JP2020084270A - 磁性部品の製造方法 - Google Patents

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清孝 小野寺
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Abstract

【課題】本開示は、軟磁性材料の打ち抜き加工時のプレス型の摩耗を抑制でき、かつ、優れた磁気特性を有する磁性部品を得ることができる、磁性部品の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本実施形態は、アモルファス構造を含む軟磁性材料を結晶生成開始温度以上に加熱する第一の熱処理工程と、前記軟磁性材料が結晶生成開始温度以上の状態で前記軟磁性材料に打ち抜き加工を施すプレス工程と、ここで、打ち抜き加工時の軟磁性材料の結晶化度が18%以下であり、前記軟磁性材料を結晶生成開始温度未満に冷却する冷却工程と、前記軟磁性材料を、10℃/秒以上の昇温速度で、結晶生成開始温度以上かつ化合物生成開始温度未満の温度域に昇温させて加熱する第二の熱処理工程と、を含む、磁性部品の製造方法である。【選択図】なし

Description

本開示は、磁性部品の製造方法に関する。
自動車産業においては、ハイブリッド自動車や電気自動車のさらなる走行性能の向上を目指して、駆動用モータの高出力化、軽量化、小型化への開発が日々進められている。また、家電製品メーカーにおいても、各種家電製品に内蔵されるモータ等の回転電機のさらなる小型化や高性能化が試みられている。
回転電機の性能を向上させるには、内部で発生する損失を如何に低減できるかが課題である。ステータにおいては、渦電流損失やヒステリシス損失に起因する鉄損(又は高周波鉄損)が生じ、これらの損失に応じてモータ効率やトルク性能が低下する。
そこで、ステータの性能を向上させるべく、ステータコアの材料として軟磁性材料が用いられている。軟磁性材料は、低損失、高電気抵抗、高磁束密度及び良励磁特性を有する優れた材料である。軟磁性材料の開発として、例えば、特許文献1では、所定の組成及び構造を有する軟磁性合金薄帯が開示されている。
特開2011−149045号公報
例えば、ステータコアの製造に当たっては、ステータコア前駆体としての積層体を作製した後、鉄損を低減して磁気特性(飽和磁化、保磁力等)を向上させるため、積層体を所定温度にて熱処理(焼鈍)する。より具体的には、まず、軟磁性材料からステータコア用板材を打ち抜き加工し、複数のステータコア用板材を積層し、加締め若しくは溶接にて積層体を作製する。次に、鉄損を低減して磁気特性を向上させるため、積層体を所定温度にて熱処理し、軟磁性材料の結晶化を促進させる。この熱処理により、磁気特性を向上させるとともに、プレス加工時の加工歪を除去することもでき、この熱処理は、磁気特性向上(トルク向上)の観点から不可欠である。軟磁性材料としては、アモルファス系軟磁性材料又はナノ結晶系軟磁性材料が用いられる。
しかしながら、アモルファス系軟磁性材料又はナノ結晶系軟磁性材料は非常に硬いため、打ち抜き加工を行うとプレス型の摩耗が生じてしまう。例えば、図1のグラフに示すように、アモルファス系軟磁性材料は、その硬さが600HVを超えるものがある。そのため、硬度が非常に高い超鋼(約1000HV)をプレス型に用いたとしても、アモルファス系軟磁性材料の高い硬度のため、プレス型が摩耗してしまう。ナノ結晶系軟磁性材料にも同様の問題が生じる。したがって、軟磁性材料を用いる場合、プレス型の摩耗の問題が顕著に現れ、効率的に打ち抜き加工を行うことができない。
一方で、磁気特性向上のための熱処理を行ってから、軟磁性材料をステータコア等の所望の形状に打ち抜くことも考えられ得る。しかしながら、熱処理を行って磁気特性を向上させた後の軟磁性材料は脆化してしまい、クラックが入り易くなるため、所望の形状に精密に打ち抜くことが困難になる場合がある。そのため、磁気特性向上のための熱処理前に、所望の形状に打ち抜くことが望ましい。
また、磁気特性を向上させるため軟磁性材料を熱処理する際、結晶化による発熱が生じ、軟磁性材料自身が発熱する。特に、この熱処理は、複数の軟磁性材料を積層させた状態で行うことが好ましいが、軟磁性材料の自己発熱が大きいと、熱暴走が起こり、狙い温度範囲を超えてしまう。狙い温度範囲を超えると、結晶粒の粗大化を招くことになり、所望の磁気特性を得ることができない。
そこで、本開示は、軟磁性材料の打ち抜き加工時のプレス型の摩耗を抑制でき、かつ、優れた磁気特性を有する磁性部品を得ることができる、磁性部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態を以下に示す。
(1) アモルファス構造を含む軟磁性材料を結晶生成開始温度以上に加熱する第一の熱処理工程と、
前記軟磁性材料が結晶生成開始温度以上の状態で前記軟磁性材料に打ち抜き加工を施すプレス工程と、ここで、打ち抜き加工時の軟磁性材料の結晶化度が18%以下であり、
前記軟磁性材料を結晶生成開始温度未満に冷却する冷却工程と、
前記軟磁性材料を、10℃/秒以上の昇温速度で、結晶生成開始温度以上かつ化合物生成開始温度未満の温度域に昇温させて加熱する第二の熱処理工程と、
を含む、磁性部品の製造方法。
