JP2020084854A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】点火プラグの奥飛火の発生を精度よく検出することができる内燃機関の制御装置および制御方法を提供する。【解決手段】1次電圧検出部(51)により点火コイル装置(13)の1次コイル(131)の1次電圧を検出し、点火プラグ(12)のプラグギャップ(122)に火花放電が発生した後の1次コイル(131)の1次電圧に基づいて、点火プラグ奥飛火判定部(52)により点火プラグ(12)に奥飛火が発生しているか否かを判定する。【選択図】図3

Description

本願は、内燃機関の制御装置及び制御方法に関する。
従来から内燃機関の点火装置として、点火コイル装置により昇圧した電圧を点火プラグに供給し、内燃機関の燃焼室内に配置された点火プラグのプラグギャップ間で火花放電(ここでは絶縁破壊及びその後の放電プラズマの形成をいう)を発生させ、この火花放電が与えるエネルギーにより燃焼室内の混合気に火花点火させる点火システムが知られている。
近年では、内燃機関の燃費向上を目指したトレンドである過給器の採用による内燃機関のダウンサイジング化、高圧縮比化、更には高希釈燃焼方式の採用等のために、点火システムに求められる要求が高機能化している。つまり、過給器の採用によりダウンサイジングした内燃機関、或いは高圧縮比を採用した内燃機関に於いては、火花点火時の筒内圧が通常の内燃機関に比べると大幅に高くなる傾向があり、その結果、点火プラグの絶縁破壊電圧も高くなるため、点火コイル装置の出力エネルギーの増大が求められると共に、点火コイル装置及び点火プラグの高耐電圧化への要求が増大している。
ここで、高希釈燃焼とは高濃度に排気ガス再循環(EGR)をさせた燃焼のことであり、高希薄燃焼とは、高リーンバーン状態での燃焼のことである。このような高希釈燃焼や高希薄燃焼に於ける混合気は、一般的に安定燃焼領域が狭く、これを安定して燃焼させるためには、点火コイル装置の出力エネルギーを増大させること、点火プラグの放電期間を長くすること、混合気の筒内流動を強くすること、等の実施が有効であること知られている。
このような点火装置に用いられる点火プラグは、筒状の取付金具に保持された碍子と、この碍子の内部に保持され先端部が碍子の先端から突出する中心電極と、この中心電極に対し所定のプラグギャップを隔てて対向する接地電極とを備えている。中心電極と接地電極は、碍子により電気的に絶縁されている。イグニッションコイルにて発生した高電圧を中心電極と接地電極との間に印加することにより、中心電極と接地電極との間に火花放電が発生する構造となっている。
周知のように、点火プラグの電極は火花放電により消耗するが、点火エネルギーの増大は点火プラグの電極の消耗への影響が大きくなる。そして、長時間の使用等により、点火プラグの電極間の隙間であるプラグギャップが大きくなり、点火性能の悪化が生じるため、点火プラグの交換等のメンテナンスが必要になる。
また、内燃機関の運転状態によっては、点火プラグにカーボンデポジットが付着して、燻りが発生することがある。カーボンデポジットは、点火プラグ近傍の燃料濃度が濃く、且つ点火プラグの温度が低いときに、不完全燃焼で発生した煤(カーボン)が碍子に堆積して生成される。点火プラグの碍子にカーボンデポジットの堆積が進むと、点火プラグの絶縁抵抗値が低下して、碍子表面を電流がリークして、碍子と取付金具の間で火花放電が発生する、いわゆる「奥飛火(おくひか)」と称される現象が発生する。奥飛火が発生するようになると、内燃機関の燃焼室内で火炎が正常に伝播せず失火が発生する。頻繁に失火が発生するようになると、排気系へ未燃混合気が排出されて排気系の温度が上昇し、触媒が劣化し、極端な場合には触媒が溶損するおそれがあるため、そのような事態になる前に点火プラグの交換等のメンテナンスが必要になる。
前述の奥飛火は、点火プラグの電極摩耗等によりプラグギャップが拡大し、要求される絶縁破壊電圧が高くなるような状態に於いても発生する現象である。これはプラグギャップの拡大によりプラグギャップ間の絶縁抵抗値が高くなり絶縁破壊が発生しにくくなるためである。後述のパッシェンの法則からも筒内圧力の高い運転条件の方が絶縁破壊電圧が高くなるため、奥飛火が発生しやすくなる傾向が確認されている。
特許文献1では、点火コイル装置の1次コイルに発生する起電力から放電時間を計測し、その放電時間からプラグギャップを推定する技術が開示されており、特許文献2では、点火コイル装置の2次側に印加したバイアス電圧により生じる電流値から、点火プラグの絶縁抵抗値を算出して点火プラグの燻り状態を判定する技術が開示されている。
特許第3709119号公報 特許第4859990号公報
特許文献1に開示された従来の技術では、点火動作の回数に基づいて点火プラグの電極消耗量を推定することができるとされるが、点火コイル装置及び点火プラグの製造上のばらつきに対する影響、及び内燃機関の筒内流動状態の変動による点火コイル装置の2次電圧の変動による影響が考慮されておらず、推定精度が低下するという課題があった。また、特許文献2に開示された従来の技術では、点火コイル装置の2次側にバイアス電圧を印加する回路が必要となり、コストの増加が生じるという課題があった。
本願は、従来の技術に於ける前述のような題点を解決するための技術を開示するものであり、点火プラグの奥飛火の発生を精度よく検出することができる内燃機関の制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
本願に開示される内燃機関の制御装置は、
内燃機関の燃焼室内に配備されたプラグギャップを有する点火プラグと、
直流電源から電力が供給される1次コイル、及び前記1次コイルと磁気結合され前記1次コイルの巻数よりも多い巻数を備えた2次コイルを有する点火コイル装置と、
を備え、
前記1次コイルへの通電を遮断することにより前記2次コイルに発生した点火電圧を、前記点火プラグに印加して前記プラグギャップに火花放電を発生させ、前記燃焼室内に供給された燃料に点火するように構成された内燃機関の制御装置であって、
前記1次コイルの電圧である1次電圧を検出する1次電圧検出部と、
前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する点火プラグ奥飛火判定部と、
を備えたことを特徴とする。
また、本願に開示される内燃機関の制御方法は、
点火コイル装置の1次コイルへの通電を遮断することにより、前記1次コイルに磁気的に結合され前記点火コイル装置の2次コイルに点火電圧を発生させ、
前記2次コイルに発生した点火電圧を内燃機関の点火プラグに印加し、前記点火プラグのプラグギャップに火花放電を発生させる、
ようにした内燃機関の制御方法であって、
前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する、
ようにしたことを特徴とする。
本願に開示される内燃機関の制御装置によれば、前記1次コイルの電圧である1次電圧を検出する1次電圧検出部と、前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する点火プラグ奥飛火判定部とを備えているので、点火プラグの奥飛火の発生を精度よく検出することができる効果がある。
また、本願に開示される内燃機関の制御方法によれば、前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定するようにしているので、点火プラグの奥飛火の発生を精度よく検出することができる効果がある。
実施の形態1による内燃機関の制御装置を示す概略構成図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、点火コイル装置及び点火プラグを含む回路を概略的に示す回路図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置を示すブロック図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置のハードウェア構成を示す構成図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、点火指示信号と点火コイル装置の1次電圧と2次電圧の代表波形を示す波形図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、奥飛火の発生時の点火コイル装置の1次電圧と2次電圧の挙動を説明する説明図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、奥飛火の発生時の点火コイル装置の1次電圧と2次電圧の計測結果を示す説明図である。 点火プラグの構造を示す一部破断平面図である。 点火プラグに於ける奥飛火を示す説明図である。 実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、点火プラグ異常判定処理を示すフローチャートである。 実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、クランク角度と筒内圧力の関係を示す説明図である。
実施の形態1.
