JP2020081476A - 吸収性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現し得る吸収性物品用不織布を提供する。【手段】凹部と中空の凸部とを有し、50Pa荷重下の見掛け厚みが3mm以上であり、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/超で、水溶解度が0.025g以下である化合物を有する吸収性物品用不織布。【選択図】図1

Description

本発明は、吸収性物品に用いられる不織布に関する。
近年、吸収性物品の肌に触れる表面材等に用いられる不織布について、ドライ性などに着目し、着用感を高める技術が開発・提案されてきた。例えば、特許文献1には、液の引き込み性や柔らかなクッション性の観点から、第1面側に突出する第1突出部と第2面側に突出する第2突出部とを有する不織布が記載されている。該不織布においては、良好な肌当たりとする観点から、第1突出部の密度を第2突出部の密度よりも小さくすることが記載されている。また、特許文献2には、液膜開裂剤によって、不織布の繊維間の狭空間に生じる液膜を開裂し、不織布における液残りを低減できることが記載されている。これにより、不織布のドライ性を向上させることができる。
特開2012−136791号公報 特開2016−117981号公報
本発明者らは、特許文献2記載の液膜開裂剤を用いて、表面材となる不織布の液残り低減を実現した。
また、吸収性物品においては、従来よりも厚みがあってクッション性の良い不織布が肌触りの向上の観点から求められている。しかし、厚みをより大きくした不織布を吸収体よりも肌側に配置した場合、該不織布の肌側表面から吸収体までの距離が大きくなるため、該不織布から排泄液(体液)を引き抜く点において改善の余地があった。
本発明は、上記の点を鑑み、クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現し得る吸収性物品用不織布に関する。
本発明は、凹部と中空の凸部とを有し、50Pa荷重下の見掛け厚みが3mm以上であり、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/超で、水溶解度が0.025g以下である化合物を有する吸収性物品用不織布を提供する。
本発明の吸収性物品用不織布は、クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現できる。
本発明の吸収性物品用不織布の凹凸構造の好ましい形態(第1実施形態)を模式的に示す一部断面斜視図である。 図1に示す吸収性物品用不織布のA−A線断面図である。 図1に示す吸収性物品用不織布のB−B線断面図である。 図1の吸収性物品用不織布の断面において、外面繊維層の平面方向の長さと繊維の縦配向率を測定するときの状態を示す図面代用写真である。 本発明の吸収性物品用不織布の凹凸構造の別に好ましい形態(第2実施形態)を第1面側から示す平面図である。 図5に示す吸収性物品用不織布のA−A線断面図である。 図5に示す吸収性物品用不織布のB−B線断面図である。 図5に示す吸収性物品用不織布のC−C線断面図である。 図5に示す吸収性物品用不織布のD−D線断面図である。 図5に示す吸収性物品用不織布を第2面側から示す平面図である。 第1実施形態及び第2実施形態の吸収性物品用不織布の好ましい製造方法の一例を模式的に示す説明図であり、(A)は支持体雄材上に繊維ウエブを配し、支持体雌材を前記繊維ウエブ上から支持体雄材に押し込む工程を示す説明図であり、(B)は支持体雌材の上方から第1の熱風を突き付けて繊維ウエブを賦形する工程を示す説明図であり、(C)は支持体雌材を取り除いて、賦形された繊維ウエブの上方から第2の熱風を吹き付けて繊維同士を融着させる工程を示す説明図である。 本発明の吸収性物品用不織布の凹凸構造のさらに別の好ましい形態(第3実施形態)を模式的に示す一部断面斜視図である。
本発明の吸収性物品用不織布の好ましい形態について以下に説明する。なお、本発明の吸収性物品用不織布は、体液吸収に係る種々の吸収性物品に適用でき、例えば、生理用ナプキンやおむつ等の吸収性物品の表面シート等として用いることができる。
本発明の吸収性物品用不織布は、凹部と中空の凸部とを有し、50Pa荷重下の見掛け厚み(以下、単に「見掛け厚み」ともいう)が3mm以上である。従来、吸収性物品に用いられる不織布としては、液透過性とクッション性を両立する観点から、前記見掛け厚みを3mm未満、一般的には0.5mm以上2.5mm以下とするものが実際利用されてきた。また、従来は中実の凸部を設けて厚みを付与する吸収性物品用の不織布が多かった。これに対し、本発明の吸収性物品用不織布は、中空の凸部を有しながら、見掛け厚みを3mm以上とすることで、圧縮変形量を大きくし、優れたクッション性を備える。ここで「50Pa」とは、荷重により圧縮変形する前の、荷重のかかっていない状態を想定した荷重を意味する。「見掛け厚み」とは、吸収性物品用不織布における前記凹部や前記凸部といった局所の厚みではなく、吸収性物品用不織布全体の賦形された形状における表裏面の最も外側の部位に接する仮想平面間の厚みを意味する。また、「中空」とは、凸部の内部が繊維で満たされない空間を備えることを意味し、具体的には繊維密度が20本/mm以下となる空間を備えることを意味する。このような本発明の吸収性物品用不織布は、熱可塑性繊維を含み、吸収性物品用として体液を厚み方向に透過させ得る親水性を有する。
(見掛け厚みの測定方法)
測定対象の不織布を10cm×10cmに切る。10cm×10cmがとれない場合はできるだけ大きな面積に切る。なお、50Pa荷重は少なくとも凸部2か所以上に加えるものする。レーザー厚み計(オムロン株式会社製ZSLD80)を使用し、50Paの荷重時の厚みを測定する。3箇所測定し、平均値を測定対象の不織布の見掛け厚みとする。
また、測定対象の不織布が生理用品や使い捨ておむつなどの吸収性物品に組み込まれた部材(例えば、表面シート)である場合は、コールドスプレー等の冷却手段で接着剤等の接着力を弱め、取り外して上記測定を行う。この不織布を取り出す手段は、本明細書中の他の測定においても同様である。
本発明において、前記クッション性は下記方法によって測定される圧縮変形量により評価することができる。本発明の吸収性物品用不織布において、前記圧縮変形量は、クッション性の観点から、2.1mm超が好ましく、2.5mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。また、前記圧縮変形量の上限は、特に制限されるものではないが凹凸のへたりを抑える観点から、10mm以下が好ましく、7.5mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。具体的には、前記圧縮変形量は、2.1mm超10mm以下が好ましく、2.5mm以上7.5mm以下がより好ましく、3mm以上5mm以下が更に好ましい。
(圧縮変形量の測定方法)
まず、KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB−3)を用い、不織布について、端子のスピードを0.1mm/sに設定した以外は通常モードで5kPaまでの圧縮を行う。次に、0.1〜2.5kPaまでの変形量を抽出し、圧縮変形量とする。圧縮変形量が大きい程、人が触る荷重に対して、大きく変形するために、クッション性を感じやすくなる。
前記凹部及び前記凸部は、本発明の吸収性物品用不織布の表裏面の一方の面側から見た部位である。前記凹部及び前記凸部は、一方の面側に複数交互に配置されて吸収性物品用不織布の厚み方向における高低差を付与している。本明細書においては、本発明の吸収性物品用不織布の表裏面について、前記凹部及び前記凸部が配される面を第1面とし、その反対側の面を第2面として説明する。
前記凹部及び前記凸部が配される第1面は、吸収性物品において、着用者の肌に近い方の面側(以下、肌当接面側という。)、着用者の肌から遠い方の面側(以下、非肌当接面側という。)のいずれに向けて用いることもできる。ただし、吸収性物品における体液の透過性、肌触り及びドライ感の観点からは、本発明の吸収性物品用不織布は、前記凸部側(第1面側)を肌当接面側に向けて用いることが好ましい。すなわち、前記凹部及び前記凸部によりなる高低差は、吸収性物品において着用者の肌に近い方の面側に配されることが好ましい。特に、吸収性物品において、本発明の吸収性物品用不織布の非肌当接面側に液保持性の吸収体を配し、本発明の吸収性物品用不織布の前記凸部側(第1面側)を肌当接面側に向けて配することが好ましい。この配置において、本発明の吸収性物品用不織布は、例えば、吸収性物品における表面シート、表面シートと吸収体との間の中間シートなどして配される。
前記凹部及び前記凸部よりなる高低差は、繊維径のような微細な単位の起伏ではなく、目視で確認できる大きさの構造的な起伏を意味する。該高低差は、前記凹部及び前記凸部が配される第1面側において、厚み方向の最も高い位置の部位と最も低い位置の部位との間の差である。このような高低差は、吸収性物品用不織布の見掛け厚みの3分の2以上であることが優れたクッション性の観点から好ましい。また、クッション性の向上の観点から、前記凹部及び前記凸部は吸収性物品用不織布の表裏両方の面(第1面及び第2面)に配されていることが好ましい。同様の観点から、第1面側に配された凸部の中空の部分が反対側の第2面における凹部であることがより好ましい。
本発明の吸収性物品用不織布は、前記凸部と前記凹部を繋ぐ壁部を有する。該吸収性物品用不織布の見掛け厚みを3等分し、それぞれの領域における繊維層の部分を、第1面側から順に、凸部、壁部及び凹部と区分する。凸部の配される領域には、繊維層と中空の空間部分とが含まれる。凹部の配される領域には、繊維層と凹部上の空間部分とが含まれる。壁部の配される領域には、繊維層と凸部及び凹部に連通する空間部分とが含まれる。
本発明の吸収性物品用不織布は、凹部と中空の凸部による厚み方向の高低差のある凹凸構造を備え、3mm以上の見掛け厚みを有し、高いクッション性を備える。また、本発明の吸収性物品用不織布は、凸部が中空であることによって、中実である場合に比べて押圧による変形性が高く、肌触りが柔らかいものとなっている。
高いクッション性の観点から、本発明の吸収性物品用不織布の、50Pa荷重下の見掛け厚みは、3.5mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましい。また、本発明の吸収性物品用不織布の、50Pa荷重下の見掛け厚みは、特に制限されるものでは無いが、吸収性物品の表面シートとして使用する場合に、携帯性等に優れたものとする観点から、10mm以下が好ましく、9mm以下がより好ましく、8mm以下が更に好ましい。具体的には、本発明の吸収性物品用不織布の、50Pa荷重下の見掛け厚みは、3mm以上10mm以下が好ましく、3.5mm以上9mm以下がより好ましく、4mm以上8mm以下が更に好ましい。
本発明の吸収性物品用不織布は、上記の見掛け厚みを備えるものとして、複数の不織布を貼り合わせたものでなく、1枚の不織布からなることが好ましい。また、複数の不織布からなる場合であっても、本発明の吸収性物品用不織布の見掛け厚みの80%以上を1枚の不織布が占めることが好ましい。これにより本発明の吸収性物品用不織布は、厚みによる高いクッション性と共に、押圧力に応じたなめらかな変形が実現され、肌触りがより柔らかいものとなる。なお、ここで言う不織布とは、熱可塑性繊維を含む繊維ウエブを繊維の交点において熱融着した後のもの(エアスルー処理等によって不織布化したもの)を指し、熱融着前に繊維ウエブを積層して不織布化したものは1枚の不織布と定義される。熱融着前に繊維ウエブを積層したものか否かは、不織布を顕微鏡観察することで判別できる。製造された不織布において、複数の繊維が融着してフィルム化した領域が見つからなければ、「1枚の不織布」であると定義できる。例えばヒートエンボスによる融着領域(複数の繊維交点を跨る融着領域)を持つものは「不織布を貼り合せたもの」として1枚の不織布ではない。熱融着させて製造した不織布同士をエンボス処理によって接合したものや、熱融着させて製造した不織布に別の繊維ウエブを積層してエンボス処理によって接合したものは、1枚の不織布ではない。
本発明の吸収性物品用不織布において、凹部及び中空の凸部を備えた凹凸構造は種々のものをとり得る。本発明の吸収性物品用不織布における凹凸構造の好ましい実施形態については、下記の液膜開裂作用を奏する化合物の説明の後、第1〜第3実施形態を挙げて後述する。
本発明の吸収性物品用不織布は、下記に示す液膜開裂作用を奏する化合物を有する。具体的には、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/m超で、水溶解度が0.025g以下である化合物を有する(以下、この化合物を化合物Aと称し、化合物Aを含む剤を液膜開裂剤と称して説明する。また、下記に示す、化合物A及び液膜開裂剤のそれぞれについて示した事項は、双方にあてはまる。)。これにより、凹部と中空の凸部とを有し、50Pa荷重下の見掛け厚みが3mm以上である嵩高い不織布であっても、液残りが極めて小さく抑えられる。これは、化合物Aの液膜開裂作用によって、繊維間の空間に留まる液膜が開裂して不織布の下方へと排液がなされることによる。すなわち、化合物Aが排液の駆動力として作用して液残りを低減する。例えば、経血等で不織布が赤く染められた後、赤い液膜が弾けるように開裂し、液滴となった経血が下方へと抜けていき、これに伴って不織布表面から内部に亘って不織布本来の白さが回復するような排液が生じ得る。化合物Aによる液膜開裂作用によって、前述の構造と3mm以上の見掛け厚みを有する本発明の吸収性物品用不織布が、クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現することができる。