(2) 前記軟磁性材料が、下記組成式
Fe100−x−yNi
(式中、xは、10≦x≦16[原子%]であり、yは、0<y≦4[原子%]であり、Bの一部はSi、P及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよく、ここで、Bの一部は組成全体の3原子%以下であり、Fe及びNiの一部はNb、Co、Zr、Hf、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、As、Sb、Bi、Y及び希土類元素から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよく、ここで、Fe及びNiの一部は組成全体の3原子%以下である)
で表される組成を有する、(1)に記載の製造方法。
(3) 前記打ち抜き加工時において、前記軟磁性材料が360〜420℃に加熱されている、(1)又は(2)に記載の製造方法。
本開示により、軟磁性材料の打ち抜き加工時のプレス型の摩耗を抑制でき、かつ、優れた磁気特性を有する磁性部品を得ることができる、磁性部品の製造方法を提供することができる。
アモルファス系軟磁性材料(組成:Fe84.513.5Ni)、磁気特性向上のための熱処理後のアモルファス系軟磁性材料及び電磁鋼板(組成:Fe−3mass%Si)の硬さ(HV)の例を示すグラフである。 軟磁性材料を加熱する装置の構成例を示す模式図である 実施例1〜4及び比較例1〜8について、横軸を結晶化度、左縦軸をビッカース硬さ、右縦軸を曲げRとしてデータをプロットしたグラフである。 実施例4で得られた第一の熱処理工程後の軟磁性材料の断面のTEM写真である。 比較例2で得られた第一の熱処理工程後の軟磁性材料の断面のTEM写真である。 比較例4で得られた第一の熱処理工程後の軟磁性材料の断面のTEM写真である。 実施例5〜6及び比較例9〜10について、横軸を昇温速度、縦軸を保磁力としてデータをプロットしたグラフである。
本実施形態は、アモルファス構造を含む軟磁性材料を結晶生成開始温度以上に加熱する第一の熱処理工程と、前記軟磁性材料が結晶生成開始温度以上の状態で前記軟磁性材料に打ち抜き加工を施すプレス工程と、ここで、打ち抜き加工時の軟磁性材料の結晶化度が18%以下であり、前記軟磁性材料を結晶生成開始温度未満に冷却する冷却工程と、前記軟磁性材料を、10℃/秒以上の昇温速度で、結晶生成開始温度以上かつ化合物生成開始温度未満の温度域に昇温させて加熱する第二の熱処理工程と、を含む、磁性部品の製造方法に関する。
本実施形態により、軟磁性材料の打ち抜き加工時のプレス型の摩耗を抑制でき、かつ、優れた磁気特性を有する磁性部品を得ることができる、磁性部品の製造方法を提供することができる。
以下に、本実施形態について詳細に説明する。
[準備工程]
本実施形態において、アモルファス構造を含む軟磁性材料を用意する。軟磁性材料は、好ましくは板状である。軟磁性材料としては、アモルファス系軟磁性材料又はナノ結晶系軟磁性材料が挙げられる。軟磁性材料は、複数の軟磁性材料を積層した積層体として準備してもよい。
軟磁性材料としては、例えば、Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の磁性金属と、B、C、P、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWからなる群から選択される少なくとも1種の非磁性金属とから構成されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。軟磁性材料の代表的な材料として、例えば、FeCo系合金(例えばFeCo、FeCoV等)、FeNi系合金(例えばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSi等)、FeAl系合金又はFeSi系合金(例えばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlO等)、FeTa系合金(例えばFeTa、FeTaC、FeTaN等)及びFeZr系合金(例えばFeZrN等)、FeB系合金(FeB、FeBSi等)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、軟磁性材料の他の材料として、例えば、Coと、Zr、Hf、Nb、Ta、Ti及びYのうち少なくとも1種とを含有するCo合金を用いることができる。Co合金中Coは80at%以上含まれることが好ましい。
軟磁性材料は、アモルファス構造を含む。アモルファス構造を含む軟磁性材料としては、アモルファス系軟磁性材料、又はアモルファス構造を含むナノ結晶系軟磁性材料であることが好ましい。アモルファス系軟磁性材料は、主構造としてアモルファス構造を有する軟磁性材料である。アモルファス構造の場合には、X線回折パターンには明瞭なピークは見られず、ブロードなハローパターンのみが観測される。一方、アモルファス構造に熱処理を加えることでナノ結晶構造を形成することができる。本実施形態では、完全にナノ結晶構造のみからなるナノ結晶系軟磁性材料ではなく、少なくとも一部にアモルファス構造が残っているナノ結晶系軟磁性が用いられる。なお、ナノ結晶構造を有するナノ結晶系軟磁性材料では、結晶面の格子間隔に対応する位置に回折ピークが観測される。その回折ピークの幅からScherrerの式を用いて結晶子径を算出することができる。一般に、ナノ結晶とは、X線回折の回折ピークの半値幅からScherrerの式で算出される結晶子径が1μm未満のものをいう。本実施形態において、ナノ結晶の結晶子径(X線回折の回折ピークの半値幅からScherrerの式で算出される結晶子径)は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下である。また、ナノ結晶の結晶子径は、好ましくは5nm以上である。ナノ結晶の結晶子径がこのような大きさである場合、軟磁気特性が向上するため好ましい。
