JP2020086033A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】結着樹脂として、ポリエステル樹脂セグメントと、付加重合樹脂セグメントとを有する複合樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂セグメントが、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、前記付加重合樹脂セグメントが、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物を含む原料モノマーの付加重合物であり、前記複合樹脂原料中のシリコーン化合物の含有量が0.5質量%以上8質量%以下である、静電荷像現像用トナー。
【選択図】なし
Description
更に、近年、高い画像濃度が求められ、トナー中の顔料分散性の向上が求められている。
本発明は、低温定着性、耐ホットオフセット性及び顔料分散性に優れる静電荷像現像用トナーに関する。
〔1〕 結着樹脂として、ポリエステル樹脂セグメントと、付加重合樹脂セグメントとを有する複合樹脂を含有し、前記ポリエステル樹脂セグメントが、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、前記付加重合樹脂セグメントが、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物を含む原料モノマーの付加重合物であり、前記複合樹脂原料中のシリコーン化合物の含有量が0.5質量%以上8質量%以下である、静電荷像現像用トナー。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、上記〔1〕の構成を有することにより、低温定着性、耐ホットオフセット性及び顔料分散性に優れる。
上記の効果が得られる理由は明確ではないが、以下のように推定される。すなわち、結着樹脂が、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物に由来する構成単位を特定量含有することにより、疎水性が高く、表面自由エネルギーが低いシリコーン鎖部分がトナー表面に偏在することとなり、その結果、トナーの離型性が向上し、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立が可能となったものと考えられる。
また、シリコーン化合物に由来する構成単位を含む付加重合樹脂セグメントは、疎水性が高く、顔料分散性にも優れるトナーが得られたものと考えられる。
更に、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物により、ポリオルガノシロキサン鎖が導入されるため、両末端カルビノール変性シリコーンによって主鎖にブロック的に導入される場合と異なり、グラフト的にポリオルガノシロキサン鎖が導入される。そのため、よりポリオルガノシロキサン鎖による効果が発揮されやすいと考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶性樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満、好ましくは1.5以上、又は0.5以下、より好ましくは1.6以上、又は0.5以下の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性指数は、実施例に記載の樹脂の軟化点と吸熱の最高ピーク温度の測定方法により得られた値から算出することができる。
明細書中、カルボン酸化合物とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる意味である。
ビスフェノールAは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。
明細書中、単に「結着樹脂」とは、複合樹脂を含むトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂として、ポリエステル樹脂セグメントと、付加重合樹脂セグメントとを有する複合樹脂(以下、「複合樹脂(A)」ともいう。)を含有する。
ポリエステル樹脂セグメントは、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、ポリエステル樹脂の一部が、他の分子団と結合する樹脂のセグメントである。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
アルコール成分としては、低温定着性を向上させる観点からは、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物が好ましく、より好ましくは式(I):
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立にエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を含むことが好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。
アルコール成分として、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を使用する場合、その含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、より更に好ましくは100モル%である。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、カルボン酸成分は、印刷耐久性をより向上させる観点から、好ましくは、芳香族ジカルボン酸化合物を含む。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中では、低温定着性の観点から、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、テレフタル酸が更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、そして、好ましくは95モル%以下である。
炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸は、好ましくは炭素数6以上14以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸であり、より好ましくは炭素数8以上12以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸である。具体的には、オクチルコハク酸やドデセニルコハク酸(テトラプロペニルコハク酸)等が挙げられる。
これらの中でも、フマル酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
アルコール成分は1価のアルコールを、カルボン酸成分は1価のカルボン酸化合物を、適宜含有してもよい。
ポリエステル樹脂の原料(アルコール成分及びカルボン酸成分)におけるCOOH基とOH基の当量比は、得られるポリエステル樹脂の軟化点を高める観点からは、COOH基が過剰(上記比〔COOH基/OH基〕が1.0超えである)であることが好ましい。また、得られるポリエステル樹脂の軟化点を低下させる観点からは、OH基が過剰(上記比〔COOH基/OH基〕が1.0未満である)であることが好ましい。
付加重合樹脂セグメントは、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物(以下、単に「シリコーン化合物」ともいう。)を含む原料モノマーの付加重合物である。
(エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物)
シリコーン化合物は、低温定着性、耐オフセット性、及び顔料分散性に優れる静電荷像現像用トナーを得る観点から、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する。エチレン性不飽和基は、オルガノポリシロキサンからなる主鎖中に有していても、側鎖中に有していてもよく、また、主鎖又は側鎖の末端に有していてもよく、特に限定されないが、入手容易性及び反応性の観点から、側鎖又は主鎖末端にエチレン性不飽和基を有することが好ましく、主鎖末端に有することがより好ましい。すなわち、シリコーン化合物は、主鎖末端の片末端又は両末端にエチレン性不飽和基を有することがより好ましく、低温定着性、耐オフセット性及び顔料分散性により優れるトナーを得る観点から、エチレン性不飽和基を主鎖の片末端に有することが更に好ましい。
