JP2020100838A - メチルセルロース及びこれを含む食品 - Google Patents

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Abstract

【課題】75℃に加熱した状態から温かい状態で加熱食品を食することができる温度である45℃付近に食品が冷めた場合においても、ゲルの状態を保つことができるゲル化組成物に用いるメチルセルロースを提供する。【解決手段】75℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)が3,000〜5,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)が2,000〜3,600Paであり、かつ20℃における2.0質量%水溶液の粘度が3,000〜10,000mPa・sであるメチルセルロースを提供する。また、前記メチルセルロースを用いた食品添加剤及び食品を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、ゲル化組成物及びこれを含む食品に関する。
近年、長寿社会を迎え高齢者が多くなり、加齢に伴う嚥下機能低下による摂食又は嚥下困難者や、脳疾患や口腔又は咽頭障害による摂食又は嚥下困難者が増加している。特に、高齢者は、摂食又は嚥下機能の低下により嚥下反射を起こしにくくなり、誤嚥して水や食品が気管支から肺に入ってしまい、肺炎等の重篤な症状を引き起こす原因となる。このため、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できるゼリー食のような食形態が求められている。
従来、摂食又は嚥下困難者が必要とする食品物性としての硬さ、付着性又は凝集性(食品の纏り易さ)を整えるために、食品をペースト化したり、軟食化したりして供食している。そのため、従来の摂食又は嚥下困難者向けの食事は、一般食に比べて見た目の形態や食感等において必ずしも満足するものではなかった。また、ペースト化する際に低温ゲル化剤を用いて物性をコントロールするため、温めると柔らかくなって溶け出してしまい、嚥下に適した物性から外れてしまうケースが多く、温かい状態で提供することが困難であった。特に、施設又は病院等で食事を提供する際は、提供前に食品の芯温を75℃で10分間以上保持されるように加熱処理することが必要であり、低温ゲル化剤が溶けてしまい食品の形態を保持できないという問題があった。
そこで、特許文献1では、加熱時においても摂食又は嚥下困難者向けの食品の硬さ及び付着性を保持する方法として、加熱凝固するゲル化剤であるメチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースと、寒天、カラギナン等の冷却凝固するゲル化剤との組合せが提案されている。
特開2014−236700号公報
しかし、特許文献1の場合は、メチルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースのゲル化温度以上の加熱温度でゲル化した際の硬さ又は付着性は保持できるが、その後、実際に温かい状態で加熱食品を食することができる45℃付近になった場合に、ゲル状態を保てず粘性のある溶液状態になってしまう。そのため、付着性が増加して口内でべたついてしまい、食品が喉につまる原因の一つになっていた。
本発明は、食事が提供される前の加熱温度において食品の形態を保持し、加熱による離水を防止し、その後に45℃付近において食品を食する場合においても、硬さ、付着性及び凝集性(食品の纏り易さ)をコントロールすることができるゲル化組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、所定のメチルセルロースと低温ゲル化剤を組合せることにより、高温の状態から温かい状態においても食品の形態が安定し、食品の硬さ、付着性及び凝集性をコントロールすることができることを見出し、本発明を成すに至った。
本発明の一つの様態によれば、75℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)が3,000〜5,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の貯蔵弾性率G'(75→45℃)が2,000〜3,300Paであり、かつ20℃における2.0質量%水溶液の粘度が3,000〜10,000mPa・sであるメチルセルロース、当該メチルセルロースを含む食品添加剤、及び当該メチルセルロースを含む食品を提供する。
本発明によれば、75℃においても、食品の形態を保つことができ、加熱による食品からの離水も少なくすることができる。また、75℃から45℃に戻った際、摂食及び嚥下困難者が容易に経口摂取できる硬さ、付着性及び凝集性を食品に付与することができる。
(1)メチルセルロース
本発明によれば、75℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)が3,000〜5,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)が2,000〜3,300Paであって、かつ20℃における2.0質量%水溶液の粘度が3,000〜10,000mPa・sであるメチルセルロースを用いることができる。
このメチルセルロースは、例えば、セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物溶液を撹拌混合してアルカリセルロースを得る工程と、前記アルカリセルロースとメチル化剤を反応して第一の反応混合物を得る工程と、前記第一の反応混合物に、更に前記メチル化剤を配合することなく、第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合して撹拌混合により第二の反応混合物を得る工程と、前記第二の反応混合物を精製してメチルセルロースを得る工程とを少なくとも含んでなるメチルセルロースの製造方法であって、前記第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、前記第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物との合計質量に対する前記第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が、好ましくは50〜86%であるメチルセルロースの製造方法によって得られる。
セルロースパルプは、木材パルプ、リンターパルプ等、通常のメチルセルロースの材料となるものである。また、セルロースパルプの重合度の指標である固有粘度は、目標とするメチルセルロースの水溶液粘度に応じて適宜選択することができるが、好ましくは、25℃において、600〜1,200ml/gであり、より好ましくは800〜1000ml/gである。セルロースパルプの固有粘度は、JIS P8215のA法に準拠の方法で測定することができる。
セルロースパルプ中には、セルロース及び水分が含まれ、本明細書において「セルロースパルプ中のセルロース」の量は、JIS P8215 A法準拠の方法で測定することができる。
セルロースパルプは、粉砕機で粉砕した粉末セルロースパルプであることが好ましい。パルプ粉砕機は、セルロースパルプを粉末状とすることが可能であれば、特に制限されることはないが、ナイフミル、カッティングミル、ハンマーミル、ボールミル及び竪型ローラーミル等の粉砕機を利用することができる。粉末セルロースパルプの重量平均粒子径D50は、好ましくは30〜400μmである。粉末セルロースパルプの重量平均粒子径D50は、ロータップ式篩しんとう機に、JIS Z8801に準拠する目開きの異なる複数の試験用篩を設置し、トップの篩の上に粉末パルプを入れ、振動もしくはタッピングさせることで篩い分けを行った後、各篩上及び篩下質量を測定し質量分布を求め、積算値50%での平均粒子径として測定して求める。
セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物溶液を撹拌混合して、アルカリセルロースを得る工程について説明する。
アルカリ金属水酸化物溶液は、第一のアルカリ金属水酸化物溶液及び第二のアルカリ金属水酸化物溶液のように二段階に分割して配合する。ここで、アルカリ金属水酸化物溶液に特に制限はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の溶液が挙げられるが、経済的な観点から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と、第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物は、例えばいずれも水酸化ナトリウムを用いるように同一種類とすることが好ましいが、例えば前者として水酸化ナトリウムを用い、後者として水酸化カリウムを用いるように異なる種類の組合せとすることも可能である。