以下、実施の形態1による内燃機関の制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施の形態1による内燃機関の制御装置を示す概略構成図、図2は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、点火コイル装置及び点火プラグを含む回路を概略的に示す回路図、図3は、実施の形態1による内燃機関の制御装置を示すブロック図、図4は、実施の形態1による内燃機関の制御装置のハードウェア構成を示す構成図である。内燃機関1及びECU(Engine Control Unit)50は、車両に搭載される。内燃機関1は、車両の車輪を駆動する駆動力源となる。内燃機関1を制御する制御装置としてのECU50は、内燃機関1の動作を総合的に制御するマイクロプロセッサを備えている。
(1)内燃機関1の構成
まず、内燃機関1の構成について説明する。図1に於いて、内燃機関1は、空気と燃料の混合気を燃焼する燃焼室25を有している。燃焼室25は、シリンダ(気筒)とピストンにより構成されている。以下の説明では、燃焼室25の内部を筒内と称することもある。内燃機関1は、燃焼室25に空気を供給する吸気路23と、燃焼室25で混合気が燃焼することで発生する排気ガスを排出する排気路14とを備えている。
吸気路23の上流側には、大気から吸気路23に吸入される吸入空気の流量に応じた電気信号を出力するエアフローセンサ2が設けられている。エアフローセンサ2の下流側の吸気路23には、吸気路23を開閉する電子制御式のスロットルバルブ4が設けられている。スロットルバルブ4には、スロットルバルブ4の開度に応じた電気信号を出力するスロットル開度センサ3が設けられている。スロットルバルブ4の下流側の吸気路23の部分は、吸気マニホールド19を構成している。吸気マニホールド19の上流側の部分は、吸気脈動を抑制するサージタンク5を構成し、吸気マニホールド19の下流側の部分は、吸気ポート6を構成している。
内燃機関1は、排気路14から吸気マニホールド19に排気ガスを還流するEGR流路21と、EGR流路21を開閉する電子制御式のEGRバルブ15と、を備えている。吸気マニホールド19には、吸気マニホールド19内の気体の圧力であるマニホールド圧に応じた電気信号を出力するマニホールド圧センサ7と、吸気マニホールド19内の気体の温度であるマニホールド温度に応じた電気信号を出力するマニホールド温度センサ8と、が設けられている。
燃焼室25には、燃焼室25内に燃料を噴射する燃料供給装置としてのインジェクタ9が設けられている。インジェクタ9は、弁体が弁座から離反することにより燃焼室内へ燃料の噴射を行ない、弁体が弁座に着座することにより、燃焼室内への燃料の噴射による燃料の供給を停止することが可能なように構成されている。なお、インジェクタ9は、吸気ポート6内に燃料を噴射するように、吸気ポート6に設けられてもよい。
燃焼室25の頂部には、空気と燃料の混合気に点火する点火プラグ12が設けられている。また、点火プラグ12に点火エネルギーを供給する点火コイル装置13が設けられている。更に、燃焼室25の頂部には、吸気路23から燃焼室25内に吸入される吸入空気量を調節する吸気バルブ101と、燃焼室25内から排気路14に排出される排気ガス量を調節する排気バルブ111と、が設けられている。
吸気バルブ101には、そのバルブ開閉タイミングを可変にする吸気可変バルブタイミング機構10が設けられている。排気バルブ111には、そのバルブ開閉タイミングを可変にする排気可変バルブタイミング機構11が設けられている。吸気可変バルブタイミング機構10及び排気可変バルブタイミング機構11は、夫々、バルブの開閉タイミングの位相角を変更する電動アクチュエータ(図示せず)を有している。内燃機関1のクランク軸には、複数の歯を有する回転プレート16が設けられている。クランク角センサ17は、回転プレート16の回転に応じた電気信号を出力する。
(2)点火プラグ12及び点火コイル装置13の構成
次に、点火プラグ12及び点火コイル装置13の構成について説明する。図2に於いて、点火プラグ12は、燃焼室25の内部にプラグギャップ122が露出するように配置され、プラグギャップ122に放電プラズマを発生するように構成されている。点火プラグ12は、ラジオノイズを抑制するために、プラグギャップ122に直列接続された抵抗121を備えている。
点火コイル装置13は、直流電源20から電力が供給される1次コイル131と、1次コイル131よりも巻き数が多く、点火プラグ12に供給する高圧の点火電圧を発生させる2次コイル132とを備えている。1次コイル131と2次コイル132とは、共通の鉄心(以下、コアと称する)136に巻装されている。1次コイル131、2次コイル132、及びコア136は、昇圧トランスを構成している。点火コイル装置13は、直流電源20からの1次コイル131への通電を、オン又はオフするスイッチング素子により構成されたイグナイタ133を備えている。
また、点火コイル装置13は、1次コイル131により生じる電圧である1次電圧V1に応じた電気信号を出力する点火コイル電圧センサ134を備えている。点火コイル電圧センサ134は、1次電圧V1を、直列接続された2つの抵抗で分圧する分圧回路により構成されており、イグナイタ133に並列接続されている。2つの抵抗の接続点の分圧電圧が、ECU50に於ける演算処理装置90に入力される。
実施の形態1による内燃機関の制御装置では、1次コイル131の一端は、直流電源20の正極に接続され、1次コイル131の他端は、イグナイタ133を介して、グランド、即ち直流電源20の負極に接続されている。イグナイタ133がECU50によりオン又はオフ制御されることにより、直流電源20から1次コイル131への通電がオン又はオフされる。2次コイル132の一端は、直流電源20の正極に接続され、2次コイル132の他端は、点火プラグ12を介してグランドに接続されている。また、1次コイル131の他端は、分圧回路とされた点火コイル電圧センサ134を介してグランドに接続されている。ECU50は、イグナイタ133をオン又はオフするイグナイタ駆動回路501としてのスイッチング素子を備えており、イグナイタ駆動回路501は演算処理装置90からの指令信号により動作する。
