以下、本発明に係る薬剤注入器具の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る薬剤注入器具100の概略構成斜視図であり、図2は、薬剤注入器具100の長手軸に沿った断面を示す概略構成断面図である。図3は、図2の矢視A方向から見た側面図である。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
本発明の第1実施形態に係る薬剤注入器具100は、例えば、膣や肛門等の体腔内(体内)に流動性薬剤を注入するための器具である。流動性薬剤としては、多種多様な薬剤を用いることができるが、例えば、洗浄剤、避妊剤、麻酔剤、浣腸剤、解熱剤、潤滑剤等を挙げることができる。また、流動性薬剤の形態としては、ローション状、ジェル状、ゼリー状等種々の形態を採用することができる。
この薬剤注入器具100は、図1や図2に示すように、挿入部1と、ピストン2とを備えるシリンジタイプの注入器具として構成されている。挿入部1は、その先端部側1aから人体の膣や肛門といった体腔内(体内)に挿入されるものであり、体内への挿入方向に沿って伸びる長尺状に形成されている。この挿入部1は、貯留容器3と、アウター部材4とを備える二重構造を有している。ここで、挿入部1を構成する貯留容器3及びアウター部材4、並びに、ピストン2は、プラスチック樹脂原料から形成されることが好ましい。
貯留容器3は、流動性薬剤が貯留される貯留部5を内部に有する長尺状の容器であり、断面視円形の筒状の長尺な胴部6と、指掛け部7とを備えている。当該貯留容器3(胴部6)の先端部には、貯留部5内に貯留される流動性薬剤が流出可能な流出孔8が形成されている。また、貯留容器3は、内部に形成される貯留部5と連通する開口部9を基端部側(指掛け部7が設けられる側)に備えている。なお、貯留容器3の基端部側とは、体内に挿入される挿入部1(貯留容器3)の先端部側1aとは反対側の端部側を意味し、開口部9は、挿入部1の他方端部1bに形成されている。この貯留容器3には、開口部9を介して貯留部5内に挿入されるピストン2が接続される。このピストン2を挿入部1の他方端側1bから先端部側1aに押し込むことにより、貯留部5に貯留されている流動性薬剤を流出孔8側(挿入部1の先端部側1a)に押し出すことが可能となる。
また、貯留容器3が有する指掛け部7は、貯留容器3の基端部側において、先端部側から基端部側に向かうに従い、拡径するテーパ状に形成されている。なお、このテーパ状の指掛け部7は、貯留容器3(挿入部1)の長手方向に対して垂直な断面形状が楕円形となるように形成されている。また、テーパ部の端面(貯留容器3の基端部端面)には、凹部10が形成されており、当該凹部10にピストン2の後端部11が収納できるように構成されている。凹部10の深さは、ピストン2の後端部11が完全に収納できる程度の深さに形成することが好ましい。また、この凹部10の開口縁の形状は、図4の底面図に示すように、楕円形を有している。
また、アウター部材4は、長尺状の貯留容器3の先端部及び該先端部に連なる側面部領域を被覆する長尺状の筒状部材である。このアウター部材4の長さとしては、例えば、本薬剤注入器具100を膣内の洗浄用として構成する場合には、50mm〜100mmの範囲に設定することが好ましい。アウター部材4の先端部は、体内への挿入時に使用者に痛みを感じさせないように、滑らかな曲面を有するドーム状に形成されている。なお、ドーム状のアウター部材4の先端部により、筒状部材の一方端は閉塞されている。貯留容器3の外周面とアウター部材4の内周面との間には、流出孔8から流出した流動性薬剤が流入可能な所定間隔の空隙部12が形成されている。この空隙部12は、貯留容器3の先端部に形成された流出孔8を介して貯留部5から押し出された流動性薬剤が導かれる薬剤流路部を構成する。この空隙部12(薬剤流路部)は、挿入部1の内部において、該挿入部1の長手方向に沿って、貯留容器3の周面の一部分を囲繞するようにして形成されている。本実施形態においては、図2にてSで示す領域、つまり、挿入部1の長手方向にみて、当該挿入部1の先端部から中央部分までの領域に空隙部12が形成されるように構成されている。より具体的には、例えば、本薬剤注入器具100を膣内の洗浄用として構成する場合には、挿入部1の長手方向に沿って、その先端部からの寸法が、30mm〜60mm程度の範囲までの領域に空隙部12(薬剤流路部)を形成することが好ましい。
また、アウター部材4は、空隙部12(薬剤流路部)と外部とを連通する薬剤吐出孔13を複数備えている。つまり、挿入部1の側面部が、薬剤流路部に連通する複数の薬剤吐出孔13を備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔13を備えることにより、ピストン2の押し込み動作に伴って、貯留部5に貯留されている流動性薬剤が、流出孔8、空隙部12(薬剤流路部)、薬剤吐出孔13を介して、挿入部1の外側に導かれることとなる。なお、薬剤吐出孔13が配置される範囲は、挿入部1の長手方向にみて、当該アウター部材4の先端部から中央部分までの領域に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、本薬剤注入器具100を膣内の洗浄用として構成する場合には、挿入部1の長手方向に沿って、アウター部材4の先端部からの寸法が、30mm〜60mm程度の範囲までの領域に複数の薬剤吐出孔13を形成することが好ましい。
各薬剤吐出孔13は、前記挿入部1の長手方向に沿って、所定間隔あけて配置されている。このように、挿入部1の側面部に薬剤吐出孔13を複数設けることにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、体内への流動性薬剤の注入を完了し、挿入部1を体内から抜き出す際に、この抜き出される挿入部1の表面によって、体内に吐出された流動性薬剤をぬり拡げることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側のより広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、抜き出される挿入部1の表面は、流動性薬剤が付着して湿潤な状態となるため、挿入部1を体内から抜き出す際の使用者に与える痛みを緩和させることができる。
また、本実施形態においては、複数の薬剤吐出孔13は、挿入部1の表面において想定される該挿入部1の長手方向に沿う第1仮想ライン上に所定間隔をあけて配置される複数の薬剤吐出孔13からなる第1吐出孔群14と、第1仮想ラインとは異なり、挿入部1の表面において想定される挿入部1の長手方向に沿う第2仮想ライン上に所定間隔をあけて配置される複数の薬剤吐出孔13からなる第2吐出孔群15とを備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔13の位置関係を構成することにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に効果的にかつ迅速に薬剤を塗布することが可能となる。
また、第1吐出孔群14における各薬剤吐出孔13と、第2吐出孔群15における各薬剤吐出孔13とは、貯留部5を挟んだ両側にそれぞれ形成されることが好ましい。ここで、本実施形態においては、空隙部12(薬剤流路部)は、貯留部5の周囲を囲繞して設けられるものであることから、第1吐出孔群14における各薬剤吐出孔13と、第2吐出孔群15における各薬剤吐出孔13とは、空隙部12(薬剤流路部)を挟んだ両側にそれぞれ形成されることになる。このような構成を採用することにより、より一層広い範囲で薬剤を膣や肛門といった体腔の内側に塗布することが可能となる。
