JP2020090471A - アジルサルタン及びアムロジピンを含有する医薬組成物及びその製造方法 - Google Patents

アジルサルタン及びアムロジピンを含有する医薬組成物及びその製造方法 Download PDF

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和晃 吉澤
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遼 松田
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Abstract

【課題】製造時から流通過程後の全てにわたって安定した物性の医薬組成物及びその製造方法の提供。【解決手段】アジルサルタンと、アムロジピン又はその塩と、抗酸化剤又はトレハロースとを含む安定化された医薬組成物であって、特にこの医薬組成物は、前記アジルサルタンの造粒物中にステアリン酸を含み、かつ前記アムロジピンの粉末又は造粒物がステアリン酸マグネシウムとの混合物であり、単層の錠剤の形態である。【選択図】図1

Description

本発明は、アジルサルタン及びアムロジピンを含有する医薬組成物及びその製造方法に関する。
種々の活性成分を含有する医薬組成物が開発されているが、活性成分の種類によっては、その製造方法及び/又は活性成分以外の賦形剤等の添加剤の種類等に起因して、医薬組成物自体の物性に変化が認められることがある。特に、2種以上の有効成分を含有する製剤は有効成分同士が作用して不安定であることが知られている。例えば、アムロジピンとその他の有効成分とを含有する製剤は、各々の有効成分が分離していない形態で配合される場合、配合変化等を誘発しやすい。
そのために、例えば、アムロジピンとイルベサルタンとの双方を分離していない形態で含有する医薬組成物において双方の有効成分の配合変化を誘発させないために、種々の工夫がなされている(例えば、特許文献1)。また、例えば、アジルサルタンとアムロジピンベシル酸塩との配合錠として、2層が積層された錠剤が市販されているが、そのために、それぞれの成分を造粒し、造粒物を積層させて打錠するなど、煩雑な製造方法が要求されている(例えば、非特許文献1、特許文献2)
特開2013−75893号公報 特表2012−525323号公報
ザクラス配合錠LD及びHD添付文書
このような状況下、製造時から流通過程の全てにわたって安定した物性を維持することができる医薬組成物が依然として求められている。
本発明は、製造時から流通過程後の全てにわたって安定した物性を安定的に維持することができる医薬組成物、さらに複雑な製造方法を採ることなく、簡便な方法によって安定した物性を安定的に得ることができるその製造方法を提供することを目的とする。
本願は以下の発明を含む。
(1)アジルサルタンと、アムロジピン又はその塩と、抗酸化剤又はトレハロースとを含む安定化された医薬組成物。
(2)前記抗酸化剤又はトレハロースが、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸プロピル及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である上記の医薬組成物。
(3)錠剤の形態である上記の医薬組成物。
(4)アジルサルタンの造粒物と、少なくとも該造粒物中に含まれた抗酸化剤又はトレハロースと、アムロジピンの粉末又は造粒物とによる単層の錠剤の形態である上記の医薬組成物。
(5)さらに、ステアリン酸及び/又はステアリン酸マグネシウムを含む上記の医薬組成物。
(6)前記アジルサルタンの造粒物中にステアリン酸を含み、かつ前記アムロジピンの粉末又は造粒物がステアリン酸マグネシウムとの混合物である上記の医薬組成物。
(7)前記アジルサルタンの造粒物中にさらにD−マンニトールを含む上記の医薬組成物。
(8)前記アムロジピンの粉末又は造粒物がD−マンニトールとの混合物である上記の医薬組成物。
(9)アジルサルタン及びステアリン酸を含む混合物を攪拌しながら抗酸化剤又はトレハロースを添加して造粒し、
得られた造粒物と、アムロジピンの粉末又は造粒物とを混合することを特徴とする医薬組成物の製造方法。
(10)前記造粒を、撹拌造粒又は流動層造粒にて行う上記の製造方法。
(11)前記混合した後、さらに、得られた医薬組成物を打錠して錠剤とする上記の製造方法。
(12)アジルサルタン及びステアリン酸を混合する際、さらにD−マンニトールを添加する上記の製造方法。
(13)前記アジルサルタンの造粒物と、アムロジピンの粉末又は造粒物とを混合する際、さらにステアリン酸マグネシウムを添加する上記の製造方法。
本発明のアジルサルタン及びアムロジピンを含有する医薬組成物によれば、製造時から流通過程の全てにわたって安定した物性を安定的に維持することができる。
また、本発明の医薬組成物の製造方法によれば、複雑な製造方法を採ることなく、簡便な方法によって、製造時から流通過程の全てにわたって安定した物性を安定的に維持することができる医薬組成物を簡便に製造することができる。