次に、点火プラグ12の構成について説明する。図8は、点火プラグの構造を示す一部破断平面図、図9は、点火プラグに於ける奥飛火を示す説明図である。図8に於いて、点火プラグ12は、例えば、筒状の取付金具801に保持された碍子802と、この碍子802の内部に保持され、先端部が碍子802の先端から突出する中心電極803と、この中心電極803に対し所定の火花ギャップとしてのプラグギャップを隔てて対向する接地電極804とを備えている。
中心電極803と接地電極804は、碍子802によって、電気的に絶縁されている。イグニッションコイルにて発生した高電圧を中心電極803と接地電極804との間に印加することにより、中心電極803と接地電極804との間に火花放電が発生する。
点火プラグの中心電極803と接地電極804は火花放電により消耗するが、点火エネルギーの増大は、中心電極803と接地電極804電極の消耗に対する影響が大きくなるものである。そして、長時間の使用等によりプラグギャップ122が大きくなると点火性能の悪化が生じるため、点火プラグ交換等のメンテナンスが必要になる。
また、図9に示すように、内燃機関の運転状態によっては、点火プラグ12にカーボンデポジット901が付着して燻りが発生することがある。カーボンデポジット901は、点火プラグ12の近傍の燃料濃度が濃く、かつ点火プラグ12の温度が低いときに、不完全燃焼で発生した煤(カーボン)が碍子802に堆積して生成される。碍子802にカーボンデポジット901の堆積が進むと、点火プラグ12の絶縁抵抗値が低下して、碍子802の表面を電流902がリークして、碍子と取付金具の間で火花放電903が発生、いわゆる奥飛火が発生する。奥飛火が発生するようになると、内燃機関1の燃焼室25の内部で火炎が正常に伝播せず失火が発生する。頻繁に失火が起こるようになると、排気系へ未燃混合気が排出されて排気系の温度が上昇し、触媒が劣化し、極端な場合には触媒が溶損するおそれがあるため、その前に点火プラグ交換等のメンテナンスが必要になる。
(3)ECU50の構成とその動作
次に、ECU50について説明する。ECU50は、内燃機関1を制御対象とする制御装置である。図3に示すように、ECU50は、1次電圧検出部51、点火プラグ奥飛火判定部52、点火プラグ異常判定部53を備えている。1次電圧検出部51、点火プラグ奥飛火判定部52、点火プラグ異常判定部53は、ECU50が備えた処理回路により実現される。
具体的には、図4に示すように、ECU50に設けられた処理回路は、コンピュータとしてのCPU(Central Processing Unit)で構成される演算処理装置90、演算処理装置90とデータのやり取りを行う第1の記憶装置911、第2の記憶装置912、演算処理装置90に外部の信号を入力する入力回路92、演算処理装置90から外部に信号を出力する出力回路93により構成されている。
演算処理装置90は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、IC(Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、及び各種の論理回路等を備えていてもよい。なお、演算処理装置90は、同じ種類の複数個の演算処理装置により構成され、又は異なる種類の複数個の演算処理装置により構成され、これ等の複数個の演算処理装置により処理が分担して実行されるように構成されていてもよい。
第1の記憶装置911は、演算処理装置90からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(Random Access Memory)により構成されている。第2の記憶装置912は、演算処理装置90からデータを読み出し可能に構成されたROM(Read Only Memory)により構成されている。入力回路92は、後述の各種のセンサ及びスイッチが接続され、これらのセンサ及びスイッチからのアナログ信号をデジタル信号に変換して演算処理装置90に入力するA/D変換器を備えている。出力回路93は、後述する各種の電気負荷が接続され、これらの電気負荷に演算処理装置90からの制御信号を出力する駆動回路を備えている。
そして、ECU50が備える前述の1次電圧検出部51、点火プラグ奥飛火判定部52、点火プラグ異常判定部53の各機能は、演算処理装置90が、ROMからなる第2の記憶装置912に記憶されたソフトウェアからなるプログラムを実行し、第1の記憶装置911、入力回路92、及び出力回路93等のECU50等の他のハードウェアと協働することにより実現される。なお、1次電圧検出部51、点火プラグ奥飛火判定部52、点火プラグ異常判定部53が用いるマップデータ、及び判定値等の設定データは、ソフトウェア(プログラム)の一部として、ROMからなる第2の記憶装置912に記憶されている。
実施の形態1による内燃機関の制御装置では、入力回路92には、エアフローセンサ2、スロットル開度センサ3、マニホールド圧センサ7、マニホールド温度センサ8、クランク角センサ17、大気圧センサ18、点火コイル電圧センサ134、アクセルポジションセンサ26等が接続されている。出力回路93には、スロットルバルブ4、インジェクタ9、吸気可変バルブタイミング機構10、排気可変バルブタイミング機構11、点火コイル装置13、及びEGRバルブ15等が接続されている。なお、ECU50には、図示していないその他の各種のセンサ、スイッチ、及びアクチュエータ等が接続されている。
ECU50は、前述の各種のセンサの出力信号等に基づいて内燃機関1及び車両の各種の運転状態を検出する。例えば、ECU50は、クランク角センサ17等の出力信号に基づいて内燃機関の回転速度及びクランク角度を検出する。ECU50は、エアフローセンサ2、マニホールド圧センサ7等の出力信号に基づいて内燃機関の吸入空気量、充填効率、EGR率等を算出する。
ECU50は、基本的な制御として、検出した運転状態に基づいて、燃料噴射量、点火時期等を算出し、インジェクタ9及び点火コイル装置13等を駆動制御する。更に、ECU50は、アクセルポジションセンサ26の出力信号等に基づいて、運転者が要求している内燃機関1の出力トルクを算出し、当該要求出力トルクを実現する目標充填効率、目標EGR率等を算出し、目標充填効率及び目標EGR率等を達成するように、スロットルバルブ4の開度、EGRバルブ15の開度、吸気可変バルブタイミング機構10、及び排気可変バルブタイミング機構11の位相角を制御する。
