JP2019101109A - トナー用結着樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性、耐久性、保存性、及び環境安定性に優れるトナー用結着樹脂組成物、及び該結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーに関すること。【解決手段】アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A’を含む非晶質ポリエステル系樹脂Aと結晶性ポリエステル樹脂Cを含むトナー用結着樹脂組成物であって、非晶質ポリエステル樹脂A’のカルボン酸成分が、特定構造を有する脂環式多価カルボン酸で、炭素数1以上3以下のアルキルエステル、及びその無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂環式多価カルボン酸系化合物を、10モル%以上40モル%以下含有し、非晶質ポリエステル系樹脂Aの軟化点が120℃以上165℃以下であり、結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が、トナー用結着樹脂組成物中、1質量%以上30質量%以下である、トナー用結着樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物、及び該結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーに関する。
近年、プリンターやコピー機の高速化及び省エネ化に伴い、低温定着性に優れたトナーが必要とされている。結着樹脂の軟化点を下げることによって低温定着化するものの、耐ホットオフセット性や保存性が低下してしまう。
そこで、近年では従来の非晶質ポリエステルに加え、シャープメルト性を有する結晶性ポリエステルを併用することにより、耐ホットオフセット性や保存性を低下させることなく低温定着性を改善することが見出されている(例えば、特許文献1〜3等参照)。
特開2016−186583公報 特開2000−305320号公報 特開2007−322831公報
しかしながら、SP値が大きく親水的な結晶性ポリエステルは非晶質ポリエステルと相溶してしまいトナーのガラス転移温度が低下し保存性悪化を引き起こす。そのためSP値が小さい疎水的な結晶性ポリエステルを使用することで相溶性を低下させTg低下抑制する手法がとられているが、相溶性が低いため分散径が大きくなりトナー表面への露出による耐久性の悪化を引き起こす。
そのため、疎水性結晶性ポリエステルをトナー中に微分散させる手法が必要となっている。特許文献1〜3に記載の結着樹脂では、脂環構造を導入したポリエステルが開示されているが、低温定着性や、耐久性、保存性、環境安定性において、まだ改善の余地がある。
本発明は、低温定着性、耐久性、保存性、及び環境安定性に優れるトナー用結着樹脂組成物、及び該結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーに関する。
本発明は、
〔1〕 アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A’を含む非晶質ポリエステル系樹脂Aと結晶性ポリエステル樹脂Cを含むトナー用結着樹脂組成物であって、
前記非晶質ポリエステル樹脂A’のカルボン酸成分が、式(I):
Figure 2019101109
(式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の炭化水素基、又はカルボキシ基であり、少なくともR1〜R6の少なくとも3個はカルボキシ基であり、R7〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下の炭化水素基である)
で表される脂環式多価カルボン酸、その炭素数1以上3以下のアルキルエステル、及びその無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂環式多価カルボン酸系化合物を、10モル%以上40モル%以下含有し、
前記非晶質ポリエステル系樹脂Aの軟化点が120℃以上165℃以下であり、
前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が、トナー用結着樹脂組成物中、1質量%以上30質量%以下である、
トナー用結着樹脂組成物、
〔2〕 前記〔1〕において規定された非晶質ポリエステル系樹脂Aを含む、トナー用結着樹脂組成物、並びに
〔3〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用粉砕トナー
に関する。
本発明のトナー用結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーは、低温定着性、耐久性、保存性、及び環境安定性において優れた効果を奏するものである。
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、非晶質ポリエステル系樹脂Aと結晶性ポリエステル樹脂Cを含み、非晶質ポリエステル系樹脂Aのカルボン酸成分が、脂環式多価カルボン酸系化合物を含有するものである。
本発明では、非晶質ポリエステル樹脂の架橋部位に着目し、検討したところ、従来架橋剤として汎用されている芳香族系多価カルボン酸は、疎水性が低く、また、剛直構造なため架橋部位近辺まで結晶性ポリエステル樹脂が近接することができずに分散を困難にしているという欠点を有することを見出した。そこで、非晶質ポリエステル樹脂に脂環式多価カルボン酸を用いて架橋構造を導入することにより、非晶質ポリエステル樹脂の疎水性が上がり架橋部位の相溶性が上昇する、また芳香環に比べ脂環は柔軟であるため疎水性の結晶性ポリエステル樹脂が架橋部位まで近接しやすい。そのため、結晶性ポリエステルの微分散が可能となり、トナー中での表面露出を抑制し、耐久性が向上するものと推察される。また、芳香族カルボン酸に比べ脂環式カルボン酸は酸解離定数が大きく保存性や高温高湿化での安定性に優れている。そのため脂環式多価カルボン酸を用いることで保存性及び環境安定性に優れるトナーを得ることができる。
本発明のトナー用結着樹脂組成物において、非晶質ポリエステル系樹脂Aは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A’を含む。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
本発明における脂環式多価カルボン酸系化合物は、式(I):
Figure 2019101109
(式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の炭化水素基、又はカルボキシ基であり、少なくともR1〜R6の少なくとも3個はカルボキシ基であり、R7〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下の炭化水素基である)
で表される脂環式多価カルボン酸、その炭素数1以上3以下のアルキルエステル、及びその無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種である。
式(I)において、炭素数1以上12以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、等が挙げられ、これらの中では、炭素数1以上6以下の炭化水素基が好ましく、炭素数1以上3以下の炭化水素基がより好ましい。
式(I)で表される脂環式多価カルボン酸は、R1〜R6の3個がカルボキシ基である3価のトリカルボン酸であることが好ましく、脂環式多価カルボン酸系化合物の好適例としては、シキロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,3,5-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,3-トリカルボン酸、これらの酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステル及び無水物等が挙げられ、これらの中では、シキロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸又はその無水物が好ましく、シキロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物がより好ましい。
