JP2020105249A - 熱可塑性エラストマー組成物および成形品、ならびに熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物および成形品、ならびに熱可塑性エラストマー組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量性を有する熱可塑性エラストマー成形品が得られる熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性エラストマー(X)と、コアおよびシェルを含むコアシェル型構造を有する熱膨張性マイクロカプセル(Y)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記熱可塑性エラストマー(X)は、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)と、架橋剤(x−3)を含む混練物であり、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、前記コアが揮発性物質を含有し、前記シェルが重合体を含有し、前記重合体は、単量体混合物(y−1)と、下記一般式(1)で表される化合物(y−2)を反応して得られる重合体である熱可塑性エラストマー組成物。
Figure 2020105249

【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物および成形品、ならびに熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
加硫ゴムに代わる材料として、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが、自動車、電気・電子、医療、食品、日用品などの分野で幅広く使用されている。特に、引張強度、硬度、圧縮永久歪、あるいは耐油性などの特性に優れたものが必要とされる分野においては、アクリル系ゴムと、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂とを含む混合物を、架橋剤の存在下にて混練しながら動的に架橋したタイプの熱可塑性エラストマー(動的架橋型熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Vulcanizates)ともいう)が使用されている(特許文献1〜4)。
特開2016−8247号公報 特開2016−44251号公報 特開2016−60788号公報 特開2016−65166号公報
近年、上記の動的架橋型熱可塑性エラストマーを自動車などの分野に適用するに際し、自動車などの燃費向上の観点から、当該熱可塑性エラストマー成形品の軽量化(軽量性)が求められている。
本発明は、上記の実情を鑑みてなされたものであり、軽量性を有する熱可塑性エラストマー成形品が得られる熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、熱可塑性エラストマー(X)と、コアおよびシェルを含むコアシェル型構造を有する熱膨張性マイクロカプセル(Y)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記熱可塑性エラストマー(X)は、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)と、架橋剤(x−3)を含む混練物であり、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、前記コアが揮発性物質を含有し、前記シェルが重合体を含有し、前記重合体は、単量体混合物(y−1)と、一般式(1):
Figure 2020105249
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素数が2から12の不飽和炭化水素基であり、当該不飽和炭化水素基は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ−CO−O−、−O−CO−、およびO−のいずれか1つ以上で中断されてもよい。)で表される化合物(y−2)を反応して得られる重合体である熱可塑性エラストマー組成物に関する。
本発明は、前記熱可塑性エラストマー組成物を用いてなる熱可塑性エラストマー成形品に関する。
本発明は、前記熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、前記アクリル系ゴム(x−1)と、前記ポリオレフィン(x−2)と、前記架橋剤(x−3)を溶融混練しながら動的架橋することにより、前記熱可塑性エラストマー(X)を得る工程を含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
本発明は、前記熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、前記単量体混合物(y−1)、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)、および前記揮発性物質を含有する油性混合液を、水性分散媒体に分散して分散液を得る工程と、得られた分散液中で、前記単量体混合物(y−1)と前記一般式(1)で表される化合物(y−2)を反応して、当該単量体混合物(y−1)を重合することにより、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)を得る工程を含む熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物および成形品における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。ただし、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマー(X)と、コアおよびシェルを含むコアシェル型構造を有する熱膨張性マイクロカプセル(Y)を含有する。前記熱可塑性エラストマー(X)は、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)と、架橋剤(x−3)を含む混練物であり、より具体的には、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)を、架橋剤(x−3)の存在下で溶融混練しながら動的に架橋してなる熱可塑性エラストマー(動的架橋型熱可塑性エラストマー)である。よって、前記熱可塑性エラストマー(X)を含む熱可塑性エラストマー組成物を用いることにより、上記の特許文献のとおり、引張強度、硬度、圧縮永久歪、あるいは耐油性などの特性に優れる熱可塑性エラストマー成形品が得られることが期待できる。
一方、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、前記コアが揮発性物質を含有し、前記シェルが重合体を含有し、前記重合体は、単量体混合物(y−1)と、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)を反応して得られる重合体である。一般的に、熱膨張性マイクロカプセルにおいて、熱膨張によりシェルが延伸される際、必ずしも全体が均一に延伸される訳ではなく、強度が弱い薄膜部がより延伸され、その箇所からガス抜けやシェルの破断に至る(ヘタリ現象ともいう)。一方、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、前記一般式(1)で表される化合物(有機過酸化物)が、分子内に2つ以上のエチレン性不飽和結合を有するため、当該有機過酸化物の過酸化結合の分解によって、単量体混合物が反応したマクロモノマーが生成され、さらに、当該マクロモノマーが単量体混合物と共重合することにより、多分岐構造の重合体で形成されたシェルを有するものと推定される。あるいは、前記有機過酸化物が、単量体混合物と共重合した後、重合体中に残存する過酸化結合が分解し、単量体混合物が重合することにより、本発明の熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、多分岐構造の重合体で形成されたシェルを有するものと推定される。このような多分岐構造を有する重合体で形成されたシェルを有する熱膨張性マイクロカプセルは、熱膨張によりシェルが延伸されると、歪み硬化性(高度に分岐構造を有する高分子量が、高延伸の際に粘度が急上昇する現象)によって、高延伸された薄膜部は粘度上昇により延伸し難くなるのに対し、粘度上昇の緩やかな厚膜部がより延伸されるため、マイクロカプセル全体が均一に延伸されるものと推定される結果、ガス抜けや重合体の破断が起こりにくく、耐熱性に優れる。よって、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)を含む熱可塑性エラストマー組成物は発泡倍率に優れるため、軽量性を有する熱可塑性エラストマー成形品が得られる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<熱可塑性エラストマー(X)>
本発明の熱可塑性エラストマー(X)は、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)と、架橋剤(x−3)を含む混練物であり、より具体的には、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)を、架橋剤(x−3)の存在下で溶融混練しながら動的に架橋してなる熱可塑性エラストマー(動的架橋型熱可塑性エラストマー)である。