アモルファス系軟磁性材料は、例えば、所望の組成となるように配合された金属原料を高周波溶解炉等により高温で溶融して均一な溶湯とし、これを急冷することで得ることができる。または、回転する冷却ロールに金属原料の溶湯を吹きつけることで薄い板状(薄帯状とも称す)のアモルファス系軟磁性材料を得ることができる。また、ナノ結晶系軟磁性材料は、アモルファス系軟磁性材料にさらに適当な熱処理を加えることで作製することができる。熱処理の条件は、特に制限されるものではなく、金属原料の組成や発現させたい磁気特性等を考慮して適宜選択される。熱処理は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
好ましく用いられる軟磁性材料は、組成式
Fe100−x−yNi
で表される組成を有するものである。
当該組成式において、xは、10≦x≦16を満たし、yは、0<y≦4を満たす。xはBの含有量(原子%)を示し、yはNiの含有量(原子%)を示す。
当該組成式の軟磁性材料において、主成分がFeである。すなわち、Feの含有量は、組成全体の50原子%以上である。Feの含有量は、B及びNiの残部で表される。高い飽和磁化の観点から、Feの含有量は、好ましくは80原子%以上、より好ましくは84原子%以上、さらに好ましくは88原子%以上である。
軟磁性材料は、主成分がFeである溶湯を急冷して得られる。B(ボロン)は、溶湯を急冷したときに、アモルファス相の形成を促進する。軟磁性材料のBの含有量は、好ましくは、組成全体の11原子%以上であり、より好ましくは組成全体の12原子%以上である。一方、軟磁性材料のBの含有量が組成全体の16原子%以下であれば、アモルファス相の結晶化のときにFe−B化合物の形成を回避し易くなる。化合物の形成を回避する観点からは、軟磁性材料のBの含有量は、好ましくは組成全体の15原子%以下、より好ましくは組成全体の14原子%以下である。
軟磁性材料は、Ni(ニッケル)を含む。軟磁性材料がNiを含有することにより、誘導磁気異方性の大きさを制御することができる。当該作用の発揮が明瞭になる観点からは、Niの含有量は、好ましくは0.2原子%以上、より好ましくは0.5原子%以上、さらに好ましくは1原子%以上である。一方、Niの含有量が4原子%以下、好ましくは3.5原子%以下、より好ましくは3原子%以下であれば、軟磁性材料の別の必須元素であるFe及びBが過剰に少なくなることはなく、その結果、軟磁性材料を急速昇温及び保持して得た軟磁性材料は、高飽和磁化と低保磁力を両立することができる。
軟磁性材料では、当該組成式において、Bの一部は、Si、P及びCからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。ここで、Bの一部は、組成全体の3原子%以下、好ましくは2原子%以下である。なお、Bの一部として、2種類以上の元素が選択される場合、Bの一部は、それらの元素の含有量の合計である。
Siはアモルファス形成を担う元素であり、かつSiを添加することで結晶磁気異方性の大きなFe−B化合物が生成する温度が高くなるため、熱処理温度を高温化することが可能となる。また、溶湯の粘度も低下するため、吐出し易くなり、ノズル閉塞を抑制することができる。なお、Siの他にアモルファス形成元素P、Cを添加することで原子のランダム性が向上しアモルファス形成能やナノ結晶の安定性を高めることができる。
軟磁性材料では、当該組成式において、Fe及びNiの一部は、Nb、Co、Zr、Hf、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、As、Sb、Bi、Y及び希土類元素から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。ここで、Fe及びNiの一部は、組成全体の3原子%以下、好ましくは2原子%以下である。なお、Fe及びNiの一部として、2種類以上の元素が選択される場合、Fe及びNiの一部は、それらの元素の含有量の合計である。
耐食性の改善や結晶粒成長の抑制、核生成頻度の向上のため、飽和磁化を著しく低下させない範囲でFeやNiの一部を各原子(Nb、Co、Zr、Hf、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、As、Sb、Bi、Y及び希土類元素)で置換しても良い。
