−180を含む。
酸性の極性官能基を有する分散剤(F2)における酸性の極性官能基は、例えばカルボキシル基である。分散剤(F2)は、例えばビックケミー社製のDISPERBYK−P105を含有する。
吸湿剤(C)100質量部に対する分散剤(D)の量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。分散剤(D)の量が5質量部以上であれば、分散剤(D)の利点を特に発揮させることができる。分散剤(D)の量が60質量部以下であれば、硬化物と、窒化ケイ素及び酸化ケイ素との間の密着性を、より高めることができる。分散剤(D)の量は15質量部以上であればより好ましい。分散剤(D)の量は50質量部以下であればより好ましく、40質量部以下であればより更に好ましく、30質量部以下であれば特に好ましい。
組成物(X)は、溶剤を含有せず、又は溶剤の含有量が1質量%以下であることが好ましい。この場合、組成物(X)から硬化物を作製する際に組成物(X)を乾燥させて溶剤を揮発させるような必要がなくなる。また、組成物(X)の保存安定性が更に高くなる。溶剤の含有量は、0.5質量%以下であればより好ましく、0.3質量%以下であれば更に好ましく、0.1質量%以下であれば特に好ましい。組成物(X)は、溶剤を含有せず、又は不可避的に混入する溶剤のみを含有することが、特に好ましい。
上述の成分を混合することで、組成物(X)を調製できる。組成物(X)は25℃で液状であることが好ましい。
3.封止材の作製方法及び発光装置の製造方法
組成物(X)を用いる封止材5の作製方法及び発光装置1の製造方法について説明する。
本実施形態では、組成物(X)をインクジェット法で成形して塗膜を作製してから、塗膜に組成物(X)に紫外線を照射し、続いて加熱することで、封止材5を作製することが好ましい。本実施形態では、インクジェット法で組成物(X)を塗布して成形することが可能である。
組成物(X)をインクジェット法で塗布するに当たっては、組成物(X)が常温で十分に低い粘度を有する場合、例えば25℃における粘度が30mPa・s以下、特に15mPa・s以下である場合には、組成物(X)を加熱せずにインクジェット法で塗布することで成形できる。
組成物(X)が加熱されることで低粘度化する性質を有する場合、組成物(X)を加熱してから組成物(X)をインクジェット法で塗布して成形してもよい。組成物(X)の40℃における粘度が30mPa・s以下、特に15mPa・s以下である場合、組成物(X)を僅かに加熱しただけで低粘度化させることができ、この低粘度化した組成物(X)をインクジェット法で吐出することができる。組成物(X)の加熱温度は、例えば20℃以上50℃以下である。
組成物(X)を成形して得られる塗膜に光を照射して硬化させるに当たり、塗膜に照射する光は、例えば紫外線である。紫外線とは、波長が200nm以上410nm以下の範囲内の光線を意味する。塗膜に照射する光の波長は350nm以上410nm以下の範囲内であることが好ましく、385nm以上405nm以下であれば更に好ましい。塗膜に照射する光の代表例の一つとして、波長395nmの光が挙げられる。なお、塗膜に照射する光の波長は、塗膜を硬化させられるのであれば、前記の説明に制限されない。
塗膜に照射する光の照射強度は、20mW/m2以上20W/cm2以下であることが好ましい。なお、光の照射強度は、塗膜を硬化させることができるのであれば、前記の説明に制限されない。
塗膜に光を照射に当たっての、光が照射される部分の形状は、ある程度の面積を有するエリア型でもよく、ライン型でもよい。ライン型の場合、光源に対して塗膜を移動させ、又は塗膜に対して光源を移動させることで、塗膜全体に光を照射できる。この場合、塗膜に光が照射される時間を調整しやすく、この時間を調整することにより積算光量を調整しやすい。
硬化した塗膜を更に加熱する場合の加熱温度は90℃以上であることが好ましい。この場合、塗膜の硬化を更に進行させて、封止材5の線膨張係数を低めやすく、これにより、封止材5の線膨張係数が100ppm/℃以上130ppm/℃以下であることを実現しやすい。加熱温度は150℃以下であることが好ましい。この場合、発光素子4が熱により劣化しにくくできる。
より具体的には、例えばまず、支持基板2を準備する。この支持基板2の一面上に隔壁を、例えば感光性の樹脂材料を用いてフォトリソグラフィ法で作製する。続いて、支持基板2の一面上に複数の発光素子4を設ける。発光素子4は、蒸着法、塗布法といった適宜の方法で作製できる。特に発光素子4を、インクジェット法といった塗布法で作製することが好ましい。これにより、支持基板2に素子アレイ9を作製する。