<アクリル系ゴム(x−1)>
本発明のアクリル系ゴム(x−1)は、前記熱可塑性エラストマー(X)中のソフトセグメントとして作用し、主として柔軟性、耐油性を付与する成分である。前記アクリル系ゴム(x−1)としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を主構成とするゴム質状の重合体であれば特に限定されないが、熱可塑性エラストマー成形品の引張強度などの機械的特性を向上させる観点から、少なくとも、アクリル酸アルキルエステル、およびアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体(a−1)と、架橋性単量体(a−2)を含むモノマー成分(単量体混合物)を重合して得られる共重合体であることが好ましい。なお、上記の「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の双方を意味し、以下も同様である。前記アクリル系ゴム(x−1)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記単量体(a−1)は、分子末端に炭素数1〜10のアルキル基を有するものが好ましい。前記アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。また、前記アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−ブトキシエチルなどが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性エラストマー成形品の柔軟性、耐油性を向上させる観点から、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチルが好ましい。前記単量体(a−1)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記架橋性単量体(a−2)は、後述する架橋剤に作用し、前記アクリル系ゴム(x−1)を架橋できる有機基を有する単量体である。前記架橋性単量体(a−2)としては、後述する架橋剤に作用し、前記アクリル系ゴム(x−1)を架橋できる有機基を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有単量体;クロロ酢酸ビニル、2−クロロエチルビニルエーテル、クロロメチルスチレンなどのハロゲノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸、シトラコン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのエステル類、無水マレイン酸およびその誘導体などのカルボキシル基含有単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどのヒドロキシル基含有単量体;アリルアミンなどのアミノ基含有単量体;2−イソシアナトエチルメタクリレートなどのイソシアネート基含有単量体;などの反応性官能基含有単量体が挙げられる。また、前記架橋性単量体(a−2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチルなどの3級アルキル基含有単量体;ジビニルベンゼン、1、3、5−トリビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、フマル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルなどの多官能単量体などが挙げられる。前記単量体(a−2)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記架橋性単量体(a−2)は、ゲル分の少ない前記アクリル系ゴム(x−1)が得られる観点から、前記反応性官能基含有単量体として、前記エポキシ基を有する単量体、前記ハロゲノ基を有する単量体、前記カルボキシル基を有する単量体が好ましい。また、前記架橋性単量体(a−2)は、ゲル分の少ない前記アクリル系ゴム(x−1)が得られる観点から、3級アルキル基含有単量体、(メタ)アクリル酸アリルが好ましい。
前記アクリル系ゴム(x−1)において、上記のモノマー成分(単量体混合物)としては、熱可塑性エラストマー成形品の耐油性を向上させる観点から、ニトリル系単量体(a−3)を含むことができる。前記ニトリル系単量体(a−3)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、3−エトキシアクリロニトリル、クロトノニトリルなどが挙げられる。前記単量体(a−3)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記単量体(a−1)は、前記アクリル系ゴム(x−1)を形成するモノマー成分(単量体混合物)100質量部において、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、当該単量体(a−1)以外の単量体の残部として任意に設定できる。
前記単量体(a−2)は、前記アクリル系ゴム(x−1)を形成するモノマー成分(単量体混合物)100質量部(ただし、前記単量体(a−2)を除く)に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜8質量部であることがより好ましい。特に、前記単量体(a−2)として、前記3級アルキル基含有単量体および/または前記多官能単量体を使用する場合、当該3級アルキル基含有単量体および/または多官能単量体は、前記アクリル系ゴム(x−1)を形成するモノマー成分(単量体混合物)100質量部(ただし、前記単量体(a−2)を除く)に対して、0.05〜3質量部であることが好ましく、0.1〜2質量部であることがより好ましい。
また、前記モノマー成分として、前記ニトリル系単量体(a−3)を使用する場合、前記単量体(a−1)と前記ニトリル系単量体(a−3)の合計は、前記アクリル系ゴム(x−1)を形成するモノマー成分(単量体混合物)100質量部において、80質量部以上であることが好ましく、90質量部以上であることがより好ましい。
前記アクリル系ゴム(x−1)は、前記モノマー成分(単量体混合物)を、ラジカル重合開始剤などの存在下、従来から公知の方法で重合すればよい。前記ラジカル重合開始剤の使用量としては、前記モノマー成分(単量体混合物)100質量部に対して、0.1〜5質量部程度とすればよい。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の方法が可能であり、特に乳化重合が好ましい。
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物を使用することができる。また、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、過硫酸カリウムなどの無機過酸化物、およびこれら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒などを用いることができる。前記ラジカル重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記乳化重合に使用する乳化剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。また、フッ素系の界面活性剤を使用することもできる。前記乳化剤は、通常、アニオン系界面活性剤が多用され、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩、ロジン酸塩などが用いられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸のカリウム塩およびナトリウム塩などが挙げられる。前記乳化剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、前記重合において、前記アクリル系ゴム(x−1)の分子量を調節するために連鎖移動剤を使用することができる。前記連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類などが挙げられる。前記連鎖移動剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記重合において、上記の各原料は、反応容器に一括投入して重合を開始してもよいし、反応継続時に連続的あるいは間欠的に添加してもよい。前記重合は、窒素置換などの酸素を除去した反応器を用いて、0〜100℃、好ましくは0〜80℃で行うことができる。重合方式は連続式でもよいし、回分式であってもよい。重合時間は0.01〜30時間程度、好ましくは1〜10時間程度である。重合終了後、通常、反応生成物(ラテックス)を塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの無機塩の水溶液に投入して凝固させ、水洗、乾燥することによりアクリル系ゴム(x−1)が得られる。
<ポリオレフィン(x−2)>