脂環式多価カルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、10モル%以上であり、好ましくは13モル%以上、より好ましくは15モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、40モル%以下であり、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
脂環式多価カルボン酸系化合物以外のカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸系化合物、脂肪族ジカルボン酸系化合物等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステル及び無水物等が挙げられる。これらの中では、低温定着性の観点から、テレフタル酸又はイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、保存性の観点から、好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されていてもよいコハク酸、アジピン酸、これらの酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステル及び無水物等が挙げられるが、低温定着性の観点から、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を含有していることが好ましい。当該コハク酸としては、好ましくは炭素数6以上14以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸であり、より好ましくは炭素数8以上12以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸である。具体的には、オクチルコハク酸やドデセニルコハク酸(テトラプロペニルコハク酸)等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは12モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは18モル%以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下である。
アルコール成分としては、低温定着性の観点から、式(II):
Figure 2019101109
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステル樹脂A’におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
非晶質ポリエステル樹脂A’は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、錫化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明において、非晶質ポリエステル系樹脂Aは、前記非晶質ポリエステル樹脂A’とスチレン系樹脂等の他の樹脂とを含有する複合樹脂であってもよい。
スチレン系樹脂は、少なくとも、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン化合物」という)を含む原料モノマーの付加重合体である。
スチレン化合物、好ましくはスチレンの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点及び湿式粉砕性を向上させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
また、スチレン系樹脂は、原料モノマーとしてアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含んでもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
スチレン系樹脂の原料モノマーとしての(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、そして、保存安定性の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
アルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、トナーの低温定着性を向上させる観点及び湿式粉砕性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性を向上させて保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
スチレン系樹脂の原料モノマーには、スチレン化合物及びアルキル基の炭素数が7以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の原料モノマー、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が含まれていてもよい。
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
本発明において、複合樹脂は、トナー粒子の分散安定性及び粉砕性の観点から、非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマー及びスチレン系樹脂の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを介して非晶質ポリエステル樹脂A’とスチレン系樹脂が化学結合した樹脂が好ましい。
両反応性モノマーは、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシ基、より好ましくはカルボキシ基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がより好ましく、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種がさらに好ましい。ここで、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸系化合物は、非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーである。
また、両反応性モノマーは、アルキル基の炭素数が6以下であるアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれた1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは、エステル交換に対する反応性の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。アルキル基は、水酸基等の置換基を有していてもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。なお、「(イソ又はターシャリー)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。
本発明において、アクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるアクリル酸アルキルエステル、より好ましくはアクリル酸ブチルであり、メタクリル酸エステルは、好ましくはアルキル基の炭素数が2以上6以下であるメタクリル酸アルキルエステル、より好ましくはメタクリル酸ブチルである。
