JP2020082663A - レーザー溶着方法及び流路部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製品の機能を達成する上で必要な樹脂溶融量を達成することによって、溶着部での隙間の発生を防ぎ、接合の強度をより高めることができるレーザー溶着方法を提供する。【解決手段】レーザー光を透過する第1の樹脂部材とレーザー光を吸収する第2の樹脂部材とを溶着させる際に、第1の樹脂部材の表面と第2の樹脂部材の表面とを当接させる工程と、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材との当接面に対して第1の樹脂部材の側から第1のスポット径でレーザー光を照射する第1の照射工程と、第1の照射工程を実施した後、第1のスポット径よりも大きい第2のスポット径で当接面にレーザー光を照射する第2の照射工程と、を実施する。【選択図】図4
Description
本発明は、レーザー光を透過する樹脂部材とレーザー光を吸収する樹脂部材とを溶着させるレーザー溶着方法と、このレーザー溶着方法を用いた流路部材の製造方法とに関する。
レーザー光を用いて樹脂部材を相互に溶着する技術は、各種の製品の製造工程において使用されており、例えば、インクジェット記録ヘッドなどの液体吐出ヘッドの製造工程においても使用されている。液体吐出ヘッドにはその吐出口にインクなどの液体を供給するための流路部材が設けられるが、流路部材の製造過程では、耐液体性を有する樹脂部材の相互間をレーザー光を利用して溶着することが行われている。レーザー光を利用した樹脂部材間の溶着では、レーザー光を透過する透過性樹脂部材とレーザー光を吸収して加熱される非透過性樹脂部材とが相互に接した状態で、透過性樹脂部材を介して両方の樹脂部材の当接面に向けてレーザー光を照射する。照射されたレーザー光は非透過性樹脂部材によって吸収され、両方の樹脂部材の当接面において非透過性樹脂部材が加熱されて溶融し、これにより当接面において透過性樹脂部材と非透過性樹脂部材とが溶着される。
溶着対象の樹脂部材に反りなどがあると溶着すべき2つの樹脂部材の間に隙間が生じ、その結果、レーザー溶着を行っても隙間が残った状態となり、接合強度が低下することがある。液体吐出ヘッドの流路部材の製造にレーザー溶着を用いた場合に隙間が残ることは、流路部材を流れる液体の漏出につながるので特に好ましくない。このような隙間の発生を解消する方法として特許文献1は、樹脂部材の反り変形が生じていても気密性を確保した溶着を行うために、樹脂部材相互を嵌合させた状態で、溶着部に沿うような照射のスポット径でレーザー光を照射することを開示している。
特許文献1に記載の方法では、透過性樹脂部材の凹部に対して非透過性樹脂部材の凸部を嵌合させ、嵌合した状態でレーザー光の照射によって凸部を溶融させて流動させ、凹部と凸部との間に形成される隙間に流動樹脂が充填させるようにしたものである。このとき、先に溶融した非透過性樹脂部材が広がることにより、レーザー光が照射されるべきであるのに未照射のままである部分が非透過性樹脂部材に生じてしまう。この未照射部分の非透過性樹脂部材が溶融しないので、レーザー溶着に必要な溶融量が得られなくなり、溶着後の2つの樹脂部材間の接合強度が不足するおそれがある。このような課題に対し、実際に溶着が行われる部位すなわち溶着部の幅よりもレーザー光の照射のスポット径を大きくすることも考えられる。しかしながら溶着部の幅よりもスポット径を大きくした場合には、溶着部以外の位置にもレーザー光が照射されてその位置の樹脂も溶融してガスを発生する。このガスは樹脂部材におけるクラックの発生原因となり得るものであって好ましくない。溶着部での隙間の発生を防ぎ、レーザー溶着された位置における接合強度を高めるためには、レーザー溶着によって製造される製品の機能を達成する上で必要な樹脂溶融量をレーザー光の照射によって達成することが必要である。
