JP6996875B2 - 不織布 - Google Patents

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本発明は不織布に関する。
吸収性物品の表面シート等に用いられる不織布については、液透過性等の改善が試みられている。例えば、特許文献1には、2層の繊維集合体(不織布)を積層して部分的に接合した吸収性物品用の表面シートに係る技術が記載されている。該表面シートにおいては、液の素早い引き込み性等の観点から、前記2層のうち吸収体側の層の繊維密度が肌側の層の繊維密度よりも高くされている。これは、吸収体側の層が熱処理により潜在捲縮性繊維の収縮性を発現させて形成され、2層間の繊維間距離に差が生じたことによる。
特許文献2記載の不織布は、特許文献1の表面シートにおける吸収体側の層に相当する第1層を、螺旋状捲縮繊維と非螺旋状繊維とを含む構成としている。該不織布において、非螺旋状繊維の繊維径は、螺旋状繊維の繊維径よりも大きくされている。繊維径の大きい非螺旋状繊維の存在によって、螺旋状繊維の螺旋の巻き方が緩やかとなる。これにより、螺旋間における、排泄液が滞留しやすい微小な空間が形成され難くなり、不織布の液残りを抑制できるとされる。
特許文献3には、不織布の繊維間空間に生じる液膜を開裂して、該不織布の液残り低減を実現し得る液膜開裂剤が記載されている。
特開2003-250836号公報 特開2015-110846号公報 特開2016-117981号公報
これまで不織布における液残り量及び液戻り量の抑制、液吸上げ力の強化がなされてきた。しかし、特に不織布が、繊維層間の繊維密度の勾配によって毛管力を有する場合、高い液吸上げ力を維持したまま、繊維が極端に凝集した部位における、液の極微量の滞留の問題を十分に解消することは難しく、改善の余地があった。
不織布において、繊維密度の勾配によって高い毛管力を厚み方向に有することは、高い液の吸上げ力を意味し、不織布表面への液戻りの抑制力の向上に繋がる。しかし、毛管力の高い部分すなわち繊維密度の高い部分では、液残りが僅かながら生じやすくなってしまう。一方、液残りの更なる抑制のために微小空間の形成を抑制し過ぎると、毛管力の保持が難しくしなり、液の吸上げ力が低下しかねない。また、液の吸上げ力の向上のために、液の取り込み口に当たる不織布表面の濡れ性を高めると、逆に液戻りを誘発しかねない。
このように、不織布において、従来にも増して液残り抑制力、液戻り抑制力及び液吸上げ力の全てを同時に優れたものすることは難しく、更なる改善が望まれている。
本発明は、上記の問題点に鑑み、液の吸上げ力を高く保持しながら、不織布内の液残り残存量及び不織布表面へ液戻り量をより低くし、抑制することができる不織布に関する。
本発明は、複数の繊維層が、積層されて複数の接合部によって部分的に一体化された不織布であって、前記不織布の表裏面のうち、一方の面側の繊維層が螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含んでおり、他方の面側の繊維層が、前記接合部で囲まれた領域に、凸部を備え、該凸部に液膜開裂剤を含有する、不織布を提供する。
また本発明は、複数の繊維層が、積層されて複数の接合部によって部分的に一体化された不織布であって、前記不織布の表裏の面のうち、一方の面側の繊維層が螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含んでおり、他方の面側の繊維層が、前記接合部で囲まれた領域に、凸部を備え、該凸部に、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が15mN/m以上で、水溶解度が0g以上0.025g以下である化合物(C1)を含有する、不織布を提供する。
さらに本発明は、複数の繊維層が、積層されて複数の接合部によって部分的に一体化された不織布であって、前記不織布の表裏の面のうち、一方の面側の繊維層が螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含んでおり、他方の面側の繊維層が、前記接合部で囲まれた領域に、凸部を備え、該凸部に、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/mよりも大きく、水溶解度が0g以上0.025g以下であり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下である化合物(C2)を含有する、不織布を提供する。
本発明の不織布は、液の吸上げ力を高く保持しながら、不織布内の液残り残存量及び不織布表面へ液戻り量をより低くし、抑制することができる。
本発明の好ましい実施形態(第1実施形態)の不織布を模式的に示す一部断面斜視図である。 図1に示す不織布における凸部及び接合部を通る厚み方向の断面の一部を模式的に示す断面図である。 本発明の好ましい実施形態の不織布の他の態様を模式的に示す一部断面斜視図である。
以下、本発明の不織布について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。
図1及び2は、好ましい実施形態の不織布10を示している。不織布10は、複数の繊維層が積層された積層体からなり、より具体的には、一方の面(第1面)A側の繊維層(第1繊維層)1と反対面(第2面)B側の繊維層(第2繊維層)2とを有する。第1面Aと第2面Bとは、不織布10の表裏の面を意味する。不織布10は、2層の積層体として示したが、これに限らず、第1繊維層1と第2繊維層2との間に1又は2以上の繊維層が介在していてもよい。
不織布10において、第1繊維層1と第2繊維層2とは積層されて、複数の接合部3によって部分的に一体化されている。なお、この一体化は、積層体の第1面A側から第2面B側までを厚み方向に接合して、不織布10としての纏りを保持することを意味する。第1繊維層1と第2繊維層2との間に他の繊維層が介在する場合は、第1繊維層1、他の繊維層及び第2繊維層2の全てが不織布としての纏まりを形成するように接合部3が配される。
第1繊維層1が配される第1面Aは、液を第2面2側から吸い上げて外部へと排出する排液面である。不織布10が肌に触れる表面シートとして吸収性物品に組み込まれた場合、第1面Aは、非肌当接面であり、液を保持する吸収体側に向けられる面となる。
第2繊維層2が配される第2面Bは、液を受け止めて取り込む受液面である。不織布10が肌に触れる表面シートとして吸収性物品に組み込まれた場合、第2面Bは肌当接面となる。
第1繊維層1は、螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含む。螺旋状とは、繊維長に対して交差する方向に回旋する軌道を描く繊維部分を少なくとも1つ有する状態を意味する。この軌道には、旋回の程度が様々なものを含み、繊維長に対して交差する方向について1周しないものであってもよい。このような螺旋状捲縮繊維は、潜在捲縮性繊維が熱処理によって螺旋状に捲縮した繊維を言う。潜在捲縮性繊維とは、加熱される前は、従来の不織布用の繊維と同様に取り扱うことができ、かつ、所定温度での加熱によって螺旋状の捲縮が発現して収縮する性質を有する繊維である。熱処理して得られた螺旋状捲縮繊維は、潜在捲縮性繊維の捲縮性が完全に発現したものに限らず、捲縮性が発現しつつある程度の捲縮性が発現せずに残ったものであってもよい。非螺旋状繊維は、実質的に螺旋状に捲縮する性質を有さないか、螺旋状捲縮繊維よりも捲縮する温度が高い繊維である。なお、第1繊維層1には、上記した繊維以外にも他の種類の繊維を含んでもよい。
第2繊維層2は、繊維集合体から構成されており、第2繊維層1との接合部3以外の部分が第2面B側に突出する凸部8を有する。本実施形態においては、凸部8は外形がドーム状にされていて内部が繊維で満たされている。また、第2繊維層2と第1繊維層1との界面は、接合部3以外では、接合されずに全域に亘って密着した状態にされている。
第2繊維層2は、第1繊維層1を構成する繊維とは異なる種類及び/又は配合の繊維から構成されている。凸部8を備える観点から、螺旋状捲縮繊維を含まないか又は第1繊維層1よりも螺旋状捲縮繊の含有割合が小さい繊維層であることが好ましく、非螺旋状繊維である熱融着性繊維100%からなることがより好ましい。
接合部3は、不織布10の平面方向について、複数が互いに離間して規則的に配置されている。また、接合部3は、不織布10の厚み方向について、積層された互いの繊維層の繊維が圧密化された部分であり、第2面B側から第1面A側へと窪んだ凹部4の底部に形成されている。本実施形態においては、接合部3に対応する第1面A側には、更に第1面A側から第2面B側へと窪んだ凹部5が配されている。すなわち、接合部3の位置においては、不織布10の表裏の各面に凹部4と凹部5とが対向配置されている。
接合部3は、より具体的には、エンボス処理により第2繊維層2から第1繊維層1までを圧搾してなる圧着接合部である。また、接合部3は接着剤を用いて形成してもよい。エンボス処理によってなる接合部3においては、繊維同士が融着して、積層された複数の繊維層が一体化されており、繊維密度が不織布10の他の部分よりも高くされている。
本実施形態において、接合部3の平面形状は円形にされている。ただし、接合部3の平面形状はこれに限定されず、種々の形状をとり得る。例えば、楕円形、三角形、矩形、菱形、ハート形又はこれらの組み合わせであってもよい。本実施形態においては、接合部3の平面方向の配置は千鳥状のパターンとされており、4つ接合部3が1つの凸部8を囲むようにして構成されている。ただし、接合部3の配置パターンや凸部8を囲む接合部3の数はこれに限定されない。
本実施形態の不織布10は、第2面B側において、凸部8と凹部4とが平面方向に交互に配列された凹凸面を備える。凹凸面により、不織布10の第2面B側は肌との接触面積が低減され、べたつき感やムレ感が抑制されてドライ感に優れたものとなる。また、凸部8が繊維で満たされたドーム状であることによって、肌に触れたときのクッション性が高い。
不織布10は、凸部8の配置された部分において、第1繊維層1の繊維密度が第2繊維層1よりも高められている。すなわち不織布10は、接合部3を除いた部分において、第2繊維層2の凸部8の頂部8Tから第1繊維層1に向かって繊維密度の勾配を有する。ここでいう勾配とは、特に断らない限り、不織布10の厚み方向において、第2面(受液面)B側よりも、その反対面である第1面(排液面)A側の繊維密度が高い状態を意味する。この「勾配」は、第2面B側から第1面A側に向かって繊維密度が高くなっていく様々な態様を広く含むものであり、漸次高くなる態様でもよく、段階的に高くなる態様でもよい。
凸部8は、本実施形態のように全て同じ形状である場合にかぎらず、複数の異なる形状のものからなってもよい。また、凸部8と凹部4との配列は、本実施形態のものに限らず、適宜設定できる。
例えば、図3に示す具体例などが挙げられる。図3に示す凸部8は、高凸部81と低凸部82とからなる。高凸部81は低凸部82よりも底面の面積が広く、突出高さが高くされている。このような複数種類の凸部8を組み合わせることで、肌のべたつきやムレ感をさらに低減できる。このような高凸部81と低凸部82との配置パターンは、種々のものを特に制限することなく採用できる。例えば特開2015-186543号公報の図4、10~13に示されるものなどが挙げられる。
本実施形態において、不織布10は、凸部8に液膜開裂剤を含有している。
液膜開裂剤とは、下記(液膜を消失させる性質)を有する剤である。具体的には、液、例えば、経血等の高粘性の液や尿などの排泄液(体液)が不織布に触れて不織布の繊維間ないしは繊維表面に形成される液膜を開裂させたりして、液膜の形成を阻害する剤のことをいい、形成された液膜を開裂させる作用と、液膜の形成を阻害する作用とを有する。前者は主たる作用、後者は従たる作用ということができる。例えば、液膜開裂剤は、国際公開第2016/098796号の明細書の段落[0024]、[0025]、図1及び2に記載したような作用をする。このように液膜開裂剤は、液膜の表面張力を下げるなどの液改質をするのではなく、繊維間や繊維表面に生じる液膜自体を押しのけながら開裂し、阻害することで不織布中からの液の排液を促す。
液膜開裂剤の上記作用により、不織布に触れた液(体液)が、繊維間の極微小な空間等に留まることなく通過しやすくなり、不織布における液残り低減をより高いレベルで実現し得る。
(液膜を消失させる性質)
本発明で用いられる液膜開裂剤は、液膜を消失させる性質を有しており、斯かる性質により、該液膜開裂剤を、血漿成分を主体とする試験液又は人工尿に適用した場合に、液膜消失効果を発現し得る。人工尿は、尿素1.940質量%、塩化ナトリウム0.795質量%、硫酸マグネシウム0.110質量%、塩化カルシウム0.062質量%、硫酸カリウム0.197質量%、赤色2号(染料)0.010質量%、水(約96.88質量%)及びポリオキシエチレンラウリルエーテル(約0.07質量%)の組成を有する混合物を、表面張力を53±1mN/m(23℃)に調整したものである。ここでいう液膜消失効果には、試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体について、該構造体の液膜形成を阻害する効果と、形成された該構造体を消失させる効果との双方が含まれ、少なくとも一方の効果を発現する剤は、液膜消失効果を発現し得る性質を有していると言える。
前記試験液は、脱繊維馬血(株式会社日本バイオテスト製)から抽出された液体成分である。具体的には、100mLの脱繊維馬血を温度22℃、湿度65%の条件下で1時間静置すると、該脱繊維馬血は上層と下層とに分離するところ、この上層が前記試験液である。上層は主に血漿成分を含み、下層は主に血球成分を含む。上層と下層とに分離した脱繊維馬血から上層のみを取り出すには、例えばトランスファーピペット(日本マイクロ株式会社製)を用いることができる。
