以下図面を参照して、スイッチング素子の不感帯期間を調整する不感帯期間調整装置、インバータ、電力変換システム及びモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施をするための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
ここでは一例として、モータ駆動装置に設けられるインバータについて説明するが、モータ駆動装置以外の機械にインバータが設けられる場合においても本実施形態は適用可能である。
図1は、本開示の一実施形態による不感帯期間調整装置、インバータ、電力変換システム及びモータ駆動装置を示す図である。
一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1000により、交流モータ(以下、単に「モータ」と称する。)3を制御する場合について示す。本実施形態においては、モータ3の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。また、交流電源2及びモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、交流電源2及びモータ3をそれぞれ三相としている。交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。モータ3が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。
モータ駆動装置1000内に設けられる電力変換システム200は、コンバータ101と、コンデンサ102と、インバータ103と、電流検出部104と、電圧検出部105と、制御装置300とを備える。
コンバータ101は、交流電源2から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側であるDCリンクへ出力する。コンバータ101の例としては、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、あるいは内部にスイッチング素子を備えるPWMスイッチング制御方式の整流回路などがある。コンバータ101は、交流電源2が三相である場合は三相のブリッジ回路として構成され、交流電源2が単相である場合は単相ブリッジ回路で構成される。コンバータ101がダイオード整流回路である場合は、交流電源2から供給された交流電流を整流し、DCリンクへ直流電流を出力する。コンバータ101が120度通電型整流回路やPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、コンバータ101は、交流電源2から供給された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力するとともに電源回生時にはDCリンクにおける直流電力を交流電力に変換して交流電源2側へ戻すことができる交直双方向に変換可能である電力変換装置として実現される。コンバータ101がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。この場合、スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。なお、コンバータ101の交流入力側には交流リアクトルやACラインフィルタ等が設けられるが、ここでは図示を省略している。
コンバータ101の直流出力側とインバータ103の直流入力側とを接続するDCリンクには、コンデンサ(DCリンクコンデンサ)102が設けられる。コンデンサ102は、インバータ103が交流電力を生成するために用いられる直流電力を蓄積する機能及びコンバータ101の直流出力の脈動分を抑える機能を有する。DCリンクに設けられるコンデンサ102の例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
インバータ103は、DCリンクから供給された直流電力(すなわちDCリンクにおける直流電力)を、モータ3を駆動するための交流電力に変換してモータ3へ出力する。本実施形態では、インバータ103は、主回路部21と、駆動部22と、不感帯期間調整装置1とを備える。
インバータ103の主回路部21は、上アーム及び下アームの各々にスイッチング素子が設けられたブリッジ回路からなる。インバータ103は、モータ3が三相交流モータである場合は三相ブリッジ回路として構成され、モータ3が単相交流モータである場合は単相ブリッジ回路として構成される。図示の例では、モータ3を三相交流モータとしたので、主回路部21は、三相ブリッジ回路として構成される。ここで、主回路部21のU相の上アームをUUで表し、U相の下アームをULで表す。また、主回路部21のV相の上アームをVUで表し、V相の下アームをVLで表す。また、主回路部21のW相の上アームをWUで表し、W相の下アームをVLで表す。各アームでは、スイッチング素子とダイオードとが逆並列に接続される。スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