本発明の目的は、製品の機能を達成する上で必要な樹脂溶融量を達成することによって、溶着部での隙間の発生を防ぎ、接合の強度をより高めることができるレーザー溶着方法と、このレーザー溶着方法を用いた流路部材の製造方法とを提供することにある。
本発明のレーザー溶着方法は、レーザー光を透過する第1の樹脂部材と、レーザー光を吸収する第2の樹脂部材とを溶着するレーザー溶着方法において、第1の樹脂部材の表面と第2の樹脂部材の表面とを当接させる当接工程と、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材との当接面に対して第1の樹脂部材の側から第1のスポット径でレーザー光を照射する第1の照射工程と、第1の照射工程の実施後、第1のスポット径よりも大きい第2のスポット径で当接面にレーザー光を照射する第2の照射工程と、を有することを特徴とする。
本発明の流路部材の製造方法は、吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられて液体を流通するための流路を備える流路部材の製造方法において、本発明に基づくレーザー溶着方法を使用し、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とによって流路の内壁面を形成するように、第1の樹脂部材と第2の樹脂部材とをレーザー溶着させることにより流路を形成することを特徴とする。
本発明によれば、レーザー溶着を行う際に、レーザー溶着を経て製造される製品の機能を達成する上で必要な樹脂溶融量を達成することによって、溶着部での隙間の発生を防ぎ、接合の強度をより高めることができるようになる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において同一の機能を有するものには同一の符号を付与することとし、重複する説明を省略する場合がある。
本発明に基づくレーザー溶着方法を説明する前に、また、レーザー溶着によって製造される製品の例として、液体吐出ヘッドに設けられる流路部材を説明する。図1は流路部材100を示している。流路部材100は、液体を吐出する吐出口が設けられている液体吐出ヘッドにおいて、吐出口や液体を吐出するためのエネルギーを発生する記録素子が設けられている部分にインクなどの液体を供給する流路を構成するための部材である。インクなどの液体は、流路部材100に形成される流路の内部を流通する。流路部材100には、流路などの詰まりによる液体吐出ヘッドの不吐を防止するためのフィルター(不図示)が設けられている。
図2は、図1のA−A線での断面を模式的に示す断面図である。流路部材100は、樹脂加熱用のレーザー光に対する透過性を有する第1の樹脂部材1と、このレーザー光に対して非透過性であってレーザー光を吸収して加熱される第2の樹脂部材2とをレーザー溶着することによって形成される。図では、第1の樹脂部材1及び第2の樹脂部材2はいずれも板状の部材として表されている。ここに示す例では、第1の樹脂部材1の第2の樹脂部材2に対向する表面は平坦に形成されている。一方、第2の樹脂部材2の第1の樹脂部材1に対向する表面では、その一部が凸部として形成されており、凸部4の頂面が第1の樹脂部材1の前述した平坦な面に当接している。凸部4は、第2の樹脂部材2の表面が当該表面に対して垂直な方向に突出するように形成された部分であり、突出の最先端部が頂面となっている。頂面はその全体で第1の樹脂部材1の表面と当接して当接面を構成し、この当接面が、第1の樹脂部材1と第2の樹脂部材2とが溶着する溶着部となっている。凸部4は、図3を用いて説明するように、第2の樹脂部材2の表面において例えばリブ状に長く延びて形成されるものであり、図2は、凸部4が延びる方向に垂直な面での断面として描かれている。凸部4が延びる方向に垂直な面での凸部4の断面形状は、図2に示すように矩形であるか、あるいは頂面側の幅が狭い台形である。以下の説明において、凸部4の断面とは、第2の樹脂部材2の表面に垂直な面で凸部4を切ったときの断面であるものとし、特に、凸部4がリブ状のものであるときは、凸部4が延びる方向に垂直な面で凸部4を切ったときの断面であるものとする。