ある剤が前記の「液膜を消失させる性質」を有するか否かは、当該剤が適用された前記試験液又は人工尿から形成される液膜によって空気が抱えこまれた構造体が発生しやすい状態にした場合の、該構造体即ち液膜の量の多少で判断される。すなわち、前記試験液又は人工尿を、温度25℃に調整し、その後、スクリュー管(株式会社マルエム製 No.5 胴径27mm、全長55mm)に10g入れて、標準サンプルを得る。また、測定サンプルとして、標準サンプルと同じものに、25℃に予め調整した測定対象の剤を0.01g添加したものを得る。標準サンプルと測定サンプルをそれぞれ前記スクリュー管の上下方向に2往復強く振とうした後、水平面上に速やかに載置する。このサンプルの振とうにより、振とう後のスクリュー管の内部には、前記構造体の無い液体層(下層)と、該液体層の上に形成された多数の該構造体からなる構造体層(上層)とが形成される。振とう直後から10秒経過後に、両サンプルの構造体層の高さ(液体層の液面から構造体層上面までの高さ)を測定する。そして、標準サンプルの構造体層の高さに対して、測定サンプルの構造体層の高さが90%以下となった場合、測定対象の剤は液膜開裂効果を有しているとする。
本発明で用いられる液膜開裂剤は、前記の性質に当てはまる単一の化合物若しくは前記の性質に当てはまる単一の化合物を複数組み合わせた混合物、又は複数の化合物の組み合わせによって前記の性質を満たす(液膜の開裂を発現し得る)剤である。つまり液膜開裂剤とは、あくまで前記定義によるところの液膜開裂効果があるものに限定した剤のことである。したがって、不織布中、繊維処理剤中に適用されている化合物に、前記定義に当てはまらない第三成分を含む場合には、液膜開裂剤と区別する。
なお、液膜開裂剤及び第三成分について、「単一の化合物」とは、同じ組成式を有するが、繰り返し単位数が異なることにより、分子量が異なる化合物を含める概念である。
液膜開裂剤としては、国際公開第2016/098796号の明細書の段落[0007]~[0186]に記載のものから適宜に選んで用いることができる。
液膜開裂剤は、不織布10の第2繊維層2の凸部8全体の繊維に含有されていてもよく、一部の繊維に含有されていてもよい。液膜開裂剤は、少なくとも凸部8の頂部8Tの表面の繊維に含有されることが好ましく、少なくとも凸部8の第2面B側の表面の繊維に含有されることがより好ましい。また、不織布10の第2面B側の平面領域については、液膜開裂剤は、特に液を最も多く受け止める領域の凸部8に含有されることが好ましい。例えば、不織布10を生理用ナプキン等の吸収性物品の表面シートとする場合、経血等の排泄液を直接受け止める、着用者の排泄部に対応した領域である。この場合、液膜開裂剤は、更に接合部3の第2面B側にあってもよい。
不織布が液膜開裂剤を含有する又は含むとは、主に繊維の表面に付着させることをいう。ただし、液膜開裂剤は、繊維の表面に残存する限り、繊維内に内包しているようなものや、内添により繊維内部に存在しているようなものがあってもよい。液膜開裂剤を繊維の表面に付着させる方法としては、通常用いられる各種の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、噴霧、刷毛塗布等が挙げられる。これらの処理は、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよいし、その後、該ウエブを不織布にした後や吸収性物品に組み込んだ後に行ってもよい。液膜開裂剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、繊維樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。また、前記付着方法を用いて繊維へ付着させる場合、必要により液膜開裂剤を溶媒に溶解させた液膜開裂剤を含む溶液、ないしは液膜開裂剤の乳化液、分散液を用いて行われる。
液膜開裂剤は、不織布において後述する液膜開裂効果を有するためには、液膜開裂剤が体液に触れた際に液状として存在する必要がある。この点から、液膜開裂剤の融点は40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。さらに、本発明に係る液膜開裂剤の融点は-220℃以上が好ましく、-180℃以上がより好ましい。
不織布10において、前記液膜開裂剤が、狭い繊維間空間に生じる微細で安定的な液膜を開裂して不安定化させる駆動力として作用する。同時に、第1面(排泄面)A側の第1繊維層1の螺旋状捲縮繊維の存在が、液膜を開裂して不安定化された液を、繊維表面で再び安定化する前に、第2繊維層2から第1繊維層1へと一方向に引き抜く駆動力(吸上げ力)として作用する。また、たとえ圧力等で僅かに液戻りがあっても、液膜開裂剤が安定的な液膜形成を阻止して、繊維密度の高い方へと引き戻す。
このように、第2繊維層2の液膜開裂剤と第1繊維層1の螺旋状捲縮繊維とのによる2つの駆動力が協働して、繊維間での液の安定化を阻止し、不織布内での液の厚み方向の液透過性を高めて、液残り及び液戻りを抑制する。これにより、新たな受液にも素早く対応できる液透過性を備える。またこのことが、高いレベルでのドライ性を維持しながら、細い繊維を用いた肌触りの柔らかい不織布の形成を可能にする。
この液膜開裂剤の具体例等については後述する。
不織布10は、第1繊維層1において、螺旋状捲縮繊維の存在によって繊維密度が第2繊維層2よりも高められている。同時に、非螺旋状繊維の存在によって螺旋状捲縮繊維の螺旋の程度が好適に制御されている。そのため、第1繊維層1において、繊維の極端に凝集部分の形成が抑えられ、繊維密度の均一化がなされている。第1繊維層1において「繊維の極端に凝集した部分」とは、螺旋状捲縮繊維が局部的に極端に凝集した部分である。この繊維の極端に凝集した部分は、最も高い毛管力を有するものの、液を透過し得るほどの繊維間空間を有さない部分であり、該空間では液膜すら形成し得ない部分である。例えば繊維空間が50μm以下となる程に繊維が凝集した部分である。
不織布10は、第1繊維層1において螺旋状捲縮繊維と非螺旋状繊維とを混合して有することにより、繊維の極端に凝集した部分の形成が抑制され、繊維密度が均一化されている。
さらに、不織布10は、液残り抑制力が液膜開裂剤によって担保される。そのため、第1繊維層1では、繊維密度に関して、液残り抑制に過度に配慮する必要がない。このことから第1繊維層においては、毛管力に必要な高い繊維密度を保持しながら、繊維の極端に凝集した部分の形成を抑制して繊維密度の均一化を実現できる。すなわち、高い毛管力を担保する繊維密度を第1繊維層1全体に均一に付与できる。これにより、第2面(受液面)B側から第1面(排液面)A側への高い液吸上げ力(引き込み力)が、不織布10の平面方向において繊維密度が均一化される。
このような第1繊維層1の繊維密度は、後述する方法により測定される見掛け密度として示される。第1繊維層1の見掛け密度(D1)は、不織布10における好適な液吸上げ力(毛管力)を確保する観点から、0.02g/cm以上が好ましく、0.03g/cm以上がより好ましく、0.04g/cm以上が更に好ましい。また、第1繊維層1の見掛け密度(D1)は、液残り量の抑制の観点から、0.2g/cm以下が好ましく、0.15g/cm以下がより好ましく、0.1g/cm以下が更に好ましい。また、第1繊維層1の見掛け密度(D1)の第2繊維層2の見掛け密度(D2)に対する比(D1/D2)は、不織布10における好適な液透過性を確保する観点から、1.5以上が好ましく、2以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。また、前記比(D1/D2)は、液残り量の抑制の観点から、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下が更に好ましい。
(第1繊維層1及び第2繊維層2の見掛け密度の測定方法)
まず、不織布から、縦横の長さが30mm×30mmの試験片を切り出す。次に、第1繊維層1の繊維密度については、第1繊維層1の構成繊維の繊維配向方向(第1繊維層用の繊維集合体製造時の機械流れ方向)〕に略平行で且つ接合部3を通る線で切断面を作る。この断面について、ハイスコープ(株式会社キーエンス製、VH-8000)等にて、この断面の拡大写真を得る。次に、拡大写真のスケールを合わせて、第1繊維層1の最大厚みを求め、第1層の厚みt1(mm)を測定する。次に、収縮前(第1繊維層1と第2繊維層2の接合前)に予め測定した第1繊維層1の面積(a1×b1)と第1繊維層1を第2繊維層2に接合させ収縮させた後に測定した第1繊維層1の面積(a2×b2)とから、式〔収縮面積率A=((a1×b1-a2×b2)÷(a1×b1))×100〕によりサンプルの収縮面積率A(%)を求め、更に、求めた収縮面積率A(%)と、収縮前(第1繊維層と第2繊維層の接合前)に予め測定した第1層の坪量P1(g/m)とから、式〔第1層の坪量P2=P1×100/(100-A)〕により第1層の坪量P2(g/m)を求める。
そして、第1繊維層1の見掛け密度D1(g/cm)を、式〔D1=P2×(1/1000)×(1/t1)〕により求める。
第2繊維層2の見掛け密度については、前記第1繊維層1の見掛け密度の測定と同様にして求めることができる。この際、第2繊維層2の厚みt2は、上述した厚みの測定におけるのと同様にして測定し、この値を用いて見掛け密度D2を算出する。
不織布の繊維密度の均一の程度、即ち、繊維分布の均一性は、下記の方法によって測定される地合い指数により示される。地合い指数は、数値が小さいほど地合いが良い、すなわち均一性が高いことを示す。不織布の地合い指数は、繊維分布の均一性の観点から、100未満が好ましく、95以下がより好ましく、90以下が更に好ましい。また、不織布の地合い指数は、液透過性を担保する観点から、40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
(地合い指数の測定方法)
フォーメーションテスター「FMT-MIII」(商品名、野村商事株式会社製)を用いて、不織布の地合い指数を測定する。具体的には次のとおりに測定を行う。
すなわち、測定対象の不織布からサンプルを採取する。前記フォーメーションテスターにおいて、該サンプルを、第1繊維層1面側を下に向けて試料台(拡散板)の上に載置し、下から照明ランプの光を照射する。照射中に、CCDカメラによってサンプルの透過像を撮像(撮像範囲3cm×3cm)する。撮像画像を200×200=40000個の画素に分解し、各画素における吸光度(各画素の受ける光の強さ)を測定する。吸光度は、下記の数式(K1)及び(K2)に基づき算出する。
透過率T=(G-G)/G100-G)×100 ・・・(K1)
吸光度E=2-logT ・・・(K2)
100:入射光量
:透過光量
:消灯時(サンプル有)の透過光量
:消灯時(サンプル無)の透過光量
地合い指数は、500μm角の吸光度の標準偏差(σ)を平均吸光度(Eave.)で除した値(下記数式(K3)及び(K4)に基づき算出。)を10倍して算出される。最小吸光度から最大吸光度までを平均吸光度で規格化して坪量計算されたものである。
σ=[1/N×ΣΣ(Eij-Eave.1/2 ・・・(K3)
地合い指数:変動指数=σ/Eave. ・・・(K4)
:画素数
ij:i行目j列目の画素の吸光度
ave.:平均吸光度
地合い指数は、500μm角ごとのミクロな坪量のばらつきを示しており、値が小さいほど繊維分布の均一性が高いことを示す。
第1繊維層1において、非螺旋状繊維の平均繊維径は、螺旋状捲縮繊維の平均繊維径と同じか、又は螺旋状捲縮繊維の平均繊維径よりも小さいことが好ましい。これにより、不織布10における十分な液の吸上げ力(引き込み力)に必要な高い繊維密度を保持しながら、繊維の凝集部分の形成を抑制して繊維密度の均一化をより明確に実現できる。このような平均繊維径の組み合わせは、不織布10に必要な液残り抑制力を液膜開裂剤によって担保することによって初めて実現が可能となる。
非螺旋状繊維の平均繊維径(N1)の螺旋状捲縮繊維の平均繊維径(N2)に対する比(N1/N2)は、不織布10における十分な液の吸上げ力(引き込み力)を形成する観点から、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.1以下が更に好ましい。また、前記比(N1/N2)は、繊維の極端な凝集の形成を効果的に抑制する観点から、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましい。
非螺旋状繊維の平均繊維径(N1)は、繊維の極端な凝集の形成を効果的に抑制する観点から、10μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。また、非螺旋状繊維の平均繊維径(N1)は、不織布10における十分な液の吸上げ力(引き込み力)を形成する観点から、22μm未満が好ましく、20μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましい。
螺旋状捲縮繊維の平均繊維径(N2)は、液透過性の観点から、10μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。また、非螺旋状繊維の平均繊維径(N1)は、液引き込み性の観点から、24μm以下が好ましく、22μm以下がより好ましく、20μm以下が更に好ましい。
(非螺旋状繊維の平均繊維径及び螺旋状捲縮繊維の平均繊維径の測定方法)
採取した不織布を液体窒素で凍結して、カミソリで不織布を切断し、その断面を卓上走査電子顕微鏡、日本電子株式会社、JCM-5100にて観察し、その像を用いて繊維を10本測定し、その平均値で繊維径とする。
なお、螺旋状捲縮繊維の平均繊維径は、螺旋状になっていない部分において測定される。
非螺旋状繊維の第1繊維層1における含有割合は、織布10における十分な液の吸上げ力(引き込み力)を形成する観点から、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、非螺旋状繊維の第1繊維層1における含有割合は、繊維の極端な凝集の形成を効果的に抑制する観点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。