また、図2に示すように、第1吐出孔群14における各薬剤吐出孔13と、第2吐出孔群15における各薬剤吐出孔13とは、挿入部1の長手方向に沿って互い違いの位置関係となるように配置されていることが好ましい。このような構成も、膣や肛門といった体腔の内側のより一層広い範囲での薬剤の塗布に寄与する。
また、本実施形態においては、各薬剤吐出孔13の孔径が同一寸法となるように構成しているが、例えば、空隙部12(薬剤流路部)を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔13の孔径が段階的に大きくなるように構成してもよい。このような構成を採用する場合、本実施形態においては、挿入部1の先端部側から他方端側に向かって流動性薬剤が空隙部12(薬剤流路部)を流下しつつ、各薬剤吐出孔13から吐出される構成であるため、薬剤吐出孔13a、薬剤吐出孔13b、薬剤吐出孔13c、薬剤吐出孔13dの順に、その孔径が徐々に大きくなるように構成する。全ての薬剤吐出孔13の孔径を同一に構成した場合、圧力損失の影響により、空隙部12(薬剤流路部)の下流側に配置される薬剤吐出孔13dから流動性薬剤が吐出されにくくなるおそれがあるが、上述のように、空隙部12(薬剤流路部)を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔13の孔径が段階的に大きくなるように構成することにより、各薬剤吐出孔13から吐出される流動性薬剤の量を均等に維持させることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に亘って、流動性薬剤を均等に塗布することが可能となる。
ここで、貯留容器3とアウター部材4とは、図5の要部拡大断面図に示すように、挿入部1の長手方向に沿って相対移動可能に構成されており、貯留容器3の先端部とアウター部材4の先端部とが近接した第1状態から、貯留容器3の先端部とアウター部材4の先端部とが互いに離間した第2状態に移行できるように構成されている。図5(a)は第1状態を示しており、図5(b)は第2状態を示している。なお、上述の図2は、第1状態を示している。また、アウター部材4は、貯留容器3の先端部とアウター部材4の先端部とが近接した第1状態において、貯留容器3の先端部に設けられる流出孔8を閉塞する薬剤漏出防止部16を備えるように構成されている。この薬剤漏出防止部16は、上記第2状態、すなわち、貯留容器3の先端部とアウター部材4の先端部とが互いに所定間隔離間した状態において、貯留容器3の先端部に設けられる流出孔8に対する閉塞状態を解除するように構成されている。この流出孔8に対する閉塞状態の解除により、貯留部5と空隙部12(薬剤流路部)とは、流出孔8を介して連通する状態となる。
薬剤漏出防止部16は、アウター部材4の先端部内面に設けられている。本実施形態においては、薬剤漏出防止部16は、貯留容器3の先端部側に向けて突出する突出端部17を備えており、上記第1状態において、突出端部17が、流出孔8の開口内に挿入されることにより、流出孔8が閉塞されるように構成されている。突出端部17の外周面は、流出孔8の内周面に摺接するように構成されている。通常、流出孔8の開口縁は、円形状に形成されるので、突出端部17は、その外周面が流出孔8の開口縁に密接する断面視円形の中実棒状体、或いは、筒状体として構成することが好ましい。本実施形態においては、筒状体として突出端部17を形成し、ピストン2の先端部を内側に収容可能に構成されている。
このような薬剤漏出防止部16を設けることにより、例えば、薬剤注入器具100を市場に流通させる段階において貯留容器3とアウター部材4との位置関係を第1状態とすることで、流通過程において、貯留部5内の流動性薬剤が挿入部1の外に漏れ出ることを効果的に防止することができる。一方、薬剤注入器具100が使用者の手に渡り、当該使用者が実際に使用する段階で、使用者の操作によって、貯留容器3とアウター部材4との位置関係を第2状態に変位させることができ、これにより、使用者は、薬剤注入器具100が未使用なものであり、また、流動性薬剤が外気に接触していない清浄なものであると認識することができ、使用に際しての安心感を得ることが可能となる。
また、挿入部1の長手方向に沿って、貯留容器3とアウター部材4との相対移動を可能にする具体的構造としては、例えば、図6(a)の貯留容器3の要部拡大側面図、及び、図6(b)のアウター部材4の要部拡大断面図に示すように、貯留容器3の外周面に雄ネジ部18を形成すると共に、アウター部材4の内周面に当該雄ネジ部18に螺合する雌ネジ部19を形成することにより可能となる。なお、図6(a)(b)は、図2においてTで示す領域部分に対応する。このような構造により、貯留容器3に対してアウター部材4を、例えば、180度回転させることにより、貯留容器3とアウター部材4とは、挿入部1の長手方向に沿って相対移動し、上述の第1状態、及び、第2状態となるように、貯留容器3とアウター部材4との位置関係を変更することが可能となる。
また、本実施形態においては、挿入部1の長手方向に沿った貯留容器3とアウター部材4との相対移動によって、薬剤漏出防止部16による流出孔8に対する閉塞が解除された第2状態において、貯留容器3に対するアウター部材4の相対移動を規制する規制手段20を備えるように構成されている。このような規制手段20を備えることにより、アウター部材4が貯留容器3から離脱することを効果的に防止することができる。また、貯留容器3とアウター部材4との位置関係を、使用可能状態である第2状態から第1状態(使用不可能な状態)に戻ることを効果的に防止することも可能となり、使用者が、誤って使用済みの薬剤注入器具100を再使用・再利用してしまうことを効果的に防止することができる。
この規制手段20としては、種々の構成を採用することができるが、例えば、アウター部材4に形成されたアウター係合部と、貯留容器3の外表面に設けられる容器嵌合部とを備えるように構成されている。より具体的には、本実施形態においては、アウター係合部は、アウター部材4に形成された貫通孔として構成されており、容器嵌合部は、貯留容器3の外表面から突出する突起体として構成されている。貯留容器3とアウター部材4との位置関係が第1状態にあるときは、突起体として構成される容器嵌合部は、アウター部材4の内周面に当接した状態であるが、第2状態となった際に、突起状の容器嵌合部が、アウター部材4の形成される貫通孔としてのアウター係合部に嵌合し、アウター部材4の貯留容器3に対する回転(相対移動)が規制される。なお、アウター部材4や貯留容器3は、比較的硬質なプラスチック材料によって形成されているが、両者とも筒状体として構成されることから、僅かに弾性変形するものであるため、第1状態から第2状態に推移するまでの間、上記突起体として構成される容器嵌合部が、アウター部材4の貯留容器3に対する回転の妨げにはならない。また、貯留容器3の表面に凹所を形成すると共に、この凹所の縁に連接される板バネ構造体を備えると共に、この板バネ構造体に突起体を形成することにより、アウター部材4の内周面に突起体が接する状態(第1状態)において当該突起体が凹所内に収容されるような構造として規制手段20を構成してもよい。