本発明の医薬組成物の製造方法を示すフローチャートである。 抗酸化剤の有無による錠剤の過酷試験でのアジルサルタン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 抗酸化剤の有無による錠剤の過酷試験でのアジルサルタン由来の分解物の割合を示すグラフである。 抗酸化剤の有無による錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 抗酸化剤の有無による錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の分解物の割合を示すグラフである。 抗酸化剤の異なる種類の錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 抗酸化剤の異なる種類の錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の分解物の割合を示すグラフである。 種々の抗酸化剤又はトレハロースを含む錠剤の過酷試験でのアジルサルタン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 種々の抗酸化剤又はトレハロースを含む錠剤の過酷試験でのアジルサルタン由来の分解物の割合を示すグラフである。 種々の抗酸化剤又はトレハロースを含む錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 種々の抗酸化剤又はトレハロースを含む錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の分解物の割合を示すグラフである。 抗酸化剤含有錠剤の過酷試験でのアジルサルタン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 抗酸化剤含有錠剤の過酷試験でのアジルサルタン由来の分解物の割合を示すグラフである。 抗酸化剤含有錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の類縁物質の割合を示すグラフである。 抗酸化剤含有錠剤の過酷試験でのアムロジピン由来の分解物の割合を示すグラフである。
本願の医薬組成物は、有効成分としてアジルサルタン及びアムロジピン又はその塩を含有する。本発明の医薬組成物は、アジルサルタン及びアムロジピン又はその塩に加えて、抗酸化剤又はトレハロースを含む。このような添加剤を組み合わせて用いることにより、アジルサルタン及びアムロジピン又はその塩を安定的に長期にわたって維持することができる。
例えば、苛酷試験下での保存1週間においても、抗酸化剤又はトレハロースを含有しない製剤に比べて、良好な安定性を示す医薬組成物を得ることができる。
アジルサルタンは、化学名が(2−エトキシ−1−[[2’−(4,5−ジヒドロ−5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]ベンズイミダゾール−7−カルボン酸)であり、アンジオテンシンIIと拮抗することにより血管収縮を抑制して降圧作用を示す、高血圧症の治療剤である。また、アムロジピンは、化学名が(3−エチル5−メチル−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボキシレート)で表される、高血圧症等の治療に有用なカルシウム拮抗剤である。アムロジピンの塩としては、薬理学的に許容される塩が挙げられ、酸付加塩又は塩基付加塩のいずれであってもよい。例えば、ベシル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、フマ−ル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、カンシル酸塩、乳酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、グルコン酸塩などが挙げられ、ベシル酸塩が好ましい。
医薬組成物中のアジルサルタン及びアムロジピン又はその塩は、それぞれ、医薬組成物の重量を基準に5w/w%〜35w/w%、0.1w/w%〜10w/w%含有されることが挙げられる。また、別の観点から、一回投与量が、それぞれ、10mg〜40mg、2.5mg〜10mgとなるように組成することが挙げられる。
抗酸化剤としては、医薬分野で用いることができるものであればよく、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、没食子酸プロピル、コハク酸、トレハロース、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、エリソルビン酸、グアヤクゴム、チオジプロピオン酸、チオジプロピオン酸ジラウリル、tert−ブチルヒドロキノンおよびトコフェロール、または薬学的に許容できるそれらの塩もしくはエステル、またはそれらの組合せからなる群から選択される。なかでも、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、没食子酸プロピル、コハク酸が好ましく、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、コハク酸がより好ましく、アスコルビン酸、没食子酸プロピルがさらに好ましい。
抗酸化剤及び/又はトレハロースの含有量は、医薬組成物の重量を基準に0.003w/w%〜0.3w/w%が挙げられ、0.01w/w%〜0.1w/w%が好ましい。
