本発明の電子写真用トナーは、外添剤として、トナー粒子の帯電極性と異なる帯電極性を有し、また、粒径と形状の異なる2種のポリマービーズが用いられている点に大きな特徴を有するものである。
トナー粒子と逆帯電のポリマービーズを外添することで、マイクロキャリアとして働き、トナーの帯電性を向上させ、画質を向上させることができる。中でも異形の大粒径ポリマービーズは、トナー表面に均一に分散しやすく、印刷初期の画像濃度が向上するが、異形であるが故に流動性が低くトナー粒子表面に埋没しやすいため印刷末期の画像濃度が低下しやすい。一方、球状の小粒径ポリマービーズは自己凝集しやすく、流動性が良すぎるために、トナー粒子表面に均一に分散できず、印刷初期の画像濃度を向上させにくいが、耐刷後は、シェアにより、トナー粒子表面に均一化され、画像濃度を向上させることができる。そこで、この両者を併用することで、印刷初期の画像濃度は大粒径ポリマービーズにより、印刷末期の画像濃度は小粒径ポリマービーズにより、それぞれ向上させることができる。さらに、本発明では、異形の大粒径ポリマービーズが球状の小粒径ポリマービーズの凝集をほぐしつつ、トナー粒子表面に分散することで、トナー粒子との接触面が増加し、帯電付与能力が向上し、大粒径ポリマービーズの流動性も向上するため、大粒径ポリマービーズによる印刷末期の画像濃度の低下を抑制することができ、耐刷後の画像濃度がより一層向上させることができる。
本発明の電子写真用トナーは、トナー粒子及び外添剤を含有する。
本発明において、トナー粒子は、結着樹脂及び着色剤を含有することが好ましい。
結着樹脂としては、特に限定されず、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、これらの樹脂を2種以上含む複合樹脂等が挙げられるが、本発明では、低温定着性の観点から、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂は、非晶質であっても結晶性であってもよく、また、結着樹脂は、複合樹脂の一部として、ポリエステル樹脂を含有していてもよい。
従って、本発明において好適な、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂としては、非晶質ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂、非晶質複合樹脂と結晶性ポリエステル樹脂、非晶質複合樹脂と結晶性複合樹脂等が挙げられるが、これらの中では、非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂の組み合わせが好ましい。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
非晶質ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
アルコール成分としては、例えば、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上20以下、より好ましくは炭素数2以上15以下の脂肪族ジオールや、式(I):
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等が挙げられる。脂肪族ジオールとして、具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
アルコール成分としては、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
カルボン酸成分において、2価のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数3以上30以下、好ましくは炭素数3以上20以下、より好ましくは炭素数3以上10以下のジカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。ジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
カルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは35モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
3価以上のカルボン酸系化合物としては、例えば、炭素数4以上20以下、好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数7以上15以下、さらに好ましくは炭素数8以上12以下、さらに好ましくは炭素数9以上10以下の3価以上のカルボン酸、それらの無水物、又はアルキル基の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)、又はそれらの酸無水物等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、耐久性の観点から、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下である。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、非晶質ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
非晶質ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
非晶質ポリエステル樹脂の軟化点は、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、耐熱保存性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
非晶質ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、さらに好ましくは25mgKOH/g以下である。
結晶性複合樹脂としては、結晶性ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂とを有する複合樹脂が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂としては、脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物が好ましい。
脂肪族ジオールの炭素数は、低温定着性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上であり、そして、現像安定性の観点から、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下である。
炭素数2以上9以下の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール等が挙げられる。
また、炭素数2以上9以下の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有有するα,ω−脂肪族ジオールが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることがより好ましい。
アルコール成分には、脂肪族ジオール以外のアルコールが含まれていてもよいが、脂肪族ジオール、好ましくは炭素数2以上9以下の脂肪族ジオールの含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
結晶性ポリエステルのカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸系化合物を含有していることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられるが、これらの中では、テレフタル酸が好ましい。なお、本発明において、カルボン酸系化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数が1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、これらの酸の無水物及びそれらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、複合樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.70以上であり、そして、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下である。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーの重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、130℃以上230℃以下程度の温度で行うことができる。
スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合体である。
結晶性複合樹脂におけるスチレン化合物の含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、転写性及び耐久性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