アルカリ金属水酸化物溶液の配合方法は、好ましくはアルカリ金属水酸化物溶液をセルロースパルプに添加するものであり、例えば、アルカリ金属水酸化物溶液を直接滴下する方法、アルカリ金属水酸化物溶液をスプレー状に噴霧する方法があるが、得られたアルカリセルロースの均一性が良い点で、スプレー状に噴霧する方法が好ましい。
アルカリ金属水酸化物溶液中のアルカリ金属水酸化物の濃度は、エーテル化反応効率及び取扱いの観点から、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。第一のアルカリ金属水酸化物と第二のアルカリ金属水酸化物は、同一濃度であることが好ましいが、異なる濃度とすることも可能である。
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を撹拌混合する工程は、内部撹拌構造を有する反応機内で行うことが好ましい。反応機は、内部の温度を測定できるような測定器具が装着されていることが好ましい。
また、第一のアルカリ金属水酸化物溶液とセルロースパルプを撹拌混合する以前に、反応機内の酸素を真空ポンプ等で除去し、不活性ガス、好ましくは窒素で置換することで、アルカリ金属水酸化物と酸素が存在下で生じる解重合を抑制することが好ましい。
第一のアルカリ金属水酸化物溶液の使用量は、好ましくは第一のアルカリ金属水酸化物とセルロープパルプ中のセルロースのモル比(第一のアルカリ金属水酸化物/セルロース)として2.0〜4.0であり、より好ましくは2.7〜3.5である。第一のアルカリ金属水酸化物とセルロースのモル比が2.0未満であると、ゲル化温度が過度に低下して粘性が発現されない場合があり、かつ高い保形性を有するメチルセルロースは製造できない場合がある。一方、4.0を超えると、高い保形性を有するメチルセルロースは製造できない場合がある。
第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物と第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物の合計質量に対する第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合は、好ましくは50〜86%であり、より好ましくは65〜80%であり、更に好ましくは65〜75%である。第一と第二のアルカリ金属水酸化物の合計質量に対する第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が50%未満であると、ゲル化温度が低下してしまい粘性が発現されず、かつ高い保形性を有するメチルセルロースは製造できない場合がある。一方、第一と第二のアルカリ金属水酸化物の合計質量に対する第一のアルカリ金属水酸化物の質量の割合が86%を超えると、高い保形性を有するメチルセルロースは製造できない場合がある。
セルロースパルプと第一のアルカリ金属水酸化物の配合時の反応機の内温、好ましくはセルロースパルプに第一のアルカリ金属水酸化物溶液を添加時の反応機の内温は、均一なアルカリセルロースを得る点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは30〜70℃である。
第一のアルカリ金属水酸化物溶液中の第一のアルカリ金属水酸化物の配合速度は、セルロースパルプ1モルにつき単位時間に添加された第一のアルカリ金属水酸化物のモル量を示し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液が系内で均一に混合されるようにする観点から、好ましくは1.5〜48[mol/mol・hr]であり、より好ましくは4.8〜18.6[mol/mol・hr] 、更に好ましくは8〜15[mol/mol・hr]である。
第一のアルカリ金属水酸化物溶液添加後、更に5〜30分間撹拌混合を続けて、アルカリセルロースをより均一な状態とすることも可能である。
反応機内における局所的な発熱を抑制する目的で、第一のアルカリ金属水酸化物溶液の添加前、添加中、もしくは添加後に、メチル化反応に供さない有機溶媒、例えばジメチルエーテルを系内に添加することができる。
その後、得られたアルカリセルロースとメチル化剤を反応させて、第一の反応混合物とする。
メチル化剤としては、例えば塩化メチル、硫酸ジメチル、ヨウ化メチル等が挙げられ、得られたメチルセルロースの水への溶解性及び経済的な観点から、塩化メチルが好ましい。
メチル化剤を反応させるときの反応機内温は、反応制御の観点から、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜80℃である。
メチル化剤の配合モル量は、第一及び第二のアルカリ金属水酸化物の合計モル量に対するメチル化剤のモル比(メチル化剤/合計アルカリ金属水酸化物)として、好ましくは0.8〜1.5であり、より好ましくは、1.0〜1.3である。当該モル比(メチル化剤/合計アルカリ金属水酸化物)が0.8未満であると、メチル基が必要量置換されない場合がある。一方、1.5を超えて過剰にメチル化剤を配合することは経済的に不利となる場合がある。
メチル化剤の配合方法は、好ましくはメチル化剤をアルカリセルロースに添加する。メチル化剤の添加時間は、反応制御及び生産性の観点から、好ましくは30〜120分、より好ましくは40〜90分である。
第一の反応混合物中におけるメチルセルロースのメチル基の置換度(DS)は、所望の粘度又は貯蔵弾性率を得る観点から、好ましくは0.75〜1.68であり、より好ましくは0.81〜1.68であり、更に好ましくは、0.99〜1.37である。ここで、DS(degree of substitution)は、セルロースのグルコース環単位当たり、メチル基で置換された水酸基の平均個数を示す。
続いて、メチル化した第一の反応混合物に、更にメチル化剤を配合することなく、第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合して撹拌混合により第二の反応混合物を得る。
第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合するとき、すなわち第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合を開始する時期は、好ましくは配合するメチル化剤の全量の80質量%以上の添加が完了した後、より好ましくはメチル化剤の添加が完了した後である。第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加を開始する時期が、配合するメチル化剤の全体の80質量%添加が完了する前である場合、高い保形性を有するメチルセルロースが製造できない場合がある。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物の使用量は、セルロースパルプ中のセルロースに対するモル比(第二のアルカリ金属水酸化物/セルロース)として、好ましくは0.65〜2.0であり、より好ましくは0.88〜1.48である。当該モル比(アルカリ金属水酸化物/セルロース)が0.65未満であると、高い保形性を有するメチルセルロースは製造できない場合があり、2.0を超えると、ゲル化温度が過度に低下して粘性が発現されない場合があり、かつ高い保形性を有するメチルセルロースは製造できない場合がある。
第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合するときの配合開始時の反応機内温、好ましくは第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を添加するときの添加開始時の反応機内温は、好ましくは65〜90℃、より好ましくは75〜85℃である。第二のアルカリ金属水酸化物溶液の添加開始時の反応機の内温が65℃未満であると、高い保形性を有するメチルセルロースが製造できない場合がある。また、添加開始時の反応機の内温が90℃を超えると、アルカリ金属水酸化物によるマーセル化反応による発熱及びメチル化による発熱反応を制御できなくなる場合がある。更に、高い保形性を有するメチルセルロースを得る観点から、第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合が完了するときの反応機内温は、好ましくは80〜100℃、より好ましくは85〜95℃である。なお、好ましくは、添加開始時を添加完了時よりも低い温度とし、その温度差は好ましくは3〜20℃、より好ましくは4〜15℃である。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液中の第二のアルカリ金属水酸化物の配合速度は、第一の反応混合物に、出発原料として用いたセルロースパルプ中のセルロース1モルにつき単位時間に配合する第二のアルカリ金属水酸化物のモル量を示し、好ましくは0.5〜9.6[mol/mol・hr]、より好ましくは1.0〜6.5[mol/mol・hr]、更に好ましくは1.0〜3.5[mol/mol・hr]である。第二のアルカリ金属水酸化物の配合速度が0.5[mol/mol・hr]未満であると、第二のアルカリ金属水酸化物の配合時間が長くなることから、反応時間の延長につながる場合があり、更に、高い保形性を有するメチルセルロースが製造できない場合がある。一方、第二のアルカリ金属水酸化物の配合速度が9.6[mol/mol・hr]を超えても、高い保形性を有するメチルセルロースが製造できない場合がある。