両反応性モノマーの使用量は、非晶質ポリエステル樹脂A’のアルコール成分の合計100モルに対して、スチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂A’との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30モル以下、より好ましくは20モル以下、さらに好ましくは10モル以下である。また、両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計100質量部に対して、スチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂A’との分散性を高め、トナーの耐久性を向上させる観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。ここで、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計に重合開始剤は含める。
両反応性モノマーを用いて得られる複合樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの耐久性を向上させる観点、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) 非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、重縮合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加することが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応すると共に非晶質ポリエステル樹脂A’とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上の非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマー等を反応系に添加し、工程(A)の重縮合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、工程(A)の重縮合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、重縮合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、重縮合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで重縮合反応の進行を調節できる。
(iii) 非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーによる重縮合反応の工程(A)とスチレン系樹脂の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して進行する条件で反応を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを並行して行い、反応温度を上昇させ、重縮合反応に適した温度条件下で、必要に応じて架橋剤となる3価以上の非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の重縮合反応をさらに行うことが好ましい。その際、重縮合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して重縮合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に重縮合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、重縮合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して進行する際には、非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂におけるスチレン系樹脂と非晶質ポリエステル樹脂A’の質量比(スチレン系樹脂/非晶質ポリエステル樹脂A’)は、トナー粒子の粉砕性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは7/93以上、さらに好ましくは10/90以上であり、そして、トナー粒子の分散安定性の観点から、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、さらに好ましくは35/65以下、さらに好ましくは30/70以下、さらに好ましくは25/75以下である。なお、上記の計算において、非晶質ポリエステル樹脂A’の質量は、用いられる非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、非晶質ポリエステル樹脂A’の原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂の質量は、スチレン系樹脂の原料モノマーの合計量である。
非晶質ポリエステル系樹脂Aの軟化点は、耐久性の観点から、120℃以上であり、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、165℃以下であり、好ましくは155℃以下、より好ましくは150℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Aのガラス転移温度は、保存安定性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Aの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは7mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、環境安定性の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは15mgKOH/g以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Aのメチルエチルケトン不溶分は、耐久性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
本発明の結着樹脂組成物は、低温定着性の観点から、前記脂環式多価カルボン酸系化合物を用いた非晶質ポリエステル系樹脂Aよりも、軟化点が15℃以上低い非晶質ポリエステル系樹脂Bを含むことが好ましい。
非晶質ポリエステル系樹脂Bとしては、非晶質ポリエステル樹脂B’、非晶質ポリエステル樹脂B’とスチレン系樹脂等の他の樹脂とを含有する複合樹脂等が挙げられる。
非晶質ポリエステル樹脂B’のアルコール成分としては、低温定着性の観点から、非晶質ポリエステル系樹脂A’のアルコール成分と同様に、前記式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。
式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール等が挙げられる。
非晶質ポリエステル樹脂B’のカルボン酸成分としては、非晶質ポリエステル樹脂A’のカルボン酸成分と同様の、芳香族ジカルボン酸系化合物、脂肪族ジカルボン酸系化合物等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、保存性の観点から、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは98モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、低温定着性の観点から、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは8モル%以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下である。
なお、非晶質ポリエステル樹脂B’においては、3価以上のカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、さらに好ましくは0モル%である。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステル樹脂B’におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.75以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.05以下である。
