以下、本発明に係る巻真動作の切替機構及びこの巻真動作の切替機構を備えた時計の実施形態について、図面を用いて説明する。
(実施形態1)
<巻真動作の切替機構の構成>
図1は本発明に係る実施形態1の巻真動作の切替機構1を備えた機械式時計100(以下、時計100という。)の要部の断面を示す部分破断図、図2は図1に示した時計100の分解図である。
図1に示した時計100は、円環状の胴部11と円板状の裏蓋12とで形成されたケース10の内部に、巻真20を含むムーブメント30が設けられ、胴部11には、高さ方向H及び回転方向Rに変位可能に、ベゼル40が設けられている。
なお、時計100が備えている文字板、指針、風防ガラス及びムーブメント30の実質的な構成部品(ゼンマイ、歯車輪列、調速機構、脱進機構など)等については、図1においては記載を省略している。
ベゼル40は、図2に示すように、ベゼル環41と、ベゼル受け42と、歯車受け43と、ベゼル回転車44とを備えている。
ベゼル受け42は、ケース10の内側に配置された部材であり、胴部11に沿った略円筒状に形成されている。ベゼル受け42の下端には、下端の幅よりも長く形成された抜止部材42d(後述する図4参照)が設けられている。
ベゼル受け42は、ケース10に対して、時計100の厚さ方向である高さ方向H及びベゼル受け42の周方向である回転方向Rにそれぞれ変位可能に設けられている。
図3はベゼル受け42の凹部42cと歯車受け43の突起43aとが嵌め合わされている状態を示す平面図である。ベゼル受け42には、内周縁の少なくとも1か所に、図3に示すように、半径方向の外側に凹んだ凹部42cが形成されている。この凹部42cには、後述する歯車受け43の外周縁から半径方向の外側に突出した突起43aが嵌め合わされている。この凹部42cと突起43aとの嵌め合わせにより、ベゼル受け42と歯車受け43とが一体に、回転方向Rに回転可能となっている。
ベゼル環41は、ベゼル受け42の上に配置された略円環状の部材であり、ベゼル受け42と一体に固定されていて、ベゼル受け42と共にケース10に対して高さ方向H及び回転方向Rにそれぞれ変位可能となっている。ベゼル環41の内周には、図示を省略した風防ガラスが嵌め合わされている。
ベゼル環41とベゼル受け42との固定は、ねじ止めであってもよいし、その他の固定方法による固定や、接着等の接合方法や嵌め合わせ等の結合方法による固定であってもよい。ベゼル環41は、ベゼル受け42との固定部分よりも半径方向の外側まで突出し、周方向に延びた庇状の部分を有し、この庇状の部分の下に、胴部11が配置される。
また、ベゼル環41は、ベゼル受け42との固定部分よりも半径方向の内側まで突出し、周方向に延びた庇状の部分を有する。この庇状の部分には、後述する傾斜面41a(図4参照)が全周に亘って形成されている。ベゼル受け42にも、ベゼル環41との固定部分よりも半径方向の内側に、周方向に延びた、後述する傾斜面42b(図4参照)が形成されている。
ベゼル受け42の内側には、円板状の基準板13が配置されている。基準板13の外周側の部分の上面に、円環状の歯車受け43とベゼル回転車44とが配置されている。基準板13の上面には、ムーブメント30が配置されている。ムーブメント30の上方には、図示を省略した文字板等が配置され、文字板は、ベゼル環41に嵌め合わされた風防ガラスで覆われている。
基準板13上に配置された歯車受け43は、基準板13に対して摺動可能であり、図3に示したように、突起43aがベゼル受け42の凹部42cと嵌め合わされていることで、歯車受け43はベゼル受け42と一体に回転する。
ベゼル回転車44は、歯車受け43に固定されていて、歯車受け43と一体に回転可能である。つまり、ベゼル環41、ベゼル受け42、歯車受け43及びベゼル回転車44により構成されたベゼル40は一体に回転可能であり、これらのうちベゼル環41及びベゼル受け42は、高さ方向Hにも変位可能となっている。
ベゼル回転車44は、円環の外周部が高さ方向Hの上方Uに立ち上がり、上側に歯先を有する歯車の歯44aが、全周に亘って形成されている。この歯44aは、後述する巻真20に形成された歯車23の歯23aと噛み合い、ベゼル環41の回転、すなわちベゼル回転車44の回転によって、巻真20をその軸C回りに回転させる。
図4はベゼル環41が第1の高さ方向位置にある状態での、ベゼル40及び巻真20の位置を示す要部断面図、図5はベゼル環41が第2の高さ方向位置にある状態での、ベゼル40及び巻真20の位置を示す要部断面図、図6は図5に示した状態での、巻真20及び早修正レバー35の噛み合い状態を示す要部斜視図、図7はベゼル環41が第3の高さ方向位置にある状態での、ベゼル40及び巻真20の位置を示す要部断面図、図8は図7に示した状態での、巻真20及び小鉄車39の噛み合い状態を示す要部斜視図である。
図4,5,7に示すように、ベゼル環41は、基準板13の上に配置されたムーブメント30に組み込まれた巻真20に対して、高さ方向Hの主に上方に配置され、ベゼル受け42は、基準板13の上に配置されたムーブメント30に組み込まれた巻真20に対して、高さ方向Hの主に下方に配置されている。