第一の反応混合物に第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合する工程において、高い保形性を有するメチルセルロースを得る観点から、第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合の開始から完了するまでの間、反応機内温を一定速度で昇温しながら配合することが好ましい。昇温速度は、好ましくは3.0〜50℃/hr、より好ましくは、8.0〜45℃/hr、更に好ましくは8.0〜30℃/hrである。
一般に、セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液と混合して得られるアルカリセルロースは、メチル化剤とエーテル化反応することによりメチルセルロースとなる。この場合、反応系内のメチル化剤は、このエーテル化反応に伴い徐々に消費されていく。反応機内温が一定である場合、反応系内のメチル化剤の消費に伴ってエーテル化反応の反応速度は徐々に低下する。そこで、反応機内温を一定速度で昇温しながら第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合を行うことにより、反応系内のメチル化剤の消費の結果生じるエーテル化反応の反応速度の低下を抑えて、相対的に第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合に伴うエーテル化反応速度を高くする。これにより、高い保形性を有するメチルセルロースを得ることができる。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合した後、エーテル化反応を完了させるために、撹拌混合を続けることが好ましい。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合後に行う撹拌混合時の反応機内温は、反応制御性の点から、好ましくは80〜120℃、より好ましくは85〜100℃である。反応を終了させるためには、第二のアルカリ金属水酸化物溶液の配合後に加熱することが好ましい。
第二のアルカリ金属水酸化物溶液を配合後の撹拌混合時間は、生産性の点から、好ましくは10〜60分間、より好ましくは20〜40分間である。
得られた第二の反応混合物は、通常の粗メチルセルロースの精製方法と同様に精製してメチルセルロースとすることができる。精製方法は、例えば、第二の反応混合物と60〜100℃の水を撹拌容器で混合し、撹拌容器中で反応の際に副反応物として発生した塩を溶解し、次いで所望の精製されたメチルセルロースを得るため、撹拌容器から出る懸濁液を分離操作にかけ、塩を除去する方法で行われる。分離操作には、例えば加圧回転式フィルターを使用することができる。分離操作後は、乾燥機を用いて乾燥を行う。乾燥機には、例えば、伝導伝熱式溝型撹拌乾燥機を使用することができる。
得られたメチルセルロースは、必要であれば、例えばボールミル、ローラーミル、衝撃粉砕機のような通常の粉砕装置を用いて粉砕することができ、続いて篩で分級することで、粒度を調整することができる。
メチルセルロースのメチル基の置換度(DS)は、好ましくは1.61〜2.03であり、より好ましくは1.74〜2.03である。DSが1.61未満であると、メチルセルロースは高い保形性を有さない場合があり、一方、2.03を超える置換度のメチルセルロースを製造する方法は、メチル化剤及びアルカリ金属水酸化物の添加量が多くなってしまうため、経済的に不利となる場合がある。
一般的に、DSは置換度を表し、セルロースのグルコース環単位当たり、メトキシ基で置換された水酸基の平均個数である。
また、メチルセルロースのメチル基の置換度は、J.G.Gobler,E.P.Samscl,andG.H.Beaber,Talanta,9,474(1962)に記載された、Zeisel−GCによる手法によって測定することができる。
メチルセルロースのゲル強度は、75℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)と、75℃から温かい状態で加熱食品を食することができる45℃に戻った際の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)で表す。一般に貯蔵弾性率は、溶液の弾性成分、つまり物体に力を加えているときに生じた変形が、力を除くと元に戻る性質の成分を表し、ゲル強度の指標となる。
75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)は、3,000〜5,500Pa、好ましくは3,500〜5,300Pa、より好ましくは3,800〜5,000Pa、更に好ましくは4,000〜4,800Paである。貯蔵弾性率G'(75℃)が3,000Pa未満であると、食品の形態を保つことができず形が崩れてしまう。一方、貯蔵弾性率G'(75℃)が5,500Paを超えると、ゲルの強度が固くなりすぎてしまい、75℃から45℃に戻った際のゲルの強度が高い状態で保持され、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できない。
更に、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)は、2,000〜3,600Pa、好ましくは2,300〜3,300Pa、より好ましくは2,500〜3,200Pa、更に好ましくは2,500〜3,000Paである。貯蔵弾性率G'(75→45℃)が2,000Pa未満であると、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できる硬さ、付着性及び凝集性が得られない。また、貯蔵弾性率G'(75→45℃)が3,600Paを超えるとゲルの強度が高くなり過ぎてしまい、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できないため好ましくない。
メチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)及び貯蔵弾性率G'(75→45℃)は、例えばAnton Paar社のレオメータであるMCR502を用いて測定することができる。
メチルセルロース2.0質量%水溶液の調製は、以下のようにして行う。
メチルセルロースの換算した乾燥物6.0gに対応する量を広口瓶(直径65mm及び高さ120mmの体積350mlの容器)に正確に量り、熱湯(98℃)を加えて300.0gとし、容器に蓋をした後、かき混ぜ機を用いて均一な分散液となるまで毎分350〜450回転で20分間かき混ぜる。その後、得られた分散液を5℃以下の水浴中で40分間かき混ぜながら溶解し、試料溶液とする。
レオメータの試料測定部を予め10℃に温調しておき、調製されたメチルセルロース2.0質量%水溶液を、CC27測定カップ(直径30mm及び高さ80mmのアルミ製の円筒状容器)の標線(25ml)まで注ぎ入れ、周波数を1Hzとし、振幅1%のひずみをボブシリンダー(直径26.7mm及び高さ40.0mm:CC27)によりかけ測定を開始する。測定部は10℃から1分間に2℃昇温させ、データは毎分1点収集する。試料測定部が75℃に到達した時の貯蔵弾性率を本発明の貯蔵弾性率G'(75℃)とした。また、試料測定部が75℃に到達後に周波数1Hz、振幅1%のひずみをかけた状態のまま1分間に1℃冷却して行き45℃に到達した時の貯蔵弾性率を本発明の貯蔵弾性率G'(75→45℃)とした。
メチルセルロースの20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は、3,000〜10,000mPa・s、好ましくは4,000〜8,000mPa・s、より好ましくは4,000〜6,000mPa・sである。2.0質量%水溶液粘度が3,000mPa・s未満であると、メチルセルロースを含む食品のゲルの強度が低くなり食品の形態を保てなくなる。一方、2.0質量%水溶液粘度が10,000mPa・sを超えるとゲル化組成物の粘性が増加して付着性が増加するため、口内に食品が張り付くことによる誤飲や喉を詰まらせるといった問題が起きる危険が高くなる。
