JP2020079428A - 温間成形用粉末とその製造方法および温間成形方法 - Google Patents

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Kenbu Miyake
賢武 三宅
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伸彦 松本
谷 昌明
Masaaki Tani
昌明 谷
栄介 保科
Eisuke Hoshina
栄介 保科
将大 内村
Masahiro Uchimura
将大 内村
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Abstract

【課題】硬質基粒子からなる基材粉末を用いる場合でも、保形性に優れた成形体が得られる温間成形用粉末を提供する。【解決手段】本発明の温間成形用粉末は、基材粉末と潤滑剤とナノ粒子粉末の混合粉末からなる温間成形用粉末であって、基材粉末は、硬さが190HV以上で略球状な硬質基粒子を含み、潤滑剤は、該基材粉末全体に対して0.15〜2質量%含まれ、ナノ粒子粉末は、粒径が400nm以下で略球状な球状ナノ粒子を含むと共に基材粉末全体に対して0.005〜1.5質量%含まれる。この温間成形用粉末を用いて、潤滑剤の軟化点以上かつ融点未満で温間成形されると好ましい。この場合、潤滑剤とナノ粒子が協働して、基材粉末粒子の流動性を高め、成形初期の再配列が促進される。その結果、保形性に優れた成形体が得られたと考えられる。【選択図】図1

Description

本発明は、主に硬質基粒子からなる温間成形用粉末等に関する。
原料粉末を加圧成形した成形体(圧粉体)を焼結させて得られる部材は、ニアネットシェイプで切削加工等が削減されるため、製造コストの大幅な低減を可能とする。このような粉末冶金方法に関連した記載が、例えば、下記の特許文献にある。
特開2015−71812号公報 特開2004−115882号公報 特開平5−93201号公報 特開2016−148100号公報 特開2015−117345号公報 特開2015−14043号公報
特許文献1では、硬質な高速度工具鋼粉をHIP処理等して固化成形体を得ている。しかし、HIP処理自体がそもそも高コストである。
特許文献2では、高速度工具鋼粉を有機バインダで造粒した造粒粉を用いて成形体を得ている。しかし、造粒粉は嵩高い(見掛密度が低い)ため、その成形には深い金型が必要となる。
特許文献3では、超硬質粉末とバインダ粉末(Ni粉やCo粉)とパラフィンワックス等の混合粉末を用いて成形している。Ni粉やCo粉は高価であり、コスト増加を招く。
特許文献4では、少量の潤滑剤で低抜出力を実現している。しかし、軟質な純鉄粉または低合金粉を成形しているに過ぎない。
特許文献5、6には、ナノシリカ粒子が滑剤の特性や金属粒子の流動性を高める旨の記載がある。しかし、特許文献5は、摩擦係数の評価しかしていない。また特許文献6は、軟質な純鉄粉にナノシリカ粒子を加えたときの圧縮性の評価に留まる。
硬質な球状の粒子からなる基材粉末(例えば、高速度工具鋼のガスアトマイズ粉)は、そもそも成形自体が容易ではなく、その成形体は、成形型からの取出時や運搬時等に崩壊し易い。そのような基材粉末からなる焼結体等の生産性向上には、先ず、形状が崩れ難く、取扱性に優れる成形体を得ること、つまり保形性の確保が重要となる。上記のいずれの特許文献にも、そのような保形性に関する記載はない。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、硬質で略球状な粒子からなる粉末を用いる場合でも、成形体の保形性を確保できる温間成形用粉末等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、硬質で略球状な粒子(硬質基粒子)からなる基材粉末に、(内部)潤滑剤のみならずナノ粒子粉末をも加えた混合粉末を用いて温間成形することにより、保形性に優れた成形体を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《温間成形用粉末》