なお、図1,2においては、ムーブメント30として、地板31、外周板32及び巻真20を除いた、歯車輪列などの一般的にムーブメント30に配置されている部材を省略している。
そして、ベゼル環41には、巻真20よりも上方の部分に、高さ方向H及び巻真20の軸方向Cに対してそれぞれ傾斜した傾斜面41aが形成されている。傾斜面41aは、本実施形態では、高さ方向H及び軸方向Cに対してそれぞれ角度45[°]で交差する傾斜面である。
また、ベゼル受け42には、巻真20よりも下方の部分に、高さ方向H及び軸方向Cに対してそれぞれ傾斜した傾斜面42bが形成されている。傾斜面42bは、本実施形態では、高さ方向H及び軸方向Cに対してそれぞれ角度45[°]で交差する傾斜面である。
傾斜面41aと傾斜面42bとは、軸方向Cの互いに異なる位置に形成されている。傾斜面41aはベゼル環41の周方向の全周に亘って形成されている。したがって、傾斜面41aは、厳密には平面ではなく、すり鉢の斜面のように、周方向に対応した曲率を有している。傾斜面42bも同様であり、厳密には平面ではなく円錐面のように、周方向に対応した曲率を有している。
また、傾斜面41aと傾斜面42bとは、向きが反対に形成されている。つまり、図4において、傾斜面41aは左下向きであり、傾斜面42bは右上向きである。
本実施形態では、各傾斜面41a,42bは、いずれも高さ方向H及び軸方向Cに対してそれぞれ角度45[°]で交差する傾斜面としたが、高さ方向Hに対する傾斜角度と軸方向Cに対する傾斜角度とが異なっていてもよく、また、2つの傾斜面41aと傾斜面42bとで傾斜角度が異なっていてもよい。
ムーブメント30に組み込まれた巻真20は、その長手方向である軸方向Cに変位可能で、かつその軸回りに回転可能である。巻真20は、図1に示すように、全体がケース10の内側に収容されていて、ケース10よりも外側に突出していない。巻真20は、図2に示すように、軸部21と、ツヅミ車22と、歯車23と、2つの円錐台状部材24,25と、を備えている。
ツヅミ車22は、図4に示すように、軸部21に対して軸方向Cに摺動可能で、かつ軸部21に対して軸回りに変位ができないように形成されている。ツヅミ車22は、図4に示す、巻真20のベゼル環41の内周壁面との距離がC1となる第1の軸方向位置においては、右端板に形成された歯車22aが、ムーブメント30に組み込まれた、図示しない動力源であるゼンマイを巻く動作を行う丸穴車34(第1の動作部の例)と噛み合って連結される。
この状態で、巻真20が軸回りの回転方向−Pへ回転されることにより、丸穴車34が回転して、ゼンマイを巻き上げる。
また、ツヅミ車22は、図5に示す、巻真20のベゼル環41の内周壁面との距離がC2(<C1)となる外側方向Oへ変位した第2の軸方向位置においては、図示を省略したオシドリ及びカンヌキによって軸部21とは反対向き、すなわち内側方向Iに変位する。このとき、右端板の歯車22aは丸穴車34から離れる。
一方、ツヅミ車22の右端板には、周方向に角度180[°]間隔で2か所のノッチ22bが形成されていて、ノッチ22bは、巻真20の回転方向Pへの1/2回転ごとに、ムーブメント30に組み込まれた図6に示す早修正レバー35の一端部35a(第2の動作部の例)を押すように連結される。
一端部35aが、ノッチ22bによって押されることで、早修正レバー35が軸J1回りの時計回り方向R1に回転し、その回転によって早修正レバー35の他端部35bが、カレンダとなる日付が記載された日板36の歯36aを1つ押して、日板36を日付の1日分だけ回転させる。
巻真20が反対向き(回転方向−P)に回転すると、ノッチ22bは、巻真20の回転方向−Pの1/2回転ごとに、一端部35aを上述した方向とは反対方向に押すように連結される。
これにより、早修正レバー35が軸J1回りの反時計回り方向−R1に回転し、その回転によって早修正レバー35の別の部分(図示せず)が、カレンダの曜日が記載された曜板(図示せず)の歯を1つ押して、曜板を曜日の1日分だけ回転させる。
また、ツヅミ車22は、図7に示す、巻真20のベゼル環41の内周壁面との距離がC3(<C2)となる外側方向Oへ変位した第3の軸方向位置においては、さらに内側方向Iに変位する。このとき、右端板のノッチ22bは、早修正レバー35の一端部35aから離れる。
一方、図8に示すように、ツヅミ車22の左端板に形成された、歯車22cが、ムーブメント30に組み込まれた、小鉄車39(第3の動作部の例(第2の動作部の例であってもよい))と噛み合って連結される。小鉄車39は、図示しない指針(分針等)に連結されていて、この状態で、巻真20が軸回りの回転方向P,−Pへ回転されることにより、小鉄車39が回転して、指針を送ったり戻したりの指針調整の動作を行う。
歯車23は、軸部21と一体に形成され、図4に示すように、軸回りに歯23aが形成されている。歯23aは、巻真20の軸方向Cの変位可能の範囲の全域に亘って、すなわち、第1の軸方向位置(図4参照)から第3の軸方向位置(図7参照)までの範囲で、常に、ベゼル回転車44の歯44aと噛み合うように、広い歯幅に設定されている。歯23aと歯44aとは、本発明における伝達機構を形成している。