B型粘度計による粘度は、第十六改正日本薬局方のメチルセルロースに関する分析方法によって測定することができる。
メチルセルロースのゲル化温度は、貯蔵弾性率G'(30→80℃)と損失弾性率G''の関係を用いて評価する。一般に損失弾性率とは、溶液の粘性成分、つまり流体の運動にともなって、流体が変形され抵抗を生じる性質の成分を表し、ゲル化温度の指標となる。
メチルセルロース2.0質量%水溶液のゲル化温度は、好ましくは40〜55℃、より好ましくは40〜50℃、更に好ましくは40〜45℃である。ゲル化温度が40℃未満であると、メチルセルロースの水への溶解温度が低くなりすぎ、メチルセルロースが溶解せずに、粘性を十分に発現しない場合がある。一方、55℃を超えると、メチルセルロースを含む食品のゲル強度が低く、十分に食品の形態を保てない場合がある。
メチルセルロース2.0質量%水溶液のゲル化温度は、例えばAnton Paar社のレオメータであるMCR502を用いて測定することができる。
メチルセルロース2.0質量%水溶液の調製は、上記貯蔵弾性率G'(75℃)の試料溶液と同様に調製する。
レオメータの試料測定部を、予め30℃に温調しておき、メチルセルロース2.0質量%水溶液をCC27測定カップ(直径30mm及び高さ80mmの円筒状容器)の標線(25ml)まで注ぎ入れ、周波数を1Hzとし、振幅1%のひずみをかけ測定を開始する。試料測定部は、毎分2℃ずつ80℃まで昇温させる。データは毎分2点収集する。
この測定で得られる貯蔵弾性率G'(30→80℃)及び損失弾性率G''は、測定系の温度が上昇するに従い値が変化し、損失弾性率G''と貯蔵弾性率G'(30→80℃)が等しい値、つまりG''/G'(30→80℃)=1となるときの温度をゲル化温度とした。
(2)ゲル化組成物及びこれを含む食品
ゲル化組成物は、均質なゼリー状の食品、ムース状の食品、おかゆ、やわらかいペースト状又はゼリー寄せ等の食品に、食事が提供される前の加熱温度である75℃において食品の形態を保持し、加熱による離水を防止し、その後に温かい状態で食品を食することができる45℃付近においても、硬さ、付着性及び凝集性(食品の纏り易さ)をコントロールすることを目的として、配合することができる。
ゲル化組成物は、上記メチルセルロースと、低温ゲル化剤と、溶媒とを少なくとも含む。
ゲル化組成物中におけるメチルセルロースの割合は、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できる硬さ、付着性、凝集性にする観点から、好ましくは0.05〜10質量%である。
低温ゲル化剤は、前記メチルセルロースのゲル化温度より低い温度域において冷めた食品に保形性を与えるという観点から、前記メチルセルロースのゲル化温度より低温でゲル化するものである。低温ゲル化剤のゲル化温度としては、好ましくは0〜35℃である。低温ゲル化剤としては、ゼラチン又は多糖類が挙げられる。多糖類としては、加熱溶解した水溶液を冷却することによりらせん構造をとってゲル化する寒天、カラギーナン、ジェランガム、ネイティブジェランガムや、キサンタンガムとガラクトマンナン類(ローカストビーンガム、グルコマンナン、カシアガム、タラガム)との組み合わせや、その他にサイリュームシードガム、カードラン等が挙げられ、これらを単独で用いるか又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ゲル化組成物中における低温ゲル化剤の割合は好ましくは、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できる硬さ、付着性、凝集性にする観点から、好ましくは0.05〜30質量%である。
溶媒としては、イオン交換水、蒸留水、水道水、緩衝液等が挙げられ、これらによって得られる氷も使用することができる。
ゲル化組成物中における溶媒の割合は、摂食又は嚥下困難者が容易に経口摂取できる硬さ、付着性、凝集性にする観点から、好ましくは1〜99質量%である。
ゲル化組成物は、必要に応じて、更に糖類、甘味料、有機酸、増粘剤、調味料等の添加物を含有してもよい。これらの各添加物の含有量は、ゲル化組成物の用途に応じて変動するが、加熱中におけるゲル化組成物や具材等の沈殿を抑制したり、食品からの水の離水を抑える観点から、好ましくは0.5〜30質量%である。
糖類は、特に限定されないが、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖、ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられ、これらを単独で用いるか又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、アスパルテーム等が挙げられ、これらを単独で用いるか又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
有機酸としては、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、氷酢酸、フィチン酸、アジピン酸、コハク酸、グルコノデルタラクトン、アスコルビン酸、柑橘類の果汁等の各種果汁等が挙げられ、これらを単独で用いるか又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
増粘剤としては、加熱中におけるゲル化剤や具材等の沈殿や分離を抑えたり、食品からの離水を抑える観点から、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ファーセルラン、グルコマンナン、ペクチン、デンプン、加工デンプン、グアーガム、フェヌグリークガム、セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、結晶セルロース、コンニャクマンナン、グルコマンナン、タマリンド、大豆蛋白質、食物繊維等が挙げられ、これらを単独で用いるか又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
調味料としては、グリシン、グルタミン酸ナトリウム、アミノ酸調味料や食塩、酢酸等の有機酸類等が挙げられ、これらを単独で用いるか又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、ゲル化組成物の製造方法について説明する。
ゲル化組成物の製造方法には、ゲル化組成物中のメチルセルロースと低温ゲル化剤をそれぞれ別々に溶媒と混合後、組合せる製造方法と、メチルセルロースと低温ゲル化剤を同時に溶媒中で混合する製造方法がある。
メチルセルロースの分散液は、熱水の入った広口瓶中にメチルセルロースを投入し90〜100℃に保持しながら、かき混ぜ機を用いて撹拌して均一な分散液とするため、毎分350〜450回転で10〜30分間撹拌することにより製造される。
低温ゲル化剤の溶液は、水又は熱水の入った広口瓶中に低温ゲル化剤を投入し90〜100℃に保持しながら、かき混ぜ機を用いて撹拌して均一な分散液とし、溶解するまで毎分350〜450回転で30〜60分間撹拌することにより製造される。低温ゲル化剤を分散させる熱水は、室温25℃から昇温し低温ゲル化剤が溶解する温度以上に加熱されれば、溶媒の温度は特に限定されない。
その後、90〜100℃に保持された上記メチルセルロースの分散液と低温ゲル化剤の溶液をかき混ぜ機を用いて撹拌してゲル化組成物を得る。
一方、メチルセルロースと低温ゲル化剤を同時に溶媒中で混合する製造方法においては、水又は熱水の入った広口瓶中にメチルセルロースと低温ゲル化剤を同時に投入し90〜100℃に保持しながら、かき混ぜ機を用いて撹拌して均一な分散液となるまで毎分350〜450回転で30〜60分間撹拌することにより製造される。この際、低温ゲル化剤が溶解したかどうかについて、ゲル化組成物の粘度を測定することにより確認する。
次に、ゲル化組成物を含む食品について説明する。
ゲル化組成物を含む食品は、特に限定されないがゲル化組成物に添加物を加えたり、料理の材料として例えば、野菜、肉及び魚等から選ばれる食材と混合することにより得られる。食品中のゲル化組成物の含有量は、好ましくは1〜70質量%である。
均質なゼリー状の食品、ムース状の食品、おかゆ、やわらかいペースト状又はゼリー寄せ等のゲル化組成物を含む食品は、上記食材をミキサー、ミル、ジューサー、フードプロッセッサー等により液状又は粉末状にし、これを上記ゲル化組成物と混合装置を用いて混合し、適当な容器に充填して、冷却することにより食品を得ることができる。ゲル化組成物を十分にゲル化させるためには、低温ゲル化剤のゲル化温度以下にして、好ましくは1〜24時間、静置することが好ましい。