以上のように、本実施形態の不織布10は、第1面(排液面)A側の第1繊維層1において極端に凝集した部分(例えば繊維空間が50μm以下となる程に繊維が凝集した部分)を低減して繊維密度を均一化し、高い液吸上げ力(液引き込み力)を備える。このような不織布10においては、極端に凝集した部分の低減により液膜開裂剤の液膜開裂作用が最大化される。
さらに不織布10は、第2面(受液面)B側の第2繊維層2において、液膜開裂剤が液膜を開裂することで、液残りを抑制し、かつ、排液面A側までの液透過通路を開通する。液膜の開裂により、従来難しかった、極微量の液残留の解消を効果的に実現できる。これにより、不織布10内部の液滞留が極めて高いレベルで抑制され、排液面A側の繊維密度の高い第1繊維層1まで迅速に透過されやすくされている。また、液膜開裂剤の作用による液透過通路の開通は、第1繊維層1の毛管力を受液面B側の第2繊維層2にまで効果的に伝達することができる。
なお、液膜開裂剤は、後述するように表面張力が従来の親水化処理剤に比べて低く、比較的疎水的であるため、液が最初に内部に滲出する力を若干弱める方向に作用しやすい。しかし、第1面(排液面)A側の第1繊維層1では、極端に繊維が凝集された部分が解消されて毛管力の均一化がなされているため、受液面B側から排液面A側への液の吸上げ力が均一化され強化されている。この第1繊維層1にける均一化された吸上げ力が、第1繊維層1における液膜開裂剤による繊維の疎水化傾向を補って、力強く液を引き込むことができる。
このように、本実施形態の不織布10は、液残り量の低減力、液戻り量の低減力及び吸上げ性能の全てにおいて優れたものとなる。
不織布10の積層構造及び凹凸形状は、種々の方法によって形成することができ、例えば次のような方法によって製造することができる。
まず、第1繊維層1となる熱収縮する前の潜在捲縮性繊維を含む第1原料繊維層11と、第2繊維層2となる第2原料繊維層21とを積層し、機械流れ方向に沿って搬送する。第2原料繊維層21は、潜在捲縮性繊維を含まないか又は第1原料繊維層11よりも含有割合が小さくされている。
次いで、エンボス処理により第2原料繊維層21の側から第1原料繊維層11に向けて圧搾して前述した接合部3を複数、互いに離間させて、規則的な間欠パターンで形成する。これにより、第1原料繊維層11と第2原料繊維層21とを所定の規則的な間欠パターンで部分的に貼り合わせる。
前記貼り合わせと同時又は貼り合わせた後に熱処理を行う。これにより、潜在捲縮性繊維が螺旋状に捲縮し、これに伴って第1原料繊維層11が接合部3,3で平面方向に熱収縮する。このとき、第1原料繊維層11と第2原料繊維層21とが接合部3によって間欠的に接合されて一体化されているために、第1原料繊維層11が収縮すると、第2原料繊維層21がつられて縮もうとする。しかし、第2原料繊維層21は、第1原料繊維層11よりも繊維の熱収縮力が弱いため、繊維を固定した接合部3、3間で、第1原料繊維層11とは反対側の面に凸状に隆起する変形を起こす。これにより、第2原料繊維層21側に外形がドーム状の凸部8が形成される。
上記のエンボス処理による接合部3の形成は、例えば、所定形状を有するエンボスピンが所定のパターンで配設されたエンボス面を有するエンボスロールを用いてなされる。前記エンボス面を第1原料繊維層11と第2原料繊維層21の積層体における第2原料繊維層21側に圧接させ、第1原料繊維層11及び/又は第2原料繊維層21の構成繊維を溶融させて行われる。
加工前の第1原料繊維層11及び第2原料繊維層21は、通常の不織布に用いられる材料を特に制限なく用いて形成することができる。例えば、特開2015-186543号公報の明細書の段落[0015]、[0016]、[0018]、[0021]及び[0022]に記載のものが挙げられる。
不織布10において、坪量は使用目的に応じて適宜設定することができる。例えば、吸収性物品用の表面シートとして用いる場合、前記坪量は、20g/m以上が好ましく、50g/m以上がより好ましい。また、前記坪量は、200g/m以下が好ましく、100g/m以下がより好ましい。
次に、本発明に係る液膜開裂剤の好ましい実施形態について詳述する。
第1実施形態の液膜開裂剤は、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が16mN/m以上であり、水溶解度が0g以上0.025g以下である。なお、この性質を有する化合物を化合物C1と言うことがある。
液膜開裂剤が有する「表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数」とは、上記のような経血や尿等の排泄液を想定した液体に対する拡張係数をいう。該「拡張係数」とは、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で後述の測定方法により得られる測定値から、下記数式(1)に基づいて求められる値である。なお、数式(1)における液膜は「表面張力が50mN/mの液体」の液相を意味し、繊維間や繊維表面で膜を張った状態の液体、膜を張る前の状態の液体の両方を含み、単に液体とも言う。また、数式(1)の表面張力は、液膜及び液膜開裂剤の気相との界面における界面張力を意味し、液相間の、液膜開裂剤の液膜との界面張力とは区別する。この区別は、本明細書の他の記載においても同様である。
S=γ-γ-γwo ・・・・・ (1)
γ:液膜(液体)の表面張力
γ:液膜開裂剤の表面張力
γwo:液膜開裂剤の液膜との界面張力
数式(1)から分かるとおり、液膜開裂剤の拡張係数(S)は、液膜開裂剤の表面張力(γ)が小さくなることで大きくなり、液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)が小さくなることで大きくなる。この拡張係数が16mN/m以上であることで、液膜開裂剤は、繊維間の狭小領域で生じる液膜の表面上での移動性、すなわち拡散性の高いものとなる。この観点から、前記液膜開裂剤の拡張係数は、20mN/m以上がより好ましく、25mN/m以上が更に好ましく、30mN/m以上が特に好ましい。一方、その上限は特に制限されるものではないが、数式(1)より表面張力が50mN/mの液体を用いた場合は上限値が50mN/m、表面張力が60mN/mの液体を用いた場合は上限値が60mN/m、表面張力が70mN/mの液体を用いた場合には上限値が70mN/mといったように、液膜を形成する液体の表面張力が上限となる。そこで、本発明では、表面張力が50mN/mの液体を用いている観点から、50mN/m以下である。
液膜開裂剤が有する「水溶解度」とは、脱イオン水100gに対する液膜開裂剤の溶解可能質量であり、後述の測定方法に基づいて、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で測定される値である。この水溶解度が0g以上0.025g以下であることで、液膜開裂剤は、溶解しにくく液膜との界面を形成して、上記の拡散性をより効果的なものとする。同様の観点から、液膜開裂剤の水溶解度は、0.0025g以下が好ましく、0.0017g以下がより好ましく、0.0001g未満が更に好ましい。また、前記水溶解度は小さいほどよく、0g以上であり、液膜への拡散性の観点から、1.0×10-9g以上とすることが実際的である。なお、上記の水溶解性は、水分を主成分とする経血や尿等に対しても当てはまるものと考えられる。
上記の、液膜(表面張力が50mN/mの液体)の表面張力(γ)、液膜開裂剤の表面張力(γ)、液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)、及び液膜開裂剤の水溶解度は、次の方法により測定される。
なお、測定対象の積層不織布が生理用品や使い捨ておむつなどの吸収性物品に組み込まれた部材(例えば、表面シート)である場合は次のように取り出して測定を行う。すなわち、吸収性物品において、測定対象の部材と他の部材との接合に用いられる接着剤などをコールドスプレー等の冷却手段で弱めた後に、測定対象の部材を丁寧に剥がして取り出す。この取り出し方法は、前述の地合い指数及び平均繊維径の測定や、後述する繊維間距離及び繊度の測定など、本発明の積層不織布に係る測定において適用される。
また、繊維に付着した液膜開裂剤について測定する場合、まず液膜開裂剤が付着した繊維をヘキサンやメタノール、エタノールなどの洗浄液で洗浄し、その洗浄に用いた溶媒(液膜開裂剤を含む洗浄用溶媒)を乾燥させて取り出す。このときの取り出した物質の質量は、液膜開裂剤の不織布質量に対する含有割合(Oil Per Unit、以下OPUとも言う。)を算出するときに適用される。なお、不織布の一部分のみに液膜開裂剤が適用されている場合には、不織布質量に対する含有割合を算出する。
取り出した物質の量が表面張力や界面張力の測定には少ない場合、取り出した物質の構成物に合わせて適切なカラム及び溶媒を選択した上で、それぞれの成分を高速液体クロマトグラフィーで分画し、さらに各画分についてMS測定、NMR測定、元素分析等を行うことで、各画分の構造を同定する。また、液膜開裂剤が高分子化合物を含む場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの手法を併用することで、構成成分の同定を行うことがより容易になる。そして、その物質が市販品であれば調達、市販品でなければ合成することにより十分な量を取得し、表面張力や界面張力を測定する。特に、表面張力と界面張力の測定に関しては、上記のようにして取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
(液膜(液体)の表面張力(γ)の測定方法)
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、プレート法(Wilhelmy法)により、白金プレートを使用して測定することができる。その際の測定装置としては、自動表面張力計「CBVP-Z」(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いることができる。白金プレートは、純度99.9%、大きさが横25mm、縦10mmのものを用いる。
なお、液膜開裂剤に関する下記測定では、前述した「表面張力が50mN/mの液体」は、上記の測定方法を用いて、脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例えば、花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW-L120)を加えて、表面張力50±1mN/mに調整された溶液を用いる。
(液膜開裂剤の表面張力(γ)の測定方法)
液膜の表面張力(γ)の測定と同様に、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、プレート法により、同じ装置を使用して測定することができる。この測定に際し、前述のとおり、取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
(液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)の測定方法)
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、ペンダントドロップ法により測定できる。その際の測定装置としては、自動界面粘弾性測定装置(TECLIS-ITCONCEPT社製、商品名THE TRACKERや、KRUSS社、商品名DSA25S)を用いることができる。ペンダントドロップ法では、ドロップが形成されると同時に表面張力が50mN/mの液体に含まれたノニオン系界面活性物質の吸着が始まり、時間経過で界面張力が低下していく。そのため、ドロップが形成された時(0秒時)の界面張力を読み取る。また、この測定に際し、前述のとおり、取得した液膜開裂剤が固体である場合、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
また界面張力の測定時に、液膜開裂剤と表面張力が50mN/mの液体の密度差が非常に小さい場合や、粘度が著しく高い場合、界面張力値がペンダントドロップの測定限界以下の場合には、ペンダントドロップ法による界面張力測定が困難になる場合がある。その場合には、温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、スピニングドロップ法により測定することで、測定が可能となる。その際の測定装置としては、スピニングドロップ界面張力計(KURUSS社製、商品名SITE100)を用いることができる。また、この測定についても、ドロップの形状が安定化した時の界面張力を読み取り、取得した液膜開裂剤が固体である場合には、該液膜開裂剤の融点+5℃まで加熱して液体に相転移させ、その温度条件のまま測定を実施する。
尚、双方の測定装置で界面張力を測定可能な場合は、より小さな界面張力値を測定結果として採用する。
(液膜開裂剤の水溶解度の測定方法)
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境領域で、100gの脱イオン水をスターラーで撹拌しながら、取得した液膜開裂剤を徐々に溶解していき、溶けなくなった(浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた)時点での溶解量を水溶解度とする。具体的には、0.0001g毎に剤を添加して測定する。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とする。なお、液膜開裂剤が界面活性剤の場合、「溶解」とは単分散溶解とミセル分散溶解の両方を意味し、浮遊や沈殿、析出、白濁が見られた時点での溶解量が水溶解度となる。
本実施形態の液膜開裂剤は、上記の拡張係数と水溶解度とを有することで、液膜の表面上で、溶解することなく広がり、液膜の中心付近から液膜の層を押しのけることができる。これにより、液膜を不安定化させて開裂する。
