JP2020084090A - 導電性組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従って、露光部分又は荷電粒子線が照射された部分に酸を発生させ、続いてポストエクスポージャーベーク(PEB)処理と呼ばれる加熱処理により架橋反応又は分解反応を促進させる、高感度な化学増幅型レジストの使用が主流となっている。
また、近年、半導体デバイスの微細化の流れに伴い、数nmオーダーでのレジスト形状の管理も要求されるようになってきている。
この課題を解決する手段として、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成し、前記導電膜でレジスト層の表面を被覆する技術が有効であることが既に知られている。
例えば、特許文献1には、酸性基を有する導電性ポリマーと、水酸化テトラブチルアンモニウム等の塩基性化合物と、溶剤とを含む導電性組成物が開示されている。
また導電性組成物には、レジスト層の表面上に塗布する際の塗布性が良好であることが求められる。
本発明は、塗布性が良好であり、レジスト層の膜減りが少ない導電膜を形成できる導電性組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
[1] 酸性基を有する導電性ポリマーと、水と、炭素数1〜3の低級アルコールを含む導電性組成物であって、前記導電性組成物の総質量に対して前記低級アルコールの含有量が0.1〜15質量%であり、前記低級アルコール由来の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量が、前記低級アルコールの総質量に対して、それぞれ1000質量ppm以下であり、前記低級アルコール由来のカルシウム、マグネシウム及び亜鉛の含有量が、前記低級アルコールの総質量に対して、それぞれ10質量ppb以下である、導電性組成物。
[2] 荷電粒子線描画時の帯電防止用である、[1]の導電性組成物。
[3] 酸性基を有する導電性ポリマーと、水と、炭素数1〜3の低級アルコールを混合する工程を含む、導電性組成物の製造方法であって、前記導電性組成物の総質量に対して前記低級アルコールの含有量が0.1〜15質量%であり、前記低級アルコール中の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量が、それぞれ1000質量ppm以下であり、前記低級アルコール中のカルシウム、マグネシウム及び亜鉛の含有量が、それぞれ10質量ppb以下である、導電性組成物の製造方法。
また、本明細書において「溶解性」とは、単なる水、塩基及び塩基性塩の少なくとも一方を含む水、酸を含む水、水と水溶性有機溶媒との混合物のうち、10g(液温25℃)に、0.1g以上均一に溶解することを意味する。また、「水溶性」とは、上記溶解性に関して、水に対する溶解性のことを意味する。
また、本明細書において、「末端疎水性基」の「末端」とは、ポリマーを構成する繰り返し単位以外の部位を意味する。
また、本明細書において「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。
本発明における導電性ポリマー(A)は、酸性基を有する。導電性ポリマー(A)が酸性基を有していれば、水溶性が高まる。その結果、導電性ポリマー(A)を含む導電性組成物の塗布性が高まり、均一な厚さの塗膜が得られやすくなる。
導電性ポリマー(A)としては、分子内にスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有していれば、本発明の効果を有する限り特に限定されず、公知の導電性ポリマーを用いることができる。例えば、特開昭61−197633号公報、特開昭63−39916号公報、特開平1−301714号公報、特開平5−504153号公報、特開平5−503953号公報、特開平4−32848号公報、特開平4−328181号公報、特開平6−145386号公報、特開平6−56987号公報、特開平5−226238号公報、特開平5−178989号公報、特開平6−293828号公報、特開平7−118524号公報、特開平6−32845号公報、特開平6−87949号公報、特開平6−256516号公報、特開平7−41756号公報、特開平7−48436号公報、特開平4−268331号公報、特開2014−65898号公報等に示された導電性ポリマーなどが、溶解性の観点から好ましい。
また、前記π共役系導電性ポリマーがイミノフェニレン、及びガルバゾリレンからなる群から選ばれた少なくとも1種の繰り返し単位を含む場合は、前記繰り返し単位の窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する、又はスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基、若しくはエーテル結合を含むアルキル基を前記窒素原子上に有する導電性ポリマーが挙げられる。
この中でも、導電性や溶解性の観点から、β位がスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、及びイソチアナフテンからなる群から選ばれた少なくとも1種をモノマーユニット(単位)として有する導電性ポリマーが好ましく用いられる。