上記野菜、肉及び魚等の食材は予め加熱殺菌処理を行う。加熱殺菌処理としては、UHT、HTST、LTLT等の他、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式又は掻き取り式等の間接加熱方式により、好ましくは70〜180℃の加熱処理を行う。
ここで、混合装置としては、ハンドミキサー、ホモゲナイザー、コロイドミル、スタティックミキサー、インラインミキサー、ディスパーミル等が挙げられる。例えば、家庭用のハンドミキサーを利用する場合は、好ましくは回転数500〜1500回/分の条件で20秒間撹拌することが好ましい。ただし、混合中に低温ゲル化剤のゲル化温度以下になると不均質になるため、必要に応じて加熱しながら混合する必要がある。具体的には、ジェランガムでは60〜70℃以下になるとゲル化が始まり混合中に不均一な塊りが部分的にできてしまうため、80℃以上に加熱しながら混合することが好ましい。
また、ゼリー食は、一般食に比べてミキサー等で元の食材の形を一度崩してしまうため、野菜、肉及び魚等の形状をしたシリコーンや金属等の適当な容器(鋳型)に充填することにより、見た目も実際の食材と同じようにすることができる。
また、冷却方法としては、適当な容器に充填した後に、放冷、冷蔵庫による冷却、充填前にパーフェクター、コンビネーター等の急冷可塑化機による冷却が挙げられる。
得られたゲル化物又はこれを含む食品の硬さ、付着性及び凝集性については、テクスチャーアナライザーを用いて測定することができる。テクスチャーアナライザーにより得られる硬さは、ゲル化物又はこれを含む食品の硬さの指標となる。また、テクスチャーアナライザーにより得られる付着性は、ゲル化物又はこれを含む食品のべた付きの指標となる。一般的に、付着性は粘性が増加することで高くなるが、摂食又は嚥下困難者においては、粘性が増加すると嚥下圧の増加と食道平滑筋の活動性が高くなるため、食事の際の負担が増えてしまう。そのため、粘性及び付着性の増加は好ましくない。付着性が高い場合は、口内に食品の塊が張り付いてしまう可能性もある。更に、テクスチャーアナライザーにより得られる凝集性は咀嚼する際のゲル化物又はこれを含む食品のまとまり易さの指標となる。凝集性が低い場合は、咀嚼により食品等のまとまりが悪いため、飲み込む際に負担となる。
テクスチャーアナライザーとしては、例えば、英弘精機社製のテクスチャーアナライザーTA−XTplus、島津製作所製の小型卓上試験機EZ TESTを用いることができる。
摂食又は嚥下困難者に適した食品の物性については、厚生労働省から特別用途食品許可基準が通達されており、許可基準1〜IIIの基準で分類されている。具体的には、均質なゼリー状の食品の場合、許可基準1として硬さが2,500〜10,000N/m、付着性が400J/m以下、凝集性が0.2〜0.6とされている。均質なゼリー状又はムース状等の食品の場合、許可基準IIとして硬さが1,000〜15,000N/m、付着性が1,000J/m以下、凝集性が0.2〜0.9とされている。不均質なものとしてまとまりのよいおかゆ、やわらかなペースト状又はゼリー寄せの等の食品としては許可基準IIIとして硬さが300〜20,000N/m、付着性が1,500J/m以下、凝集性が基準なしと区分されている。
加熱時の離水に関しては、食品の芯温が75℃になるように加熱した際にゲル化組成物又はこれを含む食品から分離する水又は食材に含まれる油脂成分等の分離量によって評価する。摂食又は嚥下困難者は、水のような低粘度の溶液は嚥下反射が起こり難く、誤嚥して水や食品が気管支から肺に入ってしまい、肺炎等の重篤な症状を引き起こす原因となる。このような誤飲防止の観点から、溶液の分離量は、好ましくは0〜0.5gであり、より好ましくは0〜0.1gである。
ゲル化組成物及びこれを含む食品は特に限定されないが、提供前に食品の芯温が、好ましくは75℃で10分間以上保持されるように、電子レンジ、ガスレンジ、オーブン、乾燥機を用いて、焼き、フライ、蒸し等により加熱処理される。そして、食品の芯温が、好ましくは75〜90℃、より好ましくは75〜80℃となるように加熱処理する。
以下に、メチルセルロースの合成例及び比較合成例を記載し、更に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は合成例及び実施例に限定されるものではない。
合成例1
固有粘度が800ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕し、粉末セルロースパルプを得た。この粉末セルロースパルプのうち、セルロース分で6.0kgに相当する量のセルロースパルプを、ジャケット付き内部撹拌式耐圧反応機に仕込み、真空窒素置換を行い、十分に反応機内の酸素を除去した。
次に、反応機内温を60℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第一の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が2.62となるように、添加速度10.48[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、アルカリセルロースとした。
続いて、ジメチルエーテルを2.4kg添加し、反応機内温が60℃を保持するように温調した。ジメチルエーテル添加後、反応機内温を60℃から80℃に昇温しながら、塩化メチル量と第一及び第二の水酸化ナトリウムの合計量とのモル比(塩化メチル/合計水酸化ナトリウム)が1.1となるように60分間かけて塩化メチルを添加し、第一の反応混合物とした。塩化メチルの添加に続いて、第二のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第二の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.60となるように、添加速度3.20[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第二の反応混合物とした。第二の水酸化ナトリウム溶液の添加開始時の反応機内温は77℃、添加完了時の反応機内温は89℃であり、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から完了までの間、反応機内温を24℃/hrで昇温させた。第二の水酸化ナトリウム水溶液の仕込み完了後、撹拌を30分間継続して行ってエーテル化反応を完了させた。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は62.1%であった。
得られた第二の反応混合物を95℃の熱水を添加してスラリー化した後、ロータリープレッシャーフィルターを用いて洗浄し、続いて、送風乾燥機で乾燥し、更にボールミルで粉砕し、篩で分級を行った後、メチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたメチルセルロースのDSは1.81であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は4,500mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、4,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、2750Paであり、ゲル化温度は43℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例2
固有粘度が850ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕して得られた粉末セルロースパルプを用いた以外は、合成例1と同様にしてメチルセルロースを得た。
得られたメチルセルロースのDSは1.81であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,800mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、4,750Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、2,950Paであり、ゲル化温度は42℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例3
固有粘度が900ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕して得られた粉末セルロースパルプを用いた以外は、合成例1と同様にしてメチルセルロースを得た。