円錐台状部材24,25は、軸部21の軸心を中心とする円錐台状に形成されている。各円錐台状部材24,25は、歯車23を挟んで、ツヅミ車22とは反対側(軸方向Cの外側方向O)に設けられている。2つの円錐台状部材24,25は、各上面同士を向い合せて配置されている。
円錐台状部材24,25はそれぞれ互いに独立して、軸部21に対して軸回りに回転可能で、かつ軸部21に対して軸方向Cへの変位ができないように形成されている。したがって、円錐台状部材24の円錐面24a及び円錐台状部材25の円錐面25aは、それぞれ各別に回転可能である。
円錐台状部材24の円錐面24a及び円錐台状部材25の円錐面25aはそれぞれ、軸方向C及び高さ方向Hを含む鉛直面による断面における傾斜角度が、軸方向C及び高さ方向Hに対してそれぞれ角度45[°]で交差する面で形成されている。
そして、円錐面24aはベゼル環41に形成された傾斜面41aと互いに対向して接し、円錐面25aはベゼル受け42に形成された傾斜面42bと互いに対向して接するように形成されている。
なお、円錐面24aと傾斜面41a及び円錐面25aと傾斜面42bが完全に同時に接していると、円錐面24aと傾斜面41aとの間の摺動抵抗及び円錐面25aと傾斜面42bとの間の摺動抵抗が大きくなって、両者間の円滑な摺動が阻害されるおそれがある。
そこで、巻真20の第1の軸方向位置と第3の軸方向位置との間での軸方向Cへの変位中は、円錐面24aと傾斜面41aとの間又は円錐面25aと傾斜面42bとの間に、摺動を妨げない程度のわずかな隙間が形成されていてもよい。
各円錐面24a,25aは、軸方向C及び高さ方向Hに対してそれぞれ角度45[°]で交差する面でなくてもよく、上述したように、ベゼル環41の傾斜面41a、ベゼル受け42の傾斜面42bとそれぞれ接するように、円錐面24aは傾斜面41aの傾斜角度に対応し、円錐面25aは傾斜面42bの傾斜角度に対応したものであればよい。
本実施形態の巻真動作の切替機構1は、上述したベゼル40と、巻真20と、連動機構の一例としての2つの傾斜面41a,42b、円錐面24aを有する円錐台状部材24及び円錐面25aを有する円錐台状部材25と、伝達機構の一例としての歯23a及び歯44aとを有している。
また、傾斜面41a,42bはベゼル40に形成され、円錐面24a,25aは巻真20に形成されているため、連動機構はベゼル40と巻真20とに分担して備えられている。同様に、歯44aはベゼル40に形成され、歯23aは巻真20に形成されているため、伝達機構はベゼル40と巻真20とに分担して備えられている。
<巻真動作の切替機構の作用>
次に、本実施形態の巻真動作の切替機構の作用(動作)について説明する。
ベゼル環41及びベゼル受け42が、高さ方向Hの変位可能の範囲で、最も低い高さ位置である第1の高さ方向位置では、図4に示すように、ベゼル受け42の中間面42aが、胴部11の段付き面11aに突き当たった状態となり、このとき、ベゼル環41の外縁の底面が、胴部11の上面から隙間H1の位置となっている。
また、ベゼル40の第1の高さ方向位置においては、図4に示すように、板ばね52により、基準板13の外周面から半径方向の外側に押圧されたボール51の一部が、ボール受け53の孔から突出して、ベゼル受け42の内周面に形成された選択溝45の、高さ違いで3つ形成された溝45a,45b,45cのうち最も上側の溝45aに挿入された状態となっている。
なお、溝45a,45b,45cはそれぞれ、ベゼル受け42の内周面の全周に亘って繋がって形成されているが、板ばね52、ボール51及びボール受け53は、基準板13の外周面の例えば3箇所に設けられている。これら板ばね52、ボール51及びボール受け53は、基準板13の外周面が半径方向に凹んで形成された部分に収められ、基準板13に対して周方向に移動しないように配置されている。
また、これら板ばね52、ボール51及びボール受け53は、基準板13の周方向に、等角度間隔で配置されていることが、各板ばね52に作用するベゼル受け42からの反力を均等にする観点で好ましい。したがって、例えば3箇所の場合は角度120[°]間隔が好ましく、4箇所の場合角度90[°]間隔が好ましい。ただし、配置の制約などにより、等角度間隔に配置しなくてもよい。
板ばね52、ボール51及びボール受け53、及び選択溝45(溝45a,45b,45c)は、ベゼル40の高さ方向Hへの移動に対する節度感(クリック感)を発生させる節度感生成部を構成している。
なお、板ばね52、ボール51及びボール受け53、及び選択溝45(溝45a,45b,45c)は、必ずしも備える必要は無いが、ベゼル環41を指等で高さ方向Hに変位させたとき、ボール51が各溝45a,45b,45cに挿入されたときに節度感(クリック感)が指等に伝わるため、ベゼル環41を停止させる位置の目安とすることができ、少なくとも周方向に1つ、好ましくは周方向に3つ以上設けるとよい。