軟磁性材料は、さらに、Mn、S、Cr、O、及びN等の不可避的不純物を含んでもよい。不可避的不純物とは、原材料に含まれる不純物等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物のことをいう。このような不可避的不純物を含んだときの軟磁性材料の純度は、好ましくは97質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
本実施形態において、軟磁性材料の結晶化度は、0%以上5%未満であることが好ましい。結晶化度が5%未満の場合、軟磁性材料にアモルファス構造が十分に存在しているため、軟磁性材料の強度が比較的高い。それゆえ、本実施形態に係る製造方法による効果が有効に発揮され得る。
ここで、本明細書において、軟磁性材料の結晶化度とは、示差走査熱量計(DSC)にて測定される結晶化による発熱量(J/g)から以下の式(A)により算出される値である。
結晶化度(%)=([J]−[J])/[J]×100 式(A)
式(A)中、Jは、測定対象である軟磁性材料に相当するアモルファス系軟磁性材料の結晶化発熱量であり、Jは、測定対象である軟磁性材料の結晶化発熱量である。
測定対象である軟磁性材料がアモルファス系軟磁性材料である場合、「測定対象である軟磁性材料に相当するアモルファス系軟磁性材料」とは、当該測定対象である軟磁性材料であるアモルファス系軟磁性材料それ自体を指す。そのため、[J]と[J]は同じ値となり、結晶化度が0となる。
測定対象である軟磁性材料がナノ結晶系軟磁性材料である場合、「測定対象である軟磁性材料に相当するアモルファス系軟磁性材料」は、測定対象である軟磁性材料としてのナノ結晶系軟磁性材料に相当するアモルファス系軟磁性材料を取得することにより用意する。ナノ結晶系軟磁性材料はアモルファス系軟磁性材料を加熱して作製されるため、その加熱前のアモルファス系軟磁性材料が、測定対象である軟磁性材料としてのナノ結晶系軟磁性材料に相当するアモルファス系軟磁性材料となり、当業者であれば容易に得ることができる。また、ナノ結晶系軟磁性材料に相当するアモルファス系軟磁性材料は、そのナノ結晶系軟磁性材料を高温で加熱して溶融させた後に急冷することによっても得ることができる。
結晶化度が0%の場合、ナノ結晶が析出していない状態であり、材料全体がアモルファス構造であると考えられる。一方、結晶化度が100%の場合、材料全体にナノ結晶が析出している状態であり、アモルファス構造を含まない状態と考えられる。
また、本明細書において、結晶生成開始温度及び化合物生成開始温度は、示差走査熱量計の結果から、以下の方法により決定することができる。
(i)軟磁性材料をDSC測定において分析し、温度に対する熱流束のプロファイルを得る。なお、DSC測定は、通常不活性雰囲気下、例えばAr雰囲気下で実施され、昇温速度は、通常10℃/分〜100℃/分、好ましくは20℃/分〜50℃/分である。より具体的には、Ar雰囲気下、昇温速度40℃/分で測定される。
(ii)(i)で得られたプロファイルの発熱ピークの立ち上がり部のうち最も傾きの大きな点を通る接線を引く。
(iii)(ii)で得られた接線とプロファイルのベースラインが交わる交点を結晶生成開始温度又は化合物生成開始温度とする。
後述の第一の熱処理工程前の軟磁性材料の硬さは、例えば、300HV以上であり、好ましくは400HV以上であり、より好ましくは500HV以上であり、さらに好ましくは600HV以上であり、特に好ましくは700HV以上である。
第一の熱処理工程前の軟磁性材料の引張強さは、例えば、1200MN/m以上であり、好ましくは1500MN/m以上であり、より好ましくは1600MN/m以上であり、さらに好ましくは1700MN/m以上である。
軟磁性材料の表面は、絶縁膜で覆われていることが好ましい。絶縁膜としては、SiO等の酸化膜が挙げられる。この絶縁膜により、渦電流に起因する損失を低減することができる。
板状の軟磁性材料は、例えば5〜50μmの薄板であり、好ましくは15〜35μmの薄板である。複数の板状の軟磁性材料を積層することにより積層体が形成される。積層体の厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、20〜1000μmであり、好ましくは50〜500μmである。板状の軟磁性材料を積層する枚数としては、20枚以下であることが好ましい。
軟磁性材料を積層体として用意する場合、板状の軟磁性材料の間には、耐熱性樹脂等の接着層を配置してもよいし、配置されなくてもよい。耐熱性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂を用いることができ、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂又はアクリル樹脂等が挙げられる。
積層体において、それぞれのステータコア用板材は加締めや溶接にて一体的に固定することができる。例えば、それぞれの軟磁性材料に設けられた貫通孔にボルトを挿通して一体的に固定することができる。
[第一の熱処理工程]
本実施形態は、アモルファス構造を含む軟磁性材料を結晶生成開始温度以上に加熱する第一の熱処理工程を含む。
結晶生成開始温度は、結晶化が生じる温度である。軟磁性材料の結晶生成開始温度は、材質によって異なるが、例えば、300〜500℃である。
第一の熱処理工程において、軟磁性材料は、単層の形態で加熱されてもよく、また、積層体の形態で加熱されてもよい。