得られたメチルセルロースのDSは1.82であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は7,000mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、5,010Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、2,900Paであり、ゲル化温度は41℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例4
固有粘度が1,000ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕して得られた粉末セルロースパルプを用いた以外は、合成例1と同様にしてメチルセルロースを得た。
得られたメチルセルロースのDSは1.82であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は7,800mPa・sであった。
75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、5,200Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、3,150Paであり、ゲル化温度は45℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例5
固有粘度が1,200ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕して得られた粉末セルロースパルプを用いた以外は、合成例1と同様にしてメチルセルロースを得た。
得られたメチルセルロースのDSは1.83であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は9,500mPa・sであった。
75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、5,400Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、3,300Paであり、ゲル化温度は48℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例6
合成例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第一の水酸化ナトリウムとセルロースの質量比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が3.01となるように、添加速度12.04[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、アルカリセルロースとした。
続いて、合成例1と同様にして、第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を81℃、添加完了時の反応機内温は89℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を16.4℃/hrで昇温させ、第二の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.26となるように、添加速度2.58[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、合成例1と同様に行った。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は70.5%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を合成例1と同様に精製、粉砕してメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたメチルセルロースのDSは1.85であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は4,200mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、4,150Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、2,600Paであり、ゲル化温度は42℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例7
合成例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃になるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第一の水酸化ナトリウムとセルロースの質量比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が2.85となるように、添加速度11.39[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、アルカリセルロースとした。
続いて、合成例1と同様にして第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム溶液の添加開始時の反応機内温を79℃、添加完了時の反応機内温は91℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまで反応機内温を24℃/hrで昇温させ、第二の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.40となるように、添加速度2.80[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、合成例1と同様に行った。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は67.0%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を合成例1と同様に精製、粉砕してメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
その後、得られた第二の反応混合物を合成例1と同様に精製、粉砕してメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたメチルセルロースのDSは1.82であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は3,200mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、3,400Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、2,550Paであり、ゲル化温度は42℃であった。得られた結果を表1に示す。
合成例8
固有粘度が600ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕して得られた粉末セルロースパルプを用いた以外は、合成例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を55℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第一の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が2.26となるように、添加速度9.04[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、アルカリセルロースとした。
続いて、合成例1と同様にして第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム溶液の添加開始時の反応機内温を80℃、添加完了時の反応機内温は92℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまでの間、反応機内温を36℃/hrで昇温させ、第二の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.84となるように、添加速度5.52[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、合成例1と同様に行った。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は55.1%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を合成例1と同様に精製、粉砕してメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたメチルセルロースのDSは1.85であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は3,100mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、3,200Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、2,400Paであり、ゲル化温度は40℃であった。得られた結果を表1に示す。
