添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。図1及び図2に示されるように、本発明の一実施形態に係る歯間清掃具1は、基材部10と、基材部10の一部を被覆する軟質部20と、延長軟質部30とを備えている。
基材部10は、使用者が把持する把持部としての基部11と、基部11から歯間清掃具1の短手方向D1(図1の左右方向)に直交する長手方向(図1の上下方向)D2に延在して、使用者の歯間に挿入される軸部12と、を備えている。なお、本明細書において、基部11から軸部12に向かう側(図1の長手方向D2の上側)を先端側とし、軸部12から基部11に向かう側(図1の長手方向D2の下側)を基端側とする。
基部11は、例えば扁平な方形の板状に形成されている。なお、基部11の形状は、使用者が把持することができる形状であれば、特に限定されるものではない。
軸部12は、基材部10の先端に向かうにつれて正面視の幅が減少していく扁平な板状の移行部13と、移行部13の先端から基材部10の先端まで直線的に延びる例えば円柱状の先端部14と、を備えている。先端部14は、例えばその基端から先端に向かうにつれて次第に縮径する形状を有している。
基材部10は、例えば基材としての合成樹脂材料から成形される。合成樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド等を採用することができる。また、合成樹脂材料には、例えば1〜30重量%程度の割合でガラス繊維等の繊維素材が添加されてもよい。
軟質部20は、使用者の歯間に挿入され清掃部として機能する。軟質部20は、図1乃至図3に示すように軸部12の先端側部分12aの基端から先端までの外周面を被覆する被覆部21と、被覆部21から外方に突き出る複数の突起部22と、を備えている。なお、被覆部21が被覆される軸部12の先端側部分12aは、上記先端部14と同じであってもよいし、先端部14の一部であってもよい。
図1に示す軟質部20の長手方向D2の長さL2は、例えば4mm以上26mm以下、好ましくは9mm以上21mm以下、さらに好ましくは14mm以上16mm以下に設定されている。軟質部20の長さL2は、歯間清掃具1の長手方向D2の全体の長さL1の例えば8%以上80%以下、好ましくは15%以上65%以下、さらに好ましくは30%以上50%以下に設定されている。歯間清掃具1の全体の長さL1は、例えば45mm以上55mm以下に設定されている。
図3に示すように被覆部21は、軸部12の先端側部分12aの表面を覆っている。被覆部21の厚みは、例えば0.05mm〜2mmに設定されており、軟質部20では先端部から基端部側にいくにつれて被覆部21の厚みが少しずつ厚くなっており、延長軟質部30では厚みが均一である。突起部22は、例えば円錐形状に形成されている。突起部22は、被覆部21の基端から先端まで、軸部12の先端側部分12aの軸心周りに螺旋状に配置されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは、被覆部21の基端から先端に向かうにつれて次第に減少する。突起部22の高さは、例えば0.1mm以上5mm以下に設定されている。
図1乃至図3に示す延長軟質部30は、軟質部20よりも軸部12の基端側に軟質部20に隣接して設けられている。延長軟質部30は、被覆部21を軸部12の基端側に延長するように軸部12の先端側部分12aよりも基端側の中間部分12bを被覆している。延長軟質部30は、軸部12の先端側部分12aの外周面を均一な厚みで円筒状に覆うものであり、軟質部20のような突起部22を有していない。延長軟質部30は、軟質部20の被覆部21の基端と同じ厚みを有しており、被覆部21と滑らかに接続されている。
図1に示す延長軟質部30の長手方向D2の長さL3は、軸部12の方向(長手方向D2)に沿って3mm以上、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上15mm以下に設定されている。延長軟質部30の長さL3は、軟質部20の長さL2の例えば8%以上80%以下、好ましくは15%以上65%以下、より好ましくは30%以上50%以下に設定されている。延長軟質部30の厚みは、例えば0.05mm〜2mmに設定されている。
図4に示すように延長軟質部30は、その表面に射出成形時に軟質材が注入された注入跡30aを有している。注入跡30aは、延長軟質部30の長手方向D2の中央部付近に設けられている。なお、注入跡30aの位置は、延長軟質部30にあれば限定されるものではない。
軟質部20及び延長軟質部30は、基材部10の合成樹脂材料の硬度よりも低い硬度を有する軟質材としての樹脂材料から形成される。樹脂材料としてはエラストマーを採用することができ、エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、シリコーン、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が用いられてもよい。エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さタイプA(JISK6253)が、10〜50であることが好ましく、10〜40であることがより好ましい。本実施形態では、デュロメータ硬さタイプAは35である。