(1)本発明は、基材粉末と潤滑剤とナノ粒子粉末の混合粉末からなる温間成形用粉末であって、該基材粉末は、硬さが190HV以上で略球状な硬質基粒子を含み、該潤滑剤は、該基材粉末全体に対して0.15〜2質量%含まれ、該ナノ粒子粉末は、粒径が400nm以下で略球状な球状ナノ粒子を含むと共に該基材粉末全体に対して0.005〜1.5質量%含まれる温間成形用粉末である。
(2)本発明の温間成形用粉末(単に「成形粉末」ともいう。)を用いれば、硬質基粒子を含む基材粉末を成形する場合でも、形崩れせず、取扱性に優れた成形体(つまり保形性に優れた成形体)を得ることが可能となる。勿論、その成形体を焼結等することにより、難加工材からなる部材でも、ニアネットシェイプによる低コスト化が図られる。
本発明の成形粉末により、保形性(成形性)の向上が図られる理由は次のように推察される。硬質基粒子は加圧されても塑性変形し難い。このため、主に硬質基粒子からなる粉末を加圧成形する場合、塑性変形し易い軟質な金属粒子からなる粉末(例えば純鉄粉や低合金鋼粉)を加圧成形する場合と異なり、アンカー効果による保形性の確保は期待できない。
しかし、本発明の成形粉末を温間成形すると、ナノ粒子が軟化した潤滑剤と協働しつつ、ベアリング効果や固体潤滑効果等を発揮し、硬質基粒子の再配列を促進する。この際、軟化した潤滑剤は、隣接する硬質基粒子間の相対移動により、各硬質基粒子の表面に引き伸ばされる。こうして、潤滑剤は少量でも、それが付着する硬質基粒子の表面積(付着面積)は増加する。そして潤滑剤は、隣接する硬質基粒子同士を強固に結合するバインダーとして機能するようになる。このような機序により、主に硬質基粒子からなる成形体であっても、十分な保形性が発揮されるようになったと考えられる。
《製造方法等》
(1)本発明は、基材粉末と潤滑剤とナノ粒子粉末とを混合して、上述した温間成形用粉末を得る温間成形用粉末の製造方法としても把握できる。
(2)また本発明は、上述した温間成形用粉末を、所定の成形温度に加熱された成形型内で加圧成形して成形体を得る成形工程を備えた温間成形方法としても把握できる。このときの成形温度は、潤滑剤の軟化点以上かつ融点未満とするとよい。
逆に、成形温度が定まっているときは、成形温度が軟化点以上で融点未満となる潤滑剤を含む成形粉末を用いるとよい。そこで本発明は、上述した基材粉末と潤滑剤とナノ粒子粉末の混合粉末からなり、潤滑剤は、軟化点が成形温度以下であると共に融点が成形温度超である温間成形用粉末としても把握できる。
(3)本発明では、成形体の焼結の有無は問わない。但し、その成形体を焼結させて焼結体を得る焼結工程を備えた焼結部材の製造方法としても、本発明を把握できる。
(4)さらに本発明は、上述した温間成形用粉末を加圧成形した成形体、その成形体を焼結(仮焼を含む)させた焼結体、上述した潤滑剤とナノ粒子粉末が混在した温間成形用滑剤(またはバインダー)としても把握できる。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
各試料に係る粉末粒子のSEM像である。 各試料に係る成形体の外観写真である。 各試料に係る成形体の破断面を観察したSEM像とその拡大像である。 各試料に係る粉体層のせん断応力と垂直応力の関係を示すグラフである。 各試料に係る粉体層の密度を示す棒グラフである。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、温間成形用粉末またはその製造方法、温間成形方法のみならず、成形体、焼結体(焼結部材)、温間成形用滑剤またはそれらの製造方法等にも適宜該当し得る。方法的な構成要素であっても物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《基材粉末》