ただし、一般式(1)のR1、R2のうちの少なくとも1つ、一般式(2)のR3〜R6のうちの少なくとも1つ、一般式(3)のR7〜R10のうちの少なくとも1つ、一般式(4)のR11〜R15のうちの少なくとも1つは、それぞれ酸性基又はその塩である。
スルホン酸基は、酸の状態(−SO3H)で含まれていてもよく、イオンの状態(−SO3 −)で含まれていてもよい。さらに、スルホン酸基には、スルホン酸基を有する置換基(−R17SO3H)も含まれる。
一方、カルボン酸基は、酸の状態(−COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(−COO−)で含まれていてもよい。さらに、カルボン酸基には、カルボン酸基を有する置換基(−R17COOH)も含まれる。
前記R17は炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアリーレン基、又は炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアラルキレン基を表す。
アルカリ金属塩としては、例えば、硫酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
アルカリ土類金属塩としては、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。
置換アンモニウム塩としては、例えば脂肪族アンモニウム塩、飽和脂環式アンモニウム塩、不飽和脂環式アンモニウム塩などが挙げられる。
脂肪族アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、メチルイソプロピルアンモニウム、エチルイソプロピルアンモニウム、メチルブチルアンモニウム、エチルブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラメチロールアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラn−ブチルアンモニウム、テトラsec−ブチルアンモニウム、テトラt−ブチルアンモニウムなどが挙げられる。
飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピペリジニウム、ピロリジニウム、モルホリニウム、ピペラジニウム及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
不飽和脂環式アンモニウム塩としては、例えば、ピリジニウム、α−ピコリニウム、β−ピコリニウム、γ−ピコリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、ピロリニウム、及びこれらの骨格を有する誘導体などが挙げられる。
また、導電性ポリマー(A)は、導電性に優れる観点で、前記一般式(5)で表される単位を1分子中に10以上含有することが好ましい。
ポリマー中の芳香環の総数に対する、酸性基が結合した芳香環の数は、導電性ポリマー(A)製造時の、モノマーの仕込み比から算出した値のことを指す。
ここで、「成膜性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを指し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。
導電性ポリマー(A)の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、本発明の効果を有する限り特に限定はされない。
具体的には、前述のいずれかのモノマーユニットを有する重合性単量体(原料モノマー)を化学酸化法、電解酸化法などの各種合成法により重合する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば特開平7−196791号公報、特開平7−324132号公報に記載の合成法などを適用することができる。
以下に、導電性ポリマー(A)の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の導電性ポリマー(A)の製造方法は、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程(重合工程)を含む。さらに、重合工程で得られた反応生成物を精製する工程(精製工程)を含むことが好ましい。
重合工程は、重合溶媒及び酸化剤の存在下、導電性ポリマー(A)の原料モノマーを重合する工程である。
原料モノマーの具体例としては、上述したモノマーユニットの由来となる重合性単量体が挙げられ、具体的には酸性基置換アニリン、そのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
酸性基置換アニリンとしては、例えば酸性基としてスルホン酸基を有するスルホン酸基置換アニリンが挙げられる。
スルホン基置換アニリンとして代表的なものは、アミノベンゼンスルホン酸類であり、具体的にはo−,m−,p−アミノベンゼンスルホン酸、アニリン−2,6−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、アニリン−3,5−ジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−3,4−ジスルホン酸などが好ましく用いられる。
