以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態における点火プラグ10の軸線Oを境にした片側断面図である。図2は軸線Oを含む先端部12の断面図である。図2では点火プラグ10の後端側の図示が省略されている。図1では、紙面下側を点火プラグ10の先端側、紙面上側を点火プラグ10の後端側という(図2から図7においても同じ)。
図1に示すように点火プラグ10は、絶縁体11と、絶縁体11の内部に配置される導電体30と、絶縁体11を保持する主体金具40と、を備えている。絶縁体11の先端部12は、主体金具40の先端41から先端側に突出する部位である。先端部12は有底筒状に形成されている。絶縁体11は、第1絶縁体13と、第2絶縁体20と、を備えている。先端部12は、第1絶縁体13の先端側の部位と第2絶縁体20とを組み合わせて作られている。
第1絶縁体13は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材である。第1絶縁体13は、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延びている。本実施形態では、第1絶縁体13の内部表面14の軸線Oに垂直な断面は円形である。第1絶縁体13は、径方向の外側へ張り出す第1係止部15が、外周面に形成されている。第1絶縁体13は、第1係止部15よりも後端側の外周面に、径方向の外側へ張り出す第2係止部16が形成されている。
図2に示すように第1絶縁体13には、先端部12と軸線Oとが交わる部位に、先端部12を厚さ方向に貫通する穴17が形成されている。穴17は第1絶縁体13の先端面13aに開口する。本実施形態では、穴17は円筒状の内面をもつ。穴17が第1絶縁体13の先端面13aに開口するので、穴17によって先端部12の周方向の肉厚の一部に欠損が生じないようにできる。第1絶縁体13の内部表面14には、後端側へ向かうにつれて拡径する環状の後端向き面18が形成されている。後端向き面18は、全周に亘って穴17の後端に隣接している。
第2絶縁体20は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるセラミックスにより形成されている。第2絶縁体20を構成するセラミックスとしては、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウムが挙げられる。これらのうちのいずれか1種で作られていても良いし、2種以上が複合されていても良い。本実施形態では、第2絶縁体20は略円柱状に形成されている。第2絶縁体20が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウムのいずれか1種以上からなると、第2絶縁体20の機械的強度と絶縁性とを確保できる。
第2絶縁体20は、穴17に挿入される先端部21と、第1絶縁体13の後端向き面18よりも後端側に位置する後端部22と、を備えている。先端部21及び後端部22は円柱状に形成されている。第2絶縁体20は、径方向の外側へ全周に亘って張り出す先端向き面23が、外周面に形成されている。第2絶縁体20の先端向き面23は、第1絶縁体13の後端向き面18に係止される。
図1に戻って説明する。導電体30は複数の部位からなり、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延び、第1絶縁体13の内部に配置されている。導電体30は、本実施形態では第1シール材31及び端子金具32を備えている。
第1シール材31は、絶縁体11の先端側に充填された導電性を有する部材である。第2絶縁体20の後端部22は第1シール材31に埋め込まれている。本実施形態では、第1シール材31は、骨材と導電性粉末とを混合したものが用いられている。第1シール材31は、第1絶縁体13の後端向き面18と第2絶縁体20の先端向き面23との間から先端部12の内部への外気(燃焼室の可燃混合気)の漏洩を抑制する。第1シール材31の先端は第1絶縁体13の後端向き面18に位置し、第1シール材31の後端は、軸線方向において、主体金具40の先端41よりも後端側に位置する。
第1シール材31の骨材としては、ガラス粉末や、ガラス粉末と無機化合物粉末との混合物が挙げられる。ガラス粉末としては、例えばB2O3−SiO2系、BaO−B2O3系、SiO2−B2O3−CaO−BaO系、SiO2−ZnO−B2O3系、SiO2−B2O3−Li2O系およびSiO2−B2O3−Li2O−BaO系等の粉末が挙げられる。無機化合物粉末としては、例えばアルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の粉末が挙げられる。これらの骨材は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
