JP2020102375A - リチウムイオン二次電池の固体電解質用lisicon型結晶粒子及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の固体電解質用lisicon型結晶粒子及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Li4-xSi1-xPxO4で表されるLISICON型結晶の微細化を適度に図りながら高結晶度化を実現することにより、優れたリチウムイオン伝導性を発現し得る、リチウムイオン二次電池の固体電解質として有用なLISICON型結晶粒子及びその製造方法を提供する。【解決手段】式(1):Li4-xSi1-xPxO4・・・(1)(式(1)中、xは0<x<1である数を示す。)で表され、平均粒径が5nm〜70nmであり、かつBET比表面積が30m2/g以上である、固体電解質用LISICON型結晶粒子。【選択図】図1

Description

本発明は、全固体リチウムイオン二次電池に用いるための、固体電解質用LISICON型結晶粒子及びその製造方法に関する。
現在実用化されているリチウムイオン二次電池は、電解液に可燃性の有機溶媒を用いているため、液漏れや発火等に対する安全対策を充分に講じる必要があり、また電池の小型化や薄膜化の難易度も高い。ところが、酸化物系や硫化物系の固体電解質を備えた全固体リチウムイオン二次電池であると、エネルギー密度が高い上に、可燃物を用いることなく製造することができるため、安全対策を講じる負担が軽減され、製造コストや生産性を容易に高めることが可能となる。こうしたことから、高い有用性に期待がかかる固体電解質材料については、種々の開発が活発化しつつある。
特に、γ-Li3PO4(高温相)型のSiO4及びPO4四面体とLiO6八面体により形成される骨格構造をもつLISICON型の結晶構造を有するLi4SiO4−Li3PO4固溶体は、結晶構造上高いリチウムイオン濃度を保有する固体電解質であるという特徴に加えて、室温において10-4S/cm台もの高いリチウムイオン伝導度を示すという優れた特性を有しており、大いに期待される固体電解質材料の一つである。
こうしたLISICON型結晶粒子の実現化を図るには、高純度化や粒子の微細化の実現が重要であるところ、例えば、非特許文献1には、原料を粉砕して焼成することによりLi3.5Si0.50.54で表されるリチウムイオン伝導性固体電解質を得る方法が開示されている。
D.Wang et al. / Solid State Ionics 283(2015)109−114
しかしながら、上記非特許文献に記載の製造方法により得られるLISICON型結晶粒子は、微細化を図るために施さざるを得ない粉砕処理によって、LISICON型結晶の結晶構造中には欠陥が誘発されてしまい、リチウムイオン伝導性の低下を招くおそれがある。
したがって、本発明の課題は、Li4-xSi1-xx4で表されるLISICON型結晶の微細化を適度に図りながら高結晶度化を実現することにより、優れたリチウムイオン伝導性を発現し得る、リチウムイオン二次電池の固体電解質として有用なLISICON型結晶粒子及びその製造方法を提供することにある。
そこで本発明者らは、種々検討したところ、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーを用いて特定の混合液を調製しつつ特定の工程を経ることにより、水熱法を適用した製造方法であれば、通常の水熱法を用いて得られる反応生成物よりもさらなる微細化を図りながら、高結晶度のLISICON型結晶粒子が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、式(1):Li4-xSi1-xx4 ・・・(1)
(式(1)中、xは0<x<1である数を示す。)
で表され、平均粒径が5nm〜70nmであり、かつBET比表面積が30m2/g以上である、固体電解質用LISICON型結晶粒子を提供するものである。
また、本発明は、次の工程(I)〜(III):
(I)リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物からなる原料化合物の全てと、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合して、25℃におけるpHが9〜14である混合液を調製する工程
(II)得られた混合液を100℃以上の水熱反応に付した後、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる水熱反応生成物を洗浄し、次いで乾燥して、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物を得る工程
(III)得られたセルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物を400℃〜1000℃で焼成する工程