本実施形態において、前記液膜開裂剤は、さらに、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下であることが好ましい。すなわち、前述した数式(1)における拡張係数(S)の値を定める1変数である「液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)」が20mN/m以下であることが好ましい。「液膜開裂剤の液膜との界面張力(γwo)」を低く抑えることで、液膜開裂剤の拡張係数が上がり、繊維表面から液膜中心付近へ液膜開裂剤が移行しやすくなり、前述の作用がより明確となる。この観点から、液膜開裂剤の「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」は、17mN/m以下がより好ましく、13mN/m以下が更に好ましく、10mN/m以下がより更に好ましく、9mN/m以下が特に好ましく、1mN/m以下がとりわけ好ましい。一方、その下限は特に制限されるものではなく、液膜への不溶性の観点から0mN/mより大きければよい。なお、界面張力が0mN/m、すなわち溶解する場合には、液膜と液膜開裂剤間での界面を形成することができないため、数式(1)は成り立たず、剤の拡張は起きない。
拡張係数はその数式からもわかるように、対象となる液の表面張力により、その数値が変化する。例えば、対象液の表面張力が72mN/m、液膜開裂剤の表面張力が21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は50.8mN/mとなる。
また、対象液の表面張力が30mN/m、液膜開裂剤の表面張力21mN/m、これらの界面張力が0.2mN/mの場合、拡張係数は8.8mN/mとなる。
いずれの場合においても、拡張係数が大きい剤ほど、液膜開裂効果は大きくなる。
本明細書では、表面張力50mN/mにおける数値を定義したが、表面張力が異なったとしても、その各物質同士の拡張係数の数値の大小関係に変化はないことから、体液の表面張力が仮に、日ごとの体調などで変化したとしても、拡張係数が大きい剤ほど優れた液膜開裂効果を示す。
また、本実施形態において、液膜開裂剤の表面張力は、32mN/m以下が好ましく、30mN/m以下がより好ましく、25mN/m以下が更に好ましく、22mN/m以下が特に好ましい。また、前記表面張力は小さいほどよく、その下限は特に限定されるものではない。液膜開裂剤の耐久性の観点から、1mN/m以上が実際的である。
液膜開裂剤の表面張力を上記のような範囲以下とすることで、液膜を張る対象液の表面張力が下がった場合でも、液膜開裂作用を効果的に発揮させることができる。
次に、第2実施形態の液膜開裂剤について説明する。
第2実施形態の液膜開裂剤は、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/mよりも大きい、すなわち正の値であり、水溶解度が0g以上0.025g以下であり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が20mN/m以下である。なお、この性質を有する化合物を化合物C2と言うことがある。
前記「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」を20mN/m以下とすることは、前述のように液膜開裂剤の液膜上での拡散性が高まることを意味する。これにより、前記「表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数」が16mN/m未満であるような拡張係数が比較的小さい場合でも、拡散性が高いため繊維表面から多くの液膜開裂剤が液膜内に分散し、多くの位置で液膜を押しのけることにより、第1実施形態の場合と同様の作用を奏し得る。
なお、液膜開裂剤に関する、「表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数」、「水溶解度」及び「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」とは、第1実施形態で定義したものと同様のものであり、その測定方法も同様である。
本実施形態において、液膜開裂剤の前記作用をより効果的なものとする観点から、前記「表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力」は、17mN/m以下が好ましく、13mN/m以下がより好ましく、10mN/m以下が更に好ましく、9mN/m以下がより更に好ましく、1mN/m以下が特に好ましい。下限値については、第1実施形態と同様に特に制限されるものでなく、液膜(表面張力が50mN/mの液体)に溶解しない観点から、0mN/mより大きくするのが実際的である。
また、「表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数」は、液膜開裂剤の前記作用をより効果的なものとする観点から、9mN/m以上が好ましく、10mN/m以上がより好ましく、16mN/m以上が更に好ましい。その上限は特に制限されるものではないが、数式(1)より液膜を形成する液体の表面張力が上限となる観点から、50mN/m以下が実質的である。
また、液膜開裂剤の表面張力及び水溶解度のより好ましい範囲は、第1実施形態と同様である。
第1実施形態の液膜開裂剤を含有する不織布及び第2実施形態の液膜開裂剤を含有する不織布は、さらにリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を含有することが好ましい。これにより、繊維表面の親水性が高まり、濡れ性が向上することによって、液膜と液膜開裂剤が接する面積が大きくなること、そして、血液や尿は生体由来のリン酸基を有する界面活性物質を有することから、リン酸基を有する界面活性剤を併用することで、活性剤の相溶性に起因して、さらに血液や尿に含まれるリン脂質との親和性もよいため、液膜開裂剤が液膜に移行しやすくなり、液膜の開裂がさらに促進される。液膜開裂剤とリン酸エステル型のアニオン界面活性剤との含有比率は、質量比で、前者/後者としたときに、1/1以上が好ましく、2/1以上がより好ましく、3/1以上がより一層好ましく、5/1以上が更に好ましく、8/1以上が更に一層好ましく、11/1以上が殊更好ましく、また、19/1以下が好ましく、15/1以下がより好ましく、13/1以下がより一層好ましく、10/1が更に好ましい。
リン酸エステル型のアニオン界面活性剤としては特に制限なく用いられる。例えば、その具体例としては、アルキルエーテルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、アルキルリン酸エステルなどが挙げられる。その中でも、アルキルリン酸エステルが液膜との親和性を高めると同時に積層不織布の加工性を付与する機能の観点から好ましい。
アルキルエーテルリン酸エステルとしては、特に制限なく種々のものを用いることができる。例えば、ポリオキシアルキレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンミリスチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミチルエーテルリン酸エステルなどの飽和の炭素鎖を持つものや、ポリオキシアルキレンオレイルエーテルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンパルミトレイルエーテルリン酸エステルなどの不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16~18のモノ又はジポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。また、ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン及びこれ等の構成モノマーが共重合されたものなどが挙げられる。なお、アルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類などが挙げられる。アルキルエーテルリン酸エステルは、一種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
アルキルリン酸エステルの具体例としては、ステアリルリン酸エステル、ミリスチルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル、パルミチルリン酸エステル等の飽和の炭素鎖を持つものや、オレイルリン酸エステル、パルミトレイルリン酸エステル等の不飽和の炭素鎖及び、これらの炭素鎖に側鎖を有するものが挙げられる。より好ましくは、炭素鎖が16~18のモノ又はジアルキルリン酸エステルの完全中和又は部分中和塩である。尚、アルキルリン酸エステルの塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属、アンモニア、各種アミン類等が挙げられる。アルキルリン酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
次に、第1実施形態及び第2実施形態における液膜開裂剤の具体例について説明する。これらは前述した特定の数値範囲にあることで水に溶けないか水難溶性の性質を有し、前記液膜開裂の作用をする。これに対し、従来の繊維処理剤として使用される界面活性剤などは実用上、水に対して溶解して使用する基本的には水溶性のものであり、本発明の液膜開裂剤ではない。
第1実施形態及び第2実施形態における液膜開裂剤としては、質量平均分子量が500以上の化合物が好ましい。この質量平均分子量は液膜開裂剤の粘度に大きく影響する。液膜開裂剤は、粘度を高く保つことで、液が繊維間を通過する際に流れ落ちににくく、不織布における液膜開裂効果の持続性を保つことができる。液膜開裂効果を十分に持続させる粘度とする観点から、液膜開裂剤の質量平均分子量は、1000以上がより好ましく、1500以上が更に好ましく、2000以上が特に好ましい。一方、液膜開裂剤が配された繊維から液膜への液膜開裂剤の移行、即ち拡散性を保持する粘度とする観点から、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。この質量平均分子量の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)「CCPD」(商品名、東ソー株式会社製)を用いて測定される。測定条件は下記のとおりである。また、換算分子量の計算はポリスチレンで行う。
分離カラム:GMHHR-H+GMHHR-H(カチオン)
溶離液:LファーミンDM20/CHCl3
溶媒流速:1.0ml/min
分離カラム温度:40℃
また、第1実施形態における液膜開裂剤としては、後述するように、下記の構造X、X-Y、及びY-X-Yからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有する化合物が好ましい。
構造Xは、>C(A)-〈Cは炭素原子を示す。また、<、>及び-は結合手を示す。以下、同様。〉、-C(A)-、-C(A)(B)-、>C(A)-C(R)<、>C(R)-、-C(R)(R)-、-C(R-、>C<及び、-Si(RO-、-Si(R)(R)O-のいずれかの基本構造が、繰り返されるか、もしくは2種以上が組み合わされた構造のシロキサン鎖、又はその混合鎖を表す。構造Xの末端には、水素原子、又は、-C(A)、-C(A)B、-C(A)(B)2、-C(A)-C(R、-C(RA、-C(R、また、-OSi(R、-OSi(R(R)、-Si(R、-Si(R(R)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する。
上記のRやRは各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6~20が好ましい。例えば、フェニル基が好ましい。)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)などの各種置換基を示す。A、Bは各々独立に、水酸基やカルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基などの酸素原子や窒素原子を含む置換基を示す。構造X内にR、R、A、Bが各々複数ある場合は、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。また、連続するC(炭素原子)やSi間の結合は、通常、単結合であるが、二重結合や三重結合を含んでいてもよく、CやSi間の結合には、エーテル基(-O-)、アミド基(-CONR-:Rは水素原子または一価の基)、エステル基(-COO-)、カルボニル基(-CO-)、カーボネート基(-OCOO-)などの連結基を含んでもよい。一つのC及びSiが、他のC又はSiと結合している数は、1つ~4つで、長鎖のシリコーン鎖(シロキサン鎖)又は混合鎖が分岐していたり、放射状の構造を有している場合があってもよい。
Yは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子から選ばれる原子を含む、親水性を有する親水基を表す。例えば、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、ポリオキシアルキレン基(オキシアルキレン基の炭素数は1~4が好ましい。例えば、ポリオキシエチレン(POE)基、ポリオキシプロピレン(POP)基が好ましい。)、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホベタイン基(これらのベタイン基は、各ベタイン化合物から水素原子を1つ取り除いてなるベタイン残基をいう。)、4級アンモニウム基などの親水基単独、もしくは、その組み合わせからなる親水基などである。これらの他にも、後述するMで挙げた基及び官能基も挙げられる。なお、Yが複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
構造X-Y及びY-X-Yにおいて、Yは、X、又はXの末端の基に結合する。YがXの末端の基に結合する場合、Xの末端の基は、例えばYとの結合数と同数の水素原子等が取り除かれてYと結合する。