ECU50による点火制御に於いて、2次コイル132に高圧電圧を発生させ、点火プラグ12のプラグギャップ122に火花放電を発生させるために、直流電源20から1次コイル131に通電後にその通電を遮断する。ECU50は、1次コイル131への通電時間と、点火時期としての点火クランク角度を算出し、且つ、点火時期よりも通電時間だけ前の時点を通電開始時期として算出する。そして、通電開始時期に達すると、イグナイタ駆動回路501をオンすることでイグナイタ133をオンして1次コイル131を通電させ、点火時期に達すると、イグナイタ駆動回路501をオフすることでイグナイタ133をオフして1次コイル131への通電を遮断する。
ECU50は、前述の点火制御を行うために、内燃機関1の回転速度及び内燃機関1の吸気行程毎の新規吸入混合気の絶対量を表す指標としての充填効率等の内燃機関1の運転状態と、通電時間と、の関係が予め設定された通電時間マップを参照し、現在の回転速度及び充填効率等の運転状態に対応する通電時間を算出するように構成されてもよく、或いは、回転速度及び充填効率等の運転状態と、点火エネルギーと、の関係が予め設定された点火エネルギーマップを参照し、現在の回転速度及び充填効率等の運転状態に対応する点火エネルギーを算出し、点火エネルギーと通電時間の関係式を用いて、通電時間を算出するように構成されていてもよい。
また、ECU50は、前述の点火制御を行うために、内燃機関1の回転速度及び充填効率等の運転状態と、点火時期と、の関係が予め設定された点火時期マップを参照し、現在の回転速度及び充填効率等の運転状態に対応する点火時期を算出するように構成されてもよい。更に、ECU50は、前述の点火制御を行うために、圧力センサにより検出した筒内圧力、又はクランク角度検出情報により推定した筒内圧力、に基づいて算出した燃焼重心位置が目標クランク角度に近づくように点火時期を変更するフィードバック制御により点火時期を算出するように構成されていてもよい。
(4)内燃機関1の点火時に於ける挙動
次に、内燃機関の点火時の挙動について説明する。1次コイル131への通電開始後、1次コイル131に流れる1次電流I1は次第に増加していく。1次電流I1の大きさに応じた磁気エネルギーが、コア136に蓄えられる。その後、1次コイル131への通電が遮断されると、1次電流I1はゼロになり、コア136に蓄えられていた磁気エネルギーにより、2次コイル132の電圧が上昇し、プラグギャップ122に印加される電圧を上昇させる。プラグギャップ122に印加される電圧が、プラグギャップ122の絶縁破壊電圧を上回る点火電圧に達すると、プラグギャップ122に火花放電が発生する。
ここで、火花放電とは、プラグギャップ122に於ける絶縁破壊、及びその絶縁破壊後にプラグギャップ122に生じるグロー放電又はアーク放電による放電現象全般を意味するものとする。グロー放電又はアーク放電に於ける放電経路として生じるプラズマを放電プラズマと称することとする。プラグギャップ122に発生した火花放電により生じた放電プラズマを介して、プラグギャップ122は電気的に導通し、2次コイル132に2次電流I2が流れ、プラグギャップ122に放出されるエネルギーにより燃焼室25内の混合気が点火される。
(5)パッシェンの法則
絶縁破壊電圧Vと点火プラグ周辺の雰囲気のガス圧力Pと電極間距離dの関係は、一般にパッシェンの法則にて示されており、絶縁破壊電圧Vはガス圧力Pと電極間距離dとの積の関数であることが知られている。その関係式は、[V=f(P・d)]で表わされる。
(6)ECU50の構成と動作
次に、ECU50の構成と動作について詳細に説明する。図3に於いて、1次電圧検出部51は、点火コイル電圧センサ134の出力の周期的なサンプリングを行う。サンプリング周期は、ECU50に使用されている演算処理装置90、及び周辺回路等の性能によっても異なるが、点火コイル装置13の1次コイル131の通電を遮断してから点火プラグ12での火花放電が発生するまでの期間の電圧挙動を検出する必要があるため、例えば1[μsec]のような高速のサンプリング周期を必要とする。
ここで高速なサンプリング周期を必要とする理由について,更に説明する。図5は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、点火指示信号と点火コイル装置の1次電圧と2次電圧の代表波形を示す波形図である。図5に於いて、Vigは点火コイル装置13へ入力される入力信号であり、1次コイル131の通電状態を制御する信号である。図5では、時点t1に於いて、入力信号Vigは約4.5[V]から約0「V」へと変化しているが、約4.5[V]のときは1次コイル131への通電を行い、約0[V]では1次コイル131への通電を遮断する。つまり、時点t1に於いて1次コイル131への通電が遮断される。
V1は、点火コイル装置13の1次コイル131に発生する電圧であり、1次コイル131とイグナイタ133との接続ラインの電圧である。ここでは、電圧V1を1次電圧と称する。1次コイル131への電流を時点t1で遮断することにより、1次コイル131に起電力が発生して、図5に「A」で示すように、約0[V]から数百[V]まで1次電圧V1が急上昇する。入力信号Vigの点火指示の時点、即ち、入力信号Vigの電圧レベルがHレベルからLレベルに低下する時点t1から、1次コイル131の1次電圧V1が上昇を開始する時点t2までの間に、遅延時間Tdlyが生じているが、これは点火コイル装置13内のインターフェース回路、例えば、イグナイタ133、の動作遅れ時間を含む遅れ時間によるものである。
V2は、点火プラグ12の電極に印加される2次コイル132の電圧であり、点火コイル装置13の2次コイル132と点火プラグ12との接続ラインの電圧である。ここでは、電圧V2を2次電圧と称する。1次コイル131への通電が時点t1で遮断されることにより、前述したように1次コイル131に高い起電力が生じるが、1次コイル131と磁気結合された2次コイル132に於いても高い起電力が生じることになる。2次コイル132に発生する2次電圧V2は、1次コイル131の巻数に対する2次コイル132の巻数の比である巻数比に影響されるものであり、1次コイル131に対して2次コイル132の巻数が大きく、つまり巻数比が大きく設定されているため、1次コイル131の1次電圧V1に比べ大きな2次電圧V2が、2次コイル132に図5に「B」に示すように発生する。