(1)粉末構成
基材粉末は、硬質基粒子を含む粉末であれば、金属粉末、化合物粉末(例えばセラミックス粉末)等のいずれでもよい。代表例として、合金元素を多く含む鉄基粉末がある。その合金元素は、C、Si、Mn、P、Sの他、Si、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Co、W、Nb、Ti等である。このような鉄基粉末として、例えば、(高速度)工具鋼等からなる高合金鋼粉末がある。高合金鋼粉末は、例えば、Cr、Mo、V、Co、W、NbおよびTiの一種以上を合計量で、その粉末全体に対して5〜30質量%、10〜25質量%含む。また高合金鋼粉末は、例えば、Cをその粉末全体に対して0.5〜1.7質量%、0.7〜1.5質量%含む。
基材粉末は、単種の粉末(素粉末)に限らず、組成、製法、粒形、粒径(粒度)等の異なる二種以上の粉末の組み合わせでもよい。基材粉末は、その全体が硬質基粒子のみからなる場合に限らず、硬さ、形状、組成等が異なる別な粒子(金属粒子や化合物粒子等)を含んでいてもよい。後者の場合、基材粉末は、例えば、その全体に対して硬質基粒子を70質量%以上、80質量%以上さらには90質量%以上含む。
また、基材粉末は、混合粉末全体に対して、例えば、90質量%以上、95質量%以上さらには97質量%以上を占める。混合粉末は、基材粉末、ナノ粒子粉末および潤滑剤以外に、カーボンブラック粉末や黒鉛粉末等をさらに含んでいてもよい。
(2)硬質基粒子
硬質基粒子の硬さは、例えば、190HV以上、250HV以上、300HV以上さらには350HV以上である。ここでいう硬さは次のようにして求まる。測定対象となる複数の粒子を樹脂に埋め込む。その研磨断面にある各粒子の硬さを、ビッカース硬度計で測定する(荷重:100gf)。この測定を各粒子あたり1回ずつ、無作為に抽出した5粒子について行う。得られた5つの測定値から、最大値と最小値を除いた3つの中間値の算術平均値を求める。その平均値を硬質基粒子の硬さとする。粒子群(または粉末)中に複数種の硬質基粒子が含まれる場合は、種類毎に分別された硬質基粒子群毎に、同様な測定を行う。各種の硬質基粒子について求まった硬さの算出平均値を、粉末中の硬質基粒子の硬さとする。
粒形が「略球状」とは、歪な粒子や異形な粒子等を除く趣旨である。「略球状」か否かは、例えば、所定速度で移動する粒子を高速度カメラで撮影した各粒子画像を解析する粒子形状画像解析装置を用いた測定により得られる円形度(Φ)または平均円形度(Φm)に基づいて判断できる。
先ず、各粒子が「略球状」であるか否かは円形度(Φ)により判断される。各粒形を指標する円形度は、概ね次のようにして求まる。測定対象である粒子を顕微鏡で観察して、その粒子画像(粒子投影像)を撮影する。この粒子画像を画像処理して、二次元的な投影面における粒子の面積(S)と周囲長(L)を計測し、Φ=4πS/Lを算出する。粒子が真球で粒子投影像が真円となる場合はΦ=1となるが、通常、0<Φ<1である。
次に、複数の粒子(粉末中の粒子)が「略球状」であるか否かは平均円形度(Φm)により判断される。平均円形度は、概ね次のようにして求まる。当該粒子群(または粉末)中から無作為に抽出した各粒子について、それぞれの円形度(Φ)を算出する。円形度(Φ)の小さい粒子から数えて、総個数の50%に相当する粒子の円形度(累積50%円形度:Φ50)を平均円形度(Φm)として採用する。測定粒子数は、2000個以上(例えばN=10000)とするとよい。
硬質基粒子の(平均)円形度は、例えば、0.7以上、0.75以上さらには0.8以上であり、このような場合が本明細書でいう「略球状」に相当し得る。なお、ここで述べる「(平均)円形度」の算出方法等は、後述するナノ粒子にも該当し得る。