なお、抗酸化剤及び/又はトレハロースは、いずれか1種のみを含有してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいし、抗酸化剤とトレハロースとを組み合わせてもよい。
本願の医薬組成物は、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、上記以外の製剤分野において通常使用される添加剤を添加してもよい。例えば、賦形剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、潤滑剤、湿潤剤、流動化剤、界面活性剤、甘味剤、矯味剤、有機酸、着香剤・香料、着色剤、安定化剤、コーティング剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、賦形剤としては、乳糖水和物及び/又はD−マンニトール、トウモロコシデンプン及び/又は結晶セルロールを含有することが好ましく、D−マンニトールを含有することがより好ましい。賦形剤として、さらに、本発明の効果に影響を与えない範囲で、例えば、無水乳糖、白糖、ショ糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ブドウ糖、マルトース、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、還元乳糖等の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール等の糖アルコール類、カオリン、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、デンプン(例えば、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等の天然デンプン)等の1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。
乳糖水和物及び/又はD−マンニトールと、トウモロコシデンプン及び/又は結晶セルロールとの重量比は、10:0〜0:10が挙げられ、10:1〜1:10又は8:1〜1:8が好ましく、8〜5:1がより好ましい。
賦形剤の含有量は、医薬組成物において10w/w%〜75w/w%が挙げられ、15w/w%〜60w/w%が好ましく、10w/w%〜50w/w%がより好ましい。
安定化剤としては、マクロゴール(例えば、平均分子量が200〜20000、特に6000が好ましい)及び/又はステアリン酸を含有することが好ましく、ステアリン酸を含有することがより好ましい。安定化剤として、さらに、本発明の効果に影響を与えない範囲で、例えば、クエン酸トリエチル、カルナウバロウ等の1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。
安定化剤の含有量は、医薬組成物において0.1w/w%〜5w/w%が挙げられ、1w/w%〜3w/w%が好ましい。
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含有することが好ましい。結合剤として、さらに、本発明の効果に影響を与えない範囲で、例えば、ポビドン(ポリビニルピロリドン(PVP))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、HPMC)、カルメロースナトリウム、ポリビニルアルコール、α化デンプン、寒天、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、アカシア、グルコース、グアールガム及びポリエチレンオキシド等の1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。
結合剤の含有量は、医薬組成物において、0.01w/w%〜10w/w%が挙げられ、0.1w/w%〜5w/w%が好ましい。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウムを含有することが好ましい。滑沢剤として、さらに、本発明の効果に影響を与えない範囲で、例えば、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリル、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸亜鉛、タルク、カルナウバロウ、L−ロイシン、マクロゴール等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
滑沢剤の含有量は、医薬組成物において、0.01w/w%〜5w/w%が挙げられ、0.01w/w%〜4w/w%が好ましい。
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)及び/又はカルメロースカルシウム等を含有することが好ましい。崩壊剤として、さらに、本発明の効果に影響を与えない範囲で、例えば、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム及び澱粉等の1種又は2種以上をさらに組合せて用いてもよい。
崩壊剤の含有量は、医薬組成物において、1w/w%〜20w/w%が挙げられる。