なお、上記例においては、アウター係合部を、アウター部材4の形成された貫通孔として構成しているが、必ずしも貫通する必要はなく、アウター係合部を、アウター部材4の内周面に形成される窪み部として構成してもよい。また、上記実施形態においては、アウター係合部を、アウター部材4の形成された貫通孔として構成し、容器嵌合部を、貯留容器3の外表面から突出する突起体として構成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、アウター係合部を、アウター部材4の内周面から突出する突起体として構成し、容器嵌合部を、貯留容器3の外表面に形成される窪み部として構成し、突起体であるアウター係合部を、窪み部である容器嵌合部に嵌り込ませることにより、第2状態に移行した際に、貯留容器3に対するアウター部材4の相対移動を規制するように構成してもよい。
また、本実施形態においては、ピストン2の後端部11は、挿入部1の他方端部に形成される凹部10内(貯留容器3の基端部端面に形成される凹部10内)に不可逆的に収納可能に形成されている。このような構成により、図7の要部拡大断面図に示すように、ピストン2の後端部11が凹部10内に収納され、薬剤注入器具100に貯留される流動性薬剤の吐出を完了した後は、ピストン2を抜き出すことを困難な状態とすることができる。これにより、薬剤注入器具100の再使用や再利用を効果的に防止することが可能となる。また、ピストン2の戻り(押出方向とは逆向きの移動)を防止することができるため、ピストン2の戻りによって貯留部5内が負圧になり体内に注入された流動性薬剤が、薬剤吐出孔13を介して挿入部1内部に逆流することを効果的に防止することが可能となる。
ここで、ピストン2の後端部11が、挿入部1の他方端部側1bに形成される凹部10内に不可逆的に収納する具体的構成については、例えば、図7の要部拡大断面図に示すように、凹部10が、その内周面から凹部10内側に向けて突出する係合突起21を備えるように構成し、かつ、ピストン2の後端部11が、当該係合突起21と嵌合するピストン嵌合部22を備える構成を挙げることができる。本実施形態においては、係合突起21を、凹部10の開口縁近傍の内周面から凹部10内側に向けて隆起するドーム状に形成している。また、ピストン嵌合部22は、ピストン2の後端部11の周縁に形成されており、後端部11の外方に突出する爪部23を備えている。この爪部23は、ピストン2の後端部11の周縁全周に亘って形成されている。なお、ピストン2の後端部11が凹部10内に進入していく際、ピストン2の後端部11に形成されるピストン嵌合部22が、凹部10の開口縁26を僅かに拡径させる方向に指掛け部7を変形させながら、係合突起21を乗り越える。ピストン嵌合部22が係合突起21を乗り越えた後は、僅かに拡径変形した凹部10の開口縁26が弾性復元して元の形状に戻るため、ピストン嵌合部22は、係合突起21を逆向きに乗り越えることができなくなる。
このようにピストン嵌合部22と係合突起21との嵌合によって、ピストン2の後端部11が、挿入部1の他方端部に形成される凹部10内に不可逆的に収納するように構成することにより、上述の薬剤注入器具100の再使用防止や流動性薬剤の逆流防止の効果に加えて、使用者に、ピストン2の押し込み量の最終位置を明確に知らせることが可能になる。具体的に説明すると、ピストン嵌合部22と係合突起21との嵌合時に音が発生することにより、この音を頼りに、ピストン2の押し込み量に関し、これ以上は押し込まなくていいことを知らせることができる。また、ピストン嵌合部22と係合突起21との嵌合時の振動が直接的に手指に伝わるため、仮に、上記音が聞こえなかったとしても、この手指の振動を介して、ピストン2の押し込み量の最終位置を知らせることが可能になる。
また、上記ピストン嵌合部22は、図7に示すように、該ピストン嵌合部22に嵌合する係合突起21に対する案内を行う傾斜面24を備えるように構成することが好ましい。この傾斜面24は、ピストン嵌合部22の先端爪部23よりもピストン2の先端側に形成されている。このような傾斜面24を備えることにより、スムーズにピストン2の後端部11を凹部10内に進入させることが可能となる。
また、ピストン2の後端部11の後端面25と、凹部10の開口縁26とは面一となるようしてピストン2の後端部11が凹部10に収納可能に構成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、使用者に、ピストン2の押し込み量の最終位置をより一層明確に知らせることが可能になる。つまり、ピストン2の後端部11を押圧して流動性薬剤の注入を進めていく際に、凹部10の開口縁26とピストン2の後端部11とが面一になった状態を手指の腹側の感覚で認知させることができ、使用者にこれ以上ピストン2を押圧する必要が無いことを知らせることが可能となる。また、ピストン2の後端部11の後端面25と凹部10の開口縁26とが面一となるようにして、ピストン2の後端部11が凹部10に収納できるように構成することにより、何らかの外力がピストン2の後端部11に作用し、ピストン2の後端部11と凹部10との嵌合状態が解除されることを効果的に防止することができ、薬剤注入器具100の再使用や再利用を効果的に抑制することができる。
また、上記係合突起21の設置位置は、図4の底面図を参照して、楕円形の凹部10の短軸に対応する位置とすることが好ましい。また、ピストン嵌合部22と係合突起21との嵌合構造の組み合わせ個数は特に限定されず、一組の組み合わせを備えるように構成してもよく、或いは、2組以上の組み合わせを備えるように構成してもよい。
また、上記実施形態においては、凹部10の開口縁26の形状は、図4の底面図に示すように、楕円形を有するように構成しているが、このような構成に特に限定されず、円形となるように構成してもよい。また、ピストン2の後端部11の輪郭についても、上記実施形態においては、図4に示すように、円形となるように構成しているが、このような構成に特に限定されず、凹部10の開口縁26の形状と同様な楕円形に形成してもよい。
また、上記実施形態においては、貯留容器3及びアウター部材4共に、それらの長手方向に亘って、断面視円形の筒状部分を備えるように構成されているが、このような構成に特に限定されず、例えば、長手方向に亘って、断面視楕円形の筒状部分を備えるように構成してもよい。
また、上述のように、本発明に係る第1実施形態に係る薬剤注入器具100に関しては、貯留部5と、薬剤流路部12(空隙部)とを明確に分けて備える構成について説明したが、本発明は、例えば、上記特許文献1(特開2014−004309号公報)の図3において示されるように、貯留部5と薬剤流路部12とが兼用されるような構成、つまり、流動性薬剤が貯留される貯留部(特許文献1における収容空間Sに対応)が、薬剤流路部としての機能を発揮するような構成を含むものである。具体的には、例えば、挿入部1が、アウター部材4を省略して、人体に挿入するのに適した外形形状として構成される貯留容器3を備えるように構成し、外部と連通する薬剤吐出孔13が、貯留容器3の側面部に形成されるような態様を挙げることができる。このような態様にて薬剤注入器具100を構成する場合、貯留部5と薬剤流路部12とが明確に区別されず、貯留部5と薬剤流路部12とが兼用される形態となる。
次に、本発明に係る薬剤注入器具200の第2実施形態について添付図面を参照して説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る薬剤注入器具200の概略構成斜視図であり、図9は、薬剤注入器具200の長手軸に沿った断面を示す概略構成断面図である。図10は、図9のB−B断面を示す概略構成断面図である。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