第1シール材31に導電性を与えるために混合される導電性粉末としては、例えば半導性酸化物、金属および非金属導電性材料等からなる粉末が挙げられる。半導性酸化物としては、例えばSnO2が挙げられる。金属としては、例えばZn,Sb,Sn,Ag及びNi等が挙げられる。非金属導電性材料としては、例えば無定形カーボン(カーボンブラック)、グラファイト、炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン及び炭化ジルコニウム等が挙げられる。これらの導電性粉末は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
端子金具32は、交流電圧やパルス電圧が入力される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具32は、先端部33が第1絶縁体13の内側に挿入され、後端部34が第1絶縁体13から後端側へ突出している。端子金具32は、先端部33が、第1シール材31に接続されている。
主体金具40は、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具40は、外周面の少なくとも一部におねじ42が形成された胴部43と、胴部43の後端側に隣接する座部44と、座部44の後端側に隣接する連結部45と、連結部45の後端側に隣接する拡径部46と、拡径部46の後端側に隣接する後端部47と、を備えている。
胴部43に形成されたおねじ42は、エンジン(図示せず)のねじ穴に螺合する。座部44は、エンジンのねじ穴とおねじ42との隙間を塞ぐための部位である。連結部45は、主体金具40を第1絶縁体13に組み付けるときに湾曲状に塑性変形した部位である。拡径部46は、エンジンのねじ穴におねじ42を締め付けるときに、レンチ等の工具が係合する工具係合部である。後端部47は径方向の内側へ向けて屈曲した部位であり、第1絶縁体13の第2係止部16よりも後端側に位置する。
胴部43の内周面に、パッキン48を介して、第1絶縁体13の第1係止部15を先端側から係止する棚部49が形成されている。パッキン48は、主体金具40を構成する金属材料よりも軟質の軟鋼板等の金属製の円環状の板材である。
第1絶縁体13の第2係止部16よりも後端側の外周面の全周に亘って、第2係止部16と後端部47との間に、タルク等の粉末が充填されたシール部50が設けられている。主体金具40の棚部49から後端部47までの部位は、第1絶縁体13の第1係止部15から第2係止部16までの部位に、パッキン48及びシール部50を介して軸線方向の圧縮荷重を加える。これにより主体金具40は第1係止部15及び第2係止部16を係止し、第1絶縁体13を保持する。
図2に示すように第1絶縁体13の穴17が第2絶縁体20に塞がれた先端部12は、第1シール材31(導電体30)の先端の周囲を取り囲む。先端部12は、先端側に位置する第1部12aと、第1部12aの後端に隣接する第2部12bと、からなる。第1部12aは、肉厚(径方向の厚さ)が、第2部12bの肉厚よりも薄い部位である。本実施形態では、第1部12aの肉厚は、先端面13aの近傍を除き、軸線方向の全長に亘って同一である。
点火プラグ10は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、第1絶縁体13の成形体を製造する。成形体の製造は、円筒状の内面をもつ型の内側に心棒を配置し、心棒の両方の端部を支持した状態で、型の内面と心棒との間に第1絶縁体13の原料粉末を充填する。型に充填された原料粉末を加圧して第1絶縁体13の成形体を得る。これとは別に第2絶縁体20の成形体を得た後、これらの成形体を焼成して、第1絶縁体13及び第2絶縁体20を得る。
第1絶縁体13の穴17に第2絶縁体20の先端部21を挿入し、第1絶縁体13の後端向き面18に第2絶縁体20の先端向き面23を係止する。次いで、第1シール材31の原料粉末を第1絶縁体13の内部の第2絶縁体20の後端側に充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、第1絶縁体13の内部に充填した原料粉末を予備圧縮する。