希釈剤としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート、ラクチトール、ラクトース、澱粉及びタルク等が挙げられる。
希釈剤の含有量は、医薬組成物において、60w/w%〜95w/w%が挙げられる。
潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、鉱物油、ポリエチレングリコール、植物油等が挙げられる。
潤滑剤の含有量は、医薬組成物において、0.5w/w%〜2w/w%が挙げられる。
湿潤剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
流動化剤としては、抗付着剤ともいうが、例えば、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、澱粉、タルク等が挙げられる。
流動化剤の含有量は、医薬組成物において、0.001w/w%〜3w/w%が挙げられ、好ましくは0.001w/w%〜1w/w%、より好ましくは0.005w/w%〜0.1w/w%が挙げられる。
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤;ポリソルベート類、ショ糖脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびポロクサマー類(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)等の非イオン性界面活性剤等の1種又は2種以上の組合せが挙げられる。界面活性剤の含有量は、医薬組成物において、2w/w%以下が挙げられる。
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール、サッカリン等が挙げられる。
香味料としては、例えば、メントール、クエン酸、フマル酸、酒石酸、人工又は天然果実フレーバー等が挙げられる。
着色剤としては、カラメル、酸化鉄(赤、黄、又は黒)、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒色三二酸化鉄、天然又は合成有機色素又はレーキ等が挙げられる。
被覆剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテートフタレート等が挙げられる。被覆剤の含有量は、医薬組成物において、0.1w/w%〜3w/w%が挙げられる。
本発明の一実施形態では、例えば、アジルサルタン20重量部に対して、乳糖水和物及び/又はD−マンニトールを50重量部〜200重量部、トウモロコシデンプン及び/又は結晶セルロースを5重量部〜60重量部、ヒドロキシプロピルセルロースを0.5重量部〜20重量部、マクロゴール及び/又はステアリン酸を0.5重量部〜20重量部、L−HPCを5重量部〜50重量部を組み合わせることが好ましい。次に、これらの混合物又は造粒物に、抗酸化剤又はトレハロースを0.006重量部〜0.6重量部添加することがより好ましい。さらに、この造粒物に、アムロジピン又はその塩をアムロジピン換算で5重量部に対して、L−HPCを5重量部〜50重量部、カルメロースカルシウム5重量部〜40重量部、結晶セルロース10重量部〜50重量部、ステアリン酸マグネシウム0.1重量部〜10重量部を組み合わせることが好ましい。
さらに別の実施形態では、例えば、アジルサルタン20重量部に対して、乳糖水和物及び/又はD−マンニトールを50重量部〜100重量部、トウモロコシデンプン及び/又は結晶セルロースを20重量部〜60重量部、ヒドロキシプロピルセルロースを2重量部〜20重量部、マクロゴール及び/又はステアリン酸を2重量部〜20重量部、L−HPCを5重量部〜50重量部を組み合わせることが好ましい。この場合、これらの混合物又は造粒物に、抗酸化剤又はトレハロースを0.01重量部〜1重量部添加することがより好ましい。さらに、この造粒物に、アムロジピン又はその塩をアムロジピン換算で2.5重量部に対して、L−HPCを5重量部〜50重量部、カルメロースカルシウム5重量部〜20重量部、結晶セルロース10重量部〜50重量部、ステアリン酸マグネシウム0.1重量部〜10重量部を組み合わせることが好ましい。
ただし、これらの記載に限定されることなく、その他の添加剤を組み合わせてもよいし、これらの全部を組み合わせなくてもよい。
本発明の医薬組成物は、種々の剤形とすることができる。例えば、細粒剤、顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤等が挙げられる。これらの剤形は、日本薬局方の製剤通則に規定されている形態であればよい。また、錠剤等に割線、識別マーク等を付してもよい。錠剤は、円形錠、円形R錠、円形隅角錠、円形2段R錠、各種異形錠等いずれの形状でもよく、また分割錠としてもよい。錠剤は、素錠であってもよいし、コーティングが施されていてもよい。