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上5以下の炭化水素基である。
式(2)中、R1は、炭素数1以上10以下のアルキレン基を示し、R2は、水素原子又は炭素数1以上5以下の炭化水素基であり、*は結合位置である。
Rの炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基がより好ましい。
式(2)中、R2の炭化水素基の炭素数は、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1である。
R2の炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基がより好ましい。R2としては、水素原子又はメチル基が更に好ましく、メチル基がより更に好ましい。すなわち、シリコーン化合物は、主鎖末端にアクリロイルオキシ基(CH2=CH−C(=O)−O−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)−C(=O)−O−)を有することが好ましく、メタクリロイルオキシ基を有することがより好ましい。
シリコーン化合物の動粘度は、全自動微量動粘度計(ビスコテック株式会社製)を用い、25℃において測定される。
なお、官能基当量とは、エチレン性不飽和基1モルあたりのシリコーン化合物の質量を意味する。
主鎖の両末端にエチレン性不飽和基としてメタクリロイルオキシ基を有するシリコーン化合物としては、「X−22−164」「X−22−164AS」「X−22−164A」「X−22−164B」「X−22−164C」「X−22−164E」(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられ、これらの中でもX−22−164Cが好ましい。また、主鎖の両末端にエチレン性不飽和基としてアクリロイルオキシ基を有するシリコーン化合物としては、「X−22−2445」(信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
複合樹脂原料中のシリコーン化合物の含有量は、上記の観点から、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上、より更に好ましくは3.5質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下である。
ここで、複合樹脂原料中のシリコーン化合物の含有量とは、複合樹脂を合成時に配合する原料中のシリコーン化合物の含有量であり、複合樹脂原料は、アルコール成分、カルボン酸成分、シリコーン化合物を含む付加重合樹脂セグメントの原料モノマー、付加重合樹脂セグメントを合成時の重合開始剤、及び後述する両反応性モノマーを含む。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマーとして、上述したシリコーン化合物に加え、その他のエチレン性不飽和化合物を含有することが好ましい。
その他のエチレン性化合物としては、低温定着性、耐オフセット性、及び顔料分散性に優れるトナーを得る観点から、スチレン系化合物を含有することが好ましい。
スチレン系化合物としては、例えば、置換又は無置換のスチレンが挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。なお、脂肪族炭化水素基は、分岐又は直鎖のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル(以下、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルともいう)、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル(以下、(メタ)アクリル酸(イソ)ラウリルともいう)、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニルが挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリル酸アルキル」とは、アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルを示す。また、アルキル部位について「(イソ)」とは、ノルマルアルキル又はイソアルキルを意味する。
複合樹脂(A)は、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを連結するため、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーのカルボキシ基、水酸基と反応し得る官能基、エチレン性不飽和基が反応した構成単位を意味する。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基又はカルボキシ基を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和化合物がより好ましい。
両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、複合樹脂(A)のポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは0.5モル部以上、より好ましくは1モル部以上、更に好ましくは3モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは10モル部以下、更に好ましくは5モル部以下である。
複合樹脂原料中のポリエステル樹脂セグメント原料の含有量は、トナーの低温定着性、耐オフセット性、及び顔料分散性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
複合樹脂原料中の両反応性モノマーの含有量は、トナーの低温定着性、耐オフセット性、及び顔料分散性をより向上させる観点から、複合樹脂(A)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
複合樹脂(A)中のポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントと、両反応性モノマー由来の構成単位の合計量は、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性、及び顔料分散性をより向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。
複合樹脂(A)の酸価は、低温定着性、耐オフセット性、及び顔料分散性に優れるトナーを得る観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。
なお、複合樹脂(A)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらのうちいずれか樹脂の酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度、及び数平均分子量の値が前述の範囲内であることが好ましく、全ての複合樹脂(A)の酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度、及び数平均分子量が上記の範囲内であることがより好ましい。
複合樹脂(A)の製造方法は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合をすること、及び付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合することとを含み、例えば、以下の(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)アルコール成分及びカルボン酸成分による重縮合の後に、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合をする方法
(ii)付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合の後に、ポリエステル樹脂セグメントの原料モノマーによる重縮合をする方法
(iii)アルコール成分及びカルボン酸成分による重縮合と付加重合樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合とを並行して行う方法