を備える、固体電解質用LISICON型結晶粒子の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、適度な粒径を有しながらリチウムイオン伝導性に優れるLISICON型結晶粒子を得ることができ、これを固体電解質として用いることにより、充放電特性に優れたリチウムイオン二次電池を実現することができる。
実施例1で得られたLISICON型結晶粒子を示すSEM像である。 実施例1で得られたLISICON型結晶粒子のX線回折パターンである。 比較例1で得られたLISICON型結晶粒子を示すSEM像である。 比較例1で得られたLISICON型結晶粒子のX線回折パターンである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法により得られる固体電解質用LISICON型結晶粒子(以下、単に「LISICON型結晶粒子」とも称する)は、γ−Li3PO4(高温相)型の四面体とLiO6八面体により形成される骨格構造をもつLISICON型の結晶構造を有する酸化物であり、具体的には、下記式(1)で表される。
Li4-xSi1-xx4 ・・・(1)
(式(1)中、xは0<x<1である数を示す。)
上記式(1)で表されるLISICON型結晶粒子は、リチウム及びケイ素を含むリン酸塩化合物であり、より具体的には、例えば、Li3.5Si0.50.54、Li3.9Si0.90.14、Li3.1Si0.10.94が挙げられる。
上記LISICON型結晶粒子を得ることのできる、本発明のLISICON型結晶粒子の製造方法は、次の工程(I)〜(III):
(I)リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物からなる原料化合物の全てと、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合して、25℃におけるpHが9〜14である混合液を調製する工程
(II)得られた混合液を100℃以上の水熱反応に付した後、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる水熱反応生成物を洗浄し、次いで乾燥して、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物を得る工程
(III)得られたセルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物を400℃〜1000℃で焼成する工程
を備える。
工程(I)は、リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物からなる原料化合物の全てと、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合して、25℃におけるpHが9〜14である混合液(A)を調製する工程である。このように、LISICON型結晶粒子を形成させるための原料化合物の全てとともに、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと水を用いつつ、pHを上記範囲に制御した混合液(A)を得ることにより、後述する工程(II)における水熱反応に付して得られるセルロースナノファイバーが混在してなる水熱反応生成物において、化学組成の均質性を高めつつ、LISICON型結晶粒子の微細化に大いに寄与させることができる。
用い得るリチウム化合物としては、水酸化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、水酸化リチウム又はその水和物、過酸化リチウム、塩化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム等を好適に用いることができる。
リチウム化合物とともに、原料化合物の1種として用い得るケイ酸化合物としては、反応性のあるシリカ化合物であれば特に限定されず、二酸化ケイ素、非晶質シリカ、Na4SiO4(例えばNa4SiO4・H2O)等が挙げられる。
なお、ケイ酸化合物は、工程(II)での水熱反応を効率的に生じさせて、化学組成の均質性及び結晶度が高く、かつ充分に小径化されてなる水熱反応生成物を得る観点から、細粒であることが好ましく、平均粒径が、好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下である。
また、リン酸化合物としては、オルトリン酸(H3PO4、リン酸)、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等が挙げられる。なかでも、得られる混合液(A)のpHを制御するためのpH調整剤としても作用させ得る観点から、リン酸を用いるのが好ましく、70質量%〜90質量%濃度の水溶液として用いるのが好ましい。