硬質基粒子の大きさ(単に「粒径(d)」という。)も、例えば、上述した粒子形状画像解析装置を用いた測定により得られる各粒子の円面積相当径(2√(S/π)により特定される。
複数の粒子(粉末)の粒径(dm)も、上述した平均円形度と同様に、粒径(2次元の最大長)の小さい粒子から数えて、総個数の50%に相当する粒子の粒径(累積50%粒径:D50/メジアン径)を平均粒径(dm)として特定される。
硬質基粒子の(平均)粒径は、例えば、1〜300μm、10〜200μmさらには20〜100μmである。なお、ここで述べる「(平均)粒径」の算出方法等は、後述するナノ粒子にも該当し得る。さらに、基材粉末やナノ粒子粉末の平均粒径も同様にして求まる。
基材粉末は、JIS Z 8801に準拠した篩分け(分級)で特定される「粒度」により、その粗さが簡便的に指標される。基材粉末の粒度は、例えば、−500μm、−400μmさらには−300μmである。敢えていうと、その粒度は、+1μm、+10μmさらには+50μmとしてもよい。なお、粒度の表記は次の意味である。「−M1」は、公称目開きがM1(μm)の篩を通過する粒子からなることを意味し、「(+)M2」は、公称目開きがM2(μm)の篩を通過しない粒子からなることを意味する。「−M1/M2」または「−M1〜M2」は、対象粉末が、公称目開きがM1(μm)の篩を通過し、公称目開きがM2(μm)の篩を通過しなかった粒子からなることを意味する。
硬質基粒子(粉末)の製造方法は種々あり得る。ガスアトマイズ法によれば、成分組成を問わず、粒形や粒度分布が安定した粉末が得られる。従って、硬質基粒子からなる基材粉末は、ガスアトマイズ粉であるとよい。
《ナノ粒子粉末》
ナノ粒子粉末は、所定のナノ粒子を含む粉末であれば、化合物粉末、金属粉末等のいずれでもよい。ナノ粒子粉末は、例えば、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、Y、SnO、ZnO等からなる酸化物粉末(セラミックス粉末)である。その代表例は、ナノシリカ粒子からなるナノシリカ粉末である。
ナノ粒子(粉末)の粒径と粒形は、樹脂製の薄片試料に分散させた各粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して得られた画像を解析して求まる。解析手法は上述した場合と同様である。
ナノ粒子の(平均)粒径は、例えば、400nm以下、300nm以下さらには200nm以下である。粒径が過大になると、成形体の保形性も低下し得る。粒径の下限は、敢えていうと、例えば、3nm以上さらには5nm以上である。過小な粒径のナノ粒子は製造が困難である。「略球状」なナノ粒子は、円形度が、例えば、0.7以上、0.8以上さらには0.9以上であるとよい。
ナノ粒子粉末は、基材粉末全体(特に硬質基粒子全体)に対して、例えば、0.005〜1.5質量%、0.015〜1.2質量%さらには0.3〜1質量%含まれる。ナノ粒子粉末が過少では効果が乏しく、ナノ粒子粉末が過多になると成形体(または焼結体)の密度低下や組成変化を招く。
ナノ粒子粉末は、潤滑剤と協働して成形体の保形性を高めるため、質量割合で、潤滑剤全体に対して0.05倍〜5倍さらには0.3倍〜3倍含まれるとよい。
《潤滑剤》
(1)潤滑剤には、種々のものを用いることができる。潤滑剤は、単種の潤滑剤に限らず、複数種の潤滑剤を融合または混合した複合潤滑剤でもよい。潤滑剤は、軟化点が成形温度以下であり、融点が成形温度超であると好ましい。複合潤滑剤は、その全体としての軟化点または融点が、上記の範囲内にあるとよい。
軟化点は、潤滑剤が軟化を開始し始める温度であり、融点は、潤滑剤が完全に溶融する温度である。軟化点は熱応力歪測定したときに、試料が軟化して変形しはじめる温度である。融点は示差熱分析(DTA)による吸熱ピーク温度として特定され得る。但し、厳密な特定が必要でない場合、潤滑剤(原料)毎に規定されている公称値を利用すればよい。
