JP2020105086A - 眼科用組成物 - Google Patents
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上記の通り、ドライアイに対する有効成分の種類は少なく、副作用が問題になることもあるため、新たなドライアイ治療薬の開発が待ち望まれていた。
1.(A)アドレナリンα1受容体作動薬から選ばれる1種以上と、(B)ヒアルロン及びその塩、パンテノール、パントテン酸及びパントテン酸塩、ならびにビタミンAから選ばれる1種以上とを含有する眼科用組成物。
2.(A)成分が、フェニレフリン及びその塩から選ばれる1種以上である1記載の眼科用組成物。
3.(B)成分がヒアルロン又はその塩であり、その配合量が眼科用組成物中0.1w/v%以上である1又は2記載の眼科用組成物。
4.(B)成分がパンテノール、パントテン酸又はパントテン酸塩であり、その配合量が眼科用組成物中0.05w/v%以上である1又は2記載の眼科用組成物。
5.(B)成分がビタミンAであり、その配合量が眼科用組成物中1万単位/100mL以上である1又は2記載の眼科用組成物。
6.涙液層安定化剤である1〜5のいずれかに記載の眼科用組成物。
7.マイバム分泌促進剤である1〜5のいずれか1項記載の眼科用組成物。
[(A)成分]
(A)成分は、アドレナリンα1受容体作動薬であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる
アドレナリン受容体作動薬としては、アドレナリンα1受容体作動薬、アドレナリンα2受容体作動薬、アドレナリンβ1受容体作動薬、アドレナリンβ2受容体作動薬、アドレナリンβ3受容体作動薬が挙げられる。これらの中で、アドレナリンα1受容体作動薬は血管収縮剤として機能する。本発明はアドレナリンα1受容体作動薬を用いるものであり、アドレナリンα1受容体作動薬としては、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン、メトキサミン、フェニルプロパノラミン、エチレフリン、ミドドリン、トラマゾリン、シネフリン、シラゾリン、キシロメタゾリン及びこれらの薬学的に許容される塩等の選択的α1受容体作動薬;エピネフリン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリン及びこれらの薬学的に許容される塩等のα1及β1受容体作動薬;エフェドリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリン及びこれらの塩(薬学的に許容される塩)等のα1、β2及びβ3受容体作動薬等が挙げられる。
中でも、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン、エピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリン及びこれらの塩が好ましく、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン及びこれらの塩がより好ましく、フェニレフリン及びその塩がさらに好ましい。
フェニレフリンは、0.0025〜20%が好ましく、0.005〜10%がより好ましい。下限は0.01%以上がさらに好ましく、0.01〜5%、0.05〜1%、0.1〜0.5%、0.1〜0.2%の順に好ましい。
メトキサミン、エチレフリン、ミドドリンは、0.0025〜20%が好ましく、0.005〜10%がより好ましく、0.01〜0.2%がさらに好ましい。
エピネフリン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリンは、0.00005〜1%が好ましく、0.00015〜0.012%がより好ましく、0.0003〜0.006%がさらに好ましい。
エフェドリン、メチルエフェドリン、シュードエフェドリンは、0.0025〜1%が好ましく、0.005〜0.4%がより好ましく、0.01〜0.2%がさらに好ましい。
テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリンは、0.001〜1%が好ましく、0.0025〜0.2%がより好ましく、0.005〜0.1%がさらに好ましい。
ナファゾリン、シネフリン、シラゾリン、キシロメタゾリン、フェニルプロパノラミン、トラマゾリンは、0.00005〜1%が好ましく、0.00015〜0.1%がより好ましく、0.0003〜0.006%がさらに好ましい。