次いで、第2絶縁体20が係止された第1絶縁体13を炉内に移送し、例えば原料粉末に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱する。原料粉末を軟化させた後、第1絶縁体13に挿入した端子金具32によって、軟化した原料粉末を軸線方向へ圧縮する。原料粉末の焼結により第1絶縁体13の内部に第1シール材31が形成され、第1シール材31に端子金具32が接続される。次に、主体金具40に第1絶縁体13を挿入し、連結部45及び後端部47を屈曲して主体金具40を第1絶縁体13に組み付け、点火プラグ10を得る。
エンジン(図示せず)に取り付けられた点火プラグ10の導電体30と主体金具40との間に交流電圧やパルス電圧が入力されると、絶縁体11の先端部12の表面に非平衡プラズマ(ストリーマ放電)が生じる。非平衡プラズマは熱エネルギーへの変換が少ないので、燃焼室(図示せず)内の可燃混合気の温度はあまり上がらないが、高いエネルギーをもつ電子が生成される。この高いエネルギーをもつ電子の衝突によりO,N,OH等のラジカルが大量に生成され、発熱反応による温度上昇およびラジカルによる連鎖反応が進行し点火に至る。
非平衡プラズマは、点火プラグ10の先端部12のうち肉厚(径方向の寸法)の薄い部位に生じ易い。そのため第1部12aの肉厚の周方向のばらつきが大きいと、第1部12aに生じる非平衡プラズマに周方向のムラが生じ、生成されるラジカルの分布に偏りができる。また、肉厚の薄い部位は破壊し易いので、先端部12は周方向の肉厚のばらつきが小さいのが望ましい。
そのため点火プラグ10は、第1絶縁体13の穴17に第2絶縁体20を挿入して、有底筒状の先端部12が形成される。第1絶縁体13の穴17は、先端部12と軸線Oとが交わる部位を含み、先端部12の厚さ方向に貫通するので、第1絶縁体13の成形体を製造するときに、成形体の内面を成形する心棒の両方の端部を支持できる。これにより成形時に心棒の軸ずれを発生し難くできる。その結果、第1絶縁体13の肉厚の周方向のばらつきを小さくできるので、先端部12の肉厚の周方向のばらつきを小さくできる。これにより、先端部12に生じる非平衡プラズマや先端部12の機械的強度に周方向のムラを生じ難くできる。
先端部12の内部に第1シール材31が配置されているので、第1絶縁体13の後端向き面18と第2絶縁体20の先端向き面23との間から先端部12の内部への外気の侵入を抑制できる。これにより先端部12の気密性を向上できる。また、導電性を有する第1シール材31は導電体30の一部を構成するので、先端部12の内部において導電体30の一部を構成する部材と先端部12の気密性を向上させる部材とを別々に設ける場合に比べ、部品点数を削減できる。
図3及び図4を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、第1シール材31が導電体30の一部を構成する場合について説明した。これに対し第2実施形態では、導電層71が導電体70の一部を構成する場合について説明する。なお、第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施の形態における点火プラグ60の軸線Oを境にした片側断面図であり、図4は軸線Oを含む先端部12の断面図である。図4では点火プラグ60の後端側の図示、及び、絶縁体61の先端部12と後端向き面64との間の部位の図示が省略されている。
図3に示すように点火プラグ60は、絶縁体61と、絶縁体61の内部に配置される導電体70と、先端41から絶縁体61の先端部12が突出する状態で絶縁体61を保持する主体金具40と、を備えている。絶縁体61は、第1絶縁体62と、第2絶縁体65と、を備えている。
第1絶縁体62は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材である。内部表面63が形成された第1絶縁体62は、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延びている。第1絶縁体62の内部表面63の先端側であって、軸線方向において第1係止部15よりも後端側には、先端側へ向かうにつれて縮径する後端向き面64が形成されている。
図4に示すように第2絶縁体65は、高温下の絶縁性や機械的特性に優れるセラミックスにより形成された略円柱状の部材である。第2絶縁体65の先端向き面23には、全周に亘って連続する溝66が形成されている。溝66には、金属製の第2シール材67が配置されている。第2シール材67は、第1絶縁体62の後端向き面18と第2絶縁体65の先端向き面23(溝66)との間に挟まれている。本実施形態では、第2シール材67はニッケル基合金などの耐熱合金製の円環状の部材であり、穴17を臨む第2シール材67の内周面に開口が形成されている。