上記原料化合物とともに用いるセルロースナノファイバー(x1)及び/又はリグノセルロースナノファイバー(x2)(以下、これらを「CNF(X)」とも総称する。)は、後述する工程(II)での水熱反応において、水熱反応生成物の核生成や結晶成長の場として機能する。そして、かかる工程(II)において、化学組成の均質性が高い微細な水熱反応生成物(LISICON型結晶の前駆体)を生成させた後、後述する工程(III)を経ることによりほぼ全てのCNF(X)が焼失するため、本発明で得られるLISICON型結晶粒子内にはほとんど残存しない。すなわち、本発明のLISICON型結晶粒子が微細な粒子であることは、CNF(X)を用いることによって微細なLISICON型結晶の前駆体が得られ、CNF(X)が障壁となってLISICON型結晶粒子の焼結を抑制することによる。
また、CNF(X)は、後述の工程(III)においてほぼ全てが焼失することから、本発明で得られるLISICON型結晶粒子は電子伝導性を有さないため、リチウムイオン二次電池の固体電解質として用いた際に正極−負極間で短絡が生じることはない。
セルロースナノファイバー(x1)は、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維である。また、リグノセルロースナノファイバー(x2)は、リグニンを除去する精製を行わずに得られたセルロースナノファイバーであって、セルロースナノファイバー(x1)がリグニンで被覆されてなるものである。
セルロースナノファイバー(x1)とリグノセルロースナノファイバー(x2)は、共に優れた水への分散性を有している。工程(I)では、これらセルロースナノファイバー(x1)及びリグノセルロースナノファイバー(x2)を一方のみ用いてもよく、双方併用してもよい。
CNF(X)の平均繊維径は、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。下限値については特に制限はないが、通常1nm以上である。また、CNF(X)の平均長さは、ハンドリングの観点から、好ましくは100nm〜100μmであり、より好ましくは1μm〜100μmであり、さらに好ましくは5μm〜100μmである。
原料化合物は、リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物の3種であって、工程(I)においてCNF(X)とともに用いる化合物であり、工程(I)においてはこれら3種の原料化合物の全てを用いる。
工程(I)は、リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物の原料化合物の全てと、CNF(X)と、水とを混合して、25℃におけるpHが9〜14である混合液(A)を調製する工程である。
かかる工程(I)では、具体的には、リチウム化合物、ケイ酸化合物、CNF(X)及び水を含有する混合液(x−1)と、リン酸化合物及び水を含有する混合液(x−2)を各々調製した後、これらの混合液を混合して混合液(A)を調製する。これにより、得られる混合液(A)中には、化学組成の均質性が高く充分に小径化されてなる反応生成物、すなわちリン酸三リチウムと、原料化合物として添加されたケイ酸化合物とCNF(X)との混合物が含有されることとなり、次工程(II)における水熱反応生成物の微細化、ひいては工程(III)におけるLISICON型結晶粒子の微細化を効果的に図ることができる。
混合液(a−1)は、リチウム化合物及びケイ酸化合物をCNF(X)とともに水に混合することにより調製する。かかる混合液(a−1)におけるこれらリチウム化合物及びケイ酸化合物の合計含有量は、混合液(a−2)との混合によって生じる反応生成物の化学組成の均質性を高める観点から、混合液(a−1)中の水100質量部に対し、好ましくは1質量部〜50質量部であり、より好ましくは5質量部〜30質量部であり、さらに好ましくは5質量部〜20質量部である。
CNF(X)の含有量は、混合液(a−1)中の水100質量部に対し、好ましくは0.01質量部〜20質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜15質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜10質量部である。
また、混合液(a−1)を調製するにあたり、リチウム化合物及びケイ酸化合物の混合割合は、モル比(Li:Si)で、好ましくは3.1:0.1〜4:1であり、より好ましくは3.1:0.1〜3.9:0.9であり、さらに好ましくは3.2:0.2〜3.8:0.8である。
混合液(a−1)は、各成分をより均一に分散させる観点から、混合液(a−2)と混合する前に、予め撹拌してもよい。混合液(a−1)を撹拌する時間は、好ましくは5分間〜3時間であり、より好ましくは10分間〜2時間であり、さらに好ましくは15分間〜90分間である。撹拌速度は、反応容器内壁面での混合液(a−1)の流速に換算して、好ましくは10cm/秒〜200cm/秒であり、より好ましくは15cm/秒〜150cm/秒、さらに好ましくは20cm/秒〜100cm/秒である。