そして、ベゼル環41及びベゼル受け42が第1の高さ方向位置にあるとき、上側の傾斜面41aが円錐面24aを押し下げるように接した状態となり、これにより、巻真20は、最も内側方向Iの位置である第1の軸方向位置に変位した状態となる。つまり、ベゼル40が第1の高さ方向位置のとき、巻真20は第1の軸方向位置に配置される。
このとき、巻真20よりも下側の傾斜面42bは巻真20に対して大きく下方に下がった状態となっていて、傾斜面42bと円錐面25aとは、傾斜面42bの方向に沿ってわずかな長さしか接触していない状態となる(なお、前述したように、円錐面25aと傾斜面42bとは接触せずに僅かな隙間を有していることもある)。
そして、巻真20が第1の軸方向位置にあるときは、上述したように、ツヅミ車22が丸穴車34と噛み合った状態となり、巻真20が軸回りに回転すると、丸穴車34が回転して、ゼンマイを巻き上げる動作を行うことができる。
ここで、ベゼル環41とベゼル回転車44とは一体的に回転するため、ベゼル環41を回転方向R(図1参照)に回転させると、ベゼル環41と一体にベゼル回転車44が回転し、ベゼル回転車44に形成された歯44aと、巻真20の歯車23の歯23aとの噛み合いにより、巻真20が軸回りに回転する。
この結果、ベゼル環41を回転させる操作が入力されることにより、ゼンマイの巻上げを行うことができる。
次に、ベゼル環41が胴部11に対して高さ方向Hの上方Uに引き上げられた、高さ方向Hの変位可能の範囲で中間の高さ位置である第2の高さ方向位置においては、図5に示すように、ベゼル受け42の中間面42aが、胴部11の段付き面11aから離れ状態となり、このとき、ベゼル環41の外縁の底面が、胴部11の上面から隙間H2の位置となっている。
また、ベゼル40の第2の高さ方向位置においては、ボール51が、3つの溝45a,45b,45cのうち中間の溝45bに挿入されて配置が安定するとともに、節度感が得られる。
したがって、選択溝45、ボール51、板ばね52及びボール受け53は、節度感を生成する節度感生成部を構成している。そして、節度感の得られる高さ方向位置でベゼル40を停止させることで、ベゼルの高さ方向への停止位置を、連続的ではなく段階的に選択させることができる。
そして、ベゼル環41及びベゼル受け42が第1の高さ方向位置から第2の高さ方向位置に引き上げられたときは、下側の傾斜面42bが円錐面25aに接し、円錐面25aを上方Uに押し上げる荷重を掛ける。円錐面25aが傾斜面42bから受けた荷重は、円錐面25aに沿った荷重と軸方向Cの外側方向Oに沿った荷重との合力となるため、傾斜面42bと円錐面25aとの間で滑りが生じると共に、円錐面25aは軸方向Cの外側方向Oに変位する。
円錐台状部材25は、軸部21に対して軸方向Cに変位できないため、軸部21と一体に軸方向Cの外側方向Oに変位し、図5に示すように、巻真20は、軸方向Cの変位可能範囲の中間の位置である第2の軸方向位置に変位した状態となる。つまり、ベゼル40が第2の高さ方向位置のとき、巻真20は第2の軸方向位置に配置される。
このとき、下側の傾斜面42bと円錐面25aは、傾斜面42b方向に沿った長さの半分程度の長さが接触した状態となり、上側の傾斜面41aと円錐面24aも、傾斜面41a方向に沿った長さの半分程度の長さが接触した状態となる(なお、前述したように、円錐面24aと傾斜面41aとは接触せずに僅かな隙間を有していることもある)。
そして、巻真20が第2の軸方向位置にあるときは、上述したように、ツヅミ車22が丸穴車34から離れるとともに、図6に示すように、ツヅミ車22の右端板が、早修正レバー35の一端部35aの位置に変位する。
この状態で巻真20が軸回りに回転すると、右端板のノッチ22bが早修正レバー35の一端部35aを押し、早修正レバー35を巻真20の回転方向に対応した方向に回転させて、日板36又は曜板を回転させる動作を行うことができる。
ここで、ベゼル環41とベゼル回転車44とは一体的に回転するため、ベゼル環41を回転方向R(図1参照)に回転させると、ベゼル環41と一体にベゼル回転車44が回転し、ベゼル回転車44に形成された歯44aと、巻真20の歯車23の歯23aとの噛み合いにより、巻真20が軸回りに回転する。この結果、ベゼル環41を回転させる操作が入力されることにより、日板36又は曜板を回転させることができる。
次に、ベゼル環41が胴部11に対して高さ方向Hのさらに上方Uに引き上げられた、高さ方向Hの変位可能の範囲で最も高い位置である第3の高さ方向位置においては、図7に示すように、ベゼル受け42の下端に取り付けられた抜止部材42dが、胴部11のストッパ面11dに引っ掛かった状態となり、ベゼル受け42及びベゼル環41がそれ以上上方Uに変位するのを阻止する。このとき、ベゼル環41の外縁の底面が、胴部11の上面から隙間H3の位置となっている。
また、ベゼル40の第3の高さ方向位置においては、ボール51が、3つの溝45a,45b,45cのうち下段の溝45cに挿入されて配置が安定するとともに、クリック感が得られる。