成形温度によるが、潤滑剤(複合潤滑剤を含む)の軟化点は、例えば、40〜110℃さらには50〜100℃である。その融点は、例えば、60〜140℃さらには70〜130℃である。
潤滑剤には、例えば、高級アルコール、脂肪酸アミド、金属石鹸、ワックス等を用いることができる。高級アルコールは、炭素原子数が6以上あるアルコールの総称である。高級アルコールは、通常、分子中のヒドロキシ基(−OH)が一つである1価アルコールであるが、ヒドロキシ基が複数ある多価アルコールでもよい。その分子構造は、直鎖状でも分枝状でもよく、不飽和結合があってもよい。具体的にいうと、高級アルコールは、例えば、ベヘニルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、リグノセリルアルコール等である。
脂肪酸アミドは、分子中に長鎖脂肪酸基とアミド基を有するものである。脂肪酸アミドは、通常、カルボン酸アミド(R−C(=O)−NR/R:水素またはアルキル基)である。その炭素原子数は問わないが、10以上さらには16以上であると好ましい。脂肪酸アミドは、飽和脂肪酸アミドでも不飽和脂肪酸アミドでもよい。具体的にいうと、脂肪酸アミドは、例えば、エルカ酸(モノ)アミド、ステアリン酸(モノ)アミド、オレイン酸(モノ)アミド、エチレンビス・オレイン酸アミド、エチレンビス・ステアリン酸アミド、エチレンビス・エルカ酸アミド等である。
金属石鹸は、長鎖脂肪酸の金属塩である。脂肪酸の鎖長や金属の種類は種々あり、例えば、炭素数は8以上、金属はLi、Ca、Zn等である。その融点は、通常、100〜250℃である。具体的にいうと、金属石鹸は、例えば、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)、ステアリン酸リチウム(LiSt)、ステアリン酸カルシウム(CaSt)、ステアリン酸マグネシウム(MgSt)等である。
潤滑剤は、例えば、高級アルコールまたは脂肪酸アミドに属する潤滑剤群から選択された一種以上からなるとよい。この際、軟化点や融点が異なる複数種の潤滑剤を混合または融合した複合潤滑剤を用いると、軟化点や融点の調整が容易となる。例えば、高級アルコールと脂肪酸アミドを用いれば、軟化点が50〜90℃、融点が70〜110℃である潤滑剤を調製することもできる。
潤滑剤(合計量)は、基材粉末全体(特に硬質基粒子全体)に対して、例えば、0.15〜2質量%さらには0.25〜1.3質量%さらには0.35〜1質量%含まれる。潤滑剤が過少では、成形体の保形性が低下し得る。潤滑剤が過多になると、成形体や焼結体の密度が低下し得る。
(2)潤滑剤は、基材粉末(さらにはナノ粒子粉末)と種々の方法で混合される。単純混合(例えば回転混合)でもよいが、溶融混合を行うと、潤滑剤が各硬質基粒子の表面に略均一的に付着し易くなる。従って、基材粉末と潤滑剤が溶融混合された混合粉末を用いることにより、成形体の保形性の向上が図られる。なお、溶融混合は、(完全に)溶融させた潤滑剤と基材粉末等とを混合する方法である。
《温間成形》
温間成形は、室温より高い成形温度中で粉末を加圧成形してなされる。成形温度、成形圧力等は、潤滑剤や基材粉末の特性、成形体の要求仕様等を考慮して、適宜選択される。
成形温度は、潤滑剤の軟化点以上であると共に、潤滑剤が溶融しない温度(つまり融点)未満であると好ましい。複合潤滑剤を用いる場合、その融点は全体としての融点でも、その原料となる潤滑剤中の最低融点でもよい。具体的にいうと、成形温度は、例えば、40〜180℃、50〜130℃さらには55〜120℃である。成形温度は、成形型(金型)の温度、特にそのキャビティ内壁面近傍の温度により特定される。なお、成形粉末は、成形型への充填前に予熱されてもよい。その予熱温度は軟化点未満でもよい。