スチレン系樹脂の原料モノマーには、スチレン化合物以外の原料モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
本発明において、複合樹脂は、粉砕性の観点から、ポリエステル樹脂の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを介してポリエステル樹脂とスチレン系樹脂が化学結合した樹脂が好ましい。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、ポリエステル樹脂の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステル樹脂の原料モノマーである。
また、両反応性モノマーは、アルキル基の炭素数が6以下であるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれた1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは、エステル交換に対する反応性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキル基は、水酸基等の置換基を有していてもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。なお、「(イソ又はターシャリー)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。
本発明において、アクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるアクリル酸アルキルエステル、より好ましくはアクリル酸ブチルであり、メタクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるメタクリル酸アルキルエステル、より好ましくはメタクリル酸ブチルである。
両反応性モノマーの使用量は、結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分の合計100モルに対して、スチレン系樹脂とポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。
また、両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、スチレン系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
両反応性モノマーを用いて得られる複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) 結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加することが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応すると共に結晶性ポリエステル樹脂とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー等を反応系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
(iii) 結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを、並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上の結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する際には、ポリエステル樹脂の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂におけるスチレン系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の質量比(スチレン系樹脂/結晶性ポリエステル樹脂)は、耐久性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは7/93以上、さらに好ましくは10/90以上であり、そして、耐熱保存性の観点から、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに好ましくは30/70以下である。なお、上記の計算において、結晶性ポリエステル樹脂の質量は、用いられる結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂の量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計量であり、重合開始剤の量は含まれない。
結晶性複合樹脂の融点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
非晶質ポリエステル樹脂と結晶性複合樹脂の質量比(非晶質ポリエステル樹脂/結晶性複合樹脂)は、耐久性の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上、さらに好ましくは90/10以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは99/1以下、より好ましくは98/2以下である。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料、磁性体等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
本発明のトナー粒子には、結着樹脂及び着色剤以外に、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含まれていてもよい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」、「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。荷電制御剤が樹脂等の高分子の場合は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
トナー粒子は、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
本発明において、外添剤は、トナー粒子の帯電極性と異なる帯電極性を有する、ポリマービーズL及びポリマービーズSを含有する。即ち、トナー粒子が正帯電性の場合は、負帯電性のポリマービーズL、Sが、トナー粒子が負帯電性の場合は、正帯電性のポリマービーズL、Sが用いられる。
正帯電性のポリマービーズとしては、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン(St)/メチルメタクリレート(MMA)共重合体、St/ブチルアクリレート(BA)共重合体、MMA/BA共重合体等が挙げられる。
負帯電性のポリマービーズとしては、ポリテトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデンフルオロライド、フルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
ポリマービーズL、Sの素材は、同一であっても、異なっていてもよいが、同一の樹脂であることが好ましい。
ポリマービーズLの個数平均粒径はポリマービーズSの個数平均粒径より大きい。
ポリマービーズLとポリマービーズSの個数平均粒径の比(ポリマービーズL/ポリマービーズS)は、画像濃度の安定化の観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
ポリマービーズLの個数平均粒径は、初期画像濃度の観点から、好ましくは300nm以上、より好ましくは350nm以上、さらに好ましくは400nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下、さらに好ましくは700nm以下である。
ポリマービーズSの個数平均粒径は、印刷末期の画像濃度の観点から、好ましくは100nm以上、より好ましくは130nm以上、さらに好ましくは150nm以上であり、そして、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。
また、ポリマービーズLとポリマービーズSは、形状が異なる。本発明では、形状の指標として、形状指数を用いる。ここで、形状指数とは、個数平均粒径とBET比表面積から算出した粒径の比(個数平均粒径/BET比表面積から算出した粒径)から算出される値である。
ポリマービーズLの形状指数は、初期画像濃度の観点から、1.3以上であり、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、流動性の観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。