比較合成例1
合成例1と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を40℃となるように温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第一の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が1.97となるように、添加速度7.88[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、添加終了後、更に10分間撹拌を続けた。
続いて、ジメチルエーテルを2.4kg添加し、反応機内温は40℃を保持するように温調した。ジメチルエーテル添加後、塩化メチルを水酸化ナトリウム溶液と同様に2段階に分割して添加した。第一の塩化メチルは、第一の塩化メチルと第一の水酸化ナトリウムのとのモル比(第一の塩化メチル/第一の水酸化ナトリウム)が1.1となるように25分間かけて添加し、第一の反応混合物とした。第一の塩化メチルの添加完了後、反応機内温を40℃から80℃まで40分間かけて昇温し、80℃に達した後、更に30分間撹拌混合を継続した。
続いて、反応機の内温を80℃に保ちながら、第二のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第二の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が2.55となるように、添加速度15.31[mol/mol・hr]で49質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第二の反応混合物とした。第二の水酸化ナトリウム水溶液添加時の反応機内温は80℃、添加完了時の反応機内温も80℃であった。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は、43.6%
であった。
続いて、反応機の内温を80℃に保ちながら、第二の塩化メチルを、第二の塩化メチルと第二の水酸化ナトリウムとのモル比(第二の塩化メチル/第二の水酸化ナトリウム)が1.1となるように30分間かけて添加した。第二の塩化メチル添加後、更に反応機の内温を80℃に保ちながら30分間撹拌混合した。その後、反応機を80℃から95℃に15分間かけて昇温し、粗メチルセルロースとした。
その後、得られた粗メチルセルロースを合成例1と同様に精製、粉砕してメチルセルロースを得た。
得られたメチルセルロースのDSは1.85であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は5,000mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、5,100Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、3,850Paであり、ゲル化温度は34℃であった。得られた結果を表1に示す。
比較合成例2
合成例4と同様に反応機内にセルロースパルプを仕込み、反応機内温を60℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、第一のアルカリ金属水酸化物溶液として49質量%水酸化ナトリウム水溶液を用い、第一の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第一の水酸化ナトリウム/セルロース)が4.11となるように、添加速度16.44[mol/mol・hr]で第一の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、アルカリセルロースとした。
続いて、合成例4と同様にして第一の反応混合物を得た後、第二の水酸化ナトリウム水溶液の添加開始時の反応機内温を80℃、添加完了時の反応機内温は91℃とし、第二の水酸化ナトリウム水溶液添加開始から添加が完了するまで反応機内温を22℃/hrで昇温させ、第二の水酸化ナトリウムとセルロースのモル比(第二の水酸化ナトリウム/セルロース)が0.46となるように、添加速度0.92[mol/mol・hr]で第二の水酸化ナトリウム水溶液を添加して第二の反応混合物とする以外は、合成例1と同様に行った。第一と第二の水酸化ナトリウム水溶液中の第一と第二の水酸化ナトリウムの合計質量に対する第一の水酸化ナトリウムの質量の割合は89.9%であった。
その後、得られた第二の反応混合物を合成例1と同様に精製、粉砕してメチルセルロースを得た。実験条件を表1に示す。
得られたメチルセルロースのDSは1.82であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は4,000mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、2,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、1100Paであり、ゲル化温度は62℃であった。得られた結果を表1に示す。
比較合成例3
固有粘度が1,400ml/gであるウッドパルプを粉砕機で粉砕して得られた粉末セルロースパルプを用いた以外は、比較合成例2と同様にしてメチルセルロースを得た。
得られたメチルセルロースのDSは1.82であり、20℃における2.0質量%水溶液のB型粘度計による粘度は12,000mPa・sであった。75℃におけるメチルセルロース2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)を測定したところ、2,700Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)を測定したところ、1300Paであり、ゲル化温度は64℃であった。得られた結果を表1に示す。
Figure 2020100838
実施例1
バススターラー(アズワン社製EWS―100RD)により100mLのビーカー中の水100gを95℃に温調し、撹拌機(東京理化器械社製NZ―1000)にて500回/分の条件で撹拌しながら低温ゲル化剤としてジェランガム(DSP五協フード&ケミカル社製)1gと、合成例1で得られたメチルセルロース1gを投入し60分間撹拌した。低温ゲル化剤とメチルセルロースを混合した溶液を直径40mm、高さ20mmの円柱型のステンレス容器に高さ15mmまで充填した。充填した溶液を冷蔵庫で10℃の状態で2時間、静置しゲル化物を得た。得られたゲル化物について、以下に示すテクスチャーアナライザーによる定量評価(硬さ、付着性、凝集性)、及び10名の評価者による官能評価(保形性、咀嚼時のべた付き感及び咀嚼性)を行った。また、離水性は、ゲル化物の芯温を75℃に加熱した場合、75℃から室温に静置しゲル化物の芯温が45℃になった場合の両方について、ステンレス容器内のゲル化物を傾けた時に表面に浸み出した溶液をシャーレに移し、質量を測定することにより評価した。結果を表2に示す。
<テクスチャーアナライザーによる定量評価:硬さ、付着性、凝集性>
テクスチャーアナライザーTA−XTplus(英弘精機社製)を用いて上記ステンレス容器内のゲル化物の硬さ、付着性及び凝集性を測定した。具体的には、ゲル化物の芯温を75℃に加熱した場合、75℃から室温に静置しゲル化物の芯温が45℃になった場合の両方について測定した。加熱方法としては、上記ステンレス容器内のゲル化物を送風乾燥機により120℃で10分間加熱することによりでゲル化物の芯温の温度を75℃にした。その結果、芯温75℃におけるゲル化物の硬さは8,900N/m、付着性150J/m、凝集性0.86であった。また、ゲル化物は形が崩れることなく保形性が良好であり、上記ステンレス容器内のゲル化物を傾けた時に表面に浸み出した溶液の分離量(75℃における離水性)は0.05gであった。
一方、芯温45℃におけるゲル化物の硬さは5,600N/m、付着性160J/m、凝集性0.88であった。また、ゲル化物は形が崩れることなく保形性が良好であり、上記ステンレス容器内のゲル化物を傾けた時に表面に浸み出した溶液の分離量(45℃における離水性)は0gであり液の分離は見られなかった。
なお、テクスチャーアナライザー測定条件は、以下の通りである。
測定機器: テクスチャーアナライザーTA−XTplus(英弘精機社製)
測定器具: 円形型直径20mm、高さ8mm樹脂製プローブ(P/20タイプ)
