JP2020097167A - ホットスタンピング箔および積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、本発明の実施形態は、ホットスタンピング箔の転写性とラミネート材との密着性が両立された積層体の製造方法を提供できる。
この製造方法は、本発明のホットスタンピング箔を第一のラミネート材上に配置し、剥離層および接着層を第一のラミネート材に転写するステップAと、第一のラミネート材に第二のラミネート材を重ねて剥離層を覆うステップBと、第一のラミネート材および第二のラミネート材に熱および圧力を加えて、第一のラミネート材と第二のラミネート材とが一体となり、かつ剥離層及び接着層が内部に埋め込まれた積層体を形成するステップCとを備える。
さらに、本発明の実施形態の製造方法は、ホットスタンピング箔の転写性とラミネート材との密着性が両立できる。
(ホットスタンピング箔)
図1は、本実施形態のホットスタンピング箔1の層構造を概念的に説明する図である。ホットスタンピング箔1は、キャリア10と、キャリア10上に形成された剥離層20と、剥離層20上に形成された接着層30とを備える。剥離層20および接着層30は、ラミネート材等の対象物に転写される転写体2を構成する。
剥離層20は、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とを含有する。剥離層20の非結晶性樹脂と結晶性樹脂は、熱可塑性樹脂とできる。非結晶性樹脂は、アクリル樹脂、セルロース樹脂、またはその混合とできる。結晶性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂またはその混合とできる。また、剥離層20の非結晶性樹脂と結晶性樹脂は、熱硬化性、紫外線硬化性、および、電子線硬化性であってもよい。
剥離層20の厚さは、0.5μm以上5μm以下とできる。
粒子状の結晶性樹脂22は、サブミクロンスケールとできる。すなわち、粒子状の結晶性樹脂22は平均径1μm未満とできる。これにより、剥離層20は透明にできる。
粒子状の結晶性樹脂22と非結晶性樹脂21の母材の境界面は滑らかでもよい。これにより、粒子状の結晶性樹脂22による散乱性を低減できる。粒子状の結晶性樹脂22の形状は球に近くてもよい。これにより、粒子状の結晶性樹脂22による散乱性をさらに低減できる。粒子状の結晶性樹脂22と非結晶性樹脂の母材の境界面は、不鮮明でもよい。これにより、剥離層20の透明性を向上できる。
剥離層20の樹脂成分、すなわち、非結晶性樹脂21と結晶性樹脂22との和に占める結晶性樹脂22の質量比率は、20%以下とでき、さらには、5%以上10%以下とできる。
結晶性樹脂は、その中に含まれている結晶構造が分子熱運動によって規則性構造を消失する温度、すなわちガラス転移点と、樹脂全体が溶融を開始する温度である融点とを持つ。結晶性樹脂は、ガラス転移点と融点とで2段階の弾性率減少を生じる物理的特徴を有する。
また、結晶性樹脂は、非結晶性樹脂と比較して弾性や剛性が高く、物理的強度に優れる。一方で、結晶構造と非結晶構造が混合している為に、透明性に劣り、体積変化率の値が大きい。
非結晶性樹脂21の軟化温度と結晶性樹脂22の融点との差は、10℃以内とできる。
結晶性樹脂22の重量平均分子量Mwは、非結晶性樹脂21の半分以下とできる。
図2は、剥離層20を室温から転写温度まで加熱した際の吸熱および発熱量を概念的に説明するグラフである。非結晶性樹脂21と結晶性樹脂22との混合物である剥離層20の温度を上げていくと、結晶性樹脂22のガラス移転点で、結晶性樹脂の状態変化に伴い発熱が生じる。さらに剥離層20の温度が非結晶性樹脂21の軟化温度あるいは結晶性樹脂22の融点に達すると、それぞれの樹脂の層変化に伴い吸熱が発生する。非結晶性樹脂21の軟化温度と結晶性樹脂22の融点との差が10℃以内であると、2つの吸熱の谷が重ね合わされたような形状となるが、差が10℃を超えるとそれぞれ別の谷として現れる。剥離層20においては、非結晶性樹脂が質量比で結晶性樹脂の4倍以上含まれているため、結晶性樹脂により生じる山谷は、非結晶性樹脂により生じる谷よりも小さい。したがって、谷が2つ現れた場合は、その大きさで、非結晶性樹脂21の軟化温度および結晶性樹脂22の融点のいずれであるかを特定できる。