本発明のポリオレフィン(x−2)は、前記熱可塑性エラストマー(X)中のハードセグメントとして作用し、熱可塑性エラストマー(X)の成形加工性を向上させる成分である。前記ポリオレフィン(x−2)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記ポリオレフィン(x−2)としては、例えば、α−オレフィンの重合体または共重合体が挙げられる。前記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性エラストマー成形品の耐熱性、耐油性を向上させる観点から、エチレン、プロピレンが好ましい。
前記ポリオレフィン(x−2)としては、例えば、プロピレンを単独で重合したホモポリプロピレン;プロピレンとエチレンを共重合したランダムポリプロピレン;ホモポリプロピレンを重合し、引き続きホモポリプロピレンの存在下にプロピレンとエチレンを共重合したブロックポリプロピレンなどが挙げられる。これらの中でも、ホモポリプロピレンが好ましい。
<架橋剤(x−3)>
本発明の架橋剤(x−3)は、前記アクリル系ゴム(x−1)中の前記架橋性単量体(a−2)の有機基に主に作用することで、前記アクリル系ゴム(x−1)が架橋する。前記架橋剤(x−3)としては、前記架橋性単量体(a−2)が有する有機基に応じて適宜選択すればよいが、例えば、前記反応性官能基含有単量体と共有結合ができる架橋剤;有機過酸化物などが挙げられる。前記架橋剤(x−3)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記反応性官能基含有単量体と共有結合ができる架橋剤としては、例えば、ポリカルボン酸、ポリアミン、ポリオールなどが挙げられる。前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロペンタントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、トリメット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などが挙げられる。前記ポリアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシフェニルジフェニルアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩などが挙げられる。前記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2‐ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2‐ヘキサンジオール、1,5‐ヘキサンジオール、1,6‐ヘキサンジオール、2,5‐ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7‐ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2‐オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4‐トリメチル−1,3−ペンタンジオール、プロピレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。
前記有機過酸化物としては、例えば、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルなどが挙げられる。前記ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシン)ヘキシン−3、3,3,7,7−テトラメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパンなどが挙げられる。前記パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレートなどが挙げられる。前記ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドなどが挙げられる。前記パーオキシエステルとしては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシ−3−メチルベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。これらの中でも、前記ジアルキルパーオキサイドが好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(X)は、柔軟性を向上させる観点から、可塑剤を含むことができる。前記可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、脂肪酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸系ポリエステル類、ポリエーテルエステル類、エポキシ化大豆油などが挙げられる。前記フタル酸エステル類としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレートなどが挙げられる。前記脂肪酸エステル類としては、例えば、ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケートなどが挙げられる。前記トリメリット酸エステル類としては、例えば、トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステルなどが挙げられる。前記可塑剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記熱可塑性エラストマー(X)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記アクリル系ゴム(x−1)以外のゴム、軟化剤、酸化防止剤、造核剤、充填剤、発泡剤、安定剤、加工助剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤などのその他の添加剤を添加することができる。前記その他の添加剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、前記その他の添加剤は、後述する熱可塑性エラストマー組成物を製造する際に使用することもできる。
以下、熱可塑性エラストマー(X)の各成分の含有量について説明する。
前記アクリル系ゴム(x−1)は、前記熱可塑性エラストマー(X)100質量部において、50質量部以上であることが好ましい。
前記ポリオレフィン(x−2)は、前記熱可塑性エラストマー(X)100質量部において、10質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
前記アクリル系ゴム(x−1)と前記ポリオレフィン(x−2)の合計は、前記熱可塑性エラストマー(X)100質量部において、70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることが好ましい。
前記アクリル系ゴム(x−1)の含有割合は、前記アクリル系ゴム(x−1)と前記ポリオレフィン(x−2)の合計中、60〜85質量%であることが好ましい。前記(A)アクリル系ゴム(x−1)の含有割合が60質量%未満では、熱可塑性エラストマー(X)の柔軟性が低下する傾向にある。一方、前記(A)アクリル系ゴム(x−1)の含有割合が85質量%を超えると、熱可塑性エラストマー(X)の成形加工性が低下する傾向にある。
前記架橋剤(x−3)は、前記アクリル系ゴム(x−1)100質量部に対して、1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。前記架橋剤(x−3)の含有量が1質量部未満では、熱可塑性エラストマー(X)の耐油性が低下する傾向にある。一方、前記架橋剤(x−3)の含有量が5質量部を超えると、熱可塑性エラストマー(X)の成形加工性、柔軟性が低下する傾向にある。
前記熱可塑性エラストマー(X)において、前記可塑剤を使用する場合、前記熱可塑性エラストマー(X)100質量部において、5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
<熱可塑性エラストマー(X)>
<熱可塑性エラストマー(X)の製造方法>
前記熱可塑性エラストマー(X)は、前記アクリル系ゴム(x−1)と、前記ポリオレフィン(x−2)と、前記架橋剤(x−3)を溶融混練しながら動的架橋することにより得られる。
前記溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、二軸ローター型押出機などの連続式押出機;加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサーなどの密閉式混練機を使用すればよい。また、前記動的架橋は、溶融混練中に前記架橋剤(x−3)を添加することによって進行するため、前記架橋剤(x−3)は、前記アクリル系ゴム(x−1)と前記ポリオレフィン(x−2)とともに混練機などに同時に投入して動的架橋を行ってもよく、前記アクリル系ゴム(x−1)と前記ポリオレフィン(x−2)を混練機などに投入し、十分に溶融混練を行った後、前記架橋剤(x−3)を投入して動的架橋を行ってもよい。前記架橋剤(x−3)を添加して動的架橋反応が開始されると、組成物の粘度が上昇し、粘度が一定となったときが架橋反応の完了とみなされる。また、前記溶融混練の温度は、通常、前記ポリオレフィン(x−2)の融点より高く、かつ前記アクリル系ゴム(x−1)の分解開始温度未満で行えばよく、具体的には、100〜300℃程度であり、130〜280℃程度であることが好ましく、150〜260℃程度であることがより好ましい。通常、このような方法で得られた熱可塑性エラストマー(X)は、前記アクリル系ゴム(x−1)が、前記ポリオレフィン(x−2)のマトリックス相に微分散された相構造を形成する。