錠剤は、特に、単層であることが好ましい。ここでの単層とは、一つの層で構成されていることを意味し、例えば、錠剤のいずれの部位においても同じ成分が分布していることを指す。従来、アジルサルタンと、アムロジピン又はその塩とを1つの製剤に含有する場合に、双方の安定性を考慮して、両者を分離した二層錠として製剤化されていたが、予想外にも、抗酸化剤又はトレハロースの存在により、本発明では、これら2種の成分を並存させた単層構造で製剤化した場合においても、簡便な方法によって、良好な安定性、つまり、類縁物質、分解物及び不純物等の発生の低減を図ることができる。特に、抗酸化剤又はトレハロースは、積極的にアジルサルタンの造粒物にしか含まれない場合においても、予想外に、アムロジピンに対しても、その効果を発揮させることができる。
本発明の医薬組成物が単層の錠剤の形態である場合、その錠剤は、アジルサルタンの造粒物と、少なくともこの造粒物中に含まれた抗酸化剤又はトレハロールと、アムロジピンの粉末又は造粒物とを打錠した、単層の錠剤の形態であるものが好ましい。そして、アジルサルタンの造粒物には、抗酸化剤又はトレハロースと、乳糖水和物及び/又はD−マンニトール、トウモロコシデンプン及び/又は結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール及び/又はステアリン酸、L−HPCの1種以上とが含有されていることが好ましく、2種以上とが含有されている、つまり、内添されていることがより好ましい。アムロジピン又はその塩の粉末又は造粒物には、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムの1種以上が含有されていることが好ましく、2種以上が含有されていることがより好ましく、アムロジピンの塩の粉末、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムの全部が含有されていることがさらに好ましい。
なお、抗酸化剤又はトレハロースは、アジルサルタンの造粒物中に含有(つまり、内添)されるが、その製造工程から、造粒物外に存在してもよい。例えば、造粒物の表面に付着したものが含まれていてもよい。
本発明の医薬組成物を製剤化する場合、従来行われている製剤化の方法を利用することができる。
なかでも、本発明の医薬組成物は、服用の利便性等から、顆粒又は粉末あるいは錠剤の形態として製剤化することが好ましい。
例えば、顆粒又は粉末とする場合、図1に示したように、アジルサルタンと、任意に、上述した添加剤、例えば、賦形剤/安定化剤/結合剤/崩壊剤等を混合機又は造粒機に投入し、混合する。
次いで、これらの混合物を攪拌しながら抗酸化剤又はトレハロースを液に溶解し、その液を添加しながら造粒する。その際、抗酸化剤又はトレハロースを溶解する液は、精製水が好ましいが、特に限定されるものではない。抗酸化剤又はトレハロースのこのような添加によって、抗酸化剤又はトレハロースは、主にアジルサルタンの造粒物中に含有され、その一部は、造粒物の表面に付着することがある。
その後、造粒物を乾燥し、任意に整粒することが好ましい。
得られた造粒物とアムロジピンの粉末又は造粒物とを混合する。この際、任意に上述した添加剤、例えば、崩壊剤/賦形剤/滑沢剤/結合剤等を添加し、混合することが好ましい。
また、錠剤の形態として製剤化する場合、図1に示したように、上記で得られたアジルサルタンとアムロジピン又はその塩との混合物を打錠する。
用いる混合機又は造粒機は、粉末等を混合することができるものであれば特に限定されず、どのようなものでもよい。
造粒機は、例えば、乾式造粒及び湿式造粒のいずれを行うための装置であってもよいが、湿式造粒を行うことができる装置が好ましい。湿式造粒は、押出し造粒機、転動造粒機、攪拌造粒機、湿式解砕造粒機、流動層造粒機等を用いて行うことができる。なかでも、攪拌造粒機、流動層造粒機を利用することが好ましく、特に、攪拌造粒機を利用することがより好ましい。攪拌造粒機を利用する場合は、例えば、ブレード及び/又はスクリューの回転等は、任意の回転数等に設定して使用すればよい。流動層造粒機を利用する場合は、例えば、給気温度30〜90℃、排気温度20〜80℃にて結合剤溶液等をスプレーしながら造粒する方法が挙げられる。乾式造粒法としては、例えば、ローラーコンパクター(フロイント産業)を使用し、ロール回転数1〜50rpmにて造粒する方法が挙げられる。
アジルサルタン等を混合又は造粒する際、抗酸化剤又はトレハロースを添加する。抗酸化剤又はトレハロースの添加は、アジルサルタン等と抗酸化剤又はトレハロースとが均一に混合されるタイミングで添加することが好ましい。抗酸化剤又はトレハロースは、そのまま添加してもよいし、精製水とともに又は精製水に分散/溶解させて添加してもよい。これによって、抗酸化剤又はトレハロースは、アジルサルタンを含む造粒物に付着して、アジルサルタンと一緒に造粒物の形態で、あるいは、一部はアジルサルタンを含む造粒物に付着し、他の一部はアジルサルタンと一緒に造粒物に含まれる形態で含有されることとなる。
得られた造粒物は、乾燥した後、篩過(例えば、数百μm〜数mm)にて整粒することが好ましい。乾燥は、例えば、常温から90℃以下の温度で、1分〜12時間行えばよく、数時間行うことが好ましい。
整粒時又はその後に、造粒物にアムロジピン又はその塩と、任意に、上述した添加剤とを添加し、混合する。この場合のアムロジピン又はその塩は、粉末及び顆粒等のいずれでもよい。