第一の熱処理工程において、結晶化度が18%以下になるように軟磁性材料を加熱する。結晶化度が18%を超えると、軟磁性材料の脆化が進んでしまい、打ち抜き加工を精密に行えない可能性が生じる。結晶化度は、例えば、加熱温度や加熱時間により制御することができる。
第一の熱処理工程における軟磁性材料の加熱温度(加熱時の軟磁性材料の温度)は、結晶生成開始温度以上であれば特に制限されるものではないが、例えば、330℃以上であり、好ましくは340℃以上であり、より好ましくは350℃以上であり、さらに好ましくは360℃以上である。加熱温度を340℃以上とすることにより、効率的に結晶化を進めることができる。また、加熱は、軟磁性材料中にFe−B化合物等の副生成物が生成されない温度(化合物生成開始温度)未満で行われることが好ましい。加熱温度が高すぎると、望まない副生成物(例えばFeB等)がコア材中に生じてしまう場合がある。このような副生成物の発生は、例えば、示差走査熱量計(DSC)やXRDを用いて確認することができる。そのため、加熱温度は、好ましくは460℃以下であり、より好ましくは440℃以下であり、さらに好ましくは420℃以下である。熱処理温度を460℃以下とすることにより、過度の結晶化を防ぎ易くなり、副生成物の発生を抑制することができる。
軟磁性材料を加熱する方法は、特に制限されるものではなく、例えば、加熱炉を用いることができる。
加熱時間は、特に制限されるものではないが、例えば、0.1秒以上5分以下であり、より好ましくは1秒以上1分以下である。
第一の熱処理工程は、大気中で行ってもよく、また、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
[プレス工程]
次に、軟磁性材料が結晶生成開始温度以上の状態で軟磁性材料に打ち抜き加工を施す。ここで、打ち抜き加工時の軟磁性材料の結晶化度が18%以下である。
このプレス工程において、軟磁性材料が結晶生成開始温度以上である状態で打ち抜き加工を行うことにより、金属の高温化による硬さ低減効果だけでなく、結晶化の促進による硬さ低減効果も得た状態で、軟磁性材料を打ち抜き加工することができる。また、軟磁性材料の結晶化度が18%以下である場合、軟磁性材料の脆化が過度に進行していないため、軟磁性材料を精密に加工することができる。また、第一の熱処理工程により、微結晶を析出させることができる。これにより、後工程の磁気特性向上のための第二の熱処理工程における発熱量を低減することができ、その結果、熱暴走の発生を抑制することができる。さらに、第一の熱処理工程における加熱により、軟磁性材料に導入されていた歪やアモルファス構造の自由体積が解放される。これにより、後工程の第二の熱処理工程時に軟磁性材料の体積が均一に収縮するため、得られる磁性部品の寸法精度を向上することができる。
このプレス工程及び上述の第一の熱処理工程は、同時に行ってもよい。すなわち、軟磁性材料を加熱しながら打ち抜いてもよい。また、加熱操作は停止した状態で打ち抜いてもよい。軟磁性材料が結晶生成開始温度以上である状態で打ち抜き加工が実施されれば、プレス工程及び第一の熱処理工程を同じ工程で行っても異なる工程で行ってもよい。
打ち抜き加工時の軟磁性材料の結晶化度は、硬さ低減の観点から、1%以上であることが好ましく、3%以上であることが好ましく、5%以上であることが好ましい。また、結晶化度は、脆化抑制の観点から、15%以下であることが好ましい。
軟磁性材料は、積層体の状態で打ち抜いてもよい。本実施形態において、打ち抜き加工時は、軟磁性材料の硬度が低下しているため、高い硬度を有するアモルファス系軟磁性材料又はナノ結晶系軟磁性材料であっても、打ち抜き加工に用いられるプレス型の摩耗を抑制することができる。
プレス型としては、例えば、超鋼を用いることができる。打ち抜き加工の前に、潤滑材をプレス型及び/又は軟磁性材料(又はその積層体)に塗布してもよい。
[冷却工程]
次に、軟磁性材料を結晶生成開始温度未満に冷却する。
冷却方法としては、特に制限されるものではなく、軟磁性材料の温度が結晶生成開始温度未満になればよい。例えば、自然放置により冷却してもよいし、ガス等の冷媒により冷却してもよい。
[第二の熱処理工程]
次に、軟磁性材料を、10℃/秒以上の昇温速度で、結晶生成開始温度以上かつ化合物生成開始温度未満の温度域に昇温させて加熱する。
結晶生成開始温度は、α−Fe結晶生成開始温度である。また、化合物生成開始温度は、Fe−B化合物生成開始温度である。これらの温度は、上述の方法により測定することができる。
昇温速度を10℃/秒以上とすることにより、結晶相の粗大化を抑制することができる。また、結晶生成開始温度以上かつ化合物生成開始温度未満の温度域で加熱することにより、Fe−B化合物等の生成を抑制しながら、結晶化を促進することができる。その結果、磁気特性(特に飽和磁化及び保磁力)を効果的に向上させることができる。
結晶相の粗大化を回避する観点からは、昇温速度は速い方が好ましいため、昇温速度は、好ましくは20℃/秒以上、好ましくは40℃/秒以上、好ましくは60℃/秒以上、好ましくは80℃/秒以上、好ましくは100℃/秒以上、好ましくは120℃/秒以上、好ましくは140℃/秒以上である。一方、昇温速度が非常に速いと、加熱のための熱源が大きくなりすぎて経済性を損ねる。熱源の観点からは、昇温速度は、好ましくは400℃/秒以下であり、好ましくは300℃/秒以下である。昇温速度は、例えば、加熱開始から結晶生成開始温度までの平均速度である。あるいは、ある特定の温度範囲の平均速度であってよい。例えば、100℃〜400℃の間の平均速度であってよい。