図3は、結晶性樹脂および非結晶性樹脂における温度と弾性率との関係を示す概念図である。図3の縦軸は弾性率、横軸は温度を表している。弾性率とは、変形のしにくさを表す物性値であり、弾性変形における応力とひずみの間の比例定数の総称である。非結晶性樹脂の場合、弾性率の値は温度上昇とともに穏やかに減少し、軟化点温度付近で大きく低下する。一方、結晶性樹脂の場合、弾性率の値は、ガラス転移点温度と融点温度付近で2段階の減少を示す。結晶性樹脂と非結晶性樹脂との比較においては、結晶性樹脂のガラス転移点より低温の領域では結晶性樹脂の弾性率が高く、それ以外の温度領域では、非結晶性樹脂の弾性率が高い。
転写前の状態において、接着層30の弾性率は、結晶性樹脂および非結晶性樹脂より小さい。接着層30の軟化温度は、非結晶性樹脂21の軟化温度および結晶性樹脂の融点のいずれよりも低いため、接着層30の弾性率値は、結晶性樹脂および非結晶性樹脂よりも早く低下し、転写温度に達した後早期に消失する。
剥離層30は、主材料である非結晶性樹脂に対し、体積変化率の大きい結晶性樹脂を添加混合されているため、温度変化の際の体積膨張に起因した脆性を生じる。すなわち、室温時における剥離層30の脆性は小さいが、転写時にホットスタンプ等により高温が加えられると、剥離層30の脆性が大きくなるという特性を発現する。
ほぼ同時に、領域1Sの接着層30は、ホットスタンプ100による熱と圧力で活性化し、対象物110に対する接着性を発現する。
積層体を製造する場合は、まず図6に示すように、ラミネート材151に転写体2を転写する(ステップA)。次に、図7に示すように、ラミネート材151にラミネート材152を重ねて転写体2を覆い、熱および圧力をかける(ステップB)。すると、図8に示すように、ラミネート材151とラミネート材152とが溶融して一体となり、積層体200が完成する(ステップC)。ステップCにより、転写体2は積層体200の内部に埋め込まれる。
レリーフ層40は、熱可塑性樹脂で形成できる。熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等とできる。
レリーフ層40は、熱硬化樹脂で形成できる。熱硬化樹脂は、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂等とできる。
堆積層50の膜厚は、10〜500nmとできる。堆積層50は、物理堆積、化学堆積により形成できる。物理堆積は真空蒸着法、または、スパッタ法とできる。
堆積された層をエッチングにより部分的に除去することで、堆積層50を部分的に設けることができる。エッチングは、酸やアルカリによるエッチングとできる。また、レジストにより、堆積された層の一部をエッチング液から保護し、堆積された層の一部を選択的に除去することができる。他の公知の方法で堆積層50を部分的に設けることもできる。溶解性樹脂でレリーフ構造41を部分的に被覆し、レリーフ構造41と被覆部分とに堆積層を設けた後に溶解性樹脂を溶解液で溶解し、溶解性樹脂で覆われた部分の堆積層を除去することで、堆積層を部分的に設けることもできる。この溶解性樹脂は、印刷によりレリーフ構造41を部分的に被覆することができる。
さらに、レリーフ層40および堆積層50を備えるため、優れた視覚効果を発揮し、偽造耐性がさらに高くなっている。
支持体として25μm厚のPETフィルムを使用した。支持体上に、剥離層形成インキをグラビア印刷法で厚み2μmにコートし、有機溶剤を揮発除去させて剥離層を形成した。さらに、剥離層上にレリーフ層形成インキをグラビア印刷法で厚み2μmにコートし、有機溶剤を揮発除去させてレリーフ層を形成した。
レリーフ層上に、所定の高さおよびピッチの凹凸形状を有する金属円筒版を、圧力2Kgf/cm2、温度220℃、スピードを10m/minの条件で押し当てて凹凸形状を転写した。これにより、レリーフ層上にレリーフ構造を形成した。
