以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態におけるスパークプラグ10の軸線Oを含む面で切断した断面図であり、図2は一部を拡大したスパークプラグ10の断面図である。図1及び図2では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という。図2はスパークプラグ10の後端側の図示が省略されている(図3から図5において同じ)。
図1に示すようにスパークプラグ10は、主体金具20、接地電極30、絶縁体40及び中心電極70を備えている。主体金具20は、内燃機関のねじ穴(図示せず)に固定される略円筒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。
主体金具20は、後端側から先端側へ軸線Oに沿って端部21、工具係合部22、溝部23、座部24、胴部25、棚部27、脚長部28の順に連接されている。端部21及び溝部23は絶縁体40を加締めるための部位であり、工具係合部22はスパークプラグ10を内燃機関に取り付けるときにレンチ等の工具を係合させる部位である。本実施の形態では、主体金具20は冷間鍛造加工等によって成形されている。
棚部27は、胴部25の内周と脚長部28の内周との境界に位置し、胴部25の先端から径方向の内側へ張り出している。棚部27は、胴部25の内周面26の内径より内径が小さく形成され、後端側から先端側へ向かうにつれて縮径する。座部24よりも先端側の胴部25及び脚長部28は、外周面にねじ部29が形成される。座部24とねじ部29との間に環状のガスケット98が嵌め込まれる。ガスケット98は、内燃機関のねじ穴にねじ部29が嵌められたときに、座部24と内燃機関(エンジンヘッド)とに挟まれて主体金具20と内燃機関との隙間を封止する。
接地電極30は、主体金具20の先端(脚長部28の端面)に接合される金属製(例えばニッケル基合金製)の電極母材31と、電極母材31の先端に接合されるチップ32とを備えている。電極母材31は、軸線Oと交わるように軸線Oへ向かって屈曲する棒状の部材である。チップ32は、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属またはこれらを主成分とする合金によって形成される部材であり、軸線Oと交わる位置に接合されている。
絶縁体40は、主体金具20に保持されると共に中心電極70を絶縁保持するための部材であり、第1絶縁体50と第2絶縁体60とを備えている。本実施の形態では、第1絶縁体50は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナを主成分とする略円筒状の部材である。第2絶縁体60は、熱伝導率の高い窒化アルミニウムや炭化ケイ素等により形成される略円筒状の部材である。しかし、第1絶縁体50及び第2絶縁体60の材質はこれに限らず、目的に応じて適宜設定できる。
第1絶縁体50は、軸線Oに沿って貫通する軸孔51が形成されている。第1絶縁体50は、後部52、突出部53、筒部54が、軸線Oに沿って後端側から先端側へ順に連接され、筒部54(図2参照)には大径部56、小径部57、脚部58が、軸線Oに沿って後端側から先端側へ順に連接されている。受け部55(図2参照)は、筒部54の内周と大径部56の内周との境界に位置し、筒部54の先端から径方向の内側へ張り出している。受け部55は後端側から先端側へ向かうにつれて縮径する。
第2絶縁体60は、第1絶縁体50の径方向外側に配置される。第2絶縁体60は、環状部61、筒状部63の順に、軸線Oに沿って後端側から先端側へ連接されている。環状部61は第1絶縁体50の小径部57の径方向外側に配置され、筒状部63は第1絶縁体50の脚部58の径方向外側に配置されている。段部62(図2参照)は、環状部61の外周と筒状部63の外周との境界に位置し、後端側から先端側へ向かうにつれて縮径する。
第1絶縁体50及び第2絶縁体60は、外周に主体金具20が固定される。第1絶縁体50は、後部52の後端および脚部58の先端が、主体金具20からそれぞれ露出する。脚部58は、主体金具20の脚長部28及び第2絶縁体60の筒状部63の径方向内側に配置される。脚部58は脚長部28と所定の間隔をあけて対向する。突出部53は、後部52の径方向の外側に張り出す部位であり、主体金具20の溝部23の径方向内側に配置される。
中心電極70は、有底筒状に形成された電極母材の内部に、電極母材よりも熱伝導性に優れる芯材73を埋設した棒状の電極である。芯材73は銅または銅を主成分とする合金で形成されている。中心電極70は、第1絶縁体50の脚部58の内側に配置されると共に軸線Oに沿って先端側へ延びる軸部71と、軸部71の後端側から径方向外側へ張り出して第1絶縁体50の受け部55(図2参照)に配置される鍔部72とを備えている。