第二の熱処理工程は、磁気特性(特に飽和磁化及び保磁力)を最適化するために行われ、好ましくは、軟磁性材料の結晶化度が100%に達するまで行われる。結晶化度が100%の場合、飽和磁化を効果的に向上することができる。また、加熱処理は、飽和磁化が最大になるまで行うことが好ましい。飽和磁化の最大値は軟磁性材料によって異なる。飽和磁化の最大値や最大値に達するのに必要な熱量は、当業者であれば、予め実験等により確認することができる。第二の熱処理工程により、軟磁性材料が所望の磁気特性、特に所望の飽和磁化及び保磁力を有するように加熱される。
第二の熱処理工程における軟磁性材料の加熱温度は、例えば、460〜510℃の温度範囲である。加熱温度が460℃以上である場合、αFe結晶化が生じ易く、飽和磁化を効果的に向上することができる。また、加熱温度が510℃以下である場合、結晶粒が粗大化を抑制し、及び/又は保磁力の高い副生成物(FeB等)の析出を抑制することができる。
上記温度域での加熱時間は、特に制限されるものではない。加熱時間は、例えば、3秒以上である。また、加熱時間は、80秒以下である。結晶相の粗大化を回避する観点から、加熱時間は、好ましくは60秒以下、より好ましくは40秒以下、さらにより好ましくは20秒以下である。
第二の熱処理工程は、大気中で行ってもよく、また、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
第二の熱処理工程は、例えば、軟磁性材料全体(又はその積層体全体)を加熱することにより行うことができ、例えば、加熱炉を用いることができる。
通常の雰囲気炉を使用して軟磁性材料を加熱する場合には、軟磁性材料に対する所望の昇温速度よりも、炉内雰囲気の昇温速度を高くすることが有効である。通常の雰囲気炉に代えて、赤外線炉を使用すれば、赤外線ヒータに入力した熱量と、軟磁性材料が受け取る熱量の時間的なずれを低減することができる。なお、赤外線炉とは、赤外線ランプが発する光を凹面で反射して、被加熱物を急速に加熱する炉である。
さらに、固体間の熱伝達によって、軟磁性材料を急速昇温及び保持してもよい。図2は、軟磁性材料を、既に所望の保持温度まで加熱したブロックの間に挟み込んで、その軟磁性材料を急速昇温及び保持する装置の概要を示す斜視図である。軟磁性材料1を、ブロック2で挟み込むことができるように、設置する。ブロック2には、電熱線(発熱体)及び断熱材4が備えられている。電熱線には、温度調節器3が連結されている。軟磁性材料1とブロック2との間で、固体間の熱伝達が起こるように、予め加熱しておいたブロック2で、軟磁性材料1を挟み込むことによって、軟磁性材料1を加熱することができる。ブロック2は、軟磁性材料1とブロック2との間で、効率よく熱伝達が行われれば、ブロック2の材質等は、特に制限されない。ブロック2の材質としては、金属、合金、及びセラミック等が挙げられる。
軟磁性材料を、10℃/秒以上の速度で昇温すると、アモルファス相が結晶化するときに放出される熱によって、軟磁性材料自身が発熱する。雰囲気炉又は赤外線炉等を使用して、軟磁性材料を急速昇温すると、軟磁性材料自身の発熱を考慮して温度制御することが難しい場合がある。これに対し、図2に示したように、加熱したブロック2の間に軟磁性材料1を挟み込むことによって、軟磁性材料1を加熱すると、軟磁性材料の自己発熱を考慮して温度制御することが容易である。また、図2に示したような装置を用いて軟磁性材料を昇温すると、軟磁性材料の温度制御が精密にできるため、軟磁性材料を所望の温度域で容易に保持することができる。その結果、Fe−B化合物等の副生成物が生成することなく、アモルファス相を微細な結晶相、いわゆるナノ結晶組織にし、且つナノ結晶組織を安定化することができる。
以上の方法により、硬度が高いアモルファス系軟磁性材料又はナノ結晶系軟磁性材料を用いた場合でも、打ち抜き工程にて使用する器具の摩耗を抑制し、かつ優れた磁気特性を有する磁性部品を製造することができる。
得られた磁性部品は、必要に応じてさらなる加工が施され、所望の電気機器に使われ得る。例えば、固定に用いられていたボルトの先端部を、ハウジングに形成されたネジ穴に螺合することにより、ステータコアとしての磁性部品をハウジングに固定することができる。磁性部品としては、特に制限されるものではないが、例えば、回転機やリアクトル等のコア材料、変圧器、又は点火プラグ等が挙げられる。
以下、本実施形態の実施例について説明する。なお、本実施形態は以下の実施例の記載により限定されるものではない。
[軟磁性材料の作製]
組成がFe84.513.5Niになるように、原材料を秤量してアーク溶解し、鋳塊を作製した。原材料としては、純Fe、Fe−B合金、純Niを用いた。当該工程では、鋳塊が均質になるように、反転させて繰返し溶解した(3回〜5回)。細かく切断した鋳塊を液体急冷装置(単ロール法)のノズルに装入し、不活性雰囲気下で、高周波加熱で溶解し、溶湯を得た。その後、溶湯を、周速30m/s〜70m/sの銅ロールに吐出し急冷することで、幅1〜10mm、厚さ15〜30μmの薄帯状の軟磁性材料を得た。吐出時の温度は、融点+50℃〜200℃とした。また、急冷条件は、ギャップを0.4mmとし、チャンバー内圧とノズル内圧を、吐出圧が40kPa〜80kPaになるように制御することで調整した。