次に、素子アレイ9の上に第一パッシベーション層61を設ける。第一パッシベーション層61は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
次に、第一パッシベーション層61の上に組成物(X)を、例えばインクジェット法で成形して、塗膜を作製する。発光素子4の形成と組成物(X)の塗布のいずれにもインクジェット法を適用すれば、発光装置1の製造効率を特に向上できる。続いて、塗膜に紫外線を照射することで硬化させて、封止材5を作製する。封止材5の厚みは例えば5μm以上50μm以下である。
封止材5の厚みが4μm以上50μm以下であることも好ましく、4μm以上15μm以下であると更に好ましい。上述のとおり本実施形態ではインクジェット法で組成物(X)の小さな液滴を高密度に成形しやすいため、4μm以上15μm以下という薄型の封止材5を実現させやすい。このように封止材5を薄型化すると、発光装置1内で封止材5に引っ張り応力及び圧縮応力が生じにくくなる。そのため、フレキシブルな発光装置1を実現しやすくなる。
次に、封止材5の上に第二パッシベーション層62を設ける。第二パッシベーション層62は、例えばプラズマCVD法といった蒸着法で作製できる。
次に、支持基板2の一面上に、第二パッシベーション層62を覆うように、紫外線硬化性の樹脂材料を設けてから、この樹脂材料に透明基板3を重ねる。透明基板3は、例えばガラス製基板又は透明樹脂製基板である。
次に外部から透明基板3へ向けて紫外線を照射する。紫外線は透明基板3を透過して紫外線硬化性の樹脂材料へ到達する。これにより、紫外線硬化性の樹脂材料が硬化し、第二封止材52が作製される。
上述のとおり組成物(X)の硬化物からなる封止材5は良好な耐熱性を有することができる。そのため、封止材5に重ねてプラズマCVD法といった蒸着法でパッシベーション層6(第二パッシベーション層62)を作製する場合に、封止材5の温度が上昇しても、封止材5は劣化しにくい。また、有機EL発光装置の使用時に有機EL発光装置の温度が上昇しても、封止材5は劣化しにくい。
なお、本実施形態に係る組成物(X)の用途は、発光素子4のための封止材5の作製に限られない。組成物(X)は、光源が発する光を透過させる種々の光学部品を作製するために用いることができる。例えば、光学部品がカラーレジストであってもよい。すなわち、例えば、組成物(X)に蛍光体を含有させ、この組成物(X)からカラーフィルタにおけるカラーレジストを作製してもよい。この場合、特にインクジェット法を利用すれば、カラーフィルタにおけるカラーレジストを高密度にかつ精度よく作製しやすい。このカラーフィルタを、例えば発光装置である有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイといった表示装置に設けることができる。
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、本発明は下記実施例のみに制限されない。
1.組成物の調製
下記表の「組成」の欄に示す成分を混合することで、実施例及び比較例の組成物を調製した。
なお、表中に示される成分の詳細は次のとおりである。また、下記の成分の粘度はレオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR−2)を使用し、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定された値である。
また、下記のアクリル化合物のガラス転移温度は次の方法で測定した。アクリル化合物と、アクリル化合物に対する百分比が5質量%である光重合開始剤(Irgacure 184)とを混合して混合物を得た。この混合物を膜状に成形して得られた成形体に、高圧水銀灯から紫外線を、最大照度200mW/cm2、積算光量1500mJ/cm2の条件で照射することで、アクリル化合物を重合させ、厚み10μmのフィルムを作製した。このフィルムの示差走査熱量分析を、セイコーインスツルメンツ株式会社製の粘弾性スペクトロメータ「DMS100」を用いて、昇温速度5℃/分の条件で行った場合の、tanδが極大を示す温度を、アクリル化合物のガラス転移温度とした。
(1)ラジカル重合性化合物
・ポリエチレングリコール200ジメタクリレート:新中村化学工業製、粘度14mPa・s(25℃)、ガラス転移温度41℃。
・ペンタトリエストールテトラアクリレート:新中村化学工業製、粘度200mPa・s(40℃)、ガラス転移温度103℃。
(2)多官能カチオン重合性化合物
・セロキサイド8010:ダイセル製、品名セロキサイド8010、式(1a)に示す化合物、比重1.11、粘度60mPa・s、屈折率1.5071。