(B)成分は、ヒアルロン及びその塩、パンテノール、パントテン酸及びパントテン酸塩、ならびにビタミンAから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ヒアルロン酸塩としては、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。パントテン酸塩としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等が挙げられる。ビタミンAとしては、ビタミンAそれ自体の他に、ビタミンA油等のビタミンA含有混合物、ビタミンA脂肪酸エステル等のビタミンA誘導体も含まれる。具体的には、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノール、レチノイン酸、レチノイド等が挙げられる。中でも、レチノールパルミチン酸エステル、レチノール酢酸エステル、レチノイン酸が好ましい。レチノールパルミチン酸エステルは、通常100〜180万国際単位/g(以下、I.U./gと略記する場合がある)のものが市販されており、具体的には、DSMニュートリションジャパン(株)製レチノールパルミチン酸エステル(174万I.U./g)、シグマアルドリッチ製パルミチン酸レチノール等が挙げられる。
ヒアルロン又はその塩を配合する場合、0.01〜1%が好ましく、0.05〜0.5%がより好ましく、下限は0.1%以上がさらに好ましく、0.1〜0.3%が特に好ましい。
パンテノール、パントテン酸又はパントテン酸塩を配合する場合、0.005〜1%が好ましく、0.01〜0.5がより好ましく、下限は0.05%以上がさらに好ましく、0.05〜0.1%が特に好ましい。
ビタミンAを配合する場合、国際単位として、1,000単位〜50万単位/100mLが好ましく、5,000単位〜10万単位/100mLがより好ましく、下限は1万単位/100mL以上がさらに好ましく、1万単位〜5万単位/100mLが特に好ましい。ビタミンAが174万単位の場合、0.0005〜0.3%が好ましく、0.002〜0.06%がより好ましく、0.005%以上がさらに好ましく、0.005〜0.03%が特に好ましい。
ヒアルロン又はその塩を配合する場合、0.05〜5が好ましく、0.1〜3がより好ましく、0.2〜2がさらに好ましい。
パンテノール、パントテン酸又はパントテン酸塩を配合する場合、0.005〜5が好ましく、0.01〜3がより好ましく、0.05〜2がさらに好ましい。
ビタミンAを配合する場合、0.005〜2が好ましく、0.01〜1がより好ましく、0.05〜0.6がさらに好ましい。
本発明の眼科用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、水、油性成分、界面活性剤、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、多価アルコール、粘稠剤、(A)成分、(B)成分以外の薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲である。なお、水の配合量は組成物の残部とすることができる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5〜100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましい。
本発明の眼科用組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、水性成分を精製水に溶解し、pH調整後、総体積を精製水により調整することにより得ることができる。混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、具体的には20〜95℃の範囲から適宜選定される。
本発明の眼科用組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、20℃における粘度は、涙液との混合を容易にする点から、20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましく、2mPa・s以下が特に好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。下限は特に限定されないが、1mPa・sとすることもできる。
本発明の眼科用組成物は涙液層安定化効果を有し、涙液層安定化剤として好適である。涙液層安定化効果の測定は、例えば、NI(Non−invasive)BUT(非侵襲的涙液層破壊時間)で測定できる。具体的には後述の実施例の方法である。
涙液減少症、加齢乾性眼、乏涙症、眼乾燥症、シェーグレン症候群、乾性角結膜炎、スティーブンズ−ジョンソン症候群、眼類天疱胞、眼瞼縁炎、閉眼不全、知覚神経麻痺、アレルギー性結膜炎に関連したドライアイ、ウイルス性結膜炎後のドライアイ、白内障手術後のドライアイ、VDT作業に関連したドライアイ及びコンタクトレンズ装用に関連したドライアイから選ばれる疾患又は症状。
ドライアイを原因とする、眼疲労、目のかわき、目の疲れ、コンタクトレンズを装着しているときの不快感、目のかすみ、リッドワイパーエピテリオパシー、角結膜上皮障害、角膜上皮剥離、角膜上皮糜爛、角膜潰瘍及び眼感染症から選ばれる疾患又は症状。
眼疲労、目のかわき、コンタクトレンズを装着しているときの不快感及び目のかすみ、異物感、目の痛み、目がまぶしい、目が重い、目の不快感、眼脂ならびに流涙。