この構造において、親水基Y、A、Bを具体的に説明した基から選択して前述の拡張係数、水溶解度、界面張力を満たすことができる。こうして、目的の液膜開裂効果を発現する。
上記の液膜開裂剤は、構造Xがシロキサン構造である化合物が好ましい。さらに、液膜開裂剤において、上記の構造X、X-Y、Y-X-Yの具体例として、下記(1)~(11)式で表される構造を、任意に組み合せたシロキサン鎖からなる化合物が好ましい。さらに、この化合物が前述した範囲の質量平均分子量を有することが液膜開裂作用の観点から好ましい。
Figure 0006996875000001
式(1)~(11)において、M、L、R21、及びR22は次の1価又は多価(2価又はそれ以上)の基を示す。R23、及びR24は次の1価若しくは多価(2価又はそれ以上)の基、又は単結合を示す。
は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、もしくはそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基を有する基や、エリスリトール基、キシリトール基、ソルビトール基、グリセリン基もしくはエチレングリコール基などの複数の水酸基を有する親水基(エリスリトール等の複数の水酸基を有する上記化合物から水素原子を1つ取り除いてなる親水基)、水酸基、カルボン酸基、メルカプト基、アルコキシ基(炭素数1~20が好ましい。例えばメトキシ基が好ましい。)、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、スルホン酸基、4級アンモニウム基、スルホベタイン基、ヒドロキシスルホベタイン基、ホスホベタイン基、イミダゾリウムベタイン基、カルボベタイン基、エポキシ基、カルビノール基、(メタ)アクリル基、又はそれらを組み合わせた官能基を示す。なお、Mが多価の基である場合、Mは、上記各基又は官能基から、さらに1つ以上の水素原子を除いた基を示す。
は、エーテル基、アミノ基(Lとして採りうるアミノ基は、>NR(Rは水素原子または一価の基)で表される。)、アミド基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基の結合基を示す。
21、R22、R23、及びR24は、各々独立に、アルキル基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6~20が好ましい。例えばフェニル基が好ましい。)、フルオロアルキル基、もしくはアラルキル基、又はそれらを組み合わせた炭化水素基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)を示す。なお、R22及びR23が多価の基である場合、上記炭化水素基から、さらに1つ以上の水素原子又はフッ素原子を除いた多価炭化水素基を示す。
また、R22又はR23がMと結合する場合、R22又はR23として採りうる基は、上記各基、上記炭化水素基又はハロゲン原子の他に、R32として採りうるイミノ基が挙げられる。
液膜開裂剤は、なかでも、Xとして、(1)、(2)、(5)及び(10)式のいずれかで表される構造を有し、Xの末端、又はXの末端とYとからなる基として、これらの式以外の上記式のいずれかで表される構造を有する化合物が好ましい。さらに、X、又はXの末端とYとからなる基が、上記(2)、(4)、(5)、(6)、(8)及び(9)式のいずれかで表される構造を少なくとも1つ有するシロキサン鎖からなる化合物が、好ましい。
上記化合物の具体例として、シリコーン系の界面活性剤の有機変性シリコーン(ポリシロキサン)が挙げられる。例えば、反応性の有機基で変性された有機変性シリコーンとしては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシ変性、ジオール変性、カルビノール変性、(メタ)アクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性のものが挙げられる。また、非反応性の有機基で変性された有機変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性(ポリオキシアルキレン変性を含む)、メチルスチリル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級アルコキシ変性、高級脂肪酸変性、フッ素変性のものなどが挙げられる。これらの有機変性の種類に応じて、例えば、シリコーン鎖の分子量、変性率、変性基の付加モル数など適宜変更することで、上記の液膜開裂作用を奏する拡張係数を得ることができる。ここで、「長鎖」とは、炭素数が12以上、好ましくは12~20であるものをいう。また、「高級」とは、炭素数が6以上、好ましくは6~20であるものをいう。
その中でも、ポリオキシアルキレン変性シリコーンやエポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、ジオール変性シリコーンなど、変性シリコーンである液膜開裂剤が少なくとも一つの酸素原子を変性基中に有する構造を有する変性シリコーンが好ましく、特にポリオキシアルキレン変性シリコーンが好ましい。ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、ポリシロキサン鎖を有することで、繊維の内部に浸透し難く表面に残りやすい。また、親水的なポリオキシアルキレン鎖を付加したことにより、水との親和性が高まり、界面張力が低いため、前述した液膜表面上での移動が起きやすく好ましい。そのため、前述した液膜表面上での移動が起きやすく好ましい。また、ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、エンボス等の熱溶融加工が施されても、その部分において繊維の表面に残りやすく液膜開裂作用は低減し難い。特に液が溜まりやすいエンボス部分において液膜開裂作用が十分に発現するので好ましい。
ポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、下記式[I]~[IV]で表されるものが挙げられる。さらに、このポリオキシアルキレン変性シリコーンが前述した範囲の質量平均分子量を有することが液膜開裂作用の観点から好ましい。
Figure 0006996875000002
Figure 0006996875000003
Figure 0006996875000004
Figure 0006996875000005
式中、R31は、アルキル基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2エチル-ヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)を示す。R32は、単結合又はアルキレン基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が好ましい。)を示し、好ましくは前記アルキレン基を示す。複数のR31、複数のR32は各々において、互いに同一でも異なってもよい。M11は、ポリオキシアルキレン基を有する基を示し、ポリオキシアルキレン基が好ましい。上記のポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、又はこれらの構成モノマーが共重合されたものなどが挙げられる。m、nは各々独立に1以上の整数である。なお、これら繰り返し単位の符号は、各式(I)~(IV)において別々に決められるものであり、必ずしも同じ整数を示すものではなく異なっていてもよい。
また、ポリオキシアルキレン変性シリコーンは、ポリオキシエチレン変性及びポリオキシプロピレン変性のいずれか又は双方の変性基を有するものであってもよい。また、水に溶けない、かつ低い界面張力を有するにはシリコーン鎖のアルキル基R31にメチル基を有することが望ましい。この変性基、シリコーン鎖をもつものとしては、特に制限するものではないが、例えば特開2002-161474の段落[0006]及び[0012]に記載のものがある。より具体的には、ポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーンや、ポリオキシエチレン(POE)変性シリコーン、ポリオキシプロピレン(POP)変性シリコーンなどが挙げられる。POE変性シリコーンとしては、POEを3モル付加したPOE(3)変性ジメチルシリコーンなどが挙げられる。POP変性シリコーンとしては、POPを10モル、12モル、又は24モル付加したPOP(10)変性ジメチルシリコーン、POP(12)変性ジメチルシリコーン、POP(24)変性ジメチルシリコーンなどが挙げられる。
前述の第1実施形態の拡張係数と水溶解度は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンにおいて例えば、ポリオキシアルキレン基の付加モル数(ポリオキシアルキレン変性シリコーン1モルに対する、ポリオキシアルキレン基を形成するオキシアルキレン基の結合数)、下記変性率等により、所定の範囲にすることができる。この液膜開裂剤において、表面張力及び界面張力も同様にして、それぞれ、所定の範囲にすることができる。
上記観点から、該ポリオキシアルキレン基の付加モル数が1以上であるものが好ましい。こうすることで、上記の液膜開裂作用にとって界面張力が低くなることにより、拡張係数が大きくなることから液膜開裂効果が強くなる。この観点から、付加モル数は3以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。一方、水溶解度を低く抑える観点から、付加モル数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
変性シリコーンの変性率は、親水性を担保するため、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、水に不溶とするため、95%以下が好ましく、70%以下がより好ましく40%以下が更に好ましい。なお、前記変性シリコーンの変性率とは、変性シリコーン1分子中のシロキサン結合部の繰り返し単位の総個数に対する、変性したシロキサン結合部の繰り返し単位の個数の割合である。例えば、上記式[I]及び[IV]では(n/m+n)×100%であり、式[II]では、(2/m)×100%であり、式[III]では(1/m)×100%である。
また、前述の拡張係数及び水溶解度は、ポリオキシアルキレン変性シリコーンにおいて、それぞれ、上記したもの以外にも、変性基を水可溶性のポリオキシエチレン基と水不溶性のポリオキシプロピレン基及びポリオキシブチレン基を併用すること、水不溶性のシリコーン鎖の分子量を変化させること、変性基としてポリオキシアルキレン変性に加えてアミノ基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、カルビノール基などを導入すること等により、所定の範囲に設定できる。
この液膜開裂剤として用いられるポリアルキレン変性シリコーンは、不織布質量に対する含有割合として(OPU)、0.02質量%以上5質量%以下含有されることが好ましい。該ポリアルキレン変性シリコーンの含有割合(OPU)は、1質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましい。こうすることで、積層不織布がべたつかず触感が好ましいものとなる。また、該ポリアルキレン変性シリコーンによる液膜開裂効果を十分に発揮する観点から、前記含有割合(OPU)は、0.04質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。
第2実施形態における液膜開裂剤としては、後述するように、下記の構造Z、Z-Y、及びY-Z-Yからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有する化合物が好ましい。
構造Zは、>C(A)-<C:炭素原子>、-C(A)-、-C(A)(B)-、>C(A)-C(R)<、>C(R)-、-C(R)(R)-、-C(R-、>C<のいずれかの基本構造が、繰り返されるか、もしくは2種以上が組み合わされた構造の炭化水素鎖を表す。構造Zの末端には、水素原子、又は、-C(A)、-C(A)B、-C(A)(B)2、-C(A)-C(R、-C(RA、-C(Rからなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する。
上記のRやRは各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2エチル-ヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6~20が好ましい。例えば、フェニル基が好ましい。)、フルオロアルキル基、アラルキル基、もしくはそれらを組み合わせた炭化水素基、又はフッ素原子などの各種置換基を示す。A、Bは各々独立に、水酸基やカルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基などの酸素原子や窒素原子を含む置換基を示す。構造Z内にR、R、A、Bが各々複数ある場合は、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。また、連続するC(炭素原子)間の結合は、通常、単結合であるが、二重結合や三重結合を含んでいてもよく、C間の結合には、エーテル基、アミド基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基などの連結基を含んでもよい。一つのCが、他のCと結合している数は、1つ~4つで、長鎖の炭化水素鎖が分岐していたり、放射状の構造を有している場合があってもよい。