・OXT−221:東亞合成製、品番OXT−221、式(3)に示す化合物、比重0.998、粘度10mPa・s、屈折率1.4538。
・セロキサイド2021P:ダイセル製、品名セロキサイド2021P、式(1b)に示す化合物、粘度200mP・s。
・X−40−2669:信越化学製、品番X−40−2669、式(10a−1)に示す化合物、粘度45mP・s。
(3)単官能カチオン重合性化合物
・AL−EOX:四日市合成製、品名AL−EOX、式(16)に示す化合物(3−アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン)、粘度2mPa・s。
(4)光ラジカル重合開始剤
・Irgacure TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure TPO。
(5)光カチオン重合開始剤
・CPI−210S:サンアプロ株式会社製の光カチオン開始剤(スルホニウム塩)、品番CPI−210S。
(6)増感剤
・DETX−s:2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、日本化薬社製、品番DETX−s。
・UVS1331:9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成社製、品番UVS1331。
2.評価試験
実施例及び比較例について、次の評価試験を実施した。その結果を表に示す。
(1)透過率
組成物を塗布して厚み10μmの塗膜を作製し、この塗膜に、ウシオ株式会社製のLED−UV照射器(型番 E075IIHD、ピーク波長395nm)を用いて、大気下で、紫外線を3W/cm2の照射強度で5.3秒間照射し、続いて100℃で5分間加熱することで、フィルムを作製した。このフィルムの、JIS K7361−1による全光線透過率を測定した。
(2)粘度
組成物の粘度を、レオメータ(アントンパール・ジャパン社製、型番DHR−2)を使用して、温度25℃、せん断速度1000s-1の条件で測定した。
(3)光硬化物のDSC評価
組成物を塗布して厚み10μmの塗膜を作製し、この塗膜に、ウシオ株式会社製のLED−UV照射器(ピーク波長395nm)を用いて、大気雰囲気下で、紫外線を照射強度3W/cm2、積算光量1600mJ/cm2の条件で照射することで、厚み10μmの光硬化物を作製した。なお、照射強度の値は、ヘレウス社製のUV Power Puck(登録商標) II、UVVを用いた測定結果による。
光硬化物の一部をスパチュラで掻き取って得られたサンプルを、DSC装置(パーキンエルマー社製 Diamond DSC)を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分、測定温度域30〜270℃の条件で示差走査熱量測定を行った。これにより得られたDSC曲線に、30℃から260℃の範囲内にピークトップがあるピークがあるか否かを確認した。ピークがある場合には、ピークトップを示す温度を確認し、かつピークから発熱量を算出した。
(4)一次硬化物の線膨張係数
組成物を塗布して厚み100μmの塗膜を作製し、この塗膜に、ウシオ株式会社製のLED−UV照射器(ピーク波長395nm)を用いて、大気雰囲気下で、紫外線を照射強度3W/cm2、積算光量3000mJ/cm2の条件で照射することで、厚み10μmの一次硬化物を作製した。なお、照射強度の値は、ヘレウス社製のUV Power Puck(登録商標) II、UVVを用いた測定結果による。
この一次硬化物の、40℃から50℃までの範囲での線膨張係数を、TMA(Thermomechanical Analysis, 熱機械分析)により、荷重0.1N、測定温度領域30℃〜240℃、昇温速度5℃/分の条件で測定した。測定装置として、TAインスツルメント社製の型番Q400EMを用いた。
(5)二次硬化物の線膨張係数
上述の「(4)一次硬化物の線膨張係数」の場合と同じ条件で作製した一次硬化物を乾燥機で100℃で5分間加熱することで、二次硬化物を得た。この二次硬化物の線膨張係数を、上述の「(4)一次硬化物の線膨張係数」の場合と同じ条件で測定した。
また、二次硬化物の線膨張係数に対する一次硬化物の線膨張係数の比の値を算出した。
(6)保管性
リコー社製のインクジェットヘッド「MH5421F/5421MF」を用い、流速10ml/minの速度で組成物の循環試験を実施し、その結果を次の基準で評価した。
A:問題なく連続10分間吐出可能であり、かつインクジェットヘッドへのインク(組成物)の付着が少ない。
B:問題なく連続10分間吐出可能であり、かつインクジェットヘッドへのインク(組成物)の付着が多い。
C:連続10分間吐出できない孔がインクジェットヘッドに発生する。