レリーフ構造上に、硫化硫黄を真空蒸着法にて積層し、厚さ60nmの反射層を形成した。
最後に、接着層形成インキをグラビア印刷法にて反射層上に厚み5μmにコートし、インキに含まれる有機溶剤を揮発除去させて接着層を形成した。
以上により、各サンプルのホットスタンピング箔を作製した。
(剥離層形成インキ)
非結晶性樹脂 アクリル樹脂 95部
重量平均分子量120000
軟化温度 105℃
結晶性樹脂 結晶性ポリエステル樹脂 5部
粒子径0.5μm
重量平均分子量25000
融点 110℃
有機溶剤 900部
(レリーフ層形成インキ)
アクリル樹脂 60部
セルロース樹脂 30部
有機溶剤 900部
(接着層形成インキ)
変性オレフィン樹脂 30部
ウレタン樹脂 60部
シリカ粒子(最長径10μm) 10部
有機溶剤 900部
各実験例のホットスタンピング箔を、ホットスタンプ転写機を用いて、ポリカーボネート製の透明な第一ラミネート材(SABIC株式会社製、厚さ100μm)に転写し、支持体を取り除くことによって、転写体を第一ラミネート材上に設けた。
転写条件は、温度120℃、圧力200Kg/cm2、1秒間とした。
次に、ポリカーボネート製の白色の第二ラミネート材(SABIC株式会社製、厚さ400μm)を、転写体を覆うように第一ラミネート材上に配置し、熱プレスによるラミネートを行うことによって、第一ラミネート材と第二ラミネート材を一体にし、各実験例の積層体を作製した。
ラミネート条件は、温度190℃、圧力80N/cm2、15分間とした。
10 キャリア
20 剥離層
21 非結晶性樹脂
22 結晶性樹脂
30 接着層
40 レリーフ層
151 (第一の)ラミネート材
152 (第二の)ラミネート材
200 積層体
Claims (9)
- キャリアと、
前記キャリア上に形成された剥離層と、
前記剥離層上に形成された接着層と、
を備え、
前記剥離層は、
連続相の熱可塑性の非結晶性樹脂の母材と、
粒子状の分散相の熱可塑性の結晶性樹脂と、の複合体である、
ホットスタンピング箔。 - 前記結晶性樹脂の平均径が1μm未満のサブミクロンスケールである、
請求項1に記載のホットスタンピング箔。 - 前記剥離層の樹脂成分における前記結晶性樹脂の割合が20%以下である、
請求項1に記載のホットスタンピング箔。 - 前記非結晶性樹脂の軟化温度と前記結晶性樹脂の融点との差が10℃以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のホットスタンピング箔。 - 前記結晶性樹脂の重量平均分子量が前記非結晶性樹脂の重量平均分子量の2分の1以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のホットスタンピング箔。 - 前記剥離層と前記接着層との間に形成され、レリーフ構造を有するレリーフ層をさらに備える、
請求項1に記載のホットスタンピング箔。 - 請求項1に記載のホットスタンピング箔を第一のラミネート材上に配置し、前記剥離層および前記接着層を前記第一のラミネート材に転写するステップAと、
前記第一のラミネート材に第二のラミネート材を重ねて前記剥離層を覆うステップBと、
前記第一のラミネート材および前記第二のラミネート材に熱および圧力を加えて、前記第一のラミネート材と前記第二のラミネート材とを一体にし、かつ前記剥離層及び前記接着層を前記第一のラミネート材と前記第二のラミネート材との間に埋め込むステップCと、
を備える、
積層体の製造方法。 - 前記第一のラミネート材および前記第二のラミネート材がポリカーボネートからなる、
請求項7に記載の積層体の製造方法。 - 前記ステップCにおいて、前記剥離層の温度が前記非結晶性樹脂の軟化温度および前記結晶性樹脂の融点のいずれよりも高くなる、
請求項7に記載の積層体の製造方法。
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