本発明の第2実施形態に係る薬剤注入器具200は、上述の第1実施形態に係る薬剤注入器具100と同様、例えば、膣や肛門等の体腔内(体内)に流動性薬剤を注入するための器具である。流動性薬剤としては、多種多様な薬剤を用いることができるが、例えば、洗浄剤、避妊剤、麻酔剤、浣腸剤、解熱剤、潤滑剤等を挙げることができる。また、流動性薬剤の形態としては、ローション状、ジェル状、ゼリー状等種々の形態を採用することができる。
この薬剤注入器具200は、図8〜図10に示すように、貯留容器31と、挿入部32とを備え、貯留容器31の周面部を握って圧縮し、内部の流動性薬剤を搾り出すようにして挿入部32から吐出するタイプの注入器具として構成されている。
貯留容器31は、可撓性を有する容器であり、内部に流動性薬剤が貯留される貯留部33を備えている。また、この貯留容器31は、流動性薬剤が流出する口部34を先端部に備えている。貯留容器31は、当該口部34を介して挿入部32の他方端部32bに接続可能に構成されている。また、図11(a)の断面図に示すように、口部34には、口部34を閉塞させる天シール35が接着されており、挿入部32と接続していない状態においては、内部の流動性薬剤が口部34を介して外部に流出しないように構成されている。また、この口部34の外周面には、雄ネジ部36が形成されている。貯留容器31を構成する素材については、貯留容器31自身が可撓性を有し、使用者が握って圧縮変形させて、内部の流動性薬剤を口部34を介して外部に流出できるような素材であれば特に限定されない。貯留容器31としては、例えば、プラスチック樹脂原料を用いたブロー成形チューブや押し出し成形チューブを好適に使用することができる。
挿入部32は、その先端側32aから人体の膣や肛門といった体腔内(体内)に挿入されるものであり、図9や図10、図11(b)の断面図に示すように、体内への挿入方向に沿って伸びる長尺状に形成されている。この挿入部32の長さとしては、例えば、本薬剤注入器具200を膣内の洗浄用として構成する場合には、50mm〜100mmの範囲に設定することが好ましい、挿入部32の他方端部32bには、膨出部37が形成されている。挿入部32の先端部は、体内への挿入時に使用者に痛みを感じさせないように、滑らかな曲面を有するように形成されている。また、挿入部32は、全体として曲面で形成され、横断面が楕円形となるように形成されている。ここで、挿入部32や膨出部37はプラスチック樹脂原料から形成されることが好ましい。また、挿入部32及び膨出部37は一体成型されて構成されることが好ましい。
また、挿入部32は、貯留部33から押し出された薬剤が導かれる薬剤流路部38と、薬剤流路部38及び外部を連通する薬剤吐出孔43とを備えている。薬剤流路部38は、挿入部32の内部に形成されている。この薬剤流路部38は、挿入部32の長手方向に沿って伸びるように形成されており、挿入部32の他方端部で開口する開口端部39を備えている。なお、当該開口端部39とは反対側の薬剤流路部38の端部(挿入部32の先端部側32aの端部)は、挿入部32の内部においてその先端部近傍にまで伸びているが、挿入部32の先端部において開口しないように構成されている。この薬剤流路部38の開口端部39は、少なくとも1以上の尖鋭な突起部40を備え、貯留容器31の口部34に設けられる天シール35に対して刺入可能に構成されている。ここで、本実施形態においては、薬剤流路部38の軸線が、挿入部32の軸線上に重なるように薬剤流路部38を形成しているが、このような態様に限定されず、挿入部32の軸線に重ならない位置に薬剤流路部38の軸線が配置されるように薬剤流路部38を形成してもよい。
また、上記薬剤流路部38の開口端部39が設けられる挿入部32の他方端部は、貯留容器31の口部34が挿入される凹部41を備えている。この凹部41は、その深さ方向が、挿入部32の長手方向に沿うようにして形成される。凹部41の内周面には、雌ネジ部42が形成されており、貯留容器31の口部34の外表面に設けられる雄ネジ部36と螺合可能に構成されている。なお、薬剤流路部38の開口端部39は、凹部41底面の中央位置において凹部41内に筒状形態として露出するように配置されている。
また、薬剤流路部38の開口端部39は、上述のように、尖鋭な突起部40を備えるように構成されているが、この突起部40の形態としては、薬剤流路部38への流動性薬剤の誘導しやすさを考慮すると、図12の要部拡大断面図に示すように、凹部41内に露出する筒状の突起部40先端を斜めに成形して構成される竹槍形状とすることが好ましい。なお、この竹槍形状の突起部40(開口端部39)は、その尖鋭方向が、挿入部32の長手方向(凹部41の深さ方向)に沿うよう構成される。また、突起部40は、その形態が竹槍形状に限定されるものでは無く、筒状の開口端部39に設けられるギザギザ状の突起物として構成してもよい。
上述のように、薬剤流路部38の開口端部39が尖鋭な突起部40を備えることにより、貯留容器31の口部34を挿入部32の他方端側32bに形成される凹部41内に押し込んでセットするという動作だけで、薬剤流路部38の開口端部39が天シール35に刺入され(開口端部39が天シール35を突き破って)、貯留部33と薬剤流路部38とを連通させることが可能になる。また、このような構成により、使用者が、手指で貯留容器31の口部34に設けられる天シール35を剥がす必要が無く、更に、使用者が薬剤注入器具200を実際に使用する直前まで、流動性薬剤が貯留される貯留容器31の密閉状態を維持することが可能となるため、薬剤注入器具200を衛生的に好ましい状態で使用することが可能となる。
また、上述のように、挿入部32の他方端部には、貯留容器31の口部34が挿入される凹部41が形成され、当該凹部41の内周面には、雌ネジ部42が形成されており、貯留容器31の口部34の外表面に設けられる雄ネジ部36と螺合可能となるように構成されている。このような構成により、使用者は、貯留容器31の口部34を、挿入部32の他方端部に形成される凹部41の開口縁にあてがった後、貯留容器31を回転させて口部34と凹部41との螺合を進め、当該口部34を凹部41内に押し込んで、口部34に設けられる天シール35を薬剤流路部38の尖鋭な開放端部にて突き破りつつ、貯留容器31と挿入部32とを連通接続することになる。このように貯留容器31と挿入部32との連通接続を、凹部41と口部34との螺合によって行うことにより、貯留容器31と挿入部32との接続状態を確実に維持することが可能になる。
また、貯留容器31と挿入部32との連通接続を、凹部41と口部34との螺合によって行うことにより、天シール35に対する薬剤流路部38の尖鋭な開口端部39の刺入を緩やかに進めることができるため、開口端部39の刺入によって破れた天シール部分は、口部34周囲に接着している天シール部分から分断されずに、貯留部33内に進入してきた開口端部39の周面に密着して垂れ下がる状態とすることができる。これにより、開口端部39の刺入によって、天シール35の一部分が分離して貯留部33内に脱落し、薬剤流路部38の開口端部39内に侵入して薬剤流路部38を閉塞させてしまうことを防止することができる。
また、薬剤流路部38の開口端部39の刺入によって破れた天シール35の開口縁が、上記のように、開口端部39の周面に密着して垂れ下がる状態にできることから、この垂れ下がった天シール35部分が一種の弁体となって、貯留部33内の流動性薬剤が、薬剤流路部38の開口端部39と天シール35の開口縁との隙間を通過して、挿入部32の他方端部に形成される凹部41内に流入してしまうことを効果的に防止することができる。