導電体70(図3参照)は複数の部位からなり、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延び、第1絶縁体62の内部に配置されている。導電体70は、本実施形態では導電層71、金属製の部材72、端子金具76及び接続部79を備えている。
導電層71は、化学的または物理的な力によって第1絶縁体62の内部表面63に結合した導電性を有する層である。本実施形態では、導電層71の先端は、第1絶縁体62の後端向き面18のうち第2シール材67が接触する部位に位置する。導電層71の後端は、軸線方向において主体金具40の先端41と後端向き面64との間に位置する。導電層71は、導電層71の先端から後端まで、第1絶縁体62の内部表面63の全周を覆っている。導電層71は、例えばめっき、導電ペースト等の導電性樹脂材料の塗布、溶射、蒸着などにより形成される。本実施形態では、無電解ニッケルめっきにより導電層71が形成されている。
部材72は、導電性を有する金属材料(例えばニッケル基合金等)からなる棒状の部材であり、導電層71に接続されている。部材72は、先端部73と、先端部73の軸線方向の後端側に位置する後端部74と、を備えている。部材72の外周面には、径方向の外側へ拡径する拡径部75が形成されている。拡径部75は、第1絶縁体62の後端向き面64に係止される。
部材72の拡径部75が第1絶縁体62の後端向き面64に係止された状態で、部材72の先端73aは第2絶縁体65の後端部22に当接し、部材72は第2絶縁体65を介して第2シール材67に締付力を加える。部材72の先端部73の外周面は導電層71に接続される。
図3に戻って説明する。端子金具76は、交流電圧やパルス電圧が入力される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具76は、先端部77が第1絶縁体62の内側に挿入され、後端部78が第1絶縁体62から後端側へ突出している。端子金具76は、先端部77が、接続部79に接続されている。
接続部79は、部材72の後端部74と端子金具76の先端部77とが埋め込まれた導電性を有する部材である。本実施形態では、接続部79は、骨材と導電性粉末とを混合したものが用いられている。接続部79の骨材および導電性粉末としては、第1実施形態で説明した第1シール材31と同様のものが用いられるので、説明を省略する。
点火プラグ60は、例えば以下のような方法によって製造される。まず、第1絶縁体62の成形体を製造する。円筒状の内面をもつ型の内側に心棒を配置し、心棒の両方の端部を支持した状態で、型の内面と心棒との間に第1絶縁体62の原料粉末を充填する。型に充填された原料粉末を加圧して第1絶縁体62の成形体を得る。これとは別に第2絶縁体65の成形体を得た後、これらの成形体を焼成して、第1絶縁体62及び第2絶縁体65を得る。第1絶縁体62の内部表面63に導電層71を形成する。
溝66に第2シール材67を配置した第2絶縁体65の先端部21を、第1絶縁体62の穴17に挿入し、第1絶縁体62の後端向き面18に第2絶縁体65の先端向き面23を係止する。次いで、第1絶縁体62の内部に部材72を挿入し、部材72の拡径部75を第1絶縁体62の後端向き面64に係止する。次に、第1絶縁体62の内部の部材72の後端部74の周囲に、接続部79の原料粉末を充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、後端部74の周囲に充填した原料粉末を予備圧縮する。
次いで、部材72が配置された第1絶縁体62を炉内に移送し、例えば接続部79の原料粉末に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱する。原料粉末を軟化させた後、第1絶縁体62に挿入した端子金具76によって、軟化した原料粉末を軸線方向へ圧縮する。原料粉末の焼結により第1絶縁体62の内部に接続部79が形成され、接続部79に部材72及び端子金具76が接続される。次に、主体金具40を第1絶縁体62に組み付け、点火プラグ60を得る。
点火プラグ60は、第1絶縁体62に固定された金属製の棒状の部材72の先端73aが、第2絶縁体65の後端部22に当接している。部材72は第2絶縁体65を後端側へ移動し難くするので、第1絶縁体62の後端向き面18と第2絶縁体65の先端向き面23との間から先端部12の内部への外気(燃焼室内の可燃混合気)の侵入を抑制できる。よって、先端部12の気密性を向上できる。