非晶質ポリエステル樹脂B’は、ポリエステル樹脂A’と同様に、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
本発明において、非晶質ポリエステル樹脂B’とスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂については、非晶質ポリエステル樹脂A’が非晶質ポリエステル樹脂B’である以外は、非晶質ポリエステル樹脂A’ とスチレン系樹脂とを含有する複合樹脂と同様である。
非晶質ポリエステル系樹脂Bの軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは115℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Aと非晶質ポリエステル系樹脂Bの軟化点の差は、低温定着性の観点から、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Bのガラス転移温度は、保存安定性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Bの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは5mgKOH/g以上であり、そして、環境安定性の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、さらに好ましくは10mgKOH/g以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂Bのメチルエチルケトン不溶分は、低温定着性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
非晶質ポリエステル系樹脂Aと非晶質ポリエステル系樹脂Bの質量比(非晶質ポリエステル系樹脂A/非晶質ポリエステル系樹脂B)は、耐久性の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは70/30以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下である。
非晶質ポリエステル系樹脂の含有量は、結着樹脂組成物中、耐久性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。ここで、非晶質ポリエステル系樹脂の含有量とは、非晶質ポリエステル系樹脂Aの含有量、又は非晶質ポリエステル系樹脂Bが用いられている場合には、非晶質ポリエステル系樹脂Aと非晶質ポリエステル系樹脂Bの合計含有量をいう。
本発明の結着樹脂組成物は、さらに、結晶性ポリエステル樹脂Cを含有する。結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分を含む原料モノマーを重縮合させて得られるものであり、脂肪族モノマーを90モル%以上含有する原料モノマーの重縮合物であることが好ましい。脂肪族モノマーの含有量は、結晶性ポリエステル原料モノマー中、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分は、非晶質ポリエステル樹脂との相溶性の観点から、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを含有していることが好ましい。
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールとしては、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
脂肪族ジオールの炭素数は、非晶質ポリエステル系樹脂との相溶性を下げる観点から、好ましくは6以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
また、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることがより好ましい。
アルコール成分には、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール以外のアルコールが含まれていてもよいが、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールの含有量は、低温定着性及び保存性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2〜7のα,ω−脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂のカルボン酸成分は、炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有していることが好ましい。
炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン2酸(炭素数:12)、テトラデカン2酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。なお、本発明において、カルボン酸系化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数には含めない。
脂肪族ジカルボン酸系化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、耐久性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、耐熱保存性の観点から、アルコール成分100モルに対して、好ましくは70モル以上、より好ましくは80モル以上、さらに好ましくは90モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130モル以下、より好ましくは120モル以下、さらに好ましくは110モル以下である。
カルボン酸成分には、他のカルボン酸系化合物が含まれていてもよい。他のカルボン酸系化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、炭素数2〜5の脂肪族ジカルボン酸系化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸系化合物等が挙げられる。
カルボン酸成分及びアルコール成分との重縮合反応は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒等の存在下、135℃以上250℃以下の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
結晶性ポリエステル樹脂Cの軟化点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂Cの融点は、耐熱保存性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
結晶性ポリエステル樹脂CのSP値は、低温定着性の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、さらに好ましくは9以上であり、そして、保存性の観点から、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9.7以下、さらに好ましくは9.5以下である。SP値の測定方法や計算方法は幾つか知られているが、本発明においては、Michael M. Collman, John F. Graf, Paul C. Painter (Pensylvania State Univ.)による、"Specific Interactions and the Miscibility of Polymer Blends" (1991), Technomic Publishing Co. Inc.に記載されている計算方法を用いる。