軸部71は先端が軸孔51から露出し、チップ74が接合されている。チップ74は、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属またはこれらを主成分とする合金によって形成される柱状の部材であり、火花ギャップを介して接地電極30のチップ32と対向する。
パッキン80は、主体金具20を構成する金属材料よりも軟質の軟鋼板等の金属材料で形成される円環状の板材である。パッキン80は必要に応じて浸炭処理や浸炭窒化処理が施される。パッキン80は主体金具20と第2絶縁体60とを気密に閉塞する。
端子金具90は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具90の先端側は第1絶縁体50の軸孔51内に配置される。
抵抗体93は、スパーク時に発生する電波ノイズを抑えるための部材であり、端子金具90と中心電極70との間の軸孔51内に配置されている。抵抗体93と中心電極70との間、抵抗体93と端子金具90との間に、導電性を有するガラスシール94,95がそれぞれ配置される。ガラスシール94は抵抗体93と中心電極70とにそれぞれ接触し、ガラスシール95は抵抗体93と端子金具90とにそれぞれ接触する。この結果、中心電極70と端子金具90とは、抵抗体93とガラスシール94,95とを介して電気的に接続される。
第1絶縁体50の後部52の外周には、リング部材96,96及びリング部材96,96に挟まれたタルク等の粉末層97が配置される。主体金具20の端部21が第1絶縁体50へ向けて径方向内側に加締められると、突出部53と端部21との間にリング部材96及び粉末層97が挟まれ、第1絶縁体50が軸方向の先端側へ向けて押圧される。その結果、主体金具20の棚部27と第2絶縁体60の段部62(図2参照)とにパッキン80が密着する。
図2に示すように第1絶縁体50は、大径部56と小径部57との境界に当接面56aが形成されている。小径部57は、外径が、大径部56の外径よりも小さく且つ脚部58の外径よりも大きく設定される部位である。当接面56aは、大径部56の外周面に対して径方向の内側へ向けて段差状に形成される面である。
第2絶縁体60は、環状部61と筒状部63との境界に形成された段部62が、パッキン80を介して主体金具20の棚部27に支持される。環状部61は円環状に形成されており、筒状部63は、外径が、段部62の分だけ環状部61の外径よりも小さい円筒状に形成されている。第1絶縁体50の大径部56及び第2絶縁体60の環状部61は、外周面が同一曲面上に配置される。
第2絶縁体60はパッキン80を介して主体金具20の棚部27に段部62が押し付けられて軸方向の位置が規制される。第2絶縁体60の後端面64に第1絶縁体50の当接面56aが押し付けられると、第2絶縁体60を介して第1絶縁体50の軸方向の位置が規制される。第2絶縁体60は主体金具20の棚部27と第1絶縁体50の当接面56aとの間に挟まれた状態で保持されるので、第1絶縁体50に対して第2絶縁体60を強固に固定できる。
第2絶縁体60は、筒状部63の先端が、主体金具20の脚長部28の径方向の内側に配置される。第1絶縁体50は、脚部58の先端側(図2下側)が、主体金具20の脚長部28よりも軸方向へ突出する。第1絶縁体50は、脚部58と小径部57との境界の外周面に凹凸59が形成される。第2絶縁体60は、筒状部63の内周面であって凹凸59と対向する位置に凹凸66が形成される。
凹凸59,66は、軸線Oを含む断面(図2)において、第2絶縁体60(筒状部63)の先端の内縁63aと後端面64の内縁65とを通る直線Lに交差する面を備えている。その結果、凹凸59,66がない場合に比べて、第1絶縁体50と第2絶縁体60とが対向する面の表面積を凹凸59,66の分だけ大きくできる。
本実施の形態では、凹凸59は小径部57の外周面に形成された雄ねじであり、凹凸66は筒状部63の内周面に形成された雌ねじである。第1絶縁体50及び第2絶縁体60は、凹凸59,66が互いに噛み合って捻じ込まれると、第2絶縁体60の後端面64が第1絶縁体50の当接面56aに突き当たるように、当接面56aや凹凸59,66の位置が設定されている。
位置P1,P2,P3,P4は、軸線Oを含む断面(図2)における各部の軸方向の位置を示している。凹凸59,66の先端の位置P1及び後端の位置P2は、段部62にパッキン80が接触する接触面の先端側(図2下側)の縁の位置P3と第2絶縁体60の先端の位置(内縁63aの位置)との間に存在する。第2絶縁体60は、後端面64の内縁65が、位置P3から、第1絶縁体50の受け部55に鍔部72が接触する接触面の後端側の縁の位置P4までの間に存在する。