なお、軟磁性材料は、以下に述べる熱処理の前に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)分析を行うことでアモルファス系軟磁性材料であることを確認した。また、軟磁性材料について、示差走査熱量計を用いて、温度と熱流束の関係を測定した。さらに、得られたDSCの結果から、以下の方法により、α−Fe結晶生成開始温度及びFe−B化合物生成開始温度を決定した。
(i)軟磁性材料をDSC測定において分析し、温度に対する熱流束のプロファイルを得た。
(ii)(i)で得られたプロファイルの発熱ピークの立ち上がり部のうち最も傾きの大きな点を通る接線を引いた。
(iii)(ii)で得られた接線とプロファイルのベースラインが交わる交点をα−Fe結晶生成開始温度又はFe−B化合物生成開始温度とした。
軟磁性材料のα−Fe結晶生成開始温度は約358℃であり、Fe−B化合物生成開始温度は約500℃であった。
(実施例1)
[第一の熱処理工程]
図2に示した構成を有する加熱装置を用いて上記軟磁性材料に第一の熱処理工程を施した。具体的には、温度を390℃に加熱したブロックの間に上記軟磁性材料を挟み込み、3秒間保持した。なお、ブロックの温度は、加熱装置の設定温度を意味し、軟磁性材料そのものが達する温度は、加熱装置の設定温度よりも低い温度となり得る。
第一の熱処理工程を施した軟磁性材料について、DSCにより結晶化度を測定した(式(A)参照)。また、脆性評価を行うため、R曲げ試験を行った。具体的には、軟磁性材料を直径Rの丸棒に巻きつけて割れないときのRを曲げRとして記録した。すなわち、曲げRが小さい場合、靱性に優れることを意味し、曲げRが大きい場合、脆性が高いことを意味する。また、軟磁性材料のビッカース硬さ[HV]を測定した。結果を表1に示す。
表1の結果より、第一の熱処理工程により軟磁性材料の硬さが低減されたことが確認された。そのため、打ち抜き加工においてもプレス型の摩耗を抑制できることが理解される。また、曲げRも0.5mmであり、脆性が悪化していないことが確認された。なお、曲げRが0.5以下である場合、軟磁性材料の脆性が悪化しておらず、打ち抜き加工を精密に行うことができる。
[第二の熱処理工程]
第一の熱処理工程を施した軟磁性材料について、第二の熱処理工程を施した。具体的には、本実施形態で規定の温度域に加熱したブロックの間に軟磁性材料を挟み込み保持した。昇温速度は、10℃/秒以上であった。
第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、振動試料型磁力計(VSM:Vibrating Sample Magnetometer)を用いて、飽和磁化を測定した。また、直流BHアナライザーを用いて、保磁力を測定した。表1に結果を示す。なお、表1において、飽和磁化が1.80T以上であり、かつ保磁力が20.0A/m以下である場合、良好(○)と判定した。表1に示される通り、本実施例で得られた軟磁性材料は、良好な磁気特性を有した。
(実施例2)
ブロックの設定温度を360℃とし、かつ保持時間を10秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
保持時間を10秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
ブロックの設定温度を420℃とし、かつ保持時間を1秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。また、得られた第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、断面のTEM写真を図4に示す。
(比較例1)
第一の熱処理工程を行わずに、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。未熱処理の軟磁性材料について、結晶化度、ビッカース硬さ及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
ブロックの設定温度を340℃とし、かつ保持時間を10秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。また、得られた第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、断面のTEM写真を図5に示す。
(比較例3)
ブロックの設定温度を420℃とし、かつ保持時間を10秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。
(比較例4)
ブロックの設定温度を430℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、得られた第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、断面のTEM写真を図6に示す。
(比較例5)