また、錠剤とする場合の打錠機は、当該分野で公知のもののいずれを用いてもよい。例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機等が挙げられる。打錠する場合、錠剤用混合物においては、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤を添加することが好ましい。例えば、圧縮打錠する場合の圧力は、錠剤に十分な硬度を与える程度であればよく、100kgf以上が好ましい。また、得られる錠剤の硬度は、50〜120Nが好ましい。錠剤の「硬度」は、錠剤硬度計(例えば、富山産業株式会社 型式TH−203MP)により測定することができる。
上述した他、適当な固形の医薬組成物の形態に調製するために、例えば、粉砕、解砕、混合、糖衣、フィルムコート、カプセル充填などを、当該分野の公知の方法及び条件によって行うことができる。
本発明のアジルサルタンと、アムロジピン又はその塩と、抗酸化剤又はトレハロースとを含む医薬組成物では、苛酷試験での保存1週間後においても、総類縁物質及び各有効成分に起因する分解物、不純物等の質量を極めて低減させることができ、長期にわたって安定化を図ることができる。
実施例1
以下の各成分を表1の割合で秤量し、図1に示す以下の方法によって単層の錠剤を作製した。
まず、アジルサルタン、賦形剤等の添加剤を撹拌造粒機(岡田精工社製)に投入し、混合した。
ブレード回転(回転数:800〜1000rpm)で攪拌しながら、抗酸化剤と精製水とを添加し、攪拌造粒した。その後、流動層造粒乾燥機(パウレック社製)にて80℃に設定して10分乾燥した。
コーミル(パウレック社製)で整粒した顆粒に、アムロジピン、崩壊剤等の添加剤を添加し、混合した。
得られた混合物を、ロータリー打錠機(菊水製作所製)にて、打錠圧約1000kgf、丸型で、直径8.0mm、厚み4.4mmの単層の錠剤とした。
比較例1
実施例1の製造方法において、撹拌造粒機に抗酸化剤を添加せず、整粒した顆粒に、上述した仕込み量のアムロジピン、崩壊剤、賦形剤及び滑沢剤を添加した以外、実施例1と同様に単層の錠剤を製造した。
参考例
市販のアジルサルタンとアムロジピンとの積層錠(武田薬品工業製、ザクラス配合錠HD)を準備した。
試験例1
実施例、比較例及び参考例の錠剤を、無包装で、それぞれ60℃、75%RHの条件下で7日間保存し、以下の安定性評価を行った。
保存前、中又は後の錠剤について、安定性評価のために純度試験(類縁物質、つまり、アジルサルタン又はアムロジピンに起因する分解物)を以下の方法で行った。
錠剤1個をとり、水2mLを加え、10分間超音波処理して錠剤を崩壊させた。続いて、メタノールを加えて50mLとし、振り混ぜながら10分間超音波処理し、崩壊したことを確認した。この液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルター(マイレクスLH)でろ過又は遠心分離した。初めのろ液3mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。試料溶液5μLずつを正確にとり、以下の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行い、それぞれの液の各々のピーク面積を自動積分法により測定した。次式により個々の類縁物質の量及び類縁物質の合計量を求めた。
個々の類縁物質の量(%)=AT1/A
類縁物質の合計量(%)=AT2/A
(式中、A:標準溶液のアジルサルタンまたはアムロジピンのピーク面積、
T1:試料溶液のアジルサルタン及びアムロジピン以外の個々のピーク面積
T2:試料溶液のアジルサルタン及びアムロジピン以外のピークの合計面積である。
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm)
カラム:内径4.6mm,長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した。(Inertsil ODS−3C/N.5020−01732,S/N.1A7182193)
カラム温度:35℃付近の一定温度
移動相A:リン酸二水素カリウム約3.67gを水に溶かして2700mLとし、リン酸0.42mlを加えた(pH3.0)。この液にアセトニトリル300mLを加えて移動相Aとした。
移動相B:アセトニトリル
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御した。
注入後0〜3分において、移動相Aを78vol%、移動相Bを22vol%とした。
注入後3〜30分において、移動相Aを78→22vol%、移動相Bを22→78vol%とした。
注入後30〜40分において、移動相Aを22vol%、移動相Bを78vol%とした。
注入後40〜41分において、移動相Aを22→78vol%、移動相Bを78→22vol%とした。
注入後41〜46分において、移動相Aを22vol%、移動相Bを22vol%とした。
流量:毎分1mL
面積測定範囲:溶媒のピークの後から注入後40分まで
使用器具は、プラスチック試験管及びシリンジを用いた。
その結果を図2A〜図2Dに示す。
図2A〜図2Dから明らかなように、本願実施例では、抗酸化剤を含むことから、単層の錠剤として、アジルサルタンと、アムロジピン又はその塩とがその中に並存する場合であっても、特に、図2C及び図2Dに示すように、アムロジピン由来の類縁物質及び不純物が、市販品及び抗酸化剤を含まないものに比較して、低減することが確認された。