また、挿入部32は、上述のように、薬剤流路部38及び外部を連通する薬剤吐出孔43を複数備えている。つまり、挿入部32の側面部が、薬剤流路部38に連通する複数の薬剤吐出孔43を備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔43を備えることにより、貯留容器31を握って貯留部33を圧縮することにより、流動性薬剤は、貯留容器31の口部34、薬剤流路部38、薬剤吐出孔43を介して、挿入部32の外側に導かれることとなる。なお、薬剤吐出孔43が配置される範囲は、挿入部32の長手方向にみて、当該挿入部32の先端部から中央部分までの領域に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、本薬剤注入器具200を膣内の洗浄用として構成する場合には、挿入部32の長手方向に沿って、その先端部からの寸法が、30mm〜60mm程度の範囲までの領域に複数の薬剤吐出孔43を形成することが好ましい。
各薬剤吐出孔43は、前記挿入部32の長手方向に沿って、所定間隔をあけて配置されている。このように、挿入部32の側面部に薬剤吐出孔43を複数設けることにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、体内への流動性薬剤の注入を完了し、挿入部32を体内から抜き出す際に、この抜き出される挿入部32の表面によって、体内にある流動性薬剤をぬり拡げることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側のより広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、抜き出される挿入部32の表面は、流動性薬剤が付着して湿潤な状態となるため、挿入部32を体内から抜き出す際の使用者に与える痛みを緩和させることができる。
また、本実施形態においては、複数の薬剤吐出孔43は、挿入部32の表面において想定される該挿入部32の長手方向に沿う第1仮想ライン上に所定間隔をあけて配置される複数の薬剤吐出孔43からなる第1吐出孔群44と、第1仮想ラインとは異なり、挿入部32の表面において想定される挿入部32の長手方向に沿う第2仮想ライン上に所定間隔をあけて配置される複数の薬剤吐出孔43からなる第2吐出孔群45とを備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔43の位置関係を構成することにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に効果的にかつ迅速に薬剤を塗布することが可能となる。
また、第1吐出孔群44における各薬剤吐出孔43と、第2吐出孔群45における各薬剤吐出孔43とは、薬剤流路部38を挟んだ両側にそれぞれ形成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、より一層広い範囲で薬剤を膣や肛門といった体腔の内側に塗布することが可能となる。
また、図10に示すように、第1吐出孔群44における各薬剤吐出孔43と、第2吐出孔群45における各薬剤吐出孔43とは、挿入部32の長手方向に沿って互い違いの位置関係となるように配置されていることが好ましい。このような構成も、膣や肛門といった体腔の内側のより一層広い範囲での薬剤の塗布に寄与する。
また、本実施形態においては、挿入部32は、その長手方向に対して垂直な断面形状が楕円形となるように形成されているが、このような形態の場合、少なくとも第1吐出孔群44における各薬剤吐出孔43は、楕円形の断面を有する挿入部32の短軸方向の側面部に形成されるように構成することが好ましい。このように、挿入部32の短軸方向の側面部に薬剤吐出孔43を形成する場合、この薬剤吐出孔43の長さを短く形成することができ、内部を通過する流動性薬剤が詰まることを効果的に防止することができる。更に、薬剤吐出孔43の内部に残留して外部に吐出されない流動性薬剤の量を少なくさせることが可能となる。
また、本実施形態においては、各薬剤吐出孔43の孔径が同一寸法となるように構成しているが、例えば、薬剤流路部38を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔43の孔径が段階的に大きくなるように構成してもよい。このような構成を採用する場合、本実施形態においては、挿入部32の他方端部側32bから先端部側32aに向かって流動性薬剤が薬剤流路部38を流下しつつ、各薬剤吐出孔43から吐出される構成であるため、薬剤吐出孔43a、薬剤吐出孔43b、薬剤吐出孔43c、薬剤吐出孔43dの順に、その孔径が徐々に大きくなるように構成する。全ての薬剤吐出孔43の孔径を同一に構成した場合、圧力損失の影響により、薬剤流路部38の下流側に配置される薬剤吐出孔43dから流動性薬剤が吐出されにくくなるおそれがあるが、上述のように、薬剤流路部38を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔43の孔径が段階的に大きくなるように構成することにより、各薬剤吐出孔43から吐出される流動性薬剤の量を均等に維持させることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に亘って、流動性薬剤を均等に塗布することが可能となる。
また、本実施形態においては、薬剤吐出孔43を挿入部32の先端部に設けないように構成しているが、このような構成に限定されず、薬剤吐出孔43を挿入部32の先端部に設けるように構成してもよい。
また、挿入部32の他方端部には、上記のように膨出部37が設けられているが、この膨出部37は、挿入部32の他方端部の周囲全域に形成されている。この膨出部37の形態としては、特に限定されないが、本実施形態においては、図10の矢視C方向から見た平面図である図13に示すように、挿入部32の長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楕円形となるように形成されることが好ましい。このような膨出部37を備えることにより、使用者が挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、当該膨出部37がストッパーとしての機能を発揮し、貯留容器31が体内に挿入されることを効果的に防止することができる。また、膨出部37を備えることにより、貯留容器31を挿入部32の他方端部側32bに螺合させる際に貯留容器31或いは挿入部32を回転させやすくなり、使用者の操作性を向上させることができる。
また、膨出部37の形態として、挿入部32の長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楕円形となるように形成することにより、ストッパーとしての機能を有効に発揮させつつ、使用者に与える心理的ストレスを極力小さいものとすることができる。つまり、楕円形の場合、短軸が存在するため、挿入部32の長手方向に対して垂直な方向の断面形状が円形となる膨出部37よりも、膨出部37が小さいものである認識させ易く、使用者が挿入部32を挿入する際の安心感を惹起することができる。
また、膨出部37と挿入部32とは滑らかな曲面により接続するように構成することが好ましい。このような構成を採用することにより、使用者が挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入し、膨出部37が体腔入口に当接する際の痛みを和らげることが可能になると共に、使用者に対しては、痛みを伴わない、或いは、痛みが緩和されるという心理的な安心感を与えることができる。