本発明における液膜開裂剤とは、下記(液膜を消失させる性質)を有するものである。具体的には、液、例えば、経血等の高粘性の液や尿などの排泄液(体液)が不織布に触れて不織布の繊維間ないしは繊維表面に形成される液膜を開裂させたりして、液膜の形成を阻害する剤をいう。液膜開裂剤は、形成された液膜を開裂させる作用と、液膜の形成を阻害する作用とを有する。前者は主たる作用、後者は従たる作用ということができる。例えば、液膜開裂剤は、国際公開第2016/098796号の明細書の段落[0024]、[0025]、図1及び2に記載したような作用をする。このように液膜開裂剤は、排泄液(体液)に溶解して液膜の表面張力を下げるなどの液改質をするのではなく、繊維間や繊維表面に生じる液膜自体を押しのけながら開裂し、阻害することで不織布中からの体液の排液を促す。
(液膜を消失させる性質)
本発明で用いられる液膜開裂剤は、液膜を消失させる性質を有しており、斯かる性質により、該液膜開裂剤を、血漿成分を主体とする試験液又は人工尿に適用した場合に、液膜消失効果を発現し得る。血漿成分を主体とする試験液は、馬脱繊維血液(株式会社日本バイオテスト研究所製)を使用する。馬脱繊維血液は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を8.0cPになるように粘度計(東機産業株式会社製TVB10形)にて調整し、血漿成分を主体とする試験液とする。人工尿は、尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.111質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.198質量%、赤色2号(染料)0.005質量%、水(96.882質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(0.007質量%)の組成を有する混合物を、表面張力を53±1mN/m(23℃)に調整したものである。
前記試験液は、上述の試験液と同一である。
ここでいう液膜消失効果には、試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体について、該構造体の液膜形成を阻害する効果と、形成された該構造体を消失させる効果との双方が含まれ、少なくとも一方の効果を発現する剤は、液膜消失効果を発現し得る性質を有していると言える。具体的には、ある剤が前記の「液膜を消失させる性質」の程度は、当該剤が適用された前記試験液又は人工尿から形成される前記構造体が発生しやすい状態にした場合の、該構造体即ち液膜の量の多少で判断される。すなわち、前記試験液又は人工尿を、温度25℃に調整し、その後、スクリュー管(株式会社マルエム製 No.5 胴径27mm、全長55mm)に10g入れて、標準サンプルを得る。また、測定サンプルとして、標準サンプルと同じものに、25℃に予め調整した測定対象の剤を0.01g添加したものを得る。標準サンプルと測定サンプルをそれぞれ前記スクリュー管の上下方向に2往復強く振とうした後、水平面上に速やかに載置する。このサンプルの振とうにより、振とう後のスクリュー管の内部には、前記構造体の無い液体層(下層)と、該液体層の上に形成された多数の該構造体からなる構造体層(上層)とが形成される。振とう直後から10秒経過後に、両サンプルの構造体層の高さ(液体層の液面から構造体層上面までの高さ)を測定する。そして、標準サンプルの構造体層の高さに対して、測定サンプルの構造体層の高さが90%以下となった場合、測定対象の剤は液膜開裂効果を有しているとする。
本発明で用いられる液膜開裂剤は、前記の性質に当てはまる単一の化合物もしくは前記の性質に当てはまる単一の化合物を複数組み合わせた混合物、又は複数の化合物の組み合わせによって前記の性質を満たす(液膜の開裂を発現し得る)剤である。つまり液膜開裂剤とは、あくまで前記定義によるところの液膜開裂効果があるものに限定した剤のことである。したがって、吸収性物品中に適用されている化合物に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、液膜開裂剤と区別する。
なお、液膜開裂剤及び第三成分について、「単一の化合物」とは、同じ組成式を有するが、繰り返し単位数が異なることにより、分子量が異なる化合物を含める概念である。
液膜開裂剤としては、国際公開第2016/098796号の明細書の段落[0007]〜[0186]に記載のものから適宜に選んで用いることができる。液膜開裂剤の好ましい実施態様については更に後述する。
液膜開裂剤が含む化合物Aは、前述のとおり水溶解度0.025g以下と体液に対する溶解性が極めて低い性質を有して体液との界面を維持し、且つ、体液上を拡張する拡張係数0超の性質を有する。すなわち、前記液膜開裂剤を構成する化合物Aは、上記の拡張係数及び水溶解度で規定される物性を有することにより、繊維間の狭小空間領域で生じる液膜の表面上での移動性、拡張性を備える。化合物Aは、液膜の表面上で溶解することなく広がり、液膜との界面を維持しながら該液膜の一部を押しのけて厚み方向に侵入し、不安定化させ開裂することができる。
ここで、化合物Aを含む液膜開裂剤が有する「表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数」及び「水溶解度」の定義、並びに、液膜(表面張力が50mN/mの液体)の表面張力(γ)、液膜開裂剤の表面張力(γ)、液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)、及び液膜開裂剤の水溶解度の測定方法は、国際公開第2016/098796号の段落[0015]〜[0022]に記載されたとおりであり、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で下記数式(1)に基づいて求められる値である。なお、数式(1)における液膜は「表面張力が50mN/mの液体」の液相を意味し、繊維間や繊維表面で膜を張った状態の液体、膜を張る前の液体の両方を含み、単に液体とも言う。また、数式(1)の表面張力は、液膜及び液膜開裂剤の気相との界面における界面張力を意味し、液相間の、液膜開裂剤の液膜との界面張力とは区別される。この区別は、本明細書の他の記載においても同様である。
S=γ−γ−γwo ・・・・・ (1)
γ:液膜(液体)の表面張力
γ:液膜開裂剤の表面張力
γwo:液膜開裂剤の液膜との界面張力
本発明の吸収性物品用不織布は、前述の見掛け厚みや、前述の凹部や凸部の中空の空間部分を有し、構造的には液の透過(排液)に時間を要しやすい。加えて、本発明の吸収性物品用不織布は、吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材として配した場合、その嵩高さゆえに、吸収体からの体液引き込み力が弱く、体液を保持する毛管力が勝りやすい。これに対し、本発明の吸収性物品用不織布に含まれる化合物Aが、液膜を開裂して排液の駆動力として作用し、吸収体へ向けて体液の透過を積極的に促進する。
本発明の吸収性物品用不織布に含まれる化合物Aは、3mm以上を有する見掛け厚みに対して上記の排液の駆動力としての作用をより効果的に発明させるため、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が5.4mN/mより大きいこと(5.4mN/m超)が好ましく、6mN/m以上がより好ましく、8mN/m以上が更に好ましく、また、16.3mN/mより小さいこと(16.3mN/m未満)が好ましく、15mN/m以下がより好ましく、14mN/m以下が更に好ましい。具体的には、化合物Aの、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数は、5.4mN/m超16.3mN/m未満が好ましく、6mN/m以上15mN/m以下がより好ましく、8mN/m以上14mN/m以下が更に好ましい。化合物Aの、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が、上記の下限以上であることによって液膜開裂作用をより確実に発現させることができる。また、上記の上限以下とすることによって液膜開裂の速度を好適に制御して、より確実に体液の排液を促進することができる。すなわち、本発明の吸収性物品用不織布の前述の嵩高な構造において、体液の排液速度に合うように、液幕開裂の速度を好適な範囲にすることができる。より具体的には、本発明の吸収性物品用不織布は、前述のとおり嵩高く、体液が伝い流れる繊維間の通路経路が従来よりも長くされた構造、さらに中空の構造であるため体液は凸部から壁部、凹部を伝い、吸収体へと排液される。そのため、液膜開裂の速度が速すぎると、排液中に開裂が起こり、液が分断され、吸収体に引き込めなくなり、不織布中に液が残りやすい。これに対し、本発明においては、拡張係数を上記の上限以下とすることによって開裂の速度を好適に制御して、速すぎる開裂が体液を分断し過ぎて不織布内部に留まってしまうような現象を防ぐことができる。これにより、例えば凸部の頂部にある体液が壁部を伝って凹部へと円滑に移行しやすく、さらに凹部から下方へと排液を実現することができる。このような現象により、先願の国際公開第2016/098796号では、拡張係数の大きい、すなわち液膜開裂の速度が速い剤ほど液残り低減効果が高いとしていたのに対し、本発明では拡張係数を上記の範囲内とすることにより、厚み3mm以上の不織布における液膜開裂剤の液残り低減効果を最大化させることができる。
また、液膜開裂剤が含む化合物Aの水溶解度が0g以上0.025g以下であることで、液膜開裂剤は、溶解しにくく液膜との界面を形成して、上記の拡張性をより効果的なものとする。同様の観点から、液膜開裂剤が含む化合物Aの水溶解度は、0.0025g以下が好ましく、0.0017g以下がより好ましく、0.0001g未満が更に好ましい。また、前記水溶解度は小さいほどよく、0g以上であり、液膜への拡散性の観点から、1.0×10−9g以上とすることが実際的である。なお、上記の水溶解性は、水分を主成分とする経血や尿等に対しても当てはまるものと考えられる。
液膜開裂剤が含む化合物Aは、さらに、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下であることが好ましい。すなわち、前述した数式(1)における拡張係数(S)の値を定める1変数である「液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)」が20mN/m以下であることが好ましい。「液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)」を低く抑えることで、液膜開裂剤の拡張係数が上がり、繊維表面から液膜中心付近へ液膜開裂剤が移行しやすくなり、前述の作用がより明確となる。この観点から、液膜開裂剤が含む化合物Aの「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」は、17mN/m以下がより好ましく、13mN/m以下が更に好ましく、10mN/m以下がより更に好ましく、9mN/m以下が特に好ましい。一方、その下限は、液膜への不溶性の観点から0mN/mより大きいことが好ましく、5mN/m以上がより好ましい。なお、界面張力が0mN/m、すなわち溶解する場合には、液膜と液膜開裂剤間での界面を形成することができないため、数式(1)は成り立たず、剤の拡張は起きない。具体的には、液膜開裂剤が含む化合物の「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」は、0mN/m超20mN/mが好ましく、5mN/m以上17mN/m以下がより好ましく、5mN/m以上13mN/m以下が更に好ましく、5mN/m以上10mN/m以下がより更に好ましく、5mN/m以上9mN/m以下が特に好ましい。
拡張係数はその数式からもわかるように、対象となる液の表面張力により、その数値が変化する。例えば、対象液の表面張力が72mN/m、液膜開裂剤の表面張力が21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は50.8mN/mとなる。
また、対象液の表面張力が30mN/m、液膜開裂剤の表面張力21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は8.8mN/mとなる。
本明細書では、表面張力50mN/mにおける数値を定義したが、表面張力が異なったとしても、その各物質同士の拡張係数の数値の大小関係に変化はないことから、体液の表面張力が仮に、日ごとの体調などで変化したとしても、拡張係数が大きい剤ほど優れた液膜開裂効果を示す。
液膜開裂剤が含む化合物Aの表面張力は、32mN/m以下が好ましく、30mN/m以下がより好ましく、25mN/m以下が更に好ましい。一方、その下限は、前述の拡張係数を好適な範囲に抑える観点から、20mN/m以上がより好ましく、22mN/m以上が更に好ましい。具体的には、液膜開裂剤が含む化合物Aの表面張力は、20mN/m以上32mN/m以下が好ましく、22mN/m以上30mN/m以下がより好ましく、22mN/m以上25mN/m以下が更に好ましい。液膜開裂剤の表面張力を上記のような範囲以下とすることで、液膜を張る対象液の表面張力が下がった場合でも、液膜開裂作用を効果的に発揮させることができる。