これらの中では、導電性や溶解性に特に優れる導電性ポリマー(A)が得られる点で、アルキル基置換アミノベンゼンスルホン酸類、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、ヒドロキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、又はハロゲン置換アミノベンゼンスルホン酸類が好ましく、製造が容易な点で、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩が特に好ましい。
これらのスルホン酸基置換アニリンは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
重合溶媒としては、水、又は水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
これらの酸化剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
塩基性反応助剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機塩基;アンモニア;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン等の脂式アミン類;環式飽和アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン等の環式不飽和アミン類などが挙げられる。
これらの中では、無機塩基、脂式アミン類、環式不飽和アミン類が好ましく、環式不飽和アミン類がより好ましい。
これらの塩基性反応助剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
酸化剤溶液及び原料モノマー溶液の溶媒としては、上述した重合溶媒を用いることができる。
反応生成物が重合溶媒に溶解している場合は、重合溶媒を留去して反応生成物を得る。
反応生成物が重合溶媒に沈殿している場合は、遠心分離器等の濾過器により重合溶媒を濾別して反応生成物を得る。
前記酸性物質は、導電性ポリマー(A)から脱離した酸性基(例えば、カルボン酸、スルホン酸、硫酸、硝酸、塩酸、炭酸等由来の遊離の酸性基など)、導電性ポリマー(A)の製造に用いた酸化剤の分解物(例えば硫酸イオンなど)、反応中に副生する成分(例えば硝酸など)等が挙げられる。酸性物質はレジスト層の膜減りの要因にもなる。
そのため、重合工程の後、反応生成物を精製して、導電性ポリマー(A)を得ることが好ましい。
ここで、「酸性物質を実質的に含まない」とは、導電性ポリマー(A)の総質量に対して分子量が100以下の酸性物質の含有量が10000質量ppm以下であることを意味する。
酸性物質の含有量は、イオンクロマトグラフィーにより測定できる。具体的には、後述の低級アルコール(B1)中の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量の測定方法と同様の手順で測定できる。
精製工程は、重合工程で得られた反応生成物を精製する工程である。
反応生成物を精製する方法としては、洗浄溶媒を用いた洗浄法、膜濾過法、イオン交換法、加熱処理による不純物の除去、中和析出などあらゆる方法を用いることができる。これらの中でも、純度の高い導電性ポリマー(A)を容易に得ることができる観点から、洗浄法、イオン交換法が有効である。その中でも特に、原料モノマー、オリゴマー、酸性物質を効率よく除去できる観点から、洗浄法が好ましい。また、洗浄法とイオン交換法とを組み合わせて用いてもよい。
導電性ポリマー(A)はNa、K、Mg、Ca、Cr、Fe、Ni、Cu及びZnを実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、導電性ポリマー(A)の総質量に対してNa、K、Mg、Ca、Cr、Fe、Ni、Cu及びZnの含有量がそれぞれ1質量ppm以下であることを意味する。
これらの金属の含有量は、高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS−Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)により金属分析することにより求められる。
なお、イオン交換法で反応生成物を精製する場合は、反応生成物を所望の固形分濃度になるように水性媒体に溶解させ、ポリマー溶液としてからイオン交換樹脂に接触させることが好ましい。
水性媒体としては、後述する溶剤(B)と同様のものが挙げられる。
ポリマー溶液中の導電性ポリマー(A)の濃度としては、工業性や精製効率の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
本発明の導電性組成物は、導電性ポリマー(A)と、溶剤(B)とを含む。溶剤(B)は、水と、炭素数1〜3の低級アルコール(B1)を含む。
導電性組成物は、必要に応じて塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)などを含んでいてもよい。
