以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、支持体と、支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を含み、樹脂組成物層が、支持体側に設けられた第1の樹脂組成物層と、支持体とは反対側に設けられた第2の樹脂組成物層との2層からなり、さらに、以下の(1)〜(3)の特徴を備える。
(1)第1の樹脂組成物層が、15m2/g以上の比表面積を有する(A)無機充填材を含む。
(2)第2の樹脂組成物層が、(A)無機充填材を含み又は含まず、第2の樹脂組成物層の(A)成分の含有量が、第2の樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、5質量%以下である。
(3)第1の樹脂組成物層の厚みが、第2の樹脂組成物層の厚みを上回る。
<支持体>
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。)、ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。)、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、トリアセチルアセテート等が挙げられる。
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
また、支持体として、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種類以上の離型剤が挙げられる。
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、15μm以上であることがなお一層好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。支持体の厚みの上限としては、特に限定されないが、75μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
<樹脂組成物層>
本発明の樹脂組成物層は、第1の樹脂組成物層と、第2の樹脂組成物層との2層からなり、第1の樹脂組成物層の厚みが、第2の樹脂組成物層の厚みを上回るという特徴を備える。
第1の樹脂組成物層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下である。第1の樹脂組成物層の厚みの下限は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは3μm以上であり、特に好ましくは5μm以上である。
第2の樹脂組成物層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。第2の樹脂組成物層の厚みの下限は、特に限定されないが、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上であり、特に好ましくは1.5μm以上である。
第1の樹脂組成物層の厚みの第2の樹脂組成物層の厚みに対する比(第1の樹脂組成物層の厚み/第2の樹脂組成物層の厚み)は、特に限定されないが、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは2.5以上であり、特に好ましくは3以上である。比の上限は、特に限定されないが、好ましくは300以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは50以下であり、特に好ましくは20以下である。
<樹脂組成物層の成分>
本発明の樹脂組成物層は、第1の樹脂組成物層において15m2/g以上の比表面積を有する(A)無機充填材を含み、第2の樹脂組成物層において任意成分として(A)無機充填材を含み得る。また、本発明の樹脂組成物層には、(A)無機充填材以外の成分として、例えば、(B)エポキシ樹脂並びに(C)硬化剤及び/又は(D)硬化促進剤の組み合わせ、(E)熱可塑性樹脂、(F)難燃剤、及び(G)その他の添加剤から選ばれる成分が含まれ得る。
<(A)無機充填材>
本発明の樹脂組成物層のうち、第1の樹脂組成物層は、15m2/g以上の比表面積を有する(A)無機充填材を含み、その含有量は、特に限定されない。一方、第2の樹脂組成物層は、(A)無機充填材を含み又は含まず、その含有量は、第2の樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、5質量%以下である。
(A)無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。(A)無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP−30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60−05」、「SP507−05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP−30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO−C4」、「SO−C2」、「SO−C1」;などが挙げられる。
(A)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下、さらにより好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。(A)無機充填材の平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、さらにより好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出しうる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA−960」等が挙げられる。
(A)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM−7103」(3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
表面処理剤による表面処理の程度は、(A)無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(A)無機充填材100質量%は、0.2質量%〜5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%〜3質量%で表面処理されていることが好ましく、0.3質量%〜2質量%で表面処理されていることが好ましい。
表面処理剤による表面処理の程度は、(A)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。(A)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(A)無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
(A)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」等を使用することができる。
第1の樹脂組成物層に含まれる(A)無機充填材の比表面積は、15m2/g以上であり、好ましくは20m2/g以上であり、より好ましくは25m2/g以上である。上限には特段の制限は無いが、好ましくは60m2/g以下であり、より好ましくは50m2/g以下であり、さらに好ましくは40m2/g以下である。
第2の樹脂組成物層に含まれる(A)無機充填材の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは5m2/g以上、さらに好ましくは10m2/g以上、15m2/g以上、20m2/g以上であり、特に好ましくは25m2/g以上である。上限は、特に限定されないが、好ましくは60m2/g以下であり、より好ましくは50m2/g以下であり、さらに好ましくは40m2/g以下である。
(A)無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM−1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
第1の樹脂組成物層における(A)無機充填材の含有量は、第1の樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。その含有量の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。
第2の樹脂組成物層における(A)無機充填材の含有量は、第2の樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%としたとき、5質量%以下であり、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0.1質量%以下、特に好ましくは、0質量%である。
<(B)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、任意成分として(B)エポキシ樹脂を含む場合がある。