測定モード: 圧縮試験 (2回圧縮)
テストスピード: 10mm/秒
クリアランス : 5mm
<10名の評価者による官能評価:保形性、咀嚼時のべた付き感及び咀嚼性>
得られたゲル化物及びゲル化した食品は、上述のテクスチャーアナライザーによる評価だけでなく、10名の評価者による官能評価も行った。
ゲル化組成物の保形性としては、得られたゲル化物を評価者10名が目視及び手で直接触ることにより評価した。また、ゲル化物の咀嚼時のべた付き感及び咀嚼性は、得られたゲル化物を評価者10名が咀嚼することで評価した。咀嚼時のべた付き感については、咀嚼時に口内に張り付く感じがあるか否かで判断した。咀嚼性については、咀嚼時に弾力を感じ、飲む込む際に何度も咀嚼を行う必要があるか否かで判断した。
各評価は、○、△、×の3段階で行われ、評価基準は以下の通りである。
○:8割以上が良好と評価
△:5割以上8割未満が良好と評価
×:5割未満が良好と評価
実施例2
合成例2で得られたメチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例3
合成例3で得られたメチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例4
合成例4で得られたメチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例5
合成例5で得られたメチルセルロースと、低温ゲル化剤として寒天(伊那食品工業社製介護食用ウルトラ寒天)を用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例6
合成例6で得られたメチルセルロースと、低温ゲル化剤として寒天(伊那食品工業社介護食用ウルトラ寒天)を用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例7
合成例7で得られたメチルセルロースと、低温ゲル化剤としてゼラチン(和光純薬工業社製、ゲル強度240〜280g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8
合成例8で得られたメチルセルロースと、低温ゲル化剤としてゼラチン(和光純薬工業社製、ゲル強度240〜280g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例9
冷蔵庫で低温ゲル化剤をゲル化させる前の実施例1で得られたゲル化組成物と調理済みホウレン草をミキサーで固形分がない溶液状態まで粉砕した溶液を95℃に加熱した状態で1:1の割合(質量比)で混合した。混合した溶液をシリコーン製の鋳型に流し込み成形し、冷蔵庫にて10℃で2時間静置することで野菜形態のゲル化物(すなわち、ゲル化した食品)を得た。ゲル化した食品を鋳型から取り出し、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例10
実施例9の調理済みホウレン草の代わりにコーンビーフを用いた以外は、実施例9と同様して肉形態のゲル化物(すなわち、ゲル化した食品)を得た。ゲル化した食品を鋳型から取り出し、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
実施例11
実施例9の調理済みホウレン草の代わりにさば水煮を用いた以外は、実施例9と同様して魚形態のゲル化物(すなわち、ゲル化した食品)を得た。ゲル化した食品を鋳型から取り出し、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1
比較合成例1で得られたメチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例1で得られたゲル化物の各種物性は、貯蔵弾性率G'(75→45℃)が3850Paであり、本発明よりも大きい。そのため、ゲル化物の芯温が45℃である時の硬さ及び凝集性が高くなり、咀嚼性が悪くなった。摂食又は嚥下困難者に適した食品の物性における許可基準IIの均質なゼリー状又はムース状の食品の要件を満たすものではなかった。
比較例2
比較合成例2で得られたメチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例2で得られたゲル化物の各種物性は、メチルセルロースの2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)及びが貯蔵弾性率G'(75→45℃)がいずれも本発明の範囲外であるため、75℃に加熱した際に保形性が十分に得られずゲル化物の形状が保てなかった。
比較例3
比較合成例3で得られたメチルセルロースを用いた以外は、実施例1と同様にゲル化物を製造した。得られたゲル化物について、実施例1と同様に、テクスチャーアナライザーを用いて各種温度について各種物性を測定し、10名の評価者による官能評価及び離水性の評価を行った。結果を表2に示す。
比較例3で得られたゲル化物の各種物性は、75℃に加熱した際に保形性が十分に得られず、75℃に加熱後から室温に静置し45℃にゲル化物がなった時の付着性が1,600J/m以上となり付着性が高いゲル化物となった。
実施例1〜11及び比較例1〜3の結果から、テクスチャーアナライザーによる硬さ、付着性及び凝集性と、10名による評価者による官能評価による保形性、咀嚼時のべた付き感及び咀嚼性並びに離水性を比較した。
メチルセルロースの貯蔵弾性率G'(75℃)が本発明の範囲の場合、評価者もゲル化組成物及びこれを含む食品を75℃以上に加熱した際に、形が崩れずに保形性がある。一方、75℃に加熱後から室温に静置して45℃になった時にメチルセルロースの貯蔵弾性率G'(75→45℃)が本発明の下限を満たさない場合、評価者は保形性が十分でない。更に、メチルセルロースの貯蔵弾性率G'(75→45℃)が本発明の上限を超える場合、評価者は咀嚼時に弾力を感じて飲み込み難いと感じており、摂食又は嚥下困難者向けには適さない。また、20℃における2.0質量%水溶液の粘度が本発明の上限を超える場合、評価者の半数以上が咀嚼時のべた付き感を感じた。
このように評価者10人による官能評価の結果をテクスチャーアナライザーから得られる硬さ、付着性及び凝集性によって定量的に判断することが可能である。
本願は、特願2016−110401号を原出願とする分割出願であるが、分割直前の原出願の特許請求の範囲の記載は、以下の通りである。
[請求項1]75℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)が3,000〜5,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)が2,000〜3,600Paであり、かつ20℃における2.0質量%水溶液の粘度が3,000〜10,000mPa・sであるメチルセルロース0.05〜10質量%と、低温ゲル化剤0.05〜30質量%と、溶媒1〜99%とを少なくとも含むゲル化組成物。
[請求項2]前記メチルセルロースの2.0質量%水溶液のゲル化温度が、40〜55℃である請求項1に記載のゲル化組成物。
[請求項3]前記メチルセルロースのグルコース単位あたりのメトキシ基の平均置換度(DS)が、1.61〜2.03である請求項1又は請求項2に記載のゲル化組成物。
[請求項4]前記低温ゲル化剤が、ゼラチン及び多糖類より選ばれる1以上のゲル化剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゲル化組成物。
[請求項5]請求項1〜4のいずれか1項に記載のゲル化組成物を含む食品。
Figure 2020100838

Claims (5)

  1. 75℃における2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75℃)が3,000〜5,500Paであり、75℃から45℃に戻った際の戻り温度の2.0質量%水溶液の貯蔵弾性率G'(75→45℃)が2,000〜3,300Paであり、かつ20℃における2.0質量%水溶液の粘度が3,000〜10,000mPa・sであるメチルセルロース。
  2. 前記メチルセルロースの2.0質量%水溶液のゲル化温度が、40〜55℃である請求項1に記載のメチルセルロース。
  3. 前記メチルセルロースのグルコース単位あたりのメトキシ基の平均置換度(DS)が、1.61〜2.03である請求項1又は請求項2に記載のメチルセルロース。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のメチルセルロースを含む食品添加剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のメチルセルロースを含む食品。
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