本発明において、液膜開裂剤又は化合物Aを含有する又は有するとは、主に繊維の表面に付着していることをいう。ただし、液膜開裂剤又は化合物Aは、繊維の表面に残存する限り、繊維内に内包しているようなものや、内添により繊維内部に存在しているようなものが一部にあってもよい。液膜開裂剤又は化合物Aを繊維の表面に付着させる方法としては、通常用いられる各種の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、噴霧、刷毛塗布等の塗布処理が挙げられる。これらの処理は、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよいし、その後、該ウエブを不織布にした後や吸収性物品に組み込んだ後に行ってもよい。前記付着方法を用いて繊維へ付着させる場合、必要により液膜開裂剤又は化合物Aを溶媒に溶解させた溶液、乳化液又は分散液の状態にした塗布液として用いてもよい。溶媒を含む塗布液を用いる場合、液膜開裂剤又は化合物Aが表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、繊維樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。ただし、液膜開裂剤又は化合物Aが、不織布や吸収性物品の製造環境において液状である場合は、溶媒を用いることなく処理することができる。溶媒、特に有機溶媒を用いずに液膜開裂剤又は化合物Aを繊維表面に塗布する方が、乾燥処理、防爆処理などの対策を必要とせず、生産効率向上の観点から好ましい。液膜開裂剤又は化合物Aは、それぞれ単独で液状であってもよく、両者を混合した状態で液状であってもよい。ここで言う「液状」とは、塗布処理に適した流動性を有することであり半固体の状態を含む。
液膜開裂剤又は化合物Aは、不織布において後述する液膜開裂効果を有するためには、液膜開裂剤が体液に触れた際に液状として存在する必要がある。この点から、液膜開裂剤が含む化合物Aの融点は40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。さらに、本発明に係る液膜開裂剤が含む化合物Aの融点は−220℃以上が好ましく、−180℃以上がより好ましい。
液膜開裂剤が含む化合物Aの総量は、本発明の吸収性物品用不織布の質量に対する含有割合(Oil Per Unit)として、液膜開裂作用を効果的に発現させる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.14質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、液膜開裂剤が含む化合物Aの総量は、本発明の吸収性物品用不織布の質量に対する含有割合(OPU)として、体液の表面流れを効果的に抑制する観点、本発明の吸収性物品用不織布の触感を良好なものとする観点から、10質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。具体的には、液膜開裂剤が含む化合物の総量は、本発明の吸収性物品用不織布の質量に対する含有割合(OPU)として、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.14質量%以上7.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
また、本発明の吸収性物品用不織布において、排液を効果的に行う観点から、前記凸部が化合物Aを有することが好ましい。該凸部における、該凸部の質量に対する化合物Aの含有割合(OPU)は、液膜開裂作用を効果的に発現させて肌に触れる面のドライ感をより効果的に実感させる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.14質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、該凸部における、該凸部の質量に対する化合物Aの含有割合(OPU)は、体液の表面流れを効果的に抑制して厚み方向への透過を起こしやすくする観点、本発明の吸収性物品用不織布の触感を良好なものとする観点から、17質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。具体的には、前記凸部における、該凸部の質量に対する化合物Aの含有割合(OPU)は、0.1質量%以上17質量%以下が好ましく、0.14質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
(本発明の吸収性物品用不織布における液膜開裂剤の含有割合(OPU)の測定方法)
上記の質量比、各含有割合(OPU)は、国際公開第2016/098796号の明細書の段落[0018]に記載の方法を準用して測定することができる。なお、上記の不織布全体に対する液膜開裂剤の含有割合(OPU)を測定する際には不織布全体を測定対象とし、上記の不織布凸部に対する液膜開裂剤の含有割合(OPU)を測定する際には、不織布を厚み方向に3等分し、切り出した凸部のみを測定対象とする。
測定対象の不織布の質量を測定した後、エタノール、水などの溶剤・溶媒を使用し、表面材に付着している液膜開裂剤及びその他の成分(接着剤など)を取り出す。その残渣の質量から液膜開裂剤及びその他の成分を合計した質量を算出する。
その後、抽出物をカラム・溶媒などの測定条件を適切に設定した上で、液体クロマトグラフィーを用いて、分離、単離する。そのときの分離物の質量比で、液膜開裂剤及びその他の成分を明らかにする。
質量比と前記残渣の質量、及び分析に用いた不織布質量を用いて、各成分の質量%を算出する。
尚、分離物の中で、どれが液膜開裂剤及びその他の成分かどうかは、下記の測定法により物質の分子構造を同定し、該当する構造物単体を入手して物性を測定した上で判断する。
(分子構造の同定方法)
前記分離物を質量分析(MS)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)のいずれかの分析法を用いて、分子量を測定する。
その他、H−NMR、13C−NMR、29Si−NMRを利用して、分子骨格を同定し、IRを用いて、所有する官能基を同定し、元素分析を用いて元素の割合を明らかにした上で、上記全ての情報を総合して分子構造を同定する。
次に、本発明における液膜開裂剤の具体例について説明する。例えば、国際公開第2016/098796号の段落[0013]〜[0088]に記載のものうち、前述の拡張係数及び水溶解度の範囲に適合するものが挙げられる。これらは前述した特定の数値範囲にあることで水に溶けないか水難溶性の性質を有し、前記液膜開裂の作用をする。これに対し、従来の繊維処理剤として使用される界面活性剤などは実用上、水に対して溶解して使用する基本的には水溶性のものであり、本発明に係る液膜開裂剤ではない。
本発明において、液膜開裂剤が含む化合物Aの質量平均分子量が500以上であることが好ましい。この質量平均分子量は液膜開裂剤の粘度に影響する。液膜開裂剤が含む化合物Aは、粘度を高く保つことで、液が繊維間を通過する際に流れ落ちにくく、不織布における液膜開裂効果の持続性を保つことができる。液膜開裂効果を十分に持続させる粘度とする観点から、液膜開裂剤が含む化合物Aの質量平均分子量は、1000以上がより好ましく、1500以上が更に好ましく、2000以上が特に好ましい。一方、液膜開裂剤が配された繊維から液膜への液膜開裂剤の移行を保持する粘度とする観点から、化合物Aの質量平均分子量は、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。この質量平均分子量の測定は、GPC「CCPD」(商品名、東ソー株式会社製)を用いて測定される。測定条件は下記のとおりである。また、換算分子量の計算はポリスチレンで行う。
分離カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl
溶媒流速:1.0mL/min
分離カラム温度:40℃
液膜開裂剤が含む化合物Aの第1実施態様としては、国際公開第2016/098796号の段落[0036]〜[0049]に記載の化合物であって、前述の拡張係数及び水溶解度の物性を備えるものが挙げられる。その中でも、ポリオキシアルキレン(以下、POAともいう)変性シリコーンが好ましい。POA変性シリコーンとしては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)変性及びポリオキシプロピレン(以下、POPともいう)変性のいずれか又は双方の変性基を有するものが挙げられる。また、水に溶けない、かつ、低い界面張力を有するにはシリコーン鎖のアルキル基R31にメチル基を有することが好ましい。POE変性シリコーンとしては、POEを1モル、2モル、又は3モル付加したPOE(1)変性ジメチルシリコーン、POE(2)変性ジメチルシリコーン、POE(3)変性ジメチルシリコーンなどが挙げられる。POP変性シリコーンとしては、POPを1モル、2モル、3モル付加したPOP(1)変性ジメチルシリコーン、POP(2)変性ジメチルシリコーン、POP(3)変性ジメチルシリコーンなどが挙げられる。
POA変性シリコーンにおいて例えば、POA基の付加モル数(POA変性シリコーン1モルに対する、POA基を形成するオキシアルキレン基の結合数)、下記変性率等により、所定の範囲にすることができる。この液膜開裂剤が含む化合物において、表面張力及び界面張力も同様にして、それぞれ、所定の範囲にすることができる。
上記観点から、該POA基の付加モル数が1以上であるものが好ましい。この下限値以上とすることで、上記の液膜開裂作用にとって界面張力が低くなることにより、拡張係数が大きくなることから、十分な液膜開裂効果を得ることができる。また同様の観点から、付加モル数は2以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。一方、付加モル数は、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。付加モル数をこの上限値以下とすることで、見かけ厚み3mm以上の不織布において液膜開裂剤の開裂速度が最適となり、液残り低減効果を最大化することができる。
変性シリコーンの変性率は、液膜開裂作用(特に拡張性)に必要な親水性を保持するため、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、液膜開裂作用に必要な水不溶性を保つため、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく30%以下が更に好ましい。なお、前記変性シリコーンの変性率とは、変性シリコーン1分子中のシロキサン結合部の繰り返し単位の総個数に対する、変性したシロキサン結合部の繰り返し単位の個数の割合である。例えば、国際公開第2016/098796号の段落[0042]〜[0046]に記載の式[I]及び[IV]では(n/m+n)×100%であり、式[II]では、(2/m)×100%であり、式[III]では(1/m)×100%である。
また、前述の拡張係数及び水溶解度は、POA変性シリコーンにおいて、それぞれ、上記したもの以外にも、変性基を水可溶性のPOE基と水不溶性のPOP基及びPOB基を併用すること、水不溶性のシリコーン鎖の分子量を変化させること、変性基としてPOA変性に加えてアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、カルビノール基などを導入すること等により、所定の範囲に設定できる。
次に、液膜開裂剤が含む化合物Aの第2実施態様としては、国際公開第2016/098796号の段落[0050]〜[0086]に記載の化合物であって、前述の拡張係数及び水溶解度の物性を備えるものが挙げられる。
例えば、第1に、ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤が挙げられる。具体的には、国際公開第2016/098796号の段落[0056]〜[0058]に記載の、式[V]のいずれかで表されるPOAアルキルエーテルや、式[VI]で表される質量平均分子量1000以上のPOAグリコール、ステアレス、ベヘネス、PPGミリスチルエーテル、PPGステアリルエーテル、PPGベヘニルエーテルなどが挙げられる。POAアルキルエーテルとしては、POPを3モル以上14モル以下、好ましくは5モル付加したラウリルエーテルなどが好ましい。ポリエーテル化合物としては、PPGを5モル以上25モル以下付加した質量平均分子量300〜1500、好ましくは約17モル付加した1000のPPGなどが好ましい。なお、上記の質量平均分子量の測定は、前述した測定方法で行うことができる。
上記のポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤において、拡張係数及び水溶解度は、例えば、POA基のモル数等により、それぞれ、所定の範囲に設定することができる。この観点から、POA基のモル数が1以上14以下であるものが好ましい。1以上とすることで、上記の液膜開裂作用が十分に発揮される。この観点から、モル数は3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。一方、付加モル数は、14以下が好ましく、10以下がより好ましい。こうすることで、見かけ厚み3mm以上の不織布において液膜開裂剤の開裂速度が最適となり、液残り低減効果を最大化することができる。
また、前述の拡張係数、表面張力、界面張力及び水溶解度は、それぞれ、ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤において、水溶性のPOE基と水不溶性のPOP基及びPOB基を併用すること、炭化水素鎖の鎖長を変化させること、炭化水素鎖に分岐鎖を有するものを用いること、炭化水素鎖に二重結合を有するものを用いること、炭化水素鎖にベンゼン環やナフタレン環を有するものを用いること、又は上記を適宜組み合わせること等により、所定の範囲に設定できる。