なお、2次コイル132に発生する「B」に示す大きな2次電圧V2は負電圧であるが、発生している2次電圧V2の絶対値が大きいことより、ここでは「大きな電圧」と表現している。2次電圧V2は、点火プラグ12のプラグギャップ122に於ける絶縁破壊電圧に時点t3で到達する。これにより、プラグギャップ122に火花放電が発生し、2次電圧V2により蓄積されているエネルギーに基づく電圧が放電されるため、時点t3に於いて約0[V]に急変する。
前述の絶縁破壊電圧は、ブレイク電圧とも称され、図5にはVbrkで表示している。点火指示が与えられた時点t1からプラグギャップ122に絶縁破壊が発生する時点t3までの時間を、図5ではブレイク時間Tbrkとして表示している。図5に於いては、遅延時間Tdlyが約37[μsec]であり、絶縁破壊電圧Vbrkが発生するまでの時間が約62[μsec]であり、電圧挙動の変化か生じ始めてからブレイクするまでは約25[μsec]しかなく、この間の電圧挙動の検出を行うには高速なサンプリング周期、例えば、1[μsec]程度のサンプリング周期が必要になる。
ここで、1次電圧V1の挙動について説明する。1次コイル131への通電を遮断することにより急激な電流変化が発生し、1次コイル131に起電力が生じる。これは一般に自己誘導起電力と呼ばれるものであり、遅延時間Tdlyを経過した時点t2の直後に、図5に「A」で示すように1次電圧V1が急上昇するのは、その1次コイル131の自己誘導起電力に基づくものである。
1次コイル131のみであれば、その上昇した1次電圧V1は時間の経過に伴い低下するのみであるが、図5に「C」で示すように、50[μsec]付近で一旦低下していた1次電圧V1が再度上昇を始める。これは、2次コイル132に於いて生じている起電力の影響を受けたものであり、磁気結合された1次コイル131と2次コイル132からなる2つのコイルに働く相互誘導作用によるものである。従って、1次電圧V1の電圧レベルにより2次電圧V2の状態を推定することが可能である。
なお、プラグギャップ122に絶縁破壊が発生した時点t3では、2次電圧V2の急変の影響により1次電圧V1の値も急激に跳ね上がるが、サンプリングタイミングによってはその跳ね上がった値を検出できる場合とできない場合が生じ、絶縁破壊が発生した時点t3での1次電圧V1のレベルのばらつきが大きくなるため、1次電圧V1の電圧レベルから2次電圧V2が絶縁破壊電圧Vbrkに達する傾向を確認するためには、絶縁破壊が発生する時点t3の少し前の時点t31でのサンプリング値、例えば、絶縁破壊電圧の推定に影響の生じない最少範囲に於けるn回前のサンプリング値Vbrk1を、2次電圧V2に於ける絶縁破壊電圧Vbrkを推定するための1次電圧V1の値であるとして考える。
また、例えば、n回前の1次電圧V1のサンプリング値Vbrk1のみではなく、1次電圧V1の電圧変化挙動を数回のサンプリングにより検出し、それらのサンプリング値により線形補間等を用いて算出した値を1次電圧V1のサンプリング値Vbrk1とし、この算出したサンプリング値Vbrk1により2次電圧V2に於ける絶縁破壊電圧Vbrkを推定するようにしてもよい。
実施の形態1による内燃機関の制御装置では、1次電圧検出部51に入力されるのは、1次電圧V1が分圧された点火コイル電圧センサ134の出力であり、2次電圧V2の信号ではないため、点火タイミング以降に点火コイル電圧センサ134の出力が所定値以上、例えば1次電圧V1が電源電圧の2倍に相当する電圧値以上、まで上昇し、その上昇した値から約0[V]まで低下する時点t3を絶縁破壊タイミングと考え、その絶縁破壊タイミングである時点t3に基づいて、1次電圧のサンプリング値Vbrk1及び絶縁破壊電圧Vbrkが検出され、1次電圧検出部51から出力される。
ここで図6を用いて奥飛火の発生時の1次電圧V1と2次電圧V2の波形挙動を説明する。図6は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、奥飛火の発生時の点火コイル装置の1次電圧と2次電圧の挙動を説明する説明図であって(A)は、奥飛火が発生せずに点火プラグ12のプラグギャップ122に火花放電が発生した場合を示し、(B)は、奥飛火が発生した場合を示す。
奥飛火が発生していない場合を示す図6の(A)に於いて、図5にて説明したように、点火コイル装置13へ入力される入力信号Vigの立下り時点t1の後の時点t2で1次電圧V1の上昇、及び2次電圧V2の低下が開始され、2次電圧V2が絶縁破壊電圧Vbrkに到達した時点t3にてプラグギャップ122に絶縁破壊が発生する。その後は、1次電圧V1も2次電圧V2も約0[V]となる。絶縁破壊の発生後は、2次コイル132に蓄積されている電気エネルギーが点火プラグのプラグギャップに放電され、蓄積された電気エネルギーが消費され、絶縁破壊状態の維持ができなくなると火花放電は停止する。
奥飛火が発生している図6の(B)に於いて、点火コイル装置13へ入力される入力信号Vigの立下り時点t1の後の時点t2で1次電圧V1の上昇、及び2次電圧V2の低下が開始され、2次電圧V2が絶縁破壊電圧Vbrkに到達した時点t3にてプラグギャップ122に絶縁破壊が発生し、この時点で1次電圧V1と2次電圧V2は約0[V]に急激に変動する。しかしながら、奥飛火が発生しているのでプラグギャップ122での放電状態が継続されないため、2次コイル132に蓄積された電気エネルギーが再び作用し始め、入力信号Vigの立下り後と同様に、1次電圧V1と2次電圧V2は、絶縁破壊電圧Vbrkに達してプラグギャップに絶縁破壊が発生する時点t4に至るまで再度変動する。奥飛火が断続的に発生した場合は、この1次電圧V1と2次電圧V2の変動と絶縁破壊が繰り返される。
図7は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、奥飛火の発生時の点火コイル装置の1次電圧と2次電圧の計測結果を示す説明図であって、実際の内燃機関の制御装置により、100回の計測を実施し、夫々の計測に於ける1次電圧V1と2次電圧V2の波形を重ね書きしたものである。図7の(A)は、プラグギャップがノーマルであり、且つ奥飛火が発生していない場合の1次電圧V1と2次電圧V2の波形を示し、(B)は、プレ具ギャップがノーマルよりも拡大した状態にあり、(A)の場合と同じ運転状態に於いて、奥飛火が発生していている場合の1次電圧V1と2次電圧V2の波形を示している。
図7の(A)に示す奥飛火が発生していない場合では、点火プラグ12のプラグギャップ122をノーマル時のギャップである1.0[mm]として計測を実施し、図7の(B)に示す奥飛火が発生している場合では、電極摩耗状態を模擬するために、ノーマル時には1.0[mm]である点火プラグ12のプラグギャップ122を、1.4[mm]に拡大して計測を実施している。