導電体70の一部を構成する部材72の先端73aは先端部12(特に第1部12a)の内側に位置するので、介在する第1絶縁体62により主体金具40と部材72との間に誘電体バリア放電を生じさせ、先端部12の表面に非平衡プラズマを生じさせることができる。部材72は第2絶縁体65を軸線方向に固定する機能と放電の電極としての機能とをもつ。
第1絶縁体62の後端向き面18と第2絶縁体65の先端向き面23との間に環状の金属製の第2シール材67が配置されているので、第1絶縁体62と第2絶縁体65との間から先端部12の内部への外気の侵入を抑制できる。よって、先端部12の気密性を向上できる。
第2シール材67は先端向き面23に形成された環状の溝66に配置されているので、溝66により第2シール材67の位置が固定される。溝66は第2シール材67の位置がずれるのを防ぎ、第2シール材67が穴17に侵入しないようにできるので、第2シール材67が電極となるような不正な放電を生じ難くできる。放電による第2シール材67の破損を抑制できるので、第1絶縁体62と第2絶縁体65との間の気密性の低下を抑制できる。
第2シール材67は、第1絶縁体62の穴17を臨む内周面に開口が形成されているので、燃焼室内の流体圧が第2シール材67の開口に導入される。これにより部材72の先端73aが第2絶縁体65の後端部22に押し付けられて生じる第2シール材67の初期の締付力に、流体圧による反力が加わるので、気密性を向上できる。
第1絶縁体62の内部表面63に形成された導電層71は、後端向き面18のうち先端向き面23(本実施形態では第2シール材67)を受ける部位の先端から後端側に存在する。これにより軸線Oに沿って延びる部材72に導電層71を接続し易くできる。
導電層71により部材72と第1絶縁体62の内部表面63との隙間(空気層)をなくすことができる。隙間(空気層)があると点火プラグの見かけの誘電率が低下するので、その分だけ絶縁体の表面に蓄えられる電荷が少なくなる。そのため、点火プラグに投入された電力に対して出力(プラズマの発生量)が低下する、即ちエネルギーの損失が生じるという問題点がある。これに対し点火プラグ60によれば、導電層71により部材72と第1絶縁体62の内部表面63との隙間(空気層)が見かけの誘電率に与える影響を抑制できるので、エネルギーの損失を抑制できる。
導電層71は第1絶縁体62の後端向き面18と第2絶縁体65の先端向き面23との間に介在するので、後端向き面18に導電層71が無い場合に比べ、導電層71の塑性変形により第1絶縁体62と第2絶縁体65との間の気密性を向上できる。
図5を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施形態では、棒状の部材72により第2絶縁体65を先端側に押し付ける場合について説明した。これに対し第3実施形態では、圧縮ばね88により第2絶縁体20を先端側に押し付ける場合について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第3実施の形態における点火プラグ80の断面図である。図5では点火プラグ80の後端側の図示が省略されている。
点火プラグ80は、第1絶縁体62及び第2絶縁体20の内部表面63に配置される導電体81を備えている。導電体70(図3参照)は複数の部位からなり、軸線Oに沿って先端側から後端側へと延びている。導電体81は、本実施形態では導電層82、金属製の部材83、端子金具76及び接続部79を備えている。
導電層82は、第1絶縁体62の内部表面63に結合しためっき膜である。導電層82の先端は、第1絶縁体62の後端向き面18のうち第2絶縁体20の先端向き面23が接触する部位に位置する。導電層82の後端は、第1絶縁体62の後端向き面64に位置する。導電層82は、導電層82の先端から後端まで、第1絶縁体62の内部表面63の全周を覆っている。導電層82と主体金具40との間に誘電体バリア放電を生じさせることができる。
部材83は導電性を有する金属材料(例えばニッケル基合金等)によって形成され、軸線Oに沿って配置されている。部材83は、中間部84と、中間部84の軸線方向の後端側に位置する後端部85と、を備えている。部材83の外周面には、径方向の外側へ拡径する拡径部86が形成されている。拡径部86は、第1絶縁体62の後端向き面64に形成された導電層82に接触した状態で、後端向き面64に係止される。後端部85及び端子金具76(先端部77)は接続部79に埋め込まれている。