第2に、炭素原子数5以上の炭化水素化合物が挙げられる。具体的には、国際公開第2016/098796号の段落[0062]〜[0085]に記載の式[VII]〜[XV]で表わされる化合物が挙げられる。該化合物の炭素原子数は、見かけ厚み3mm以上の不織布において液膜開裂剤の開裂速度が最適となり、液残り低減効果を最大化する観点から、30以下が好ましく、26以下がより好ましい。この炭化水素化合物は、ポリオルガノシロキサンを除くもので、直鎖に限らず、分岐鎖であってもよく、その鎖は飽和、不飽和に特に限定されない。また、その中間及び末端には、エステルやエーテルなどの置換基を有していてもよい。その中でも、常温で液体のものが好ましく単独で用いられる。
上記の炭素原子数5以上の炭化水素化合物において、拡張係数及び水溶解度等は、例えば、親水的なPOE基を水不溶性が維持できる程度に少量導入すること、疎水的だが界面張力を低下させることができるPOP基やPOB基を導入すること、炭化水素鎖の鎖長を変化させること、炭化水素鎖に分岐鎖を有するものを用いること、炭化水素鎖に二重結合を有するものを用いること、炭化水素鎖にベンゼン環やナフタレン環を有するものを用いること等により、所定の範囲に設定できる。
本発明の吸収性物品用不織布において、上述した液膜開裂剤の他に、必要により他の成分を含有させてもよい。また、第1実施態様の液膜開裂剤、第2実施態様の液膜開裂剤は、別々に用いる形態以外にも、両者の剤を組み合わせて用いてもよい。この点は、第2実施態様の液膜開裂剤における第1の化合物(即ち前述のポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤)と第2の化合物(即ち前述の炭素原子数5以上の炭化水素化合物)についても同じである。
なお、本発明の吸収性物品用不織布において、含有される液膜開裂剤を同定する場合は、上記の液膜(表面張力が50mN/mの液体)の表面張力(γ)等の測定方法で述べた同定の方法を用いることができる。
また、液膜開裂剤の成分が、主鎖がシロキサン鎖を有する化合物又は炭素原子数1以上20以下の炭化水素化合物である場合、不織布質量に対する含有割合(OPU)は、前述の分析手法により得た物質の質量を基に、その液膜開裂剤の含有量を繊維の質量で割ることにより求めることができる。
本発明の吸収性物品用不織布は、液残りの低減効果が高くドライ性に優れるため、繊維の太さや繊維間距離に関係なく、液透過性に優れたものとなる。このことから、国際公開第2016/098796号の段落[0089]〜[0092]に記載するように、不織布の液透過性に必要な繊維間距離を従来よりも小さくしたものとすることができる。これにより従来よりも細い繊維を用いて、より肌触りの柔らかい不織布とすることが可能となる。
次に、本発明の吸収性物品用不織布の凹凸構造の好ましい形態(第1〜第3実施形態)について説明する。
図1〜4は、第1実施態様の吸収性物品用不織布10(以下、単に不織布10ということがある。)を示している。第1実施態様の吸収性物品用不織布10は、第1面Z1と該第1面Z1とは反対側面である第2面Z2とを有する。第1面Z1と第2面Z2とは互いに不織布10の表裏面をなしている。
第1実施形態の不織布10には、第1面Z1側において、不織布10の平坦面をなす外面繊維層1が配されている。外面繊維層1は、不織布10の第1面Z1における一方向に延びる縦畝部11と、前記一方向に交差する方向に延びる横畝部12とを有する。この「一方向」及び「一方向に交差する方向」は、第1面Z1側の平面視において、互いに交差する異なる方向であり、交差する角度は種々設定し得る。図1においては、不織布10の辺に沿う長手方向Yとこれに直交する幅方向Xとして示している。縦畝部11は、長手方向Yに連続して延出し、不織布10の長さ全体に亘って配されている。長手方向Yに延出する縦畝部11は複数、幅方向Xに互いに離間配置されている。横畝部12は、幅方向Xに離間しながら延出し、複数の縦畝部11の間を繋いで直線状に列をなして配置されている。このような横畝部12の列が複数、長手方向Yに互いに離間して配されている。ここで言う「直線状」とは、横畝部12の幅方向Xに延びる幅中心線と、縦畝部11を挟んで隣り合う横畝部の幅方向Xに延びる幅中心線とのズレが横畝部12の幅の範囲であることを言い、例えば5mm以下であることを言う。これにより、縦畝部11と横畝部12とは格子状に配置されている。
また、不織布10において、縦畝部11及び横畝部12に囲まれた領域には、第2面Z2側において不織布10の平坦面をなす外面繊維層2が配されている。第1面Z1側の外面繊維層1と第2面Z2側の外面繊維層2とは、不織布10の厚み方向に立設された連結部3によって連結されている。
外面繊維層2と連結部3とで囲まれた部分は、第1面Z1側から第2面Z2側に窪んでおり、繊維の配されない、第1面Z1側に開放された空間部4となっている。空間部4の形状は、外面繊維層2及び連結部3の配置によって適宜設定し得る。図1においては、空間部4は、第2面Z1側の外面繊維層2の四辺から立設された4つの連結部3に囲まれた直方体の空間をなしている。この連結部3は、縦畝部11と外面繊維層2とを繋ぐ第1連結部31と、横畝部12と外面繊維層2とを繋ぐ第2連結部32とを有する。そのため、第1連結部31と第2連結部32とは互いに異なる方向、すなわち、平面視における互いに交際する方向に向いている。
加えて、第1面Z1側の外面繊維層1と連結部3で囲まれた第2面Z2側の部分が、繊維の配されない、第1面側から見た中空部5となっている。中空部5の形状は、外面繊維層1及び連結部3の配置に応じて適宜設定し得る。図1においては、中空部5は、第2面Z2側において、第1面Z1側の外面繊維層1である縦畝部11及び横畝部12それぞれの延出方向に沿って連続的に形成されており、不織布10の平面方向の端部にまで配されている。また、中空部5は、縦畝部11と横畝部12との交差部分において空間を共有し、互いに交差する方向に連通されている。これにより、不織布10内部の通気性を高めている。該通気性の観点から、中空部5の第2面Z2側を覆う更に別の繊維層が配されていてもよい(図示せず)。
この不織布10の第1面Z1側を上側にして見たとき、不織布10を厚み方向に3等分して第1面Z1側から順に、凸部6、壁部7及び凹部8に区分される。凸部6は、外面繊維層1(縦畝部11及び横畝部12)と連結部3の上側(外面繊維層1と連結した側)の部分とからなる。凸部6の内部は、中空部5の一部を含む。凹部8は、外面繊維層2と連結部3の下側(外面繊維層2と連結した側)の部分とからなる。壁部7は、連結部3のうち、凸部6と凹部8との間の厚み中間位置にある部分である。
この区分において、第1面Z1側の外面繊維層1(縦畝部11及び横畝部12)は凸部6の頂部61であり、第2面Z2側の外面繊維層2は凹部8の底部81である。言い換えると、凸部6の頂部61及び凹部8の底部81は、第1面Z1及び第2面Z2それぞれにおいて、最も外側に位置する繊維層の部分である。
第1実施形態の不織布10は、連結部3が外面繊維層1及び2を連結して支えることで嵩高く厚みのあるものとされており、前述のとおり、50Pa荷重下の見掛け厚み3mm以上を有している。そして、第1実施形態の不織布10は、前述の化合物Aを含有する。
第1実施形態の不織布10において、凸部6の頂部61の繊維密度M1が壁部7の繊維密度M2よりも高いことが好ましい。これにより、凸部に液が残り、液膜開裂剤の開裂効果による液残り低減効果が高くなる。この観点から、凸部6の頂部61の繊維密度M1の壁部7の繊維密度M2に対する比(M1/M2)は、1.1以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましい。また、前記比(M1/M2)は、特に制限されるものではないが、加工性の観点から、3以下が好ましく、2.6以下がより好ましく、2.2以下が更に好ましい。具体的には、凸部6の頂部61の繊維密度M1の壁部7の繊維密度M2に対する比(M1/M2)は、1.1以上3以下が好ましく、1.3以上2.6以下がより好ましく、1.5以上2.2以下が更に好ましい。
また、第1実施形態の不織布10において、壁部7の繊維密度M2が凹部8の底部81の繊維密度M3よりも高いことが好ましい。これにより、壁部に液が残り、液膜開裂剤の開裂効果による液残り低減効果が高くなる。この観点から、壁部7の繊維密度M2の凹部8の底部81の繊維密度M3に対する比(M2/M3)は、1.1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。また、前記比(M2/M3)は、特に制限されるものではないが、加工性の観点から、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。具体的には、壁部7の繊維密度M2の凹部8の底部81の繊維密度M3に対する比(M2/M3)は、1.1以上6以下が好ましく、2以上5以下がより好ましく、3以上4以下が更に好ましい。
さらに、第1実施形態の不織布10において、凸部6の頂部61の繊維密度M1が凹部8の底部81の繊維密度M3よりも高いことが好ましい。これにより、凸部に液が残り、液膜開裂剤の開裂効果による液残り低減効果が高くなる。この観点から、凸部6の頂部61の繊維密度M1の凹部8の底部81の繊維密度M3に対する比(M1/M3)は、1.1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましい。また、前記比(M1/M3)は、特に制限されるものではないが、加工性の観点から、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。具体的には、凸部6の頂部61の繊維密度M1の凹部8の底部81の繊維密度M3に対する比(M1/M3)は、1.1以上10以下が好ましく、3以上8以下がより好ましく、5以上6以下が更に好ましい。
加えて、凸部6の頂部61の繊維密度M1は、壁部や凹部に対して繊維密度を高め、凸部に液を残して、液膜開裂剤による開裂効果を高める観点から、210本/mm以上が好ましく、260本/mm以上がより好ましく、360本/mm以上が更に好ましい。また、凸部6の頂部61の繊維密度M1は、特に制限されるものではないが吸液速度の観点から、700本/mm以下が好ましく、600本/mm以下がより好ましく、500本/mm以下が更に好ましい。具体的には、凸部6の頂部61の繊維密度M1は、210本/mm以上700本/mm以下が好ましく、260本/mm以上600本/mm以下がより好ましく、360本/mm以上500本/mm以下が更に好ましい。
壁部7の繊維密度M2は、凸部より繊維密度を下げ、凸部に液を残して、液膜開裂剤による開裂効果を高める観点から、350本/mm以下が好ましく、250本/mm以下がより好ましく、200本/mm以下が更に好ましい。また、壁部7の繊維密度M2は、特に制限されるものではないが、不織布として形状を保つ観点から、10本/mm以上が好ましく、20本/mm以上がより好ましく、30本/mm以上が更に好ましい。具体的には、壁部7の繊維密度M2は、10本/mm以上350本/mm以下が好ましく、20本/mm以上250本/mm以下がより好ましく、30本/mm以上200本/mm以下が更に好ましい。
凹部8の底部81の繊維密度M3は、凸部や壁部の繊維密度より下げ、凸部や液部に液を残して、液膜開裂剤による開裂効果を高める観点から、330本/mm以下が好ましく、210本/mm以下がより好ましく、100本/mm以下が更に好ましい。また、凹部8の底部81の繊維密度M3は、特に制限されるものではないが、不織布として形状を保つ観点から、10本/mm以上が好ましく、20本/mm以上がより好ましく、30本/mm以上が更に好ましい。具体的には、凹部8の底部81の繊維密度M3は、10本/mm以上330本/mm以下が好ましく、20本/mm以上210本/mm以下がより好ましく、30本/mm以上100本/mm以下が更に好ましい。
第1実施形態の吸収性物品用不織布10は、上記の繊維密度の関係を有することによって、凸部6、特に凸部6の頂部61において毛管力で体液を的確に捉え、その下方において液の透過経路を広く確保することができる。その際、化合物Aが排液の駆動力として作用し、凸部6、特に凸部6の頂部61の狭い繊維間の空間に生じる体液の液膜を開裂し、液滴となった体液を下方へと移行させることができる。また、化合物Aはその拡張性ゆえに、凸部6に留まらず、壁部7及び凹部8へ拡張して液膜開裂作用を発現し、排液をさらに促進することができる。
この作用の観点から、凸部6、特に凸部6の頂部61が化合物Aを有することが好ましい。また同様の観点から、第1実施形態の吸収性物品用不織布10の非肌当接面側に吸収体を配し、第1実施形態の吸収性物品用不織布10の凸部6側(第1面Z1側)を肌当接面側に向けて配することが好ましい。
(繊維密度M1、M2及びM3の測定方法)
剃刀(品番FAS−10、フェザー安全剃刀株式会社製)を用いて不織布10を厚さ方向に沿って切断する。不織布10の切断面を3等分し、第1面Z1側から凸部6、壁部7及び凹部8に区分する。凸部6の最も外側(第1面Z1側)にある頂部61(外面繊維層1)、壁部7、凹部8の最も外側(第2面Z2側)にある底部81それぞれの部位について、走査電子顕微鏡を用いて拡大(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)する。観察において、一定面積当たり(0.5mm程度)の切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。次に各部位の測定値について、1mm当たりの繊維の断面数に換算する。測定は3箇所行い、平均した値を、不織布10の各部位の繊維密度とする。走査電子顕微鏡には、日本電子株式会社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