混合液(a−2)は、リン酸化合物、及び水を混合することにより調製する。かかる混合液(a−2)におけるリン酸化合物の含有量は、混合液(a−2)中の水100質量部に対し、好ましくは3質量部〜20質量部であり、より好ましくは5質量部〜15質量部であり、さらに好ましくは7質量部〜15質量部である。
混合液(a−2)の25℃におけるpHは、得られる混合液(A)の25℃におけるpHを9〜14に調整する観点から、好ましくは12〜14であり、より好ましくは12.5〜14であり、さらに好ましくは13〜14である。混合液(a−2)のpHを上記範囲に調整する上で、さらにpH調整剤を用いてもよい。かかるpH調整剤は、特に限定されるものではないが、混合液(a−2)のpH調整を容易に行う観点から、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウム等の水酸化物を用いるのが好ましい。
混合液(a−2)は、各成分をより均一に溶解又は分散させる観点から、混合液(a−1)と混合する前に、予め撹拌してもよい。混合液(a−2)を撹拌する時間は、好ましくは1分間〜30分間であり、より好ましくは2分間〜20分間であり、さらに好ましくは2分間〜10分間である。また撹拌速度は、反応容器内壁面での混合液(a−2)の流速に換算して、好ましくは10cm/秒〜200cm/秒であり、より好ましくは15cm/秒〜150cm/秒、さらに好ましくは20cm/秒〜100cm/秒である。
工程(I)では、上記混合液(a−1)と上記混合液(a−2)とを混合して、混合液(A)とする。混合液(a−1)と混合液(a−2)の混合方法は、特に限定されるものではないが、撹拌している混合液(a−1)に混合液(a−2)を滴下するのが好ましい。このように、リチウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、及びCNF(A)を含む混合液(a−1)に、リン酸化合物を含む混合液(a−2)を滴下して少量ずつ加えることにより、反応生成物の化学組成の均質性を一層高めることができる。
この際、混合液(a−2)の混合液(a−1)への滴下速度は、10質量部の混合液(a−1)に対し、好ましくは0.1質量部/分〜0.4質量部/分であり、より好ましくは0.15質量部/分〜0.4質量部/分であり、さらに好ましくは0.2質量部/分〜0.35質量部/分である。混合液(a−2)を滴下する際の混合液(a−1)の撹拌速度は、反応容器内壁面での混合液(a−1)の流速に換算して、好ましくは10cm/秒〜200cm/秒であり、より好ましくは15cm/秒〜150cm/秒、さらに好ましくは20cm/秒〜100cm/秒である。
混合液(A)を得るにあたり、混合する混合液(a−1)と混合液(a−2)との質量比((a−1):(a−2))は、好ましくは20:1〜1:4であり、より好ましくは10:1〜1:3であり、さらに好ましくは5:1〜2:3である。
混合液(a−1)と混合液(a−2)を混合する際の混合液(a−1)の温度は、好ましくは10℃〜80℃であり、より好ましくは15℃〜70℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。また混合液(a−2)の温度は、好ましくは10℃〜80℃であり、より好ましくは15℃〜70℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。
混合液(a−1)と混合液(a−2)を混合する時間は、好ましくは10分間〜24時間であり、より好ましくは15分間〜18時間であり、さらに好ましくは30分間〜12時間である。またこの際、各成分をより均一に溶解又は分散させ、反応生成物の化学組成の均質性を高める観点から、撹拌してもよい。撹拌速度は、反応容器内壁面での混合液(A)の流速に換算して、好ましくは10cm/秒〜200cm/秒であり、より好ましくは15cm/秒〜150cm/秒、さらに好ましくは20cm/秒〜100cm/秒である。
混合液(a−1)と混合液(a−2)を混合することによって、リチウムリン酸塩及びリチウムケイ酸塩とともに、CNF(X)を含有する混合液(A)が得られる。これらリチウムリン酸塩及びリチウムケイ酸塩は、平均粒径が100nm以下の微粒子であり、後述する工程(II)において水熱反応に付す工程を経ることにより、LISICON型結晶粒子の前駆体とセルロースナノファイバーとを含む前駆体混合物(B)を良好に生成する。かかる混合液(A)中におけるリチウムリン酸塩及びリチウムケイ酸塩の合計含有量は、混合液(A)中に、好ましくは0.5質量%〜40質量%であり、より好ましくは1質量%〜35質量%であり、さらに好ましくは1.5質量%〜30質量%である。CNF(X)の含有量は、混合液(A)中に、好ましくは0.02質量%〜40質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜30質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%〜20質量%である。また、混合液(A)の25℃におけるpHは、9〜14であって、好ましくは10〜14であり、より好ましくは10.5〜14である。かかる範囲内となるよう混合液(A)のpHを調整するにあたり、必要に応じて上記pH調整剤を用いてもよい。