部材83の当接部87は、中間部84よりも先端側に配置されている。当接部87と中間部84との間に圧縮ばね88が介在する。部材83の拡径部86が第1絶縁体62の後端向き面64に係止された状態で、当接部87は第2絶縁体20の後端部22に当接する。圧縮ばね88は、当接部87を介して第2絶縁体20を先端側に付勢する。本実施形態では、圧縮ばね88はコイルばねである。
点火プラグ80は、第2絶縁体20の後端側に配置された圧縮ばね88が、第2絶縁体20を先端側に付勢するので、第1絶縁体62と第2絶縁体65との間から先端部12の内部への外気の侵入を抑制できる。よって、先端部12の気密性を向上できる。
図6及び図7を参照して第4実施の形態について説明する。第4実施形態では、主体金具40に接地電極101,105が接続されている場合について説明する。なお、第1実施形態から第3実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第4実施の形態における点火プラグ90の軸線Oを境にした片側断面図であり、図7は点火プラグ90の軸線Oを含む断面図である。図7では、点火プラグ90の後端側の図示が省略されている。
図6に示すように点火プラグ90は、絶縁体61の内部に配置された導電体91と、絶縁体61を保持する主体金具40と、主体金具40に接続された接地電極97,101と、を備えている。接地電極97,101は、主体金具40の胴部42に接合された棒状の金属製(例えばニッケル基合金製)の部材である。本実施形態では、接地電極97,101は軸線Oに沿って配置されており、軸線Oに垂直な断面が矩形状である。
図7に示すように接地電極97の一端部98及び接地電極101の一端部102は主体金具40に接続されている。接地電極101の他端部103は、接地電極97の他端部99よりも先端側に位置する。接地電極97の他端部99及び接地電極101の他端部103は、軸線Oを中心にして互いに180°離れた位置に存在する。
接地電極97,101は他端部99,103を除き、軸線Oに平行に配置されている。他端部99,103は絶縁体61の先端部12へ向かって屈曲している。他端部99,103は、先端部12のうち導電体91(導電層82)と軸線方向に重なる部位との間に、放電ギャップ100,104をそれぞれ形成する。接地電極101の他端部103は、第1絶縁体62の後端向き面18及び第2絶縁体20の先端向き面23よりも後端側に位置する。
導電体91は、導電層82、金属製の部材92、端子金具76及び接続部79を備えている。部材92は、導電性を有する金属材料(例えばステンレス鋼等)からなる。部材92は、先端部93と、先端部93の軸線方向の後端側に位置する後端部94と、を備えている。部材92の外周面には、径方向の外側へ拡径する拡径部95が形成されている。拡径部95は、第1絶縁体62の後端向き面64に形成された導電層82に接触した状態で、後端向き面64に係止される。後端部94及び端子金具76(先端部77)は接続部79に埋め込まれている。部材92の先端部93と第2絶縁体20の後端部22とは軸線方向に離間している。部材92の先端部93は、軸線方向において、主体金具40の先端41よりも後端側に位置する。
第1シール材96は、第1絶縁体62の後端向き面18と第2絶縁体20の先端向き面23との間から先端部12の内部への外気の漏洩を抑制するための部材である。第1シール材96は、第1絶縁体62の後端向き面18と部材92の先端部93との間に充填されている。第2絶縁体20の後端部22は第1シール材96に埋め込まれている。本実施形態では、第1シール材96は骨材が固化された絶縁体である。
第1シール材96の骨材としては、ガラス粉末や、ガラス粉末と無機化合物粉末との混合物が挙げられる。ガラス粉末としては、例えばB2O3−SiO2系、BaO−B2O3系、SiO2−B2O3−CaO−BaO系、SiO2−ZnO−B2O3系、SiO2−B2O3−Li2O系およびSiO2−B2O3−Li2O−BaO系等の粉末が挙げられる。無機化合物粉末としては、例えばアルミナ、窒化ケイ素、ムライト及びステアタイト等の粉末が挙げられる。これらの骨材は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
点火プラグ90は、先端部12の内部に第1シール材96が配置されているので、第1絶縁体62と第2絶縁体20との間から先端部12の内部への外気の漏洩を抑制できる。よって、先端部12の気密性を向上できる。第1シール材96は絶縁体であるが、第1絶縁体62の内部表面63のうち第1シール材96が配置された部位に導電層82が形成されているので、導電層82と接地電極97,101との間に放電が生じる。