Yは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子から選ばれる原子を含む、親水性を有する親水基を表す。例えば、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基; 又は、ポリオキシアルキレン基(オキシアルキレン基の炭素数は1~4が好ましい。例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、もしくはそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基が好ましい。); 又は、 エリスリトール基、キシリトール基、ソルビトール基、グリセリン基、エチレングリコール基、などの複数の水酸基を有する親水基; 又は、 スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、スルホベタイン基、カルボベタイン基、ホスホベタイン基、4級アンモニウム基、イミダゾリウムベタイン基、エポキシ基、カルビノール基、メタクリル基などの親水基単独; 又は、 その組み合わせからなる親水基などである。なお、Yが複数の場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
構造Z-Y及びY-Z-Yにおいて、Yは、Z、又はZの末端の基に結合する。YがZの末端の基に結合する場合、Zの末端の基は、例えばYとの結合数と同数の水素原子等が取り除かれてYと結合する。
この構造において、親水基Y、A、Bを具体的に説明した基から選択して前述の拡張係数、水溶解度、界面張力を満たすことができる。こうして、目的の液膜開裂効果を発現する。
上記の液膜開裂剤は、上記の構造Z、Z-Y、Y-Z-Yの具体例として、下記(12)~(25)式で表される構造を、任意に組み合せた化合物が好ましい。さらに、この化合物が前述した範囲の質量平均分子量を有することが液膜開裂作用の観点から好ましい。
Figure 0006996875000006
式(12)~(25)において、M、L、R41、R42、及びR43は次の1価又は多価の基(2価又はそれ以上)を示す。
は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、もしくはそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基を有する基や、エリスリトール基、キシリトール基、ソルビトール基、グリセリン基もしくはエチレングリコール基などの複数の水酸基を有する親水基、水酸基、カルボン酸基、メルカプト基、アルコキシ基(炭素数1~20が好ましい。例えばメトキシ基が好ましい。)、アミノ基、アミド基、イミノ基、フェノール基、スルホン酸基、4級アンモニウム基、スルホベタイン基、ヒドロキシスルホベタイン基、ホスホベタイン基、イミダゾリウムベタイン基、カルボベタイン基、エポキシ基、カルビノール基、(メタ)アクリル基、又はそれらを組み合わせた官能基を示す。
は、エーテル基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基、又は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、もしくはそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基、などの結合基を示す。
41、R42、及びR43は各々独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基が好ましい。)、アルコキシ基(炭素数1~20が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。)、アリール基(炭素数6~20が好ましい。例えばフェニル基が好ましい。)、フルオロアルキル基、アラルキル基、もしくはそれらを組み合わせた炭化水素基、又はハロゲン原子(例えばフッ素原子が好ましい。)からなる各種置換基を示す。
42が多価の基である場合、R42は、上記各置換基から、さらに1つ以上の水素原子を除いた基を示す。
なお、それぞれの構造に記載されている結合手の先には、任意に他の構造が連結しても、水素原子が導入されてもよい。
さらに上記化合物の具体例として、次のような化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
第1に、ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤が挙げられる。具体的には、式(V)のいずれかで表されるポリオキシアルキレンアルキル(POA)エーテルや、式(VI)で表される質量平均分子量1000以上のポリオキシアルキレングリコール、ステアレス、ベヘネス、PPGミリスチルエーテル、PPGステアリルエーテル、PPGベヘニルエーテルなどが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、POPを3モル以上24モル以下、好ましくは5モル付加したラウリルエーテルなどが好ましい。ポリエーテル化合物としては、ポリプロピレングリコール(PPG)を17モル以上180モル以下、好ましくは約50モル付加した質量平均分子量1000~10000、好ましくは3000のポリプロピレングリコールなどが好ましい。なお、上記の質量平均分子量の測定は、前述した測定方法で行うことができる。
このポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤は、不織布質量に対する含有割合として(OPU)、0.1質量%以上5質量%以下含有されることが好ましい。該ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤の含有割合(OPU)は、1質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましい。こうすることで、不織布がべたつかず触感が好ましいものとなる。また、該ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤による液膜開裂効果を十分に発揮する観点から、前記含有割合(OPU)は、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。
Figure 0006996875000007
Figure 0006996875000008
式中、L21は、エーテル基、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、又はそれらを組み合わせたポリオキシアルキレン基、などの結合基を示す。R51は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、フルオロアルキル基、アラルキル基、もしくはそれらを組み合わせた炭化水素基、又はフッ素原子からなる各種置換基を示す。また、a、b、m及びnは各々独立に1以上の整数である。ここで、Cはアルキル基(n=2m+1)を表し、Cはアルキレン基(a=2b)を表す。なお、これら炭素原子数および水素原子数は、各式(V)及び(VI)において各々独立に決められるものであり、必ずしも同じ整数を示すものではなく異なっていてもよい。以下、式(VII)~(XV)のm、m’、m’’、n、n’及びn’’においても同様である。なお、-(CO)-の「m」は、1以上の整数である。この繰り返し単位の値は、各式(V)及び(VI)において各々独立に決められるものであり、必ずしも同じ整数を示すものではなく異なっていてもよい。
前述の第2実施形態の拡張係数、表面張力及び水溶解度は、ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤において、例えば、ポリオキシアルキレン基のモル数等により、それぞれ、所定の範囲に設定することができる。この観点から、ポリオキシアルキレン基のモル数が1以上70以下であるものが好ましい。1以上とすることで、上記の液膜開裂作用が十分に発揮される。この観点から、モル数は5以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。一方、付加モル数は、70以下が好ましく、60以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。こうすることで、分子鎖のからみが適度に弱くなり、液膜内での拡散性に優れ、好ましい。
また、前述の拡張係数、表面張力、界面張力及び水溶解度は、それぞれ、ポリエーテル化合物やノニオン界面活性剤において、水溶性のポリオキシエチレン基と水不溶性のポリオキシプロピレン基及びポリオキシブチレン基を併用すること、炭化水素鎖の鎖長を変化させること、炭化水素鎖に分岐鎖を有するものを用いること、炭化水素鎖に二重結合を有するものを用いること、炭化水素鎖にベンゼン環やナフタレン環を有するものを用いること、または上記を適宜組み合わせること等により、所定の範囲に設定できる。
第2に、炭素原子数5以上の炭化水素化合物が挙げられる。炭素原子数は、液体の方がより液膜表面に拡張しやすくなる観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。この炭化水素化合物は、ポリオルガノシロキサンを除くもので、直鎖に限らず、分岐鎖であってもよく、その鎖は飽和、不飽和に特に限定されない。また、その中間及び末端には、エステルやエーテルなどの置換基を有していてもよい。その中でも、常温で液体のものが好ましく単独で用いられる。この炭化水素化合物は、不織布質量に対する含有割合として(OPU)、0.1質量%以上5質量%以下含有されることが好ましい。該炭化水素化合物の含有割合(OPU)は、1質量%以下が好ましく、0.99質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましい。こうすることで、表面材がべたつかず触感が好ましいものとなる。また、該炭化水素化合物による液膜開裂効果を十分に発揮する観点から、前記含有割合(OPU)は、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。
炭化水素化合物としては、油又は脂肪、例えば天然油もしくは天然脂肪が挙げられる。具体例としては、ヤシ油、ツバキ油、ヒマシ油、ココナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ひまわり油、トール油、及びこれらの混合物などが挙げられる。
また、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、及びこれらの混合物などの式(VII)で表すような脂肪酸が挙げられる。
Figure 0006996875000009
式中、m及びnは各々独立に1以上の整数である。ここで、Cは、上記各脂肪酸の炭化水素基を示す。
直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和、置換又は非置換の多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコール脂肪酸エステルの混合物の例として、式(VIII-I)又は(VIII-II)で表すような、グリセリン脂肪酸エステルやペンタエリスリトール脂肪酸エステルが挙げられ、具体的にはグリセリルトリカプリレート、グリセリルトリパルミテート及びこれらの混合物などが挙げられる。なお、グリセリン脂肪酸エステルや、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルの混合物には、典型的には多少のモノ、ジ、およびトリエステルが含まれる。グリセリン脂肪酸エステルの好適な例としては、グリセリルトリカプリレート、グリセリルトリカプリエートの混合物などが挙げられる。また、界面張力を低下させ、より高い拡張係数を得る観点から、水不溶性を維持できる程度にポリオキシアルキレン基を導入した多価アルコール脂肪酸エステルを用いてもよい。
Figure 0006996875000010
Figure 0006996875000011
式中、m、m’、m’’、n、n’及びn’’は各々独立に1以上の整数である。複数のm、複数のnは各々において、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、C、C’H’及びC’’H’’は、それぞれ、上記各脂肪酸の炭化水素基を示す。
直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和の脂肪酸が、多数の水酸基を有するポリオールとエステルを形成し、一部の水酸基がエステル化されずに残存している脂肪酸又は脂肪酸混合物の例として、式(IX)のいずれか、式(X)のいずれか、又は式(XI)のいずれかで表すような、グリセリン脂肪酸エステルや、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルの部分エステル化物が挙げられる。具体的には、エチレングリコールモノミリステート、エチレングリコールジミリステート、エチレングリコールパルミテート、エチレングリコールジパルミテート、グリセリルジミリステート、グリセリルジパルミテート、グリセリルモノオレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリステアリル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、及びこれらの混合物などが挙げられる。なお、グリセリン脂肪酸エステルや、ソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどの部分エステル化物からなる混合物には、典型的には多少の完全エステル化された化合物が含まれる。
Figure 0006996875000012
式中、m及びnは各々独立に1以上の整数である。複数のm、複数のnは各々において、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、Cは、上記各脂肪酸の炭化水素基を示す。
Figure 0006996875000013
式中、R52は、炭素原子数2以上22以下の、直鎖又は分岐鎖、飽和又は不飽和の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を示す。具体的には、2-エチルヘキシル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、オレイル基、リノール基などが挙げられる。