(B)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、(B)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。一実施形態では、本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂を含む。一実施形態では、本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、エポキシ樹脂として、固体状エポキシ樹脂を含む。本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」、日本曹達社製の「JP−100」、「JP−200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200HH」、「HP−7200H」、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(キシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは20:1〜1:20、より好ましくは10:1〜1:10、特に好ましくは5:1〜1:5である。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.〜5000g/eq.、より好ましくは50g/eq.〜3000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.〜2000g/eq.、さらにより好ましくは110g/eq.〜1000g/eq.である。この範囲となることで、樹脂シートの硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
(B)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。具体的には、(B)エポキシ樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として島津製作所社製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
第1の樹脂組成物層又は第2の樹脂組成物層が(B)エポキシ樹脂を含有する場合、各樹脂組成物層における(B)成分の含有量の下限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。(B)成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
本明細書中、「樹脂成分」とは、樹脂組成物層から(A)無機充填剤を除いた残りの全不揮発成分を意味する。したがって、「樹脂成分」には、低分子化合物も含まれ得る。
<(C)硬化剤>
本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、任意成分として(C)硬化剤を含む場合がある。
好適な実施形態において、第2の樹脂組成物層における(C)成分は、(C−1)ヒドロキシ基を2個以上有する芳香族炭化水素環を含む繰り返し単位を有する化合物を含み、さらに(C−1)成分とは別にその他の硬化剤を含む場合がある。当該実施形態によれば、ハローイング現象を効果的に抑制することができる。当該実施形態において、第2の樹脂組成物層における(C−1)成分の含有量が、第2の樹脂組成物層における(C)成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。(C−1)成分の含有量の上限は、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
一方、第1の樹脂組成物層における(C)成分は、(C−1)成分を含有してもよいが、好適な実施形態においては(C−1)成分を含まず、(C−1)成分以外の硬化剤を含む。
<(C−1)ヒドロキシ基を2個以上有する芳香族炭化水素環を含む繰り返し単位を有する化合物>
第2の樹脂組成物層において、(C)成分が、(C−1)成分を含むことにより、より効果的にハローイング現象を抑制することができる。
ここで、用語「芳香族炭化水素環」は、単環又は縮合環の芳香族炭化水素環を意味する。炭素原子数は、6〜14個であることが好ましく、6〜10個であることがより好ましい。芳香族炭化水素環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。(C−1)成分1分子に含まれる芳香族炭化水素環の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
(C−1)成分分子が含む芳香族炭化水素環のうち、少なくとも一つは、当該芳香族炭化水素環1個当たり2個以上のヒドロキシ基を有する。芳香族炭化水素環1個当たりのヒドロキシ基の数は、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、2個以上4個以下であることが好ましく、2個又は3個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
(C−1)成分1分子当たりの、2個以上のヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素環の数は、通常2個以上、好ましくは3個以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは8個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは6個以下、特に好ましくは5個以下である。
(C−1)成分分子は、ヒドロキシ基を2個以上有する芳香族炭化水素環を含む繰り返し単位により、環状及び/又は鎖状構造を形成している。
好適な(C−1)成分の例としては、下記の式(1)で表される化合物、及び、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
式(1)において、R0は、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を組み合わせた基であってもよい。2価の炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上であり、好ましくは3以上、6以上又は7以上としうる。炭素原子数の上限は、好ましくは20以下、15以下又は10以下としうる。
R0の具体例としては、下記の炭化水素基が挙げられる。
式(1)において、n1は、0以上6以下の整数を表す。中でも、n1は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
式(2)において、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を組み合わせた基であってもよい。中でも、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、鎖状飽和脂肪族炭化水素基が特に好ましい。1価の炭化水素基の炭素原子数は、通常1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、10以下又は8以下である。R1〜R4の好ましい例としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基;が挙げられる。
中でも、(C−1)成分としては、下記式(3)で表される化合物、及び、下記式(4)で表される化合物が好ましい。式(3)において、n2は、式(1)のn1と同様に定義される整数を表し、好ましい範囲も同様である。また、式(4)において、R1〜R4は、式(2)におけるR1〜R4と同義である。
式(3)で表される化合物の市販品としては、例えば、下記式(5)で表される新日鉄住金化学社製のナフトール系硬化剤「SN395」が挙げられる。式(5)において、n3は、2又は3を表す。また、式(4)で表される化合物の市販品としては、例えば、群栄化学工業社製のフェノール系硬化剤「GRA13H」が挙げられる。
(C−1)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(C−1)成分の水酸基当量は、樹脂組成物層の硬化物としての絶縁層の架橋密度を高める観点、及び、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50g/eq以上、より好ましくは60g/eq以上、更に好ましくは70g/eq以上であり、また、好ましくは200g/eq以下、より好ましくは150g/eq以下、特に好ましくは120g/eq以下である。水酸基当量は、1当量のヒドロキシ基を含む樹脂の質量である。
第1の樹脂組成物層においては(C−1)成分を含有しないことが好ましい。
第2の樹脂組成物層が(C−1)成分を含有する場合、当該樹脂組成物層における(C−1)成分の含有量の下限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは3.5質量%以上である。
第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層における(C−1)成分の含有量の上限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
<(C−1)成分以外の硬化剤>
(C−1)成分以外の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤((C−1)成分に該当するものを除く)、ナフトール系硬化剤((C−1)成分に該当するものを除く)、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。(C−1)成分以外の硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、被着体に対する密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学社製の「SN−170」、「SN−180」、「SN−190」、「SN−475」、「SN−485」、「SN−495」、「SN−375」、DIC社製の「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−3018」、「LA−3018−50P」、「LA−1356」、「TD2090」、「TD−2090−60M」等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。酸無水物系硬化剤の市販品としては、新日本理化社製の「HNA−100」、「MH−700」等が挙げられる。