点火プラグ90は、第2絶縁体20の先端向き面23及び第1絶縁体62の後端向き面18が、接地電極101の他端部103よりも先端側に位置するので、先端向き面23や後端向き面18と接地電極101との間に放電を生じ難くできる。よって、放電による先端向き面23と後端向き面18との間の気密性の低下を抑制できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
実施形態では、円筒状の内面をもつ穴17が第1絶縁体13,62に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。穴17の内面を、軸線方向の先端側へ向かうにつれて縮径または拡径する円錐状にすることは当然可能である。穴17の内面が、軸線方向の先端側へ向かうにつれて縮径する場合には、穴17の内面(後端向き面)に第2絶縁体の先端向き面を係止させることは当然可能である。この場合、第2シール材は穴17の内面(後端向き面)と第2絶縁体の先端向き面との間に配置される。
第2実施形態では、第2絶縁体65の先端向き面23に形成された溝66に第2シール材67が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1絶縁体62の後端向き面18に溝66を形成し、溝66に第2シール材を配置することは当然可能である。溝66は省略できる。
第2実施形態では、第2シール材67の内周面に開口が形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2シール材67の形状は適宜設定できる。第2シール材67として、例えば断面が円形の金属製Oリング等を用いることは当然可能である。
第2実施形態で説明した金属製の部材72の一部を塑性変形(例えば屈曲)させた状態で、部材72の先端73aを第2絶縁体65の後端部22に当接させることは当然可能である。また、部材72の一部を弾性変形(例えば屈曲)させた状態で、部材72の先端73aを第2絶縁体65の後端部22に当接させることは当然可能である。この場合、弾性変形させた部材72の一部は、第2絶縁体65を先端側へ付勢する圧縮ばねである。
第3実施形態では、圧縮ばね88としてコイルばねを用いる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。皿ばね等の他の圧縮ばねを用いることは当然可能である。
実施形態では、絶縁体11,61の先端部12のうち第1部12aの外径が、軸線方向の全長に亘って同一の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、第1部12aの先端側の外径が後端側の外径よりも小さくなるように第1部12aの外周面を先端側へ向けて縮径させたり、第1部12aの先端側の外径が後端側の外径よりも大きくなるように第1部12aの外周面を先端側へ向けて拡径させたりすることは当然可能である。また、第1部12aの軸線方向の中央付近の外径が先端側の外径や後端側の外径よりも大きくなるように第1部12aの外周面を中央が膨らんだ円筒状にすることは当然可能である。先端部12の外周面の形状を適宜変更することより、絶縁体11,61の先端部12の径方向の厚さ等との関係で、先端部12の周囲の電界強度を適宜設定できる。
実施形態では、絶縁体11,61の先端部12の先端面13aが平面状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、先端部12の先端面13aを球冠状にすることは当然可能である。
第2実施形態から第4実施形態で説明した導電層71,82を、第1実施形態の第1絶縁体13の内部表面14(先端部12)に形成することは当然可能である。また、第2実施形態では第1絶縁体62の内部に金属製の部材72が配置されているので、導電層71を省略することは当然可能である。
第4実施形態では、接地電極の数が2つの場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極の数は適宜設定できるので、接地電極の数を1つ、3つ又はそれ以上にすることは当然可能である。
第4実施形態では、接地電極97,101が直線状に形成され、さらに各電極の他端部側の部位が軸線Oと平行に配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。軸線Oを含む平面に接地電極が含まれるように各電極の端部側の部位を傾け、各電極の他端部と先端部12との間に放電ギャップを形成することは当然可能である。また、軸線Oに対してねじれの位置に接地電極を配置したり、接地電極を曲線状にしたりすることは当然可能である。