インバータ103は、その動作モードとして、DCリンクにおける直流電力をモータ3の駆動のための交流電力に変換して出力する通常運転モードと、不感帯期間調整装置1により不感帯期間の長さが調整される調整モードとを有する。インバータ103は、通常運転モード及び調整モードいずれにおいても、主回路部21内のスイッチング素子がオンオフ駆動されることで、直流側から供給された直流電力を交流電力に変換して出力する。
制御装置300は、一般的なモータ駆動装置と同様、DCリンクにおける直流電力とモータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力との間で電力変換を行うインバータ103を制御する。すなわち、制御装置300は、モータ3の速度(速度フィードバック)、モータ3の巻線に流れる電流(電流フィードバック)、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、モータ3の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するためのスイッチング指令を例えばPWM制御方式に従って生成する。なお、制御装置300は、通常運転モード及び調整モードいずれにおいても、スイッチング指令を生成し、インバータ103の電力変換を制御する。制御装置300により生成されるスイッチング指令には、同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子を同時にオンさせない不感帯期間が設定される。ただし、不感帯期間の長さは、インバータ103における調整モードと通常運転モードとで異なる。すなわち、調整モードでは暫定長さを有する不感帯期間が設定され、通常運転モードでは調整済の長さを有する不感帯期間が設定される。
駆動部22は、制御装置300から受信したスイッチング指令に応じて、主回路部21内のスイッチング素子をオンオフ駆動する。より具体的には、主回路部21内のスイッチング素子がFET、IGBT、サイリスタ、GTO、またはSiCで構成される場合は、駆動部22は、制御装置300から受信したスイッチング指令に応じてスイッチング素子のゲートにゲート駆動電圧を印加し、当該スイッチング素子をオンオフ駆動する。主回路部21内のスイッチング素子がバイポーラトランジスタで構成される場合は、駆動部22は、制御装置300から受信したスイッチング指令に応じて、スイッチング素子のベースにベース駆動電圧を印加し、当該スイッチング素子をオンオフ駆動する。上述のように、スイッチング素子のオンオフ駆動中は、同一相内における上アーム及び下アームのスイッチング素子が同時にオンしない不感帯期間が挿入される。駆動部22による駆動制御により、スイッチング素子は、通常運転モードでは調整済の長さを有する不感帯期間の下でオンオフ駆動され、調整モードでは暫定長さを有する不感帯期間の下でオンオフ駆動される。
電流検出部104は、インバータ103の主回路部21に流れ込む電流を検出する。インバータ103が調整モードにあるとき、電流検出部104により検出されたDCリンクからインバータ103の主回路部21に流れ込む電流の値は、後述する不感帯期間調整装置1へ送られ、短絡判定処理に用いられる。なお、インバータ103の通常運転モード時においては、電流検出部104により検出されたインバータ103の主回路部21に流れ込む電流の値は、制御装置300へ送られてインバータ103の電力変換動作の制御に用いられてもよい。
電圧検出部105は、コンデンサ102の両端の電位差であるコンデンサ電圧の値を検出する。このコンデンサ電圧値は、インバータ103の直流側に印加される電圧(DCリンク電圧)に相当する。インバータ103が調整モードにあるとき、電圧検出部105により検出されたDCリンク電圧(コンデンサ電圧)の値は、後述する不感帯期間調整装置1へ送られる。なお、インバータ103の通常運転モード時においては、電圧検出部105により検出されたDCリンク電圧の値は、制御装置300へ送られてインバータ103の電力変換動作の制御に用いられてもよい。
不感帯期間調整装置1は、調整モードにおいて、インバータ103を構成するブリッジ回路内のスイッチング素子のオンオフ駆動中に挿入される不感帯期間の長さを調整する。不感帯期間調整装置1により生成された調整済の長さを有する不感帯期間は、インバータ103の通常運転モードにおいて、各スイッチング素子のオンオフ駆動中に挿入される。本実施形態では、不感帯期間調整装置1は、不感帯期間変更部11と、短絡判定部12と、不感帯期間確定部13と、記憶部14とを備える。
不感帯期間変更部11は、調整モードにおいて、同一相内における上アーム及び下アームに係る不感帯期間の暫定長さを、所定の刻み幅にて徐々に短くなるよう変更しながら逐次設定していく。刻み幅は、例えば数十ナノ秒から数マイクロ秒に設定すればよい。不感帯期間変更部11による不感帯期間の暫定長さの設定は、U相、V相及びW相の各相それぞれについて実行される。不感帯期間変更部11により暫定長さが設定される毎に、当該暫定長さを有する不感帯期間に関するデータは、短絡判定部12及び制御装置300に送られる。