活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンタレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000」、「HPC−8000H」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L」、「EXB−8000L−65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ−OP100D」、「ODA−BOZ」;昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」などが挙げられる。
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート))、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2〜1:2の範囲が好ましく、1:0.3〜1:1.5がより好ましく、1:0.4〜1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の不揮発成分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の不揮発成分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する。
第1の樹脂組成物層又は第2の樹脂組成物層が(C−1)成分以外の硬化剤を含有する場合、各樹脂組成物層における(C−1)成分以外の硬化剤の含有量の下限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。(C−1)成分以外の硬化剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
<(D)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、任意成分として(D)硬化促進剤を含む場合がある。
(D)硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200−H50」等が挙げられる。
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
第1の樹脂組成物層又は第2の樹脂組成物層が(D)硬化促進剤を含有する場合、各樹脂組成物層における(D)硬化促進剤の含有量の下限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上である。(D)硬化促進剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
<(E)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、任意成分として(E)熱可塑性樹脂を含む場合がある。
(E)熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(E)熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX−5Z)、KSシリーズ(例えばKS−1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
第1の樹脂組成物層又は第2の樹脂組成物層が(E)熱可塑性樹脂を含有する場合、各樹脂組成物層における(E)熱可塑性樹脂の含有量の下限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。(E)熱可塑性樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
<(F)難燃剤>
本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、任意成分として(F)難燃剤を含む場合がある。
(F)難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられ、ホスファゼン化合物が好ましい。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ホスファゼン化合物は、窒素とリンを構成元素とする環状化合物であれば特に限定されないが、ホスファゼン化合物は、フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物であることが好ましい。
ホスファゼン化合物の具体例としては、例えば、大塚化学社製の「SPH−100」、「SPS−100」、「SPB−100」、「SPE−100」、伏見製薬所社製の「FP−100」、「FP−110」、「FP−300」、「FP−400」等が挙げられ、大塚化学社製の「SPH−100」が好ましい。
ホスファゼン化合物以外の難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光社製の「HCA−HQ」、大八化学工業社製の「PX−200」等が挙げられる。難燃剤としては加水分解しにくいものが好ましく、例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド等が好ましい。
第1の樹脂組成物層又は第2の樹脂組成物層が(F)難燃剤を含有する場合、各樹脂組成物層における(F)難燃剤の含有量の下限は、樹脂組成物層中の樹脂成分を100質量%としたとき、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上である。(F)難燃剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
<(G)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物層(第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層)は、上述した成分以外に、任意の成分として、さらにその他の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填材、エラストマー、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、重合開始剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。それぞれの含有量は当業者であれば適宜設定できる。
<樹脂組成物層の特性>
本発明の樹脂組成物層を硬化させることにより、樹脂組成物層の硬化物で形成された絶縁層を得ることができる。この絶縁層は、小径ビアホールの加工性に優れ、且つ、粗化処理後のビアホールにおける無機充填材の残留を抑制できる。さらに、前記絶縁層によれば、通常、ハローイング現象を抑制できる。ハローイング現象とは、ビアホール周辺において、絶縁層と内装基板との間で層間剥離が生じることをいう。以下、これらの効果について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物層を硬化させて得た絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この図1においては、ビアホール110のボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る絶縁層100は、導体層210を含む内層基板200上に形成された樹脂組成物層を硬化させて得られた層であって、前記樹脂組成物層の硬化物からなる。また、絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。ビアホール110は、一般に、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに近いほど径が大きく、導体層210に近いほど径が小さい順テーパ状に形成され、理想的には、絶縁層100の厚み方向において一定の径を有する柱状に形成される。このビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uにレーザー光を照射して、絶縁層100の一部を除去することで、形成される。
前記のビアホール110の導体層210側のボトムを、適宜「ビアボトム」と呼び、符号120で示す。そして、このビアボトム120の径を、ボトム径Lbと呼ぶ。また、ビアホール110の導体層210とは反対側に形成された開口を、適宜「ビアトップ」と呼び、符号130で示す。そして、このビアトップ130の径を、トップ径Ltと呼ぶ。通常、ビアボトム120及びビアトップ130は、絶縁層100の厚み方向から見た平面形状が円形状に形成されるが、楕円形状であってもよい。ビアボトム120及びビアトップ130の平面形状が楕円形状である場合、そのボトム径Lb及びトップ径Ltは、それぞれ、前記の楕円形状の長径を表す。