図7の(A)に示す奥飛火の発生がない場合でも、2次電圧V2の相互誘導作用等により1次電圧V1に少しの変動X1を生じる。また、図7の(B)に示す奥飛火が発生している場合では、奥飛火の発生後は、初回の絶縁破壊の発生時と同等のレベルで1次電圧V1の変動X2、及び2次電圧V2の変動X3が発生し、1次電圧V1と2次電圧V2の変動と絶縁破壊とが繰り返されている。
なお、図7の(B)は、前述の様に100回の計測を実施した場合の波形であるが、プラグギャップがノーマルであるときの波形と同様に、初回の絶縁破壊発生後の1次電圧V1と2次電圧V2は、約0[V]のままとなっている場合もあり、点火プラグ12のプラグギャップが拡大した状態であっても、奥飛火が発生しない場合もあることが示している。
図6及び図7に示すように、プラグギャップ122に初回の絶縁破壊が発生して燃料に点火される時点t3の後の1次電圧V1の挙動から、奥飛火が発生していることを検出することができるため、初回の絶縁破壊が発生した時点t3からの第1の所定期間Tmesに於ける1次電圧V1を計測し、この計測した1次電圧V1が所定値以上となるまでの期間Tovrが第2の所定期間Tjdg以上であれば、奥飛火が発生したと判定することが可能となる。
ここで、1次電圧V1の計測に要する第1の所定期間Tmesは、内燃機関1の運転条件等により予め設定された期間でもよく、或いは内燃機関1の運転中の計測値から算出した期間を用いてもよい。内燃機関1の運転中の計測値から第1の所定期間Tmesを算出する例として、図5に示す絶縁破壊電圧Vbrkが発生したブレイク時間Tbrkから遅延時間Tdlyを減算した時間を第1の所定期間Tmesとして算出することができる。
また、前述の1次電圧V1が所定値以上となるまでの期間Tovrを算出するための1次電圧V1の所定値についても、ブレイク時間Tbrk及び遅延時間Tdlyの計測に用いた判定値を用いてもよい。即ち、図5にて示す1次電圧V1のサンプリング値Vbrk1を用い、このサンプリング値Vbrk1に対する所定割合の値、例えばサンプリング値Vbrk1の50[%]の値を、1次電圧V1が所定値以上となる期間Tovrを算出するための1次電圧V1の所定値としてもよい。
図3に於いて、1次電圧検出部51は、点火コイル電圧センサ134からの出力信号の計測を行い、初回の絶縁破壊が発生した時点t3からの第1の所定期間Tmesと、1次電圧V1が所定値以上となる期間Tovrを出力する。点火プラグ奥飛火判定部52は、1次電圧検出部51から出力された第1の所定期間Tmesと1次電圧V1が所定値以上となる期間Tovrを用いて、点火プラグ12に於ける奥飛火の発生の有無を判定する。
即ち、点火プラグ奥飛火判定部52は、1次電圧V1が所定値以上となる期間Tovrが第2の所定期間Tjdg以上である場合に奥飛火が発生したと判定する。その判定するための第2の所定期間Tjdgは、予め設定された値でもよく、或いは、第1の所定期間Tmesに対する所定割合、例えば50[%]、の期間を判定に用いる第2の所定期間Tjdgとして設定することもできる。
点火プラグ異常判定部53は、点火プラグ奥飛火判定部52による奥飛火の発生の有無の判定結果を用いて、点火プラグ12の異常の有無を判定する。前述のように、図7の(B)に示す奥飛火が発生する点火プラグ12の状態であっても、点火毎に奥飛火が発生するのではなく、正常に点火プラグ12のプラグギャップ122に火花放電が発生する場合もある。そのため所定回数の点火に対する奥飛火発生頻度を算出し、その奥飛火発生頻度が所定値以上となった場合に、点火プラグ12に異常が生じているものと判定することにより、一過性の燻り等による低頻度な奥飛火による点火プラグ異常判定を回避することが可能となる。
(7)点火プラグの異常を判定する具体的処理
次に、以上説明した奥飛火発生の有無の判定及び点火プラグの異常の有無の判定の考え方に基づく、具体的な判定処理について説明する。図10は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、点火プラグ異常判定処理を示すフローチャートである。この処理は周期的に繰り返して行われるものである。
図10に於いて、ステップ1001では計測実行条件の判定を行う。実施の形態1では、点火コイル装置13の通電を遮断してから点火プラグに絶縁破壊による火花放電が発生するまで、及び、その後の所定期間の電圧挙動を検出する。一般に、内燃機関が運転されているときの点火タイミングは、前述の遅延時間Tdly等も考慮しているため圧縮上死点TDCよりも早い位置になる。図11は、実施の形態1による内燃機関の制御装置に於ける、クランク角度と筒内圧力の関係を示す説明図であって、同じ運転条件に於いて、燃焼させたときと、燃焼カットにより燃焼をさせなかったときの、クランク角度と、内燃機関のシリンダ内圧力である筒内圧と、の関係を示している。
燃焼時の点火タイミングは、圧縮上死点TDCに対して25[°]早い圧縮上死点前BTDCのタイミングとなっており、圧縮上死点TDC付近では燃焼による筒内圧の上昇が始まっており、圧縮上死点TDCから15[°]程度遅れたタイミングにて筒内圧はピークPを迎えている。最適な点火タイミングに対し、点火タイミングを早めていった場合には、内燃機関の熱効率が低下し、ノッキング等の悪影響も生じる。また、点火タイミングを遅らせていった場合は、十分な燃焼が行われず、内燃機関の熱効率は低下し、未燃焼ガスが排気弁から排出され排気温度及び触媒の温度を上昇させる等の悪影響が生じる。
そのため、内燃機関の燃焼運転中では最適な点火タイミングにて点火する必要があるが、図11からもわかるように、圧縮上死点TDCに対し25[°]早いタイミングでは、燃焼カット時の圧縮上死点TDCのタイミングでの筒内圧と比較しても、半分程度までしか筒内圧は上昇していない。絶縁破壊電圧は、前述のパッシェンの法則から明らかなように筒内の圧力に影響を受けるものであり、筒内圧力の低い状態では点火プラグのギャップによる絶縁破壊電圧への影響も小さいことが確認されており、プラグギャップの差による絶縁破壊電圧の差も生じにくい。