外面繊維層1及び2と連結部3とは、互いに少なくとも一部の繊維同士が融着して継ぎ目なく一体化されていることが好ましい。また、凸部6及び凹部8と壁部8とは、互いに少なくとも一部の繊維同士が融着して継ぎ目なく一体化されていることが好ましい。すなわち、不織布10は、複数の不織布を貼り合わせたものでなく、1枚の不織布からなることが好ましい。
前記凸部の頂部である外面繊維層1及び前記凹部の底部である外面繊維層2は、それぞれの面において、繊維が平面方向に配向していることが好ましい。ここで、「繊維が平面方向に配向している」とは、後述する測定方法によって得られる、繊維の縦配向率が45%未満であることを意味する。繊維の縦配向率を45%未満とすることで、繊維が平面方向に十分に並び、フラットな形状を保つことができる。平面方向に配向している外面繊維層1及び2は、不織布の形状保持や強度保持の観点から、繊維の縦配向率を0%以上とすることが好ましく、30%以上とすることがより好ましい。また、外面繊維層1及び外面繊維層2の繊維の縦配向率を40%未満とすることが通常のフラット不織布と同様平面と接地しやすいので好ましく、38%以下とすることがより好ましく、37%以下とすることが更に好ましい。
連結部3は、繊維が不織布10の厚み方向に配向していることが好ましい。ここで、「繊維が不織布の厚み方向に配向している」とは、後述する測定方法によって得られる、繊維の縦配向率が60%以上であることを意味する。連結部3が、この範囲の繊維の縦配向率を有するとによって、不織布10の厚み方向において垂直に配置されていると言える。
連結部3は、繊維の縦配向率を60%以上とし、かつ繊維同士の一部融着を有していることによって、まるで柱のような状態で起立し、不織布10の厚み方向に適度な弾力を付与する。これに対し、従来の不織布の繊維においては、不織布10の連結部3のような繊維の縦配向率を有しないため、厚み方向に押圧した際に、作用した力に合わせて不織布は繊維間を埋めるように変形し、力に合わせて変形量は増加する。しかし、不織布10では、連結部3は柱のようにして外面繊維層1及び2を支える。これにより、不織布10は、厚み方向に垂直にあるため同方向からのわずかな力には耐え、大きな力が加わると柱が折れるように変形をする。つまり従来の不織布にはない、いわゆる座屈現象に近い変形が生じる(以下、座屈変形ともいう。)。ただし、不織布10は、座屈現象のように連結部3が屈曲した場合でも、後述する弾力性により元の厚みを回復し得る。
上記で定義される連結部3の繊維の縦配向率は、クッション性の観点から、63%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、68%以上が更に好ましい。その上限には特に制限は無いが、繊維同士の交点を作って融着点を形成し、繊維同士で柱状になって、力に耐える構造を作る観点から、縦配向率は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。具体的には、連結部3の縦配向率は、63%以上90%以下が好ましく、65%以上85%以下がより好ましく、68%以上80%以下が更に好ましい。
この連結部3の繊維の縦配向率は、平面視における配置方向が異なる連結部3同士でも具備することが好ましい。例えば、図1に示す第1連結部31及び第2連結部32のいずれにおいても、上記の連結部3の繊維の縦配向率を有することが好ましい。
連結部3と外面繊維層1及び2とが互いの端部において継ぎ目なく接続されているため、その部分においては、平面方向に配向した繊維と厚み方向に配向した繊維とが混在する。なお、平面方向に配向した繊維と厚み方向に配向した繊維とが混在する部分においては、繊維の縦配向率が45%以上60%以下の斜め配向を示すようにされていることが好ましく、繊維の縦配向率が45%から少しずつ縦配向していき60%以下の十分な縦配向に移行していくことがより好ましい。
不織布10において、連結部3は、柱のように外面繊維層1及び2に対して垂直に連結されていることが好ましい。特に連結部3は、外面繊維層1及び2の端部同士を繋ぐ配置であることが、後述するクッション性の観点から好ましい。
(外面繊維層1及び2並びに連結部3の繊維の縦配向率の測定方法)
外面繊維層1及び2並びに連結部3の繊維の縦配向率は、下記(1)〜(3)に基づいて測定することができる。
(1)不織布の断面の作製
第1面側Z1の外面繊維層1及び第2面側Z2の外面繊維層2を通る、不織布の断面(縦断面)であって、連結部3が平面方向に延出する方向に直交し、該延出する長さの中央を通る位置における厚み方向の断面を作製する。または、不織布10が後述のように空間部4を有する場合は、第1面側Z1の外面繊維層1及び第2面側Z2の外面繊維層2を通る、不織布の断面(縦断面)であって、空間部4の中心を通る位置における厚み方向の断面を作製する。例えば、図1におけるA−A線、B−B線を通る厚み方向の断面(図2及び3)を作製する。図2に示すA−A線を通る厚み方向の断面は、連結部31が延出する不織布の長手方向Yに直交する断面である。ここでは連結部31、第1面側Z1の外面繊維層1(縦畝部11)及び第2面側Z2の外面繊維層2の不織布幅方向Xの長さT1、T2及びT3を示している。図3に示すB−B線を通る厚み方向の断面は、連結部32が延出する不織布の幅方向Xに直交する断面である。ここでは、連結部32、第1面側Z1の外面繊維層1(横畝部12)及び第2面側Z2の外面繊維層2の不織布長手方向Yの長さT4、T5及びT6を示している。なお、上記断面は、測定対象の不織布を5mm×5mm以上切り取るものとする。
(2)前記厚み方向の断面における外面繊維層1及び2の平面方向の長さの画定
上記厚み方向の断面を有する不織布を平らな平面におき、荷重2.9Paをその不織布の上に加え、それを断面から観察する。具体的には、不織布を株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ(VHX−900)の台座に載せる。その不織布の上に目付300g/mの黒い(不織布が白いと判断が容易になるため)厚紙(目付300g/m)を置き、株式会社キーエンス製VHZ20Rレンズを用いて断面から20倍で観察することによって、前記厚み方向の断面における外面繊維層1及び2の境界を判断することができる。
より具体的には、図4に示すような断面観察において、前記厚み方向の断面を示した繊維層のうち、台座201に接触している範囲を外面繊維層2の平面方向の長さT3(又はT6)と画定し、それぞれの境界(両端縁)をS2と規定する。前記厚み方向の断面にされた繊維層のうち、厚紙202に接触している範囲を外面繊維層1の平面方向の長さT2(又はT5)と画定し、それぞれの境界(両端縁)をS1と規定する。なお、従来のフラットな不織布の場合は断面観察すると通常台座201にも厚紙202にも、どの断面でも接触をしている。このときは、T2およびT3(又はT5およびT6)の概念は存在しない。
また、前記厚み方向の断面を示した繊維層において、連結部3の平面方向の長さT1(又はT4)を確定する。本実施形態においては、連結部3は、第1面側Z1の外面繊維層1及び第2面側Z2の外面繊維層2の端部同士を厚み方向に繋ぐように配在されている。この連結部3の平面方向の長さT1(又はT4)は、隣り合ったT2およびT3の間(又はT5およびT6の間)の長さとなる。より具体的には、外面繊維層1及び2の平面方向における長さの境界(端縁)S1とS2とを厚み方向に伸ばした仮想線間に挟まれる断面繊維層の平面方向の長さを連結部3の平面方向の長さT1(又はT4)とする。なお、T2、T3の間(又はT5、T6の間)にT1(又はT4)の長さが存在しない場合(すなわち、境界S1とS2とが重なる場合)はT1(又はT4)の長さは0とする。ただし、連結部3が外面繊維層1、2に対して垂直な配置に近づくほど、図2及び図3に示すように、連結部3の平面方向の長さT1(又はT4)は、外面繊維層1,2の平面方向の長さT2とT3(又はT5とT6)とが一部重なる部分の長さとなる。
それぞれ断面観察により画定される各平面方向の長さT1、T2、T3(又はT4、T5、T6)は、それぞれ4か所測定を行い、平均値をその長さとする。
(3)外面繊維層1及び2並びに連結部3の繊維の縦配向率の測定
外面繊維層1及び2並びに連結部3の繊維の縦配向率は、それぞれのT1、T2、T3の範囲の部位に対し、下記の手順で測定を行う。
すなわち、厚み方向の断面において画定された外面繊維層1の平面方向の長さT2(又はT5)、外面繊維層2の平面方向の長さT3(又はT6)、連結部3の平面方向の長さT1(又はT4)それぞれの領域を、厚み方向の断面をSEM(日本電子株式会社製JCM−6000Plus)で35倍に拡大して観察する。観察画像に基準線として0.5mm×0.5mmの正方形の線を作製する。正方形の各辺(基準線)は、不織布断面における厚み方向及び平面方向それぞれと直交する辺とする。正方形の各辺からなる基準線に繊維が通過する延べ本数をそれぞれ数える。不織布の平面方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「横繊維本数」、不織布の厚み方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「縦繊維本数」と定義する。縦配向率として、(縦繊維本数)/(横繊維本数+縦繊維本数)×100=縦配向率(%)として算出する。それらを各4点測定し、平均したものを縦配向率の値とする。外面繊維層および連結部をそれぞれ切出し測定する。
第1実施形態の不織布10は、平面配向する第1面Z1側の外面繊維層1及び第2面側Z2の外面繊維層2と、厚み配向する連結部3とが互いに融着していることにより、次のような従来にない適度な弾力性と優れたクッション性を有する。
すなわち、連結部3の繊維の配向性により、不織布10の一方の面側(例えば第1面側Z1)を指で撫でる程度(100Pa未満の力である。)では繊維の剛性により沈み込まず、弾力が高いものとなる。本実施形態10の不織布は、この連結部3の厚み方向及び前述の外面繊維層1及び2の平面方向のそれぞれの繊維、部位同士の繊維が融着して面を構成しているため、触ったときの弾力が高く、クッション感が従来の凹凸不織布よりもはるかに高い。触れた指には不織布がふくよかで厚み感のあるものであると感じることができる。
さらに不織布10の一方の面側に厚み方向に押し込む押圧力(吸収性物品の表面シートを使用時に触ることを想定した力であり、2.5kPa程度の力である。)が加わると、該押圧力は、力点付近から平面方向に分散するよりも厚み方向に集中して作用しやすくなる。これに対し、従来の縦配向率が低い一般的な凹凸不織布では、力は平面方向に分散され、前述したように変形量と押圧力に相関があり、本発明のような適度な弾力性が得られなかった。しかし、第1実施形態の不織布10においては、高い縦配向率を連結部3が有することで押圧力は、連結部3において繊維の配向方向に沿った方向に伝わる。その結果、押圧力によって、連結部3全体が倒れるような変形ではなく、連結部3の中間位置で前述した座屈現象に近い変形(屈曲)が生ずる。これにより、不織布10の立体構造が平面状に潰れる(へたる)変形が回避され、坪量を増やさずとも優れたクッション性が得られる。そして押圧力の集中により、不織布10の沈み込む圧縮変形量が従来のものよりも大きくなる。しかも、このような圧縮変形は、不織布10の力点付近での部分的な沈み込みとして生じる。具体的には、例えば人の指で押した場合、その領域及びその周辺を含めた指の大きさとほぼ同面積の4cm範囲の領域が厚み方向に沈み込み、他の領域では変形が抑えられ厚みが保持されやすい。これにより、高荷重時の深い沈み込みが、不織布10の限定された範囲で生じ、不織布10全体の立体構造が保持されて、不織布10のふっくらした柔らかさが保持され得る。さらに、これにより押した指の周りには厚みのある不織布に包まれているような感覚が得られる。風合いは指の腹だけでなく周りでも感じていると言われている(日本バーチャルリアリティ学会論文誌 Vol.9, No.2, 2004、指先の接触面積と反力の同時制御による柔軟弾性物体の提示)。そのため、全体の包まれる感触によってさらに風合いがよいものだと感じていると考えられる。
加えて、不織布10は、連結部3の前述の融着する繊維の縦配向性により、圧縮変形後の厚み回復性に優れる。すなわち、前記押圧力による圧縮変形が解かれると、連結部3の繊維の弾性によって不織布10は元の見掛け厚みを回復する。これにより、不織布10は繰り返し触っても、クッション性が戻り、該クッション性の持続力が高い。その結果、不織布10は、触って一旦変形しても、手を放すとすぐに厚みが戻りやすく、弾力性のある心地よい風合いのよいものとなる。
不織布10において、連結部3による不織布10に与える前述の適度な弾力及び圧縮変形(座屈変形)の発現にとって、外面繊維層1及び2との組み合わせが有効である。直接表面を触るとき、仮に縦配向率が高い連結部のみの場合、いわゆる柱が並んでいるだけの構造となる。それらは横に倒れやすく、座屈変形が生じるように厚み方向に適切に力が必ず加わるとは言い難い。しかし第1実施形態の不織布10においては、平面方向の繊維が橋渡しのようにして連結部3につながって融着していることで、厚み方向に押圧力が集中しやすい。例えば、押圧力を第1面側Z1から加えた場合、押圧力が最も顕著に加えられる外面繊維層1が過度に変形せずに、繊維の融着で接続された連結部3に応力が伝わる。外面繊維層1に加わる押圧力は、たとえ連結部3の繊維の配向方向に対して偏心荷重となる場合でも、連結部3が好適に座屈変形できるように作用する。また、第2面側Z2の外面繊維層2は、連結部3を介して伝わる押圧力で過度に変形せずに、繊維の熱融着で接続された連結部3の終着部位として該連結部3の根元を下支えする。これにより、不織布10の一方の面に加わる押圧力は、不織布10全体の立体構造を潰すことなく、押圧力の力点付近に限定された圧縮変形(座屈変形)を効果的に発現することができる。