調整モードにおいて、制御装置300は、不感帯期間変更部11により設定された暫定長さを有する不感帯期間を含むようスイッチング指令を生成し、駆動部22へ送る。調整モードにおいて制御装置300からスイッチング指令を受信した駆動部22は、同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子に対して、不感帯期間変更部11により設定された暫定長さを有する不感帯期間を挿入したオンオフ駆動を実行する。
不感帯期間変更部11から制御装置300に送られる不感帯期間の暫定長さは徐々に短くなるので、制御装置300により制御される駆動部22によってオンオフ駆動される同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子の不感帯時間は徐々に短くなり、最終的には同一相内における上アームと下アームと間で(すなわち同一相内における上アームの正側端子と下アームの負側端子との間にわたって)短絡が発生することになる。
短絡判定部12は、同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子のオンオフ駆動中に、不感帯期間変更部11により設定された暫定長さを有する不感帯期間を挿入したとき、同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生したか否かを判定する。短絡判定部12による短絡判定は、U相、V相及びW相の各相それぞれについて実行される。短絡判定部12は、調整モードにおいて、電流検出部104がDCリンクからインバータ103の主回路部21に流れ込む電流を検出したとき、同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生したと判定する。なお、短絡判定部12により短絡発生の有無を判定する際に用いられる閾値は、誤動作を防止するために、ノイズレベル(例えば数[mA])よりも十分高い電流値(例えば数[A])に設定すればよい。例えば、短絡判定部12は、調整モードにおいて、電流検出部104が検出したDCリンクからインバータ103の主回路部21に流れ込む電流が、上記閾値を超えたとき、同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生したと判定する。不感帯期間変更部11により暫定長さが設定される毎に、制御装置300により制御される駆動部22は、当該暫定長さを有する不感帯期間にて同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子をオンオフ駆動し、短絡判定部12は、このオンオフ駆動の際の当該暫定長さを有する不感帯期間中に、上アームと下アームとの間で短絡が発生したか否かを判定する。
調整モードにおいては不感帯期間の暫定長さは徐々に短くなり、最終的には上アームと下アームとの間で短絡が発生することになる。したがって、スイッチング素子を含む回路内の各種部品が短絡により破壊されることを回避するために、調整モードにおいてDCリンク電圧(すなわちインバータ103の主回路部21の直流側に印加される直流電圧)は、通常運転モードにおけるDCリンク電圧よりも低くなるように設定しておく。例えば、通常運転モードにおけるDCリンク電圧が200[V]の場合、調整モードにおけるDCリンク電圧は20[V]程度に設定される。また例えば、調整モードにおけるDCリンク電圧は、スイッチング素子について予め規定されたオン抵抗及び許容電流に基づいて設定してもよい。スイッチング素子のオン抵抗及び許容電流は、例えば規格表に規定されている。例えば、スイッチング素子のオン抵抗が1[Ω]で許容電流が100[A]である場合、調整モードにおいてインバータ103の主回路部21の直流側に20[V]の直流電圧(DCリンク電圧)が印加されているときに上アームと下アームとの間に短絡が発生しても、スイッチング素子には許容電流100Aより小さい20Aの電流が流れるので、スイッチング素子が破壊されることは無い。なお、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例であり、その他の数値であってもよい。調整モードにおけるDCリンク電圧を通常運転モードにおけるDCリンク電圧よりも小さく設定する形態の例については後述する。
不感帯期間確定部13は、短絡判定部12により短絡が発生したと最初に判定されたときにおいて不感帯期間変更部11により設定されていた暫定長さに、少なくとも上記刻み幅を有する長さ(すなわち上記刻み幅以上の長さ)を加えた値を、不感帯期間の調整済の長さとして確定する。不感帯期間確定部13により不感帯期間の調整済の長さを上述のようにして確定する理由は次の通りである。