ポリマービーズSの形状指数は、印刷末期の画像濃度の観点から、1.3未満であり、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下であり、そして、帯電性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、さらに好ましくは0.7以上である。
ポリマービーズLとポリマービーズSの帯電量の比(ポリマービーズL/ポリマービーズS)は、初期画像濃度の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、そして、流動性の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
ポリマービーズLの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.04質量部以上、より好ましくは0.08質量部以上であり、そして、トナー粒子からの遊離抑制の観点から、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下である。
ポリマービーズSの含有量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.07質量部以上であり、そして、トナー粒子からの遊離抑制の観点から、好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下である。
また、ポリマービーズLとポリマービーズSの質量比(ポリマービーズL/ポリマービーズS)は、初期画像濃度の観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、さらに好ましくは40/60以上であり、そして、印刷末期の画像濃度の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、さらに好ましくは80/20以下である。
本発明のトナーには、ポリマービーズL、S以外の外添剤が含まれていてもよく、流動性及び転写性の観点から、さらに、無機粒子が含まれていることが好ましい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
無機粒子の個数平均粒径は、トナーの流動性及び転写性の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
無機粒子の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
トナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサー等の混合機を用いることができる。
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔トナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマン・コールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマン・コールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
〔BET比表面積から算出したポリマービーズの粒径〕
(1) 下記条件で、窒素吸着法により粒子のBET比表面積を測定する。
・測定装置:比表面積測定装置「Micromeritics FlowSorb III」((株)島津製作所製)
・サンプル量:0.04〜0.08g
・脱気条件:40℃、10分間
・吸着ガス:窒素ガス
(2) BET比表面積を下記式にあてはめ、ポリマービーズの粒径を算出する。
d=6000/(BET比表面積(m2/g)×密度(g/cm3))
〔ポリマービーズの形状指数〕
下記式より算出される、粒径A(個数平均粒径)と粒径B(BET比表面積から算出した粒径)の比を、形状指数とする。
形状指数=粒径A/粒径B
〔ポリマービーズの帯電量〕
ポリマービーズを、正帯電極性トナー用標準キャリア(P-01)及び負帯電極性トナー用標準キャリア(N-01)(日本画像学会提供)と摩擦帯電させた際の帯電量をブローオフ式帯電量測定装置を用いて測定し、P-01での測定結果とN-01での測定結果を足した値を帯電量とする。
樹脂製造例1
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させて、非晶質ポリエステル樹脂(樹脂A1)た。得られた樹脂の物性を表1に示す。
樹脂製造例2
表2に示す結晶性ポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、160℃まで加熱し、6時間反応させた。
その後、表2に示すスチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー、及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、8.3kPaにて1時間保持した。さらに、200℃まで8時間かけて昇温、8.3kPaにて2時間反応させて、結晶性複合樹脂(樹脂C1)を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
実施例1〜4及び比較例1、2
結着樹脂として樹脂A1 97質量部及び樹脂C1 3質量部と、正帯電性荷電制御剤「ボントロンN-04」(オリヱント化学工業(株)製)3.0質量部、正帯電性荷電制御樹脂「FCA-201-PS」(藤倉化成(株)製)6.0質量部、着色剤「REGAL 330R」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製)6.0質量部、及び離型剤「SP-105」((株)加藤洋行製、フィッシャートロプシュワックス、融点:105℃)1.0質量部をヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
同方向回転二軸押出機「PCM-30」((株)池貝製、軸の直径 2.9cm、軸の断面積 7.06cm2)を使用した。運転条件は、バレル設定温度 110℃、軸回転数 200r/min(軸の回転の周速 0.30m/sec)、混合物供給速度 10kg/h(軸の単位断面積あたりの混合物供給量 1.42kg/h・cm2)であった。
得られた樹脂混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン(株)製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積中位粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、DS2型気流分級機(衝突板式、日本ニューマチック(株)製)を用いて体積中位粒径が7.0μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕した。得られた微粉砕物を、DSX2型気流分級機(日本ニューマチック(株)製)を用いて体積中位粒径が7.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、正帯電性のトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部と、外添剤として表4に示すポリマービーズと、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル(株)製、平均粒子径:16nm)0.5質量部及び疎水性シリカ「TG-820F」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、個数平均粒径:8nm)1.0質量部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製)を用いて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
使用したポリマービーズの詳細を表3に示す。
試験例1〔初期画像濃度〕
ブラザー工業(株)製のHL-2040用トナーカートリッジにトナーを実装し、温度20℃、湿度50%の条件下で24時間放置した。その後、プリンター「HL-2040」(ブラザー工業(株)製)にて印字率5%の画像を200枚印字した後、黒ベタ画像を印刷し、用紙上部から3cmの部分の画像濃度を画像濃度測定器「GRETAG SPM50」(Gretag社製)を用いて測定した。結果を表4に示す。
試験例2〔印刷末期の画像濃度〕
初期画像濃度測定後、プリンター「HL-2040」(ブラザー工業(株)製)にて印字率5%の画像を1300枚印字した後、黒ベタ画像を印刷し、用紙上部から3cmの部分の画像濃度を画像濃度測定器「GRETAG SPM50」(Gretag社製)を用いて測定した。結果を表4に示す。
以上の結果より、実施例1〜4のトナーは、初期画像濃度と印刷末期の画像濃度のいずれにおいても優れていることが分かる。
これに対し、大粒径のポリマービーズのみを用いた比較例1では印刷末期の画像濃度が低く、小粒径のポリマービーズのみを用いた比較例2では初期の画像濃度が低くなっている。また、比較例2では、小粒径のポリマービーズにより、印刷末期の画像濃度は良好であるが、実施例1〜4の印刷末期の画像濃度は、大粒径のポリマービーズとの併用による相乗効果により、比較例2を上回る結果となっていることが分かる。