実施例3
実施例1において、抗酸化剤として没食子酸プロピルを用いた以外、実施例1と同様に単層の錠剤を作成した。
試験例2
得られた錠剤と、上述した比較例1及び参考例の錠剤を、試験例1と同様に、無包装で、それぞれ60℃、75%RHの条件下で7日間保存し、以下の安定性評価を行った。
保存前、中又は後の錠剤について、安定性評価のために純度試験(類縁物質、アムロジピンに起因する分解物のうち最大のピークを示すもの)を行った。
その結果を図3A及び3Bに示す。
図3A及び3Bから明らかなように、本願実施例では、抗酸化剤を含むものは、抗酸化剤を含まないものに対して、単層の錠剤として、アムロジピン又はその塩とがその中に並存する場合であっても、アムロジピン由来の類縁物質及び最大のピークを示す不純物が、市販品及び抗酸化剤を含まないものに比較して、低減することが確認された。
実施例4
実施例1において、抗酸化剤として、アスコルビン酸、没食子酸プロピル又はトレハロースを用いた以外、実施例1と同様に単層の錠剤を作成した。
試験例3
得られた錠剤と、上述した比較例1及び参考例の錠剤を、試験例1と同様に、無包装で、それぞれ60℃、75%RHの条件下で7日間保存し、以下の安定性評価を行った。
保存前、中又は後の錠剤について、安定性評価のために純度試験(類縁物質、アムロジピンに起因する分解物のうち最大のピークを示すもの)を行った。
その結果を図4A〜4Dに示す。
図4A〜4Dから明らかなように、本願実施例では、抗酸化剤又はトレハロースを含むものは、抗酸化剤又はトレハロースを含まないものに対して、単層の錠剤として、アムロジピン又はその塩とがその中に並存する場合であっても、アムロジピン由来の類縁物質及び最大のピークを示す不純物が、市販品及び抗酸化剤又はトレハロースを含まないものに比較して、低減することが確認された。
実施例5
以下の各成分を表2の割合で秤量し、図1に示す以下の方法によって単層の錠剤を作製した。
実施例5及び参考例の錠剤を、試験例1に記載された方法によって、無包装で、それぞれ60℃、75%RHの条件下で7日間保存し、安定性評価を行った。
その結果を図5A〜図5Dに示す。
図5A〜図5Dから明らかなように、本願実施例では、抗酸化剤を含むことから、単層の錠剤として、アジルサルタンと、アムロジピン又はその塩とがその中に並存する場合であっても、アジルサルタン及びアムロジピン由来の類縁物質及び不純物が、市販品に比較して、顕著に低減することが確認された。
本発明の医薬組成物は、製造時及び保存、流通過程においても、長期間にわたって安定性の確保を図ることができる。

Claims (13)

  1. アジルサルタンと、アムロジピン又はその塩と、抗酸化剤又はトレハロースとを含む安定化された医薬組成物。
  2. 前記抗酸化剤又はトレハロースが、コハク酸、アスコルビン酸、没食子酸プロピル及びトレハロースからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 錠剤の形態である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. アジルサルタンの造粒物と、少なくとも該造粒物中に含まれた抗酸化剤又はトレハロースと、アムロジピンの粉末又は造粒物とによる単層の錠剤の形態である請求項3に記載の医薬組成物。
  5. さらに、ステアリン酸及び/又はステアリン酸マグネシウムを含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の医薬組成物。
  6. 前記アジルサルタンの造粒物中にステアリン酸を含み、かつ前記アムロジピンの粉末又は造粒物がステアリン酸マグネシウムとの混合物である請求項1〜5のいずれか1つに記載の医薬組成物。
  7. 前記アジルサルタンの造粒物中にさらにD−マンニトールを含む請求項4〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
  8. 前記アムロジピンの粉末又は造粒物がD−マンニトールとの混合物である請求項4〜7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
  9. アジルサルタン及びステアリン酸を含む混合物を攪拌しながら抗酸化剤又はトレハロースを添加して造粒し、
    得られた造粒物と、アムロジピンの粉末又は造粒物とを混合することを特徴とする医薬組成物の製造方法。
  10. 前記造粒を、撹拌造粒又は流動層造粒にて行う請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記混合した後、さらに、得られた医薬組成物を打錠して錠剤とする請求項9又は10に記載の製造方法。
  12. アジルサルタン及びステアリン酸を混合する際、さらにD−マンニトールを添加する請求項9〜11のいずれか1つに記載の製造方法。
  13. 前記アジルサルタンの造粒物と、アムロジピンの粉末又は造粒物とを混合する際、さらにステアリン酸マグネシウムを添加する請求項9〜12のいずれか1つに記載の製造方法。
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