また平面方向に配向された外面繊維層はクッション感以外の風合いを向上させる作用も有する。風合いを確かめるときなどに人は押す動作以外にも撫でる動作を行う。この場合に撫でる方向に沿っている配向をもつ外面が存在することで、より滑らかな風合いを実現している。平面方向への配向で滑らかさ、厚み方向で座屈を有したクッション感をもつことで、不織布10は従来にはない感触を実現している。また、撫でる力に対しては連結部3の弾力が作用して、不織布10の厚み(嵩高さ)が保持され、滑らかな風合いをより感じやすくする。また、前記弾力によるふっくらした風合いをも同時に感じることができる。
第1実施形態の不織布10は、外面繊維層1、2と連結部3とからなる厚み方向の立体構造によって、繊維量を増加させずに、クッション性を付与するに十分な厚み(嵩高さ)を備えるものとなる。そのため、不織布10は、単に繊維量を増やして厚みを持たせたものよりも柔軟性があり、かつ単位体積あたりの繊維量が少なくなり、空間が多くなるので、圧縮変形量をより大きくすることができるためにクッション感を感じられ風合いがよい。また、前述した繊維の配向により、適度な弾力性があり、風合いに優れたクッション性を備える。
第1実施形態の不織布10は、このような嵩高い構造において、前述の液膜開裂剤が含む化合物Aを有することによって排液が促進され、クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現することができる。この排液の促進の観点から、第1実施形態の不織布10の凸部6が化合物Aを有することが好ましく、凸部6の頂部61(外面繊維層1)が化合物Aを有することがより好ましい。また同様の観点から、第1実施形態の不織布10の非肌当接面側に液保持性の吸収体を配し、第1実施形態の不織布10の前記凸部側(第1面側)を肌当接面側に向けて配することが好ましい。
次に、図5〜10は、第2実施形態の吸収性物品用不織布20(以下、単に不織布20ということがある。)を示している。以下、第2実施形態の吸収性物品用不織布20について、第1実施形態の吸収性物品用不織布10と異なる点について説明する。第2実施形態の吸収性物品用不織布20において、第1実施形態の吸収性物品用不織布10と共通する部位等については同じ符号を付して説明する。また、下記に示す以外の事項については、第1実施形態の吸収性物品用不織布10に関する事項が適宜適用される。
第2実施形態の吸収性物品用不織布20は、下記の凹凸構造を備えて50Pa荷重下の見掛け厚み3mm以上を有し、前述の化合物Aを有する。第2実施形態の吸収性物品用不織布20は、第1実施形態の吸収性物品10における凸部6の頂部61及び凹部8の底部81を、平坦面ではなく、丸みを帯びた曲面状にされている。凸部6、壁部7及び凹部8の区分は、第1実施形態と同様になされる。凸部6の頂部61の繊維密度M1、壁部7の繊維密度M2及び凹部8の底部81の繊維密度M3、並びにこれらの繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)は、第1実施形態と同じ範囲とされる。
第2実施形態の不織布20は、第1実施形態の不織布10の第1面Z1側における横畝部12の高さH2を縦畝部11の高さH1よりも低くしている。ここで言う高さは、第2面Z2側を平面S上に置いた位置から第1面Z1に向かう高さである。横畝部12の高さH2は、具体的には、縦畝部11の高さH1の3分の2以下であり、不織布20の第1面Z1側における外面繊維層1を構成していない。そのため、縦畝部11だけが前述の凸部6の頂部61となる。
横畝部12の高さH2を縦畝部11の高さH1よりも低くすることで、第1面Z1を肌に接触させる面とした場合に、不織布20における肌との接触面をより少なくすることができる。また、横畝部12は、第1面Z1側の空間部4を第1実施形態の場合よりも低い位置で区切っている。そのため、第1面Z1側の空間部4をより大きくとることができ、通気性の向上の観点から好ましい。また、横畝部12の高さH2を低くすることで、空間部4を、縦畝部11に沿う方向に連通しやすくすることができる。
さらに縦畝部11を構成する繊維の配向方向と横畝部21を構成する繊維の配向方向とが異なっていることが好ましい。繊維の配向方向が異なっているとは、後述する[繊維配向度の測定方法]に従って得られた両者の繊維配向が上面から見て5°以上異なって交わっていることをいう。繊維配向が畝部と平行になっている場合、その各畝部が上面から見て、畝部の幅中心線の角度を分度器で測定する。
[繊維配向度の測定方法]
不織布を2cm×2cmの正方形に切出して試料とし、第1面Z1側から観察する。観察には、上述のSEMを用いる。SEM観察では、事前に推奨の方法で試料に蒸着処理を行っておくことが好ましい。50倍の倍率で縦畝部の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部11の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。縦畝部11の繊維配向度は下記(式1)に基づいて求める。
縦畝部11の繊維配向度(%)
={繊維数N2/(繊維数N1+繊維数N2)}×100 (式1)
これを任意の3か所測定し、平均を取る。繊維配向度の平均が50%を超えたときに、その領域の繊維は縦畝部11の延びる方向と同方向に配向していると判定し、その方向を配向方向とする。数値が大きいほど、縦畝部11の延びる方向と同じ方向に繊維が強く配向していることを示している。
横畝部12の繊維配向度を測定する場合は、上記と同様に50倍の倍率で横畝部12の中心を拡大し、観察画面の中央に示す。次に前記縦畝部と平行になるように、画面の中心を対角線の交点とした一辺が500μmの正方形を描き、縦畝部11の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N1とする)。また同様に縦畝部11の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N2とする)。横畝部12の、縦畝部11の延びる方向を基準とした繊維配向度は前記(式1)に基づいて求める。
横畝部12の繊維が横畝部12の延びる方向と同じ方向に配向しているかを判定するには、上記方法のように縦畝部11と平行した正方形ではなく、横畝部12と平行になるように正方形を描く。横畝部12の延びる方向と平行になっている両側の二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N3とする)。また同様に横畝部12の延びる方向と垂直に交わっている二辺を通る繊維の数を数える(繊維数N4とする)。この方法で横畝部12に沿った繊維配向度(%)を下記(式2)に基づいて求め、50%を超えたときに横畝部12の延びる方向と同方向に配向していると判定する。
横畝部12に沿った繊維配向度(%)
={繊維数N4/(繊維数N3+繊維数N4)}×100 (式2)
上記のように、縦畝部11の繊維の配向方向と横畝部21の繊維の配向方向とが異なることから、不織布20をある方向から撫でた場合、撫でる方向に近いか沿っている繊維配向をもつ外面が存在することになる。そのため、撫でた感触がより滑らかな風合いを感じ取ることができ、風合いの向上を実現することができる。
また、不織布20に第1面Z1側から肌面(図示せず)によって荷重をかけた場合、第1面Z1の肌面との接触が縦畝部11による線状の接触になることから、縦畝部11の全体で若干変形しながらも荷重をしっかりと支えることができる。しかも縦畝部11に繋がる横畝部21によって縦畝部11の他方向(X方向)への変形が抑制されるため、不織布20が厚さ方向(Z方向)において潰れ(へたり)が生じ難くなり、形状が保持されやすくなる。したがって、不織布10は、厚さが保持されやすく、通常の凹凸不織布に比べて厚さが出やすい。即ち、縦畝部11の部分で圧縮時に変形量が大きく、横畝部12による形状保持性を伴ったクッション感が得られやすい。また、異なる配向方向によって、荷重が分散しやすく、同じ方向に倒れづらい。つまり、圧縮方向に対して垂直に荷重がかかりやすく、触った時に変形量が大きくさらにクッション感が得られやすくなる。
さらに、第2実施形態の不織布20の第2面Z1側においては、第1面Z1側の空間部4及び横畝部12に対応する領域に、筋状の凸条部31が配されている。凸条部31は、第1面Z1側の横畝部12の中空部5に相当する、第2面Z2側から第1面Z1側へのへこみ部35を有する。これにより凸条部31は、その延出方向に沿って高さが波打った形状をしている。そのため、凸条部31のうち、へこみ部35、35間の部分が第2面Z2側の最も外側に位置する繊維層の部分であり、第1面Z1側から見た凹部8の底部81となり、また、第2面Z1側における外面繊維層2となる。
また、凸条部31に隣接する領域には、第1面Z1側の縦畝部11の中空部5に相当する凹状部36が配されている。すなわち、凸条部31及び凹条部36はそれぞれ、不織布20の第2面Z1側から見て、該不織布20の平面視において、一方向に筋状に延出した凸部及び凹部であり、該凸条部31及び凹条部36は、前記一方向と交差する他の方向に沿って交互に複数配されている。不織布20においては、凹状部36を介して、前述の凸条部31におけるへこみ部35が凸条部31と交差する方向に直線状に離間配置されている。さらに不織布20においては、凸条部31において、幅が細い部分と太い部分とが交互に繋がって配されていることが好ましく、幅が細い部分が前述のへこみ部35にあることが好ましい。このような形状において、幅の太い部分が球状になり、凸条部31全体が数珠つなぎのような形状になる。これにより、凸条部31の幅の太い部分が、前述した凹部8の底部81として、形状安定性の高いものとなる。この第2面Z2側の凹凸構造が、第1面Z1側の縦畝部11及び横畝部12による凹凸構造と組み合わさって、不織布20に好適な弾力感を付与し、不織布20はクッション性に優れ、圧縮変形量を大きくすることができる。また、第2面Z2側の凹凸構造によって、不織布20は、通気性に優れ、加えて、第1面Z1側からの触感がふっくらした風合いのものとなる。
第2実施形態の不織布20は、このような嵩高い構造において、化合物Aを有することによって排液が促進され、クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現することができる。この排液の促進の観点から、第2実施形態の不織布10の凸部6が化合物Aを有することが好ましく、凸部6の頂部61(縦畝部11)が化合物Aを有することがより好ましい。また同様の観点から、第1実施形態の不織布10の非肌当接面側に液保持性の吸収体を配し、第1実施形態の不織布10の前記凸部側(第1面側)を肌当接面側に向けて配することが好ましい。
これら第1実施形態の吸収性物品用不織布10及び第2実施形態の吸収性物品用不織布20は、図11に示す方法等によって製造することができる。図11においては、不織布化する前の繊維ウエブ110を賦形するための支持体雄材120と支持体雌材130とを用いる。図11(A)に示すように、支持体雄材120の上に繊維ウエブ110を載置し、繊維ウエブ110の上から支持材雌材130にて抑えて挟み込んで賦形する。
支持体雄材120は、基材上に垂直に起立する突起121を複数有する。突起121、121間は凹部122にされており、該凹部122は格子状に配されている。
支持体雌材130は、支持体雄材120の凹部122に対応する突起131を有する。突起131、131間は、支持体雄材120の突起121に対応する凹部132とされている。第1実施形態においては、突起部131が格子状であり、格子状の内部に凹部132が配されている。第2実施形態においては、突起131及び凹部132が平面視して一方向に連続する形状を有し、突起131と支持体凹部132とが、前記一方向と直交する方向に交互に配される。具体的には、リング状の円盤を回転軸方向に複数、等間隔に繋げたドラム形状のものなどが挙げられる。
支持体雌材130において、突起131、131間の距離は、支持体雄材120の突起121の幅よりも広くされている。その距離は、支持体雄材120の突起121と支持体雌材130の突起131とで繊維ウエブ110を挟み込んで繊維が厚さ方向に配向する連結部3を好適に賦形できるよう適宜設定される。
上記のような支持体雄材120と支持体雌材130を用いて第1実施形態の吸収性物品用不織布10及び第2実施形態の吸収性物品用不織布20を製造する際、任意で図11(B)に示すような熱風W1の吹き付け処理を行う。最後に、図11(C)に示すような熱風W2を吹きつけて、繊維同士を融着させて不織布化を行う。
次に、図12は、第3実施形態の吸収性物品用不織布30(以下、単に不織布30ということがある。)を示している。以下、第3実施形態の吸収性物品用不織布30について詳述する。第3実施形態の吸収性物品用不織布30において、第1実施形態の吸収性物品用不織布10と共通する部位等については同じ符号を付して説明する。また、下記に示す以外の事項については、第1実施形態の吸収性物品用不織布10に関する事項が適宜適用される。