このとき、ボトム径Lbをトップ径Ltで割って得られるテーパー率Lb/Lt(%)が100%に近いほど、そのビアホール110の形状は良好であり、優れたビアホールの加工性を有するといえる。本発明の樹脂組成物層を用いれば、ビアホール110の形状を容易に制御することが可能であるので、テーパー率Lb/Ltが比較的100%に近いビアホール110を実現することができる。
例えば、樹脂組成物層を50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)で5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)加熱し、次いで通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)で5分間〜120分間(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)加熱して硬化させて得た絶縁層100に、レーザー光(例えばUV−YAGレーザー光)を照射して、ビアホール110(例えばトップ径Ltが17μm〜13μmの範囲内のビアホール)を形成した場合、そのビアホール110のテーパー率Lb/Ltを、好ましくは50%〜100%、より好ましくは60%〜100%、さらに好ましくは70%〜100%、特に好ましくは75%〜100%、80%〜100%、又は85%〜100%にできる。
ビアホール110のテーパー率Lb/Ltは、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltから計算できる。また、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
図2は、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物層を硬化させて得た絶縁層100の、導体層210(図2では図示せず。)とは反対側の面100Uを模式的に示す平面図である。
図2に示すように、ビアホール110を形成された絶縁層100を見ると、このビアホール110の周囲に、絶縁層100が変色した変色部140が観察されることがある。この変色部140は、ビアホール110の形成時における樹脂の劣化によって形成されうるもので、通常、ビアホール110から連続して形成される。また、多くの場合、変色部140は、白化部分となっている。
図3は、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物層を硬化させて得た、粗化処理後の絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この図3においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図3に示すように、ビアホール110が形成された絶縁層100に粗化処理を施すと、変色部140の絶縁層100が導体層210から剥離して、ビアボトム120のエッジ170から連続したハローイング部としての間隙部180が形成されることがある。この間隙部180は、通常、粗化処理の際に変色部140が浸食されて形成される。
本発明の樹脂組成物層を用いることにより、変色部140のサイズを小さくでき、理想的には変色部140を無くすことができる。したがって、導体層210からの絶縁層100の剥離を抑制することができるので、間隙部180のサイズを小さくできる。
ビアボトム120のエッジ170は、間隙部180の内周側の縁部に相当する。よって、ビアボトム120のエッジ170から、間隙部180の外周側の端部(即ち、ビアボトム120の中心120Cから遠い側の端部)190までの距離Wbは、間隙部180の面内方向のサイズに相当する。ここで、面内方向とは、絶縁層100の厚み方向に垂直な方向をいう。また、以下の説明において、前記の距離Wbを、ビアホール110のビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbということがある。
ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbによって、間隙部180の形成の抑制の程度を評価できる。具体的には、ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbが小さいほど、間隙部180の形成を効果的に抑制できたと評価できる。
また、間隙部180は、変色部140の絶縁層100が剥離して形成されたものであるから、その寸法は、ハローイング現象の程度に相関がある。よって、ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたと評価できる。
例えば、樹脂組成物層を50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)で5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)加熱し、次いで通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)で5分間〜120分間(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)加熱して硬化させて得た絶縁層100に、レーザー光(例えばUV−YAGレーザー光)を照射して、トップ径Ltが17μm〜13μmの範囲内のビアホール110を形成する。その後、膨潤液に浸漬し、次いで、酸化剤溶液に浸漬し、次いで、中和液に浸漬した後、乾燥する。このような粗化処理を施した場合、ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbを、通常10μm以下、好ましくは6μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下にできる。
ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
さらに、本発明者の検討によれば、一般に、ビアホール110の径が大きいほど、変色部140のサイズが大きくなり易いので、間隙部180のサイズも大きくなり易い傾向があることが判明している。よって、ビアホール110の径に対する間隙部180のサイズの比率によって、ハローイング現象の抑制の程度を評価でき、ひいては間隙部180の形成の抑制の程度を評価できる。例えば、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbにより、評価ができる。ここで、ビアホール110のボトム半径Lb/2とは、ビアホール110のビアボトム120の半径をいう。また、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbとは、ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbを、ビアホール110のボトム半径Lb/2で割って得られる比率である。ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbが小さいほど、間隙部180の形成を効果的に抑制できたことを表す。
例えば、樹脂組成物層を50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)で5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)加熱し、次いで通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)で5分間〜120分間(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)加熱して硬化させて得た絶縁層100に、レーザー光(例えばUV−YAGレーザー光)を照射して、ビアホール110(例えばトップ径Ltが17μm〜13μmの範囲内のビアホール)を形成する。その後、膨潤液に浸漬し、次いで、酸化剤溶液に浸漬し、次いで、中和液に浸漬した後、乾燥する。このような粗化処理を施した場合、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbを、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下、特に好ましくは65%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下にできる。
ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、ビアホール110のボトム径Lb、及び、ビアホール110のビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbから計算できる。
プリント配線板の製造過程において、ビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに別の導体層(図示せず)が設けられていない状態で、形成される。そのため、プリント配線板の製造過程が分かれば、導体層210側にビアボトム120があり、導体層210とは反対側にビアトップ130が開口している構造が、明確に認識できる。しかし、完成したプリント配線板では、絶縁層100の両側に導体層が設けられている場合がありうる。この場合、導体層との位置関係によってビアボトム120とビアトップ130とを区別することが難しいことがありえる。しかし、通常、ビアトップ130のトップ径Ltは、ビアボトム120のボトム径Lb以上の大きさである。したがって、前記の場合、径が大きさによって、ビアボトム120とビアトップ130とを区別することが可能である。