次に、歯間清掃具1の製造方法について説明する。まず、図5に示すように、基材部10の成形にあたって第1の金型40、41が用意される。第1金型40、41には、基材部10の外形に対応した充填空間42が形成されている。この充填空間42に、溶融した基材としての合成樹脂材料Bがゲート43から充填されて基材部10が成形される(第1の工程)。その後、基材部10は、第1金型40、41から取り出される。
続いて、図6に示されるように、軟質部20の成形にあたって第2の金型50、51が用意される。第2の金型50、51には、軟質部20及び延長軟質部30の外形に対応した充填空間52が形成されている。第2の金型50、51は、それぞれ、基材部10の軸心に直交する方向に充填空間52内に進退自在に配置される複数対の保持ピン53を備えている。また第2の金型50、51は、例えば基材部10の軸部12の先端側部分12aよりも基部側の中間部分12bに対応する位置に形成されたゲート54を備えている。
第1の工程で成形された基材部10は、第2の金型50、51の充填空間52内に収容される。基材部10は、保持ピン53により表面及び裏面から挟まれて保持される。そして、第2の金型50、51の充填空間52に、溶融した軟質材としてのエラストマーCがゲート54から充填されて軟質部20及び延長軟質部30が成形される(第2の工程)。こうして歯間清掃具1が成形される。歯間清掃具1は、その後第2の金型50、51から取り出される。
なお、本実施の形態では、単体の歯間清掃具1に着目して歯間清掃具の構成や製造方法を説明したが、歯間清掃具1は、例えば図7に示すような基材部10に形成された接続部60によって複数の歯間清掃具1が短手方向D1に並列に接続された接続体の状態で成形され、その接続体から個別に切り離されたものである。
本実施の形態によれば、歯間清掃具1が、軸部12の軟質部20よりも基端側の中間部分12bを被覆し、突起部22を有さない延長軟質部30を備えるので、突起部22を有する軟質部20の端の位置と、延長軟質部30の基端側の始点(基材部10の延長軟質部30がある部分とない部分との境目)の位置が離れており、使用時に歯間清掃具1にかかる応力が軟質部20の始点に集中せずに分散する。この結果、歯間清掃具1が折れることを抑制することができる。また、仮に軟質部20の始点の位置で軸部12が折れたとしても、折れた部分の軸部12は、軟質部20と延長軟質部30により、残りの軸部12と繋がったままであるので、折れた部分が歯間に残ることを抑制することができる。
延長軟質部30は、軸部12の周囲を覆う円筒状に成形されるので、どのような向きで使用しても、使用時に歯間清掃具1にかかる応力が延長軟質部30の全体に分散されやすい。この結果、歯間清掃具1が折れることをさらに抑制することができる。
また、延長軟質部30は、エラストマーCの厚み、または軸部12の太さを調整することで、軟質部20の被覆部21の基端と同じ外径を有していてもよい。この場合、例えば使用者が、清掃機能のある軟質部20を過ぎてさらに延長軟質部30を歯間に挿入したときに、抵抗が増えないので、使用者は、清掃部である軟質部20が過ぎたことを自覚しやすくなる。この結果、使用者は、清掃機能のある軟質部20の終点を認識しやすくなるので、軟質部20を効率的に用いて歯間の清掃を行うことができる。
延長軟質部30は、軸部12の方向に沿って3mm以上の長さを有している。これにより、延長軟質部30の長さが十分に確保されるので、歯間清掃具1が折れること、仮に折れた場合に軸部12(軟質部20)が歯間に残ることをさらに抑制することができる。
延長軟質部30は、射出成形時にエラストマーCが注入された注入跡30aを有している。すなわち、基材部10が収容された第2の金型50、51に、軸部12の先端側部分12aよりも基端側の中間部分12bに対応する位置のゲート54からエラストマーCを注入して軟質部20を成形するので、注入された高圧のエラストマーCが軸部12の先端に直接当たることがなく、軸部12の先端が揺れることが十分に抑制される。また、高温のエラストマーCが軸部12の先端に直接当たることがなく、軸部12の先端が溶解することも十分に抑制される。また、突起部22が形成される軸部12の先端側部分12aよりも基端側の中間部分12bにエラストマーCが注入されるので、突起部22が成形される領域に直接エラストマーCが注入されることがない。この結果、エラストマーCの注入の影響を受けにくく突起部22の成形を好適に行うことができる。これにより、歯間清掃具1の成形不良を抑制することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
例えば歯間清掃具1の形状は、上記実施の形態のものに限られない。例えば軸部12は、直線状に形成されていたが、円弧状に湾曲していてもよい。