流路部材100には液体の流路5が設けられ、流路5の断面は略矩形である。凸部4は、流路部材100に設けられる流路5の側壁を構成する。すなわち、流路5の内壁面のうち、底面と側面とは第2の樹脂部材2によって形成され、天井面は第1の樹脂部材1によって形成される。図2に示した例では、概ね同じ方向に延びる凸部4が4本形成されており、図示左端から1番目と2番目の凸部4が1番目の流路5の両方の側壁を構成し、3番目と4番目の凸部4が2番目の流路5の両方の側壁を構成している。
レーザー溶着は、第1の樹脂部材1を第2の樹脂部材2に相対的に押し付けるようにしながら、第1の樹脂部材1の第2の樹脂部材2とは反対側の面からこの面に対して垂直に凸部4の頂面すなわち当接面にレーザー光を照射することによって行われる。レーザー光は透過性の第1の樹脂部材1を透過し、非透過性の第2の樹脂部材2で構成された凸部4に入射し、この凸部4に吸収される。その結果、凸部4はその頂面が発熱して溶融する。このとき、凸部4の頂面は第1の樹脂部材1の表面に接しているので、第1の樹脂部材1にもレーザー光の吸収による熱が伝わる。第1の樹脂部材1が第2の樹脂部材2の凸部4に対して押圧された状態であるので、第1の樹脂部材1と第2の樹脂部材2とが溶着されることになる。
液体吐出ヘッドの流路部材100では、吐出対象の液体が流れる流路5を形成するものであるので、液体漏れが生じることは好ましくない。したがって、流路5を構成する第1の樹脂部材1と第2の樹脂部材2との間の気密性や接合強度が重要である。レーザー光を利用した樹脂部材間の溶着では、反りやうねりのために樹脂部材間に隙間が存在する場合には未溶着部が発生する。未溶着部をなくすために繰り返しレーザー光を走査して未溶着部を再溶融させることも考えられるが、既にレーザー光が照射された樹脂が溶融して広がってレーザー光のスポット径よりも大きくなるため、結局は樹脂部材にレーザー光の未照射部が生じる。そのためレーザー光の未照射部での樹脂部材の加熱が不十分になり、再溶融が行われず、そのため気密の確保が難しくなるとともに、十分な接合強度を得るために必要な溶かし量の得られなくなって接合強度不足となるおそれがある。そこで本発明では、溶着部における気密性の確保と接合強度との向上を目的として、溶着を行うべき当接面に対して第1のスポット径でレーザー光を照射し、その後、第1のスポット径よりも大きい第2のスポット径で当接面に対して再び照射を行う。
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態として、本発明に基づくレーザー溶着について、上述した流路部材100を形成する場合を例に挙げつつさらに詳しく説明する。図3は、レーザー溶着による流路部材100の製造を具体的に説明する図であり、(a)は第1の樹脂部材1の側面図、(b)は第2の樹脂部材2の上面図、(c)は完成した流路部材100の側面図である。図3(c)には、レーザー溶着を行うときに用いられるガラス板20も描かれている。第1の樹脂部材1は、レーザー光に対する透過性を有する板状の部材からなり、第2の樹脂部材2との位置決めを行うための穴10が貫通孔として形成されている。第1の樹脂部材1の厚さは例えば2.0mmであり、使用するレーザー光の波長などにもよるが、第1の樹脂部材1には、レーザー光を透過する例えば白色かつ耐液性のあるポリプロピレンを用いることができる。