導電性ポリマー(A)は、上述した導電性ポリマー(A)であり、その説明を省略する。
導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の総質量に対して、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
また、導電性ポリマー(A)の含有量は、導電性組成物の固形分の総質量に対して、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%がさらに好ましい。なお、導電性組成物の固形分は、導電性組成物から溶剤(B)を除いた残分である。
導電性ポリマー(A)の含有量が上記範囲内であれば、導電性組成物の塗布性と、導電性組成物より形成される塗膜の導電性のバランスにより優れる。
溶剤(B)は、水と、炭素数1〜3の低級アルコール(B1)を含む混合溶剤である。水及び低級アルコール(B1)以外に他の溶剤を含んでもよい。他の溶剤は導電性ポリマー(A)と、後述の塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)を溶解することができる溶剤であれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされない。他の溶剤としては、導電性ポリマー(A)の製造方法の説明において先に例示した重合溶媒のうちの有機溶媒(ただし炭素数1〜3の低級アルコールを除く。)が挙げられる。
水としては、イオン交換水、純水、蒸留水などが挙げられる。
低級アルコール(B1)としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いる。低級アルコール(B1)は導電性組成物の塗布性の向上に寄与する。低級アルコール(B1)の炭素数が3以下であると、導電性組成物の均一性に優れ、塗膜の平滑性に優れる。
すなわち、低級アルコール(B1)中の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量は、それぞれ1000質量ppm以下である。
これらの酸イオンの含有量が1000質量ppm以下であれば、低級アルコール(B1)を含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成したときに、導電膜からレジスト層への酸イオンの移行が軽減され、レジスト層の膜減りを抑制できる。
低級アルコール(B1)中の、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量は、それぞれ1000質量ppm以下であり、500質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下がさらに好ましい。
これらの酸イオンの含有量は少ないほど好ましく、下限値は0質量ppmが好ましい。
まず、水に炭酸ナトリウムを固形分濃度が1.8mmol/Lになるように添加して、炭酸ナトリウム水溶液を調製する。同様に、水に炭酸水素ナトリウムを固形分濃度が1.7mmol/Lになるように添加して、炭酸水素ナトリウム水溶液を調製する。得られた炭酸ナトリウム水溶液と、炭酸水素ナトリウム水溶液とを質量比1:1の割合で混合して溶離液を得る。得られた溶離液に低級アルコール(B1)を加えて溶解させ、試験溶液を調製する。
得られた試験溶液について、イオンクロマトグラフを用いて硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの各濃度を測定し、クロマトグラムを得る。このクロマトグラム上の各酸イオンに相当するピークの面積または高さを読み取り、予め作成しておいた検量線から、低級アルコール中の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの各含有量を求める。
すなわち、低級アルコール(B1)中のカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及び亜鉛(Zn)の含有量は、低級アルコールの総質量に対して、それぞれ10質量ppb以下である。
低級アルコール(B1)中のこれら金属の含有量がそれぞれ10質量ppb以下であれば、低級アルコール(B1)を含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して得られる導電膜中の金属量を軽減できる。すなわち、異物の少ない導電膜が得られるので、荷電粒子線による描画後にラインの断線等の問題が生じにくく、パターニング不良を抑制できる。
低級アルコール(B1)中のCa、Mg及びZnの含有量は、それぞれ7質量ppb以下が好ましい。
これらの金属の含有量は少ないほど好ましく、下限値は0質量ppbが好ましい。
なお、導電性ポリマー(A)を、精製などして水性媒体に溶解した状態(以下、この状態の導電性ポリマー(A)を「導電性ポリマー溶液」ともいう。)で用いる場合、導電性ポリマー溶液由来の水性媒体も導電性組成物中の溶剤(B)の含有量に含まれる。
導電性組成物は、塩基性化合物(C)を含んでいてもよい。
導電性組成物が塩基性化合物(C)を含んでいれば、導電性ポリマー(A)の安定性を高めることが可能になると考えられる。
第4級アンモニウム塩(c−1):窒素原子に結合する4つの置換基のうちの少なくとも1つが炭素数3以上の炭化水素基である第4級アンモニウム化合物。