また、ビアホール110が形成された絶縁層100に粗化処理を施したあと、従来、ビアホール110内に無機充填材が残留することがあるが、本発明の樹脂組成物層を用いることにより、粗化処理後のビアホールにおける無機充填材の残留を抑制することができるので、導体層の表面粗度をより小さくした場合であっても、導通不良を抑制できる。
例えば、樹脂組成物層を50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)で5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)加熱し、次いで通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)で5分間〜120分間(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)加熱して硬化させて得た絶縁層100に、レーザー光(例えばUV−YAGレーザー光)を照射して、ビアホール110(例えばトップ径Ltが17μm〜13μmの範囲内のビアホール)を形成する。その後、膨潤液に浸漬し、次いで、酸化剤溶液に浸漬し、次いで、中和液に浸漬した後、乾燥する。このような粗化処理を施した場合、無機充填材残留数を、通常10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0にできる。ここで、無機充填材残留数とは、粗化処理後のビアホール110のビアボトム120をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察し、観察された画像から見出された無機充填材の粒子数を意味する。
粗化処理後のビアホールにおける無機充填材の残留を抑えられることから、導体層210の主面の算術平均粗さRaが100nm以下であっても、導通不良を抑制できる。
<樹脂シートにおける支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層>
本発明の樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面、即ち、第2の樹脂組成物層上)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムは、例えば、回路基板の絶縁層に用いる場合、ラミネート前に剥離される構成であり、保護フィルムを用いることにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
保護フィルムとしては、例えば、プラスチック材料からなるフィルムが好ましく、プラスチック材料としては、支持体の材料として挙げたものと同様なものが挙げられる。
また、保護フィルムとして、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き保護フィルムを使用してもよい。離型層付き保護フィルムの離型層に使用する離型剤としては、例えば、離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤として挙げたものと同様のものが挙げられる。
保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましく、15μm以上であることがなお一層好ましく、20μm以上であることが特に好ましい。保護フィルムの厚みの上限としては、特に限定されないが、75μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。保護フィルムの厚みとしては、例えば、1μm〜40μmである。なお、離型層付き保護フィルムを使用する場合、離型層付き保護フィルム全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。なお、保護フィルムは、樹脂組成物層と支持体との接着力に対して、樹脂組成物層と保護フィルムとの接着力の方がより小さいものが好ましい。
本発明の樹脂組成物層は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物層(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物層)として好適に使用することができ、更に、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物層(プリント配線板の層間絶縁層形成用の樹脂組成物層)としてより好適に使用することができる。
特に、本発明の樹脂組成物層から得られる硬化物が、小径ビアホールの加工性に優れ、且つ、粗化処理後のビアホールにおける無機充填材の残留を抑制できるという特徴を有しており、特定の実施形態においては、ハローイング現象を抑制できるという特徴を有しているため、前記の樹脂組成物層は、ビアホールを有する絶縁層を形成するための樹脂組成物層(ビアホールを有する絶縁層形成用の樹脂組成物層)として好適であり、中でも、トップ径15μm以下のビアホールを有する絶縁層形成用の樹脂組成物層として特に好適である。
<樹脂シートの製造方法>
本発明の樹脂シートの製造方法としては、支持体と、第1の樹脂組成物層及び第2の樹脂組成物層の2層からなる樹脂組成物層と、を含む本発明の樹脂シートを製造できる方法であれば特に限定されない。樹脂シートの製造方法の例としては、下記で説明する第一の方法及び第二の方法が挙げられる。
第一の方法において、樹脂シートは、例えば、
(A1)支持体上にダイコーター等を用いて第1の樹脂組成物層の成分を含むワニス(ワニスとは樹脂組成物層の各成分及び任意で有機溶剤を含む塗工液をいう。以下同様。)を塗布し、乾燥して、第1の樹脂組成物層を形成することにより、支持体付き仮樹脂シートを準備する工程、及び
(A2)支持体付き仮樹脂シートの第1の樹脂組成物層上に、第2の樹脂組成物層の成分を含むワニスを塗布し、乾燥して、第2の樹脂組成物層を形成することにより、樹脂シートを得る工程
を含む方法によって、製造できる。
第一の方法において、さらに、工程(A2)の後に、(A3)樹脂シートの第2の樹脂組成物層上に保護フィルムを貼り合わせる工程を含んでいてもよい。また、第一の方法において、さらに、工程(A3)の後に、(A4)保護フィルムを除去する工程を含んでいてもよい。
第二の方法において、樹脂シートは、例えば、
(B1)支持体上にダイコーター等を用いて第1の樹脂組成物層の成分を含むワニスを塗布し、乾燥して、第1の樹脂組成物層を形成することにより、支持体付き仮樹脂シートを準備する工程、
(B2)保護フィルム上にダイコーター等を用いて第2の樹脂組成物層の成分を含むワニスを塗布し、乾燥して、第2の樹脂組成物層を形成することにより、保護フィルム付き仮樹脂シートを準備する工程、及び
(B3)支持体付き仮樹脂シートと、保護フィルム付き仮樹脂シートとを接合して樹脂シートを得る工程
を含む方法によって、製造できる。
第二の方法において、さらに、工程(B3)の後に、(B4)保護フィルムを除去する工程を含んでいてもよい。
ワニスに含まれ得る有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;メタノール、エタノール、2−メトキシプロパノール等のアルコール系溶媒;シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
本発明の樹脂シートは、プリント配線板の絶縁層を形成するための(プリント配線板の絶縁層形成用の)樹脂シートとして好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂シート(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂シート)としてより好適に使用することができる。
<プリント配線板>
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物層の硬化物で形成された絶縁層を備える。また、この絶縁層は、小径ビアホールの加工性に優れ、且つ、粗化処理後のビアホールにおける無機充填材の残留を抑制できる。よって、本発明の樹脂組成物層を用いることにより、ビアホールの形状の悪化による性能の低下を抑制でき、さらには、導体層の表面粗度をより小さくした場合であっても、導通不良を抑制でき、それにより、プリント配線板の薄型化を達成することができる。
ビアホールは、通常、当該ビアホールを有する絶縁層の両側に設けられた導体層を導通させるために設けられる。よって、本発明のプリント配線板は、通常、第1の導体層、第2の導体層、及び、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された絶縁層を含む。そして、絶縁層にビアホールが形成され、そのビアホールを通じて第1の導体層と第2の導体層とが導通しうる。
以下、図面を示して、特定プリント配線板について説明する。図4は、本発明の第二実施形態に係るプリント配線板300の模式的な断面図である。この図4においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、プリント配線板300を切断した断面を示す。また、図4においては、図1〜図3に記載された要素に相当する部位は、図1〜図3で用いたのと同様の符号を付して示す。
図4に示すように、本発明の第二実施形態に係る特定プリント配線板300は、第1の導体層210、第2の導体層220、及び、第1の導体層210と第2の導体層220との間に形成された絶縁層100を含む。絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。また、通常、第2の導体層220は、ビアホール110が形成された後で設けられたものである。よって、第2の導体層220は、通常、絶縁層100の面100Uだけでなく、ビアホール110内にも形成され、このビアホール110を通して第1の導体層210と第2の導体層220とが導通している。