なお、混合液(A)中において、CNF(X)とともにこれらのリチウムリン酸塩及びリチウムケイ酸塩が生成され、混合物としてこれらが含有されてなることは、X線回折によって確認することができる。
工程(II)は、工程(I)で得られた混合液(A)を100℃以上の水熱反応に付した後、CNF(X)が混在してなる水熱反応生成物を洗浄し、次いで乾燥して、CNF(X)が混在してなる前駆体混合物(B)を得る工程である。かかる工程(II)における水熱反応は、混合液(A)を充填した反応容器を圧力容器等に格納して加圧下で行う。
なお、工程(II)に移行する前に、予め工程(I)で得られた混合液(A)を撹拌する場合、かかる撹拌は反応容器内で行えばよく、次いで反応容器を圧力容器等に格納すればよい。かかる撹拌は、CNF(X)が混在してなる前駆体混合物(B)を効率的に生成させる観点から、圧力容器等に格納された反応容器内において工程(II)における水熱反応が完了するまで継続するのが好ましい。この際における混合液(A)の撹拌速度は、反応容器内壁面での混合液(A)の流速に換算して、好ましくは15cm/秒以上であり、より好ましくは15cm/秒〜80cm/秒であり、さらに好ましくは15cm/秒〜70cm/秒である。撹拌方法としては、この撹拌速度が実現可能であれば特に限定されないが、例えば撹拌羽根を用いる方法、又は特開2014−118328号公報に記載のポンプを使用して合成容器中のスラリーを撹拌する方法等を好適に使用することができる。
さらに、上記撹拌方法を用いる際に、混合液(A)全体において均一に水熱反応を生じさせる観点から、反応容器内に邪魔板を設置したり、撹拌翼の回転方向やポンプの送液方向を間欠的に逆転したりすることによって、混合液(A)の流れに擾乱を生じさせるのが有効である。
水熱反応に付す際の混合液(A)の温度(反応温度)は、100℃以上であればよく、好ましくは130℃〜250℃であり、より好ましくは140℃〜230℃である。この際の圧力及び反応時間は、反応温度が100℃以上の場合は0.3MPa以上で10分間以上が好ましく、130℃〜250℃で反応を行う場合は0.3MPa〜2.0MPaで10分間〜24時間が好ましく、140℃〜230℃で反応を行う場合は0.4MPa〜1.8MPaで10分間〜16時間が好ましい。
また、水熱反応における反応容器内の雰囲気は限定されるものではないが、雰囲気の調整の容易性の観点から、空気下又は水蒸気下が好ましい。
次いで、混合液(A)を上記水熱反応に付した後、CNF(X)が混在してなる水熱反応生成物を洗浄し、次いで乾燥する。かかるCNF(A)が混在してなる水熱反応生成物は、水熱反応後の混合液(A)を固液分離すればよく、得られるCNF(X)が混在してなる水熱反応生成物は、リン酸リチウムとケイ酸リチウムとの混合物と、CNF(X)との混合物、すなわちLISICON型結晶粒子の前駆体とCNF(X)とが混在してなる前駆体混合物(B)が含有されてなる。固液分離に用いる装置としては、例えば、フィルタープレス機、遠心濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的にセルロースナノファイバーが混在してなる水熱反応生成物を得る観点から、フィルタープレス機を用いるのが好ましい。
次いで、回収されたCNF(X)が混在してなる水熱反応生成物は、原料由来のアニオン成分等の水溶性不純物を効果的に除去する観点から、洗浄する。かかる洗浄には水を用いればよく、その水の量は、CNF(X)が混在してなる水熱反応生成物の乾燥質量1質量部に対し、好ましくは5質量部〜50質量部であり、より好ましくは7質量部〜50質量部であり、さらに好ましくは9質量部〜50質量部である。かかる水の温度は、水溶性不純物を効果的に除去する観点から、好ましくは5℃〜70℃であり、より好ましくは20℃〜70℃である。
洗浄したCNF(X)が混在してなる水熱反応生成物は、次に乾燥する。乾燥手段としては、噴霧乾燥、恒温乾燥、流動床乾燥、外熱式乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、なかでも、後述する工程(III)における焼成を経ることによって得られるLISICON型結晶粒子が、必要以上に成長するのを有効に制御して充分に微細化を図る観点から、噴霧乾燥又は恒温乾燥とするのが好ましい。