調整モードにおいては、不感帯期間変更部11により暫定長さが設定される毎に、制御装置300の制御に基づく駆動部22によるスイッチング素子に対するオンオフ駆動と短絡判定部12による短絡判定処理とが実行される。不感帯期間変更部11、制御装置300及び駆動部22の一連の処理により、同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子の不感帯時間は所定の刻み幅にて徐々に短くなり、最終的には同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生することになる。このことは、「短絡判定部12が短絡が発生したと最初に判定したときに不感帯期間変更部11により設定されていた不感帯期間の暫定長さ」よりも長い不感帯期間にて同一相内における上アーム及び下アームのスイッチング素子をオンオフ駆動すれば、この同一相内における上アームと下アームとの間には短絡が発生しないことを意味する。つまり、短絡判定部12により短絡が発生したと最初に判定されたときにおける不感帯期間の暫定長さに少なくとも上記刻み幅を有する長さ(すなわち上記刻み幅以上の長さ)を加えた長さを、不感帯期間が有していれば、当該不感帯期間にて同一相内における上アーム及び下アームのスイッチング素子をオンオフ駆動したとしても、この同一相内における上アームと下アームとの間では短絡が発生しない。そこで、本実施形態では、不感帯期間確定部13は、短絡判定部12により短絡が発生したと最初に判定されたときにおいて不感帯期間変更部11により設定されていた暫定長さに、少なくとも上記刻み幅を有する長さを加えた値を、不感帯期間の調整済の長さとして確定する。なお、短絡が発生したと最初に判定されたときにおいてスイッチング素子のオンオフ駆動中に用いられていた「不感帯期間の暫定長さ」に、上記刻み幅を加えた長さは、上記短絡が発生したと最初に判定される直前(すなわちこの時点では短絡が発生したと判定されていない)に不感帯期間変更部11により設定されていた暫定長さであるので、この長さを「調整済の長さ」としてもよい。短絡が発生したと最初に判定されたときにおいてスイッチング素子のオンオフ駆動中に用いられていた「不感帯期間の暫定長さ」に、少なくとも上記刻み幅を有する長さを加えた値を、「調整済の長さ」として確定すれば、スイッチング素子を安全にオンオフ駆動することができる。最初に判定されたときにおいてスイッチング素子のオンオフ駆動中に用いられていた「不感帯期間の暫定長さ」に加える値が大きければ大きいほど、より安全にスイッチング素子をオンオフ駆動することができるが、「不感帯期間の暫定長さ」に加える値が大きすぎるとモータ3の制御性が悪化してしまう点に注意が必要である。
調整モードにおいて不感帯期間確定部13により確定された不感帯期間の調整済の長さは、記憶部14に記憶される。記憶部14は、例えばEEPROM(登録商標)などのような電気的に消去・記憶可能な不揮発性メモリ、または、例えばDRAM、SRAMなどのような高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリなどで構成される。記憶部14に記憶された調整済の長さを有する不感帯期間は、制御装置300に送られ、通常運転モード時におけるスイッチング素子のオンオフ駆動の際に利用される。
このように、本実施形態では、不感帯期間調整装置1により、不感帯期間の暫定長さを所定の刻み幅で徐々に短くしていき、同一相内における上アームと下アームとの間において短絡が発生しないぎりぎりの不感帯期間を見つけ出すことができる。上記所定の刻み幅は例えば数〜数十ナノ秒程度に設定することができる。従来は、スイッチング素子の特性には個体差や経年変化などを考慮してある程度のマージンを確保して例えば数マイクロ秒程度の大きめの不感帯期間を設定していた。これに対し、本実施形態によれば、数マイクロ秒よりも十分に短い不感帯期間を、「ナノ秒」のオーダーで容易に調整することができる。なお、不感帯期間変更部11による不感帯期間変更処理、短絡判定部12による短絡判定、不感帯期間宅底部による不感帯期間確定処理、及び記憶部14による記憶処理は、相ごとに実行される。すなわち、インバータ103が三相ブリッジ回路で構成される場合は、短絡判定部12は、U相、V相及びW相それぞれについて、インバータ103が単相ブリッジ回路で構成される場合は一相について、各処理が実行される。
不感帯期間調整装置1及び制御装置300は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよく、あるいいは各種電子回路のみで構成されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ駆動装置1000内にある例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、不感帯期間調整装置1及び制御装置300を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、不感帯期間調整装置1及び制御装置300を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ記録媒体として実現してもよい。また、不感帯期間調整装置1、電流検出部104、電圧検出部105及び制御装置300は、例えば工作機械の数値制御装置内に設けられてもよい。また、制御装置300内に、不感帯期間調整装置1を設けてもよい。また、電流検出部104、電圧検出部105、及び駆動部22については、ディジタル回路とアナログ回路との組み合わせで構成してもよく、アナログ回路のみで構成してもよい。