結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量は、トナー用結着樹脂組成物中、低温定着性の観点から、1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、保存性の観点から、30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
本発明の結着樹脂組成物において、非晶質ポリエステル系樹脂と結晶性ポリエステル樹脂Cの質量比(非晶質ポリエステル系樹脂/結晶性ポリエステル樹脂C)は、低温定着性、保存性、及び耐久性の観点から、好ましくは65/35以上、より好ましくは70/30以上、さらに好ましくは80/20以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは97/3以下、より好ましくは95/15以下、さらに好ましくは90/10以下である。ここで、非晶質ポリエステル系樹脂の質量とは、非晶質ポリエステル系樹脂A、又は非晶質ポリエステル系樹脂Bが用いられている場合には、非晶質ポリエステル系樹脂Aと非晶質ポリエステル系樹脂Bの合計量をいう。
本発明の結着樹脂組成物を含有する電子写真用トナーは、低温定着性、耐久性、保存性、及び環境安定性に優れる。なお、本発明の結着樹脂組成物は、非晶質ポリエステル系樹脂A、結晶性ポリエステル樹脂C等を混合する工程により得られたものを用いてもよく、トナーを製造する際に、それぞれの樹脂を直接原料の混合に供してもよい。
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂組成物以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、本発明の結着樹脂組成物の含有量は、結着樹脂中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒用トナー、カラー用トナーのいずれであってもよい。
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下である。
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、耐久性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。結晶性ポリエステル樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー エイ インスツルメント ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔メチルエチルケトン不溶分〕
(1) 試料の調製
JIS Z8801の篩を用いて、22メッシュの篩を通過し、30メッシュの篩は通過しない粉末状の試料を採取する。試料が塊等の場合は、市販のハンマー、コーヒーミルを用いて、粉砕し、粉末状として篩いにかける。
(2) 試料の溶解
2-1. 試料2.000gを、ガラス瓶「M-140」(柏洋硝子(株)製)に秤量した後、メチルエチルケトン(以下「MEK」ともいう)95gを加え、内蓋及び外蓋を取り付ける。
2-2. ボールミルにて5時間攪拌する(周速:200mm/sec)。
2-3. 10時間静置する。
(3) 濾過
3-1. 予め計量済み(1000分の1g単位)のナスフラスコ(質量A(g))に取り付けたガラスフィルタ(目開き規格11G-3)を準備する。ガラスフィルタのシールには、減圧が可能なゴム栓を用いる。
3-2. 2-3において10時間静置した溶解液の上澄みから20mLをメスピペッドで吸い取り、3-1で準備したガラスフィルタを用いて、減圧濾過する。なお、液面から下2cmまでを上澄みとする。溶解液を濾過する前のナスフラスコ内の減圧度を40kPaに調整する。
3-3. 未使用のMEK 20mLをメスピペッドで吸い取り、ガラスフィルタに付着している可溶分を減圧濾過する。
(4) 乾燥
4-1. エバポレータにてナスフラスコ内のMEKを除去する。
ウォーターバス温度:70℃
ナスフラスコ回転数:200r/min
MEK除去中のナスフラスコ内の減圧度:40〜20kPaに調整
時間:10分
4-2. 50℃・1torrにて12時間乾燥した後、ナスフラスコの質量B(g)を計量する。
(5) メチルエチルケトン不溶分の算出
5-1. MEK 20mLに溶解したMEK可溶分X(g)を算出する。
X=B−A
5-2. MEK 95gに溶解したMEK可溶分Y(g)を、MEKの比重を0.805として算出する。
Y=X×95/(20×0.805)
5-3. 試料1gあたりの可溶分Z(質量%)を算出する。
Z=Y/2×100
5-4. メチルエチルケトン不溶分(質量%)=100-Z
なお、メチルエチルケトン不溶分(質量%)は、3回の測定値の平均値とする。
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
樹脂製造例1〔樹脂H1〜H7、H9、H10〕
表1、2に示す無水トリメリット酸以外の非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてエステル化触媒を添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後7時間保持した。その後、210℃まで冷却後、無水トリメリット酸を投入し、210℃で1時間保持し、8.0kPaにて減圧反応を行った後、表1、2に示す軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂を得た。
樹脂製造例2〔樹脂H8〕
表2に示す非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、160℃まで昇温した。そこに、スチレン系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー、及び重合開始剤の混合物を滴下し、重合を行った。
その後、エステル化触媒を添加し、3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃に到達後7時間保持した。その後、210℃まで冷却した後、210℃で1時間保持し、8.0kPaにて減圧反応を行った後、表2に示す軟化点に達するまで反応を行い、非晶質複合樹脂を得た。
樹脂製造例3〔樹脂L1〕
表2に示す非晶質ポリエステル樹脂の原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてエステル化触媒を添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後10時間保持した。その後、235℃で8.0kPaにて減圧反応を行った後、表2に示す軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル樹脂を得た。
樹脂製造例4〔樹脂C1〜C4〕
表3に示すアルコール成分及びカルボン酸成分を温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持し、さらに200℃まで6時間かけて昇温した。その後、2-エチルヘキサン酸錫(II)18gを入れ、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂を得た。
Figure 2019101109
Figure 2019101109
Figure 2019101109
実施例1〜11及び比較例1、2
表4に示す結着樹脂組成物を合計100質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-81」(オリヱント化学工業(株)製)1質量部、着色剤「Pigment blue 15:3」(大日精化工業(株)製)5質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋(株)製、パラフィンワックス、融点:80℃)2質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、スクリュー回転速度200r/min、スクリュー内の加熱温度100℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練組成物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、外添剤として疎水性シリカ「AEROSIL NAX 50」(日本アエロジル(株)製、疎水化処理剤:HMDS、平均粒子径:約30nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合することにより、トナーを得た。