スパークプラグ10は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、第1絶縁体50の脚部58を第2絶縁体60の後端面64側から挿入し、凹凸59,66を噛み合わせて、第2絶縁体60の後端面64に第1絶縁体50の当接面56aを押し付け、絶縁体40を組み立てる。次に、第1絶縁体50の軸孔51の後部52側から中心電極70を挿入する。中心電極70は、軸部71の先端にチップ74が接合されている。中心電極70は受け部55に鍔部72が支持され、軸部71の先端が軸孔51の先端から外部に露出するように配置される。
次に、ガラスシール94の原料粉末を軸孔51から入れて、鍔部72の周囲および後端側に充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、軸孔51に充填したガラスシール94の原料粉末を予備圧縮する。成形されたガラスシール94の原料粉末の成形体の上に、抵抗体93の原料粉末を充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、軸孔51に充填した抵抗体93の原料粉末を予備圧縮する。次いで、抵抗体93の原料粉末の上に、ガラスシール95の原料粉末を充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、軸孔51に充填したガラスシール95の原料粉末を予備圧縮する。
その後、軸孔51の後端側から端子金具90の先端部81を挿入して、先端部81がガラスシール95の原料粉末に接触するように端子金具90を配置する。次いで、例えば各原料粉末に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱しつつ、端子金具90の後端側に設けられた張出部92の先端面が第1絶縁体50の後端面に当接するまで端子金具90を圧入して、先端部91によってガラスシール94,95及び抵抗体93の原料粉末に軸方向の荷重を加える。この結果、各原料粉末が圧縮・焼結され、第1絶縁体50(絶縁体40)の内部にガラスシール94,95及び抵抗体93が形成される。
次に、予め接地電極30が接合された主体金具20の棚部27の上にパッキン80を配置した後、主体金具20の端部21側から絶縁体40を軸方向へ挿入する。リング部材96及び粉末層97を端部21と第1絶縁体50との間に挿入した後、端部21の加締め形状に対応する凹部を備える治具(図示せず)により端部21を軸方向へ押圧し、端部21を径方向内側へ屈曲させる。
これにより主体金具20と第1絶縁体50とが固定される。溝部23は、主体金具20に加えられた荷重により座屈し、曲げ変形する。その結果、リング部材96及び粉末層97を介して、端部21により第1絶縁体50の突出部53が軸方向先端側へ押し付けられる。これにより、第1絶縁体50を介して第2絶縁体60の段部62と主体金具20の棚部27とにパッキン80が挟まれ、パッキン80が密着する。
その後、接地電極30の電極母材31にチップ32を接合し、接地電極30のチップ32が中心電極70のチップ74と軸方向に対向するように電極母材31を屈曲して、スパークプラグ10を得る。
スパークプラグ10は、主体金具20のねじ部29が内燃機関(図示せず)のねじ穴に取り付けられると、主体金具20から突出する部分が混合気に曝される。スパークプラグ10の接地電極30と中心電極70との間に火花放電を生じさせ、点火された混合気が爆発すると、第1絶縁体50の脚部58が加熱される。第1絶縁体50及び第2絶縁体60は凹凸59,66を互いに対向させるので、凹凸59,66を伝熱面として、熱伝導または熱伝達によって、第1絶縁体50から第2絶縁体60へ熱を伝わり易くできる。
凹凸59,66から第2絶縁体60へ伝えられた熱の一部は、パッキン80から熱伝導によって主体金具20へ伝えられる。また、第2絶縁体60へ伝えられた熱の一部は、熱伝導や熱伝達によって、環状部61から主体金具20の胴部25へ伝えられたり、後端面64から第1絶縁体50の当接面56aへ伝えられたりする。第1絶縁体50へ伝えられた熱は、熱伝導や熱伝達によって主体金具20へ伝えられる。第1絶縁体50の脚部58の熱を主体金具20へ逃し易くすることができるので、脚部58に熱が蓄積されることを防ぎ、熱を放出させ易くできる。その結果、第1絶縁体50の異常加熱を抑制し、混合気の早期着火を防止できる。
凹凸59,66の軸方向の先端側の位置P1は、パッキン80の位置P3と第2絶縁体60の先端の位置との間に存在する。その結果、凹凸59,66から第2絶縁体60へ伝えられた熱を、パッキン80から主体金具20へ伝え易くすることができる。よって、第1絶縁体50の脚部58の熱を放出させ易くできる。