また、膨出部37の最大径は、挿入部32の他方端部に接続される貯留容器31の最大幅よりも大となるように構成することが好ましい。このような構成を採用することにより、貯留容器31が誤って体内に挿入されることをより一層効果的に防止することができる。
また、本実施形態において、図14(a)(b)に示すように、挿入部32の先端部に、可撓性を有するエラストマー製の被覆体46を設けるように構成してもよい。なお、図14(a)は、挿入部32の側面図であり、図14(b)は、その断面図である。被覆体46は、挿入部32の先端部を被嵌する部材であり、当該挿入部32の先端部を収納する収納空間を内側に有する椀状の形態を有している。このような可撓性を有し柔軟な素材であるエラストマー製の被覆体46を挿入部32の先端部に設けることにより、挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、使用者に対して、痛みを伴わない、或いは、痛みが緩和されるという心理的な安心感を与えることが可能となる。
挿入部32の先端部に対する被覆体46の装着方法は特に限定されないが、例えば、図14(b)に示すように、挿入部32の先端部表面の一部に段差部47を形成し、当該段差部47に被覆体46の収納空間の内周面を当接させるようにして装着する。また、挿入部32の先端部と、被覆体46とは、接着剤で互いに固定するように構成してもよく、或いは、段差部47と被覆体46の収納空間周りの開口縁とが互いに嵌合するような嵌合構造を設け、互いに固定してもよい。或いは、射出成型法を用いて、挿入部32の先端部に被覆体46を被嵌するようにしてもよい。
また、この被覆体46は、挿入部32の体内への挿入時に使用者に痛みを感じさせないように、挿入部32の表面と面一となるように構成することが好ましい。
また、被覆体46は、図15(a)(b)(c)に示すように、挿入部32の先端部側32aから基端部側(他方端部側32b)に向けて伸びて、挿入部32の先端部近傍の側面の一部を被覆する側面被覆部48を備えるように構成してもよい。このような側面被覆部48を備えることにより、挿入部32の先端部側の広い範囲を、可撓性を有し柔軟な素材であるエラストマー製の被覆体46で被覆されているとの印象を使用者に与えることができ、挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、使用者が感じる“痛みを伴うのではないか”という心理的なストレスを効果的に緩和させることが可能となる。なお、このような側面被覆部48を設ける場合、挿入部32の側面に形成される薬剤吐出孔43に重ならないように構成する。ここで、図15(a)は、挿入部32の側面図であり、図15(b)は、図15(a)の矢視D方向から見た側面図である。また、図15(c)は、被覆体46を挿入部32から取り外した状態を示す説明図である。
また、挿入部32の先端部側32aから基端部側(他方端部側32b)に向けて伸びる側面被覆部48は、図15各図に示すように、挿入部32の軸線を挟んだ両側のそれぞれに設けるように構成することが好ましい。このような構成により、使用者が感じる上述の心理的なストレスをより一層効果的に緩和させることが可能となる。
特に、本実施形態のように、その長手方向に対して垂直な断面形状が楕円形となる挿入部32に被覆体46を装着する場合、側面被覆部48は、当該楕円形の断面を有する挿入部32の長軸方向の側面部を被覆するように形成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、幅が太い側の先端側面部が、可撓性を有し柔軟な素材であるエラストマー素材によって広い範囲に亘って被覆されているとの印象を、使用者に強く与えることができるため、挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、使用者が感じる“痛みを伴うのではないか”という心理的なストレスをより一層効果的に緩和させることが可能となる。
次に、本発明に係る薬剤注入器具の第3実施形態について添付図面を参照して説明する。図16は、本発明の第3実施形態に係る薬剤注入器具300の概略構成斜視図であり、図17は、本発明の第3実施形態に係る薬剤注入器具300の長手軸に沿った断面を示す概略構成断面図である。また、図18は、図17の矢視E方向から見た底面図である。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
本発明の第3実施形態に係る薬剤注入器具300は、上述の第1及び第2実施形態に係る薬剤注入器具300と同様、例えば、膣や肛門等の体腔内(体内)に流動性薬剤を注入するための器具である。流動性薬剤としては、多種多様な薬剤を用いることができるが、例えば、洗浄剤、避妊剤、麻酔剤、浣腸剤、解熱剤、潤滑剤等を挙げることができる。また、流動性薬剤の形態としては、ローション状、ジェル状、ゼリー状等種々の形態を採用することができる。
この薬剤注入器具300は、図16や図17に示すように、貯留容器51と、挿入部52と、貯留容器収納部53とを備え、図19の概略構成斜視図に示すように、貯留容器収納部53内に配置される貯留容器51の周面部を一対の押圧板54及びホルダー部55を介して圧縮し、内部の流動性薬剤を搾り出すようにして挿入部52から吐出するタイプの注入器具として構成されている。ここで、挿入部52や貯留容器収納部53、ホルダー部55は、プラスチック樹脂原料から形成されることが好ましい。
貯留容器51は、可撓性を有する容器であり、内部に流動性薬剤が貯留される貯留部を備えている。また、この貯留容器51は、流動性薬剤が流出する口部56を先端に備えている。貯留容器51は、当該口部56を介して挿入部52の他方端部に接続可能に構成されている。口部56には天シールが接着されており、挿入部52と接続していない状態においては、内部の流動性薬剤が口部56を介して外部に流出しないように構成されている。また、貯留容器51を構成する素材については、貯留容器51自身が可撓性を有し、周面部を圧縮変形させて、内部の流動性薬剤を口部56を介して外部に流出できるような素材であれば特に限定されない。貯留容器51としては、例えば、プラスチック樹脂原料を用いたブロー成形チューブや押し出し成形チューブを好適に使用することができる。
挿入部52は、その先端側52aから人体の膣や肛門といった体腔内(体内)に挿入されるものであり、図20(a)の断面図や、図20(b)の側縁図に示すように、体内への挿入方向に沿って伸びる長尺状に形成されている。この挿入部52の長さとしては、例えば、本薬剤注入器具300を膣内の洗浄用として構成する場合には、50mm〜100mmの範囲に設定することが好ましい。挿入部52の他方端部には、貯留容器収納部53が一体的に形成されている。挿入部52の先端部は、体内への挿入時に使用者に痛みを感じさせないように、滑らかな曲面を有するドーム状に形成されている。また、挿入部52は、横断面が円形となるように形成されている。なお、図20(b)は、図20(a)における矢視F方向から見た側面図である。
また、挿入部52は、図17や図20に示すように、貯留容器51(貯留部)から押し出された薬剤が導かれる薬剤流路部57と、薬剤流路部57及び外部を連通する薬剤吐出孔58とを備えている。薬剤流路部57は、挿入部52の内部に形成されている。この薬剤流路部57は、挿入部52の長手方向に沿って伸びるように形成されており、挿入部52の他方端部で開口する開口端部59を備えている。なお、当該開口端部59とは反対側の薬剤流路部57の端部(挿入部52の先端部側52aの端部)は、挿入部52の内部においてその先端部近傍にまで伸びているが、挿入部52の先端部において開口しないように構成されている。この薬剤流路部57の開口端部59は、少なくとも1以上の尖鋭な突起部60を備え、貯留容器51の口部56に設けられる天シールに対して刺入可能に構成されている。