前記熱可塑性エラストマー(X)は、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法など、公知の熱可塑性樹脂の成形方法により所定形状に成形加工することができる。
<熱膨張性マイクロカプセル(Y)>
本発明の熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、コアおよびシェルを含むコアシェル型構造を有し、前記コアが揮発性物質を含有し、前記シェルが重合体を含有し、前記重合体は、単量体混合物(y−1)と、一般式(1):
Figure 2020105249
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素数が2から12の不飽和炭化水素基であり、当該不飽和炭化水素基は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ−CO−O−、−O−CO−、およびO−のいずれか1つ以上で中断されてもよい。)で表される化合物(y−2)を反応して得られる重合体である。
前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、通常、前記シェルを形成する重合体の軟化温度以上に加熱されると、内包された揮発性物質の気化にともなう内圧の上昇によってシェルが延伸され、膨張が始まるため、前記重合体の軟化温度は、使用目的に応じて適宜選択できるが、50℃以上240℃以下であることが好ましく、80℃以上220℃以下であることがより好ましく、100℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。なお、前記重合体の軟化温度は、通常、重合体のガラス転移温度に対応し、例えば、示差走査熱量計(DSC)などによって測定することができる。
熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、平均粒径が、1μm以上500μm以下であることが好ましく、3μm以上300μm以下であることがより好ましく、5μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。前記平均粒径が、1μmよりも小さい場合、シェルの厚みが薄いため、十分な膨張倍率を得ることができず、500μmよりも大きい場合、膨張後の気泡径が大きすぎ発泡成形品の機械的強度が低下するため好ましくない。なお、前記平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。
前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、膨張開始温度(T)が限定されるものではないが、120℃以上240℃以下であることが好ましく、140℃以上220℃以下であることがより好ましく、150℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、最大膨張温度(Tmax)が限定されるものではないが、150℃以上300℃以下であることが好ましく、160℃以上250℃以下であることがより好ましく、170℃以上220℃以下であることがさらに好ましい。熱膨張性マイクロカプセル(Y)を用いた発泡成形において、膨張開始温度(T)および最大膨張温度(Tmax)が低すぎると、成形前の混練時に膨張してしまうことがあり、膨張開始温度(T)および最大膨張温度(Tmax)が高すぎると、成形時に膨張しないことがあるため好ましくない。なお、前記膨張開始温度(T)は、後述する熱機械分析装置(TMA)による測定方法によって求められる。
<単量体混合物(y−1)>
本発明の単量体混合物(y−1)は、単量体(モノマー)を含む単量体(モノマー)成分である。前記単量体は、得られる重合体が揮発性物質によって溶解せず、揮発性物質を内包したマイクロカプセルを後述の製造方法により合成できれば、特に限定されない。前記単量体混合物(y−1)は、熱膨張性マイクロカプセル(Y)に、ガスバリア性、耐熱性、耐溶剤性を付与する観点から、単量体として、ニトリル系モノマー(b−1)を使用することが好ましい。
前記ニトリル系モノマー(b−1)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、3−エトキシアクリロニトリル、クロトノニトリルなどが挙げられ、これらの中でも、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好適である。前記ニトリル系モノマー(b−1)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記単量体混合物(y−1)中に、前記ニトリル系モノマー(b−1)を含む場合、前記単量体混合物(y−1)中、前記ニトリル系モノマー(b−1)は、熱膨張性マイクロカプセル(Y)に、ガスバリア性、耐熱性、耐溶剤性を付与する観点から、25質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
また、前記ニトリル系モノマー(b−1)は、アクリロニトリルによって重合速度を速める観点、およびメタクリロニトリルによって重合体の貯蔵弾性率、ガスバリア性を高くできる観点から、アクリロニトリルとメタクリロニトリルを併用することが好ましく、この場合、アクリロニトリルとメタクリロニトリルの質量比(アクリロニトリル/メタクリロニトリル)は、10/90以上90/10以下であることが好ましく、20/80以上80/20以下であることがより好ましく、30/70以上70/30以下であることがさらに好ましい。なお、アクリロニトリルとメタクリロニトリルの質量比が90/10よりも大きい場合、膨張開始温度が低くなる場合や、高温での膨張倍率が小さくなる場合がある。アクリロニトリルとメタクリロニトリルの質量比が10/90よりも小さい場合、重合が十分に完結せず、膨張倍率が小さくなる場合がある。
また、前記単量体混合物(y−1)は、単量体として、前記ニトリル系モノマー(b−1)以外の他の単量体を使用することができる。前記他の単量体の種類および組成により、熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度、最大膨張温度、最大膨張倍率を調整することができ、使用目的に応じた熱膨張性マイクロカプセル(Y)を合成することができる。
前記他の単量体としては、前記ニトリル系モノマー(b−1)と共重合可能な単量体であれば特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、桂皮酸、ビニル安息香酸、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリルアミド系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ−ト、2―エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートなどの鎖状または環状のエーテル結合を有するモノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ビニルピロリドンなどの窒素原子を有するモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレンなどのスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマーなどが挙げられる。前記他の単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、これらの中でも、カルボキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物、アリール(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマーであることが好ましく、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデンであることがより好ましい。
前記単量体混合物中に、前記カルボキシル基を有するモノマーおよび/または(メタ)アクリルアミド系モノマーを含む場合、前記単量体混合物中、前記カルボキシル基を有するモノマーおよび/または(メタ)アクリルアミド系モノマーは、熱膨張性マイクロカプセル(Y)に、耐熱性、耐溶剤性を付与する観点から、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、そして、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