ブロックの設定温度を450℃とし、かつ保持時間を0.5秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例6)
ブロックの設定温度を450℃とし、かつ保持時間を1秒としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例7)
ブロックの設定温度を450℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例8)
ブロックの設定温度を465℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法により第一の熱処理工程を施した。また、実施例1と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。第一の熱処理工程後の軟磁性材料について、結晶化度、ビッカース硬さ及び曲げRを測定した結果を表1に示す。また、第二の熱処理工程後の軟磁性材料について、磁気特性を評価した結果を表1に示す。
実施例1〜4では、第一の熱処理工程後の軟磁性材料の結晶化度が本実施形態で規定される範囲内であった。そのため、軟磁性材料の硬さを低減できた。
一方、比較例2では、第一の熱処理工程において結晶化は生じていなかった。そのため、軟磁性材料の硬さは低減していなかった。
比較例3〜8では、表1に示される通り、第一の熱処理工程後の軟磁性材料の結晶化度が本実施形態で規定される範囲から外れており、曲げRが高くなっていた。そのため、軟磁性材料の脆性が悪化していた。
図3に、上記実施例及び比較例について、横軸を結晶化度、左縦軸をビッカース硬さ、右縦軸を曲げRとしてデータをプロットした散布図を示す。図3からも理解される通り、結晶化度が増加するとビッカース硬さが低減し、脆化が進むことがわかる。
(実施例5)
図2に示した構成を有する加熱装置を用いて上記軟磁性材料に第一の熱処理工程を施した。具体的には、温度を420℃に加熱したブロックの間に上記軟磁性材料を挟み込み、1秒間保持した(実施例4と同条件)。次に、第二の熱処理工程として、温度を465℃に加熱したブロックの間に第一の熱処理工程を施した軟磁性材料をチタン板やステンレス板とともに挟み込み、10秒間保持した。なお、チタン板やステンレス板は、昇温速度を調整する部材として機能し、本実施例での昇温速度は45℃/秒であった。
この第二の熱処理工程を施した軟磁性材料について、実施例1と同様の方法により飽和磁化及び保磁力を測定した。表2に結果を示す。なお、表2において、飽和磁化が1.80T以上であり、かつ保磁力が20.0A/m以下である場合、良好(○)と判定した。表2に示される通り、本実施例で得られた軟磁性材料は、良好な磁気特性を有した。
(実施例6)
実施例5と同様の方法により上記軟磁性材料に第一の熱処理工程を施した。次に、昇温速度が150℃/秒となるようにスペーサーを取り換えたこと以外は、実施例5と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。飽和磁化及び保磁力を測定した結果を表2に示す。表2に示される通り、本実施例で得られた軟磁性材料は、良好な磁気特性を有した。
(比較例9)
実施例5と同様の方法により上記軟磁性材料に第一の熱処理工程を施した。次に、昇温速度が7℃/秒となるようにスペーサーを取り換えたこと以外は、実施例5と同様の方法により第二の熱処理工程を施した。飽和磁化及び保磁力を測定した結果を表2に示す。
(比較例10)
実施例5と同様の方法により上記軟磁性材料に第一の熱処理工程を施した。次に、第二の熱処理工程として、温度を390℃に加熱したブロックの間に第一の熱処理工程を施した軟磁性材料をチタン板やステンレス板とともに挟み込み、60秒間保持した。なお、チタン板やステンレス板は、昇温速度を調整する部材として機能し、本実施例での昇温速度は3℃/秒であった。飽和磁化及び保磁力を測定した結果を表2に示す。
図7に、実施例5〜6及び比較例9〜10について、横軸を昇温速度、縦軸を保磁力としてデータをプロットしたグラフを示す。実施例5及び6において、所望の磁気特性を有する磁性部品を得ることができた。一方、比較例9及び10では、保磁力が高くなっており、比較例10では所望の飽和磁化を得られなかった。
以上、本開示の実施形態を図面とともに詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれる。
1.軟磁性材料
2.ブロック
3.温度調節器
4.電熱線(発熱体)及び断熱材

Claims (1)

  1. アモルファス構造を含む軟磁性材料を結晶生成開始温度以上に加熱する第一の熱処理工程と、
    前記軟磁性材料が結晶生成開始温度以上の状態で前記軟磁性材料に打ち抜き加工を施すプレス工程と、ここで、打ち抜き加工時の軟磁性材料の結晶化度が18%以下であり、
    前記軟磁性材料を結晶生成開始温度未満に冷却する冷却工程と、
    前記軟磁性材料を、10℃/秒以上の昇温速度で、結晶生成開始温度以上かつ化合物生成開始温度未満の温度域に昇温させて加熱する第二の熱処理工程と、
    を含む、磁性部品の製造方法。
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