そして、ベゼル環41及びベゼル受け42が第2の高さ方向位置から第3の高さ方向位置に引き上げられたときは、下側の傾斜面42bが円錐面25aに接した状態で、円錐面25aをさらに上方Uに押し上げる荷重を掛ける。これにより、図7に示すように、巻真20は、軸方向Cの変位可能範囲の最外側の位置である第3の軸方向位置に変位した状態となる。つまり、ベゼル40が第3の高さ方向位置のとき、巻真20は第3の軸方向位置に配置される。
このとき、下側の傾斜面42bと円錐面25aは、傾斜面42b方向に沿った長さの大部分が接触した状態となる。一方、上側の傾斜面41aと円錐面24aは、傾斜面41a方向に沿った長さのわずかな長さしか接触していない状態となる(なお、前述したように、円錐面24aと傾斜面41aとは接触せずに僅かな隙間を有していることもある)。
そして、巻真20が第3の軸方向位置にあるときは、上述したように、ツヅミ車22の右端板が早修正レバー35の一端部35aから離れるとともに、図8に示すように、ツヅミ車22の左端板に形成された歯車22cが、小鉄車39と噛み合う位置に変位する。
この状態で巻真20が軸回りに回転すると、左端板の歯車22cが小鉄車39を回転させて、分針等の指針を調整する動作を行うことができる。
ここで、ベゼル環41とベゼル回転車44とは一体的に回転するため、ベゼル環41を回転方向R(図1参照)に回転させると、ベゼル環41と一体にベゼル回転車44が回転し、ベゼル回転車44に形成された歯44aと、巻真20の歯車23の歯23aとの噛み合いにより、巻真20が軸回りに回転する。この結果、ベゼル環41を回転させる操作が入力されることにより、指針を調整することができる。
上述したベゼル環41を引き上げる操作とは反対に、ベゼル環41を、第3の高さ方向位置から第2の高さ方向位置や第1の高さ方向位置に押し下げると、上側の傾斜面41aが円錐面24aを押し下げるように接した状態となり、これにより、円錐面24aを軸方向Cの内側方向Iに移動させるように、巻真20が第3の軸方向位置から第2の軸方向位置や第1の軸方向位置に変位し、ベゼル環41の回転動作を、第2の軸方向位置に対応した日板36又は曜板の回転動作や、第1の軸方向位置に対応したゼンマイ巻上げの動作に切り替えることができる。
このように、2つの傾斜面41a,42bと円錐台状部材24,25とは、ベゼル40の第1の高さ方向位置で巻真20を第1の軸方向位置に配置させ、かつベゼル40の第2の高さ方向位置で巻真20を第2の軸方向位置に配置させるように、ベゼル40の高さ方向Hの変位に応じて巻真20を軸方向Cに変位させるため、本発明における連動機構の一例となっている。
なお、本実施形態においては、2つの傾斜面41a,42bと円錐台状部材24,25とは、ベゼル40の第1の高さ方向位置で巻真20を第1の軸方向位置に配置させ、かつベゼル40の第2の高さ方向位置で巻真20を第2の軸方向位置に配置させるだけでなく、ベゼル40の第3の高さ方向位置で巻真20を第3の軸方向位置に配置させる。
しかし、本発明における連動機構は、少なくとも、ベゼルの第1の高さ方向位置と巻真の第1の軸方向位置とを対応させ、かつベゼルの第2の高さ方向位置と巻真の第2の軸方向位置を対応させるように連動するものであればよい。
また、本実施形態におけるベゼル40の第2の高さ方向位置、巻真20の第2の軸方向位置及び第2の軸方向位置に対応した第2の動作(日板及び曜板の早送り動作)を無くして、ベゼル40の第3の高さ方向位置を第2の高さ方向位置とし、巻真20の第3の軸方向位置を第2の軸方向位置とし、第3の軸方向位置に対応した第3の動作(指針の調整動作)を第2の動作として適用することもできる。
同様に、本実施形態におけるベゼル40の第1の高さ方向位置、巻真20の第1の軸方向位置及び第1の軸方向位置に対応した第1の動作(ゼンマイ巻上げ動作)を無くして、ベゼル40の第3の高さ方向位置を第1の高さ方向位置とし、巻真20の第3の軸方向位置を第1の軸方向位置とし、第3の軸方向位置に対応した第3の動作(指針の調整動作)を第1の動作として適用することもできる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態の巻真動作の切替機構1によれば、連動機構が、ベゼル環41の高さ方向Hの変位に対応させて巻真20を軸方向Cに変位させるため、ベゼル環41の高さ方向Hの上方Uへの引き上げ動作によって、巻真20を軸方向Cの外側方向Oに変位させ、ベゼル環41の高さ方向Hの下方(上方Uの反対向き)への押し下げ動作によって、巻真20を軸方向Cの内側方向Iに変位させることができる。
したがって、巻真20の先端に、指で掴んで軸方向Cに押し引きするためのリュウズを設ける必要が無く、そのリュウズをケース10から突出させる必要もない。つまり、巻真20の全体をケース10の内部に収容した状態とすることができる。
これにより、ケース10の外部にリュウズ等巻真20に付随する部材が突出せず、時計100の外観をすっきりとしたものとすることができ、リュウズが無いことにより、時計100の外観の設計自由度を高くすることができるとともに、簡単な操作で、異なる動作を切り替えることができる。