特定プリント配線板300が含む絶縁層100の厚みTは、通常15μm以下である。特定プリント配線板300は、このように薄い絶縁層100を有するものであるので、特定プリント配線板300自体の薄型化を達成できる。絶縁層100の厚みTの下限は、絶縁層100の絶縁性能を高くする観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。ここで、絶縁層100の厚みTとは、第1の導体層210と第2の導体層220との間の絶縁層100の寸法を表し、第1の導体層210又は第2の導体層220が無い位置での絶縁層100の寸法を表すものではない。絶縁層100の厚みTは、通常、当該絶縁層100を介して対向する第1の導体層210の主面210Uと第2の導体層220の主面220Dとの間の距離に一致し、また、ビアホール110の深さに一致する。
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のトップ径Ltは、通常35μm以下、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、特に好ましくは17μm以下である。特定プリント配線板300は、このようにトップ径Ltが小さいビアホール110を有する絶縁層100を含むので、第1の導体層210及び第2の導体層220を含む配線の微細化を促進することができる。ビアホール110のトップ径Ltの下限は、ビアホール110の形成を容易に行う観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上である。
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のテーパー率Lb/Lt(%)は、好ましくは50%〜100%、より好ましくは60%〜100%、さらに好ましくは70%〜100%、特に好ましくは75%〜100%、80%〜100%、又は85%〜100%である。特定プリント配線板300は、このようにテーパー率Lb/Ltが高い良好な形状のビアホール110を有する絶縁層100を含むものである。よって、特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbは、通常10μm以下、好ましくは6μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下である。特定プリント配線板300は、ビアボトム120のエッジ170からのハローイング距離Wbがこのように小さく、よって、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい。よって、特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、通常80%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは70%以下、特に好ましくは65%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下である。特定プリント配線板300は、ボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbがこのように小さく、よって、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい。このようにハローイング比Hbが小さい絶縁層100を含む特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。ボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbの下限は、理想的にはゼロであるが、通常は5%以上である。
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。
上述した特定プリント配線板300は、本発明の樹脂組成物層の硬化物によって絶縁層100を形成することにより、実現できる。この際、絶縁層100に形成されるビアホール110のビアボトム120及びビアトップ130の平面形状は任意であるが、通常は円形状又は楕円形状であり、好ましくは円形状である。
特定プリント配線板等のプリント配線板は、例えば、樹脂シートを用いて、下記の工程(I)〜工程(III)を含む製造方法を行うことにより、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、樹脂シートを積層する工程。
(II)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
(III)絶縁層にビアホールを形成する工程。
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材である。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。通常、内層基板としては、その片面又は両面に、導体層を有しているものを用いる。そして、この導体層上に、絶縁層を形成する。この導体層は、例えば回路として機能させるために、パターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に回路として導体層が形成された内層基板は、「内層回路基板」ということがある。また、プリント配線板を製造する際に更に絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより、内層基板に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。支持体付き樹脂シートが保護フィルムを有している場合には保護フィルムを除去した後、内層基板と樹脂シートとを積層する。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
積層の後に、常圧下(大気圧下)で、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を任意に使用してよい。
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は、通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)、硬化時間は、通常5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)とすることができる。
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を、硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)予備加熱してもよい。
工程(III)において、絶縁層にビアホールを形成する。ビアホールの形成方法としては、レーザー光の照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、一般にハローイング現象が生じ易いので、ハローイング現象の抑制という効果を有効に活用する観点から、レーザー光の照射が好ましい。
このレーザー光の照射は、例えば、光源として、炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を有するレーザー加工機を用いて行うことができる。用いられ得るレーザー加工機としては、例えば、ビアメカニクス社製CO2レーザー加工機「LC−2k212/2C」、ビアメカニクス社製のUV−YAGレーザー加工機「LU−2L212/M50L」、三菱電機社製の605GTWIII(−P)、松下溶接システム社製のレーザー加工機、などが挙げられる。
レーザー光の波長、パルス数、パルス幅、出力等のレーザー光の照射条件は、特に限定されず、レーザー光源の種類に応じた適切な条件を設定してよい。
ところで、支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)と工程(III)との間に除去してもよく、工程(III)の後で除去してもよい。中でも、抉れ部の発生をより抑制する観点から、絶縁層にビアホールを形成する工程(III)の後に除去することが好ましい。例えば、レーザー光の照射によって絶縁層にビアホールを形成した後に支持体を剥離すると、良好な形状のビアホールを形成し易い。
プリント配線板の製造方法は、更に、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、及び、(V)導体層を形成する工程を含んでいてもよい。これらの工程(IV)及び工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(III)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(III)と工程(IV)との間に実施してもよく、工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順及び条件は、特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して使用される任意の手順及び条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に実施して、絶縁層を粗化処理することができる。