成形圧力は、例えば、350〜1250MPaさらには500〜1000MPaである。成形圧力が過小では成形体の保形性が低下し得る。成形圧力が過大では成形性(生産性や型寿命等)が低下し得る。
なお、成形粉末中の潤滑剤は、ナノ粒子と協働して硬質基粒子のバインダーとして機能するが、当然、いわゆる内部潤滑剤としても機能する。このため本発明の成形粉末を用いれば、金型潤滑温間成形法(特許3309970号公報等を参照)等に依るまでもなく、高圧成形が可能となる。但し、金型潤滑温間成形法を併用して温間成形を行ってもよい。
《焼結》
成形体を焼結する場合、例えば、窒素雰囲気等の酸化防止雰囲気中で、1050〜1250℃、1〜120分間、炉内加熱や高周波加熱されるとよい。焼結体は、さらに、焼鈍、焼準、時効等の熱処理が施されてもよい。
《用途》
本発明に係る成形体や焼結体は、その形態や用途を問わない。焼結体は、例えば、切削工具、金型、自動車部品等に用いられる。
成形粉末(温間成形用粉末)や成形条件を変更した種々の試料(成形体)を作成し、それらの保形性を評価した。これらの具体例を挙げつつ、本発明を以下にさらに詳しく説明する。
《試料の製造》
(1)原料
基材粉末として、表1に示す鉄基粉末を用意した。いずれもガスアトマイズ粉であり、各粒子は略球状をしている。表1に示した円形度(Φm)と粒径(D50)は、それぞれ、累積50%円形度とメジアン径である。いずれも、粒子形状画像解析装置(株式会社セイシン企業製:PITA-03)を用いて、既述した方法に沿って測定した。
また表1に示した硬さは、電動ビッカース硬度計(株式会社明石製作所製:AVK−A)により測定したビッカース硬さである。硬さの測定も、既述した方法に沿って行った。
ナノ粒子粉末としては、表2に示す酸化物粉末を用意した。表2に示した粒径と形状は、メーカーのカタログから抜粋した。それらの内容は、例えば、FE−TEM(日本電子株式会社製 電解放出形透過電子顕微鏡 JEM-2010)を用いて、既述した方法に沿って特定した場合とほぼ同様である。
潤滑剤として、高級アルコールに属するベヘニルアルコール(花王株式会社製カルコール220-80/融点:70℃)と、脂肪酸アミドに属するエルカ酸モノアミド(日油株式会社製アルフローP10/融点:83℃)およびステアリン酸モノアミド(日油株式会社製アルフローS-10/融点:102℃)と、金属石鹸に属するステアリン酸亜鉛(日油株式会社製ZnSt-T/融点:116〜124℃/「ZnSt」という。)とを用意した。
質量割合で、ベヘニルアルコール:エルカ酸モノアミド:ステアリン酸モノアミドを1:1:3で混合した複合潤滑剤を調製した。この複合潤滑剤を「TCRL」という。TCRLが完全に溶融する温度(融点)は90〜94℃であった。
熱応力歪測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製)により測定した軟化点は、ZnSt:97℃、TCRL:60℃であった。なお、軟化点は、一定の荷重を印加した試料の温度を上昇させている過程で、試料が熱膨張から収縮に転じたときの温度とした。
(2)成形粉末
上述した各原料を表3に示すように配合および混合して、多数の成形粉末を調製した。表1に示した各添加量は、基材粉末全体(100質量%)に対する質量割合(質量部)である。具体的にいうと、各成形粉末は次のように調製した。
試料1〜4を除き、秤量した基材粉末と潤滑剤(TCRLまたはZnSt)とを溶融混合する。溶融混合は、試料毎に基材粉末と潤滑剤を乾燥機で140℃まで加熱して、潤滑剤を完全に溶融させる。その後、それらを乾燥機から取り出し、大気中で撹拌しながら冷却した。
試料5および24を除き、基材粉末と潤滑剤の混合物に、さらにナノ粒子粉末を添加して回転混合した。この回転混合はボールミル式回転混合機を用いて15分間行った。
(3)温間成形