第2絶縁体60は、後端面64の内縁65が、パッキン80の位置P3から受け部55の位置P4までの間に存在する。その結果、第2絶縁体60の後端面64を臨む第1絶縁体50の当接面56aを、筒部54よりも第1絶縁体50の先端側に設けることができる。これにより、筒部54の径方向の厚さに影響を与えずに、当接面56aの面積を確保できる。
これに対し、筒部54や突出部53等に当接面56aを設けると、当接面56aの分だけ筒部54や突出部53等の径方向の厚さが低下する。その結果、軸孔51に充填したガラスシール94,95及び抵抗体93の原料粉末に軸方向の荷重を加えるスパークプラグ10の製造時に、筒部54や突出部53等が破損するおそれがある。本実施の形態によれば、これを防止することができ、筒部54の径方向の厚さ及び当接面56aの面積をどちらも確保できる。
凹凸59は雄ねじであり凹凸66は雌ねじなので、凹凸59,66を噛み合わせると第1絶縁体50及び第2絶縁体60を一体化させることができる。その結果、スパークプラグ10の製造時には、第1絶縁体50及び第2絶縁体60を一体化した絶縁体40として取り扱うことができるので、スパークプラグ10の製造工程を簡素化できる。
凹凸59(雄ねじ)と凹凸66(雌ねじ)とを噛み合わせると、凹凸59,66のねじのフランクを密着させることができる。その結果、空気を介して凹凸59,66間に熱を伝える場合に比べて、凹凸59,66間を熱が良く移動できるようになるので、脚部58の熱を第2絶縁体60へ放出させ易くできる。
次に図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1絶縁体50及び第2絶縁体60の凹凸59,66を密着させる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1絶縁体110の凹凸111と第2絶縁体120の凹凸126との間に充填層130を介在させる場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施の形態におけるスパークプラグ100の断面図である。
図3に示すようにスパークプラグ100は、主体金具20に対して中心電極70を絶縁保持する第1絶縁体110及び第2絶縁体120を備えている。第1絶縁体110は、大径部56と脚部58との境界に当接面56aが形成されており、脚部58の外周に、環状の溝を軸方向に複数並べた凹凸111が形成されている。
第2絶縁体120は、環状部121と筒状部123との境界に形成された段部122が、パッキン80を介して主体金具20の棚部27に支持される。環状部121は円環状に形成されており、筒状部123は、外径が、段部122の分だけ環状部121の外径よりも小さい円筒状に形成されている。
第1絶縁体110は、第2絶縁体120の後端面124に当接面56aが突き当たることで、軸方向の位置が規制される。第2絶縁体120は、筒状部123の内周面であって凹凸111と対向する位置に凹凸126が形成される。凹凸126は、環状の溝を軸方向に複数並べた形状をしている。凹凸111,126は、ねじのようなかみ合いを有しない。
凹凸126が形成されているので、軸線Oを含む断面(図3)において、第2絶縁体120(筒状部123)の先端の内縁123aと後端面124の内縁125とを通る直線よりも第2絶縁体120の内周面の輪郭を長くできる。第1絶縁体110も同様に、凹凸111によって脚部58の外周面の輪郭を長くできる。その結果、凹凸111,126がない場合に比べて、第1絶縁体50と第2絶縁体60とが対向する面の表面積を凹凸111,112の分だけ大きくできる。
凹凸111,112は適度の隙間を設けて対向しており、第2絶縁体120の内周面と脚部58の外周面との間に充填層130が配置されている。充填層130は、耐熱性および熱伝導性を有する固形であり、第1絶縁体110及び第2絶縁体120に密着する。充填層130は無機接着剤(所謂セメント)や、ガラスシール94(図1参照)と同様の材料(例えばB2O3−SiO2系等のガラス粒子とCuやFe等の金属粒子とを含む組成物)等が用いられる。
充填層130を介して第1絶縁体110と第2絶縁体120との間に熱が伝わるので、充填層130の特性にもよるが、第1絶縁体110と第2絶縁体120との間の熱伝導率を向上できる。かみ合いを有しない凹凸111,126であっても充填層130によって熱伝導が行われるので、凹凸の形状等の設計の自由度を向上できる。なお、充填層130は、軸線Oを略中心とする円環状に設けられることが好ましいが、これに限られない。つまり、必ずしも円環状に連続している必要はなく、周方向に連続しないように形成されてもよい。