前記単量体混合物中に、前記アルキル(メタ)アクリレート、前記(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物、前記アリール(メタ)アクリレート、前記スチレン系モノマー、前記ビニルエステル系モノマーのいずれか1つ以上を含む場合、前記単量体混合物中、前記アルキル(メタ)アクリレート、前記(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル化合物、前記アリール(メタ)アクリレート、前記スチレン系モノマー、前記ビニルエステル系モノマーのいずれか1つ以上は、熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度などの膨張特性を調整しやすく、発泡成形品のマトリックス樹脂への分散性が向上することにより、発泡成形品の外観を向上させることができる観点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、そして、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
また、前記単量体混合物は、熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張特性や耐熱性、耐溶剤性などを改良するため、必要に応じて、単量体として、官能基を有する単量体や多官能単量体を併用してもよい。前記官能基を有する単量体、前記多官能単量体は、重合体間で架橋反応ができ、重合体で形成されるシェルを強固にすることができる。
前記官能基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシ基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマー、エポキシ基を有するモノマー、アルコキシシリル基を有するモノマー、アリル基を有するモノマーなどを挙げることができる。また、前記多官能単量体としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物を挙げることができる。前記官能基を有する単量体、前記多官能単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
<一般式(1)で表される化合物(y−2)>
本発明の一般式(1)で表される化合物(y−2)は、分子内に2つ以上のエチレン性不飽和結合と、ペルオキシジカーボネート構造を有する有機過酸化物である。前記一般式(1)で表される化合物(y−2)は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2020105249
(式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素数が2から12の不飽和炭化水素基であり、当該不飽和炭化水素基は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ−CO−O−、−O−CO−、およびO−のいずれか1つ以上で中断されてもよい。)
前記一般式(1)で表される化合物(y−2)は、ペルオキシジカーボネート構造を有する有機過酸化物であることから、通常、10時間半減期温度は30℃以上50℃以下となる。なお、10時間半減期温度(T10)は、前記有機過酸化物を、例えば、0.05から0.1モル/リットルになるようにベンゼンに溶解させた溶液を熱分解させた際に、当該有機過酸化物が10時間で半減期を迎える温度のことを意味する。
前記一般式(1)中、前記不飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐状、および環状のいずれであってもよい。前記炭化水素基の炭素数は、2以上10以下であることが好ましく、3以上8以下であることがより好ましい。炭素数が2であることは実質上の下限であり、炭素数が12よりも多くなると重合活性が劣るため好ましくない。
前記一般式(1)中、前記不飽和炭化水素基におけるエチレン性不飽和二重結合の位置に限定はないが、単量体混合物との共重合性の観点から、不飽和炭化水素基の末端にエチレン性不飽和二重結合があることが好ましい。前記エチレン性不飽和二重結合としては、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、アリル基、メタリル基、ビニレン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基などを挙げることができ、単量体の共重合性の観点から、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基であることが好ましい。
前記一般式(1)中、Rは、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)の合成が容易である観点から、下記一般式(2)で表される重合性基、および下記一般式(3)で表される重合性基のいずれか1つ以上であることが好ましい。
Figure 2020105249
(式(2)中、Rは水素またはメチル基を表し、nは1から2の整数を表す。)
Figure 2020105249
(式(3)中、Rは水素またはメチル基を表し、mは0から2の整数を表す。)
前記一般式(2)中、nは、重合活性の観点から1であることが好ましく、また、前記一般式(3)中、mは、重合活性の観点から0から1であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物(y−2)としては、例えば、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−アクリロイルオキシエチル)エチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−メタクリロイルオキシエチル)エチル)ペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネート、ジ(2−アリルオキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−アリルオキシエチル)エチル)ペルオキシジカーボネート、ジメタリルペルオキシジカーボネート、ジ(2−メタリルオキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−(2’−メタリルオキシエチル)エチル)ペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。なお、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)は、特開昭62−114956号公報などに記載の製造方法にて得ることができる。例えば、前記一般式(1)と同じRで表されるアルコール体(R−OH)をホスゲンと反応させることでクロロホルメート体を合成し、次いで、クロロホルメート体と過酸化水素および、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを反応させることにより、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)を合成することができる。その際、反応温度は通常、−5から25℃である。反応溶媒としては、例えば、トルエンなどの芳香族系炭化水素類、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類などを使用することができる。反応後に、余剰の原料や副生物を除去するために、例えば、イオン交換水や、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性水溶液を用いて洗浄し、目的物を精製することができる。
前記一般式(1)で表される化合物(y−2)は、前記単量体混合物100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下で使用することが好ましく、0.05質量部以上6質量部以下で使用することがより好ましく、0.1質量部以上4質量部以下で使用することがさらに好ましい。前記一般式(1)で表される化合物(y−2)が、前記単量体混合物100質量部に対して、0.01質量部よりも少ない場合、十分に分岐構造が形成されずに溶融張力の向上しないため膨張倍率が小さくなる傾向があり、10質量部よりも多い場合、分子量が小さくなるため膨張倍率が小さくなる傾向を有する。上記の好適な範囲において、高分子量の多分岐ポリマーを効率よく製造することができ、その結果、高温領域や成形加工時において長時間、シェルの破裂やガス抜けが起こらない熱膨張性マイクロカプセル(Y)を得ることが可能となる。
また、前記単量体混合物と前記一般式(1)で表される化合物(y−2)を反応する際に、さらに、重合体の分子量や分岐度の調整、生産性の向上、残存する単量体の低減のため、重合開始剤を使用することができる。前記重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般的に使用されているものを使用することができるが、単量体混合物に可溶できる、油溶性重合開始剤が好ましい。