以下、第1の実施形態として、本発明に基づくレーザー溶着について、上述した流路部材100を形成する場合を例に挙げつつさらに詳しく説明する。図3は、レーザー溶着による流路部材100の製造を具体的に説明する図であり、(a)は第1の樹脂部材1の側面図、(b)は第2の樹脂部材2の上面図、(c)は完成した流路部材100の側面図である。図3(c)には、レーザー溶着を行うときに用いられるガラス板20も描かれている。第1の樹脂部材1は、レーザー光に対する透過性を有する板状の部材からなり、第2の樹脂部材2との位置決めを行うための穴10が貫通孔として形成されている。第1の樹脂部材1の厚さは例えば2.0mmであり、使用するレーザー光の波長などにもよるが、第1の樹脂部材1には、レーザー光を透過する例えば白色かつ耐液性のあるポリプロピレンを用いることができる。
第2の流路部材2の上面には、図示左右方向に延びるリブ状の凸部4が形成されており、これらの凸部4は相互に平行に2本ずつ近接して配置している。近接する2本の凸部4に囲まれる領域が流路5となるべき領域である。図に示す例では近接する2本の凸部4が2組設けられているので、2本の流路5が形成されることになる。流路5の図示左右方向の両端では、その流路5を構成する2本の凸部4が相互に接続するとともに、液体を流路5に導入しまた排出するための貫通孔6が形成されている。これらとは別に、第2の流路部材2の上面の図示右端には、円環状に形成された凸部4が設けられている。さらに第2の流路部材2の上面には、第1の流路部材1を位置決めするために、第1の流路部材1に形成された穴10と嵌合可能な位置決めピン11が設けられている。レーザー光に対して非透過性である第2の流路部材2には、例えば、顔料を混入することによって黒色とされ、かつ耐液性を有するポリプロピレンが用いられる。完成した流路部材100では、第2の樹脂部材2の上面に形成された凸部4の頂面が第1の樹脂部材1の下面にレーザー溶着され、第1の樹脂部材1と第2の樹脂部材2に囲まれる空間として流路5が形成されている。
次に、第1の樹脂部材1と第2の樹脂部材2とを溶着させる工程について、図4を用いて説明する。図4(a),(b)は、いずれも図3(c)のB−B線に沿う断面図である。まず、図4(a)に示すように、第1の樹脂部材1を第2の樹脂部材2に対して位置決めし、第2の樹脂部材2の凸部4の頂面が第1の樹脂部材1の図示下面と当接するように、第2の樹脂部材2の上に第1の樹脂部材1を配置する。そしてこの状態で、第1の樹脂部材1が載置されている第2の樹脂部材2をレーザー溶着装置(不図示)に固定し、第1の樹脂部材1の上にガラス板20を固定し、ガラス板20を介して第1の樹脂部材1側からレーザー光Pを照射する。樹脂部材1,2は、いずれも射出成形などによる成形品であり、成形時の反りやヒケを有するため、ガラス板20により押圧することによって反りやヒケを矯正しつつレーザー光を照射する。本実施形態では、2段階の照射工程によって、レーザー溶着を実行する。以下、第1の照射工程と第2の照射工程とからなる2段階の照射工程によるレーザー溶着を説明する。
凸部4は、第2の樹脂部材2の表面においてリブ状に形成されており、図示する例では凸部4の断面形状は長方形であり、そのリブ幅W1、すなわち凸部4の延びる方向に直交する方向での幅は例えば1.0mmである。また第2の樹脂部材2の表面における凸部4の高さをH1で表す。第1の照射工程では、第1の樹脂部材1を介して当接面に照射されるレーザー光のスポット径を当接面におけるリブ幅W1すなわち凸部4の頂面におけるリブ幅と同じに設定する。レーザー光のスポット径がリブ幅W1よりも小さい場合、当接面において凸部4に未照射部が生じるため、第2の樹脂部材2の温度がその溶融温度まで昇温しにくくなり、樹脂の十分な溶かし量が得られず、溶着不良となる恐れがある。反対にレーザー光のスポット径がリブ幅W1よりも大きい場合には、凸部4以外にもレーザーが照射されることになるが、このとき樹脂部材1,2が当接していない領域にもレーザー光が照射されると、第2の樹脂部材2の表面からガスが生じる。このガスが凸部4に付着すると溶着部にクラックが生じる懸念がある。したがって、レーザー光のスポット径は、凸部4のリブ幅W1と同等であることが望ましい。もし、製品や組立、溶着装置などの制約からレーザー光のスポット径が凸部4のリブ幅W1よりも大きい状態で一括照射をしたい場合には、不要な部分にレーザー光が当たらないようにガラス20板に金属製のマスクを設けてもよい。マスクを設けることにより、凸部4の頂面すなわち当接面のみにレーザー光を照射させることが可能になる。