塩基性化合物(c−2):1つ以上の窒素原子を有する塩基性化合物(ただし、第4級アンモニウム塩(c−1)及び塩基性化合物(c−3)を除く。)。
塩基性化合物(c−3):同一分子内に塩基性基と2つ以上のヒドロキシ基とを有し、かつ30℃以上の融点を有する塩基性化合物。
第4級アンモニウム化合物(c−1)において、第4級アンモニウムイオンの窒素原子に結合する炭化水素基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
第4級アンモニウム化合物(c−1)としては、例えば、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
塩基性化合物(c−3)としては、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸などが挙げられる。
これらの中でも、導電性ポリマー(A)の酸性基と塩を形成しやすい点から、第4級アンモニウム塩(c−1)及び塩基性化合物(c−2)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
導電性組成物は、界面活性剤(D)を含んでいてもよい。
導電性組成物が界面活性剤(D)を含んでいれば、導電性組成物を基材やレジスト層の表面に塗布する際の塗布性が向上する。
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
末端疎水性基としては、例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基、一級又は二級のアルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
末端疎水性基の炭素数は、3〜100が好ましく、5〜50がより好ましく、7〜30が特に好ましい。
水溶性ポリマー中の末端疎水性基の数は特に制限されない。また、同一分子内に末端疎水性基を2つ以上有する場合、末端疎水性基は同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
含窒素官能基を有するビニルモノマーとしては、アクリルアミド及びその誘導体、含窒素官能基を有する複素環状モノマー等が挙げられ、その中でもアミド結合を持つものが好ましい。具体的には、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−ビニル−N−メチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が特に好ましい。
その他のビニルモノマーとしては、含窒素官能基を有するビニルモノマーを共重合可能であれば特に制限されないが、例えば、スチレン、アクリル酸、酢酸ビニル、長鎖α−オレフィンなどが挙げられる。
水溶性ポリマー中の主鎖部分と、末端疎水性基部分(例えばアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アラルキルチオ基、アリールチオ基などの部分)との分子量比(主鎖部分の質量平均分子量/末端疎水性基部分の質量平均分子量)は、0.3〜170であることが好ましい。
導電性組成物は、必要に応じて、導電性ポリマー(A)、溶剤(B)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。
任意成分としては、例えば高分子化合物(導電性ポリマー(A)、塩基性化合物(C)及び界面活性剤(D)を除く)、添加剤などが挙げられる。
添加剤としては、例えば顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の導電性組成物の製造方法は、導電性ポリマー(A)と、水と、低級アルコール(B1)を混合する混合工程を含む。混合工程において、他の溶剤、塩基性化合物(C)、界面活性剤(D)及び任意成分の1つ以上を混合してもよい。混合する順序は特に限定されない。
低級アルコール(B1)は、導電性ポリマー(A)と混合する前に精製したものを用いる。
導電性組成物中の溶剤(B)の一部として、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量が特定の範囲に低減された低級アルコール(B1)を、15質量%以下の添加量で用いることにより、導電膜中の酸性成分がレジスト層へ移行することに起因する膜減り、及び導電膜中のアルコールがレジスト層と接触することに起因する膜減りを抑制しながら、塗布性を向上させることができる。
本発明の導電性組成物は、荷電粒子線描画時の帯電防止用として好適である。具体的には、本発明の導電性組成物を、化学増幅型レジストを用いた荷電粒子線によるパターン形成法のレジスト層の表面に塗布して導電膜を形成する。こうして形成された導電膜がレジスト層の帯電防止膜となる。
また、上述した以外にも、本発明の導電性組成物は、例えばコンデンサ、透明電極、半導体等の材料として使用することもできる。
なお、実施例及び比較例における各種測定・評価方法は以下の通りである。
[測定・評価方法]
<硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、プロピオン酸イオンの含有量の測定>