また、本実施形態の巻真動作の切替機構1によれば、連動機構が、ベゼル環41の高さ方向Hの3つの高さ方向位置にそれぞれ対応して、巻真20を3つの軸方向位置に変位させる。そして、巻真20の3つの軸方向位置においては、巻真20はそれぞれ別の動作部と連結される。
したがって、ベゼル環41を3つの高さ方向位置のそれぞれに配置した状態で、巻真20はそれぞれ別の動作部と連結され、その状態でベゼル環41を回転させることで、伝達機構を介して巻真20を回転させ、連結した動作部をそれぞれ動作させることができる。
つまり、本実施形態の巻真動作の切替機構1によれば、巻真20による3つの異なる動作を、ベゼル環41によってそれぞれ操作することができる。そして、ベゼル環41は、巻真20の先端に従来設けられていたリュウズに比べて格段に大きい。したがって、本実施形態の時計100は、巻真に設けられていたリュウズに対して操作を行う従来の時計に比べて、巻真に連結された動作部に対する操作を、格段に容易にすることができる。
また、従来の時計はリュウズがケースの右側に突出して形成されているものが多く、したがって、時計を右手に装着した状態ではリュウズを操作し難かった。しかし、本実施形態の時計100は、左右どちら手に装着したとしても、ベゼル環41は他方の手で容易に操作することができるため、操作性を向上させることができる。
本実施形態の巻真動作の切替機構1は、巻真20の軸部21に対して、円錐台状部材24,25が回転可能に設けられている。この結果、円錐台状部材24,25の円錐面24a,25aや、これらに接する傾斜面41a,42bの、摺動による摩耗を低減することができる。
すなわち、例えばベゼル環41が時計回り方向に回転する場合、ベゼル回転車44も時計回り方向に回転する。すると、ベゼル回転車44の歯44aに噛み合った巻真20の歯車23は、ベゼル回転車44とは反対向きに回転する。すなわち、例えば図6に示す状態では、巻真20の軸部21は、回転方向−Pに回転する。
ここで、円錐台状部材24,25が、仮に軸部21に対して回転できない状態である場合は、各円錐台状部材24,25も軸部21と一体に、回転方向−Pに回転することになる。この場合、互いに接するベゼル環41の傾斜面41aと円錐台状部材24の円錐面24aとは、その接触する部分において、動く向きが互いに反対向きとなる。したがって、傾斜面41aと円錐面24aとの間で摩耗が促進され易い。
これに対して、互いに接するベゼル受け42の傾斜面42bと円錐台状部材25の円錐面25aとは、その接触する部分において、動く向きが同一向きとなる。したがって、傾斜面42bと円錐面25aとの間で摩耗が抑制され易い。
しかし、ベゼル環41の回転方向が反対向きになると、上述した動く向きに関係が逆転し、傾斜面41aと円錐面24aとは同一向きに動くため摩耗が抑制され、傾斜面42bと円錐面25aとは反対向きに動くため摩耗が促進される。
本実施形態の巻真動作の切替機構1は、巻真20の軸部21に対して、円錐台状部材24,25がそれぞれ回転可能に設けられているため、円錐台状部材24,25はベゼル環41の回転にそれぞれ連れ回る。これにより、互いに摺動する傾斜面41aと円錐面24a及び傾斜面42bと円錐面25aは、いずれも摩耗が抑制される。
本実施形態の巻真動作の切替機構1は、一方の傾斜面41aが形成されたベゼル環41と、他方の傾斜面42bが形成されたベゼル受け42とが別体であるが、一体に固定されたものである。これは、ベゼル環41とベゼル受け42とを別の成形型で製造した方が、型を簡易な構造で製造することができるとともに、ベゼル受け42を配置した状態で、巻真20を含むムーブメント30を配置し、その後に、ベゼル環41を被せる、という組み立て工程を簡単にすることができる、という理由による。
ただし、例えば3Dプリンタで製造するような場合には、ベゼル環41とベゼル受けと42とを一体に製造することもできるため、ベゼル環41とベゼル受け42とが別体で形成されたものでなくてもよい。
本実施形態の巻真動作の切替機構1は、巻真20に設けられた2つの円錐台状部材24,25を、上面同士を向い合わせた配置となっているが、これとは反対に、底面同士を向い合せた配置としてもよい。この場合、各円錐台状部材24,25の円錐面24a,25aの傾斜向きが、上述した上面同士を向い合わせた配置の場合の傾斜向きと反対になる。
したがって、2つの円錐台状部材24,25を、底面同士を向い合わせた配置としたものでは、円錐面24a,25aにそれぞれ接する、ベゼル環41の傾斜面41a及びベゼル受け42の傾斜面42bの傾斜向きも、円錐面24a,25aの傾斜向きに対応させて反対向きにすればよい。
また、本実施形態の巻真動作の切替機構1は、円錐台状部材24の円錐面24aに、ベゼル環41の傾斜面41aを上方から接するように、かつ、円錐台状部材25の円錐面25aに、ベゼル受け42の傾斜面42bを下方から接する構成としたが、円錐台状部材24の円錐面24aに、ベゼル受け42の傾斜面42bを下方から接するように、かつ、円錐台状部材25の円錐面25aに、ベゼル環41の傾斜面41aを上方から接する構成としてもよい。