膨潤液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液が挙げられる。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。また、膨潤液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に絶縁層を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、酸化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。また、中和液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
工程(V)は、導体層を形成する工程である。導体層に使用する導体材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種類以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種類以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又は、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層;が好ましい。さらには、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又はニッケル・クロム合金の合金層;がより好ましく、銅の単金属層が特に好ましい。
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
導体層の厚みは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。中でも、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。
以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
また、必要に応じて、工程(I)〜工程(V)による絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板を製造してもよい。
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、前記のプリント配線板を含む。この半導体装置は、プリント配線板を用いて製造することができる。
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
半導体装置は、例えば、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子を任意に用いることができる。
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。実装方法の例としては、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
以下、本発明を例により具体的に説明する。本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
<調製例1:樹脂組成物1の調製>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)20部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YL7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)10部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−8000L−65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)30部、球状シリカ(電気化学工業社製「UFP−30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m2/g、シリカ100部に対してN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)2部で表面処理したもの)55部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)8部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS−100」)2部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を調製した。
<調製例2:樹脂組成物2の調製>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)20部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YL7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)10部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−8000L−65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)を15.38部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)8部、ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学社製「SN395」、水酸基当量107)2部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS−100」)2部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物2を調製した。
<調製例3:樹脂組成物3の調製>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)10部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)20部、フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YL7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)10部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)8部、フェノール系硬化剤(群栄化学工業株式会社製「GRA13H」、水酸基当量約75)2部、ホスファゼン樹脂(大塚化学社製「SPS−100」)2部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物3を調製した。
<調製例4:樹脂組成物4の調製>
球状シリカ(電気化学工業社製「UFP−30」、平均粒径0.3μm、比表面積30.7m2/g、シリカ100部に対してN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)2部で表面処理したもの)55部を、球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、シリカ100部に対してN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの)110部に置き換えた以外は、樹脂組成物1の調整と同様にして、樹脂組成物4を調整した。
<調製例5:樹脂組成物5の調製>
ナフトール系硬化剤(新日鉄住金化学社製「SN395」、水酸基当量107)2部を使用しない以外は、調製例2と同様にして、樹脂組成物5を調整した。
<実施例1:樹脂シート1の作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。支持体上に樹脂組成物1のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、該支持体上に樹脂組成物1で形成された第1層(厚さ9.5μm)を形成した。次いで、乾燥後の樹脂組成物層の総厚さが12μmとなるように、第1層上に樹脂組成物2のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80℃で1分間乾燥させ、樹脂面に厚さ15μmのポリプロピレンカバーフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」)の平滑面側を貼り合わせ、支持体/樹脂組成物1層/樹脂組成物2層/保護フィルムという構成の樹脂シート1を作製した。
<実施例2:樹脂シート2の作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。支持体上に樹脂組成物1のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、樹脂組成物1の層(厚さ9.5μm)を備える樹脂シートaを作成した。次に厚さ25μmのPETフィルム(リンテック社製「AL5」)の保護フィルムを用意し、保護フィルム上に樹脂組成物2のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80℃で1分間乾燥させて、樹脂組成物2の層(厚さ2.0μm)を備える樹脂シートbを作製した。次いでホットロールを使用して、支持体/樹脂組成物1層/樹脂組成物2層/保護フィルムの構成となるよう、樹脂シートaと樹脂シートbを重ね合わせて樹脂シート2を作製した。