続いて、調整モードにおけるDCリンク電圧を通常運転モードにおけるDCリンク電圧よりも小さく設定する形態について、いくつか列記する。いずれの形態においても、スイッチング素子を含む回路内の各種部品が短絡により破壊されることを回避するために、不感帯期間調整装置1は、電圧検出部105によりDCリンク電圧が通常運転モード時のDCリンク電圧よりも低いことを確認したうえで、調整モードにおける不感帯期間調整処理を実行する。
まず、第1の形態による調整モードにおけるDCリンク電圧の設定について説明する。
第1の形態では、不感帯期間調整装置1により不感帯期間の長さが調整される調整モードが、通常運転モードの終了後のコンデンサ102の放電期間中において、DCリンク電圧が、通常運転モード時のDCリンク電圧よりも低いときに設けられる。モータ駆動装置1000においては、通常運転モードのモータ3の駆動が終了すると、交流電源2からモータ駆動装置1000への交流電力の供給が遮断され、コンデンサ102に蓄積されていた電荷は放電され、DCリンク電圧は徐々に低下する。通常運転モードの終了後のコンデンサ102の放電期間中において、DCリンク電圧が、通常運転モード時のDCリンク電圧よりも十分に低くなったとき、通常運転モードから調整モードに移行し、不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。例えば、通常運転モードにおけるDCリンク電圧(インバータ103の主回路部21の直流側に印加される直流電圧)が200[V]の場合、通常運転モードの終了後のコンデンサ102の放電期間中において、DCリンク電圧が20[V]程度まで下がったとき、通常運転モードから調整モードに移行して不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。なお、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例であり、その他の数値であってもよい。調整モードにおいて不感帯期間調整装置1の不感帯期間確定部13により確定され記憶部14に記憶された調整済の長さを有する不感帯期間は、次回の電源投入後のモータ駆動装置1000の通常運転モード時におけるスイッチング素子のオンオフ駆動の際に利用される。よって、第1の形態によれば、通常運転モードの終了後のコンデンサ102の放電期間中に設けられる調整モードにおいて、不感帯期間調整装置1により、次回の通常運転モードのための最適な長さを有する不感帯期間を容易に得ることができる。また、当該次回の通常運転モードでは、最適な長さを有する不感帯期間にてインバータ103内の主回路部21のスイッチング素子はオンオフ駆動され、モータ3に交流の駆動電力を供給することができるので、モータ3の制御性が従来よりも向上する。なお、第1の形態は、コンバータ101が、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、PWMスイッチング制御方式の整流回路のいずれにも適用可能である。
続いて、第2の形態による調整モードにおけるDCリンク電圧の設定について説明する。
第2の形態では、不感帯期間調整装置1により不感帯期間の長さが調整される調整モードが、通常運転モードの開始前のコンデンサ102の初期充電期間中において、DCリンク電圧が、通常運転モード時の前記DCリンク電圧よりも低いときに設けられる。モータ駆動装置1000においては、コンデンサ102は、交流電源2からモータ駆動装置1000への交流電力の供給開始直後からモータ3の通常運転モード開始前(すなわちインバータ103による電力変換動作開始前)までに所定の大きさの電圧に充電しておく必要がある。この充電は、一般に初期充電(または予備充電)と称される。初期充電期間中、コンバータ101は交流電源2から供給された交流電力を直流電力に変換し、この直流電力によりコンデンサ102が充電されて、DCリンク電圧が徐々に上昇する。通常運転モードの開始前のコンデンサ102の初期充電期間中において、DCリンク電圧が、通常運転モード時のDCリンク電圧よりも低いとき、調整モードを開始して不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。例えば、通常運転モードにおいてインバータ103の主回路部21の直流側に印加される直流電圧が200[V]の場合、通常運転モードの開始前のコンデンサ102の初期期間中において、DCリンク電圧が20[V]程度まで上昇する前に、不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。なお、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例であり、その他の数値であってもよい。調整モードにおいて不感帯期間調整装置1の不感帯期間確定部13により確定され記憶部14に記憶された調整済の長さを有する不感帯期間は、当該調整モード終了後のモータ駆動装置1000の通常運転モード時におけるスイッチング素子のオンオフ駆動の際に利用される。よって、第2の形態によれば、通常運転モード開始前までに、最適な長さを有する不感帯期間を容易に得ることができる。また、当該通常運転モードでは、最適な長さを有する不感帯期間にてインバータ103内の主回路部21のスイッチング素子はオンオフ駆動され、モータ3に交流の駆動電力を供給することができるので、モータ3の制御性が従来よりも向上する。なお、第2の形態は、コンバータ101が、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、PWMスイッチング制御方式の整流回路のいずれにも適用可能である。