また、本実施形態の巻真動作の切替機構1は、2つの円錐面24a,25aに対して、上方からの傾斜面41aと下方からの傾斜面42bとで挟む配置としているため、例えば、ベゼル環41を上方Uに引き上げて、下方の傾斜面42bが円錐面25aを上方Uに押圧することにより軸部21に曲げモーメントが作用し、その曲げモーメントにより軸部21が仮に上方Uに僅かに撓んだとしても、その撓みにより、円錐面24aが上方の傾斜面41aに接することで、軸部21の撓みは止められ、軸部21が過度に撓むのを防止することができる。
このことは、ベゼル環41を下方に押し下げて、上方の傾斜面41aが円錐面24aを下方に押圧することにより軸部21に曲げモーメントが作用し、その曲げモーメントにより軸部21が仮に下方に僅かに撓んだ場合も同様であり、その撓みにより、円錐面25aが下方の傾斜面42bに接することで、軸部21の撓みは止められ、軸部21が過度に撓むのを防止することができる。
(実施形態2)
実施形態1の巻真動作の切替機構は、巻真20に形成された円錐台状部材24,25の全周に形成された円錐面24a,25aが、ベゼル40に形成された傾斜面41a,42bとそれぞれ接するように構成されたものであり、2つの円錐面24a,25aは、軸方向C(時計100の半径方向)の異なる位置に形成されていた。
図9,10,11は、本発明に係る巻真動作の切替機構の実施形態2を示す、図4,5,7相当の断面図であり、図9はベゼル140が第1の高さ方向位置にある状態での、ベゼル140及び巻真120の位置を示す要部断面図、図10はベゼル140が第2の高さ方向位置にある状態での、ベゼル140及び巻真120の位置を示す要部断面図、図11はベゼル140が第3の高さ方向位置にある状態での、ベゼル140及び巻真120の位置を示す要部断面図である。
また、図12は図9−11に示した円錐面部材124の軸回りの回転を阻止する構造の一例を示す斜視図、図13は図12における矢印Dによる視線方向から見た図である。
図9−11に示した、本発明に係る実施形態2の巻真動作の切替機構は、実施形態1における巻真20に代えて巻真120を備え、実施形態1におけるベゼル40に代えてベゼル140を備えた以外は、実施形態1の巻真動作の切替機構と同じ構成である。
ここで、巻真120は、巻真20における2つの円錐台状部材24,25に代えて、2つの円錐面124a,124bを備えた単一の円錐面部材124を備えた点が異なる。巻真20における2つの円錐面24a,25aは、巻真20の軸方向Cの互いに異なる位置に形成されているのに対して、巻真120における2つの円錐面124a,124aは、巻真120の軸方向Cの同じ位置に形成されている。
また、円錐面24aは円錐台状部材24の軸回りの全周に亘って形成され、円錐面25aは円錐台状部材25の軸回りの全周に亘って形成されていたのに対して、円錐面124aは円錐面部材124の、軸よりも上方Uの範囲で、軸方向Cの外側方向O及び上方Uを向くように形成され、円錐面124bは円錐面部材124の、軸よりも下方の範囲で、軸方向Cの内側方向I及び下方を向くように形成されている。
そして、2つの円錐台状部材24,25は軸部21に対して回転自在であるのに対して、円錐面部材124は軸部121に対して回転できないように形成されている。したがって、円錐面124aは、常に、軸よりも上方に位置して、軸方向Cの外側方向O及び上方Uを向き、円錐面124bは、常に、軸よりも下方に位置して、軸方向Cの内側方向I及び下方を向いている。
円錐面部材124を軸回りに回転させないように回転を阻止する構造は、例えば、図12,13に示すように、円錐面部材124をムーブメント30の外周板32に、回転止めピン125で固定している。ここで、回転止めピン125は、円錐面部材124の、軸回りの回転を阻止するのみであり、円錐面部材124の、軸部121と一体的な軸方向への変位は阻止しない。つまり回転止めピン125は、軸部121と平行に配置されて、外周板32と円錐面部材124との、軸方向への相対的な変位を許容している。
一方、ベゼル140は、ベゼル40におけるベゼル環41に代えてベゼル環141を有し、ベゼル40におけるベゼル受け42に代えてベゼル受け142を有する。実施形態1のベゼル40は、ベゼル環41の傾斜面41aとベゼル受け42の傾斜面42bとが巻真20の軸方向の異なる位置に形成されているのに対して、本実施形態2のベゼル140は、ベゼル環141の傾斜面141aとベゼル受け142の傾斜面142bとが、巻真120の軸方向の、一部重なる範囲に形成されている点が相違する。
つまり、実施形態2における傾斜面141aと傾斜面142bとの間の軸方向の距離は、実施形態1における傾斜面41aと傾斜面42bとの間の軸方向の距離に比べて短い。
傾斜面141aは円錐面124aに対向する向きに形成され、傾斜面142bは円錐面124bに対向する向きに形成されている。