上記(i)〜(iii)の方法の重縮合及び付加重合は、いずれも、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂は、上記(i)又は(ii)の方法により製造することが、重縮合反応の反応温度の自由度が高い点から好ましく、上記(i)がより好ましい。
反応性の観点から、エステル化触媒、エステル化助触媒等の触媒を用いてもよく、更に重合開始剤及び重合禁止剤を用いてもよい。
重縮合の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは155℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。
なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
重縮合及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応を更に進める観点から、カルボン酸成分は、一部を重縮合に供し、次いで付加重合を行った後に再度反応温度を上昇させ、残部を反応系に添加することが好ましい。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
本発明のトナーは、結着樹脂として、上述した複合樹脂(A)に加えて、非晶性ポリエステル系樹脂(B)(以下、単にポリエステル樹脂(B)ともいう。)を含有することが好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂(B)としては、例えば、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル系樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物、ポリエステル樹脂セグメントとビニル系樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂又はそのウレタン変性物が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
アルコール成分としては、例えば、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
カルボン酸成分としては、例えば、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは上述の式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは35モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下である。
置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは40モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の比は、上述の複合樹脂(A)における例示と同様である。
ポリエステル系樹脂(B)の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下である。
なお、ポリエステル系樹脂(B)を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
本発明のトナーは、低温定着性、耐ホットオフセット、及び顔料分散性に優れるトナーを得る観点から、結晶性ポリエステル樹脂(C)を含有してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂(C)は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分としては、α,ω−脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω−脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω−脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、又は1,10−デカンジオールが好ましく、1,6−ヘキサンジオールがより好ましい。
アルコール成分は、α,ω−脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のα,ω−脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸、又はテトラデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、より更に好ましくは100モル%である。
結晶性ポリエステル樹脂(C)の軟化点は、耐久性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂(C)の融点は、耐久性をより向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂(C)の水酸基価は、耐久性及び低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
ワックスとしては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物又は石油系炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス等のポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、モンタンワックス等の鉱物又は石油系エステルワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系エステルワックス;ミツロウ等の動物系エステルワックスが挙げられる。
脂肪酸アミドワックスとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、炭化水素ワックス又はエステルワックスが好ましく、炭化水素ワックスがより好ましく、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスが更に好ましい。
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤、負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN−01」、「ボントロンN−04」、「ボントロンN−07」、「ボントロンN−09」、「ボントロンN−11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP−51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP−B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ−2001」、「PLZ−8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA−701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、サリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等の全てを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、その他のカラートナーのいずれであってもよい。
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
溶融混練法による粉砕トナーの場合、トナーの製造方法は、好ましくは
工程1:複合樹脂(A)を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程2:工程1で得られた溶融混練物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
工程1では、例えば、複合樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を含む結着樹脂、ワックス、荷電制御剤、並びに着色剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練することができる。