位置P1,P2,P3,P4は、軸線Oを含む断面(図3)における各部の軸方向の位置を示している。凹凸111,126の先端の位置P1は、段部122にパッキン80が接触する接触面の先端側(図3下側)の縁の位置P3と第2絶縁体120の先端の位置(内縁123aの位置)との間に存在する。凹凸111,126の後端の位置P2は、位置P3よりも第2絶縁体120の後端側(図3上側)に存在する。第2絶縁体120は、後端面124の内縁125が、位置P3から、第1絶縁体110の受け部55に鍔部72が接触する接触面の後端側の縁の位置P4までの間に存在する。
スパークプラグ100は、凹凸111,126から第2絶縁体120へ伝えられた熱の一部は、パッキン80から熱伝導によって主体金具20へ伝えられる。凹凸111,126の軸方向の先端側の位置P1は、パッキン80の位置P3と第2絶縁体120の先端の位置との間に存在するので、熱をパッキン80から主体金具20へ伝え易くできる。なお、凹凸111,126は、軸方向の後端の位置P2が、パッキン80の位置P3よりも第2絶縁体120の後端側(図3上側)に存在するので、凹凸111,126から第2絶縁体120へ伝えられた熱を、第2絶縁体120から主体金具20へより伝え易くできる。よって、第1絶縁体110の熱を主体金具20へ放出させ易くできる。
次に図4を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施の形態では、凹凸111,126がかみ合いを有しない場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、凹凸151,166が互いに軸方向に対向する面を有する場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第3実施の形態におけるスパークプラグ140の断面図である。
図4に示すようにスパークプラグ140は、主体金具20に対して中心電極70を絶縁保持する第1絶縁体150及び第2絶縁体160を備えている。第1絶縁体150は、小径部57と脚部58との境界に円環状の凹凸151が段差状に形成されている。第2絶縁体160は、環状部161と筒状部163との境界に形成された段部162が、パッキン80を介して主体金具20の棚部27に支持される。環状部161は円環状に形成されており、筒状部163は、外径が、段部162の分だけ環状部161の外径よりも小さい円筒状に形成されている。
第1絶縁体150は、第2絶縁体160の後端面164に当接面56aが突き当たることで、第2絶縁体160を介して軸方向の位置が規制される。第2絶縁体160は、筒状部163の内周面であって凹凸151と対向する位置に円環状の凹凸166が段差状に形成されている。
凹凸166が形成されているので、軸線Oを含む断面(図4)において、第2絶縁体160(筒状部163)の先端の内縁163aと後端面164の内縁165とを通る直線よりも第2絶縁体160の内周面の輪郭を長くできる。第1絶縁体150も同様に、凹凸151によって小径部57から脚部58に亘る外周面の輪郭を長くできる。その結果、凹凸151,166がない場合に比べて、第1絶縁体150と第2絶縁体160とが対向する面の表面積を凹凸151,166の分だけ大きくできる。
第1絶縁体150の小径部57から脚部58までの外周面と、第2絶縁体160の内周面とは、適度の隙間をあけて対向している。その隙間に、第1絶縁体150及び第2絶縁体160に接触する充填層170が配置されている。
位置P1,P2,P3,P4は、軸線Oを含む断面(図4)における各部の軸方向の位置を示している。凹凸151,166は、先端の位置P1と後端の位置P2との間に設けられる。位置P1は、段部162にパッキン80が接触する接触面の先端側(図4下側)の縁の位置P3と第2絶縁体160の先端の位置(内縁163aの位置)との間に存在する。第2絶縁体160は、後端面164の内縁165が、位置P3から位置P4までの間に存在する。
スパークプラグ140は凹凸151,166及び充填層170が設けられているので、第3実施の形態と同様に、第1絶縁体150の脚部58の熱を主体金具20へ放出させ易くできる。凹凸151,166は軸方向に対向する面を有しているので、凹凸がかみ合いを有しない場合(図3参照)に比べて、凹凸151,166間の隙間を小さくできる。凹凸151,166間の充填層170の厚さを薄くできるので、充填層170に要するコストを削減できる。充填層170の厚さを薄くできるので、熱伝導率の比較的小さい充填層170を用いたとしても、第1絶縁体150から第2絶縁体200への熱の移動に与える影響を小さくできる。
次に図5を参照して第4実施の形態について説明する。第1実施の形態から第3実施の形態では、凹凸59,111,151,66,126,166の先端側の位置P1が、パッキン80の位置P3よりも第2絶縁体60,120,160,200の先端側に存在する場合について説明した。これに対し第4実施の形態では、凹凸193,204がパッキン80の位置P3よりも第2絶縁体200の後端側に位置する場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第4実施の形態におけるスパークプラグ180の断面図である。