第1の照射工程では、第1の樹脂部材1の下面に第2の樹脂部材2の凸部4の頂面を当接させた状態で、エアーシリンダー(不図示)を用いて例えば500Nの荷重Fをガラス板20に加える。この荷重Fは、反りやヒケを矯正するためのものである、そして、ガラス板20越しに第1の樹脂部材1の上面に対して垂直に、当接面に向けてレーザー光源からレーザー光Pを照射し、レーザー溶着を行う。レーザー光源でのレーザー出力は例えば15Wとされる。レーザー光Pは、第1の樹脂部材1と透過し、第1の樹脂部材1と第2の樹脂部材2の凸部4の頂面との当接面に到達し、当接面において第2の樹脂部材2に吸収される。上述したように凸部4は第2の樹脂部材2の表面においてリブ状に延びるように設けられているので、レーザー溶着装置は、凸部の延びる方向に沿ってレーザー光を照射する。レーザー光の照射速度は例えば30mm/秒とする。このようなレーザー照射を行うことにより、第2の樹脂部材2の凸部4は、レーザー光を吸収したことによる昇温と荷重Fとの作用によって変形し、凸部4は、その第1の樹脂部材1と接する面の幅を広げながら、第1の樹脂部材1に溶着される。凸部4が第1の樹脂部材1に溶着したときの凸部4のリブ幅はW1からW2に広がる。
第2の照射工程によりレーザー溶着を行う際のレーザー光のスポット径は、第1の照射工程により、凸部4が第1の樹脂部材1と当接する部分の幅がW1からW2に拡大したことに伴って、W2に設定される。幅W1が1.0mmであったとして、W2は例えば1.2mmである。また凸部4の一部が溶融して第1の樹脂部材1の表面に沿って拡がることに対応して凸部4の高さはH1からH2へと低くなる。この状態で、第2の照射工程にとして、図4(b)に示すように、当接面に向けた再度のレーザー照射を実行する。このとき、レーザー光のスポット径がW2に変更されていることにより、当接面において凸部4へのレーザー光の未照射部は発生せず、凸部4において第2の樹脂部材2が再び溶けることが可能になる。第2の照射工程が終了した時の凸部4の高さは、第1の照射工程を開始する前の凸部4の高さH1よりも低くなる。設計強度上で必要となる凸部4の高さとなるまで、レーザー光のスポット径を大きくしながら第2の溶着工程を繰り返すことによって、必要な接合強度を有する流路部材100を得ることができる。第1の照射工程の場合と同様に、レーザー光のスポット径がW2よりも大きい状態で一括照射をしたい場合には、不要な部分にレーザー光が当たらないようにガラス20板に金属製のマスクを設けてもよい。
以上の説明では、液体吐出ヘッドに備えられる流路部材100の製造を例に挙げて本発明に基づくレーザー溶着方法を説明したが、本発明に基づくレーザー溶着方法によって製造されるものは、流路部材に限定されるものではない。本発明に基づくレーザー溶着方法によれば気密性の高い接合が実現できるので、インクなどの液体を貯えるためのタンク類、例えばインクタンクの製造にも本発明に基づくレーザー溶着方法を使用することができる。また、第2の樹脂部材2が凸部4を有しない場合にも本発明の基づくレーザー溶着方法を用いることができる。例えば、第2の樹脂部材2が棒状の部材であるときに、この棒状の部材の先端面に第1の樹脂部材1をレーザー溶着する場合においても、ここで説明した2段階の溶着工程を実施して接合強度の高い溶着部を形成することができる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、平坦な面である第1の樹脂部材1の表面に対し、断面形状が長方形である凸部4を有する第2の樹脂部材2をレーザー溶着により接合させているが、第1の樹脂部材1の表面形状や凸部4の断面形状はこれに限られるものではない。