続いて、第3の形態による調整モードにおけるDCリンク電圧の設定について説明する。
第3の形態では、コンバータ101を、交流電源2から印加される交流電圧を所望の大きさの直流電圧に変換してDCリンクへ出力するPWMコンバータ(PWMスイッチング制御方式の整流回路)で構成する。PWMコンバータであるコンバータ101は、不感帯期間調整装置1から調整モード開始指令を受けて、調整モードにおいて、通常運転モード時にDCリンクへ出力する電圧よりも低い電圧を出力するようにする。この調整モードにおいて、不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。例えば、通常運転モードにおいてDCリンク電圧(インバータ103の主回路部21の直流側に印加される直流電圧)が200[V]の場合、PWMコンバータであるコンバータ101は、DCリンク電圧が20[V]程度になるように電力変換動作を行い、不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。なお、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例であり、その他の数値であってもよい。このように、第3の形態によれば、コンバータ101を、通常運転モード時におけるDCリンク電圧よりも低いDCリンク電圧を容易に作ることができるPWMコンバータで構成するので、作業者の所望のタイミングで調整モードを設定することが可能である。
続いて、第4の形態による調整モードにおけるDCリンク電圧の設定について説明する。図2は、本開示の一実施形態において、第4の形態により調整モードにおけるDCリンク電圧が設定される不感帯期間調整装置、インバータ、電力変換システム及びモータ駆動装置を示す図である。
第4の形態では、電力変換システム200は、交流電源2とコンバータ101との間に設けられる変圧比可変の変圧器111をさらに備える。変圧器111は、不感帯期間調整装置1から調整モード開始指令を受けて、調整モードにおいて変圧比を変更することで、コンバータ101に印加する交流電圧を、通常運転モード時にコンバータ101に印加する交流電圧よりも低い電圧に降圧する。変圧器111がコンバータ101に印加する交流電圧が降圧されると、コンバータ101から出力される直流電圧すなわちDCリンク電圧は、通常運転モード時のDCリンク電圧よりも低下する。この調整モードにおいて、不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。例えば、通常運転モードにおいてDCリンク電圧(インバータ103の主回路部21の直流側に印加される直流電圧)が200[V]の場合、変圧器111は、調整モードにおいて、コンバータ101から出力される直流電圧(DCリンク電圧)が20[V]程度になるようコンバータ101に印加される交流電圧を降圧するために、変圧比を変更する。なお、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例であり、その他の数値であってもよい。このように、第4の形態によれば、通常運転モード時におけるDCリンク電圧よりも低いDCリンク電圧を容易に作ることができ、作業者の所望のタイミングで調整モードを設定することが可能である。なお、第4の形態は、コンバータ101が、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、PWMスイッチング制御方式の整流回路のいずれにも適用可能である。
続いて、第5の形態による調整モードにおけるDCリンク電圧の設定について説明する。図3は、本開示の一実施形態において、第5の形態により調整モードにおけるDCリンク電圧が設定される不感帯期間調整装置、インバータ、電力変換システム及びモータ駆動装置を示す図である。
第5の形態では、電力変換システム200は、コンバータ101とインバータ103との間に設けられるDCDCコンバータ112をさらに備える。DCDCコンバータ112は、不感帯期間調整装置1から調整モード開始指令を受けて、調整モードにおいて、コンバータ101から出力される直流電圧を降圧することで、インバータ103の主変換部21に印加される直流電圧を、通常運転モード時にインバータ103の主変換部21に印加される直流電圧よりも低い電圧に降圧する。この調整モードにおいて、不感帯期間調整装置1は不感帯期間の長さを調整する処理を実行する。例えば、通常運転モードにおいてインバータ103の主回路部21の直流側に印加される直流電圧が200[V]の場合、DCDCコンバータ112は、調整モードにおいて、出力される直流電圧(DCリンク電圧)が20[V]程度になるようにする。なお、ここで挙げた具体的な数値はあくまでも一例であり、その他の数値であってもよい。このように、第5の形態によれば、通常運転モード時におけるDCリンク電圧よりも低いDCリンク電圧を容易に作ることができ、作業者の所望のタイミングで調整モードを設定することが可能である。なお、第5の形態は、コンバータ101が、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、PWMスイッチング制御方式の整流回路のいずれにも適用可能である。