各試料の成形粉末を用いて温間成形を行った。試料1〜4は、潤滑剤を含まないため、金型潤滑温間成形法により行った。それ以外の試料は金型潤滑せずに、そのまま加圧成形した。各試料毎の成形温度(金型温度)は表1にまとめて示した。成形圧力は、いずれも588MPaとした。なお、金型潤滑温間成形法は、特許3309970号公報の記載に基づいて、ZnSt(金属石鹸)を金型壁面に塗布して行った。
《観察》
(1)粉末粒子
基材粉末(SPMR8/試料3の成形粉末)、それに潤滑剤を溶融混合した後の粉末(SPMR8+TCRL/試料5の成形粉末)、さらにナノ粒子粉末を回転混合した後の粉末(SPMR8+TCRL+SiO−1/試料15の成形粉末)について、それぞれの粉末粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。それぞれのSEM像を図1に示した。
(2)保形性
各試料に係る円柱状(約φ14mm×10mm)の成形体の外観を目視により評価した。その結果を表3に併せて示した。表3に示した評価指標は次の通りである。なお、ここでいう「ラミネーション」は成形体の側面に層状のクラックが生じた状態をいう。
○:ラミネーション、カケ等がなかったとき
△:ラミネーションが生じていたとき
×:金型からの取出しや運搬を行う際に、成形体にカケや崩壊が生じたとき
それらの一例として、試料3(×)、試料5(△)、試料10(○)に係る成形体の外観写真を図2にまとめて示した。
(3)破断面
試料5と試料10に係る角柱状(約10mm×5mm×55mm)の成形体を、長手方向の略中央でハンマーにより分断した。それらの各破断面をSEMで観察した写真を図3にまとめて示した。
(4)粉体層のせん断応力と密度
粉体層せん断力測定装置(株式会社ナノシーズ製NS-S-800)を用いて、試料5と試料10に係る成形粉末からなる粉体層のせん断応力と密度を測定した。なお、粉体層は、サンプルホルダーに所定量の粉末を充填した状態となっている。
各測定は、粉体層を60℃(成形温度に相当)に加熱して行った。せん断応力は、粉体層に所定の押し込み荷重(設定値:30〜150N/垂直応力:4.2〜21.2N/cm)をかけた状態で、粉体層下部を一定速度で移動させるときのせん断力を計測した。密度は、粉体層に押し込み荷重:150Nを印加して測定した。粉体層のせん断応力と垂直応力の関係を図4に、粉体層の密度を図5にそれぞれ示した。
《評価》
(1)粉末粒子
図1から明らかなように、先ず、試料3に係る基材粉末を構成する基材粒子(硬質基粒子)は、略球状であることが確認された。試料5に係る粉末粒子の表面には、潤滑剤が溶融付着している様子が観察された。試料15に係る粉末粒子では、ナノ粒子が潤滑剤と一体となって表面全体を略均一的に被覆していることがわかった。
(2)保形性
表1に示した試料1〜4から次のことがわかる。試料1のように、基材粉末が軟質な純鉄粉である場合、潤滑剤およびナノ粒子粉末が無くても保形性に優れる成形体が得られた。しかし、試料2および試料3のように、190HV以上の硬質な基材粉末だけでは、保形性が確保された成形体は得られなかった。なお、試料4からもわかるように、基材粉末にナノ粒子粉末を添加混合しただけの成形粉末を用いても、同様に保形性は改善されなかった。
試料5からわかるように、硬質な基材粉末に潤滑剤を加えた成形粉末を用いた場合、多少の改善はあるが、やはり保形性は確保されなかった。また、試料6からわかるように、硬質な基材粉末に潤滑剤およびナノ粒子粉末を加えた成形粉末を用いても、常温(20℃)で加圧成形すると、やはり保形性は確保されなかった。
試料7〜16から次のことがわかる。試料7のように潤滑剤が過少な場合を除き、硬質な基材粉末に潤滑剤とナノ粒子粉末を混在させた成形粉末を用いて、潤滑剤の軟化点以上(融点未満)で温間成形すると、保形性に優れた成形体が得られた。また試料13〜16からわかるように、その傾向は、ナノ粒子粉末の添加量が少なくても多くても同様であった。