第2の実施形態では、第1の樹脂部材1の表面形状や凸部4の断面形状についてのバリエーションを開示する。例えば、図5に示すように、第1の樹脂部材1において第2の樹脂部材2の凸部4の頂面と当接することとなる表面を、平坦な面ではなく凹部3を有する面とし、凹部3内に第2の樹脂部材2の凸部4を受け入れるようにすることができる。第2の樹脂部材2の表面において凸部4がリブ状に延びて形成される場合には、第1の樹脂部材1の凹部3も溝状に形成される。凹部3の断面形状は、図5(a)に示すように、第1の樹脂部材1の厚さ方向に狭くなるテーパ形状である台形であってもよいし、図5(b)に示すように長方形であってもよい。凹部3の断面とは、第2の樹脂部材1の表面に垂直な面で凹部3を切ったときの断面であるものとし、特に、凹部3が溝として形成されているときは、凹部3が延びる方向に垂直な面で凹部3を切ったときの断面であるものとする。凹部3において第1の樹脂部材1の厚さ方向において最奥となる部分は、厚さ方向に垂直な平面領域として構成され、この平面領域において第2の樹脂部材2の凸部4が第1の樹脂部材1の表面に当接する。平面領域の幅Lは凸部4の頂面の幅W1よりも広いことが必要であり、例えばW1が1.0mmであればLは1.2mmとされる。本実施形態では、第1の樹脂部材1の凹部3と第2の樹脂部材2の凸部4とを嵌合させることは意図していないので、凹部3は、凸部4よりも大きく形成される。具体的には、凸部4は、第1の照射工程を実施する前の状態においてその頂面以外では凹部3とは接しないようにする。
第1の実施形態では、平坦な面である第1の樹脂部材1の表面に対し、断面形状が長方形である凸部4を有する第2の樹脂部材2をレーザー溶着により接合させているが、第1の樹脂部材1の表面形状や凸部4の断面形状はこれに限られるものではない。第2の実施形態では、第1の樹脂部材1の表面形状や凸部4の断面形状についてのバリエーションを開示する。例えば、図5に示すように、第1の樹脂部材1において第2の樹脂部材2の凸部4の頂面と当接することとなる表面を、平坦な面ではなく凹部3を有する面とし、凹部3内に第2の樹脂部材2の凸部4を受け入れるようにすることができる。第2の樹脂部材2の表面において凸部4がリブ状に延びて形成される場合には、第1の樹脂部材1の凹部3も溝状に形成される。凹部3の断面形状は、図5(a)に示すように、第1の樹脂部材1の厚さ方向に狭くなるテーパ形状である台形であってもよいし、図5(b)に示すように長方形であってもよい。凹部3の断面とは、第2の樹脂部材1の表面に垂直な面で凹部3を切ったときの断面であるものとし、特に、凹部3が溝として形成されているときは、凹部3が延びる方向に垂直な面で凹部3を切ったときの断面であるものとする。凹部3において第1の樹脂部材1の厚さ方向において最奥となる部分は、厚さ方向に垂直な平面領域として構成され、この平面領域において第2の樹脂部材2の凸部4が第1の樹脂部材1の表面に当接する。平面領域の幅Lは凸部4の頂面の幅W1よりも広いことが必要であり、例えばW1が1.0mmであればLは1.2mmとされる。本実施形態では、第1の樹脂部材1の凹部3と第2の樹脂部材2の凸部4とを嵌合させることは意図していないので、凹部3は、凸部4よりも大きく形成される。具体的には、凸部4は、第1の照射工程を実施する前の状態においてその頂面以外では凹部3とは接しないようにする。