第3実施形態の吸収性物品用不織布30は、50Pa荷重下の見掛け厚み3mm以上を有し、前述の化合物Aを有するとともに、下記の凹凸構造を備える。すなわち、第1面Z1側において、凹部8と中空の凸部6とが、環状の壁部7を介して、不織布30の平面視において互いに異なる交差する方向に、複数交互に配されている。凸部6は中空部5を有し、中空部5は第2面Z2側に開口されている。凹部8上には第1面Z1側に開口された空間部4が配されている。これにより、凹部8は第2面Z2側においては凸部をなし、凸部6は第2面Z2側において凹部をなしている。不織布30においては、凸部6の頂部61が第1面Z1側の外面繊維層1となっており、凹部8の頂部81が第2面Z2側の外面繊維層2となっている。このような不織布30において、中空の凸部6はドーム状であることが好ましく、凹部8はカップ状であることが好ましい。
第3実施形態の不織布30は、上記の特有の凹凸構造を備え、第1面Z1側及び第2面Z2側の両面にそれぞれ独立した凸部を有して、厚みのある嵩高いものとされている。なお、第1面Z1側から見た凸部6、壁部7及び凹部8の区分は、第1実施形態と同様になされる。凸部6の頂部61の繊維密度M1、壁部7の繊維密度M2及び凹部8の底部81の繊維密度M3、並びにこれらの繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)は、第1実施形態と同じ範囲とされる。
第1面Z1側の凹部8上の空間部4同士は、互いに独立しており、第1面Z1側における連通性が低く抑えられている。同様に、第1面Z1側の凸部6の中空部5は、互いに独立しており、第2面Z2側における連通性が低く抑えられている。
壁部7は、環状のどの地点においても、凸部6と凹部8とを結ぶ方向に沿った繊維配向性を有する。そのため、例えば、凹部8に着目してみたときに、凹部8の底部に向かって収束する放射状の繊維配向性を有する。
第3実施形態の不織布30は、肌の接触面の三次元的な動きに対しても、両面の凸部(凸部6と凹部8が第2面Z1側でなす凸部)のそれぞれ独立した変形によって良く追従しやすい。これにより、不織布30は、両面における前記凸部それぞれの頂部で立体的なクッション性を奏する。また、環状の壁部7が前述の放射状の繊維配向性によって、凸部6と凹部8とを繋いでいるので、不織布30の厚み方向にしっかりとしたコシが生まれ、潰れて(へたって)しまうことのない、厚み維持性又は形状回復性を有する。また、肌との接触は凸部6の頂部になるため、接触面積を抑えて肌触りのドライ感が得られる。さらに、独立した凹部8上の空間部4、凸部6の中空部5が、体液等の捕集性が高く、厚み方向への液透過を促しやすい構造としている。
第3実施形態の不織布30は、このような嵩高い構造において、化合物Aを有することによって排液が促進され、クッション性の向上と液残り低減の向上との両立を実現することができる。この排液の促進の観点から、第3実施形態の不織布30の凸部6が化合物Aを有することが好ましく、凸部6の頂部61が化合物Aを有することがより好ましい。また同様の観点から、第1実施形態の不織布10の非肌当接面側に液保持性の吸収体を配し、第1実施形態の不織布10の前記凸部側(第1面側)を肌当接面側に向けて配することが好ましい。
第3実施形態の不織布30は、例えば、特開2012−149370号公報の図1及び2に示す支持体や特開2012−149371号公報の図1及び2に示すに示す支持体等を用い、突起高さを3mm以上とし、繊維ウエブに対して、熱風温度及び風速を制御しながら多段階の熱風処理を行うエアスルー加工によって製造することができる。その際、特開2012−136790号の段落[0031]及び[0032]に記載の製造方法を用いることができる。
本発明の吸収性物品用不織布は、上記の実施形態に限定されるものでなく、種々の形状等を採用できる。また、前述の第1〜第3実施形態の内容を適宜組み合わせることもできる。
本発明の吸収性物品用不織布は、優れたクッション性及び液残りの低減性を活かして、種々の吸収性物品に適用できる。例えば生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ、失禁パッドなどの身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、吸収体、吸収体を包む被覆シート、防漏シートなどとして好適に用いられる。
その中でも、本発明の吸収性物品用不織布の非肌当接面側を表面シート又はセカンドシートとし、その非肌当接面側に吸収体を配し、本発明の吸収性物品用不織布の凸部側を肌当接面側に向けて配する吸収性物品とすることが好ましい。
身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。本発明の吸収性物品用不織布を表面シートとして用いた場合の吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の不織布、吸収性物品及び繊維処理剤を開示する。
<1>
凹部と中空の凸部とを有し、
50Pa荷重下の見掛け厚みが3mm以上であり、好ましくは3.5mm以上、より好ましくは4mm以上、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは9mm以下、更に好ましくは8mm以下であり、
表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/超で、水溶解度が0g以上0.025g以下である化合物を有し、前記水溶解度は、好ましくは0.0025g以下、より好ましくは0.0017g以下、更に好ましくは0.0001g未満である、吸収性物品用不織布。
<2>
前記中空とは繊維密度が20本/mm以下となる空間である、前記<1>に記載の吸収性物品用不織布。
<3>
前記凹部と前記凸部よりなる高低差は、前記凹部及び前記凸部が配される面側において、厚み方向の最も高い位置の部位と最も低い位置の部位との間の差であり、該高低差が、前記吸収性物品用不織布の見掛け厚みの3分の2以上である、前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品用不織布。
<4>
前記50Pa荷重下の見掛け厚みが4mm以上8mm以下である、前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<5>
前記化合物の、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が5.4超16.3未満であり、好ましくは6mN/m以上、より好ましくは8mN/m以上、また、好ましくは15mN/m以下、より好ましくは14mN/m以下である、前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<6>
前記化合物の、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数は、8mN/m以上14mN/m以下である、前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<7>
前記凹部及び前記凸部は、前記吸収性物品用不織布の表裏両方の面に配されている前記<1>〜<6>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<8>
前記吸収性物品用不織布は前記凸部と前記凹部を繋ぐ壁部を有し、前記凸部の頂部の繊維密度が前記壁部の繊維密度よりも高い、前記<1>〜<7>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<9>
前記50Pa荷重下の見掛け厚みを3等分し、それぞれの領域における繊維層の部分を、一方の面側から順に、前記凸部、前記壁部及び前記凹部が区分される、前記<8>に記載の吸収性物品用不織布。
<10>
前記壁部の繊維密度が前記凹部の底部の繊維密度よりも高い、前記<8>又は<9>に記載の吸収性物品用不織布。
<11>
前記壁部の繊維密度の、前記凹部の底部の繊維密度に対する比は、1.1以上6以下であり、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、また、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である、前記<10>に記載の吸収性物品用不織布。
<12>
前記壁部の繊維密度の前記凹部の底部の繊維密度に対する比は、3以上4以下である、前記<10>に記載の吸収性物品用不織布。
<13>
前記凸部の頂部の繊維密度が前記凹部の底部の繊維密度よりも高い、前記<1>〜<12>のいずれか1に吸収性物品用不織布。
<14>
前記凸部の頂部の繊維密度の、前記凹部の底部の繊維密度に対する比は、1.1以上10以下であり、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、また、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、前記<13>に記載の吸収性物品用不織布。
<15>
前記凸部の頂部の繊維密度の、前記凹部の底部の繊維密度に対する比は、5以上6以下である、前記<13>に記載の吸収性物品用不織布。
<16>
前記凸部の頂部の繊維密度の、前記壁部の繊維密度に対する比は、1.1以上3以下であり、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、また、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.2以下である、前記<8>〜<15>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<17>
一方の面側から見て、前記凸部及び前記凹部が、前記吸収性物品用不織布の平面視における一方向に筋状に延出しており、該筋状に延出した前記凸部及び前記凹部は、前記一方向と交差する他の方向に沿って、交互に複数配されている、前記<1>〜<16>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<18>
前記吸収性物品用不織布は前記凸部と前記凹部を繋ぐ壁部を有し、
前記凸部の頂部及び前記凹部の底部では繊維が前記吸収性物品用不織布の平面方向に配向しており、前記壁部では繊維が前記吸収性物品用不織布の厚み方向に配向しており、前記凸部及び前記凹部のそれぞれが、前記壁部と相互に一部繊維が融着している、前記<1>〜<17>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<19>
前記凸部の頂部が、一方の面側における一方向に延びる縦畝部と、前記一方向に交差する方向に延びる横畝部とを有する、前記<18>に記載の吸収性物品用不織布。
<20>
前記吸収性物品用不織布が、前記凸部の頂部である外面繊維層と、前記凹部の底部である外面繊維層とを備え、
前記凸部の頂部である外面繊維層と、前記凹部の底部である外面繊維層とは、前記吸収性物品用不織布の厚み方向に立設された連結部によって連結されている、前記<18>又は<19>に記載の吸収性物品用不織布。
<21>
前記凸部が前記化合物を有する、前記<1>〜<20>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<22>
前記凸部における前記化合物の含有割合(OPU)は、0.1質量%以上17質量%以下であり、好ましくは0.14質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である、前記<21>に記載の吸収性物品用不織布。
<23>
前記化合物の、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は、0mN/m超20mN/m以下であり、好ましくは5mN/m以上、また、好ましくは17mN/m以下、より好ましくは13mN/m以下、更に好ましくは10mN/m以下、より更に好ましくは9mN/m以下である、前記<1>〜<22>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<24>
前記化合物の表面張力は、20mN/m以上32mN/m以下であり、好ましくは22mN/m以上、また、好ましくは30mN/m以下、より好ましくは25mN/m以下である、前記<1>〜<23>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<25>
1枚の不織布からなる前記<1>〜<24>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<26>
複数の不織布からなり、1枚の不織布が前記吸収性物品用不織布の前記50Pa荷重下の見掛け厚みの80%以上を占める、前記<1>〜<24>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<27>
吸収性物品の表面シートとして用いられる前記<1>〜<26>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布。
<28>
圧縮変形量が2.1mm超であり、好ましくは2.1mm超、より好ましくは2.5mm以上、更に好ましくは3mm以上、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは7.5mm以下、更に好ましくは5mm以下である前記<1>〜<27>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布
<29>
前記<1>〜<28>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布と、該吸収性物品用不織布の非肌当接面側に配された吸収体とを備え、前記凸部側を肌当接面側に向けて配した吸収性物品。