<実施例3:樹脂シート3の作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。支持体上に樹脂組成物1のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、該支持体上に樹脂組成物1で形成された第1層(厚さ9.5μm)を形成した。次いで、乾燥後の樹脂組成物層の総厚さが12μmとなるように、第1層上に樹脂組成物3のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80℃で1分間乾燥させ、樹脂面に厚さ15μmのポリプロピレンカバーフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」)の平滑面側を貼り合わせ、支持体/樹脂組成物1層/樹脂組成物3層/保護フィルムという構成の樹脂シート3を作製した。
<実施例4:樹脂シート4の作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。支持体上に樹脂組成物1のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、樹脂組成物1の層(厚さ9.5μm)を備える樹脂シートcを作成した。次に厚さ25μmのPETフィルム(リンテック社製「AL5」)の保護フィルムを用意し、保護フィルム上に樹脂組成物3のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80℃で1分間乾燥させて、樹脂組成物3の層(厚さ2.0μm)を備える樹脂シートdを作製した。次いでホットロールを使用して、支持体/樹脂組成物1層/樹脂組成物3層/保護フィルムの構成となるよう、樹脂シートcと樹脂シートdを重ね合わせて樹脂シート4を作製した。
<実施例5:樹脂シート5の作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。支持体上に樹脂組成物1のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、該支持体上に樹脂組成物1で形成された第1層(厚さ9.5μm)を形成した。次いで、乾燥後の樹脂組成物層の総厚さが12μmとなるように、第1層上に樹脂組成物5のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80℃で1分間乾燥させ、樹脂面に厚さ15μmのポリプロピレンカバーフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」)の平滑面側を貼り合わせ、支持体/樹脂組成物1層/樹脂組成物5層/保護フィルムという構成の樹脂シート5を作製した。
<比較例1:樹脂シート6の作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。支持体上に樹脂組成物1のワニスをダイコーターにて均一に塗布し、塗布膜を80〜120℃(平均100℃)で3分間乾燥させて、樹脂組成物1の層(厚さ10μm)を形成し、樹脂面に厚さ15μmのポリプロピレンカバーフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」)の平滑面側を貼り合わせ、支持体/樹脂組成物1層/保護フィルムという構成の樹脂シート6を作製した。
<比較例2:樹脂シート7の作製>
樹脂シート6の作製において、ワニスを樹脂組成物4に変更したこと以外は樹脂シート6と同様にして、支持体/樹脂組成物4層/保護フィルムという構成の樹脂シート7を作製した。
<樹脂組成物層等の厚みの測定>
上記実施例及び比較例における樹脂組成物層等の厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製、MCD−25MJ)を用いて、測定した。
<ビアホール形成後のビアテーパー率及びハローイングの評価>
(1)硬化基板Aの作製
銅張積層板として、両面に銅箔層を積層したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ3μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学社製「HL832NSF LCA」、255×340mmサイズ)を用意した。
実施例及び比較例で作製した各樹脂シートから保護フィルムを剥がし、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層が銅張積層板と接するように、銅張積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
樹脂シートがラミネートされた銅張積層板を、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで180℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化して絶縁層を形成した。これを硬化基板Aとする。
(2)UV−YAGレーザーによるビアホールの形成
UV−YAGレーザー加工機(ビアメカニクス株式会社製「LU−2L212/M50L」)を使用して、下記条件にて硬化体層に小径のビアホールを形成し、ビア加工基板Aを得た。
パワー0.08W、ショット数25、狙いトップ径15μm
(3)粗化処理を行う工程
絶縁層にレーザービアを形成したビア加工基板Aの支持体を剥離後、粗化処理としての湿式デスミア処理を行った。具体的に、膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間、次いで酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間、浸漬した後、80℃で15分間乾燥して、粗化基板Aを得た。
<粗化処理前のビアホールの寸法測定>
サンプルとして、粗化処理前のビア加工基板Aを用意した。このビア加工基板Aについて、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層を、当該絶縁層の厚み方向に平行で且つビアホールのビアボトムの中心を通る断面が現れるように削り出した。この断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察し、観察された画像から、ビアホールのトップ径及びボトム径を測定した。
前記の測定を、無作為に選んだ5箇所のビアホールで行った。そして、測定された5箇所のビアホールのトップ径の測定値の平均を、そのサンプルのビアホールのトップ径Lt1として採用した。また、測定された5箇所のビアホールのボトム径の測定値の平均を、そのサンプルのビアホールのボトム径Lb1として採用した。
<粗化処理後のビアホールの寸法測定>
サンプルとして、ビア加工基板Aの代わりに粗化基板Aを用いた。以上の事項以外は、前記<粗化処理前のビアホールの寸法測定>と同じ操作を行って、粗化処理後のビアホールのボトム径Lb2を測定した。
<粗化処理後のハローイング距離の寸法測定>
粗化基板Aについて、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層を、当該絶縁層の厚み方向に平行で且つビアホールのビアボトムの中心を通る断面が現れるように削り出した。この断面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察した。観察の結果、ビアボトムのエッジから連続して、絶縁層が内層基板の銅箔層から剥離して形成された間隙部が観察された。観察された画像から、ビアボトムの中心からビアボトムのエッジまでの距離(ハローイング部の内周半径に相当)r3と、ビアボトムの中心から前記間隙部の遠い側の端部までの距離(ハローイング部の外周半径に相当)r4とを測定し、これら距離r3と距離r4との差r4−r3を、その測定地点のビアボトムのエッジからのハローイング距離として算出した。
前記の測定を、無作為に選んだ5か所のビアホールで行った。そして、測定された5箇所のビアホールのハローイング距離の測定値の平均を、そのサンプルのビアボトムのエッジからのハローイング距離Wbとして採用した。
<無機充填材残留数の評価>
無機充填材残留数とは、粗化処理後のビアホールの底面をSEM(走査型電子顕微鏡)によって観察し、観察された画像から見出された無機充填材の粒子数を意味する。この無機充填材残留数が0であれば「○」と判定し、この無機充填材残留数が1以上であれば「×」と判定した。
実施例及び比較例の樹脂シートに使用した樹脂組成物の不揮発成分及びその使用量、並びに樹脂シートの評価結果を下記表1に示す。
表1において、テーパー率とは、粗化処理前のビアホールのトップ径Lb1とボトム径Lb1との比「Lb1/Lt1」を意味する。このテーパー率Lb1/Lt1が75%以上であれば、ビア加工性を「○」と判定し、テーパー率Lb1/Lt1が75%未満であればビア加工性を「×」と判定した。
表1において、粗化処理後のハローイング比Hbとは、粗化処理後のビアボトムのエッジからのハローイング距離Wbと、粗化処理後のビアホールのビアボトムの半径(Lb2/2)との比「Wb/(Lb2/2)」を意味する。このハローイング比Hbが65%以下であればハローイング評価を「○」と判定し、ハローイング比Htが65%より大きければハローイング評価を「×」と判定した。
上記の結果の通り、第1の樹脂組成物層と、第2の樹脂組成物層との2層からなり、第1の樹脂組成物層が、15m2/g以上の比表面積を有する(A)成分を含み、第2の樹脂組成物層の(A)成分の含有量が、5質量%以下であり、第1の樹脂組成物層の厚みが、第2の樹脂組成物層の厚みを上回る樹脂組成物層を用いた場合に、小径ビアホールの加工性に優れ、且つ、粗化処理後のビアホールにおける無機充填材の残留を抑制でき、さらには、ハローイング現象を抑制できることがわかる。このような樹脂組成物層を使用することにより、導体層の表面粗度をより小さくした場合であっても、導通不良を抑制できる。