また、挿入部52は、上述のように、薬剤流路部57及び外部を連通する薬剤吐出孔58を複数備えている。つまり、挿入部52の側面部が、薬剤流路部57に連通する複数の薬剤吐出孔58を備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔58を備えることにより、貯留容器51を圧縮することにより、流動性薬剤は、貯留容器51の口部56、薬剤流路部57、薬剤吐出孔58を介して、挿入部52の外側に導かれることとなる。なお、薬剤吐出孔58が配置される範囲は、挿入部52の長手方向にみて、当該挿入部52の先端部から中央部分近傍位置までの領域に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、本薬剤注入器具300を膣内の洗浄用として構成する場合には、挿入部52の長手方向に沿って、その先端部からの寸法が、30mm〜60mm程度の範囲までの領域に複数の薬剤吐出孔58を形成することが好ましい。
ここで、本実施形態においては、薬剤流路部57の軸線が、挿入部52の軸線上に重ならないように薬剤流路部57を形成し、挿入部52の内部に形成される薬剤流路部57と、挿入部52の外表面との距離をできるだけ近づけるように構成されている。このような位置に薬剤流路部57を形成することにより、薬剤吐出孔58の長さを短く構成することができ、薬剤吐出孔58の内部を通過する流動性薬剤が詰まることを効果的に防止することができる。更に、薬剤吐出孔58の内部に残留して外部に吐出されない流動性薬剤の量を少なくさせることが可能となる。
各薬剤吐出孔58は、前記挿入部52の長手方向に沿って、所定間隔あけて配置されている。このように、挿入部52の側面部に薬剤吐出孔58を複数設けることにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、体内への流動性薬剤の注入を完了し、挿入部52を体内から抜き出す際に、この抜き出される挿入部52の表面によって、体内にある流動性薬剤をぬり拡げることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側のより広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、抜き出される挿入部52の表面は、流動性薬剤が付着して湿潤な状態となるため、挿入部52を体内から抜き出す際の使用者に与える痛みを緩和させることができる。
また、本実施形態においては、薬剤流路部57を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔58の孔径が段階的に大きくなるように構成されている。本実施形態においては、挿入部52の他方端部側から先端部側に向かって流動性薬剤が薬剤流路部57を流下しつつ、各薬剤吐出孔58から吐出される構成であるため、薬剤吐出孔58a、薬剤吐出孔58b、薬剤吐出孔58c、薬剤吐出孔58dの順に、その孔径が徐々に大きくなるように構成されている。全ての薬剤吐出孔58の孔径を同一に構成した場合、圧力損失の影響により、薬剤流路部57の下流側に配置される薬剤吐出孔58dから流動性薬剤が吐出されにくくなるおそれがあるが、上述のように、薬剤流路部57を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔58の孔径が段階的に大きくなるように構成することにより、各薬剤吐出孔58から吐出される流動性薬剤の量を均等に維持させることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に亘って、流動性薬剤を均等に塗布することが可能となる。なお、必ずしも、薬剤流路部57を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従って、各薬剤吐出孔58の孔径を段階的に大きくする必要はなく、各薬剤吐出孔58の孔径を同一寸法となるように構成してもよい。
また、本実施形態においては、孔径を段階的に大きくする形成する際に、挿入部52の長手方向に沿う方向の径を順次拡大するように構成し、挿入部52の長手方向に対して垂直な方向の径が全ての薬剤吐出孔58において同一となるように構成している。つまり、薬剤吐出孔58aは、円形の孔として構成し、薬剤吐出孔58b,58c,58dについては長軸方向が挿入部52の長手方向となる長孔として構成している。このような孔構成を採用することにより、上述の各薬剤吐出孔58から吐出される流動性薬剤の量を均等に維持させることを可能とするという効果を得つつ、膣や肛門といった体腔の内側の体腔深さ方向に沿う方向に広く各薬剤吐出孔58から流動性薬剤を吐出することが可能となり、より一層、広い範囲で体腔の内側に薬剤を塗布することが可能となる。
また、本実施形態においては、薬剤吐出孔58を挿入部52の先端部に設けないように構成しているが、このような構成に限定されず、薬剤吐出孔58を挿入部52の先端部に設けるように構成してもよい。
また、薬剤流路部57の開口端部59は、尖鋭な突起部60を備えるように構成されている。この突起部60の形態としては、貯留容器51の口部56に設けられる天シールを突き破ることができる形態であれば特に限定されない。なお、上記第2実施形態において説明したように、貯留容器収納部53内に露出する筒状の突起部60を斜めに成形して構成される竹槍形状に形成してもよい。また、突起部60としては、開口端部59に設けられるギザギザ状の突起物として構成してもよい。
上述のように、薬剤流路部57の開口端部59が尖鋭な突起部60を備えることにより、貯留容器51の口部56を挿入部52の他方端側52bに押し込んでセットするという動作だけで、薬剤流路部57の開口端部59が天シールに刺入され(開口端部59が天シールを突き破って)、貯留容器51(貯留部)と薬剤流路部57とを連通させることが可能になる。また、このような構成により、使用者が、手指で貯留容器51の口部56に設けられる天シールを剥がす必要が無く、更に、使用者が薬剤注入器具300を実際に使用する直前まで、流動性薬剤が貯留される貯留容器51の密閉状態を維持することが可能となるため、薬剤注入器具300を衛生的に好ましい状態で使用することが可能となる。
貯留容器収納部53は、挿入部52の他端部側52bに設けられる部材であり、図17や図20に示すように、挿入部52の他端部に接続される貯留容器51の周囲を囲む周壁部61を備えて構成されている。この貯留容器収納部53の一方端は、滑らかな曲面構造を有しており、挿入部52の他端部側表面に接合している。また、貯留容器収納部53の他方端側53bは、開口しており、この開口を介して、貯留容器51及び後述のホルダー部55を、貯留容器収納部53の内側空間に挿入できるように構成されている。
貯留容器収納部53の周壁部61は、図16の斜視図や図18の底面図に示すように、挿入部52の長手方向に対して垂直な断面視において略矩形状となっており、4面の壁部62を備える形態として構成されている。この4面の壁部62の内の2面であって互いに対向する一対の壁部62に関し、各壁部62の一部分は、貯留容器51に接近離間する方向へ変位可能な押圧板54を構成する。この一対の押圧板54が、貯留容器51を押圧変形させるための押圧手段となる。各押圧板54は、挿入部52の長手方向に沿う2つのスリット63を所定間隔あけて壁部62に形成することにより構成される。各スリット63は、壁部62の他方端(貯留容器収納部53の開口端)に接続するように形成されており、2つのスリット63で挟まれる壁部62の部分が、押圧板54を構成する。このような構成により、各押圧板54は、貯留容器51の長さ方向に沿って伸びるように形成され、挿入部52の他方端部側52bに配置される基端部を支点として、貯留容器51に接近離間する方向へ変位することが可能となる。