低級アルコール(B1)0.1gに以下の溶離液100gを加えて、試験溶液を調製した。得られた試験溶液について、以下のイオンクロマトグラフ(IC)測定条件にて、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、プロピオン酸イオンの濃度を測定し、クロマトグラムを得た。得られたクロマトグラム上の各イオンに相当するピークの面積又は高さを読み取り、予め作成しておいた検量線から、低級アルコール(B1)の総質量に対する硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、プロピオン酸イオンの各含有量を求めた。
<<IC測定条件>>
・装置:イオンクロマトグラフ IC−2010(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKguard Column Super IC−Anion HS C−No W00052
・溶離液:1.8mmol/Lの炭酸ナトリウム水溶液と、固形分濃度が1.7mmol/Lの炭酸水素ナトリウムとの混合液(質量比1:1)
・流速:1.5mL/分
・測定温度:40℃
・試料注入量:30μL
高周波誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS− Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer:Agilent Technologies製7500cs)により、Ca、Mg及びZnを金属分析し、低級アルコール(B1)の各総質量に対する各金属の含有量を求めた。
基材としてガラス基材上に導電性組成物を2.0mL滴下し、基材表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布して塗膜を形成した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に膜厚約30nmの導電膜を形成して導電体を得た。
ハイレスタUX−MCP−HT800(株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて、導電膜の表面抵抗値[Ω/□]を測定した。
4インチのシリコンウエハ上に導電性組成物を1mL滴下し、スピンコーターにて塗布し、目視で塗布状態を観察し、下記の基準で塗布性を判定した。AとBを合格とする。
A:ウエハの80%以上にムラなく塗布できている。
B:ウェハの80%以上に塗布できているが、ムラが有る。
C:ウエハの80%未満にしか塗布できていない。
(膜減り量の測定)
化学増幅型電子線レジスト(以下、「レジスト」と略す。)を使用し、レジスト層の膜減り量を以下の手順(1A)〜(8A)で測定した。
(1A)レジスト層の形成:基材として4インチシリコンウエハー上にレジスト0.2μmをスピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布した後、ホットプレートにて130℃で90秒間プリベークを行い、溶剤を除去し、基材上にレジスト層を形成した。
(2A)レジスト層の膜厚測定1:基材上に形成されたレジスト層の一部を剥離し、基材面を基準位置として、触針式段差計(Stylus profiler P−16+, KLA−Tencor Corporation製)を用い、初期のレジスト層の膜厚a[nm]を測定した。
(3A)導電膜の形成:レジスト層上に導電性組成物2mLを滴下し、レジスト層の表面全体を覆うように、スピンコーターにて2000rpm×60秒間の条件で回転塗布した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、レジスト層上に膜厚約30nmの導電膜を形成した。
(4A)ベーク処理:導電膜とレジスト層が積層した基材を空気雰囲気下、ホットプレ−トにて120℃×20分加熱し、この状態の基材を空気中、常温(25℃)で90秒静置した。
(5A)水洗:導電膜を20mLの水で洗い流した後、スピンコーターにて2000rpm×60秒間で回転させ、レジスト層の表面の水を除去した。
(6A)現像:2.38質量%テトラメチルアンモニウムハドロオキサイド(TMAH)水溶液からなる現像液20mLをレジスト層の表面に滴下した。60秒静置した後、スピンコーターにて2000rpm×60秒間で回転させ、レジスト層の表面の現像液を除去し、引き続き60秒間回転を維持して乾燥した。
(7A)レジスト層の膜厚測定2:前記(2A)においてレジスト層を一部剥離した部分から5mm以内におけるレジスト層の一部を剥離した後、触針式段差計を用いて現像後のレジスト層の膜厚b[nm]を測定した。
(8A)膜減り量の算出:上記膜厚aの値から膜厚bの値を差し引いて、レジスト層の膜減り量c[nm](c=a−b)を算出した。
レジスト層は、レジスト層形成後の保管期間によって個々のレジストに特有の膜減り量(以下、「基準膜減り量」という。)d[nm]が存在する。導電膜に起因しないこの基準膜減り量dを以下の手順(1B)〜(6B)で測定した。
(1B)レジスト層の形成:前記(1A)と同様にして、基材上にレジスト層を形成した。
(2B)レジスト層の膜厚測定1:前記(2A)と同様にして、初期のレジスト層の膜厚a[nm]を測定した。