次に、ベゼル環141を、ベゼル140が図9に示した第1の高さ方向位置にあるときは、傾斜面141aの略全面が円錐面124aに接して、巻真120を軸方向Cの内側方向Iに移動させて第1の軸方向位置に配置する。このとき、巻真120のツヅミ車122は、丸穴車34に噛み合い、ベゼル環141を回転させることで、ベゼル回転車44、巻真120の歯車123及びツヅミ車122を介して、丸穴車34を回転させ、時計100のゼンマイを巻く動作を行うことができる。
なお、ベゼル140が第1の高さ方向位置で、かつ巻真120が第1の軸方向位置にあるときは、傾斜面142bは、僅か長さだけが円錐面124bに接する。
次に、ベゼル環141を上方Uに引き上げて、ベゼル140を図10に示した第2の高さ方向位置にすると、下側の傾斜面142bが引き上げられて、下側の円錐面124bに接して、傾斜面142bが円錐面124bに半分程度接した状態となる。このとき、円錐面部材124が軸部121を一体に軸方向Cの外側方向Oに変位し、巻真120は第2の軸方向位置に配置される。
巻真120が第2の軸方向位置に配置された状態では、ツヅミ車122が丸穴車34から離れて、早修正レバー35の一端部35aと噛み合い、ベゼル環141を回転させることで、ベゼル回転車44、巻真120の歯車123及びツヅミ車122を介して日板36を日付の1日分だけ回転させ、日付けの修正動作を行うことができる。
なお、ベゼル140が第2の高さ方向位置で、かつ巻真20が第2の軸方向位置にあるときは、傾斜面141aは、長さの半分程度が円錐面124aに接する。
次に、ベゼル環141をさらに上方Uに引き上げて、ベゼル140を図11に示した第3の高さ方向位置にすると、下側の傾斜面142bがさらに引き上げられて、下側の円錐面124bをさらに押圧して、傾斜面142bが円錐面124bの略全面に接した状態となる。このとき、円錐面部材124が軸部121を一体に軸方向Cのさらに外側方向Oに変位し、巻真120は第3の軸方向位置に配置される。
巻真120が第3の軸方向位置に配置された状態では、ツヅミ車122が早修正レバー35の一端部35aから離れて、小鉄車39と噛み合い、ベゼル環141を回転させることで、ベゼル回転車44、巻真120の歯車123及びツヅミ車122を介して小鉄車39を回転させ、時針及び分針の修正動作を行うことができる。
なお、ベゼル140が第3の高さ方向位置で、かつ巻真120が第3の軸方向位置にあるときは、傾斜面141aは、わずかな長さだけ円錐面124aに接する。
一方、ベゼル40が図11に示した第3の高さ方向位置に配置された状態から、ベゼル環141を下方に押し下げて図10に示した第2の高さ方向位置にすると、上側の傾斜面141aが下げられ、上側の円錐面124aに半分程度接した状態まで下方に押圧する。このとき、円錐面部材124が軸部121を一体に軸方向Cの内側方向Iに変位し、巻真120は第2の軸方向位置に配置され、ツヅミ車122が小鉄車39から離れて早修正レバー35の一端部35aに噛み合い、ベゼル環141を回転させることで、日付けの修正動作を行うことができる。
ベゼル40が図10に示した第2の高さ方向位置に配置された状態から、ベゼル環141をさらに下方に押し下げて図9に示した第1の高さ方向位置にすると、上側の傾斜面141aが下げられ、上側の円錐面124aに略全体が接した状態まで下方に押圧する。このとき、円錐面部材124が軸部121を一体に軸方向Cの内側方向Iにさらに変位し、巻真120は第1の軸方向位置に配置され、ツヅミ車122が早修正レバー35の一端部35aから離れて丸穴車34に噛み合い、ベゼル環141を回転させることで、時計100のゼンマイを巻く動作を行うことができる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態2巻真動作の切替機構1によれば、巻真120の先端に、指で掴んで軸方向Cに押し引きするためのリュウズを設ける必要が無く、そのリュウズをケース10から突出させる必要もない。つまり、巻真120の全体をケース10の内部に収容した状態とすることができる。
これにより、ケース10の外部にリュウズ等巻真120に付随する部材が突出せず、時計100の外観をすっきりとしたものとすることができ、リュウズが無いことにより、時計100の外観の設計自由度を高くすることができるとともに、簡単な操作で、異なる動作を切り替えることができる。
また、本実施形態2の巻真動作の切替機構1によれば、連動機構が、ベゼル環141の高さ方向Hの3つの高さ方向位置にそれぞれ対応して、巻真120を3つの軸方向位置に変位させる。そして、巻真120の3つの軸方向位置においては、巻真120はそれぞれ別の動作部と連結される。
したがって、ベゼル環141を3つの高さ方向位置のそれぞれに配置した状態で、巻真120はそれぞれ別の動作部と連結され、その状態でベゼル環141を回転させることで、伝達機構を介して巻真120を回転させ、連結した動作部をそれぞれ動作させることができる。
なお、本実施形態2の円錐面部材124は、実施形態1における2つの円錐台状部材24,25に比べて、巻真120の軸方向の長さを短くすることができる。したがって、巻真120の軸部121の長さを軸部21よりも短くすることができ、時計100のサイズ(直径)をより小さくすることもできる。