乾燥後に得られるCNF(X)が混在してなる前駆体混合物(B)は、リン酸リチウム及びケイ酸リチウムと、CNF(X)との混合物である。かかるCNF(X)が混在してなる前駆体混合物(B)の平均粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD50値で、好ましくは5nm〜150nmであり、より好ましくは5nm〜100nmである。ここで、粒度分布測定におけD50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。したがって、乾燥手段として噴霧乾燥を採用する場合、用いるスプレードライヤーの運転条件を適宜最適化することにより、かかるCNF(X)が混在してなる前駆体混合物(B)の粒径を調整すればよい。
工程(III)は、工程(II)で得られたCNF(X)が混在してなる前駆体混合物(B)を400℃〜1000℃で焼成する工程である。かかる工程(III)を経ることにより、CNF(X)のほぼ全てが焼失し、極めて微細な粒子であって高純度である、固体電解質として非常に有用なLISICON型結晶粒子を得ることができる。
工程(III)における焼成温度は、得られるLISICON型結晶粒子の結晶性を高めつつ、有効に粒子の微細化を図る観点から、400℃〜1000℃であって、好ましくは500℃〜900℃であり、より好ましくは600℃〜800℃である。また焼成時間は、同様の観点から、好ましくは0.5時間〜30時間であり、より好ましくは1時間〜24時間であり、さらに好ましくは1時間〜18時間である。
上記焼成における雰囲気は、CNF(X)のほぼ全てを焼失させる観点から、大気雰囲気下又は酸素雰囲気下が好ましい。かかる焼成に用いる装置としては、上記雰囲気下において温度の調整が可能な物であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式のものも使用することができ、例えば、外熱キルンやローラーハース等の焼成炉が挙げられる。
CNF(X)のほぼ全てが焼失したことは、炭素・硫黄分析装置を用いて測定した炭素量で確認することができる。本発明のLISICON型結晶粒子の炭素量は、電子伝導性を低くしてリチウムイオン二次電池の固体電解質として用いても正極−負極間に短絡を生じさせない観点から、炭素・硫黄分析装置による測定値で、好ましくは0質量%〜0.5質量%であり、より好ましくは0質量%〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0質量%〜0.1質量%である。
このように、本発明の製造方法によれば、粒径が有効に微細化され、高いBET比表面積を有し、かつ水溶性不純物の含有量が十分に低減されてなる、高結晶度のLISICON型結晶粒子を得ることができる。したがって、優れた充放電特性を発現し得る全固体リチウムイオン二次電池用固体電解質を、簡便に製造することができる。
具体的には、本発明の製造方法により得られるLISICON型結晶粒子の平均粒径は、優れたリチウムイオン伝導性を発現させる観点から、好ましくは5nm〜70nmであり、より好ましくは5nm〜60nmであり、さらに好ましくは5nm〜50nmである。ここで、LISICON型結晶粒子の平均粒径とは、SEM又はTEMの電子顕微鏡を用いた観察における、数十個の粒子の粒径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
また、本発明の製造方法により得られるLISICON型結晶粒子のBET比表面積は、LISICON型結晶粒子同士又はLISICON型結晶粒子と電極材料間の接触確率を充分に確保する観点から、好ましくは30m2/g以上であり、より好ましくは40m2/g以上であり、さらに好ましくは45m2/g以上である。
[0051]
また、本発明の製造方法により得られるLISICON型結晶粒子は、優れたリチウムイオン伝導性を発現させる観点から、水溶性不純物の含有量が極めて少なく、例えば、原料化合物として硫酸塩を用いた場合、得られるLISICON型結晶粒子中の水溶性不純物の含有量(SO3量)は、好ましくは500ppm以下であり、より好ましくは300ppm以下である。
本発明の製造方法により得られるLISICON型結晶粒子のタップ密度は、0.5g/cm3〜3.0g/cm3であり、好ましくは0.6g/cm3〜2.8g/cm3であり、より好ましくは0.7g/cm3〜2.6g/cm3である。固体電解質であるLISICON型結晶粒子が、かかるタップ密度を有することは、全固体リチウムイオン二次電池における固体電解質相を形成するときにLISICON型結晶粒子の充填性を向上させ、これによって緻密な固体電解質層を得ることが可能となり、全固体リチウムイオン二次電池として優れた充放電特性を発現することに大きく寄与するものと考えられる。
こうして本発明の製造方法により得られるLISICON型結晶粒子を固体電解質として適宜適用できるリチウムイオン二次電池としては、正極と負極と固体電解質を必須構成とするものであって、正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層の順に積層配置された積層体が形成されるものであれば特に限定されない。