従って、点火プラグのプラグギャップに対する奥飛火の影響を確認するためには、筒内圧の高い状態での点火を行う必要があり、圧縮上死点TDCのタイミングでの点火が望ましいが、燃焼運転中であれば最適な点火タイミングではなくなり燃費悪化等の問題が生じるため、圧縮上死点TDCのタイミングでの点火は燃料カット運転中に行う必要がある。一般的には、下り坂、減速中等の内燃機関の出力を要しない運転状態では、内燃機関の燃料カットが行われる。ステップ1001では、安定した条件での計測を行うために、内燃機関の回転数、車両の速度、内燃機関の水温等の条件が所定値以上での燃料カット運転状態を判定するものである。なお、ステップ1002以降の処理中に計測実行条件が不成立となった場合は、直ちにそのステップでの処理は中断され、計測実行条件不成立として扱われる。
ステップ1002では、計測準備を行う。前述の通り、計測時の筒内圧力は高い方が望ましく、計測時の筒内圧力を上げるためには筒内への吸入空気量を増加させる必要があり、そのためにはスロットルバルブ4を開く必要がある。一般的なガソリン内燃機関を搭載した車両では、ブレーキ能力を高めるために内燃機関の負圧を利用したブレーキ倍力装置が用いられる。内燃機関の負圧を得るために、多くは吸気マニホールド19にブレーキ倍力装置がワンウェイバルブを介して接続され、減速時等に生じる内燃機関の負圧をブレーキ倍力装置に供給している。
車両の減速時に、筒内への吸入空気量を増やすためにスロットルバルブ4を開くと、ブレーキ倍力装置での負圧確保が出来ず、ブレーキ性能への影響が生じる可能性があるため、計測準備を行なうステップ1002では、減速運転になってからの所定時間はスロットルバルブ4を閉じてブレーキ倍力装置への負圧を確保した後に、筒内への吸入空気量を増加させるために開く。なお、ブレーキ倍力装置に圧力センサを設けて、ブレーキ性能に影響が生じない負圧状態になるまでスロットルバルブ4を閉じるようにしてもよい。
ステップ1003では計測処理を行う。具体的には、図3のブロック図における、1次電圧検出部51の処理が行われる。計測回数カウンタはマイコン起動時に「0」に初期化されており、このステップにて計測処理が行われる度に、「1」ずつ予め設定された値までカウントアップされる。
ステップ1004では、図3の点火プラグ奥飛火判定部52での処理である奥飛火の発生の有無についての判定が行われる。奥飛火の発生の有無の判定は、前述したように、1次電圧V1が所定値以上となる期間Tovrが第2の所定期間Tjdg以上である場合に奥飛火が発生したと判定してステップ1005に進み、奥飛火が発生していなければ処理を終了する。
ステップ1005では、図3に示す点火プラグ奥飛火判定部52での処理として、前述の1次電圧V1が所定値以上となる期間Tovrが第2の所定期間Tjdgを超えた回数を奥飛火判定回数としてカウントアップする。なお、この奥飛火判定回数カウンタは、演算処理装置90の起動時に「0」に初期化されている。
ステップ1006では、図3に示す点火プラグ異常判定部53での処理として、頻度算出のためのタイミングを判定し、計測回数が所定回数以上であれば頻度を算出する処理としてステップ1007へ進み、計測回数が所定回数未満であれば処理を終了する。ここで、所定回数とは、奥飛火発生頻度を算出する際に用いられる期間を示すものであり、例えば100サイクル期間となる「100」という値が設定されている。
ステップ1007では、図3に示す点火プラグ異常判定部53での処理である奥飛火判定頻度の算出が行われる。奥飛火判定頻度は、計測回数に対する奥飛火判定回数の比率である。奥飛火判定頻度の算出後は、計測回数カウンタと奥飛火判定回数カウンタは初期化される。
ステップ1008では、図3に示す点火プラグ異常判定部53での処理が行われる。即ち、奥飛火判定頻度と予め設定された判定値との比較が行われ、奥飛火判定頻度が所定値以上であればステップ1009に進み、奥飛火判定頻度が所定値未満であれば処理を終了する。
ステップ1009では、図3に示す点火プラグ異常判定部53での処理である点火プラグ異常判定が行われる。即ち、ステップ1008に於いて奥飛火発生頻度が所定値以上であると判定されたことを受けて、ステップ1009に於いて点火プラグ12に異常が生じているものと判定し、プラグ異常判定結果が異常状態であるとして出力される。点火プラグ異常判定部53からの出力は、他のアプリケーション処理等でのドライバーへの警告、内燃機関制御等に用いられるが、ここではその詳細な説明を省略する。
なお、点火プラグのプラグギャップの拡大による奥飛火の発生は、筒内圧が高い、つまりは内燃機関が高負荷状態にある場合の方が、そうでない場合よりも発生し易いため、点火プラグ異常判定のときには、内燃機関の運転条件を高負荷とならないように制限した範囲に制御することは有効なフェールセーフの手段である。
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
1 内燃機関、2 エアフローセンサ、3 スロットル開度センサ、
4 スロットルバルブ、5 サージタンク、6 吸気ポート、
7 マニホールド圧センサ、8 マニホールド温度センサ、9 インジェクタ、
10 吸気可変バルブタイミング機構、101 吸気バルブ、
11 排気可変バルブタイミング機構、111 排気バルブ、12 点火プラグ、
13 点火コイル装置、14 排気路、15 EGRバルブ、16 回転プレート、
17 クランク角センサ、18 大気圧センサ、19 吸気マニホールド、
20 直流電源、21 EGR流路、23 吸気路、25 燃焼室、
26 アクセルポジションセンサ、50 ECU、51 1次電圧検出部、
52 点火プラグ奥飛火判定部、53 点火プラグ異常判定部、90 演算処理装置、
911 第1の記憶装置、912 第2の記憶装置、92 入力回路、93 出力回路、121 抵抗、122 プラグギャップ、131 1次コイル、132 2次コイル、
134 点火コイル電圧センサ、136 コア、501 イグナイタ駆動回路
本願は、内燃機関の制御装置に関する。
本願は、従来の技術に於ける前述のような題点を解決するための技術を開示するものであり、点火プラグの奥飛火の発生を精度よく検出することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本願に開示される内燃機関の制御装置は、
内燃機関の燃焼室内に配備されたプラグギャップを有する点火プラグと、
直流電源から電力が供給される1次コイル、及び前記1次コイルと磁気結合され前記1次コイルの巻数よりも多い巻数を備えた2次コイルを有する点火コイル装置と、
を備え、