図5に示すようにスパークプラグ180は、主体金具20に対して中心電極70を絶縁保持する第1絶縁体190及び第2絶縁体200を備えている。第2絶縁体200は、環状部201と筒状部203との境界に形成された段部202が、パッキン80を介して主体金具20の棚部27に支持される。環状部201は円環状に形成されており、筒状部203は、外径が、段部202の分だけ環状部201の外径よりも小さい円筒状に形成されている。
第2絶縁体200は、後端面204が、軸線Oを中心とする同心円状の複数の環が段状に連接された形状を有している。後端面204は、複数の環(段)の軸方向の位置が、軸線Oへ向かうにつれて先端側(図5下側)へ位置する。段状に形成された後端面204は凹凸を兼ねる。軸線Oを含む断面(図5)において、後端面204の内縁205と筒状部203の内縁203aとを結ぶ直線は、軸線Oに平行である。
第1絶縁体190は、筒部54に連接される大径部191と、大径部191よりも外径が小さい脚部192とを備えている。脚部192は、当接面193の分だけ大径部191の外径よりも小さい円筒状に形成されている。当接面193は、第2絶縁体200の後端面204に対応する面であり、軸線Oを中心とする同心円状の複数の環が段状に連接された形状を有している。当接面193は、複数の環(段)の軸方向の位置が、軸線Oへ向かうにつれて先端側(図5下側)へ位置する。段状の当接面103は凹凸を兼ねる。
後端面204及び当接面193に凹凸が形成されているので、凹凸が形成されておらずに後端面および当接面が平坦な面である場合に比べて、後端面204及び当接面193の表面積を大きくできる。その結果、第1絶縁体190と第2絶縁体200とが対向する面の表面積を凹凸の分だけ大きくできる。これにより、第1絶縁体190から第2絶縁体200へ熱を移動させ易くできる。
位置P1,P2,P3,P4は、軸線Oを含む断面(図5)における各部の軸方向の位置を示している。凹凸(当接面193及び後端面204)の先端の位置P1及び後端の位置P2は、段部202にパッキン80が接触する接触面の先端側(図5下側)の縁の位置P3と位置P4との間に存在する。スパークプラグ180は当接面193及び後端面204が凹凸を兼ねるので、第1実施の形態と同様に、第1絶縁体190の脚部58の熱を主体金具20へ放出させ易くできる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。この実施例では第1実施の形態で説明したスパークプラグ10(図2参照)を参考にして、凹凸59,66の位置を異ならせた種々のサンプルを作成し、熱の放出を調べた。
(実施例1)
第1絶縁体50及び第2絶縁体60は、第2絶縁体60の先端の内縁63aからパッキン80の位置P3までの軸方向の長さを6mm、パッキン80の位置P3から第2絶縁体60の後端面64までの軸方向の長さを6mm、第2絶縁体60の後端面64から鍔部72の位置P4までの軸方向の長さを2mmとした。ねじ状の凹凸59,66を、第2絶縁体60の先端の内縁63aからパッキン80の位置P3までの間に設け、実施例1におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(実施例2)
パッキン80の位置P3と重複するようにパッキン80の径方向の内側に凹凸59,66を設けた以外は実施例1と同様にして、実施例2におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(実施例3)
パッキン80の位置P3から第2絶縁体60の後端面64までの間に凹凸59,66を設けた以外は実施例1と同様にして、実施例3におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(比較例1)
凹凸59,66を省略して、その代りに第2絶縁体60の後端面64の内縁65と先端の内縁63aとを連絡する円錐状の曲面を第2絶縁体および第1絶縁体に設けた以外は実施例1と同様にして、比較例1におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(実施例4)
凹凸59,66間に充填層を設けた以外は実施例1と同様にして、実施例4におけるスパークプラグのサンプルを得た。なお、充填層は、B2O3−SiO2系のガラス粒子とCuやFe等の金属粒子とを含む組成物を用いた。その組成物を凹凸59,66間に配置し、ガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱して充填層を形成した。充填層については実施例5,6及び比較例2において同じである。