ここで、正極活物質層については、リチウムイオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができれば、その材料構成は特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料化合物を水熱反応させることにより得られる各種ポリアニオン型正極活物質からなる正極活物質層を好適に用いることができる。
また、負極活物質層については、リチウムイオンを充電時には吸蔵し、かつ放電時には放出することができれば、その材料構成は特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料を水熱反応させることにより得られるチタンニオブ酸化物やチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物からなる負極活物質層を好適に用いることができる。
また、本発明のLISICON型結晶粒子を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法としては、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、特開2017−10816号公報に記載されるように、正極活物質層、及び負極活物質層に内包される固体電解質粒子として本発明のLISICON型結晶粒子を用い、固体電解質層には、かかる固体電解質粒子以外の固体電解質を用いてもよい。
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型,角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
[製造例1](LiCoPO4正極活物質粒子の製造)
LiOH・H2Oを12.72gと水40mLを混合して、スラリー(c−1)を得た。得られたスラリー(c−1)を、25℃の温度に保持しながら3分間撹拌しつつ85質量%のH3PO4を11.53g、35mL/分で滴下し、撹拌速度400rpmで1時間撹拌することにより、Li3PO4スラリー(c−2)を得た。次に、得られたLi3PO4スラリー(c−2)全量に対し、CoSO4・7H2Oを21.08g添加して、スラリー(c−3)とした後、これをオートクレーブに投入し、170℃で1時間の水熱反応を行った。オートクレーブ内の圧力は、0.8MPaであった。生成した水熱反応物をろ過し、次いで、水熱反応物1質量部に対して12質量部の水により洗浄した。洗浄した水熱反応物を−50℃で12時間凍結乾燥して、LiCoPO4正極活物質粒子(粒子径100nm)を得た。
[実施例1]
水40mLにLiOH・H2O 4.50g、SiO2 0.90g、及びセルロースナノファイバー(Ama−10002、スギノマシン製、含水率98%)19.29gを混合して、混合液(a−1)1を得た。25℃における混合液(a−1)1のpHは13.5であった。次いで、得られた混合液(a−1)1を25℃の温度に保持しながら、撹拌速度200rpmで10分間撹拌した後、そのまま撹拌を継続している混合液(a−1)1に、85%H3PO4 1.73gを50mL/分で全量滴下して混合した後、さらに撹拌速度200rpmで30分間撹拌して混合液(A)1を得た。かかる混合液(A)1の25℃におけるpHは12、生成したセルロースナノファイバー、Li3PO4及びSiO2の合計含有量は5質量%であった。
得られた混合液(A)1をオートクレーブに投入し、170℃、1.0MPaでの水熱反応を6時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を固形分1質量部に対して5質量部の水で洗浄した後、80℃で12時間恒温乾燥して前駆体混合物(B)1を得た。X線回折法による定性分析から、得られた前駆体混合物(B)1中における混合物Li3PO4とLi4SiO4の質量比は、1:1.04であった。得られた前駆体混合物(B)1を、空気雰囲気下700℃で4時間焼成してLISICON型結晶粒子X1を得た。
得られたLISICON型結晶粒子X1は、Li3.5Si0.50.54単相であり、平均粒径は25nm、BET比表面積は45m2/gであった。得られたLISICON型結晶粒子X1のSEM写真を図1に、X線回折パターンを図2に示す。
[実施例2]
LiOH・H2Oの添加量を5.01g、SiO2の添加量を1.62g、85%H3PO4の添加量を0.35gとした以外、実施例1と同様にしてLISICON型酸化物粒子X2を得た。
得られたLISICON型酸化物粒子X2は、Li3.9Si0.90.14単相であり、平均粒径は25nm、BET比表面積は45m2/gであった。
[実施例3]