また、本実施形態においては、貯留容器51を貯留容器収納部53の内部において支持するホルダー部55を更に備えている。このホルダー部55は、プラスチック樹脂原料から形成されることが好ましい。ホルダー部55は、上述の一対の押圧板54と貯留容器51との間に配置され、かつ、貯留容器51の側面部を挟持する一対の挟持片64を有している。また、ホルダー部55は、貯留容器51の底部側に配置され、各挟持片64の一方端が接続される接合部65を備えている。
各挟持片64は、所定の厚さを有しており、貯留容器収納部53内に設置された状態において、貯留容器51の側面に接する第1の面66と、押圧板54に接する第2の面67とを備えている。各挟持片64に関し、貯留容器51の側面に接する第1の面66は、貯留容器51の側面の広い範囲に亘って接する大きさに形成されている。また、図21の断面図に示すように、互いに対向する一対の挟持片64の対向面(互いに対向する第1の面66同士)は、断面視において、接合部65から離れるに従い、互いの距離が離間する略V字状に形成されており、ホルダー部55は、その弾性変形により、接合部65を支点として一対の挟持片64が互いに接近離間する方向に変位可能に構成されている。
また、ホルダー部55は、上記のように、貯留容器収納部53の内部において貯留容器51を支持する部材であるが、貯留容器51の口部56に薬剤流路部57の開口端部59が接続されていない未接続位置と、口部56に薬剤流路部57の開口端部59が挿入されて接続する接続位置とを変更する位置可変手段68を備えている。この位置可変手段68は、各挟持片64から各押圧板54に向けて突出する挟持片突起69と、各押圧板54に形成され、挟持片突起69にマッチングする複数の位置決め孔70とを備えて構成されている。挟持片突起69は、各挟持片64の第1の面66上に形成されている。各位置決め孔70は、未接続位置及び接続位置のそれぞれに対応する位置に形成されている。なお、未接続位置に対応する位置決め孔70aと、接続位置に対応する位置決め孔70bは、挿入部52の長手方向に沿って所定間隔をあけて配置されている。このような位置可変手段68を備えることにより、例えば、ホルダー部55の一対の挟持片64の間に貯留容器51を介在させた状態で、上記未接続位置に対応する位置決め孔70aに挟持片突起69が係合するまで、貯留容器収納部53の他方端の開口から貯留容器収納部53内に挿入させることにより、貯留容器51の口部56が薬剤流路部57の開口端部59に接続されていない状態で、貯留容器51を貯留容器収納部53内に支持することができる。一方、薬剤注入器具300を使用するタイミングでは、図22に示すように、貯留容器収納部53内のホルダー部55を更に押し進めることにより、上記接続位置に対応する位置決め孔70bに挟持片突起69を係合させることにより、貯留容器51の口部56が薬剤流路部57の開口端部59に接続され連通した状態で、貯留容器51を貯留容器収納部53内で支持することが可能となる。
また、本実施形態にかかる薬剤注入器具300は、上記一対の押圧板54を貯留容器51に接近させる方向に変位させ、一対の挟持片64を介して貯留容器51を圧縮させることにより、該貯留容器51に貯留される流動性薬剤を薬剤吐出孔58接近から外部に吐出させた際に、一対の押圧板54同士の離間を規制する押圧板離間規制手段71を備えるように構成されている。このような押圧板離間規制手段71を備えることにより、使用者が薬剤注入器具300を使用して、貯留容器51に貯留される流動性薬剤の吐出を完了した後において、当該使用済みの薬剤注入器具300を再使用することを効果的に防止することができる。また、一対の押圧板54が貯留容器51から離間する方向に移動することが規制されることから、貯留容器51が自身の弾性復元力によって膨らむことを確実に防止することができ、この結果、体内に注入された流動性薬剤が、薬剤吐出孔58を介して挿入部52内部に逆流することを効果的に防止することが可能となる。
ここで、一対の押圧板54同士の離間を規制する押圧板離間規制手段71の構成については、種々の構成を採用することができるが、例えば、図20に示される各押圧板54に設けられる押圧板係合部72と、図18や図21に示される接合部65に設けられる接合部係合部73とを備え、これら押圧板係合部72と接合部係合部73との係合によって、一対の押圧板54同士の離間を規制するように構成することができる。図20においては、押圧板係合部72を、押圧板54に形成される貫通孔により構成している。また、接合部係合部73は、図18に示されるように、当該貫通孔に挿入されて係着される一対の係着爪により構成されている。
各係着爪(接合部係合部73)は、貫通孔の孔縁に係合する外向きの爪部74を先端部に一体的に備えている。各係着爪は、挿入部52の長手方向に対して垂直な方向であり、かつ、押圧板54に対向する方向に伸びるように形成されている。また、各係着爪(接合部係合部73)の先端側には、傾斜案内面75がそれぞれ設けられており、押圧板54の貫通孔(押圧板係合部72)に挿入される際に、傾斜案内面75が貫通孔の孔縁に当接しつつ、一対の係着爪同士が互いに接近する方向に撓み、先端部の爪部74が貫通孔を容易に通過できるように構成される。先端部の爪部74が貫通孔を通過した後は、係着爪の弾性復元力により、係着爪同士が離間し、先端部の爪部74が貫通孔の孔縁に係合することにより、図23に示すように、押圧板54が元の位置に戻ることができないように構成される。
このような押圧板離間規制手段71を備えることにより、上述の薬剤注入器具300の再使用防止や流動性薬剤の逆流防止の効果に加えて、使用者に、流動性薬剤の注入が完了したことを明確に知らせることが可能になる。具体的に説明すると、係着爪(接合部係合部73)と貫通孔(押圧板係合部72)との嵌合時に音が発生することにより、この音を頼りに、一対の押圧板54の押し込み量に関し、これ以上は押し込まなくていいことを知らせることができる。また、係着爪(接合部係合部73)と貫通孔(押圧板係合部72)との嵌合時の振動が手指に直接的に伝わるため、仮に、上記音が聞こえなかったとしても、この手指の振動を介して、一対の押圧板54の押し込み量の最終位置(押圧板54同士の近接量に関する最終位置)を知らせることが可能になり、その結果、流動性薬剤の注入が完了したことを使用者に対して明確に知らせることが可能になる。
以上、本発明に係る薬剤注入器具300について第1実施形態から第3実施形態を例に採り説明したが、各実施形態の態様は、上記内容に限定されない。例えば、各実施形態においてのみ備える構成要素であっても、他の実施形態に適用可能な構成要素については、適宜備えるように構成できる。より具体的に説明すると、例えば、挿入部52の先端部を被覆するエラストマー製の被覆体については、第2実施形態においてのみ説明しているが、この第2実施形態に係る薬剤注入器具300に限定されるものではなく、第1実施形態及び第3実施形態に係る薬剤注入器具300も備えることができる。また、第3実施形態においては、複数の薬剤吐出孔が、挿入部52の長手方向に沿って一列に並ぶ態様のみを有しているが、第1実施形態や第2実施形態において開示しているように、第1仮想ライン上及び第2仮想ライン上に各薬剤吐出孔58を配設するように構成することもできる。