試料15、17〜19(特に試料19)からわかるように、成形粉末中に混在させるナノ粒子が過大(粒径:500nm)になると、保形性が低下した。
試料15、20〜23(特に試料22、23)からわかるように、成形粉末中に混在させるナノ粒子が歪な形状(非球状)であっても、保形性が低下した。
試料24〜26(特に試料25)からわかるように、潤滑剤の種類を変更しても、ナノ粒子粉末を含む成形粉末を潤滑剤の軟化点以上(融点未満)で温間成形すれば、保形性に優れた成形体が得られた。
(3)破断面
図3に示した破断面から次のことが明らとなった。先ず、保形性の優劣とは関係なく、いずれの試料に係る基材粒子(硬質基粒子)にも、塑性変形は殆ど見られなかった。従って、試料10の優れた保形性は、基材粒子の絡み合い(アンカー効果)ではないといえる。
試料5、10は、潤滑剤の添加量が同じであるが、基材粒子表面における潤滑剤の付着面積(引き延ばされ具合)は、試料10の方が試料5の成形体よりも遙かに大きかった(矢印で示した濃色部を参照)。また試料10では、その潤滑剤の付着部分に、隣接していた基材粒子同士の結合跡(○で示した領域を参照)が多く認められた。これらのことから、試料10の成形体では、潤滑剤とナノ粒子粉末が協働的(相乗的)に作用して、硬質基粒子間の広い領域でバインダーとして介在することにより、優れた保形性が発揮されるようになったと考えられる。
(4)粉体層のせん断応力と密度
図4に示す垂直応力−せん断応力線図の傾きは、基材粒子間の流動性を指標し、その傾きが小さいほど、粒子間の流動性が高いことを意味する。図4から明らかなように、試料10は試料5よりも流動性が高いことがわかった。
図5から明らかなように、試料10は試料5より粉体層の密度が大きかった。このことから、成形初期の低荷重下で、試料10は試料5よりも粉末粒子の再配列が起こり易かったと考えられる。
図3〜5に示したことからもわかるように、本発明に係る成形体の保形性が向上した理由は次のように推察される。潤滑剤とナノ粒子が協働的に作用して、基材粒子の流動性が高められ、成形初期に基材粒子の再配列が促進される。この再配列により、潤滑剤がより多く引き伸ばされるようになり、基材粒子間の結合面積が増加する。こうして、成形体の保形性が向上したと推察される。

Claims (8)

  1. 基材粉末と潤滑剤とナノ粒子粉末の混合粉末からなる温間成形用粉末であって、
    該基材粉末は、硬さが190HV以上で略球状な硬質基粒子を含み、
    該潤滑剤は、該基材粉末全体に対して0.15〜2質量%含まれ、
    該ナノ粒子粉末は、粒径が400nm以下で略球状なナノ粒子を含むと共に該基材粉末全体に対して0.005〜1.5質量%含まれる温間成形用粉末。
  2. 前記基材粉末は、鉄基粉末である請求項1に記載の温間成形用粉末。
  3. 前記ナノ粒子は、ナノシリカ粒子である請求項1または2に記載の温間成形用粉末。
  4. 前記潤滑剤は、高級アルコールまたは脂肪酸アミドに属する潤滑剤群から選択された一種以上からなる請求項1〜3のいずれかに記載の温間成形用粉末。
  5. 前記基材粉末と前記潤滑剤は溶融混合されている請求項1〜4のいずれかに記載の温間成形用粉末。
  6. 基材粉末と潤滑剤とナノ粒子粉末とを混合して、請求項1〜5のいずれかに記載の温間成形用粉末を得る温間成形用粉末の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の温間成形用粉末を、所定の成形温度に加熱された成形型内で加圧成形して成形体を得る温間成形方法。
  8. 前記成形温度は、前記潤滑剤の軟化点以上かつ融点未満である請求項7に記載の温間成形方法。
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