前記1次コイルへの通電を遮断することにより前記2次コイルに発生した点火電圧を、前記点火プラグに印加して前記プラグギャップに火花放電を発生させ、前記燃焼室内に供給された燃料に点火するように構成された内燃機関の制御装置であって、
前記1次コイルの電圧である1次電圧を検出する1次電圧検出部と、
前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する点火プラグ奥飛火判定部と、
を備え
前記内燃機関は、吸気路と、燃料の供給を停止することが可能な燃料供給装置と、を有し、
前記内燃機関が、前記燃料供給装置からの燃料の供給を停止した燃料カット運転状態にあるとき、前記内燃機関の圧縮上死点の近傍に於いて前記点火を行うように構成され、
前記吸気路は、前記吸気路を開閉するスロットルバルブを有し、
前記内燃機関が前記燃料カット運転状態に移行したときには、前記燃料カット運転状態に移行したときから所定時間経過後に、前記スロットルバルブを開いて前記燃料カット運転状態のときに前記内燃機関に吸入される空気量を増加させるように構成されている、
ことを特徴とする。
また、本願に開示される内燃機関の制御装置は、
内燃機関の燃焼室内に配備されたプラグギャップを有する点火プラグと、
直流電源から電力が供給される1次コイル、及び前記1次コイルと磁気結合され前記1次コイルの巻数よりも多い巻数を備えた2次コイルを有する点火コイル装置と、
を備え、
前記1次コイルへの通電を遮断することにより前記2次コイルに発生した点火電圧を、前記点火プラグに印加して前記プラグギャップに火花放電を発生させ、前記燃焼室内に供給された燃料に点火するように構成された内燃機関の制御装置であって、
前記1次コイルの電圧である1次電圧を検出する1次電圧検出部と、
前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する点火プラグ奥飛火判定部と、
前記点火プラグの異常を判定する点火プラグ異常判定部と、
を備え、
前記点火プラグ異常判定部は、前記点火プラグの所定回数の点火に対する前記奥飛火の発生頻度を算出し、前記算出した奥飛火の発生頻度が所定値以上となったときに、前記点火プラグに異常が生じていると判定するように構成され、
前記点火プラグ異常判定部が前記点火プラグに異常が発生していると判定したときは、前記内燃機関の高負荷運転を禁止するように構成されている、
ことを特徴とする。

Claims (8)

  1. 内燃機関の燃焼室内に配備されたプラグギャップを有する点火プラグと、
    直流電源から電力が供給される1次コイル、及び前記1次コイルと磁気結合され前記1次コイルの巻数よりも多い巻数を備えた2次コイルを有する点火コイル装置と、
    を備え、
    前記1次コイルへの通電を遮断することにより前記2次コイルに発生した点火電圧を、前記点火プラグに印加して前記プラグギャップに火花放電を発生させ、前記燃焼室内に供給された燃料に点火するように構成された内燃機関の制御装置であって、
    前記1次コイルの電圧である1次電圧を検出する1次電圧検出部と、
    前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する点火プラグ奥飛火判定部と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記内燃機関は、燃料の供給を停止することが可能な燃料供給装置を有し、
    前記内燃機関が、前記燃料供給装置からの燃料の供給停止した燃料カット運転状態にあるとき、前記内燃機関の圧縮上死点の近傍に於いて前記点火を行うように構成されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記内燃機関は、吸気路を有し、
    前記吸気路は、前記吸気路を開閉するスロットルバルブを有し、
    前記内燃機関が前記燃料カット運転状態に移行したときには、前記燃料カット運転状態に移行したときから所定時間経過後に、前記スロットルバルブを開いて前記燃料カット運転状態のときに前記内燃機関に吸入される空気量を増加させるように構成されている、
    ことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記点火プラグ奥飛火判定部は、前記火花放電の発生後に前記1次電圧が所定値以上に上昇した場合に、前記点火プラグに奥飛火が発生したと判定するように構成されている、
    ことを特徴とする請求項1から3のうちの何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記点火プラグの異常を判定する点火プラグ異常判定部を備え、
    前記点火プラグ異常判定部は、前記点火プラグの所定回数の点火に対する前記奥飛火の発生頻度を算出し、前記算出した奥飛火の発生頻度が所定値以上となったときに、前記点火プラグに異常が生じていると判定するように構成されている、
    ことを特徴とする請求項1から4のうちの何れか一項に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記点火プラグ異常判定部が前記点火プラグに異常が発生していると判定したときは、前記内燃機関の高負荷運転を禁止するように構成されている、
    ことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
  7. 点火コイル装置の1次コイルへの通電を遮断することにより、前記1次コイルに磁気的に結合された前記点火コイル装置の2次コイルに点火電圧を発生させ、
    前記2次コイルに発生した点火電圧を内燃機関の点火プラグに印加し、前記点火プラグのプラグギャップに火花放電を発生させる、
    ようにした内燃機関の制御方法であって、
    前記プラグギャップに火花放電が発生した後の前記1次コイルの電圧に基づいて、前記点火プラグに奥飛火が発生しているか否かを判定する、
    ようにしたことを特徴とする内燃機関の制御方法。
  8. 前記点火プラグの所定回数の点火に対する前記奥飛火の発生頻度を算出し、前記算出した奥飛火の発生頻度が所定値以上となったときに、前記点火プラグに異常が生じていると判定する、
    ことを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の制御方法。
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