図6に示すように、凸部4の断面形状を、第2の樹脂部材2の表面から離れるにしたがって幅が狭くなるような台形とすることもできる。この場合、台形の頂上部分が凸部4の頂面となる。図6(a)は、第1の樹脂部材1の表面に断面が台形である凹部3が形成されているときに、台形の断面形状を有する凸部4が凹部3内で第1の樹脂部材1と当接している状態を示している。図6(b)は、第1の樹脂部材1の表面に断面が長方形である凹部3が形成されているときに、台形の断面形状を有する凸部4が凹部3内で第1の樹脂部材1と当接している状態を示している。図6に示すものでも、凸部4は、第1の照射工程を実施する前の状態において、その頂面でのみ凹部3と接する。
第1の樹脂基板1の表面に凹部3を設けてこの凹部3の内部で第2の樹脂基板2の凸部4と第1の樹脂基板1とを当接させることにより、第1の照射工程によって溶融した樹脂の広がりを凹部3内に限定することができる。その結果、第1の実施形態のように第1の樹脂基板1の平坦な面に対してレーザー溶着を行う場合に比べ、第2の照射工程でのレーザー光のスポット径を小さくすることができ、レーザー光をより効率よく凸部4に吸収させることができる。また、第2の実施形態では、樹脂の広がりの範囲が凹部3内に限定されるため、樹脂の溶かし量をより精密に制御することが可能になる。
1 第1の樹脂部材
2 第2の樹脂部材
3 凹部
4 凸部
2 第2の樹脂部材
3 凹部
4 凸部
Claims (8)
- レーザー光を透過する第1の樹脂部材と、前記レーザー光を吸収する第2の樹脂部材とを溶着するレーザー溶着方法において、
前記第1の樹脂部材の表面と前記第2の樹脂部材の表面とを当接させる当接工程と、
前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材との当接面に対して前記第1の樹脂部材の側から第1のスポット径で前記レーザー光を照射する第1の照射工程と、
前記第1の照射工程の実施した後、前記第1のスポット径よりも大きい第2のスポット径で前記当接面に前記レーザー光を照射する第2の照射工程と、
を有することを特徴とする、レーザー溶着方法。 - 前記第1の照射工程及び前記第2の照射工程を実施しているときに、前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とが前記当接面を介して相互に押し付けられるように荷重を加える、請求項1に記載のレーザー溶着方法。
- 前記第2の樹脂部材の前記表面は凸部を有し、前記第1の樹脂部材の前記表面は平坦な面または凹部を有し、前記当接工程において、前記第1の樹脂部材の前記平坦な面または前記凹部の内部の面に前記凸部の頂面を当接させる、請求項1または2に記載のレーザー溶着方法。
- 前記第1のスポット径は、前記凸部の前記頂面の幅に等しい、請求項3に記載のレーザー溶着方法。
- 前記第2の照射工程が終了した時の前記凸部の高さが、前記第1の照射工程の開始する前の前記凸部の高さよりも低い、請求項3または4に記載のレーザー溶着方法。
- 前記第2の樹脂部材の表面に垂直な面での前記凸部の断面形状が矩形または台形である、請求項3乃至5のいずれか1項に記載のレーザー溶着方法。
- 前記当接工程において、前記凸部の前記頂面は、前記第1の樹脂部材の前記凹部の内部の面に当接させられ、
前記第1の樹脂部材の表面に垂直な面での前記凹部の断面形状が矩形または台形である、請求項3乃至6のいずれか1項に記載のレーザー溶着方法。 - 吐出口から液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられて前記液体を流通するための流路を備える流路部材の製造方法において、請求項1乃至7のいずれか1項に記載されたレーザー溶着方法を使用し、前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とによって前記流路の内壁面を形成するように、前記第1の樹脂部材と前記第2の樹脂部材とをレーザー溶着させることにより前記流路を形成することを特徴とする、流路部材の製造方法。
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