<30>
前記<1>〜<28>のいずれか1に記載の吸収性物品用不織布の前記凹部及び前記凸部が配される面側を肌当接面側に向けて用いた吸収性物品。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。また、拡張係数、界面張力、表面張力及び水溶解度は、前述のとおり、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で測定したものである。下記実施例等における、液膜開裂剤の表面張力、水溶解度及び界面張力は、上記で示した国際公開第2016/098796号の段落[0015]〜[0022]に記載の測定方法により行った。また、繊維密度は、前述の(繊維密度M1、M2及びM3の測定方法)に基づき測定した。なお、下記表中における、「−」は、項目名に該当する値や事項を有さないこと等を意味する。
(実施例1)
(1)原料不織布の作製
図11に示す製造方法によって、表1に示す目付、見掛け厚み及び繊維密度を有し、図1に示す凹凸構造を有する不織布を作製した。この不織布から、大きさ400mm×140mmの実施例1の原料不織布を作製した。
(2)塗布液の作製
液膜開裂剤として下記の化合物A(A1)を用い、室温25℃の条件下で溶質エタノールに溶解させ、液膜開裂剤の有効成分1.0質量%として、塗布液を作製した。
<液膜開裂剤;化合物A(A1)>
ポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテルで、構造Zが−CH−からなる炭化水素鎖からなるものであり、Yが−(CO)−からなるPOP鎖からなるものであり、ポリオキシプロピレン基のモル数が15のもの。
これらの数値の測定の際、「表面張力が50mN/mの液体」は、100gの脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるPOEソルビタンモノラウレート(花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW−L120)をマイクロピペット(Socorex Isba SA社製、商品名ACURA825)で3.75μL添加し、表面張力を50±1mN/mに調整した溶液を用いた。水溶解度は、0.0001g毎に剤を添加して測定した。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とした。それ以外の数値についても同様の方法により測定した。
(3)不織布試料の作製
前記原料不織布の第1面Z1(肌当接面となる面)側の外面繊維層1(縦畝部11及び横畝部12)を頂部とする凸部6に対して、フレキソ印刷方式にて、前記塗布液を塗布し、不織布試料1を作製した。
(実施例2)
液膜開裂剤として下記の化合物A(A2)を用いた以外は、実施例1と同様にして不織布試料2を作製した。
<液膜開裂剤;化合物A(A2)>
トリカプリル酸・カプリン酸グリセリンで、構造Z―YにおけるZが*−O−CH(CHO−*)(*は結合部を示す。)であり、YがC15O−やC1019O−の炭化水素鎖からなるものであり、脂肪酸組成がカプリル酸を82%、カプリン酸を18%からなるもの。
(実施例3)
液膜開裂剤として下記の化合物A(A3)を用いた以外は、実施例1と同様にして不織布試料3を作製した。
<液膜開裂剤;化合物A(A3)>
ポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテルで、構造Z−YにおけるZが−CH−からなる炭化水素鎖、Yが−(CO)−からなるPOP鎖からなるものであり、ポリオキシプロピレン付加モル数が5のもの。
(実施例4)
液膜開裂剤として下記の化合物A(A4)を用いた以外は、実施例1と同様にして不織布試料4を作製した。
<液膜開裂剤;化合物A(A4)>
ポリプロピレングリコールで、構造XにおけるXがPOP鎖からなるものであり、ポリオキシプロピレン基のモル数が52のもの。
(実施例5)
液膜開裂剤として下記の化合物A(A5)を用いた以外は、実施例1と同様にして不織布試料5を作製した。
<液膜開裂剤;化合物A(A5)>
ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンで、構造X−YにおけるXが−Si(CHO−からなるジメチルシリコーン鎖、Yが−(CO)−からなるPOE鎖からなり、POE鎖の末端基がメチル基(CH)であり、変性率が20%、ポリオキシエチレン付加モル数が3のもの。
(実施例6)
液膜開裂剤として実施例3の化合物A(A3)を用い、凹部8に対して第2面Z2側の外層繊維層2(凹部8の底部81)から、塗布液を塗布した以外は、実施例1と同様にして不織布試料6を作製した。
(実施例7)
液膜開裂剤として実施例3の化合物A(A3)を用い、室温25℃の条件下で溶質エタノールに溶解させ、液膜開裂剤の有効成分0.1質量%として、塗布液を作製した。原料不織布を塗工液に浸漬し、不織布試料7を作製した。
(実施例8〜12)
表2に示す目付、見掛け厚み、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)とした以外は、実施例1〜5と同様にして不織布試料8〜12を作製した。
(実施例13〜17)
表3に示す目付、見掛け厚み、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)とした以外は、実施例1〜5と同様にして不織布試料13〜17を作製した。
(実施例18〜22)
図11に示す製造方法によって、表5に示す目付、見掛け厚み、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)を有し、第1面側に図5に示す凹凸構造、第2面側に図10に示す凹凸構造を有する不織布を作製した以外は、実施例1〜5と同様にして不織布試料18〜22を作製した。
(実施例23)
図12に示す凹凸構造を有し、表6に示す目付、見掛け厚み、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)を有する原料不織布を、特開2012−136791号の段落[0031]及び[0032]に記載の製造方法に基づいて作製した以外は、実施例2と同様にして不織布試料23を作製した。
(実施例24)
液膜開裂剤として実施例4で用いた化合物A(A4)を用いた以外は、実施例23と同様にして不織布試料34を作製した。
(実施例25及び26)
原料不織布について、実施例23及び24の不織布を裏返して凸部と凹部の繊維密度を逆転した不織布試料25及び26を用いた。
(比較例1〜3)
実施例1、8及び13で作製した原料不織布と同様のものを不織布試料C1〜C3として作製した。
(比較例4)
表4に示す目付、見掛け厚み、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)とした以外は、実施例1と同様にして作製した原料不織布を不織布試料C4とした。
(比較例5)
エアスルー製造方法によって凹凸のないフラットな不織布試料C5を作製した。なお、目付、見掛け厚みは表4に示すとおりとした。この不織布試料には凸部、壁部、凹部が存在しないため、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)は、規定できなかった。
(比較例6)
国際公開第2016/098796号の段落[0100]〜[0103]に記載の方法を用いて中実の不織布試料C6を作製した。なお、目付、見掛け厚みは表4に示すとおりとした。凹部の底部はフィルム化しており、繊維本数の測定が不可能であった。
(比較例7)
実施例18で作製した原料不織布と同様のものを不織布試料C7として作製した。
(比較例8及び9)
実施例23及び25で作製した原料不織布と同様のものを不織布試料C8及びC9として作製した。
(参考例1〜5)
表4に示す目付、見掛け厚み、繊維密度及び繊維密度の比(M1/M2、M2/M3、M1/M3)とした以外は、実施例1〜5と同様にして不織布試料R1〜R5を作製した。
(試験方法)
[1]不織布試料の液残り量
生理用ナプキン(花王株式会社製、商品名ロリエエフ しあわせ素肌 22.5cm、2016年製)から表面シートを取り除き、各不織布試料を表面シートとして、第1面側を肌当接面側にして積層し、周囲を固定して、評価用の生理用ナプキン試料とした。
各生理用ナプキン試料の表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、該ナプキンに100Paの一定荷重を掛けた。斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から経血に相当する擬似血液(株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)6.0gを流し込んだ。なお、用いた擬似血液は、東機産業株式会社製のTVB10形粘度計にて、30rpmの条件下で調整した。馬脱繊維血液は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を、8.0cPになるように調整した。合計6.0gの擬似血液を流し込んでから60秒後にアクリル板を取り除く。次いで、不織布試料の質量(W2)を測定し、予め測定しておいた、擬似血液を流し込む前の不織布試料の質量(W1)との差(W2−W1)を算出した。以上の操作を3回行い、3回の平均値を液残り量(mg)とした。液残り量は、装着者の肌がどの程度濡れるかの指標となるものであり、液残り量が少ないほど程、液残り低減効果が高い。
[2]不織布試料の液残り低減率
液残り低減率は下記数式(2)によって算出した。なお、それぞれの液残り量は、上記記載の試験方法にて測定を行った。
[3]クッション性
前述の(圧縮変形量の測定方法)に基づいて各試料のクッション性を示す圧縮変形量を測定した。
上記実施例及び比較例についての試験結果は、下記表1〜6に示すとおりであった。
上記の各表に示すとおり、各実施例の不織布試料は、50Pa荷重下の見掛け厚みが3mm以上と嵩高くしていながら、液膜開裂剤の作用により、各比較例に対して液残り量を大幅に低減していた。また、各実施例の不織布試料は、比較例4〜6に比して圧縮変形量が大きく、優れたクッション性を有するものであり、同時に、液膜開裂剤の作用により液残り量を大幅に低減していた。すなわち、本発明の具体例である各実施例は、クッション性の向上と液残り量の低減との両立を実現していた。
さらに、実施例の中では、液膜開裂剤の拡張係数が5.4mN/m以下である実施例1、8、13、18に対し、液膜開裂剤の拡張係数が5.4mN/m超の実施例2、3、9、10、14、15、19、20は液残り量がさらに低減し、液残り低減率が向上していた。また、液膜開裂剤の拡張係数が16.3mN/m以上である実施例4、5、11、12、16、17、21、22に対し、拡張係数が16.3mN/m未満である実施例2、3、9、10、14、15、19、20は、液膜開裂速度が見掛け厚み3mm以上の不織布における排液速度を下回り、排液中に開裂が起こりにくく、液が分断されにくいため、液残り量がさらに低減し、液残り低減率が向上していた。このことは、実施例23と実施例24との対比、実施例25と実施例26との対比においても同様の結果が示された。また、実施例1〜6と実施例6及び7との対比から、凸部に液膜開裂剤が含有されていることによる液残り低減効果が高かった。
1 (第1面側の)外面繊維層
11 縦畝部
12 横畝部
2 (第2面側の)外面繊維層
3 連結部
4 空間部
5 中空部
6 凸部
61 凸部の頂部
7 壁部
8 凹部
81 凹部の底部
31 (第2面側の)凸条部
35 (第2面側の)へこみ部
36 (第2面側の)凹条部
10、20、30 不織布

Claims (8)

  1. 凹部と中空の凸部とを有し、
    50Pa荷重下の見掛け厚みが3mm以上であり、
    表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/超で、水溶解度が0.025g以下である化合物を有する吸収性物品用不織布。
  2. 前記化合物の、表面張力50mN/mの液体に対する拡張係数が5.4超16.3未満である、請求項1記載の吸収性物品用不織布。
  3. 前記吸収性物品用不織布は前記凸部と前記凹部を繋ぐ壁部を有し、前記凸部の頂部の繊維密度が前記壁部の繊維密度よりも高い、請求項1又は2記載の吸収性物品用不織布。
  4. 前記壁部の繊維密度が前記凹部の底部の繊維密度よりも高い、請求項3記載の吸収性物品用不織布。
  5. 前記凸部の頂部の繊維密度が前記凹部の底部の繊維密度よりも高い、請求項1〜4のいずれか1項に吸収性物品用不織布。
  6. 前記吸収性物品用不織布は前記凸部と前記凹部を繋ぐ壁部を有し、
    前記凸部の頂部及び前記凹部の底部では繊維が前記吸収性物品用不織布の平面方向に配向しており、前記壁部では繊維が前記吸収性物品用不織布の厚み方向に配向しており、前記凸部及び前記凹部のそれぞれが、前記壁部と相互に一部繊維が融着している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
  7. 前記凸部が前記化合物を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性物品用不織布と、該吸収性物品用不織布の非肌当接面側に配された吸収体とを備え、前記凸部側を肌当接面側に向けて配した吸収性物品。
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