(3B)ベーク処理:レジスト層が積層した基材を用いた以外は、前記(4A)と同様にしてベーク処理した。
(4B)現像:前記(6A)と同様にして、現像を行った。
(5B)レジスト層の膜厚測定2:前記(2B)においてレジスト層を剥離した部分から5mm以内におけるレジスト層の一部を剥離した後、触針式段差計を用いて現像後のレジスト層の膜厚e[nm]を測定した。
(6B)膜減り量の算出:上記膜厚aの値から膜厚eの値を差し引いて、レジスト層の基準膜減り量d(d=a−e)を算出した。
なお、レジスト層の基準膜減り量dは、3nmであった。
上記レジスト層の膜減り量cの値からレジスト層の基準膜減り量dの値を差し引いて、導電膜からレジスト層へ移行した、分子量が100以下の酸性物質が原因となるレジスト層の膜減り量f[nm](f=c−d)を算出し、以下の評価基準にて評価した。膜減り量fが少ないほど好ましく、AとBを合格とする。
A:膜減り量fが5nm未満である。
B:膜減り量fが5nm以上、20nm未満である。
C:膜減り量fが20nm以上である。
低級アルコール(B1)として、イソプロピルアルコール(以下、IPAともいう。)を用いた。IPAを下記の条件で蒸留して、精製IPAを得た。
精製IPA中の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量は、いずれも100質量ppm以下であった。
なお、精製前のIPA中の硝酸イオンの含有量は200質量ppm、硫酸イオンの含有量は1100質量ppm、リン酸イオンの含有量は800質量ppm、プロピオン酸イオンの含有量は1500質量ppm、Caの含有量は4質量ppb、Mgの含有量は5質量ppb、Znの含有量は2質量ppbであった。
<蒸留条件>
冷却管及び枝月連結管を付したガラス製フラスコに、IPAを加え、加熱留出させ、流出したIPAを超純水で洗浄された容器に採取する方法で、蒸留操作を行った。
<導電性ポリマー(A)の製造>
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100mmolに、ピリジン100mmolと水100mLを添加して、モノマー溶液を得た。
得られたモノマー溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolの水溶液(酸化剤溶液)を10℃で滴下した。滴下終了後、25℃で15時間さらに攪拌した後、35℃まで昇温してさらに2時間撹拌して、反応生成物が沈殿した反応液を得た(重合工程)。
得られた反応液を遠心濾過器にて濾過し、沈殿物(反応生成物)を回収して、1Lのメタノールにて反応生成物を洗浄した後に乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(A1)を得た(精製工程)。
精製工程で用いたメタノールの量は、導電性ポリマー(A1)100質量部に対して5000質量部に相当する。
得られた導電性ポリマー(A1)は、酸性物質を実質的に含まなかった。
<導電性組成物の調製>
導電性ポリマー(A1)1質量部と、水96質量部と、調製例1で得た精製IPAの4質量部とを混合し、導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物について、導電性及び塗布性を評価し、膜減り試験を行った。これらの結果を表1に示す。
表1に示すとおりに配合を変更したほかは、実施例1と同様にして導電性組成物を調製し、評価および試験を行った。結果を表1に示す。
低級アルコール(B1)を用いなかった比較例1は塗布性が劣った。
比較例2は低級アルコール(B1)を用いず、その代わりに界面活性剤を用いた例であるが、塗布性が不充分であった。
精製した低級アルコール(B1)の添加量が多すぎる比較例3は、膜減りが顕著に生じた。
Claims (3)
- 酸性基を有する導電性ポリマーと、水と、炭素数1〜3の低級アルコールを含む導電性組成物であって、
前記導電性組成物の総質量に対して前記低級アルコールの含有量が0.1〜15質量%であり、
前記低級アルコール由来の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量が、前記低級アルコールの総質量に対して、それぞれ1000質量ppm以下であり、
前記低級アルコール由来のカルシウム、マグネシウム及び亜鉛の含有量が、前記低級アルコールの総質量に対して、それぞれ10質量ppb以下である、導電性組成物。 - 荷電粒子線描画時の帯電防止用である、請求項1に記載の導電性組成物。
- 酸性基を有する導電性ポリマーと、水と、炭素数1〜3の低級アルコールを混合する工程を含む、導電性組成物の製造方法であって、
前記導電性組成物の総質量に対して前記低級アルコールの含有量が0.1〜15質量%であり、
前記低級アルコール中の硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、及びプロピオン酸イオンの含有量が、それぞれ1000質量ppm以下であり、
前記低級アルコール中のカルシウム、マグネシウム及び亜鉛の含有量が、それぞれ10質量ppb以下である、導電性組成物の製造方法。
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