Figure 0006996875000014
式中、m及びnは各々独立に1以上の整数である。複数のm、複数のnは各々において、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、Cは、上記各脂肪酸の炭化水素基を示す。
また、ステロール、フィトステロール及びステロール誘導体が挙げられる。具体例としては、式(XII)のステロール構造を有する、コレステロール、シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、及びこれらの混合物などが挙げられる。
Figure 0006996875000015
アルコールの具体例としては、式(XIII)で表すような、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びこれらの混合物などが挙げられる。
Figure 0006996875000016
式中、m及びnは各々独立に1以上の整数である。ここで、Cは、上記各アルコールの炭化水素基を示す。
脂肪酸エステルの具体例としては、式(XIV)で表すような、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、セチルエチルヘキサノエート、トリエチルヘキサノイン、オクチルドデシルミリステート、エチルヘキシルパルミテート、エチルヘキシルステアレート、ブチルステアレート、ミリスチルミリステート、ステアリルステアレート、コレステリルイソステアレート及びこれらの混合物などが挙げられる。
Figure 0006996875000017
式中、m及びnは各々独立に1以上の整数である。ここで、2つのCは、同一でも異なっていてもよい。C-COO-のCは上記各脂肪酸の炭化水素基を示す。-COOCのCはエステルを形成するアルコール由来の炭化水素基を示す。
また、ワックスの具体例としては、式(XV)で表すような、セレシン、パラフィン、ワセリン、鉱油、流動イソパラフィンなどが挙げられる。
Figure 0006996875000018
式中、m及びnは各々独立に1以上の整数である。
前述の第2実施形態の拡張係数、表面張力、水溶解度及び界面張力は、それぞれ、上記の炭素原子数5以上の炭化水素化合物において、例えば、親水的なポリオキシエチレン基を水不溶性が維持できる程度に少量導入すること、疎水的だが界面張力を低下させることができるポリオキシプロピレン基やポリオキシブチレン基を導入すること、炭化水素鎖の鎖長を変化させること、炭化水素鎖に分岐鎖を有するものを用いること、炭化水素鎖に二重結合を有するものを用いること、炭化水素鎖にベンゼン環やナフタレン環を有するものを用いること等により、所定の範囲に設定できる。
本発明に係る不織布において、上述した液膜開裂剤の他に、必要により他の成分を含有させてもよい。また、第1実施形態の液膜開裂剤、第2実施形態の液膜開裂剤は、別々に用いる形態以外にも、両者の剤を組み合わせて用いてもよい。この点は、第2実施形態の液膜開裂剤における第1の化合物と第2の化合物についても同じである。
なお、本発明の不織布において、含有される液膜開裂剤やリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を同定する場合は、上記の液膜(表面張力が50mN/mの液体)の表面張力(γ)等の測定方法で述べた同定の方法を用いることができる。
また、液膜開裂剤の成分が、主鎖がシロキサン鎖を有する化合物又は炭素原子数1以上20以下の炭化水素化合物である場合、その繊維質量に対する含有割合(OPU)は、前述の分析手法により得た物質の質量を基に、その液膜開裂剤の含有量を繊維の質量で割ることにより求めることができる。
本発明の不織布は、繊維の太さや繊維間距離に関係なく、液透過性の高いものとなる。しかしながら、本発明の積層不織布は、特に細い繊維を用いた場合に効果的である。通常よりも肌触りの柔らかい積層不織布とするために細い繊維を用いると、繊維間距離が小さくなり、繊維間の狭い領域が多くなる。例えば、通常、一般的に用いられる不織布(繊度が2.4dtex)の場合、繊維間距離が120μmで、形成される液膜面積率が約2.6%程度となる。しかし、繊度を1.2dtexに下げると、繊維間距離が85μmで、液膜面積率は約7.8%と通常の不織布の3倍程度にまでなってしまう。これに対し、本発明の積層不織布で繊度を1.2dtexに下げても、前記液膜開裂剤が、多発する液膜を確実に開裂して液残りを低減する。
このような液膜開裂剤を含有し、螺旋状捲縮繊維を用いて厚み方向の毛管力を備える本発明の不織布において、肌触りの柔らかさを高める観点から、第2繊維層2の繊維間距離は、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましい。また、その下限は、繊維間が狭くなりすぎることにより通液性が損なわれるのを抑える観点から、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましい。この場合の第2繊維層2の繊維の繊度は、3.3dtex以下が好ましく、2.4dtex以下がより好ましい。また、その下限は、0.5dtex以上が好ましく、1dtex以上がより好ましい。
また、螺旋状捲縮繊維と非螺旋状繊維とを混合して有する第1繊維層1においては、繊維間距離は、高い毛管力と液戻り防止の観点から、120μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましい。また、その下限は、液残り量の低減の観点から、40μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。この場合の第2繊維層2の繊維の繊度は、4.4dtex以下が好ましく、3.3dtex以下がより好ましい。また、その下限は、1dtex以上が好ましく、1.8dtex以上がより好ましい。
なお、不織布の繊維間距離は、収縮して局所的に狭くなった部分及び、収縮により局所的に広くなった部分を含めて全て平均化して得られる値を意味する。
本発明に係る液膜開裂剤は、不織布化後に液膜開裂剤を塗工する場合、液膜開裂剤を含む溶液中に原料不織布を浸漬する方法が挙げられる。ここでいう原料不織布とは、液膜開裂剤が付与される前の不織布を意味する。前記溶液は、例えば液膜開裂剤を溶媒で希釈した溶液などが挙げられる(以下、この溶液を液膜開裂剤溶液ともいう。)。また別の方法としては、原料不織布に対して、液膜開裂剤単体、もしくは前記液膜開裂剤を含む溶液を塗布する方法が挙げられる。なお、前記液膜開裂剤を含む溶液にリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を混合していてもよい。その場合の液膜開裂剤とリン酸エステル型のアニオン界面活性剤との含有比率は前述のとおりであることが好ましい。前記溶媒としては、水溶解度の極めて小さい液膜開裂剤を、不織布に塗工しやすいように溶媒中に適度に溶解または分散させて乳化させることができるものを特に制限なく用いることができる。例えば、溶解させるものとしてエタノール、メタノール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒、もしくは乳化液とする場合には当然ながら水も溶媒ないしは分散媒体として用いることができ、乳化させる時に使用する乳化剤としてアルキルリン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキルベタイン、アルキルスルホコハク酸ナトリウムなどを含む各種界面活性剤が挙げられる。
本発明に係る液膜開裂剤を原料不織布に対して塗布する方法としては、不織布の製造方法に用いられるものを特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、グラビア方式、フレキソ方式、ディッピング方式による塗布等などが挙げられる。
液膜開裂剤を繊維に付着させる際には、液膜開裂剤を含む繊維処理剤として用いることが好ましい。ここで説明する「繊維処理剤」とは、すなわち、水溶解度が極めて小さい油状の液膜開裂剤を、水と界面活性剤等で乳化するなどして、原料不織布ないし繊維に塗工処理しやすい状態にしたものをいう。液膜開裂剤を塗工するための繊維処理剤において、液膜開裂剤の含有割合は繊維処理剤の質量に対して50質量%以下であることが好ましい。これにより、繊維処理剤は、油状の成分となる液膜開裂剤を溶媒中に安定的に乳化させた状態とすることができる。安定的な乳化の観点から、液膜開裂剤の含有割合は、繊維処理剤の質量に対して40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、塗工後に液膜開裂剤が繊維上を適度な粘度で移動して前述した不織布における液膜開裂剤の局在化を実現する観点から、上記の含有割合とすることが好ましい。液膜開裂剤の含有割合は、十分な液膜開裂効果を発現させる観点から、繊維処理剤の質量に対して5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましい。なお、液膜開裂剤を含有する繊維処理剤は、液膜開裂剤の作用を阻害しない範囲で、他の剤を含んでもよい。例えば、前述したリン酸エステル型のアニオン界面活性剤を含んでいてもよい。その場合の液膜開裂剤とリン酸エステル型のアニオン界面活性剤との含有比率は前述のとおりであることが好ましい。その他、繊維加工の際に用いられる静電気防止剤や耐摩擦剤、また積層不織布に適度な親水性を付与する親水化剤、乳化安定性を付与する乳化剤などを含んでいてもよい。
本発明の不織布は、その柔らかな肌触りと液残りの低減とを活かして、種々の分野に適用できる。例えば生理用ナプキン、パンティライナー、使い捨ておむつ、失禁パッドなどの身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品における表面シート、セカンドシート(表面シートと吸収体との間に配されるシート)、裏面シート、防漏シート、あるいは対人用清拭シート、スキンケア用シート、更に対物用のワイパーなどとして好適に用いられる。本発明の積層不織布を吸収性物品の表面シートやセカンドシートとして用いる場合には、該積層不織布の第1層側を肌対向面側として用いることが好ましい。
身体から排出される液の吸収に用いられる吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。本発明に係る積層不織布を表面シートとして用いた場合の吸収体及び裏面シートとしては、当該技術分野において通常用いられている材料を特に制限無く用いることができる。例えば吸収体としては、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体又はこれに吸収性ポリマーを保持させたものを、ティッシュペーパーや不織布等の被覆シートで被覆してなるものを用いることができる。裏面シートとしては、熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムと不織布とのラミネート等の液不透過性ないし撥水性のシートを用いることができる。裏面シートは水蒸気透過性を有していてもよい。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」とは特に断らない限りいずれも質量基準である。
下記実施例における、液膜開裂剤の表面張力、水溶解度及び界面張力は、前述の測定方法により行った。
(実施例1)
(1)第1繊維層1(下層)となる第1原料繊維層11の作製:
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリプロピレン(PP)を2成分とする、繊度2.3dtexの潜在捲縮性繊維(サイド・バイ・サイド型複合繊維)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を2成分とする、繊度4.4dtexの非螺旋状繊維(芯鞘型複合繊維)とをそれぞれ50質量%ずつを混合し、カード法によってカードウエブを製造し、これを第1原料繊維層11とした。
(2)第2繊維層2(上層)となる第2原料繊維層21の作製:
ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレン(PE)を2成分とする、繊度1.2dtexの非螺旋状繊維(芯鞘型複合繊維)をカード法によってカードウエブを製造し、これをエアスルー熱処理機にて熱風処理しシート化したものを第2原料繊維層21とした。
(3)不織布試料前駆体の作製:
第1原料繊維層11と第2原料繊維層21とを積層し、特開2015-186543号公報の図4に示すようなパターンの大小の凸部を有するエンボスロールと、表面平滑なバックアップロールとからなる熱エンボスロール装置に挿通し、両繊維層を部分的に加熱加圧して接合した。加熱加圧した部分が両繊維層の接合部3として形成された、接合部3は、第2原料繊維層21が部分的に窪んだ凹部4の底部に形成された。
次いで、温度105℃、風速20m/minの熱風を第2原料繊維層21側から吹き付けて、第1原料繊維層11の潜在捲縮性繊維の螺旋状の捲縮を発現させた。これにより、第1原料繊維層11が平面方向に収縮し、同時に、第2原料繊維層21における接合部3以外の部分が凸状に隆起した。
これにより、特開2015-186543号公報の図4に示すような高凸部81及び低凸部82を有する不織布試料前駆体を得た。不織布試料前駆体は、前記の第1原料繊維層11から得られた第1繊維層1(下層)と、第2原料繊維層21から得られた第2繊維層2(上層)とを有する。
(4)液膜開裂剤の塗布:
下記液膜開裂剤をフレキソ方式により、不織布試料前駆体の第2繊維層2(上層)側から塗布した。液膜開裂剤の不織布質量に対する含有割合(OPU)を、0.4質量%となるようにした。一方、第1繊維層1(下層)側には、液膜開裂剤は付着させなかった。
<液膜開裂剤>
ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製 KF-6015)で、構造X-YにおけるXが-Si(CHO-からなるジメチルシリコーン鎖、Yが-(CO)-からなるPOE鎖からなり、POE鎖の末端基がメチル基(CH)であり、変性率が20%、ポリオキシエチレン付加モル数が3、質量平均分子量が4000のもの。
上記ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンの、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数は28.8mN/mであり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は、0.2mN/mであった。また、前記ポリオキシエチレン(POE)変性ジメチルシリコーンの表面張力は21.0mN/m、水溶解度は0.0001g未満であった。これらの数値は、前述の測定方法により測定した。その際、「表面張力が50mN/mの液体」は、100gの脱イオン水にノニオン系界面活性物質であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王株式会社製、商品名レオオールスーパーTW-L120)をマイクロピペット(ACURA825、Socorex Isba SA社製)で3.75μL添加し、表面張力を50±1mN/mに調整した溶液を用いた。また、水溶解度は、0.0001g毎に剤を添加して測定した。その結果、0.0001gも溶けないと観察されたものは「0.0001g未満」とし、0.0001gは溶けて、0.0002gは溶けなかったと観察されたものは「0.0001g」とした。それ以外の数値についても同様の方法により測定した。
(5)不織布試料:
前記のとおり液膜開裂剤を塗布して得られた不織布を実施例1の不織布試料とした。
実施例1の不織布試料において、第1繊維層1(下層)における螺旋状捲縮繊維の平均繊維径が17.8μmであり、非螺旋状繊維の平均繊維径が22.4μmであった。また、第2繊維層2(上層)の繊維間距離は80μmであり、第1繊維層1(下層)の繊維間距離は72μであった。
(実施例2)
第1繊維層1(下層)となる第1原料繊維層11の非螺旋状繊維の繊度を1.8dtexとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の不織布試料を作製した。第1繊維層1(下層)の非螺旋状繊維の平均繊維径は14.3μmであり、第1繊維層1(下層)の繊維間距離は57μmであった。
(実施例3)
第1原料繊維層11における潜在捲縮性繊維の含有割合を75質量%、非螺旋状繊維の含有割合を25質量%とした以外は、実施例2と同様にして実施例3の不織布試料を作製した。第1繊維層1(下層)の繊維間距離は58μmであった。
(実施例4)
第1原料繊維層11における非螺旋状繊維を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリプロピレン(PP)を2成分とする、繊度2.3dtexの芯鞘型複合繊維とし、得られた第2繊維層2の非螺旋状繊維の平均繊維径を17.8μmとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の不織布試料を作製した。第1繊維層1(下層)の繊維間距離は60μmであった。
(実施例5)
液膜開裂剤として、エポキシ変性ジメチルシリコーン(信越化学工業株式会社製、KF-101)で、構造X-YにおけるXが-Si(CHO-からなるジメチルシリコーン鎖、Yが-(RCO)-から成るエポキシ基からなるものであり、変性率が32%、質量平均分子量が35800のものを用いた以外は、実施例4と同様にして実施例5の不織布試料を作製した。
上記エポキシ変性ジメチルシリコーンの、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数は26.0mN/mであり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は3.0mN/mであった。また、エポキシ変性ジメチルシリコーンの表面張力は21.0mN/mであり、水溶解度は0.0001g未満であった。
(実施例6)
液膜開裂剤として、トリカプリル酸・カプリン酸グリセリド(花王株式会社製 ココナードMT)で、構造Z―YにおけるZが*-O-CH(CHO-*)(*は結合部を示す。)であり、YがC15O-やC1019O-の炭化水素鎖からなるものであり、脂肪酸組成がカプリル酸を82%、カプリン酸を18%からなり、質量平均分子量が550のものを用い、液膜開裂剤の不織布質量に対する含有割合(OPU)を0.6質量%とした以外は、実施例4と同様にして実施例6の不織布試料を作製した。
上記トリカプリル酸・カプリン酸グリセリド(花王株式会社製 ココナードMT)の、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数は8.8mN/mであり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は12.3mN/mであった。また、前記トリカプリル酸・カプリン酸グリセリド(花王株式会社製 ココナードMT)の表面張力は28.9mN/m、水溶解度は0.0001g未満であった。
(実施例7)
液膜開裂剤として、流動イソパラフィン(ルビトールLite、BASFジャパン株式会社製)で、質量平均分子量が450のものを用い、液膜開裂剤の不織布質量に対する含有割合(OPU)を0.5質量%とした以外は、実施例4と同様にして実施例7の不織布試料を作製した。
上記流動イソパラフィンの、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数は14.5mN/mであり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力は8.5mN/mであった。また、前記流動イソパラフィンの表面張力は27.0mN/mであり、水溶解度は0.0001g未満であった。
(比較例1)
非螺旋状繊維を第1繊維層1(下層)に含有させず、液膜開裂剤を不織布試料前駆体に塗布しなかった以外は、実施例4と同様にして比較例の不織布試料を作製した。
(比較例2)
液膜開裂剤を塗布しなかった以外は、実施例4と同様にして比較例の不織布試料を作製した。
(参考例)
第2繊維層2(上層)のみからなるものとし、液膜開裂剤の不織布質量に対する含有割合(OPU)を0.1質量%とした以外は、実施例1と同様にして参考例の不織布試料を作製した。
各不織布試料について、前述した(地合い指数の測定方法)に記載した方法に基づいて、各不織布試料の第1繊維層1の地合い指数を測定した。その結果は下記表1及び2に示したとおりであった。
(試験)
下記の評価は、吸収性物品の一例として生理用ナプキン(花王株式会社製:ロリエエフ しあわせ素肌 30cm、2016年製)にコールドスプレーを吹きかけ、接着剤を固化して接着力を弱めた後、丁寧に表面シートを取り除き、代りに各不織布試料を積層し、その周囲を固定して得た評価用の生理用ナプキンを用いて行った。
(不織布試料の液残り量)
各評価用の生理用ナプキンを水平に置き、該生理用ナプキンの表面上に、内径1cmの透過孔を有するアクリル板を重ねて、該ナプキンに100Paの一定荷重を掛けた。斯かる荷重下において、該アクリル板の透過孔から経血に相当する擬似血液(株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)6.0gを流し込んだ。なお、用いた擬似血液は、東機産業株式会社のTVB10形粘度計にて、30rpmの条件下で調整した。馬脱繊維血液は、放置すると、粘度の高い部分(赤血球など)は沈殿し、粘度の低い部分(血漿)は、上澄みとして残る。その部分の混合比率を、8.0cPになるように調整した。
合計6.0gの擬似血液を流し込んでから60秒後にアクリル板を取り除いた。次いで、積層不織布試料の重量(W2)を測定し、予め測定しておいた、馬血を流し込む前の積層不織布試料の重量(W1)との差(W2-W1)を算出した。以上の操作を3回行い、3回の平均値を不織布試料の液残り量(mg)とした。液残り量は、装着者の肌がどの程度濡れるかの指標となるものであり、液残り量が少ないほど程、良い結果である。なお、粘度の単位cP(センチポアズ)は、1cP=1×10-3Pa・sによって換算される。
(不織布試料の液吸上げ残存量)
水平においたプラスチック台の上に、特定された領域(長さ8cm、幅4cmの楕円)内に、擬似血液(株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)を1g滴下した。その上に、表面シート(不織布試料)を下に向けて評価用の生理用ナプキンを載置した。1分間その状態を保持した後、該評価用の生理用ナプキンを取り除き、残った擬似血液をティッシュペーパー(日本製紙クレシア株式会社製、商品名クリネックスティシュー)でふき取り、残留した擬似血液の質量を測定した。測定した質量を不織布試料の液吸上げ残存量とした。残留した擬似血液の質量が少ないほど、不織布試料の液吸上げ力が高いことを示す。
(不織布試料の液戻り量)
評価用の生理用ナプキンを水平に置き、該生理用ナプキンの表面上に、底部に直径1cmの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ね、注入口から。擬似血液(株式会社日本バイオテスト研究所製の馬脱繊維血液を8.0cPに調整したもの)を3g注入した。その50秒経過後に、円筒つきアクリル板を取り除き、さらに10秒を経過させ、液注入後から合計で1分経過時に表面シート(不織布試料)上に縦9.5cm×横6.0cmに折り畳んだティッシュペーパー(日本製紙クレシア株式会社製、商品名クリネックスティシュー)を1枚(2プライ)載せた。更にその上に圧力が4.0×10Paになるように錘を載せて5秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り除き、加圧前後の吸収紙の質量を測定して、吸収紙に吸収された擬似血液の質量を測定して、不織布試料の液戻り量とした。
上記実施例及び比較例の成分構成、及び該実施例及び比較例についての各試験等の結果は下記表1及び2のとおりであった。
Figure 0006996875000019
Figure 0006996875000020
表1に示すとおり、比較例1及び2の液残り量が280mg、200mgであるのに対し、実施例1~7の液残り量はその約半分から4分の1程度にまで低く抑えられていた。すなわち、実施例1~7は、液残り低減効果の高いものであった。
加えて、実施例1~7は、比較例1よりも地合い指数が低く、繊維分布の均一性が高いものとなっていた。このことにより、実施例1~7は地合いの良さによる高い毛管力を備え、該毛管力と液膜開裂剤による液膜の開裂作用とが相俟って、吸上げ残存量の結果が示す通り、同等の地合いを有する比較例2、液膜開裂剤を有する参考例よりも液の吸上げ力の高いものとなっていた。また、実施例1~7は、液戻り量に関し、比較例1及び2の約10分の1程度にまで顕著に低く抑えられたものがあった。なかでも実施例4は、適切な繊維径を設定することで、液の吸上げ力を含めて優れた吸収性能を示していた。
以上のとおり、実施例1~7は、液の吸上げ力、液残り残存量及び液残りの抑制力の全てにおいて優れた性能を示すものであることが分かった。
1 第1繊維層(一方の面(第1面)A側の繊維層)
2 第2繊維層(反対面(第2面)B側の繊維層)
3 接合部
4 凹部
5 凹部
8 凸部
10 不織布
11 第1原料繊維層
21 第2原料繊維層
91 繊維
92 液膜
93 液膜開裂剤

Claims (5)

  1. 複数の繊維層が積層されて複数の接合部によって部分的に接合され、該繊維層が一体にされた不織布であって、
    前記不織布の表裏の面のうち、一方の面側の繊維層が螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含んでおり、他方の面側の繊維層が非螺旋状繊維で構成されており、
    前記他方の面側の繊維層は、前記接合部の位置において前記他方の面側から前記一方の面側へ窪んだ凹部と、前記接合部で囲まれた領域に配される凸部とを備え
    記凸部に、ポリオキシアルキレン変性シリコーン及びエポキシ変性シリコーンからなる群より選択される少なくとも1種であって、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が25mN/m以上で、水溶解度が0g以上0.025g以下である化合物(C1)を含有し、
    前記不織布の地合い指数が90未満である、不織布。
  2. 複数の繊維層が積層されて複数の接合部によって部分的に接合され、該繊維層が一体にされた不織布であって、
    前記不織布の表裏の面のうち、一方の面側の繊維層が螺旋状捲縮繊維及び非螺旋状繊維を含んでおり、他方の面側の繊維層が非螺旋状繊維で構成されており、
    前記他方の面側の繊維層は、前記接合部の位置において前記他方の面側から前記一方の面側へ窪んだ凹部と、前記接合部で囲まれた領域に配される凸部とを備え
    記凸部に、グリセリン脂肪酸エステル及びワックスからなる群より選択される少なくとも1種であって、表面張力が50mN/mの液体に対する拡張係数が0mN/mよりも大きく、水溶解度が0g以上0.025g以下であり、表面張力が50mN/mの液体に対する界面張力が13mN/m以下である化合物(C2)を含有し、
    前記不織布の地合い指数が90未満である、不織布。
  3. 前記非螺旋状繊維の平均繊維径が、前記螺旋状捲縮繊維の平均繊維径と同じか又は小さい、請求項1又は2記載の不織布。
  4. 前記非螺旋状の平均繊維径が18μmよりも小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布を、前記他方の面側を肌側に配して表面シートとして用いた吸収性物品。
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