(実施例5)
凹凸59,66間に充填層を設けた以外は実施例2と同様にして、実施例5におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(実施例6)
凹凸59,66間に充填層を設けた以外は実施例3と同様にして、実施例5におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(比較例2)
第1絶縁体および第2絶縁体が互いに対向する円錐状の曲面間に充填層を設けた以外は比較例1と同様にして、比較例2におけるスパークプラグのサンプルを得た。
(試験方法)
厚さ方向に貫通するねじ穴が形成されたアルミニウム合金製の板(図示せず)のねじ穴に、各サンプルの主体金具20のねじ部29を嵌め込み、接地電極30、第1絶縁体50の脚部58の先端側および中心電極70の先端を板から突出させた。中心電極70の先端の温度が800℃になるように、中心電極70の先端をバーナで加熱した。中心電極70の先端の温度が800℃になったときの、第1絶縁体50の脚部58(先端から軸方向に1mm離れた地点)の温度を測定した。
(結果)
図6(a)は実施例1〜3におけるスパークプラグの試験結果を示す図であり、図6(b)は実施例4〜6におけるスパークプラグの試験結果を示す図である。縦軸は第1絶縁体の先端の温度(℃)である。図6(a)に示すように、実施例1〜3は比較例1に比べて、第1絶縁体の温度を低くできることがわかった。第1絶縁体と第2絶縁体との間に凹凸を設けることによって、第1絶縁体の先端の熱を主体金具へ逃し易くできることが確認された。
実施例1,2と実施例3とを比較すると、パッキン80の位置P3よりも第2絶縁体60の後端側に凹凸を設けるのではなく、パッキン80の位置P3から第2絶縁体60の先端までの間に凹凸を設けるのが好ましいことがわかった。特に実施例2のように、パッキン80の位置P3と重複するように凹凸を設けるのが良いことがわかった。凹凸から第2絶縁体60へ伝えた熱をパッキン80から主体金具20へ逃し易くできるからである。
図6(b)に示すように、充填層を設けた場合も、実施例4〜6は比較例2に比べて温度を低くできることがわかった。図6(a)と図6(b)とを比較すると、実施例4は実施例1に比べて温度を低くできることがわかった。同様に、実施例5,6は実施例2,3に比べて温度を低くできることがわかった。充填層を設けることによって、第1絶縁体と第2絶縁体との間の熱伝導率を向上できることが確認された。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば主体金具20や接地電極30の形状は一例であり、適宜設定できる。同様に、第1絶縁体50及び第2絶縁体60の形状や大きさ、凹凸59,66,111,126,151,166,193,204の形状や大きさ等は一例であり、適宜設定できる。
上記各実施の形態では、凹凸59,66,111,126,151,166,193,204が周方向に連続する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1絶縁体50,110,150,190の凹凸と第2絶縁体60,120,160,200の凹凸とを互いに対向させれば良いので、周方向の複数箇所に適当な間隔をあけて、互いに対向する位置に凹凸を設けることは当然可能である。
上記各実施の形態では、接地電極30及び中心電極70にそれぞれチップ42,74を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、チップ42,74を省略することは当然可能である。
上記各実施の形態では、抵抗体93が内蔵されるスパークプラグ10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、抵抗体93を省略することは当然可能である。この場合には、端子金具90と中心電極70とをガラスシール94で接合する。
上記各実施の形態では、リング部材96及び粉末層97を介して主体金具20の端部21が第1絶縁体50を加締める場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。リング部材96及び粉末層97を省略して、主体金具20の端部21を第1絶縁体50の突出部53に加締めることは当然可能である。
第4実施の形態では説明を省略したが、後端面204(凹凸)と当接面193(凹凸)との間に充填層を設けることは当然可能である。充填層を設けることによって、第1絶縁体190と第2絶縁体200との間の熱の伝達性能を向上できる。同様に、第1実施の形態の凹凸59,66間に充填層を設けることは当然可能である。