前記重合開始剤としては、例えば、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート、ジ−メトキシブチルペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート;t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、(α,α’−ビス−ネオデカノイルペルオキシ)ジ−イソプロピルベンゼン、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンなどのペルオキシエステル;ジイソブチリルペルオキシド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(3−カルボキシプロピオニル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチルなどのアゾ化合物などが挙げられる。前記重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記重合開始剤は、10時間半減期温度が、20℃以上80℃以下であることが好ましく、25℃以上60℃以下であることがより好ましく、30℃以上から50℃以下であることがさらに好ましい。前記重合開始剤の10時間半減期温度が、20℃よりも低い場合、重合開始剤の分解速度が速すぎるため、単量体が残存し、膨張倍率が小さくなる傾向にある。前記重合開始剤の10時間半減期温度が、80℃よりも高い場合、重合後に多くの重合開始剤が重合体中に残存するため、発泡成形時に重合体が架橋することで膨張倍率が低下する場合や、発泡成形品の着色原因となる場合がある。なお、10時間半減期温度(T10)は、前記重合開始剤を、例えば、0.05から0.1モル/リットルになるようにベンゼンに溶解させた溶液を熱分解させた際に、当該重合開始剤が10時間で半減期を迎える温度のことを意味する。
前記重合開始剤を使用する場合、前記重合開始剤は、単量体混合物100質量部に対して、0.1質量部以上8質量部以下で使用することが好ましく、0.2質量部以上5質量部以下で使用することがより好ましく、0.3質量部以上3質量部以下で使用することがさらに好ましい。前記重合開始剤が、単量体混合物100質量部に対して、0.1質量部よりも少ない場合、重合が完結しないため効果が発揮されないことがあり、8質量部よりも多い場合、分子量が小さくなるため膨張倍率が小さくなる傾向を有する。
前記重合開始剤を使用する場合、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)と前記重合開始剤との質量比(一般式(1)で表される化合物(y−2)/重合開始剤)は目的に応じて適宜選択することができるため、特に制限はないが、5/95以上であることが好ましく、15/85以上であることがより好ましく、そして、95/5以下であることが好ましく、85/15以下であることがより好ましい。好適な範囲を外れた場合には、前記重合開始剤を複合した効果が現れない場合がある。
<揮発性物質>
本発明の揮発性物質は、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)に内包される物質である。前記揮発性物質は、前記重合体を溶解せずに、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度(T)以下の沸点を有する液体を用いることが好ましい。なお、前記膨張開始温度(T)は、後述する熱機械分析装置(TMA)によって求められる。
前記揮発性物質としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、イソドデカン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン混合物などの炭素数20以下の炭化水素;ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールなどの炭素数14以下のアルコール;CClF、CCl、CClF、CClF−CClFなどのクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシランなどのテトラアルキルシランなど;アゾジカルボンアミドなどの重合体の軟化点以下の温度で分解し、気体を発生する物質などが挙げられる。これらの中でも、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、石油エーテル、n−ヘキサン、イソオクタン、イソドデカンが好ましい。前記揮発性物質は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記揮発性物質は、前記単量体混合物100質量部に対して、5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、10質量部以上40質量部以下であることが好ましく、15質量部以上35質量部以下であることがさらに好ましい。
なお、前記揮発性物質は、熱膨張性マイクロカプセル膨張挙動を制御するため、前記膨張開始温度(T)以上の沸点を有する液体を組み合わせて使用することもできる。
<熱膨張性マイクロカプセル(Y)の製造方法>
本発明の熱膨張性マイクロカプセル(Y)の製造方法は、少なくとも、前記単量体混合物、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)、および前記揮発性物質を含有する油性混合液を、水性分散媒体に分散させて分散液を得る工程(分散工程)と、得られた分散液中で、前記単量体混合物と前記一般式(1)で表される化合物(y−2)を反応させて、単量体混合物を重合させる工程(重合工程)を含む製造方法である。
<油性混合液>
本発明の油性混合液は、少なくとも、前記単量体混合物、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)、および前記揮発性物質を含有する混合液(混合物)である。また、前記油性混合液は、必要に応じて、前記重合開始剤のほか、連鎖移動剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、シランカップリング、消泡剤などを配合してもよい。
<水性分散媒体>
前記水性分散媒体は、前記油性混合液を分散させるための、水を主成分とする媒体である。前記水としては、イオン交換水、蒸留水などを使用することができ、前記水性分散媒体は、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトンなどの水溶性有機溶媒をさらに含有してもよい。
前記水性分散媒体は、前記単量体混合物100質量部に対して、70質量部以上1000質量部以下で使用することが好ましく、100質量部以上900質量部以下で使用することがより好ましい。
前記水性分散媒体は、分散安定剤を含んでいてもよい。前記分散安定剤としては、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、シリカを使用することが好ましい。前記分散安定剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記分散安定剤を使用する場合、前記分散安定剤は、前記単量体混合物100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下で使用することが好ましく、0.5質量部以上15質量部以下で使用することがより好ましい。
前記水性分散媒体は、水溶性または水分散性の分散安定助剤を含んでいてもよい。前記分散安定助剤としては、例えば、ジエタノールアミン−脂肪族ジカルボン酸縮合物(例えば、ジエタノールアミン−アジピン酸縮合物、ジエタノールアミン−イタコン酸縮合物など)、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど)、ポリ(メタ)アクリルアミド、カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸塩、ゼラチン、メチルセルロース、ジアルキルスルホコハク酸塩、ソルビタン脂肪族エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、テトラメチルアンモニウム水酸化物もしくは塩化物などが挙げられる。これらの中でも、ジエタノールアミン−脂肪族ジカルボン酸縮合物、ポリビニルピロリドンを使用することが好ましい。また、ジエタノールアミン−脂肪族ジカルボン酸縮合物は、酸価は、60mgKOH/g以上140mgKOH/g以下であることが好ましく、65mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることがより好ましい。前記分散安定助剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記分散安定助剤を使用する場合、前記分散安定助剤は、前記単量体混合物100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下で使用することが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下で使用することがより好ましい。
前記水性分散媒体は、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセル(Y)が得られる観点から、電解質を含んでいてもよい。前記電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、これらの中でも、塩化ナトリウムを使用することが好ましい。前記電解質は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記電解質を使用する場合、前記電解質は、前記単量体混合物100質量部に対して、200質量部以下で使用することが好ましく、0.5質量部以上50質量部以下で使用することがより好ましい。