工程1では、好ましくは、上記のトナー原料を含有する混合物を80℃以上160℃以下の範囲内の温度で溶融混練してもよい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計「Q100」(ティーエイインスツルメントジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。結晶性樹脂の場合には、該ピーク温度を融点とした。
また、非晶性樹脂の場合に、ピークが観測される時はそのピークの温度を、ピークが観測されずに段差が観測される時は該段差部分の曲線の最大傾斜を示す接線と該段差の低温側のベースラインの延長線との交点の温度をガラス転移温度とした。
樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒をクロロホルムとした。
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、25℃で溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC−25JP」(アドバンテック東洋株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A−500(5.0×102)」、「A−1000」(1.01×103)、「A−2500」(2.63×103)、「A−5000」(5.97×103)、「F−1」(1.02×104)、「F−2」(1.81×104)、「F−4」(3.97×104)、「F−10」(9.64×104)、「F−20」(1.90×105)、「F−40」(4.27×105)、「F−80」(7.06×105)、「F−128」(1.09×106)(以上、東ソー株式会社製)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL+G3000HXL」(東ソー株式会社製)
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、以下の条件で測定した。
測定機:「コールターマルチサイザーII」(ベックマン・コールター株式会社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:「コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19」(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:「アイソトンII」(ベックマン・コールター株式会社製)
分散液:電解液に界面活性剤「エマルゲン109P」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物3483g、ビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.2)付加物1386g、テレフタル酸1699gを入れ、160℃まで昇温し、160℃に保持した状態で、スチレン1133g、X22−174BX(信越化学工業株式会社製シリコーン)398g、アクリル酸41g、及びジブチルパーオキシド61gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)34g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3.4gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸191gを加え、220℃で0.5時間で反応させ、その後、フラスコ内の圧力を下げ、20kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂である複合樹脂A−1を得た。物性を表1に示す。
原料組成を表1に示すように変更した以外は製造例1と同様にして、非晶性樹脂である複合樹脂A−2〜A−5、A−10を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,2−プロパンジオール(1,2−PD)2546g、テレフタル酸4004gを入れ、160℃まで昇温し、160℃に保持した状態で、スチレン635g、X22−164C(信越化学工業株式会社製シリコーン)375g、アクリル酸ブチル433g、及びジブチルパーオキシド58gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)34gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後、無水トリメリット酸450gを投入し、220℃まで昇温し、8.0kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂である複合樹脂A−6を得た。物性を表1に示す。なお、本製造条件では、アクリル酸ブチルの一部と、ポリエステル樹脂セグメント中の水酸基とが、エステル交換により複合化が行われるため、アクリル酸ブチルが両反応性モノマーとして機能する。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物4899g、テレフタル酸1162g、ドデセニル無水コハク酸375gを入れ、175℃まで昇温し、175℃に保持した状態で、スチレン1086g、X22−174ASX(信越化学工業株式会社製シリコーン)402g、アクリル酸161g、及びジブチルパーオキシド149gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間175℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)35g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸1.4gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸403gを加え、220℃で0.5時間で反応させ、その後、フラスコ内の圧力を下げ、20kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂である複合樹脂A−7を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物3483g、ビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.2)付加物1386g、テレフタル酸1699gを入れ、160℃まで昇温し、160℃に保持した状態で、スチレン1286g、2−エチルヘキシルアクリレート(2−EHA)245g、アクリル酸41g、及びジブチルパーオキシド61gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)34g、及び3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3.4gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸191gを加え、220℃で0.5時間で反応させ、その後、フラスコ内の圧力を下げ、20kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂である複合樹脂A−8を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、L−ラクチド70部(5091g)、D−ラクチド30部(2182g)、ビス(2−ヒドロキシプロピル)テレフタレート(BHPT)10部(727g)を投入し、内温を徐々に昇温し減圧条件下で脱水処理を行った。次いで、N2パージ下で更に昇温し、目視で系が均一化したことを確認した後、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)24gを系に投入して重合反応を行った。この際、系の内温が190℃を超えないように制御した。2時間の反応時間経過後、系を再び流出ラインに切り替え、減圧条件下で未反応のラクチドを除去し、重合反応を完結させ、樹脂オリゴマーを得た。その後、フラスコ中に、樹脂オリゴマーを100部(5882g)、X22−160AS(信越化学工業株式会社製)を10部(588g)投入し、内温を徐々に昇温した。系の均一化を確認した後、減圧下で脱水処理を行った。次いで更に昇温し、170℃においてジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)24gを系に投入した後、伸長剤〔イソホロンジイソシアネート(IPDI)〕9部(529g)を徐々に加えて伸長反応を行い非晶性樹脂である比較例用の複合樹脂A−9を得た。物性を表1に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのポリオキシプロピレン(2.2)付加物3891g、ビスフェノールAのポリオキシエチレン(2.2)付加物1548g、テレフタル酸1207g、ドデセニル無水コハク酸888g、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫(II)24gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で6時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸465g、220℃で0.5時間で反応させ、その後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性ポリエステル樹脂B−1を得た。物性を表1に示す。