続いて、本開示の一実施形態による不感帯期間調整装置の動作フローについて説明する。図4は、本開示の一実施形態による不感帯期間調整装置の動作フローを示すフローチャートである。以下のフローチャートは、調整モードにおけるDCリンク電圧の設定が上述の第1〜第5の形態のいずれの場合であっても適用可能である。
ステップS101において、不感帯期間調整装置1は、調整モードであるか否かを判定する。上述のように、第1の形態の場合は、調整モードは、通常運転モードの終了後のコンデンサ102の放電期間中において、DCリンク電圧が、通常運転モード時のDCリンク電圧よりも十分に低くなったときに設けられる。第2の形態の場合は、調整モードは、通常運転モードの開始前のコンデンサ102の初期充電期間中において、DCリンク電圧が、通常運転モード時のDCリンク電圧よりも低いときに設けられる。第1の形態及び第2の形態の場合は、モータ駆動装置1000の動作プログラム中に調整モードを規定しておけばよい。第3〜第5の形態の場合は、作業者の所望のタイミングに調整モードを設けることができ、例えば、モータ駆動装置1000の動作プログラム中に調整モードを規定してもよいし、作業者が調整モード開始を不感帯期間調整装置1に指令することで調整モードが開始されるようにしてもよい。
ステップS101において調整モードであると判定された場合は、ステップS102において、不感帯期間変更部11は、不感帯期間の暫定長さを設定する。
ステップS103では、制御装置300は、ステップS102において設定された暫定長さを有する不感帯期間を含むようスイッチング指令を生成し、駆動部22へ送る。調整モードにおいて制御装置300からスイッチング指令を受信した駆動部22は、同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子に対して、不感帯期間変更部11により設定された暫定長さを有する不感帯期間を挿入したオンオフ駆動を実行する。
ステップS104では、短絡判定部12は、同一相内における上アーム及び下アームの各々のスイッチング素子のオンオフ駆動中(ステップS103)に、この同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生したか否かを判定する。
ステップS104において同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生したと判定されなかった場合は、ステップS102へ戻り、そしてステップS102において、前回設定された暫定長さより所定の刻み幅だけ短い暫定長さを有する不感帯期間を設定する。ステップS102〜S104の処理が繰り返し実行されることで、不感帯期間の暫定長さを徐々に短くしながら短絡判定が行われることになる。
ステップS104において同一相内における上アームと下アームとの間で短絡が発生したと判定された場合は、ステップS105へ進む。ステップS105では、不感帯期間確定部13は、ステップS104において短絡判定部12により短絡が発生したと判定されたときにおいてステップS102において不感帯期間変更部11により設定されていた暫定長さに、少なくとも上記刻み幅を有する長さ(すなわち上記刻み幅以上の長さ)を加えた値を、不感帯期間の調整済の長さとして確定する。
ステップS106において、記憶部14は、ステップS105において不感帯期間確定部13により確定された不感帯期間の調整済の長さを記憶し、不感帯期間調整装置1は、不感帯期間調整処理を終了する。記憶部14に記憶された調整済の長さを有する不感帯期間は、制御装置300に送られ、通常運転モード時におけるスイッチング素子のオンオフ駆動の際に利用される。
このように、本実施形態では、ステップS102〜S104の処理を繰り返し実行することで不感帯期間の暫定長さを所定の刻み幅で徐々に短くしていき、ステップS105において同一相内における上アームと下アームとの間において短絡が発生しないぎりぎりの不感帯期間を確定し、ステップS106においてこれを調整済の長さとして記憶する。
上述の実施形態では一例として、モータ駆動装置に設けられるインバータについて説明した。本実施形態によれば最適な長さの不感帯期間に調整されるので、モータ駆動装置が駆動するモータの制御性が向上する。また、モータ駆動装置以外の機械にインバータが設けられる場合においても本実施形態は適用可能であり、本実施形態によれば最適な長さの不感帯期間に調整されるので、インバータが設けられる機械におけるエネルギー効率が向上する。