LiOH・H2Oの添加量を8.1g、SiO2の添加量を0.18g、85%H3PO4の添加量を3.11gとした以外、実施例1と同様にしてLISICON型酸化物粒子X3を得た。
得られたLISICON型酸化物粒子X3は、Li3.1Si0.10.94単相であり、平均粒径は25nm、BET比表面積は45m2/gであった。
[比較例1]
水40mLにLi2CO3 11.38g、(NH4)H2PO4 2.30g、SiO2 1.20gを混合して、遊星ボールミルを用いて400rpmで4時間粉砕して前駆体混合物(B)を得た。得られた前駆体混合物(B)を空気雰囲気下900℃10時間焼成することにより、LISICON型結晶粒子Y1を得た。
得られたLISICON型結晶粒子Y1は、Li3.5Si0.50.54単相であり、平均粒径は500nm、BET比表面積は1m2/gであった。得られたLISICON型結晶粒子Y1のSEM写真を図3に、X線回折パターンを図4に示す。
《評価試験》
実施例1〜3及び比較例1で得られたLISICON型結晶粒子X1〜X3及びY1を用い、全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
具体的には、正極に製造例1で得られたLiCoPO4正極活物質粒子を用い、正極活物質:固体電解質(質量比)を75:25の配合割合で混合した後、プレス用冶具に投入して正極活物質層とした。さらに、その層上に実施例1〜3及び比較例1で得られたLISICON型結晶粒子のみをさらに投入して固体電解質層として積層させた後、ハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスして、φ14mmの円盤状の正極を得た。次いで、負極としてリチウム箔を固体電解質層側に取り付けることで、全固体リチウムイオン二次電池を作製した。
作製した全固体リチウムイオン二次電池を用いて、充電条件を16mA/g、電圧5.0Vの定電流充電、放電条件を16mA/g、終止電圧3.5Vの定電流放電とした場合の、16mA/gにおける放電容量を求めた。なお、充放電試験は全て45℃で行った。結果を表1に示す。
上記結果より、実施例1の製造方法で得られたLISICON型結晶粒子は、比較例1の製造方法で得られたLISICON型結晶粒子に比して、優れた放電容量を示すことがわかる。これは、図1及び図2からも分かるとおり、実施例1の製造方法で得られたLISICON型結晶粒子は、平均粒径が小さくBET比表面積が大きい粒子であり、かつ結晶度の高い微粒子であることによるものであり、さらに不純物含有量も少ないことによるものと考えられる。

Claims (6)

  1. 式(1):Li4-xSi1-xx4 ・・・(1)
    (式(1)中、xは0<x<1である数を示す。)
    で表され、平均粒径が5nm〜70nmであり、かつBET比表面積が30m2/g以上である、固体電解質用LISICON型結晶粒子。
  2. 水溶性不純物の含有量が、500ppm以下である、請求項1に記載の固体電解質用LISICON型結晶粒子。
  3. 次の工程(I)〜(III):
    (I)リチウム化合物、ケイ酸化合物及びリン酸化合物からなる原料化合物の全てと、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーと、水とを混合して、25℃におけるpHが9〜14である混合液を調製する工程
    (II)得られた混合液を100℃以上の水熱反応に付した後、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる水熱反応生成物を洗浄し、次いで乾燥して、セルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物を得る工程
    (III)得られたセルロースナノファイバー及び/又はリグノセルロースナノファイバーが混在してなる前駆体混合物を400℃〜1000℃で焼成する工程
    を備える、固体電解質用LISICON型結晶粒子の製造方法。
  4. 工程(III)における焼成が、大気雰囲気下又は酸素雰囲気下である、請求項3に記載の固体電解質用LISICON型結晶粒子の製造方法。
  5. 工程(II)において水熱反応生成物を洗浄するにあたり、水熱反応生成物の乾燥質量1質量部に対して5質量部〜50質量部の水を用いる、請求項3又は4に記載の固体電解質用LISICON型結晶粒子の製造方法。
  6. 固体電解質用LISICON型結晶粒子が、下記式(1):
    Li4-xSi1-xx4 ・・・(1)
    (式(1)中、xは、0<x<1である数を示す。)
    で表される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の固体電解質用LISICON型結晶粒子の製造方法。
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