試験例1〔低温定着性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」((株)沖データ製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cm2に調整して、4.1cm×13.0cmのベタ画像を「J紙」(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製)に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着画像を得た。得られた未定着画像を「Microline3010」((株)沖データ製)の定着機を改造した外部定着機にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、240mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。これを200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度で未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。各温度で定着させた画像にメンディングテープ(スリーエムジャパン(株)製)を付着させた後、500gの円筒上の重石を載せることにより、十分にテープを定着画像に付着させた。その後、ゆっくりとメンディングテープを定着画像より剥がし、テープ剥離後の画像の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定した。あらかじめテープを貼る前の画像についても光学反射密度を測定しておき、その値との比([テープ剥離後の反射密度/テープ貼付前の反射密度]×100)が最初に90%を超える定着ロールの温度を最低定着温度とし、低温定着性を評価した。結果を表4に示す。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れていることを示す。
試験例2〔耐久性〕
非磁性一成分現像装置「MicroLine 5400」(沖データ社製)にトナーを実装し、35℃、相対湿度50%の環境下にて、0.3%の印字率で耐刷試験を行った。1時間毎にベタ画像を印字し、ブレードフィルミングに起因する白スジの発生がないかを観察して評価し、耐久性を評価した。結果を表4に示す。試験は、白スジの発生が確認された時点で中止し、最高10時間まで行った。
試験例3〔保存性〕
トナー10gを半径12mmの円筒型容器に入れ、上から100gの重りをのせ、25℃及び相対湿度50%の環境下で72時間保持した。パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製)に、上から順に、篩いA(目開き250μm)、篩いB(目開き150μm)、篩いC(目開き75μm)の3つの篩を重ね合わせて設置し、篩いA上にトナー10gを乗せて60秒間振動を与えた。篩いA上に残存したトナー質量WA(g)を、篩いB上に残存したトナー質量WB(g)を、篩いC上に残存したトナー質量WC(g)を、それぞれ測定し、下記式に従って算出される値(α)をもとに、保存性を評価した。結果を表4に示す。値(α)が100に近いほど、保存性に優れる。
Figure 2019101109
試験例4〔環境安定性〕
温度40℃、相対湿度80%の環境下で、所定の混合時間(60秒又は3600秒)後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。
混合時間60秒後の帯電量と混合時間3600秒後の帯電量の比率(混合時間3600秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を算出し、その比率から、環境安定性を評価した。帯電量の比率が1に近いほど、帯電安定性に優れ、その比率は0.75以上が好ましく、0.80以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましい。結果を表4に示す。
Figure 2019101109
以上の結果より、実施例1〜11のトナーは、低温定着性、耐久性、保存性、及び環境安定性がいずれも良好であることが分かる。
これに対し、非晶質ポリエステル樹脂に脂環式多価カルボン酸系化合物を使用しているもののその量が少なすぎる比較例1のトナー及び脂環式多価カルボン酸系化合物ではなく芳香族の無水トリメリット酸を使用した比較例2のトナーは、低温定着性、耐久性、保存性、及び環境安定性のいずれもが不十分であることが分かる。
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、例えば、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂として好適に用いられるものである。

Claims (6)

  1. アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である非晶質ポリエステル樹脂A’を含む非晶質ポリエステル系樹脂Aと結晶性ポリエステル樹脂Cを含むトナー用結着樹脂組成物であって、
    前記非晶質ポリエステル樹脂A’のカルボン酸成分が、式(I):
    Figure 2019101109
    (式中、R1〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の炭化水素基、又はカルボキシ基であり、少なくともR1〜R6の少なくとも3個はカルボキシ基であり、R7〜R12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1以上12以下の炭化水素基である)
    で表される脂環式多価カルボン酸、その炭素数1以上3以下のアルキルエステル、及びその無水物からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂環式多価カルボン酸系化合物を、10モル%以上40モル%以下含有し、
    前記非晶質ポリエステル系樹脂Aの軟化点が120℃以上165℃以下であり、
    前記結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量が、トナー用結着樹脂組成物中、1質量%以上30質量%以下である、
    トナー用結着樹脂組成物。
  2. 式(I)で表される脂環式多価カルボン酸が、3価のトリカルボン酸である、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
  3. 結晶性ポリエステル樹脂CのSP値が10以下である、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
  4. 非晶質ポリエステル樹脂A’のアルコール成分が、式(II):
    Figure 2019101109
    (式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上16以下である)
    で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有する、請求項1〜3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
  5. 請求項1、2又は4において規定された非晶質ポリエステル系樹脂Aを含む、トナー用結着樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用粉砕トナー。
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