前記水性分散媒体は、重合時の熱膨張性マイクロカプセル同士の凝集や、重合反応器内部表面のスケール付着防止の観点から、重合助剤を含んでいてもよい。前記重合助剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸アルカリ金属塩;水溶性アスコルビン酸、水溶性ビタミンB類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ホスホン酸、ホウ酸などが挙げられる。前記重合助剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記重合助剤を使用する場合、前記重合助剤は、前記単量体混合物100質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下で使用することが好ましく、0.005質量部以上0.1質量部以下で使用することがより好ましい。
前記水性分散媒体は、必要に応じ、水に前記分散安定剤、前記分散安定助剤、前記電解質、前記重合助剤などの各成分を添加することにより調整できる。各成分を添加する順序に特に制限はないが、例えば、水に前記分散安定剤を加え、前記分散安定助剤、前記電解質、前記重合助剤などを加えて水性分散媒体を調整できる。
なお、使用する前記分散安定剤や前記分散安定助剤の種類によって、前記水性分散媒体のpHを調整することが好ましい。例えば、前記分散安定剤としてコロイダルシリカを使用する場合、前記水性分散媒体は、塩酸などを加えてpHを3から4に調整することが好ましい。
<分散工程>
本発明の熱膨張性マイクロカプセル(Y)の製造方法において、前記分散工程では、前記水性分散媒体に、前記油性混合液を添加し、攪拌(分散)させることで分散液を調整する。前記油性混合液の添加方式は、一括添加、分割添加、および連続添加のいずれでもよく、特に制限されるものではない。なお、前記分散工程において、単量体混合物の重合を避ける必要がある場合、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)と前記重合開始剤を配合しない油性混合液を、前記水性分散媒体に添加して分散液を調整し、次いで、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)と前記重合開始剤を分散液に添加し、さらに攪拌(分散)させることで分散液を調整してもよい。
前記分散工程における攪拌機(分散機)としては、ホモミキサー、ホモジナイザー、スタティックミキサー、超音波分散機、膜乳化装置などの公知の攪拌機(分散機)を使用することができ、バッチ式でも連続式でもよい。
前記分散工程における攪拌(分散)温度は、0℃以上40℃以下であることが好ましく、5℃以上30℃以下であることがより好ましい。また、前記分散工程における攪拌(分散)時間は、1分以上120分以下であることが好ましく、3分以上60分以下であることがより好ましい。
前記分散液中の油滴の平均粒径は、目的とする熱膨張性マイクロカプセル(Y)の平均粒径とほぼ同じに調整することが好ましく、1μm以上500μm以下であることが好ましく、3μm以上300μm以下であることがより好ましく、5μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。前記分散液中の油滴の平均粒径は、分散安定剤および分散安定助剤の種類および量や、攪拌機(分散機)の回転数および処理時間などにより調整することができる。
<重合工程>
本発明の熱膨張性マイクロカプセル(Y)の製造方法において、前記重合工程は、脱気または窒素置換された反応装置において、上記の分散工程を経て得られた分散液を攪拌下で、例えば、加熱することにより行われる。前記一般式(1)で表される化合物(y−2)および前記重合開始剤の分解方法としては、加熱により分解する方法や、光により分解する方法、また、促進剤などを併用することによるレドックス的な分解方法などがあり、特に限定されるものではない。
前記重合工程における攪拌は、油滴の浮上、重合後の熱膨張性マイクロカプセル(Y)の浮上もしくは沈降を防止できる程度に緩やかに攪拌すればよい。重合反応が進むにつれて、油性混合物に不溶の重合体が水との界面に析出することで自発的にシェルが形成され、そのシェル内に揮発性物質が内包された熱膨張性マイクロカプセル(Y)が得られる。
前記重合工程における温度は、30℃以上90℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。前記重合工程における重合時間は、1時間以上40時間以下であることが好ましく、3時間以上20時間以下であることがより好ましい。前記重合工程において、温度を一定に保ちながら重合を行ってもよく、生産性の向上、残存する単量体や一般式(1)で表される化合物(y−2)、重合開始剤の低減のため、段階的または連続的に温度を昇温させて重合を行ってもよい。
前記重合工程の後に、熱膨張性マイクロカプセル中に残存する単量体の量は、使用した単量体の合計量に対して、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、残存する単量体を含まないことが最も好ましい。前記残存する単量体の量が、0.5質量%よりも多い場合、残存する単量体によりシェルを構成する重合体が可塑化されることで膨張倍率が小さくなるため、好ましくない。なお、前記残存する単量体の量は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒に熱膨張性マイクロカプセル(Y)を溶解または膨潤させた後に、溶液をガスクロマトグラフィーにより測定することで残存する単量体の量を求めることができる。
前記重合工程により、重合体で形成されたシェル内に揮発性物質が内包された熱膨張性マイクロカプセル(Y)が、水性分散媒体に分散した状態で合成される。このような水性分散媒体に分散した熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、例えば、沈降、ろ過、遠心除水などの公知の方法により分離できる(分離工程)。前記分離工程は、必要に応じて、水洗を行いながら繰り返し実施してもよい。
上記のように、水性分散媒体から分離された熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、熱膨張しない程度の比較的低温で乾燥することができる(乾燥工程)。乾燥工程は常圧または減圧下で行うことができる。また、乾燥効率を高めるため、窒素などの気流下で行ってもよい。更に、必要に応じて、水性分散媒体から分離された熱膨張性マイクロカプセル(Y)を、予備加熱することにより、熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度(T)などの膨張特性を調整することができる(予備加熱工程)。前記予備加熱工程は、水性分散媒体から分離された熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度(Ts´)よりも5℃から80℃低い温度で処理することが好ましく、10℃から70℃低い温度で処理することがより好ましい。また、前記予備加熱工程は、5秒から60分間処理することが好ましく、10秒から30分間処理することがより好ましい。前記予備加熱工程により、例えば、水性分散媒体から分離された熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度(Ts´)を、3℃から60℃程度低下させることができるため、所望する膨張特性が得られるように、予備加熱工程の条件を適宜選択することができる。
<熱可塑性エラストマー組成物>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー(X)と、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)を含有する。
前記熱可塑性エラストマー組成物において、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)の含有量は、熱可塑性エラストマー(X)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)の含有量が、0.1質量部未満では、熱可塑性エラストマー組成物の軽量性が低下する傾向にある。一方、10質量部を超えると熱可塑性エラストマー組成物の外観が低下する傾向にある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記熱可塑性エラストマー(X)と前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)をドライブレンドすることにより得ることができる。当該ドライブレンドの方法としては、例えば、タンブラーミキサー、ナウターミキサー、リボコーンミキサーなどの密閉式混合機を使用すればよい。また、前記ドライブレンドの温度は、通常、常温より高く、熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度(T)未満で行えばよい。
前記熱可塑性エラストマー組成物は、通常、熱膨張性マイクロカプセル(Y)の膨張開始温度(T)以上の条件下、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法など、公知の熱可塑性樹脂の成形方法により発泡成形することにより、熱可塑性エラストマー成形品(発泡成形品)が製造できる。これらの中でも、射出成形法が好ましい。