・X22−160AS:両末端カルビノール変性ジメチルポリシロキサン、粘度(25℃)=35mm2/s、官能基当量=470g/mol、信越化学工業株式会社製
・X−22−174BX:片末端メタクリル変性ジメチルポリシロキサン、粘度(25℃)=27mm2/s、官能基当量=2,300g/mol、信越化学工業株式会社製
・X−22−164C:両末端メタクリル変性ジメチルポリシロキサン、粘度(25℃)=90mm2/s、官能基当量=2,400g/mol、信越化学工業株式会社製
・X−22−174ASX:片末端メタクリル変性ジメチルポリシロキサン、粘度=9mm2/s、官能基当量=900g/mol、信越化学工業株式会社製
複合樹脂A−1を60質量部、非晶性ポリエステル樹脂B−1を40質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E−81」(オリヱント化学工業株式会社製)0.2質量部、銅フタロシアニン顔料「ECB−301」(大日精化工業株式会社製)6質量部、及びパラフィンワックス「HNP−9」(日本精蝋株式会社製、融点:75℃)2質量部、フィッシャートロプシュワックス「FNP−0090」(日本精蝋株式会社製、融点:90℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
結着樹脂中の複合樹脂を表2のように変更した以外は、トナー製造例1と同様にして、トナー母粒子2〜10を得た。
トナー母粒子1 100質量部に、外添剤として、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)0.5質量部、及び疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、疎水化処理剤:シリコーンオイル、平均粒子径:40nm)1.0質量部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて3000r/min(周速度32m/sec)で3分間混合し、本発明のトナー1を得た。
実施例1と同様にして、トナー2〜10を得た。
未定着画像を取れるように改造した、プリンター「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。「OKI MICROLINE 3010」(株式会社沖データ製)を改造した外部定着装置を使用して、定着ロールの回転速度180mm/secにて、定着ロールの温度を100℃から230℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。
各定着温度で得られた画像を目視で観察し、ホットオフセットの有無を確認した。ホットオフセットが発生する最低の定着温度より5℃低い温度を、耐ホットオフセット性の指標とした。値が大きいほど耐ホットオフセット性に優れる。
各定着温度で得られた画像を、400gの荷重をかけた砂消しゴム(株式会社ライオン事務器製、ER−502R)で5往復擦り、擦り前後の画像濃度を画像濃度測定器「Gretag SPM50」(グレタグマクベス社製)を用いて測定し、擦り前後の画像濃度比率([擦り後の画像濃度/擦り前の画像濃度]×100)が最初に90%を超える温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。値が小さいほど低温定着性に優れる。結果を表2に示す。
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンター「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が0.35mg/cm2となるベタ画像を該A4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。
次に、上記低温定着性試験で得られた最低定着温度+10℃の温度に定着器の温度を設定し、A4縦方向に1枚あたり1.2秒の速度でトナーを定着させて、印刷物を得た。印刷物の下に上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)を30枚敷き、出力した印刷物のベタ画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、画像上の任意の10点を測定した値を平均して画像濃度とした。数値が大きいほど、画像濃度に優れる。
なお、画像濃度はトナー中の顔料分散性の指標であり、画像濃度が高いほど、トナー中の顔料分散性に優れる。
一方、付加重合樹脂セグメントが、原料モノマーとしてシリコーン化合物を含有しない比較例1では、実施例1〜7(最低定着温度140〜150℃)に比べて最低定着温度が高く(160℃)、また、耐ホットオフセット性にも劣るものであった。更に、画像濃度も低く、十分な顔料分散性が得られなかった。
更に、ポリエステル樹脂セグメントがシリコーン化合物に由来する構成単位を有しているが、その含有量が多い場合や、付加重合樹脂セグメントが原料モノマーとしてシリコーン化合物を含有しているが、その含有量が多い場合には、定着性が悪化し、定着性の評価を行うことができなかった。これは、ポリオルガノシロキサン部分の含有量が多くなり、トナー表面が疎水的になりすぎた結果、帯電不良となったためと推測される。
Claims (6)
- 結着樹脂として、ポリエステル樹脂セグメントと、付加重合樹脂セグメントとを有する複合樹脂を含有し、
前記ポリエステル樹脂セグメントが、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分との重縮合物であり、
前記付加重合樹脂セグメントが、エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物を含む原料モノマーの付加重合物であり、
前記複合樹脂原料中のシリコーン化合物の含有量が0.5質量%以上8質量%以下である、
静電荷像現像用トナー。 - 前記複合樹脂が、前記ポリエステル樹脂セグメント及び前記付加重合樹脂セグメントと、共有結合を介して結合した、両反応性モノマーに由来する構成単位とを有する複合樹脂である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記エチレン性不飽和基を有するシリコーン化合物が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有し、片末端又は両末端に下記式(2)で表される基を有する、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上5以下の炭化水素基である。
式(2)中、R1は、炭素数1以上10以下のアルキレン基を示し、R2は、水素原子又は炭素数1以上5以下の炭化水素基であり、*は結合位置である。 - 前記複合樹脂原料中の付加重合樹脂セグメント原料の含有量が、3質量%以上50質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記複合樹脂の軟化点が、90℃以上150℃以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記結着樹脂が、更に、軟化点が125℃を超え170℃以下である非晶性ポリエステル樹脂を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
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