本発明の眼科用組成物はマイバム分泌促進効果を有し、マイバム分泌促進剤として好適である。マイバムはマイボーム腺から分泌される成分であり、マイバム分泌促進により涙液油層が増加する。本発明において、マイバム分泌促進効果は涙液油層の厚さを測定する。具体的には後述の実施例の方法である。
マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction; MGD)は、マイボーム腺の分泌障害により引き起こされる涙液及び眼表面の異常と定義される。自覚症状とマイボーム腺開口部周囲異常所見、マイボーム腺閉塞所見の三つによって診断される。MGD患者の自覚症状は多彩で異物感、乾燥感、眼疲労感、灼熱感等を訴える。治療は、マイボーム腺の閉塞を改善するために、温熱療法や物理的な力を加えることによる圧出、海外ではマイボーム腺に細い針金様の器具で直接閉塞を解除する方法等が行われている。また、近年、涙液油層を干渉像で評価し、眼瞼を内側から温熱とマッサージ効果で治療するシステム、Lipiview/Lipiflowシステムも開発されており、今後の治療効果が注目されている。ただし、これらの方法は全て医療機関内での処置となるため、簡便な治療法が待ち望まれていた。
さらに、本発明のマイバム分泌促進剤により、マイバム分泌が向上することによって、MGDやドライアイ、麦粒腫と霰粒腫(ものもらい)を予防又は治療することができる。
下記表1の各成分を所定量の精製水に加えて溶解させた後、よく撹拌した。なお、(B)成分がレチノールパルミチン酸エステルである場合には、界面活性剤に混合しよく撹拌した後に精製水に加えてよく撹拌した。その後、100mLになるように精製水を加えた。なお、得られた組成物の25℃におけるpHを表1中に示す。なお、25℃における組成物の粘度は1〜20mPa・sの範囲であった。得られた組成物について下記評価を行った。
サンプルを各1週間ずつ点眼し、点眼前後のNIBUT変化について比較した。点眼は2名(4眼)で実施し、1回1滴(50μL)、1日6回実施した。
NIBUTの評価には、DR−1(興和製)を用いた。最後に点眼して5分以上経過後に測定した。
DR−1を用いて、涙液干渉像を観察し、開瞼後、涙液層が破壊(均一な灰色又は白色の干渉像が消失する)されるまでの時間(秒)を計測し、その平均値を求めた。
群間比較は、Wilcoxon検定を実施した。結果を表2〜4、点眼前後の差を図1に示す。
サンプルを各1週間ずつ点眼し、点眼前後の涙液油層厚さ変化について比較した。点眼は2名(4眼)で実施し、1回1滴(50μL)、1日6回実施した。
涙液油層の厚さの評価には、Lipiview(Tearscience社製)を用いた。最後に点眼して5分以上経過後に以下の手順で測定した。
Lipiviewを用いて、涙液油層厚さを計測し、その平均値を求めた。
群間比較は、Wilcoxon検定を実施した。結果を表5〜7、点眼前後の差を図2に示す。
フェニレフリン塩酸塩:フェニレフリン塩酸塩(結晶) 岩城製薬(株)
ヒアルロン酸ナトリウム:バイオヒアルロン酸ナトリウム(SZE)(株)資生堂
パンテノール:パンテノール DSM(株)
レチノールパルミチン酸エステル:レチノールパルミチン酸エステル〔174万I.U./g〕 DSM(株)
Claims (7)
- (A)アドレナリンα1受容体作動薬から選ばれる1種以上と、(B)ヒアルロン及びその塩、パンテノール、パントテン酸及びパントテン酸塩、ならびにビタミンAから選ばれる1種以上とを含有する眼科用組成物。
- (A)成分が、フェニレフリン及びその塩から選ばれる1種以上である請求項1記載の眼科用組成物。
- (B)成分がヒアルロン又はその塩であり、その配合量が眼科用組成物中0.1w/v%以上である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
- (B)成分がパンテノール、パントテン酸又はパントテン酸塩であり、その配合量が眼科用組成物中0.05w/v%以上である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
- (B)成分がビタミンAであり、その配合量が眼科用組成物中1万単位/100mL以上である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
- 涙液層安定化剤である請求項1〜5のいずれか1項記載の眼科用組成物。
- マイバム分泌促進剤である請求項1〜5のいずれか1項記載の眼科用組成物。
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井上 佐智子,他2名: "ドライアイとは? 原因から最新の治療まで", ファルマシア, vol. 50(3), JPN6019025432, 2014, pages 201 - 206, ISSN: 0004811770 * |
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