前記熱可塑性エラストマー成形品は、軽量性に優れる。このため、自動車部品の材質として利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限られることはない。
<アクリル系ゴム(x−1)の製造>
水200質量部、ラウリル硫酸ナトリウム1質量部、硫酸第一鉄0.01質量部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.03質量部、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物0.05質量部を、窒素置換したステンレス製反応器に仕込み、表1に示す単量体を表1に示す割合で、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部と共に2時間かけて滴下し、反応温度30℃で乳化重合させた。得られた反応生成物(ラテックス)を1%塩化カルシウム水溶液に滴下し、凝固物を得た。この凝固物を十分に水洗した後、80℃で24時間乾燥させることにより、アクリル系ゴムx−1〜x−3を製造した。
Figure 2020105249
表1に示す数値は質量部であり、表1中、
EAは、アクリル酸エチル;
BAは、アクリル酸ブチル;
MEAは、アクリル酸2−メトキシエチル;
AMAは、メタクリル酸アリル;
ANは、アクリロニトリル;を示す。
<熱可塑性エラストマー(X)の製造>
表2に示す上記で得られた各アクリル系ゴムと、ポリオレィン(x−2)と、可塑剤を、表2に示す割合で使用し、温度170℃、ブレード回転数100rpmに設定したバンバリーミキサーに投入し、トルクが一定になるまで混練を行った。次に、表2に示す架橋剤(x−3)を表2に示す量で追加投入し、トルクが一定になるまで混練を行い、熱可塑性エラストマーX−1〜X−3を製造した。
Figure 2020105249
表2に示す数値は質量部であり、表2中、
PS201Aは、ホモポリプロピレン(サンアロマー社製);
H25Bは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン;
DINPは、フタル酸ジイソノニル;を示す。
<熱膨張性マイクロカプセル(Y)の製造>
固形分20質量%のコロイダルシリカ水分散液(商品名「スノーテックス−O」、日産化学工業社製)12.5質量部、ポリビニルピロリドン0.075質量部、および塩化ナトリウム52質量部をイオン交換水198質量部に加えて混合し、pHが3.0になるように、36質量%の塩酸を添加し、水性分散媒体を調整した。
一方、表3に示す割合の原料(各単量体、一般式(1)で表される化合物、揮発性膨張剤、重合開始剤)を混合して、油性混合液を調整した。
次いで、上記で得られた水性分散媒体と油性混合液を、20℃以下でホモミキサー(T.K ホモミキサーMARKII、特殊機化工業社製)を使用して、8分間、2,400rpmで攪拌することにより、油性混合液を水性分散媒体に分散させた。得られた分散液を攪拌機付の反応装置に仕込み、300rpmで攪拌し、窒素置換後、反応温度50℃で6時間、さらに、70℃で1時間重合させた。冷却後、生成した熱膨張性マイクロカプセルをろ過し、イオン交換水で洗浄した後に、減圧下で30℃、6時間乾燥させて熱膨張性マイクロカプセルY−1〜Y−6を製造した。
Figure 2020105249
表3に示す数値は質量部であり、表3中、
ANは、アクリロニトリル;
MANは、メタクリロニトリル;
MAAは、メタクリル酸;
MMAは、メタクリル酸メチル;
EGDMAは、エチレングリコールジメタクリレート;
MECは、ジ(2−メタクリロイルオキシ)ペルオキシジカーボネート;
SBPは、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート;を示す。
上記で得られた熱膨張性マイクロカプセルY−1〜Y−6について、以下の熱機械分析装置(TMA)の測定によって特性を評価した。
<熱機械分析装置(TMA)の測定条件>
熱機械分析装置(TMA)(TMA/SS6100、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を使用し、試料250μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/分の昇温速度で60℃から350℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定した。変位が上がり始める温度を膨張開始温度(T)、最大変位量(Dmax)となる温度を最大膨張温度(Tmax)とした。また、Dmaxの70%以上の変位量となる温度幅(ΔT70%)を測定した。結果を表3に示す。
<実施例1〜7、比較例1〜3>
<熱可塑性エラストマー組成物、およびその成形品の製造>
上記で得られた熱可塑性エラストマーX−1〜X−3と、熱膨張性マイクロカプセルY−1〜Y−6を、表4または5に示す割合で、常温でタンブラーミキサーを使用してドライブレンドし、200℃に設定した射出成形機によりシート状に成形し、その軽量性を評価した(実施例1〜7、比較例1〜3)。その結果を表4および表5に示す。なお、各性能の評価方法は次の通りである。
<軽量性>
軽量性は、JIS K 7112に準拠し、比重計によって比重を測定し、下記式を用いて発泡倍率を算出して、評価した。
発泡倍率=D/D
:熱膨張性マイクロカプセルを添加せず成形したシートの比重
:熱膨張性マイクロカプセルを添加して成形したシートの比重
Figure 2020105249
Figure 2020105249

Claims (8)

  1. 熱可塑性エラストマー(X)と、コアおよびシェルを含むコアシェル型構造を有する熱膨張性マイクロカプセル(Y)を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、
    前記熱可塑性エラストマー(X)は、アクリル系ゴム(x−1)と、ポリオレフィン(x−2)と、架橋剤(x−3)を含む混練物であり、
    前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、前記コアが揮発性物質を含有し、前記シェルが重合体を含有し、
    前記重合体は、単量体混合物(y−1)と、一般式(1):
    Figure 2020105249
    (式(1)中、Rはそれぞれ独立して、炭素数が2から12の不飽和炭化水素基であり、当該不飽和炭化水素基は、エチレン性不飽和結合を有し、かつ−CO−O−、−O−CO−、およびO−のいずれか1つ以上で中断されてもよい。)で表される化合物(y−2)を反応して得られる重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記一般式(1)中、Rが一般式(2):
    Figure 2020105249
    (式(2)中、Rは水素またはメチル基を表し、nは1から2の整数を表す。)で表される重合性基、および
    一般式(3):
    Figure 2020105249
    (式(3)中、Rは水素またはメチル基を表し、mは0から2の整数を表す。)で表される重合性基のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記熱可塑性エラストマー(X)100質量部に対して、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)は、0.1〜10質量部であることを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記アクリル系ゴム(x−1)は、少なくとも、アクリル酸アルキルエステル、およびアクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選ばれる1種以上の単量体(a−1)と、架橋性単量体(a−2)を含むモノマー成分を重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 前記単量体混合物(y−1)は、少なくとも、ニトリル系モノマー(b−1)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いてなることを特徴とする熱可塑性エラストマー成形品。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
    前記アクリル系ゴム(x−1)と、前記ポリオレフィン(x−2)と、前記架橋剤(x−3)を溶融混練しながら動的架橋することにより、前記熱可塑性エラストマー(X)を得る工程を含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、
    前記単量体混合物(y−1)、前記一般式(1)で表される化合物(y−2)、および前記揮発性物質を含有する油性混合液を、水性分散媒体に分散して分散液を得る工程と、
    得られた分散液中で、前記単量体混合物(y−1)と前記一般式(1)で表される化合物(y−2)を反応して、当該単量体混合物(y−1)を重合することにより、前記熱膨張性マイクロカプセル(Y)を得る工程を含むことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
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